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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/593 20210101AFI20220829BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20220829BHJP
   H01M 50/564 20210101ALI20220829BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20220829BHJP
【FI】
H01M50/593
B29C45/14
H01M50/564
H01M50/588
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020151695
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2022045932
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
(72)【発明者】
【氏名】朝立 英樹
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-277579(JP,A)
【文献】特開平06-031772(JP,A)
【文献】特開平04-239614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/593
B29C 45/14
H01M 50/564
H01M 50/588
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子のうち、四角柱状である樹脂切り部の外周を閉塞することで、前記端子の所定部位の周囲に樹脂の注入空間を形成する空間形成工程と、
前記注入空間に樹脂を注入することで、前記端子に樹脂部品を射出成形する射出成形工程と、を含み、
前記空間形成工程は、
前記樹脂切り部における4つの外周面のうち、互いに平行に延びる一対の第1外周面の間を押圧することで、前記一対の第1外周面の間の距離を所定距離とする定寸押圧工程と、
前記樹脂切り部における4つの外周面のうち、前記一対の第1外周面に対して交差する方向に延びる一対の第2外周面の間を、所定の圧力で押圧する定圧押圧工程と、
を含むことを特徴とする、二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記端子の前記樹脂切り部のうち、前記一対の第1外周面の間の距離は、前記一対の第2外周面の間の距離よりも短いことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記定圧押圧工程を実行するために前記第2外周面に押圧される定圧押圧部材のうち、前記第2外周面との接触部分の、前記第1外周面に垂直な方向の厚みをTとし、前記定寸押圧工程が行われた状態の前記一対の第1外周面の間の距離をDAとした場合に、0≦(DA-T)≦50μmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の二次電池の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、パソコンや携帯端末等のポータブル電源、あるいはEV(電気自動車)、HV(ハイブリッド自動車)、PHV(プラグインハイブリッド自動車)等の車両駆動用電源として広く用いられている。二次電池では、電池ケースの内部に収容された発電要素を外部に電気的に接続するための端子が用いられる。例えば、端子と電池ケースの間の絶縁を確保する等の目的で、端子の所定部位に樹脂部品が設けられる場合がある。
【0003】
端子の所定部位に樹脂部品を設置するための方法の1つとして、射出成形を利用する方法が考えられる。射出成形とは、加熱溶融させた樹脂材料を金型内に射出注入した後、樹脂材料を冷却して固化させることで、成形品を得る方法である。射出成形を利用する場合、樹脂材料が、注入された空間から外部に漏れてしまうと、電池性能の低下等を引き起こす可能性がある。例えば、特許文献1に記載の光モジュールの製造方法では、キャビティ部から樹脂が流出することを防止するために、キャビティ部と整列部の間に樹脂切り板が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-239614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
端子のうち四角柱状の部分を、樹脂切りを行う樹脂切り部とする場合、金型に形成された矩形の孔に樹脂切り部が隙間なく嵌まり込む必要がある。しかし、樹脂切り部の形状を高い精度で形成することは困難な場合が多く、形成された複数の樹脂切り部の寸法には差が生じやすい。
【0006】
ここで、樹脂切り部を、第1方向と、第1方向に交差する第2方向とで別々に押圧することで、樹脂切り部における樹脂切りを行うことができれば、樹脂切り部の寸法のばらつきを許容できると考えられる。しかし、第1方向・第2方向ともに定圧で押圧して隙間を埋めようとすると、寸法のばらつきの影響で、第1方向に押圧する部材と第2方向に押圧する部材の間に隙間が生じてしまい、樹脂切りが適切に実行されない場合がある。また、第1方向・第2方向ともに定寸で単純に押圧すると、樹脂切り部の寸法のばらつきが吸収されない可能性、および、樹脂切り部に過度な変形・破損等が生じる可能性がある。
【0007】
本発明の典型的な目的は、端子の所定部位に樹脂材料を適切に形成することが可能な二次電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示される一態様の二次電池の製造方法は、端子のうち、四角柱状である樹脂切り部の外周を閉塞することで、上記端子の所定部位の周囲に樹脂の注入空間を形成する空間形成工程と、上記注入空間に樹脂を注入することで、上記端子に樹脂部品を射出成形する射出成形工程と、を含み、上記空間形成工程は、上記樹脂切り部における4つの外周面のうち、互いに平行に延びる一対の第1外周面の間を押圧することで、上記一対の第1外周面の間の距離を所定距離とする定寸押圧工程と、上記樹脂切り部における4つの外周面のうち、上記一対の第1外周面に対して交差する方向に延びる一対の第2外周面の間を、所定の圧力で押圧する定圧押圧工程と、を含む。
【0009】
本開示に係る二次電池の製造方法では、空間形成工程において、四角柱状である樹脂切り部の外周面のうち、一対の第1外周面が定寸で押圧され、一対の第2外周面が定圧で押圧される。従って、両方向とも定圧で押圧する場合とは異なり、2つの押圧部材の間に隙間が生じにくい。また、両方向とも定寸で単純に押圧する場合に比べて、端子の過度な変形および破損等が生じにくい。よって、端子の所定部位に樹脂材料が適切に形成される。
【0010】
ここに開示される二次電池の製造方法の効果的な一態様では、端子の樹脂切り部のうち、一対の第1外周面の間の距離は、一対の第2外周面の間の距離よりも短い。一対の第1外周面間の距離が、一対の第2外周面間の距離よりも小さい端子を形成する場合、第1外周面間の寸法のばらつきは、第2外周面間の寸法のばらつきよりも構造上小さくなり易い。従って、寸法のばらつきが小さい第1外周面間を定寸で押圧することで、端子の過度な変形等が抑制された状態で適切に射出成形が行われる。
【0011】
端子は、板材を厚み方向に切断する工程を経て形成されていてもよい。端子における樹脂切り部の一対の第1外周面は、切断される前の板材の一対の板面の一部であってもよい。板材の厚みのばらつきを小さくすることは、切断寸法のばらつきを小さくするよりも容易である。従って、板材の板面を、樹脂切り部の第1外周面とすることで、一対の第1外周面間の距離のばらつきを適切に抑制することができる。
【0012】
ここに開示される二次電池の製造方法の効果的な一態様では、定圧押圧工程を実行するために第2外周面に押圧される定圧押圧部材のうち、第2外周面との接触部分の、第1外周面に垂直な方向の厚みをTとし、定寸押圧工程が行われた状態の一対の第1外周面の間の距離をDAとした場合に、0≦(DA-T)≦50μmである。この場合、2つの押圧部材の間に仮に隙間が生じたとしても、隙間の寸法は50μm以下となる。隙間の寸法が50μm以下であれば、樹脂は隙間から流出し難い。よって、樹脂材料が適切に端子に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】射出成形機1を右斜め上方から見た斜視図である。
図2図1におけるA-A線矢視方向断面図である。
図3図2におけるB-B線矢視方向断面図である。
図4図3における定寸押圧部材20を定圧押圧部材99に置き換えた場合の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0015】
図1は、射出成形機1を右斜め上方から見た斜視図である。図1における紙面上側を射出成形機1および端子10の上側とし、紙面下側を射出成形機1および端子10の下側とする。図1における紙面右手前側を射出成形機1および端子10の右側とし、紙面左奥側を射出成形機1および端子10の左側とする。図1における紙面左手前側を射出成形機1および端子10の前側とし、紙面右奥側を射出成形機1および端子10の後側とする。図2は、図1におけるA-A線矢視方向断面図である。従って、図2における紙面上下方向が射出成形機1および端子10の上下方向となり、紙面左右方向が射出成形機1および端子10の左右方向となる。図3は、図2におけるB-B線矢視方向断面図である。従って、図3における紙面上下方向が射出成形機1および端子10の前後方向となり、紙面左右方向が射出成形機1および端子10の左右方向となる。
【0016】
(端子)
まず、本実施形態の製造方法によって製造される二次電池の端子10について説明する。端子10は、二次電池の電池ケース内に収容された発電要素を、電気的に外部に接続する。図2に示すように、端子10は、上下方向を長手方向とする略板状の部材である。端子10は、外部露出部11および被収容部12を備える。外部露出部11は、電池ケースの外部に露出される。被収容部12は、電池ケースの内部に収容される。外部露出部11の左右方向の幅は、被収容部12の左右方向の幅よりも長い。図1に示すように、外部露出部11の上端部は前方(正面側)に向けて屈曲されている。
【0017】
図2に示すように、端子10のうち、外部露出部11と被収容部12の間に位置する四角柱状の部位は、後述する射出成形の際に樹脂漏れが遮断される樹脂切り部13となる。端子10が射出成形機1に装着され、樹脂切り部13の外周が閉塞されると、端子10の所定部位(本実施形態では、樹脂切り部13の上方)の周囲に、樹脂の注入空間Sが形成される。注入空間Sに樹脂が注入された後、固化されることで、所定部位に樹脂部品が射出成形される。形成された樹脂部品は、端子10と電池ケースを絶縁する。
【0018】
図3に示すように、四角柱状である樹脂切り部13の4つの外周面のうち、前方および後方を向き、且つ互いに並行に延びる一対の面を、第1外周面14Aとする。また、樹脂切り部13の4つの外周面のうち、第1外周面14Aに対して交差する方向に延びる(つまり、図3における左方および右方を向く)一対の面を、第2外周面14Bとする。本実施形態では、樹脂切り部13における一対の第1外周面14Aの間の距離DAは、一対の第2外周面14Bの間の距離DBよりも短い。この詳細については後述する。
【0019】
本実施形態の端子10のうち、少なくとも樹脂切り部13を含む部分は、厚みが均一な板材を厚み方向に切断する工程を経て形成される。板材の厚み方向は、端子10の前後方向に一致する。従って、端子10における樹脂切り部13の一対の第1外周面14Aは、切断される前の板材の一対の板面の一部である。換言すると、一対の第1外周面14Aの間の距離DAは、切断される前の板材の厚みに一致する。板材の厚みのばらつきを小さくすることは、板材の切断寸法のばらつきを小さくすることよりも容易である。従って、一対の第1外周面14Aの間の距離DAのばらつきは、適切に抑制されている。
【0020】
なお、二次電池の正極端子および負極端子の少なくとも一方が、本開示に係る製造方法によって製造されればよい。端子10を形成する材質は、種々の条件(例えば、正極端子および負極端子のいずれであるか等)に応じて適宜選択される。例えば、端子10のうち、外部露出部11の材質と被収容部12の材質が異なっていてもよい。この場合、射出成形される樹脂部品は、端子10における外部露出部11と被収容部12を固定する固定部を兼ねてもよい。端子10の材質には、例えば、アルミニウムおよび銅等の少なくともいずれかの金属を採用できる。
【0021】
(射出成形機)
本実施形態の二次電池の製造工程で使用される射出成形機1について説明する。図1に示すように、本実施形態の射出成形機1は、右基部2、左基部3、定寸押圧部材20、第1固定部材30(図3参照)、定圧押圧部材40、および第2固定部材50を備える。さらに、射出成形機1は、射出成形時に端子10の上部を覆う蓋部材(図示せず)を備えている。右基部2は、樹脂部材が射出成形される端子10の右側に配置される。右基部2には、定圧押圧部材40が設けられている。左基部3は、端子10の左側に配置される。左基部3には、第2固定部材50(詳細は後述する)が設けられている。
【0022】
定寸押圧部材20は、右基部2と左基部3の間であり、且つ端子10の前側に、前後方向に移動可能に配置される。また、第1固定部材30(図3参照)は、端子10の後側に配置されている。定寸押圧部材20は、前方に移動することで、第1固定部材30との間で端子10を押圧する。詳細には、図3に示すように、定寸押圧部材20は、端子10の樹脂切り部13における一対の第1外周面14Aの間を押圧することで、一対の第1外周面14Aの間の距離DAを所定距離とする。
【0023】
定寸押圧部材20を前後方向に移動させる移動機構の一例について説明する。図1に示すように本実施形態の定寸押圧部材20の上部には、前後方向に対して斜めに傾斜した傾斜部21が形成されている。定寸押圧部材20と第1固定部材30の間に端子10が配置された状態で、端子10の上部を覆う蓋部材(図示せず)が上方から装着されると、蓋部材から下方に突出する作動片(図示せず)が、定寸押圧部材20の傾斜部21に摺動する。その結果、作動片が下方に押し込まれるに従って、定寸押圧部材20が所定の位置まで後方に移動する。従って、本実施形態の定寸押圧部材20の移動機構は、シリンダー等を用いる場合とは異なり、樹脂を溶融する際の熱の影響を受けにくい。さらに、本実施形態の定寸押圧部材20の移動機構によると、端子10の第1外周面14Aの間を高い精度で定寸押圧することが可能である。ただし、定寸押圧部材20の移動機構を変更してもよい。例えば、モータ等のアクチュエータが移動機構に使用されてもよい。
【0024】
定圧押圧部材40は、接触部41と駆動部42を備える。接触部41の先端面(本実施形態では左端の平面)は、端子10の樹脂切り部13における右側の第2外周面14B(図3参照)に接触する。また、第2固定部材50は、樹脂切り部13における左側の第2外周面14Bに接触する。
【0025】
本実施形態の接触部41は、剛性を有する板状の部材である。図3に示すように、定圧押圧部材40の接触部41のうち、端子10の第2外周面14Bとの接触部分(つまり、先端部分)の、第1外周面14Aに垂直な方向の厚み(本実施形態では前後方向の厚み)を、Tとする。また、前述のように、端子10における一対の第1外周面14Aの間の距離を、DAとする。この場合、0≦(DA-T)≦50μmとなるように、各部材が形成されている。この効果については後述する。
【0026】
駆動部42は、接触部41を左右方向に移動させるアクチュエータである。詳細には、駆動部42は、端子10の樹脂切り部13における一対の第2外周面14Bの間を、所定の圧力(定圧)で押圧するように、接触部41を左方に押し込む。なお、本実施形態の駆動部42は、射出成形の完了後に端子10を押し出すエジェクタ機構を兼ねている。
【0027】
(製造工程)
本実施形態における二次電池(詳細には端子10)の製造工程について説明する。本実施形態における端子10の製造工程は、空間形成工程と射出成形工程を含む。空間形成工程では、端子10における四角柱状の樹脂切り部13の外周が閉塞されることで、端子10の所定部位の周囲に、樹脂の注入空間S(図2参照)が形成される。詳細には、空間形成工程は、定寸押圧工程と、定圧押圧工程とを含む。
【0028】
定寸押圧工程では、樹脂切り部13における一対の第1外周面14Aの間が押圧されることで、一対の第1外周面14Aの間の距離DAが所定距離とされる。その結果、前側の第1外周面14Aと定寸押圧部材20の間の隙間、および、後側の第1外周面14Aと第1固定部材30の間の隙間が閉塞される。なお、一対の第1外周面14Aには、定寸押圧部材20による大きな押圧力が加わることで、圧着痕が残り易い。
【0029】
定圧押圧工程では、樹脂切り部13における一対の第2外周面14Bの間が、所定の圧力で押圧される。その結果、右側の第2外周面14Bと定圧押圧部材40(接触部41)の間の隙間、および、左側の第2外周面14Bと第2固定部材50の間の隙間が閉塞される。
【0030】
射出成形工程では、加熱溶融された樹脂が、注入空間Sに射出注入される。その後、注入された樹脂が冷却されて固化される。その結果、端子10の所定部位に樹脂部品が形成される。なお、本実施形態では、注入空間Sに樹脂を射出注入する方向は、定圧押圧部材40による樹脂切り部13の押圧方向(本実施形態では左右方向)に対して垂直な方向(本実施形態では下方)となっている。従って、樹脂が注入空間Sに射出注入される際の圧力は、定圧押圧部材40による樹脂切り部13の押圧に影響を与えにくい。一例として、本実施形態で使用される樹脂はPPE(ポニフェニレンエーテル)であるが、樹脂の材質を変更することも可能である。定寸押圧部材20および定圧押圧部材40による押圧が解除されることで、端子10の製造工程は終了する。
【0031】
なお、本実施形態の空間形成工程では、定寸押圧工程が実行された後に、定圧押圧工程が実行される。しかし、定圧押圧工程が実行された後に、定寸押圧工程が実行されてもよい。
【0032】
図3および図4を参照して、本実施形態の製造方法によって端子10を製造する場合の効果について説明する。図4は、図3における定寸押圧部材20を定圧押圧部材99に置き換えた場合の一例を示す断面図である。つまり、図4に示す製造方法では、図3に示す本実施形態の製造方法とは異なり、第2外周面14Bの間だけでなく第1外周面14Aの間も定圧で押圧される。樹脂切り部13が定圧で押圧される場合には、樹脂切り部13近傍の過度な変形は生じにくいが、樹脂切り部13の寸法のばらつきが吸収されない。その結果、図4に示すように、定圧押圧部材99と定圧押圧部材40(接触部41)の間に、隙間Gが生じる場合がある。図4に示す例では、樹脂切り部13における前後方向の寸法のばらつきが吸収されない結果、隙間Gが生じている。一方で、樹脂切り部13における一対の第1外周面14Aの間、および一対の第2外周面14Bの間を、共に定寸で押圧する場合には、樹脂切り部13に過度な変形・破損等が生じる可能性がある。
【0033】
これに対し、本実施形態の製造方法によると、図3に示すように、樹脂切り部13の4つの外周面のうち、一対の第1外周面14Aの間のみが定寸で押圧される。その結果、第1外周面14Aの間の厚みが適度に変形し、定圧押圧部材40における接触部41の先端部の厚みTとほぼ同じ厚みとなる。そして、定圧押圧部材40によって、一対の第2外周面14Bの間が定圧で押圧されることで、樹脂切り部13の外周が隙間なく閉塞される。従って、隙間を通じた樹脂漏れも、樹脂切り部13の過度な変形等も生じにくい。
【0034】
端子10の樹脂切り部13のうち、一対の第1外周面14Aの間の距離は、一対の第2外周面14Bの間の距離よりも短い。この場合、第1外周面14A間の寸法のばらつきは、第2外周面14B間の寸法のばらつきよりも構造上小さくなり易い。従って、寸法のばらつきが小さい第1外周面14A間を定寸で押圧することで、端子の過度な変形等が抑制された状態で適切に射出成形が行われる。
【0035】
特に、本実施形態の端子10のうち、少なくとも樹脂切り部13を含む部分は、厚みが均一な板材を厚み方向に切断する工程を経て形成される。端子10における樹脂切り部13の一対の第1外周面14Aは、切断される前の板材の一対の板面の一部である。換言すると、一対の第1外周面14Aの間の距離DAは、切断される前の板材の厚みに一致する。板材の厚みのばらつきを小さくすることは、板材の切断寸法のばらつきを小さくすることよりも容易である。従って、一対の第1外周面14Aの間の距離DAのばらつきは、適切に抑制されている。
【0036】
定圧押圧部材40の接触部41のうち、端子10の第2外周面14Bとの接触部分(つまり、先端部分)の、第1外周面14Aに垂直な方向の厚みを、Tとする。端子10における一対の第1外周面14Aの間の距離を、DAとする。この場合、0≦(DA-T)≦50μmとなるように、各部材および定寸の寸法が規定されている。従って、定寸押圧部材20と定圧押圧部材40(接触部41)の間に隙間が生じたとしても、隙間の寸法は50μm以下となる。隙間の寸法が50μm以下であれば、加熱溶融された樹脂(例えば、本実施形態で使用されるPPE等)は、隙間から流出し難い。よって、樹脂材料が適切に端子に形成される。
【0037】
以上、具体的な実施形態を挙げて詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に記載した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、定寸押圧工程を実行する機構、および、定圧押圧工程を実行する機構を適宜変更してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1 射出成形機
10 端子
13 樹脂切り部
14A 第1外周面
14B 第2外周面
20 定寸押圧部材
40 定圧押圧部材
41 接触部
42 駆動部

図1
図2
図3
図4