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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/00 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
F23G5/00 119F
F23G5/00 ZAB
F23G5/00 119H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020072850
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2021169882
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】509314080
【氏名又は名称】林 相伍
(74)【代理人】
【識別番号】100111084
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 義昭
(72)【発明者】
【氏名】林 相伍
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-304121(JP,A)
【文献】特開2007-322099(JP,A)
【文献】特開2006-153348(JP,A)
【文献】特開平10-253029(JP,A)
【文献】特開平06-288526(JP,A)
【文献】国際公開第2017/010691(WO,A1)
【文献】特開2003-114298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物が投入される投入口、及び、燃焼によって発生する燃焼生成物を排出する排気口が形成された燃焼室と、
前記燃焼室内部の中央に垂直に設置され、外部から供給された外気を多層に噴射する複数の外気噴射口を備えた外気供給部と、
前記外気供給部の上部側に設置され、前記燃焼室内部に投入された廃棄物を分散落下させる分散部と、
前記外気供給部の中下部側に設置され、落下した廃棄物の密着を防止すると共に、落下した廃棄物が前記燃焼室下部の焼却灰に密着するのを防止するスタンド部と
前記燃焼室内部の上部側に設置され、前記燃焼室内部に向けて補助燃料を噴射する補助燃料供給部と
を備えることを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
廃棄物が投入される投入口、及び、燃焼によって発生する燃焼生成物を排出する排気口が形成された燃焼室と、
前記燃焼室内部の中央に垂直に設置され、外部から供給された外気を多層に噴射する複数の外気噴射口を備えた外気供給部と、
前記外気供給部の上部側に設置され、前記燃焼室内部に投入された廃棄物を分散落下させる分散部と、
前記外気供給部の中下部側に設置され、落下した廃棄物の密着を防止すると共に、落下した廃棄物が前記燃焼室下部の焼却灰に密着するのを防止するスタンド部と
前記排気口と連結される流入口が上部側に形成されると共に、浄化処理された燃焼ガスを外部へ排出するための煙突を備えた集塵室と、
前記燃焼室内部に滞留する燃焼生成物を前記集塵室に誘導する吸気ファンと、
前記集塵室内部に設置され、燃焼生成物に含まれた粉塵と有害物質を除去する吸着部と、
前記集塵室内部に設置され、前記吸着部を通過した燃焼生成物に冷風及びミストの少なくともいずれか一方を噴射して温度を低下させる冷却部と
を備えることを特徴とする燃焼装置。
【請求項3】
廃棄物が投入される投入口、及び、燃焼によって発生する燃焼生成物を排出する排気口が形成された燃焼室と、
前記燃焼室内部の中央に垂直に設置され、外部から供給された外気を多層に噴射する複数の外気噴射口を備えた外気供給部と、
前記外気供給部の上部側に設置され、前記燃焼室内部に投入された廃棄物を分散落下させる分散部と、
前記外気供給部の中下部側に設置され、落下した廃棄物の密着を防止すると共に、落下した廃棄物が前記燃焼室下部の焼却灰に密着するのを防止するスタンド部と
を備え
前記投入口は、
両端が解放され、前記燃焼室の上部側に設置される筒状部と、
前記筒状部の一端にヒンジ結合され、内部に向けて回転可能な上部開閉板と、
前記筒状部の他端にヒンジ結合され、内部に向けて回転可能な下部開閉板と
を含んで構成される二重の開閉構造を有する
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項4】
廃棄物が投入される投入口、及び、燃焼によって発生する燃焼生成物を排出する排気口が形成された燃焼室と、
前記燃焼室内部の中央に垂直に設置され、外部から供給された外気を多層に噴射する複数の外気噴射口を備えた外気供給部と、
前記外気供給部の上部側に設置され、前記燃焼室内部に投入された廃棄物を分散落下させる分散部と、
前記外気供給部の中下部側に設置され、落下した廃棄物の密着を防止すると共に、落下した廃棄物が前記燃焼室下部の焼却灰に密着するのを防止するスタンド部と
を備え
前記スタンド部は、
前記外気供給部の外周に沿って回転可能に構成された回転基部と、
当該回転基部から多様な方向に突出する複数の攪拌棒と、
当該複数の攪拌棒で支えられ、前記外気供給部を中心に同心状に配置された一つ以上の攪拌リングと
を備えることを特徴とする燃焼装置。
【請求項5】
前記燃焼室内部の上部側に設置され、前記燃焼室内部に向けて補助燃料を噴射する補助燃料供給部を更に備える
ことを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の燃焼装置。
【請求項6】
前記燃焼室内部の上部側に設置され、前記燃焼室内部に滞留する燃焼生成物から熱を回収する熱回収管を更に備える
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の燃焼装置。
【請求項7】
前記スタンド部は、
前記外気供給部の外周に沿って回転可能に構成された回転基部と、
当該回転基部から多様な方向に突出する複数の攪拌棒と、
当該複数の攪拌棒で支えられ、前記外気供給部を中心に同心状に配置された一つ以上の攪拌リングと
を備えることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の燃焼装置。
【請求項8】
廃棄物を前記燃焼室へ移送する移送装置を更に備える
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の燃焼装置。
【請求項9】
前記燃焼室を複数備える
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の燃焼装置。
【請求項10】
廃棄物を各燃焼室へ移送する移送装置と、
当該移送装置によって各燃焼室へ移送される廃棄物の移送量が均等になるように分配する分配装置と
を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種廃棄物を燃焼処理するための燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、現代文明の発達と生活様式の多様化に伴い環境汚染が日々深刻化しており、地球温暖化や生態系破壊などの環境問題が注目されている。国連や世界各国の政府機関や環境団体などは、環境保護のために様々な目標を設定し、その課題解決のための研究を活発に行っている。また、民間企業でも、これらの問題を解決するための技術開発が活発に行われている。
【0003】
しかしながら、現時点までは、各種廃棄物を処理する手段としては、焼却処理と埋立処理が主となっており、これらの技術と処理能力が不足している開発途上国においては、各種廃棄物が不法投棄されたり、放置されたりしており、環境汚染の問題が深刻化している。
【0004】
また、このような生活廃棄物、産業廃棄物、医療廃棄物などの各種廃棄物の処理問題は、開発途上国などの特定国家地域のみの問題という訳ではなく、人類全体の問題でもあり、重要課題でもある。
【0005】
一方、先進国を中心とする多くの国が依存している廃棄物焼却場での焼却処理方式では、高額の初期設置費用や、収集、分離、運搬、焼却、施設運営のための費用が発生する等の問題がある。また、廃棄物の埋立処理方式では、廃棄物を埋め立てるための広い用地が次々と必要となってくる。さらに、埋立処理方式では、土壌汚染や水質汚染などの二次環境汚染が生じるという問題もある。
【0006】
これらの問題を解決するために、一部先進国においては、有機物処理と高温・低温熱分解技術を利用した小型焼却装置に関する技術が数多く提案されている。しかしながら、これらの小型焼却装置では、廃棄物の処理量に限界があったり、非可燃性廃棄物の処理が困難であったりといった問題があるため、選択的処理しかできず、また、焼却時に発生する煤煙、粉塵、臭いなどの除去も難しく、実用化には多くの課題がある。
【0007】
一方、廃棄物の焼却処理のために、日本を含む先進国では、様々な関連研究が行われており、例えば、特開2002-71116号公報記載の「焼却装置」や、特許第4093468号公報記載の「小型焼却炉」や、韓国登録特許第10-1483751号公報記載の「高温熱分解焼却装置」や、韓国登録特許第10-1602597号公報記載の「廃棄物処理用親環境焼却装置」などが提案されている。
【0008】
特開2002-71116号公報には、燃焼室の上部側に分解部、集塵部、電気ヒータ、分解触媒部などを備えた焼却装置が開示されている。しかしながら、当該装置では、焼却部内部の高温を維持することが難しく、含水率が高い廃棄物の処理が困難であったり、不完全燃焼によって発生する有害ガスの排出を防止することが必要といった問題がある。
【0009】
また、特許第4093468号公報には、主燃焼室と再燃焼室で構成される燃焼室の上部側に、燃焼ガス処理のためのエアノズルを具備した小型焼却炉において、燃焼ガスの温度を低下させるために冷却水噴霧ノズルを設けた構成が開示されている。しかしながら、当該小型焼却炉では、含水率が高い有機性廃棄物などの処理が容易でないなどの問題がある。
【0010】
また、韓国登録特許第10-1483751号公報には、燃焼室内に設置された送風管の空気噴射口を通じて外部空気を強制送風するように構成されて、焼却処理物を高温で完全燃焼処理することができ、燃焼層を多層化して焼却処理物の不完全燃焼を防止できる高温熱分解焼却装置が開示されている。しかしながら、当該装置では、燃焼部の上部側に開閉部が設けられており、その上部から排出される高温燃焼ガスによる火気の危険性があり、また、廃棄物の投入時に発生する粉塵の除去が容易でなく、燃焼室下部での密着状態によって有機性廃棄物や含水率が高い廃棄物の不完全燃焼が発生する可能性もある。
【0011】
また、韓国登録特許第10-1602597号公報には、廃棄物が燃焼されて発生する燃焼ガスを再燃焼できるように構成されて、完全燃焼を可能にする廃棄物処理用親環境焼却装置が開示されているが、廃棄物の処理のために必要な高温燃焼室の構成と、有害ガスを除去するための構成は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2002-71116号公報
【文献】特許第4093468号公報
【文献】韓国登録特許第10-1483751号公報
【文献】韓国登録特許第10-1602597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、各種廃棄物が混合された状態の多種廃棄物を分離せずに混合された状態のまま高温燃焼させて、有害燃焼ガスの生成を最小化することが可能な燃焼装置を提供することにある。
【0014】
また、本発明の別の目的は、燃焼過程でやむを得ず発生する粉塵や有害ガスなどを外部に排出することによる環境汚染を防止することが可能な燃焼装置を提供することにある。
【0015】
また、本発明の更に別の目的は、燃焼室上部に滞留する高温燃焼ガスから熱を回収して利用することが可能な燃焼装置を提供することにある。
【0016】
また、本発明の更に別の目的は、各場所で発生する多種廃棄物を長距離運搬する必要がなく、発生場所で迅速に処理できるように車両移動が可能な小型の燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る燃焼装置は、廃棄物が投入される投入口、及び、燃焼によって発生する燃焼生成物を排出する排気口が形成された燃焼室と、前記燃焼室内部の中央に垂直に設置され、外部から供給された外気を多層に噴射する複数の外気噴射口を備えた外気供給部と、前記外気供給部の上部側に設置され、前記燃焼室内部に投入された廃棄物を分散落下させる分散部と、前記外気供給部の中下部側に設置され、落下した廃棄物の密着を防止すると共に、落下した廃棄物が前記燃焼室下部の焼却灰に密着するのを防止するスタンド部とを備えることを特徴とする。
【0018】
この場合において、前記燃焼室内部の上部側に設置され、前記燃焼室内部に向けて補助燃料を噴射する補助燃料供給部を更に備えるようにしてもよい。また、前記燃焼室内部の上部側に設置され、前記燃焼室内部に滞留する燃焼生成物から熱を回収する熱回収管を更に備えるようにしてもよい。また、前記排気口と連結される流入口が上部側に形成されると共に、浄化処理された燃焼ガスを外部へ排出するための煙突を備えた集塵室と、前記燃焼室内部に滞留する燃焼生成物を前記集塵室に誘導する吸気ファンと、前記集塵室内部に設置され、燃焼生成物に含まれた粉塵と有害物質を除去する吸着部とを更に備えるようにしてもよい。
【0019】
この場合において、前記集塵室の内部に、前記吸着部を通過した燃焼生成物に冷風及びミストの少なくともいずれか一方を噴射して温度を低下させる冷却部を更に備えるようにしてもよい。
【0020】
また、以上の場合において、前記投入口は、両端が解放され、前記燃焼室の上部側に設置される筒状部と、前記筒状部の一端にヒンジ結合され、内部に向けて回転可能な上部開閉板と、前記筒状部の他端にヒンジ結合され、内部に向けて回転可能な下部開閉板とを含んで構成される二重の開閉構造を有するようにしてもよい。
【0021】
また、以上の場合において、前記スタンド部は、前記外気供給部の外周に沿って回転可能に構成された回転基部と、当該回転基部から多様な方向に突出する複数の攪拌棒と、当該複数の攪拌棒で支えられ、前記外気供給部を中心に同心状に配置された一つ以上の攪拌リングとを備えるようにしてもよい。
【0022】
また、以上の場合において、廃棄物を前記燃焼室へ移送する移送装置を更に備えるようにしてもよい。
【0023】
また、以上の場合において、前記燃焼室を複数備えるようにしてもよい。この場合、廃棄物を各燃焼室へ移送する移送装置と、当該移送装置によって各燃焼室へ移送される廃棄物の移送量が均等になるように分配する分配装置とを更に備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、外気供給部の特殊構成により、燃焼室内部に投入された多種廃棄物を900度以上の高温で燃焼処理することができるので、ダイオキシンなど環境に有害な物質の発生を抑制することが可能となる。
【0025】
また、多種廃棄物を燃焼する際に発生する粉塵や燃焼ガス等の燃焼生成物を集塵するように構成されているので、その燃焼生成物が外部に排出されることによる環境汚染を防止することが可能となる。
【0026】
また、燃焼ガスの熱を効率的に回収できるように構成されているので、回収された熱を、温水又は温風、発電などのために再利用することが可能となる。
【0027】
また、燃焼装置を車両に搭載して移動できるように小型化することができるので、多種廃棄物を長距離運搬する必要がなく、発生場所で効率良く迅速に処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による燃焼装置の全体構成を示す断面図である。
図2】投入口の構成例を説明するための図である。
図3】燃焼室の内部において、外気と補助燃料が噴射される状況を示す断面図である。
図4】外気供給部に分散部及びスタンド部を設置した状態を示す斜視図である。
図5】本発明による燃焼装置に使用される粉砕機の内部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0030】
本発明による燃焼装置は、日常生活で発生する生活廃棄物と、産業施設で発生する産業廃棄物、そして医療施設などで発生する特殊廃棄物を分類することなく同時に燃焼処理するためのものである。
【0031】
図1は、本発明による燃焼装置の全体構成を示す断面図である。
【0032】
同図に示すように、本発明による燃焼装置は、多種廃棄物を投入するための投入口101、及び、燃焼により発生した燃焼生成物を排出するための排気口102が形成された燃焼室100と、燃焼室100内の中央に垂直に設置され、外部から供給される外気を多層に噴射する外気供給部110と、燃焼室100内に設置され、燃焼室100内部に向けて補助燃焼を噴射する補助燃料噴射ノズル120と、外気供給部110の上部側に設置され、燃焼室100内部へ投入された廃棄物を分散落下させる分散部130と、外気供給部110の中下部に設置され、落下廃棄物同士の密着を防止すると共に、落下廃棄物が燃焼室下部の焼却灰に密着するのを防止するスタンド部140と、燃焼室100内部の上部側に設置され、燃焼室100内部に滞留する燃焼生成物から熱を回収する熱回収菅150と、配管を介して排気口102と連通する流入口161が一端側に形成されると共に、浄化処理された燃焼ガスを排出するための煙突162が他端側に設けられた集塵室160と、上記配管側に設置され、燃焼室100内部に滞留する燃焼生成物を集塵室160に誘導する吸入ファン170と、集塵室160内部に設置され、吸着層で燃焼生成物に含まれた粉塵と有害物質を除去する吸着部180とを備える。
【0033】
また、簡単のため、図示は省略しているが、燃焼装置100は、燃焼室100内の温度を測定するための温度センサや、温度センサによって測定された温度等を表示するための表示部や、温度センサによって測定された温度等に基づいて燃焼装置100の動作を制御するための制御部等を更に備えている。
【0034】
図1に示すように、燃焼室100は、円筒状の構造体であり、その側面上部には、多種廃棄物が投入される投入口101と、燃焼により発生する燃焼生成物が排出される排気口102とが形成されている。また、燃焼室100は、その内壁に、耐熱性と耐酸性に優れ、輻射熱を形成できる高濃度セラミック又はキャスタブル耐火物で構成される層が形成されている。
【0035】
燃焼室100の内部に投入された廃棄物は、900℃以上の高温で燃焼処理することが可能となっており、900℃未満の温度で燃焼処理する時と比べて燃焼ガスの発生量を低減させることができる。また、高温で燃焼処理することにより、ダイオキシンなどの環境有害物質の発生を抑制することも可能となる。
【0036】
図2は、投入口101の構成例を説明するための図である。
【0037】
同図に示すように、投入口101は、燃焼室100の内部側に、筒状部103を備えている。筒状部103は、両端が解放された角筒状の形状を有するものであり、同図に示すように、投入口101から、燃焼室100の内部側に向かって斜め下方向に延びるように設置される。また、筒状部103の上部側の端部には、燃焼室100の内部側に向って回転可能な上部開閉板104がヒンジ結合されており、筒状部103の下部側の端部には、燃焼室100の内部側に向かって回転可能な下部開閉板105がヒンジ結合されており、2重扉構造となっている。
【0038】
つまり、投入口101は、例えば、移送装置等によって外部から供給される多種廃棄物の重量により、まず、上部開閉板104が内部側方向に回転し、次に、筒状部103の内部通路を通って落ちる多種廃棄物の重量により下側開閉板105が燃焼室100の内部側方向に回転することにより、多種廃棄物を燃焼室100の内部へ投入できるように構成されているので、燃焼時に発生する燃焼ガスなどの有害物質の外部流出を遮断することができるようになっている。
【0039】
そのため、燃焼室100の内部へ投入される多種廃棄物の投入量は、投入口101の上側開閉板104と下側開閉板105が同時に開放されないように調節するのが望ましい。
【0040】
また、投入口101は、例えば、高濃度セラミックやキャスタブル耐火物などの耐熱性と耐酸性に優れた材料で全体を構成するのが望ましい。これは燃焼室100内部で発生する高温の熱気による下側開閉板105などの変形を防止するためである。
【0041】
一方、燃焼室100の下部側には、複数の貫通孔が形成された下部板(不図示)が水平に設置される。下部板の下方には、貫通孔を通じて落下する焼却灰を保管できる保管部が形成されることになる。燃焼室100の下部側には、保管部にたまった焼却灰を取り出すための灰出口(不図示)が形成されており、当該灰出口を介して、多種廃棄物の燃焼により発生した焼却灰を外部に排出して処理することができるようになっている。また、燃焼室100での燃焼開始時の着火についても、当該灰出口を介して、行われることになる。
【0042】
また、燃焼室100の側面上部側には、燃焼室100内部の燃焼状態を点検するための点検口(不図示)が形成されており、当該点検口は、外部から開閉可能なように構成されている。
【0043】
また、燃焼室100は、車両搭載された状態で移動できるように小型化されており、移動性を向上させるため、その底面に複数の移動車を備えている。
【0044】
外気供給部110は、外部から供給される外気(空気)を燃焼室100の内部に供給する管状の構造体であって、燃焼室100の中央に垂直方向に延びるように配置されている。外気供給部110は、その外周に、垂直方向に互いに所定間隔で離隔された複数の外気噴射口群を備えており、各外気噴射口群は、周方向に円状に配置された複数の外気噴射口111を備えている。
【0045】
すなわち、外気供給部110は、図3に示すように、外部から供給される外気を燃焼室100の内部へ放射状に多層噴射できるように構成されている。
【0046】
図1に示すように、外気供給部110の下端部には、水平方向に延びる外気供給菅の一端が直結されており、外気供給菅の他端には、外気供給部110に向けて外気を効果的に供給するための送風ファン112が連結されている。
【0047】
なお、本実施形態においては、各外気噴射口111は、燃焼室100の内部に向けて水平方向に外気を噴射するように構成されているが、複数の外気噴射口111の全部、又は、その一部を、斜め下方向に向けて外気を噴射するように構成することもできる。このように噴射角度を調節することにより、燃焼室100の内部における高温気流の循環をより活発化させることが可能となる。
【0048】
また、外気噴射口111の数、大きさ、位置や間隔は、外気噴射口群(高さ位置)毎に異なるように構成されており、各層毎に複数の外気噴射口111から噴射される外気の量と外気の圧力の違いによって、燃焼室100の内部には、複数の循環層が形成される。
【0049】
このような外気供給部110の構成により、燃焼室100の内部には、複数の循環層及び温度層が形成されることとなり、例えば、下から上に向かって、低温層、中温層、高温層で構成される多段階の温度層が形成される。
【0050】
補助燃料噴射ノズル120は、高温を維持するため補助燃料(例えば、灯油や各種廃油)を燃焼室100の内部に供給する装置であり、燃焼室100の内部の上部側に複数設置されている。
【0051】
図3に示すように、燃焼室100の内部を向けて補助燃料を噴射することで各温度層の温度を上昇させると同時に、各温度層の温度を多層化することができる。つまり、補助燃料噴射ノズル120から噴射される補助燃料は、燃焼室100内部に形成された複数の温度層において燃焼されて上昇し、次の温度層で再度高温燃焼されるようになり、燃焼量は上層から下層に向けて急激に減少することで、各温度層の温度差が増加することになる。
【0052】
分散部130は、燃焼室100内に投入される廃棄物を分散落下させるためのものであって、本実施形態においては、外気供給部110の上部側に設置される構造となっており、図4に示すように、異なる方向に放射状に延びる複数の分散棒で構成される。
【0053】
投入口101を介して燃焼室100の内部に投入されて下方に落下する多種廃棄物は、分散部130を構成する複数の分散棒によって分散されて落下するようになるので、廃棄物の密着を防止することができ、多方向に分散させて落下させることで燃焼室100内部への外気噴射を容易にすることができる。
【0054】
スタンド部140は、燃焼室100内部に投入された廃棄物が偏在するのを防止するため、外気供給部110の中下部側に回転可能に設けられるものであり、本実施形態においては、図4に示すように、外気供給部110の外周に沿って回転ができるように構成された円筒状の回転基部141と、回転基部141から放射状に突出する複数の攪拌棒142と、外気供給部110を中心に同心状に配置された複数の攪拌リング143とで構成される。
【0055】
回転基部141の回転に伴い、複数の攪拌棒142及び複数の攪拌リング143が回転することにより、燃焼室100の下部側に溜まった多種廃棄物が均等になるよう攪拌されると共に、多種廃棄物が外気供給部110へ密着することが防止されることとなり、外気噴射口111を多種廃棄物が塞ぐことによる外気噴射効果の低下を防止することが可能となる。
【0056】
また、スタンド部140を外気供給部110の中下部側に設けることにより、燃焼室内に投入されて落下する多種廃棄物が、燃焼室下部の焼却灰に密着するのを抑制することが可能となり、燃焼の効率を向上させることが可能となる。
【0057】
熱回収菅150は、熱交換方式を利用して燃焼生成物が有する熱を回収する熱再生装置であり、燃焼室100上部の空間内に収容できるように、ラジエーターやコイルなどのように管状部材を多重に束ねたような形状に構成されると共に、アルミニウム、スチール、ステンレス又は銅などの熱回収に適した材料で構成されることが望ましい。
【0058】
熱回収菅150の内部には、気体又は液体が流れる流路が形成されており、流路内を気体又は液体が通過する際に周囲の熱により加熱されて外部に排出されることにより、燃焼室100内の熱を再生エネルギーとして利用できるようになる。
【0059】
集塵室160は、燃焼室100で発生した燃焼生成物の浄化処理を行うものであって、図1に示すように、配管を介して、燃焼室100の排気口102と繋がる流入口161が上部側に形成されると共に、浄化処理された燃焼ガスを外部へ排出するための煙突162を、片側に備える円筒状の構造体である。
【0060】
図1に示すように、上記配管側には、吸気ファン170が設置されており、熱回収菅150により大半の熱が回収された状態の粉塵や燃焼ガス等の燃焼生成物を集塵室160へ誘導するようになっている。
【0061】
また、集塵室160の内部には、吸着方式により、燃焼生成物に含まれた粉塵や有害物質を除去する吸着部180が設置されている。吸着部180は、活性炭、セラミックスあるいは石灰などのいずれか一つを含むように構成される一つ以上の吸着板により構成されている。
【0062】
また、吸着部180を通過し、粉塵と有害物質が除去された状態にある燃焼生成物に、冷風及びミストのいずれか一方又は両方を噴射する冷却部(不図示)を集塵室160内に設けることもできる。冷却部から噴射される冷風やミストによって、燃焼生成物の温度を低下させることで、一定温度以下の浄化された燃焼ガスを、煙突162を介して外部へ排出するようにすることができる。
【0063】
燃焼室100の内部へ投入される多種廃棄物は、収集された状態のままでもよいが、図5に示すような粉砕機200によって事前に粉砕されたものであってもよい。
【0064】
粉砕機200は、本発明による燃焼装置100によって処理しようとする多種廃棄物を粉砕し排出する装置であって、内部に粉砕部を備えており、上部に形成された投入口から投入される多種廃棄物を粉砕でき、下部に形成された排出口を介して、粉砕された多種廃棄物を排出する。
【0065】
図5に示すように、粉砕機200の投入口は、漏斗状の形状に構成されており、廃棄物の投入が容易にできるようになっている。
【0066】
また、図5に示すように、粉砕部は、投入口を介して粉砕機200の内部へ投入される多種廃棄物が効果的に粉砕できるように、多種廃棄物を1次粉砕するための1次粉砕刃201と、1次粉砕刃201の下方に配置されて1次粉砕された多種廃棄物を2次粉砕するための2次粉砕刃202を備えるように構成されている。
【0067】
1次粉砕刃201の大きさ及び相互間隔はそれぞれ、2次粉砕刃202の大きさ及び相互間隔に比べて、大きく及び広くなるように形成されており、一定のかさ以上の多種廃棄物が下方に移動するに従って順次小さく粉砕されるようになっている。
【0068】
粉砕機200によって粉砕された多種廃棄物は、図5に示すように、移送装置210によって、燃焼室100の投入口101まで移送される。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、当然のことながら、本発明の実施形態は上記のものに限られない。例えば、上述した実施形態においては、スタンド部140を外気供給部110に対して回転可能に設けるようにしていたが、固定的に設けることも考えられる。この場合も、燃焼室内に投入されて落下する多種廃棄物が、燃焼室下部の他の多種廃棄物や焼却灰に密着するのを抑制することが可能となり、燃焼の効率を向上させることが可能となる。
【0070】
また、上述した実施形態においては、一つの燃焼室100を設けるようにしていたが、複数の燃焼室を設けることも考えられる。この場合は、例えば、複数の燃焼室を並列に配置して一体化させ、各燃焼室からの燃焼ガスを単一の集塵部へ流入させ、浄化された燃焼ガスを単一の煙突から排気させるようにしてもよい。また、この場合、多種廃棄物を移送装置によって、各燃焼室へ移送するようにしてもよいし、更にこの場合、多種廃棄物の各燃焼室への移送量が均一になるように、各燃焼室へ移送する多種廃棄物を分けるための分配装置を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
100 燃焼室
101 投入口
102 排気口
103 筒状部
104 上側開閉板
105 下側開閉板
110 外気供給部
111 外気噴射口
112 送風ファン
120 補助燃料噴射ノズル
130 分散部
140 スタンド部
141 回転基部
142 攪拌棒
143 攪拌リング
150 熱回収菅
160 集塵室
161 流入口
162 煙突
170 吸入ファン
180 吸着部
200 粉砕機
201 1次粉砕刃
202 2次粉砕刃
210 移送装置
図1
図2
図3
図4
図5