(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】液晶ポリマー、積層材、液晶ポリマー溶液、および液晶ポリマーフィルムの形成方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/685 20060101AFI20220829BHJP
C08G 63/60 20060101ALI20220829BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20220829BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220829BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220829BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220829BHJP
B29C 41/12 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
C08G63/685
C08G63/60
C08L67/00
B05D7/24 301Z
B32B27/36
B05D7/24 302V
C08J5/18 CFD
C08J5/18 CFG
B29C41/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020113162
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2020-10-27
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】朱 育麟
(72)【発明者】
【氏名】邱 仁軍
(72)【発明者】
【氏名】谷 祖強
(72)【発明者】
【氏名】何 柏賢
(72)【発明者】
【氏名】陳 孟▲しん▼
(72)【発明者】
【氏名】林 志祥
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/039878(WO,A1)
【文献】特開2001-200034(JP,A)
【文献】特開昭62-132927(JP,A)
【文献】特表2014-518915(JP,A)
【文献】特開昭61-236819(JP,A)
【文献】特開2003-105082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00-63/91
C08L 67/00-67/08
B05D 7/24
B32B 27/36
C08J 5/18
B29C 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の繰り返し単位:10mol%から35mol%の(1);10mol%から35mol%の(2);10mol%から25mol%の(3);および25mol%から40mol%の(4a)、(4b)またはこれらの組み合わせより構成される液晶ポリマー。
【化1】
(式中、AR
1
は、
【化2】
またはこれらの組み合わせであり
;
AR
2
は、
【化3】
であり;
AR
3
は、
【化4】
またはこれらの組み合わせであり;
R
2はH、CH
3、CH(CH
3)
2、C(CH
3)
3、CF
3
、または
【化5】
であり、n=1から4である
。)
【請求項2】
【化6】
またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の液晶ポリマー。
【請求項3】
【化7】
である、請求項1に記載の液晶ポリマー。
【請求項4】
【化8】
またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の液晶ポリマー。
【請求項5】
重量平均分子量(Mw)が1,000から1,000,000である請求項1に記載の液晶ポリマー。
【請求項6】
支持体と、
前記支持体上に配置された液晶ポリマーフィルムと、
を含む積層材であって、
前記液晶ポリマーフィルムが請求項1に記載の前記液晶ポリマーを含む、積層材。
【請求項7】
前記液晶ポリマーフィルムの厚さが1マイクロメーターから100マイクロメーターである、請求項
6に記載の積層材。
【請求項8】
前記支持体には銅箔、ガラス、またはアルミニウム箔が含まれる、請求項
6に記載の積層材。
【請求項9】
前記支持体と前記液晶ポリマーフィルムとの間に配置された接着層をさらに含む請求項
6に記載の積層材。
【請求項10】
100重量部の溶媒と、
0.01から100重量部の請求項1に記載の前記液晶ポリマーと、
を含む液晶ポリマー溶液。
【請求項11】
前記溶媒には、ハロゲン含有溶媒、エーテル溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、カーボネート溶媒、アミン溶媒、ニトリル溶媒、アミド溶媒、ニトロ溶媒、スルフィド溶媒、ホスフィド(phosphide)溶媒、パラフィン、オレフィン、アルコール、アルデヒド、芳香族炭化水素、テルペン、水素添加炭化水素、複素環化合物、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項
10に記載の液晶ポリマー溶液。
【請求項12】
別の樹脂をさらに含み、前記別の樹脂には熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が含まれる、請求項
10に記載の液晶ポリマー溶液。
【請求項13】
添加剤をさらに含み、前記添加剤には無機フィラー、有機フィラー、抗酸化剤、UV吸収剤、熱安定剤、光安定剤、抗エイジング剤、強化剤、鎖延長剤、可塑剤、架橋剤、塗料インクに用いる添加剤、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項
10に記載の液晶ポリマー溶液。
【請求項14】
請求項
10に記載の前記液晶ポリマー溶液を支持体上に塗布する工程と、
前記溶媒を除去して前記支持体上に液晶ポリマーフィルムを形成する工程と、
を含む液晶ポリマーフィルムの形成方法。
【請求項15】
前記支持体には銅箔、ガラス、またはアルミニウム箔が含まれる、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記液晶ポリマーフィルムを前記支持体上に形成した後に、前記支持体を除去する工程をさらに含む請求項
14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年7月2日に出願された米国仮特許出願第62/869,669号の利益を主張する。
【0002】
本出願は、2020年4月13日に出願された台湾特許出願第109112311号に基づいていると共にその優先権を主張し、その開示全体が参照することにより本明細書に援用される。
【0003】
<技術分野>
本技術分野は液晶ポリマーに関する。
【背景技術】
【0004】
近年、液晶ポリマー(LCP)は、多くのハイバリュー・ハイエンドな用途、特にLCPフィルムにおいて、広く用いられるようになっている。かかるLCPフィルムは吸湿性が低く、比誘電率が低く、かつ誘電損失が低い。また、モバイルセルフォンのフレキシブル銅張積層板(FCCL)に用いられているポリイミド(PI)フィルムは、4G/5G高速通信のニーズを満たすことはできず、PIフィルムがLCPフィルムに取って代わられる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第6043310号明細書
【文献】中国特許第101423599B号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のLCP材料は、均一性の高い分子配列を有することから、フィルム押出しおよびフィルムブロー成形のプロセス時に、MD方向とTD方向の結晶化度の差が生じ易い。このため、MD方向におけるLCPフィルムの強度は高く、LCDフィルムはTD方向に亀裂が入り易くなり得る。したがって、LCPフィルムを作製するための熱処理には、高度な設備および技術が要される。よって、溶液タイプかつフィルム級のLCPがFCCL製品に適用されるようにするために、新規な可溶性LCP組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1実施形態は、下記の繰り返し単位:10mol%から35mol%の(1);10mol%から35mol%の(2);10mol%から50mol%の(3);および10mol%から40mol%の(4a)、10mol%から40mol%の(4b)またはこれらの組み合わせより構成される液晶ポリマーを提供する。
【0008】
【0009】
AR
1、AR
2、AR
3、およびAR
4の各々は独立にAR
5またはAR
5-Z-AR
6であり、このうちAR
5およびAR
6の各々は独立に
【化2】
またはこれらの組み合わせであり、かつZは
【化3】
またはC
1-5アルキレン基である。XおよびYの各々は独立にH、C
1-5アルキル基、CF
3、または
【化4】
であり、R
2はH、CH
3、CH(CH
3)
2、C(CH
3)
3、CF
3、OCH
3、または
【化5】
であり、n=1から4であり、かつR
1はC
1-5アルキレン基である。
【0010】
本開示の1実施形態は、支持体と、支持体上に配置された液晶ポリマーフィルムと、を含む積層材であって、該液晶ポリマーフィルムが上記液晶ポリマーを含む、積層材を提供する。
【0011】
本開示の1実施形態は、100重量部の溶媒と、0.01から100重量部の上記液晶ポリマーと、を含む液晶ポリマー溶液を提供する。
【0012】
本開示の1実施形態は、上記液晶ポリマー溶液を支持体上に塗布する工程と、溶媒を除去して支持体上に液晶ポリマーフィルムを形成する工程と、を含む液晶ポリマーフィルムの形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
適した含有比の下記(4a)、(4b)またはこれらの組み合わせを液晶ポリマー中に導入して、適した含有比の下記(1)、(2)、および(3)と組み合わせることにより、液晶ポリマーの溶解度が効果的に高まり、液晶ポリマーの熱的性質(例えば熱分解温度(Td)、ガラス転移温度(Tg)、および融点(Tm))が向上し、液晶ポリマーフィルムの誘電率が低下し、かつ液晶ポリマーフィルムの誘電損失が低減される。
【0014】
【0015】
以下の実施形態において詳細な説明を行う。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な記載においては、説明の目的で、開示された実施形態が十分に理解されるように多数の特定の詳細が述べられる。しかし、これら特定の詳細が無くとも1つまたはそれ以上の実施形態が実施可能であるということは明らかであろう。
【0017】
本開示の1実施形態は、下記の繰り返し単位:10mol%から35mol%の(1);10mol%から35mol%の(2);10mol%から50mol%の(3);および10mol%から40mol%の(4a)、10mol%から40mol%の(4b)、またはこれらの組み合わせより構成される液晶ポリマーを提供する。
【0018】
【0019】
式中、AR
1、AR
2、AR
3、およびAR
4の各々は独立にAR
5またはAR
5-Z-AR
6であり、このうちAR
5およびAR
6の各々は独立に
【化8】
またはこれらの組み合わせであり、かつZは、
【化9】
またはC
1-5アルキレン基であり、XおよびYの各々は独立にH、C
1-5アルキル基、CF
3、または
【化10】
である。R
2はH、CH
3、CH(CH
3)
2、C(CH
3)
3、CF
3、OCH
3、または
【化11】
であり、n=1から4である。R
1はC
1-5アルキレン基である。例えば、
【化12】
を反応させて液晶ポリマーを形成することができる。また、
【化13】
を反応させて液晶ポリマーを形成することができる。あるいは、
【化14】
を反応させて液晶ポリマーを形成することができる。
【化15】
とのモル比は1:1である。
【化16】
とのモル比が1より大きいかまたは1より小さいと、過多の
【化17】
が、反応により共重合することができない。
【0020】
液晶ポリマーにおいて、
【化18】
の含有率が低すぎると、液晶ポリマーの結晶化度が低下し得る。
【化19】
の含有率が低すぎると、液晶ポリマーの溶解度が低下し得る。
【化20】
の含有率が高すぎると、液晶ポリマーの溶解度が低下し得る。
【化21】
の含有率が高すぎると、液晶ポリマーの結晶化度が低下し得る。
【化22】
の含有率が低すぎると、液晶ポリマーの溶解度が低下し得る。
【化23】
の含有率が高すぎると、液晶ポリマーの結晶化度が低下し得る。
【化24】
の含有量が低すぎると、液晶ポリマーの結晶化度が低下し得る。
【化25】
の含有量が高すぎると、液晶ポリマーの溶解度が低下し得る。
【化26】
またはこれらの組み合わせ、例えば
【化27】
の含有量が低すぎると、液晶ポリマーの溶解度が低下し得る。
【化28】
またはこれらの組み合わせ、例えば
【化29】
の含有率が高すぎると、液晶ポリマーの誘電特性が低下し得るか、液晶ポリマーの結晶化度が低下し得るか、または液晶ポリマーがうまく重合できない。
【0021】
いくつかの実施形態において、
【化30】
またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、
【化31】
いくつかの実施形態において、
【化32】
またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、
【化33】
いくつかの実施形態において、
【化34】
【0022】
いくつかの実施形態において、液晶ポリマーは、下記の繰り返し単位:15mol%から35mol%の(1);15mol%から35mol%の(2);15mol%から35mol%の(3);および10mol%から40mol%の(4a)、10mol%から40mol%の(4b)またはこれらの組み合わせより構成される。
【0023】
【0024】
AR1、AR2、AR3、およびAR4の定義は上述と同様であり、ここで関連の説明は繰り返さない。
【0025】
いくつかの実施形態において、液晶ポリマーの重量平均分子量(Mw)は1,000g/molから1,000,000g/molである。液晶ポリマーのMwが低すぎると、液晶ポリマーの成膜性が低下し得る。液晶ポリマーのMwが高すぎると、液晶ポリマーの溶解度が低下し得る。
【0026】
本開示の液晶ポリマーの製造方法に特に制限はない。例えば、水酸基含有モノマーまたはアミン含有モノマーを先ず過剰量の無水脂肪酸と反応させてアシル化を進行させ、アシル化化合物を形成する。そのアシル化化合物をカルボン酸含有モノマーと反応させてエステル交換を進行させ、液晶ポリマーを形成する。あるいは、事前にアシル化させた(pre-acylated)アシル化化合物をカルボン酸含有モノマーと反応させてエステル交換を進行させ、液晶ポリマーを形成することができる。
【0027】
アシル化における無水脂肪酸の含有量は、水酸基およびアミン基の当量の合計の1.0から1.2倍であり得る。アシル化は、130℃から180℃で5分から10時間、例えば140℃から160℃で10分から3時間進行させることができる。
【0028】
本開示におけるアシル化に用いる無水脂肪酸に特に制限はなく、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ブタン酸、無水イソブタン酸(isobutanoic anhydride)、ペンタン酸、無水トリメチル酢酸、無水2-エチルヘキサン酸、無水モノクロロ酢酸、無水ジクロロ酢酸、無水トリクロロ酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、グルタル酸無水物、無水マレイン酸、無水コハク酸、β-ブロモプロピオン酸無水物(β-bromopropionic anhydride)、類似のもの、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。いくつかの実施形態において、無水脂肪酸は、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ブタン酸、または無水イソブタン酸であり得る。
【0029】
アシル化およびエステル交換に触媒を加えることができる。触媒は、ポリエステルの重合に用いられる既知の触媒、例えば金属塩触媒(例として酢酸マグネシウム、酢酸スズ、チタン酸テトラブチル、酢酸鉛、酢酸カリウム、三酸化アンチモン、もしくは類似のもの)、または少なくとも2つの窒素原子を有する複素環化合物(例としてN,N‘-ジメチルアミノピリジン、N-メチルイミダゾール、ピラゾール、もしくは類似のもの)のような有機触媒であってよい。
【0030】
アシル化反応およびエステル交換反応に添加剤を加えることができ、当該分野において周知である具体的な添加剤には、結合剤、沈殿防止剤、UV吸収剤、熱安定剤、抗酸化剤、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0031】
芳香族液晶ポリマーは、バッチ型設備、連続型設備または類似の設備により製造することができる。
【0032】
液晶ポリマーを溶媒中に溶解させて液晶ポリマー溶液を形成することができる。溶媒と液晶ポリマーとの重量比は100:0.01から100:100であってよい。例えば、液晶ポリマー溶液は、100重量部の溶媒と0.01から100重量部の液晶ポリマーとを含むものとしてよい。1実施形態において、液晶ポリマー溶液は、100重量部の溶媒と1から70重量部の液晶ポリマーとを含む。あるいは、液晶ポリマー溶液は、100重量部の溶媒と1から10重量部の液晶ポリマーとを含む。液晶ポリマーの量が少なすぎると、塗布されるフィルムを比較的厚い厚さとすることができない。液晶ポリマーの量が多すぎると、溶液の粘度が高くなりすぎて塗布することができなくなる。液晶ポリマーは上述と類似するものであるため、関連する記載をここでは繰り返さない。例えば、溶媒は、ハロゲン含有溶媒(例えば1-クロロブタン、クロロベンゼン、1,1-ジクロロエタン、クロロホルム、もしくは1,1,2,2-テトラクロロエタン)、エーテル溶媒(例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、もしくは1,4-ジオキソラン)、ケトン溶媒(例えばアセトンもしくはシクロヘキサノン)、エステル溶媒(例えば酢酸エチル)、ラクトン溶媒(例えばアクリル酸ブチル)、カーボネート溶媒(例えばビニルカーボネートもしくはアクリルカーボネート(acrylic carbonate))、アミン溶媒(例えばトリエチルアミンもしくはピリジン)、ニトリル溶媒(例えばアセトニトリル)、アミド溶媒(例えばN,N’-ジメチルホルミアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、もしくはN-メチルピロリドン)、ニトロ溶媒(例えばニトロメタンもしくはニトロベンゼン)、スルフィド溶媒(例えばジメチルスルホキシドもしくはブタンジスルホン)、ホスフィド(phosphide)溶媒(ヘキサメチルりん酸トリアミドもしくはトリ-n-ブチルホスフィド)、パラフィン、オレフィン、アルコール、アルデヒド、芳香族炭化水素、テルペン、水素添加炭化水素、複素環化合物、またはこれらの組み合わせであってよい。液晶ポリマー溶液は別の樹脂をさらに含んでいてよい。例えば、液晶ポリマーではない少なくとも1つの樹脂を液状組成物に加えることができる。樹脂には、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が含まれ得る。熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル(例えば、非液晶ポリアリレート)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、エラストマー(代表的には、メタクリル酸グリシジルとポリエチレンとの共重合体)、またはその変性物であってよい。熱硬化性樹脂は、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、またはシアネート樹脂であり得る。加えて、他の溶媒を用いるときは、液晶ポリマーに用いる溶媒中に他の樹脂を溶解させることができる。加えて、液晶ポリマー溶液は、寸法安定性、機械特性、熱伝導性、誘電性、熱安定性、光安定性、抗エイジング特性、被覆性および成膜性を高めるために別の添加剤をさらに含んでいてよい。添加剤には、無機フィラー(例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、含水ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、もしくは水酸化アルミニウム)、有機フィラー(例えばエポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ポリウレア樹脂粉末、ベンゾメラミンホルムアルデヒド(benzomelamine formaldehyde)樹脂粉末、スチレン樹脂粉末、フッ素樹脂粉末、もしくはフッ素樹脂分散液)、抗酸化剤、UV吸収剤、熱安定剤、光安定剤、抗エイジング剤、強化剤、鎖延長剤、可塑剤、架橋剤、塗料インクに用いる添加剤(例えば消泡剤、レベリング剤、湿潤および分散剤、増粘剤、チキソトロピー調整剤、接着促進剤、もしくはカップリング剤)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0033】
液晶ポリマーフィルムは下記の方法で作製することができる。先ず、上述した液晶ポリマー溶液を支持体上に平坦かつ均一となるよう塗布する。塗布方法は、任意の適した方法、例えばロールコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンオンコーティング、カーテン塗布、スロットコーティング、またはスクリーンコーティングとすることができる。支持体は、銅箔、ガラス、アルミニウム箔、またはその他の適した支持体であってよい。液晶ポリマー溶液を塗布した後、溶媒を除去して、支持体上に液晶ポリマーフィルムを形成する。次いで、エッチングまたは剥離のような方法により、(用途による必要に応じて)支持体を選択的に除去することができる。
【0034】
溶媒を除去する方法は、特に限定されず、蒸発とすることができる。溶媒を、加熱、減圧、通風、または類似の方式により蒸発させることができる。上記方法中、加熱蒸発は高収率および操作が容易という点で有利である。また、コーティングを通風下で加熱して、溶媒を蒸発させることもできる。例えば、60℃から200℃の通風下で約10分から2時間乾燥させてコーティングを予熱してから、通風下200℃から400℃で約30分から10時間加熱することができる。
【0035】
上記方法により作製された液晶ポリマーフィルムの厚さは限定されず、1マイクロメーターから100マイクロメーターであってよい。
【0036】
本開示の1実施形態は、支持体と、該支持体上の液晶ポリマーフィルムとを含む積層材を提供する。支持体は、銅箔、ガラス、アルミニウム箔、またはその他の適した支持体であってよい。いくつかの実施形態において、積層材は、銅箔と、該銅箔上の液晶ポリマーフィルムとを含む。支持体(例えば銅箔)と液晶ポリマーフィルムとの間に接着層をさらに配置して、支持体(例えば銅箔)と液晶ポリマーフィルム間の接着を強化するようにしてもよい。積層材をプリント回路基板に用いる場合、優れた電気特性を有するいくつかの接着剤(例えばフッ素樹脂)を導入して、プリント回路基板の伝送損失を低減することができる。積層材をさらに両面銅箔の積層材に製造することができる。例えば、片面銅箔の積層材を互いに貼り合わせ、熱圧着して両面銅箔の積層材を形成することができ、この積層材において、中間層の液晶ポリマーフィルムが上層の銅箔と下層の銅箔との間に挟まれる。
【0037】
適した含有比の下記(4a)、(4b)またはこれらの組み合わせを液晶ポリマー中に導入して、適した含有比の下記(1)、(2)、および(3)と組み合わせることにより、液晶ポリマーの溶解度が有効に高まり、液晶ポリマーの熱的性質(例えば熱分解温度(Td)、ガラス転移温度(Tg)、および融点(Tm))が向上し、液晶ポリマーフィルムの誘電率が低下し、かつ液晶ポリマーフィルムの誘電損失が低下する。
【0038】
【0039】
以下に、当該分野において通常の知識を持つ者が容易に理解できるよう、例示的な実施例を詳細に記載する。本発明概念は、ここに記載される例示的な実施例に限定されることなく、様々な形式で具体化され得る。明確とするために、周知の部分についての説明は省く。
【実施例】
【0040】
比較例1
4-アミノフェノール81.75g(0.75mole)、4-ヒドロキシ安息香酸155.25g(1.125mole)、6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸70.5g(0.375mole)、イソフタル酸124.5g(0.75mole)、および無水酢酸306g(3.0mole)を混合してから150℃に加熱し、窒素下にて150℃で3時間反応させ、次いで320℃まで加熱し、320℃で1時間反応させた。続いて、温度を320℃に保ち、反応が理想的な粘度に達するまで、徐々に圧力を真空にした。次いで、窒素を用いて真空を破壊し、窒素の圧力により生成物を押し出した。生成物の重量平均分子量(Mw)は4,183g/molであった(ゲル浸透クロマトグラフィー,GPCで測定)。生成物の熱分解温度(Td)は398℃であった(熱重量分析,TGAにより測定)。生成物をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に溶解させて、固形分8wt%の溶液を作った。その溶液を銅箔上に塗布して乾燥させてから、200℃から300℃で熱処理して、銅箔に付着した液晶ポリエステルフィルム(厚さ25マイクロメーター)を得た。次いで、銅箔をエッチング液で除去し、単独の液晶ポリエステルフィルムを得た。示差走査熱量測定(DSC)により測定した液晶ポリエステルフィルムのガラス転移温度(Tg)は180℃、融点(Tm)は293℃であった。空洞共振法により10GHzで測定したフィルムの誘電率(Dk)は3.78、誘電損失(Df)は0.009であった。
【0041】
上述の反応において、4-アミノフェノールの化学構造は
【化37】
であり、4-ヒドロキシ安息香酸の化学構造は
【化38】
であり、6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸の化学構造は
【化39】
であり、イソフタル酸の化学構造は
【化40】
【0042】
実施例1
4-ヒドロキシ安息香酸51.75g(0.375mole)、6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸70.5g(0.375mole)、イソフタル酸124.5g(0.75mole)、4-アミノ安息香酸102.75g(0.75mole)、ヒドロキノン82.5g(0.75mole)、および無水酢酸306g(3.0mole)を混合してから150℃に加熱し、窒素下にて150℃で3時間反応させ、次いで320℃まで加熱し、320℃で1時間反応させた。続いて、温度を320℃に保ち、反応が理想的な粘度に達するまで、徐々に圧力を真空にした。次いで、窒素を用いて真空を破壊し、窒素の圧力により生成物を押し出した。生成物のMwは13,997g/molであった(GPCで測定)。生成物のTdは455℃であった(TGAにより測定)。生成物をNMP中に溶解させて、固形分8wt%の溶液を作った。その溶液を銅箔上に塗布して乾燥させてから、200℃から300℃で熱処理して、銅箔に付着した液晶ポリマーフィルム(厚さ25マイクロメーター)を得た。次いで、銅箔をエッチング液で除去し、単独の液晶ポリマーフィルムを得た。DSCにより測定した液晶ポリマーフィルムのTgは173℃であった。空洞共振法により10GHzで測定したフィルムのDkは3.58、Dfは0.0076であった。
【0043】
上述の反応において、4-アミノ安息香酸の化学構造は
【化41】
であり、ヒドロキノンの化学構造は
【化42】
【0044】
実施例2
4-ヒドロキシ安息香酸48.3g(0.35mole)、6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸65.8g(0.35mole)、イソフタル酸116.2g(0.7mole)、4-アミノ安息香酸95.9g(0.7mole)、4,4’-ビフェノール130.2g(0.7mole)、および無水酢酸286g(2.8mole)を混合してから150℃に加熱し、窒素下にて150℃で3時間反応させ、次いで320℃まで加熱し、320℃で1時間反応させた。続いて、温度を320℃に保ち、反応が理想的な粘度に達するまで、徐々に圧力を真空にした。次いで、窒素を用いて真空を破壊し、窒素の圧力により生成物を押し出した。生成物のMwは84,878g/molであった(GPCで測定)。生成物のTdは469℃であった(TGAにより測定)。生成物をNMP中に溶解させて、固形分8wt%の溶液を作った。その溶液を銅箔上に塗布して乾燥させてから、200℃から300℃で熱処理して、銅箔に付着した液晶ポリマーフィルム(厚さ25マイクロメーター)を得た。次いで、銅箔をエッチング液で除去し、単独の液晶ポリマーフィルムを得た。DSCにより測定した液晶ポリマーフィルムのTgは181℃、Tmは296℃であった。空洞共振法により10GHzで測定したフィルムのDkは3.59、Dfは0.007であった。
【0045】
上述の反応において、4,4’-ビフェノールの化学構造は
【化43】
【0046】
実施例3
6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸131.6g(0.7mole)、イソフタル酸116.2g(0.7mole)、4-アミノ安息香酸95.9g(0.7mole)、4,4’-ビフェノール130.2g(0.7mole)、および無水酢酸286g(2.8mole)を混合してから150℃に加熱し、窒素下にて150℃で3時間反応させ、次いで320℃まで加熱し、320℃で1時間反応させた。続いて、温度を320℃に保ち、反応が理想的な粘度に達するまで、徐々に圧力を真空にした。次いで、窒素を用いて真空を破壊し、窒素の圧力により生成物を押し出した。生成物のMwは16,841g/molであった(GPCで測定)。生成物のTdは457℃であった(TGAにより測定)。生成物をNMP中に溶解させて、固形分8wt%の溶液を作った。その溶液を銅箔上に塗布して乾燥させてから、200℃から300℃で熱処理して、銅箔に付着した液晶ポリマーフィルム(厚さ25マイクロメーター)を得た。次いで、銅箔をエッチング液で除去し、単独の液晶ポリマーフィルムを得た。DSCにより測定した液晶ポリマーフィルムのTgは183℃、Tmは315℃であった。空洞共振法により10GHzで測定したフィルムのDkは3.58、Dfは0.0042であった。比較例1と実施例1~3との比較からわかるように、4-アミノ安息香酸を導入して形成された液晶ポリマーは、熱安定性により優れ、かつ誘電率および誘電損失がより低かった。
【0047】
比較例2
6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸237g(1.26mole)、イソフタル酸116g(0.7mole)、4-アミノ安息香酸20g(0.14mole)、4,4’-ビフェノール130g(0.7mole)、および無水酢酸286g(2.8mole)を混合してから150℃に加熱し、窒素下にて150℃で3時間反応させ、次いで320℃まで加熱し、320℃で1時間反応させた。続いて、温度を320℃に保ち、反応が理想的な粘度に達するまで、徐々に圧力を真空にした。次いで、窒素を用いて真空を破壊し、窒素の圧力により生成物を押し出した。生成物のTgは456℃であった(TGAで測定)。生成物はNMPに溶解せず溶液を形成することができなかったため、生成物をフィルムとして塗布できず、GPCで分析することができなかった。
【0048】
比較例3
6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸26g(0.14mole)、イソフタル酸116g(0.7mole)、4-アミノ安息香酸173g(1.26mole)、4,4’-ビフェノール130g(0.7mole)、および無水酢酸286g(2.8mole)を混合してから150℃に加熱し、窒素下にて150℃で3時間反応させ、次いで320℃まで加熱し、320℃で1時間反応させた。続いて、温度を320℃に保ち、徐々に圧力を真空にした。反応時に生成物は析出し、反応を継続させることができず、生成物をスムーズに産出することができなかった。
【0049】
実施例4
6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸131.6g(0.7mole)、イソフタル酸116g(0.7mole)、4-(アミノメチル)安息香酸106g(0.7mole)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン175g(0.5mole)、4,4’-ビフェノール37.2g(0.2mole)、および無水酢酸286g(2.8mole)を混合してから150℃に加熱し、窒素下にて150℃で3時間反応させ、次いで320℃まで加熱し、320℃で1時間反応させた。続いて、温度を320℃に保ち、反応が理想的な粘度に達するまで、徐々に圧力を真空にした。次いで、窒素を用いて真空を破壊し、窒素の圧力により生成物を押し出した。生成物のMwは5728g/molであった(GPCで測定)。生成物のTdは358℃であった(TGAにより測定)。生成物をNMP中に溶解させて、固形分40wt%の溶液を作った。このように、4-(アミノメチル)安息香酸を導入することで溶解度の高い液晶ポリマーを形成することができ、これは、比較的厚い液晶ポリマーフィルムを製造するのに有利である。上述の反応において、4-(アミノメチル)安息香酸の化学構造は
【化44】
であり、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンの化学構造は
【化45】
【0050】
開示された方法および材料に各種修飾および変更を加え得ることは、当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は単に例示と見なされるよう意図されており、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示される。