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  • 特許-片頭痛の治療 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】片頭痛の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20220829BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20220829BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
A61K31/198
A61P25/06
A61P25/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020519196
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 IB2018054676
(87)【国際公開番号】W WO2018229738
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】519445635
【氏名又は名称】イントラビオ エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ストルップ
(72)【発明者】
【氏名】マロリー ファクター
【審査官】鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-503658(JP,A)
【文献】医学のあゆみ,2015年,Vol.255 No.7,pp.757-761
【文献】Equilibrium Res.,2011年,Vol.70 No.3,pp.172-175
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/198
A61P 25/06
A61P 25/00
A61K 9/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片頭痛の治療又は予防に使用するための、アセチル-ロイシン又はその医薬として許容し得る塩を含む、医薬組成物であって、
該片頭痛が、片麻痺性片頭痛、散発性片麻痺性片頭痛、脳底性片頭痛、網膜性片頭痛、慢性片頭痛、又は反復性片頭痛である、前記医薬組成物
【請求項2】
片頭痛の症状の治療又は予防に使用するための、アセチル-ロイシン又はその医薬として許容し得る塩を含む、医薬組成物であって、
該片頭痛が、片麻痺性片頭痛、散発性片麻痺性片頭痛、脳底性片頭痛、網膜性片頭痛、慢性片頭痛、又は反復性片頭痛であり、
該症状が、頭痛、前兆、悪心、吐気、光過敏、音過敏、眼窩の痛み又は下痢である前記医薬組成物。
【請求項3】
前記症状が、頭痛である、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記症状が、前兆である、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記片頭痛が、片麻痺性片頭痛である、請求項1~のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記片頭痛が、散発性片麻痺性片頭痛である、請求項1~のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記片頭痛が、脳底性片頭痛である、請求項1~のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記片頭痛が、網膜性片頭痛である、請求項1~のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記片頭痛が、慢性片頭痛である、請求項1~のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記片頭痛が、反復性片頭痛である、請求項1~のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物が、アセチル-ロイシンを含む、請求項1~10のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記アセチル-ロイシンが、ラセミ形である、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記アセチル-ロイシンが、L-鏡像異性体の鏡像体過剰である、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記アセチル-ロイシンが1日あたり約500mg~約15gの投与量で投与されるように使用される、請求項1113のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記アセチル-ロイシンが1日あたり約5000mgの投与量で投与されるように使用される、請求項14記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に、並びに特に片頭痛及びそれに関連した症状の治療及び/又は予防におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
世界的に人口の約15%は、片頭痛に罹患している。片頭痛は、再発性の、中等度から重度の頭痛により特徴づけられる。典型的には、この頭痛は、頭部の半分に影響を及ぼし、事実上拍動性であり、2時間から72時間持続する。片頭痛の症状は、悪心、吐気、及び光、音又は臭気への過敏である。この疼痛は、身体活動により更に強まることが多い。
【0003】
片頭痛患者の約15~30%は、頭痛が間もなく起こることのシグナルである短期間の視覚障害である「前兆」を伴う片頭痛を経験している。場合によっては、前兆は、その後の頭痛をほとんど引き起こさないか、全く引き起こさないことがあり得る。これは、無痛性片頭痛又はサイレント片頭痛として知られている。前兆を伴う片頭痛に罹患した対象はまた、前兆を伴わない片頭痛に罹患することも多い。疼痛の重症度、頭痛の期間、及び発作の頻度は、様々である。
【0004】
片頭痛は、環境因子と遺伝因子の混合により引き起こされると理解されている。基礎となる機序は完全には解明されていないが、これらは、脳の神経及び血管に関与していると考えられている。片頭痛に対して可能性のある四相が存在するが、これらの相を全て常に経験するわけではない:
・頭痛の数時間又は数日前に生じる、前駆症状(prodrome);
・頭痛の直前の、前兆;
・疼痛(又は頭痛)相;及び
・後発症状(片頭痛の終了後に経験した効果)。
【0005】
前駆症状又は前兆(premonitory)症状は、典型的には疼痛又は前兆の開始前2時間から2日の間に起こる。前駆症状は、気分変動、癇癪、鬱病又は陶酔感、疲労、特定食品への渇望、こわばった筋肉(特に首)、便秘又は下痢、並びに臭気又は雑音への過敏を含む。前駆症状は、前兆を伴う又は伴わない片頭痛において起こり得る(Rae-Grantの文献、2004;Buzziの文献、2005;Rossiの文献、2005;Samuelsの文献、2009)。
【0006】
前兆相は、頭痛前又は頭痛時に起こる一過性で限局性の神経学的現象である(Aminoffの文献、2009)。前兆は、数分間かけて次第に明らかになり、一般に1時間未満続く。症状は、実際は、視覚、感覚又は運動であり得る。視覚作用は、最も一般的である(Olesenの文献、2006)。
【0007】
視覚障害は典型的には、明滅する視野の部分的変化の領域(閃輝性暗点としても公知)を含む。これらは典型的には、視覚中心点の近傍で始まり、次にジグザグな線で側方に広がる。一部の罹患者は、かすみを経験するが、別の患者は、視力減退、又は通常垂直正中線の片側である視野の半分の失明(片側視野欠損)を経験する。
【0008】
感覚の前兆は、手及び腕の片側から始まり、同側の鼻-口領域に広がる、刺すようなしびれ(pins-and-needles)の感覚を含むことがある。しびれ(numbness)は通常、うずきが終わった後に起こる。前兆相の他の症状は、会話障害又は言語障害、眩暈感及び運動の問題を含む。幻聴又は妄想も経験することがある(Slapの文献、2008)。
【0009】
疼痛相において、頭痛は典型的には、片側性で、ズキズキし、強度は中等度から重度である(Tintinalliの文献、2010)。他の症例において、特に前兆を伴わない片頭痛を有するものにおいては、疼痛は両側性である。それほど多くはないが、疼痛は、主に首、背又は頭頂部に起こることがある。
【0010】
この疼痛は、悪心、吐気、光過敏、音過敏、臭気過敏、疲労感及び/又は癇癪を随伴することが多い(Aminoffの文献、2009)。脳底動脈片頭痛、脳幹に関連した神経学的症状を伴うか又は体の両側上の神経学的症状を伴う片頭痛において、共通の作用は、外界がぐるぐる回る(world spinning)感覚、頭がくらくらすること(light-headedness)、及び精神錯乱である。悪心は、ほぼ90%のヒトにおいて生じ、吐気は約3分の1において生じる。他の症状は、かすみ目、鼻詰まり、下痢、頻尿、蒼白、発汗、頭皮の腫れ又は圧痛、及び頸部強直が挙げられる。
【0011】
片頭痛の後発症状は、一旦急性頭痛が治まった後に起こる症状を指す(Boseの文献、2016)。多くが、片頭痛が起こった領域にヒリヒリする痛み(sore)の感覚を報告し、一部は、頭痛が治まった後数日間の思考障害を報告している。対象は、疲労感又は「意気消沈(hung over)」を感じることがあり、且つ頭痛、認知困難、胃腸管症状、気分の変化、及び虚弱を有することがある(Kelmanの文献、2006)。
【0012】
片頭痛の診断は、徴候及び症状を基にしている。前兆を伴わない片頭痛の診断は、いわゆる「5、4、3、2、1判定」に従い行うことができる(国際頭痛学会(IHS)、2004):
・5回以上の発作-前兆を伴う片頭痛に関しては、2回の発作が診断に十分である;
・4時間から3日間の持続期間;
・以下の2つ以上に該当:
・片側性(頭の半分が罹患);
・拍動性;
・中等度から重度の疼痛強度;
・日常の身体活動の悪化又は忌避の原因;
・以下の1以上に該当:
・悪心及び/又は吐気;
・光(羞明)及び音(音声恐怖症)の両方への過敏。
【0013】
患者が羞明、悪心、又は1日の作業もしくは勉強の不能の2つ以上を経験する場合、診断はよりふさわしい。
【0014】
片頭痛は、7つのサブクラスに分類することができ、その一部は更に亜分類を含む:
・前兆を伴わない片頭痛、又は「普通型片頭痛」は、前兆を随伴しない片頭痛様頭痛に関与する;
・前兆を伴う片頭痛、又は「古典的片頭痛」は、通常、前兆を随伴する片頭痛様頭痛に関与する。一般的ではないが、前兆は、頭痛を伴わずに又は非-片頭痛様頭痛と共に起こり得る。2つの他の亜種は、家族性片麻痺性片頭痛及び散発性片麻痺性片頭痛であり、ここでは患者は、前兆を伴い且つ運動まひを随伴する片頭痛を有する。別の亜種は、脳底性片頭痛であり、ここでは頭痛及び前兆は、会話困難、外界がぐるぐる回る、耳鳴り、又は数多くの他の脳幹-関連症状を随伴するが、運動まひは伴わない;
・片頭痛の一般的な先駆け(precursor)である小児の周期性症候群は、周期的吐気(時折の吐気の強い期間)、腹部片頭痛(腹痛、通常悪心を随伴する)、及び小児の良性の発作性めまい(時折のめまいの発作)を含む;
・網膜性片頭痛は、視覚障害又は片眼の一過性盲さえもが随伴した片頭痛様頭痛に関与する;
・片頭痛の合併症は、通常長いかもしくは通常頻繁な、又は発作(seizure)もしくは脳病巣を随伴した、片頭痛様頭痛及び/又は前兆を説明する;
・推定片頭痛は、いくつかの片頭痛の特徴を有するが、それを確実な片頭痛と診断するのに十分な証拠はない状態(同時の薬物治療の過剰使用の存在)を説明する;
・慢性片頭痛は、片頭痛の合併症であり、且つ片頭痛様頭痛の診断基準を満たす頭痛であり、より大きい時間間隔で生じる。
【0015】
片頭痛の従来の治療は、頭痛のためのイブプロフェン又はパラセタモル(アセトアミノフェン)などの単純なペインキラー、並びに悪心及び誘発回避のための他の薬物治療を含む。
【0016】
軽度から中等度の症状を伴う片頭痛の推奨される初期治療は、単純な鎮痛薬、例えば非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、又はパラセタモル、アスピリン、及びカフェインの併用である(Gilmoreの文献、2011)。ジクロフェナク、イブプロフェン及びケトロラクを含むいくつかのNSAIDsは、それらの使用を裏付ける証拠がある(Rabbieの文献、2013;Derryの文献、2013;Gilmoreの文献、2011)。アスピリンもまた、中等度から重度の片頭痛の疼痛を緩和することができ、スマトリプタンに類似した効果がある(Kirthiの文献、2013)。
【0017】
トリプタン又はエルゴタミンは、単純な疼痛の薬物治療が無効である罹患者に処方される。トリプタン(例えばスマトリプタン)は、疼痛及び悪心の両方に効果があり、且つ中等度から重度の疼痛を持つ患者、又は単純な鎮痛薬に反応しないより軽度の症状を持つ患者に関して、最初に推奨される治療である(Bartlesonの文献、2010)。トリプタンのほとんどの副作用は軽度であるが、稀に心筋虚血の症例が起こることがあり、従ってこれらの薬物は、脳卒中を起こしたか、又は神経学的問題を随伴している片頭痛を有する心臓血管疾患の患者には推奨されない。トリプタンはまた、血管疾患に関するリスク因子がある患者へは、慎重に処方されなければならない。トリプタンは、耽溺はないが、1ヶ月につき10日以上使用した場合に、薬物治療-過剰使用の頭痛を引き起こすことがある(Tepperの文献、2010)。エルゴタミン及びジヒドロエルゴタミンは、依然片頭痛のために処方されている、より古典的薬物治療である(Bartlesonの文献、2010)。これらは、トリプタンと効果は同等であるように見え、且つ典型的には良性である有害作用を有する。
【0018】
片頭痛の発作を予防するのに有用な薬物治療としては、メトプロロール、バロプロ酸、トピラマート、静脈内メトクロプラミド及び鼻腔内リドカインが挙げられる(Armstrongの文献、2013;Gilmoreの文献、2011)。メトクロプラミドは、救急診療部に送られた患者に推奨される治療である。ハロペリドールもまた、このグループにおいて有用であり得る。静脈内デキサメタゾンの単回投与量は、片頭痛の発作の標準治療に加えられた場合、その後72時間にわたる26%の頭痛再発の減少に関連している(Colmanの文献、2008)。
【0019】
薬物治療は、発作時に早期使用される場合に、より効果的である。薬物治療の頻繁な使用は、薬物治療過剰使用の頭痛を生じることがあり、ここでは頭痛はより重度且つより頻繁になる。これは、トリプタミン、エルゴタミン、及び鎮痛薬、特にオピオイド系鎮痛薬において起こり得る。これらの懸念のために、単純な鎮痛薬は、最大でも週3日使用されることが推奨される。
【0020】
現存する治療に関連した欠点を考慮し、且つ一般的集団におけるその状態の有病率が与えられると、片頭痛のため、特に今日まで当該技術分野において公知の薬物の使用では達成されない、前兆の予防的治療のための代替治療を開発する必要性が続いている。本開示は、片頭痛の代替治療のこの必要性に対処し、且つ片頭痛の治療又は予防における使用のための、ロイシン及びアセチル-ロイシン、並びにそれらの医薬として許容し得る塩を説明している。
【発明の概要】
【0021】
(発明の概要)
従って、本発明の第一の態様は、片頭痛、又はそれに関連した1以上の症状の治療又は予防における使用のための、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。
【0022】
本発明の第二の態様は、対象において、片頭痛、又はそれに関連した1以上の症状を治療又は予防する方法に関し、該方法は、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩の治療的又は予防的有効量を、対象へ投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
(図面の説明)
図1図1は、インビトロにおいてニーマン-ピック病C型(NPC)に罹患したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に曝露した場合の、ロイシン及びアセチル-ロイシンの類似の活性を明らかにしている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(詳細な説明)
本発明は、対象において片頭痛を治療及び/又は予防するための物質、組成物及び方法を包含している。
【0025】
アセチル-DL-ロイシンは、フランスにおいて急性めまいを治療するために1957年から使用されており、且つ優れた安全性プロファイルを有する。膜電位の安定化を含む、多くの仮説があるにもかかわらず、その薬学的及び電気生理学的作用様式は、依然明らかではない(Vibertの文献、2001、Ferber-Viartの文献、2009)。急性片側性迷路切除のラットモデルにおけるFDG-μPET試験(Zwergalの文献、2016)は、前庭-小脳の活性化及び後外側視床の不活化による体位補償に対する、L-鏡像異性体N-アセチル-L-ロイシンの著しい作用を示した(Guntherの文献、2015)。異なる病因の小脳患者による症例シリーズの小脳症状の改善(Struppの文献、2013)は、アセチル-DL-ロイシンの治療的有効性を裏付けている。別の症例シリーズは、恩恵を認めなかった(Pelzの文献、2015)。定量的歩行分析は、アセチル-DL-ロイシンはまた、小脳性運動失調症の患者において、歩行のばらつきを改善することを示した(Schnieppの文献、2015)。三番目の最近の研究において、ニーマン-ピック病C型(NPC)の患者12名において、この物質は運動失調症の有意な改善を引き起こした(Bremovaの文献、2015)。更に、アセチル-DL-ロイシンを与えた様々な病因の運動失調症の患者におけるPET試験は、奏効者における、中脳及び脳幹下部における増大した代謝を明らかにし(Becker-Benseの文献、2015)、これは観察された恩恵を説明することができる。
【0026】
しかし今日まで、アセチル-ロイシンが、片頭痛又はその症状、例えば前兆の治療において治療的適用を有することを示唆するものはない。本出願は、驚くべきことに、アセチル-ロイシンは、片頭痛の治療又は予防に使用することができることを示している。並びに、本開示において示したように、ロイシン又はそれの医薬として許容し得る塩は、片頭痛又はその症状の治療において使用することができることも分かった。
【0027】
全体を通して「ロイシン」及び「アセチル-ロイシン」の言及は、明確に言及しない限りは、それの医薬として許容し得る塩を含む。
【0028】
本明細書において使用される「対象」は、脊椎動物、哺乳動物又はヒトに馴れた動物であってよい。従って本発明による組成物は、任意の哺乳動物、例えば、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ又はブタ)、ペット(例えば、ネコ、イヌ、ウサギ又はモルモット)、実験動物(例えば、マウス又はラット)を治療するために使用されてよく、あるいは他の獣医学適用において使用されてよい。好ましくは、対象はヒトである。
【0029】
本明細書において使用される用語「治療する」は、片頭痛、又はそれに関連した1以上の症状の頻度を減らすか、片頭痛、又はそれに関連した1以上の症状を緩和するか又は除去することを指す。
【0030】
本明細書において使用される用語「予防する」は、片頭痛、又はそれに関連した1以上の症状を予防することを指す。本明細書記載の実施態様の全てに関して、好ましくは、ロイシン、アセチルロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、予防的に使用される。
【0031】
本明細書において使用される用語「緩和する」は、治療が存在しない場合よりも、片頭痛、又はそれに関連した1以上の症状の重症度を減らすか又は強度を減らすようにすることを意味する。
【0032】
本明細書において使用される用語「頻度を減らす」は、治療が存在しない場合の発生に比べ、特定の時間枠内で、片頭痛、又はそれに関連した1以上の症状の発生を減らすことを意味する。
【0033】
一つの好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、頭痛、疲労感、前兆、悪心、吐気、光過敏、音過敏、臭気過敏、発汗、集中力不足、熱感もしくは冷感、腹痛及び下痢から選択される1以上の片頭痛症状の頻度を減少するか、該症状を緩和するか又は除去する。
【0034】
本明細書において使用される、片頭痛に関連した症状は、片頭痛に関連した任意の臨床又は実験室での症状発現を含み、且つ対象が感じる又は気づくことができるものに限定されない。
【0035】
本発明の一態様は、前兆の治療、又はより好ましくは予防において使用するための、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。今日まで、前兆を特異的に予防することが可能である薬物の報告はない。好ましくは、この前兆は、視覚性前兆である。
【0036】
本発明の別の態様は、前兆に関連した片頭痛(例えば、「古典的片頭痛」)の治療又は予防における使用のための、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。
【0037】
本発明の別の態様は、前兆に関連しない片頭痛(例えば、「普通型片頭痛」)の治療又は予防における使用のための、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。
【0038】
本発明の別の態様は、片頭痛様頭痛に関連した前兆の治療又は予防における使用のための、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。
【0039】
本発明の別の態様は、片頭痛様頭痛に関連していない前兆の治療又は予防における使用のためのロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。
【0040】
本発明の別の態様は、片麻痺性片頭痛の治療又は予防における使用のための、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。この実施態様に関して、片頭痛は典型的には、頭痛及び運動まひが随伴した前兆を含む。
【0041】
本発明の別の態様は、散発性片麻痺性片頭痛の治療又は予防における使用のため、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。
【0042】
本発明の別の態様は、前庭性片頭痛の治療又は予防における使用のため、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。前庭性片頭痛は、Barany Societyの国際頭痛分類委員会(ICC)により示された診断基準(Lempertの文献、2012)に従い規定することができ、典型的には以下により特徴付けられる:
A. 少なくとも5回の強度が中等度又は重度の前庭症状のエピソード(Barany Societyの前庭症状の分類により規定された)が、5分から72時間続く;
B. 現在又は過去の国際頭痛分類(ICHD)に従う前兆を伴わない又は前兆を伴う片頭痛;
C. 前庭エピソードの少なくとも50%に以下の1以上の片頭痛の特徴がある:
・次の特徴の少なくとも2つを伴う頭痛:片側性、拍動性の性質、中等度又は重度の疼痛強度、日常の身体活動による痛みの増悪;
・光過敏と音過敏;
・視覚性前兆;
D. 他の前庭又はICHD診断により良く説明されないもの。
【0043】
本発明の別の態様は、前庭性片頭痛ではないか又はめまいの症状に関連した前庭性片頭痛ではない片頭痛の治療又は予防における使用のための、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。
【0044】
本発明の別の態様は、めまい又はめまいの症状に関連していない片頭痛の治療又は予防における使用のための、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。一部の実施態様において、片頭痛は、急性めまい又は急性末梢前庭病巣に起因しためまいに関連していない。一部の実施態様において、片頭痛は、メニエール性めまい又は炎症(前庭性神経炎)もしくは毒物に起因するめまいに関連していない。
【0045】
本発明の別の態様は、脳底性片頭痛の治療又は予防における使用のための、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。この実施態様に関して、片頭痛は典型的には、以下の症状の1以上を随伴する頭痛及び前兆を含む:会話困難、外界がぐるぐる回る、耳鳴り、及び他の脳幹関連症状。
【0046】
本発明の別の態様は、網膜性片頭痛の治療又は予防における使用のための、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。この実施態様に関して、網膜性片頭痛は典型的には、視覚障害又は一過性盲が随伴する頭痛を含む。
【0047】
本発明の別の態様は、慢性片頭痛の治療又は予防における使用のための、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。本明細書において使用される用語「慢性片頭痛」は、薬物治療の非存在下で、その8日以上が片頭痛様である、3ヶ月を超えて月に15日以上の頭痛日数に罹患している対象(国際頭痛学会(IHS)による規定)を指す。
【0048】
本発明の別の態様は、反復性片頭痛の治療又は予防における使用のための、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。本明細書において使用される「反復性片頭痛(episodic migraine)」は、薬物治療の非存在下で、3ヶ月を超えて月に15日未満の頭痛日数に罹患している対象(国際頭痛学会(IHS)による規定)を指す。
【0049】
本発明の別の態様は、急性片頭痛の治療又は予防における使用のための、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。
【0050】
本発明の別の態様は、片頭痛に関連した1以上の前駆症状の治療又は予防における使用のための、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。好ましくは、前駆症状は、気分変動、癇癪、鬱病又は陶酔感、疲労、特定食品への渇望、こわばった筋肉(特に首)、便秘、下痢、並びに臭気又は雑音への過敏の1以上から選択される。
【0051】
本発明の別の態様は、片頭痛に関連した疼痛の治療又は予防における使用のための、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。
【0052】
本発明の別の態様は、片頭痛に関連した1以上の後発症状の治療又は予防における使用のための、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩に関する。好ましくは、後発症状は、片頭痛である領域のヒリヒリする痛み、思考障害、疲労感、頭痛、認知困難、胃腸管症状、気分の変化、及び虚弱の1以上から選択される。
【0053】
一つの好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、片頭痛様頭痛を、軽減するか、緩和するか又は除去する。
【0054】
一つの好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、前兆を、軽減するか、緩和するか又は除去する。より好ましくは、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、視力の問題又は視覚障害、しびれ又はうずき、眩暈感、平衡障害、運動障害、会話困難及び意識喪失から選択される1以上の症状の頻度を減少するか、該症状を緩和するか又は除去する。好ましくは、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、例えば、1以上の前述の症状が発生するのを防止することにより、前兆が発生するのを予防する。
【0055】
本発明の第二の態様に従い、対象において、片頭痛、又はそれに関連した1以上の症状を治療又は予防する方法が提供され、この方法は、治療的又は予防的有効量のロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩を、対象へ投与することを含む。
【0056】
本発明の第一の態様の好ましい特徴はまた、第二の態様へ適用可能である。
【0057】
本発明の別の態様は、対象において、前庭性片頭痛ではないか、又はめまいの症状に関連した前庭性片頭痛ではない片頭痛を治療又は予防する方法に関し、この方法は、治療的又は予防的有効量のロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩を、対象へ投与することを含む。
【0058】
本発明の別の態様は、対象において、めまい、又はめまいの症状に関連していない片頭痛を治療又は予防する方法に関し、この方法は、治療的又は予防的有効量のロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩を、対象へ投与することを含む。
【0059】
薬剤の「治療的有効量」又は「予防的有効量」は、対象へ投与した場合に、所望の効果を生じるのに必要とされる薬剤の量である、任意の量である。投与量は、様々なパラメータに従い、特に使用されるロイシン又はアセチル-ロイシンの具体的形状;治療される患者の年齢、体重及び状態;投与経路;並びに必要とされる投与計画に従い、決定されてよい。医師は、いずれか特定の患者について、必要とされる投与経路及び用量を決定することができるであろう。典型的1日量は、約10~225mg/kg、約10~150mg/kg、好ましくは約10mg/kg~100mg/kg体重であってよい。例えば、使用されるアセチル-ロイシンの予防的有効量は、0.5g~15g/日、又は1g~10g/日、好ましくは1.5g~7g/日であってよい。用量に関する更なる詳細は、以下に提供する。
【0060】
(ロイシン、アセチル-ロイシン、及びそれらの組成物)
ラセミ形のアセチル-ロイシン及びそれの塩は、様々な原因のめまい、特に急性末梢前庭病巣に起因しためまいの症候性治療におけるそれらの有効性について知られている。アセチル-ロイシンは、Tanganil(登録商標)の名称で、めまい治療薬として、ラセミ化合物の形で、Pierre Fabre Medicamentにより市販されている。様々な著者により報告されたアセチル-ロイシンに関係している臨床結果は、めまい発作の消失を含む、症例の95%以上での、めまい症状学的改善を明らかにしている。
【0061】
一つの好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、ラセミ形であり、これは、その化合物は、ほぼ等量の鏡像異性体を含むことを意味する。あるいは、ロイシン又はアセチル-ロイシンは、L-鏡像異性体又はD-鏡像異性体のいずれかの鏡像体過剰で存在してよい。ラセミ形及び鏡像異性体形は、当該技術分野において公知の手順に従い得ることができる。
【0062】
一つの特に好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、L-鏡像異性体の形である。
【0063】
別の実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、D-鏡像異性体の形状である。
【0064】
好ましくは、ロイシン又はアセチル-ロイシンは、遊離塩基の形である。
【0065】
ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、当該技術分野において公知の教示に従い、製剤化され、且つ対象へ投与される。
【0066】
従って、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれの医薬として許容し得る塩は、任意に1以上の医薬として許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤を含有する、医薬組成物として製剤化されてよい。
【0067】
活性物質(組成物)は、対象における片頭痛の治療のための単剤療法(すなわち、活性物質単独の使用)において使用されてよい。あるいは、活性物質(組成物)は、対象における片頭痛の治療のために、既知の療法に加えて、又はこれと組合せて使用されてよい。
【0068】
活性物質(組成物)は、特に、それが使用される様式に応じて、数多くの様々な形状のいずれかをとることができる。従って例えば、本物質又は組成物は、散剤、錠剤、カプセル剤、液剤、軟膏、クリーム、ゲル剤、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル溶液、皮膚用貼付剤、リポソーム懸濁液の形状、又は治療を必要とするヒト又は動物へ投与することができる任意の他の好適な形状であることができる。本発明による医薬組成物の担体は、それが与えられる対象により忍容性が良好であるものでなければならないことは、理解されるであろう。
【0069】
本明細書において言及される「医薬として許容し得る担体」は、医薬組成物の製剤化に有用であることが当業者に公知である、いずれか公知の化合物又は公知の化合物の組合せである。
【0070】
治療的使用のために許容し得る担体又は希釈剤は、薬学分野において周知であり、且つ例えば、「レミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」、Mack Publishing社(A. R. Gennaro編集、1985年)において説明されている。
【0071】
好適な担体の例としては、乳糖、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。好適な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール及び水が挙げられる。
【0072】
本明細書記載の様々な異なる形状の医薬組成物に関してそのような好適な賦形剤の例は、「医薬賦形剤ハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)」第2版(1994)、A Wade及びPJ Weller編集に認めることができる。そのような賦形剤の例は、ゼラチン、アラビアゴム、乳糖、微結晶性セルロース、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石粉、コロイド状二酸化ケイ素などがある。
【0073】
医薬担体、賦形剤又は希釈剤の選択は、意図された投与経路及び標準薬務に関して選択することができる。医薬組成物は、担体、賦形剤又は希釈剤として、又はこれに加えて、任意の好適な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤、可溶化剤を含有してよい。
【0074】
好適な結合剤の例としては、デンプン、ゼラチン、グルコースなどの天然糖、無水乳糖、フリーフロー(free-flow)乳糖、ベータ-乳糖、トウモロコシ甘味料、アカシアゴム、トラガカント又はアルギン酸ナトリウムなどの天然及び合成ゴム、カルボキシメチルセルロース及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0075】
好適な滑沢剤の例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0076】
保存剤、安定剤、色素及び更には香味剤が、本医薬組成物中に提供されてよい。保存剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp-ヒドロキシ安息香酸エステルが挙げられる。抗酸化剤及び懸濁化剤も使用されてよい。
【0077】
一つの好ましい実施態様において、医薬として許容し得る担体は、固形であってよく、本組成物は、散剤又は錠剤の形状であってよい。固形の医薬として許容し得る担体は、また香味剤、緩衝液、滑沢剤、安定剤、可溶化剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、色素、充填剤、流動促進剤、圧縮助剤、不活性結合剤、甘味料、保存剤、色素、コーティング、又は錠剤-崩壊剤としても作用することができる1種以上の物質を含んでよい。この担体はまた、封入材料であってよい。散剤において、担体は、微粉化された本発明の活性物質と混合される、微粉化された固形物である。錠剤において、活性物質は、好適な割合で必要な圧縮特性を有する担体と混合され、且つ所望の形状及びサイズに圧縮されてよい。散剤及び錠剤は好ましくは、最大99%の活性物質を含む。好適な固形担体としては、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス及びイオン交換樹脂が挙げられる。別の実施態様において、医薬として許容し得る担体は、ゲルであってよく、この組成物は、クリームなどの形状であってよい。
【0078】
別の好ましい実施態様において、医薬として許容し得る担体は、液体であってよく、且つ本医薬組成物は、液剤の形状である。液体担体が、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤及び加圧式組成物の調製に使用される。本発明の活性物質は、水、有機溶媒、両方の混合物、又は医薬として許容し得る油もしくは脂肪などの、医薬として許容し得る液体担体の中に溶解又は懸濁化されてよい。液体担体は、可溶化剤、乳化剤、緩衝液、保存剤、甘味料、香味剤、懸濁化剤、増粘剤、着色剤、粘度調整剤、安定剤又は浸透圧調整剤などの、他の好適な医薬添加剤を含むことができる。経口及び非経口的投与のための液体担体の好適な例は、水(特に前述の添加剤、例えばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を含む)、アルコール(一価アルコール及び多価アルコール、例えばグリコールを含む)及びそれらの誘導体、並びに油分(例えば、分留されたココナツ油及び落花生油)を含む。非経口的投与に関して、担体はまた、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルなど、油性エステルであることができる。無菌の液体担体は、非経口的投与のための無菌の液体形状の組成物において有用である。圧縮された組成物のための液体担体は、ハロゲン化された炭化水素又は他の医薬として許容し得る噴射剤であることができる。
【0079】
無菌の溶液又は懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋肉内、髄腔内、硬膜外、腹腔内、静脈内及び特に皮下注射により、利用することができる。活性物質は、滅菌水、食塩水、又は他の好適な無菌の注射可能媒体を使用して、投与時に溶解又は懸濁されてよい、無菌の固形組成物として調製することができる。
【0080】
本発明の物質及び組成物は、他の溶質又は懸濁化剤(例えば、等張溶液を作製するのに十分な食塩水もしくはグルコース)、胆汁塩、アカシアゴム、ゼラチン、ソルビタンモノオレエート、ポリソルベート80(ソルビトールのオレイン酸エステル及びエチレンオキシドと共重合されたその無水物)などを含有する、無菌の溶液又は懸濁液の形状で、経口的に投与されてよい。本発明により使用される物質はまた、液体又は固形のいずれかの組成物の形状で経口的に投与することができる。経口投与に適した組成物は、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、錠剤及び散剤などの固形形状、及び液剤、シロップ剤、エリキシル剤、及び懸濁剤などの液体形状を含む。非経口的投与に有用な形状は、無菌の液剤、乳剤、及び懸濁剤を含む。
【0081】
ロイシン、アセチル-ロイシン、及びそれらを含有する組成物は、代わりに吸入(例えば、鼻腔内)により、投与されてよい。組成物はまた、局所使用のために製剤化されてもよい。例えば、クリーム又は軟膏は、皮膚に塗布され得る。
【0082】
本発明のロイシン、アセチル-ロイシンは、緩徐-又は遅延-放出装置内に、組み込まれてよい。そのような装置は、例えば、皮膚の上又は下に挿入されてよく、且つこの医薬品は、数週間又は数ヶ月さえかけて放出されてよい。そのような装置は、本発明に従い使用されるロイシン又はアセチル-ロイシンによる長期治療が必要とされる場合、及び通常頻回投与(例えば、少なくとも毎日投与)を必要とする場合に、特に有利であり得る。
【0083】
一つの特に好ましい実施態様において、本医薬組成物は、錠剤の形状である。錠剤において、活性物質は、好適な特性において必要な圧縮特製を有するビヒクルと混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。錠剤は好ましくは、活性物質を最大99重量%含有する。
【0084】
従って好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、経口投与に適した固形剤形で、好ましくは錠剤の形状で提供される。
【0085】
錠剤などの固形の経口剤形における医薬製剤は、調剤分野において公知の任意の方法により調製されてよい。医薬製剤は、活性物質、又はその医薬として許容し得る塩を、常用の医薬として許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤と混合することにより、通常調製される。
【0086】
錠剤は、当該技術分野において公知の常法に従い製剤化されてよく、且つコーティングされてもされなくともよい。Tanganil(登録商標)は、賦形剤として、例えば、コムギデンプン、α化メイズ(トウモロコシ)デンプン、炭酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウムを含む。これら又は類似の賦形剤は、本発明において利用することができる。各700mgのTanganil(登録商標)錠の正確な組成は、以下である:500mgアセチル-DL-ロイシン、88mgコムギデンプン、88mgα化メイズ(トウモロコシ)デンプン、13mg炭酸カルシウム及び11mgステアリン酸マグネシウム。この錠剤は、本発明において利用することができる。そのような錠剤のジェネリック型を、代わりに使用してもよい。
【0087】
先に考察したように、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、いくつかの異なる形状をとる医薬組成物として、製剤化され、且つ投与されてよい。例えば、ロイシン、アセチル-ロイシン又はそれらの医薬として許容し得る塩は、血管-脳関門を超えてその送達を促進する医薬組成物として製剤化されてよい。更なる例として、ロイシン、アセチル-ロイシン又はそれらの医薬として許容し得る塩は、血管-脳関門を迂回するための医薬組成物として製剤化されてよい。血管-脳関門を超える送達を促進するか又は血管-脳関門を迂回する様式での投与に適している製剤は、本明細書記載のようにロイシン(アセチル化されない)を調製及び投与するために使用されてよい。本開示において明らかにされたように、リソソーム疾患表現型を呈している細胞へのロイシン曝露は、アセチル-ロイシンへの曝露のように、細胞機能障害を改善し(例えば、リソソーム貯蔵容積を、対照値にまで減少することにより)、これによりロイシン及びアセチル-ロイシンの類似の活性を明らかにする(図1参照)。
【0088】
一実施態様において、本医薬組成物(例えば、ロイシン又はその塩を含有する)は、例えばコロイド状薬物-担体システムなどの、ナノ送達のために製剤化される。好適な例としては、リポソーム、ナノ粒子(例えば、高分子の、脂質及び無機のナノ粒子)、ナノゲル、デンドリマー、ミセル、ナノエマルション、ポリメルソーム、エキソソーム、及び量子ドットが挙げられるが、これらに限定されるものではない(例えば、Patelの文献、2017;Kabanovの文献、2004;Chengの文献、2013;Lahdeの文献、2008参照)。
【0089】
一実施態様において、本医薬組成物(例えば、ロイシン又はその塩を含有する)は、注射又は注入によるなど、中枢神経系(CNS)への直接送達のために製剤化される。CNSへの直接送達のための製剤及びその方法は、当該技術分野において公知である(例えば、米国特許第9,283,181号参照)。そのような投与の例は、鼻腔内、脳室内、髄腔内、頭蓋内、及び鼻粘膜移植を介した送達を含むが、これらに限定されるものではない。
【0090】
一実施態様において,本医薬組成物は、鼻腔内送達のために(及びそれによる投与のために)製剤化される(例えば、Hansonの文献、2008参照)。一実施態様において、本医薬組成物は、鼻粘膜移植を介した送達のために(及びそれによる投与のために)製剤化される。一実施態様において、本医薬組成物は、側脳室内注射又は注入のために(及びそれによる投与のために)製剤化される。別の実施態様において、本医薬組成物は、髄腔内、槽内注射又は注入のために(及びそれによる投与のために)製剤化される。一実施態様において、本医薬組成物は、髄腔内、腰椎注射又は注入のために(及びそれによる投与のために)製剤化される。例えば、活性物質は、Oryにより考察された様式(2017)と同じ又は類似の様式で、髄腔内投与のために製剤化され、及び/又は髄腔内へと投与される。
【0091】
非限定的に、バーホールもしくは大槽を介した注射又は腰椎穿刺又は当該技術分野において公知の類似のものを含む様々な技術が、使用されてよい。内部(例えば、移植された)又は外部のいずれかの、ポンプ、カテーテル、リザーバーなどの様々な装置が、当該技術分野において公知の送達のために使用されてよい。
【0092】
一実施態様において、投与間隔は、2週間毎に1回である。一実施態様において、投与間隔は、1ヶ月毎に1回である。一実施態様において、投与間隔は、2ヶ月毎に1回である。一実施態様において、投与間隔は、1ヶ月に2回である。一実施態様において、投与間隔は、毎週1回である。一実施態様において、投与間隔は、1週間に2回又は数回である。一実施態様において、投与間隔は、毎日である。一実施態様において、投与は、連続注入など、連続である。
【0093】
ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩は、そのCNSへの直接送達又は血管-脳関門を超えるその送達のいずれかに対処するように調節された、アセチル-ロイシンに関して本明細書において開示された投与量又はそれと同等の量で、投与されてよい。
【0094】
同様に、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩は、投与量又は本明細書に開示された量で投与されてよく;この投与量は、その投与経路(例えば、CNSへの直接送達)に従い調節される。
【0095】
(用量)
ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、投与量約500mg~約15g/日、又は約500mg~約10g/日、好ましくは約1.5g~約10g/日で投与されてよい。好ましくは、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、固形経口経路又は液体経口経路により投与される。
【0096】
治療開始時又は不全の事象時に、用量は、3g、4g、5g、6g、7g、8g、9g、10g、11g、12g、13g、14g、15g/日まで、安全に増量されてよい。
【0097】
一つの鏡像異性体が投与される場合、投与量は、状況に応じて減少されてよい。例えば、ロイシン、アセチル-L-ロイシンのみが、又はアセチル-D-ロイシンのみが投与される場合、投与量は、250mg~15g/日、250mg~10g/日、250mg~5g/日、又は好ましくは0.75g~5g/日であってよい。
【0098】
本発明に従い、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、先に公知のものよりもより高い投与量で及び/又は先に公知のものよりもより長い治療期間、投与されてよい。
【0099】
例えば、一つの好ましい実施態様において、投与される投与量は、約1g~約15g又は約1g~約10g/日、より好ましくは約1.5g~約7g/日である。好ましくは、投与される投与量は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14g及び15g/日の間であってよい。より好ましくは、投与される投与量は、2、3、4、5、6、7、8又は9g及び10g/日の間であってよい。一つの好ましい実施態様において、投与される投与量は、1.5g/日より多いが、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6又は5g/日より少なくてよい。一つの好ましい実施態様において、投与量は、2g/日より多くから6g/日を超えないまでの範囲である。好ましい実施態様において、これらの投与量は、固形経口剤形、好ましくは錠剤で投与される。好ましい実施態様において、これらの投与量は、そのラセミ形である場合のロイシン又はアセチル-ロイシンに関するものである。ロイシン又はアセチル-ロイシンに関する投与量は、鏡像体過剰で存在する場合には、本明細書に列挙された値よりも少なくてよく、例えばおよそ50%以下であってよい。従って前述の投与量-範囲は、半量とされた場合にも、明確に本発明により包含される。
【0100】
総1日量は、複数回の投与に分散され、すなわち投与は、必要とされる投与量を達成するために、1日に2回以上必要とされ得る。例として、ロイシン又はアセチル-ロイシンの総1日量を提供するために必要とされる錠剤の数は、2回の投与(例えば、朝及び晩)又は3回の投与(例えば、朝、昼及び晩)にわたり分割されてよい。各投与量は、好ましくは食事と共に投与される。従って、例として、アセチル-DL-ロイシンの総1日量3gは、朝食と共に2錠のTanganil(登録商標)(又は同等物)錠として、昼食と共に2錠の更なる錠剤、及び夕食と共に2錠の更なる錠剤として投与されてよい。
【0101】
一つの好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、1日1回投与される。
【0102】
別の好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、1日2回投与される。
【0103】
別の好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、1日3回、好ましくは朝、昼食時及び晩に投与される。
【0104】
一つの好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、約500mg~約15g/日の投与量で投与される。
【0105】
別の好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、約1500mg~約6000mg/日の投与量で投与される。
【0106】
別の好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、総1日量約2500mg~約5500mg/日で投与される。
【0107】
一つの好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、単位剤形で投与され、ここで単位用量は、活性物質500mgを含有する。
【0108】
一つの好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、総投与量約3000mg/日で投与される。より好ましくは、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、1日3回投与量1000mgで、好ましくは2個の500mg錠剤で1日3回投与される。
【0109】
別の好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、総投与量約4500mg/日で投与される。より好ましくは、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、1日3回投与量1500mgで、好ましくは3個の500mg錠剤で1日3回投与される。
【0110】
別の好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、総投与量約5000mg/日で投与される。より好ましくは、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、4個の500mg錠剤の1回投与量で、及び3個の500mg錠剤の2回投与量で投与される。
【0111】
別の好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、総投与量約5500mg/日で投与される。より好ましくは、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、4個の500mg錠剤の2回投与量で、及び3個の500mg錠剤の1回投与量で投与される。
【0112】
治療期間は、臨床の進行に従い変動してよい。例えば、これは、7日以上、2週間以上、3週間以上、1ヶ月以上、6週間以上、7週間以上、又は2ヶ月以上であってよい。一つの好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、2週間以上の期間治療にわたり投与される。
【0113】
別の好ましい実施態様において、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの医薬として許容し得る塩は、3ヶ月以上、4ヶ月以上、5ヶ月以上又は6ヶ月以上投与される。一つの好ましい実施態様において、治療期間は、1年以上、2年以上、4年以上、5年以上、又は10年以上である。一つの好ましい実施態様において、治療期間は、患者の一生に及ぶことがある。
【0114】
剤形、投与量、投与計画及び治療期間のいずれか及び全ての組合せは、本発明により想定され且つ包含される。好ましい組合せは、治療期間2ヶ月以上にわたり、3回投与/日で服用される総1日量2g~6g/日である。更に好ましい組合せは、治療期間6ヶ月以上にわたり、3回投与/日で服用される総1日量3g/日より多く5g/日を超えない。好ましくは、この剤形は、固形経口剤形であり、より好ましくは錠剤である。
【0115】
(塩)
本発明の物質は、塩として、特に医薬として許容し得る塩又はエステルとして存在することができる。
【0116】
本発明の物質の医薬として許容し得る塩は、その好適な酸付加塩又は塩基性塩を含む。好適な医薬としての塩の総説は、Bergeらの文献、J Pharm Sci、66、1-19(1977)において認めることができる。塩は、例えば、強い無機酸と、例として鉱酸、例えば硫酸、リン酸又はハロゲン化水素酸と;強い有機カルボン酸と、例として非置換又は置換(例えばハロゲンによる)の炭素原子1~4個のアルカンカルボン酸、例えば酢酸と;飽和又は不飽和ジカルボン酸と、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸又はテトラフタル酸と;ヒドロキシカルボン酸と、例えば、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、又はクエン酸と;アミノ酸と、例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸と;安息香酸と;あるいは、有機スルホン酸と、例として非置換又は置換(例えばハロゲンによる) (C1-C4)-アルキル-又はアリール-スルホン酸、例えばメタン-又はp-トルエンスルホン酸と形成される。
【0117】
(鏡像異性体/互変異性体)
本発明はまた、本発明の物質の適切な全ての鏡像異性体及び互変異性体も含む。対応する鏡像異性体及び/又は互変異性体は、当該技術分野において公知の方法により分離/調製されてよい。
【0118】
(立体異性体及び幾何異性体)
本発明の物質の一部は、立体異性体及び/又は幾何異性体として存在してよく-例えばこれらは、1つ以上の不斉中心及び/又は幾何学的中心を有し、そのため2以上の立体異性的形状及び/又は幾何学的形状で存在してよい。本発明は、それらの物質の個別の立体異性体及び幾何異性体、並びにそれらの混合物の全ての使用を意図している。請求項において使用される用語は、これらの形状が、適切な機能活性(必ずしも同程度ではない)を保持することを条件として、該形状を包含している。
【0119】
本発明はまた、この物質又はその医薬として許容し得る塩の全ての好適な同位体変動も含む。本発明の物質又はその医薬として許容し得る塩の同位体変動は、少なくとも1個の原子が、同じ原子番号であるが、天然に通常認められる原子質量とは異なる原子質量を有する原子により置き換えられているものと定義される。本物質及びその医薬として許容し得る塩へ組み込まれ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素及び塩素の同位体、例えば各々、2H、3H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F及び36Clが挙げられる。本物質及びその医薬として許容し得る塩の、例えば3H又は14Cなどの放射性同位元素が組み込まれたものの特定の同位体変動は、薬物及び/又は基質の組織分布研究において有用である。トリチウム化された、すなわち3H、及び炭素-14、すなわち14Cの同位体は、それらの調製の容易さ及び検出性について、特に好ましい。更に重水素、すなわち2Hなどの同位体による置換は、特定の治療的利点をもたらすことがあり、より大きい代謝安定性、例えばインビボにおける半減期の延長又は減少した必要な用量をもたらし、結果として一部の状況においては好ましいことがある。本発明の物質及び本発明のその医薬として許容し得る塩の同位体変動は、一般に好適な試薬の適切な同位体変動を使用し、通常の手順により調製されることができる。
【0120】
(溶媒和物)
本発明はまた、本発明の物質の溶媒和物の形状も含む。請求項において使用される用語は、これらの形状を包含している。
【0121】
(多形体)
本発明は更に、その様々な結晶形、多形体形及び(無)水和物形の本発明の物質に関する。化学的化合物は、そのような化合物の合成調製において使用される溶媒の精製の方法及び/又は分離形態をわずかに変動することにより、そのような形状のいずれかで単離されてよいことは、製薬産業においてよく確立されている。
【0122】
本明細書(添付の請求項、要約及び図面を含む)に記載された全ての特徴、並びに/又はそのように開示された任意の方法の全ての工程は、少なくともそのような特徴及び/又は工程の一部が互いに排他的でない限りは、任意の組合せで先の態様のいずれかと組合せてよい。
【0123】
本発明をここで、対象における片頭痛の治療における特にアセチル-ロイシンの有用性を明らかにしている以下の非限定的実施例により、より詳細に説明する。
【実施例
【0124】
(実施例)
(実施例1:症例研究:片頭痛のためのアセチル-ロイシンの投与)
Tanganil(登録商標)は、Pierre Fabre Medicament(フランス)から、錠剤の形状で入手した。
【0125】
(患者の詳細:)
性別:女性
年齢:18歳
身長:1.75m
体重:65kg。
【0126】
(治療)
1日あたり6錠の錠剤:朝2錠、昼2錠、及び晩2錠。各500mgのTanganil(登録商標)錠剤の正確な組成は、以下である:500mgアセチル-DL-ロイシン、88mgコムギデンプン、88mgα化メイズ(トウモロコシ)デンプン、13mg炭酸カルシウム及び11mgステアリン酸マグネシウム。
【0127】
Tanganil(登録商標)による治療前に、対象は、以下の症状をTanganil(登録商標)による治療前のおよそ6~9ヶ月間経験した:
・数分から半時間持続する頭痛の発作;1週間におよそ4~6日;1日に1~4回;
・めまいの突然の発作。これらの発作時に、素早い頭の運きは、しばしば数秒間の強力なめまいにつながった。1週間におよそ1~3日;1日に1~2回;
・数分から1時間の誘因のない悪心。患者が横になるか又は温熱治療を受ける場合には、悪心は弱まる。1週間におよそ4~6日、通常は夕方;
・見上げるか又は左もしくは右の遠くを見る時、眼/眼窩の中又は周囲に痛みがあり、時には終日続く。2週間毎におよそ1回。
【0128】
Tanganil(登録商標)による治療前のこの6~9ヶ月の期間に先行して、対象は、時折めまい及び悪心を有したが、頭痛はめったになかった。Tanganil(登録商標)による治療後、対象は、約2週間半後の変化に気がついた;ほとんどの症状は、半分の頻度でのみ起こった。治療の4週間後、対象は、以下に気がついた:
・より少ない頭痛発作;1週間に約2回、通常朝;
・突然のめまい発作はほとんどなかった;2週間毎におよそ1回;
・悪心はほとんどなかった;2週間毎におよそ1回;
・眼/眼窩の痛みは完全に消失した。
【0129】
1日あたり6錠の錠剤(2-2-2/日)の用量で5ヶ月の期間にわたり、患者の症状は逆行され、且つ患者は以下を経験した:
・増加した頭痛の頻度、およそ2日毎、1日に数回;
・一般に頭痛と結びついた、めまい発作の頻度の増加;
・悪心の症状、1週間に約1回;
・増加した眼痛の頻度及び重症度、たまには患者が眼をあけていることができないくらいまでの重篤さ、及び見上げた場合又は物体に焦点を合わせた時の激痛。
【0130】
用量は、1日あたり9錠の錠剤(3-3-3/日)まで増やした;総用量4.5g/日。後続の6ヶ月の観察期間にわたり、患者は:
・頭痛の何らかの更なる発作を有さず;
・めまい又は眩暈感の何らかの発作を有さず;
・わずか2回の悪心の短いエピソードを有し;
・1つの患者の眼後方の疼痛のエピソードを有した。
【0131】
生活の質はかなり向上し、その結果対象は、高校で自身の最後の試験をうまくパスすることができた。患者の症状は、特にこの治療期間の最後の数週間、改善された:
・眼/眼窩の痛みは完全に消失し;
・悪心はほとんど完全に消失した。
【0132】
患者は、自分の症状が再発することは非常に稀であり、且つ疲れた時又はストレスのある時又は非常に暑い日に関連しためまい及び頭痛の発作を時折経験したことを指摘し、これは患者は自分の循環のせいにした。患者は、水を飲むと、これらの発作が緩和されるのを助けることを指摘した。
【0133】
(実施例2:症例研究:前庭性片頭痛のためのアセチル-ロイシンの投与)
(患者の詳細:)
性別;女性;
年齢:18歳。
【0134】
(治療)
1日あたり6錠のTanganil(登録商標)錠剤:朝2錠、昼2錠、及び晩2錠。実施例1に説明されたTanganil(登録商標)錠剤。
【0135】
Tanganil(登録商標)による治療前に、患者は以下の症状を経験した:4ヶ月の期間にわたり合計約50回のめまいの発作、各々は約20分間持続し、その30%は頭痛を随伴した。これは、1週間の病気休暇(sick-leave)中に少なくとも3日生じた。Tanganil(登録商標)(2-2-2/日)による治療開始の3週間後、患者は、更なる発作に襲われることはなかった。更なる経過観察は、治療開始から14週の期間内には、発作がないことを明らかにした。
【0136】
(実施例3:前兆を伴う片頭痛のためのアセチル-ロイシンの投与)
(患者の詳細:)
性別:男性
年齢:成人。
【0137】
(治療)
1日あたり10錠のTanganil(登録商標)錠剤:朝4錠、昼3錠、及び晩3錠。実施例1に説明されたTanganil(登録商標)錠剤。
【0138】
Tanganil(登録商標)による治療前に、患者は、少なくとも1年にわたり、以下の症状を経験した:
・長い時間持続する左側方の頭痛発作であり、その20%は、約5分間持続する視覚の前兆を随伴し;
○頻度:1週間に約1回;1週間に1回服用するイブプロフェン600mgに反応;
・約5分間持続する、左半分の視野の孤立した視覚性前兆;
○頻度:1月に約4回。
【0139】
Tanganil(登録商標)による治療開始後、2ヶ月の期間中、患者は、1回の孤立した視覚性前兆、1回の片頭痛様頭痛を伴う視覚性前兆、及び1回の左側方の片頭痛様頭痛のみを報告した。治療は、2ヶ月後に終了した。この2ヶ月の治療期間の終了後、その後の4週以内に、患者は、6回の片頭痛様頭痛の発作、1回は視覚性前兆を伴うもの、及び1回の孤立した視覚性前兆を含む、発作の顕著な増加を報告した。治療は引き続きほぼ1年間再開し、この間患者は、ほぼ2ヶ月毎に1回の前兆を伴わない片頭痛様頭痛の発作を、及びほぼ3ヶ月毎に1回の前兆を伴う片頭痛様頭痛の発作を経験した。治療はその後終了し、6週間の経過観察中に、患者は、5回の片頭痛様頭痛の発作及び3回の前兆を伴う発作を経験した。
【0140】
(実施例4:症例研究:片頭痛及び前庭性片頭痛のためのアセチル-ロイシンの投与)
(患者の詳細)
性別:男性、
年齢:54歳。
【0141】
(治療)
1日あたり6錠のTanganil(登録商標)錠剤:1週間は、朝2錠、昼2錠、及び晩2錠;その後、1日あたり10錠のTanganil(登録商標)錠剤:朝4錠、昼3錠、及び晩3錠。実施例1に説明されたTanganil(登録商標)錠剤。
【0142】
Tanganil(登録商標)による治療前に、患者は、以下の症状を少なくとも1年間経験した:
・ほぼ2日毎の、片頭痛様頭痛の発作;イブプロフェン又はアスピリンによる改善なし;ノバルギンにより改善;
・頭痛を随伴するめまいの発作、頻度は1週間に約3回;
・長い病気休暇時に、著しい体重減少(12kg)を経験した。
【0143】
Tanganil(登録商標)による治療開始後(2-2-2/日で1週間、その後4-3-3/日)、4週間の期間内に、患者は、それ以上頭痛の発作を報告せず、ペインキラーの必要がなかった。薬物治療が1日中止された場合に、頭痛が再発し、そのため治療を継続した。
【0144】
(実施例5:症例研究:片頭痛のためのアセチル-ロイシンの投与)
(患者の詳細)
性別:男性、
年齢:54歳。
【0145】
(治療)
実施例4に記載のように1日あたり投与されたTanganil(登録商標)錠剤。実施例1に説明されたTanganil(登録商標)錠剤。
【0146】
Tanganil(登録商標)による治療前に、患者は、長年以下の症状を経験した:
・1月あたりおよそ20~25回の頭痛の頻度を有する、3~4時間持続する頭痛の発作;
・1月あたりおよそ3又は4回の頻度を有する3~4時間持続する片頭痛の発作、並びに1年あたり1又は2回の前兆を伴う片頭痛の発作。
【0147】
Tanganil(登録商標)による6週間の治療時に、患者は、1月あたりおよそ3回に頭痛の発作の頻度が減少し、及び1月あたりおよそ2回に片頭痛の発作の頻度が減少したことを報告した。患者は、治療開始して2、3日以内に、症状の改善を経験した。
【0148】
患者は、6ヶ月間にわたりTanganil(登録商標)の服用を継続し、その後3ヶ月間治療を中断した。治療の終了後5週間中に、患者は、1月あたり4回の片頭痛の発作の頻度の増加を経験した。患者は、Tanganil(登録商標)による治療を再開し、3ヶ月後に、1月あたり2回の片頭痛の発作の頻度の減少を経験した。
【0149】
(実施例6:症例研究:片頭痛のためのアセチル-ロイシンの投与)
(患者の詳細)
年齢:38歳。
【0150】
(治療)
実施例4に記載のように1日あたり投与されたTanganil(登録商標)錠剤。実施例1に説明されたTanganil(登録商標)錠剤。
【0151】
Tanganil(登録商標)による治療前に、患者は、数年間にわたり以下の症状を経験した:
・1ヶ月におよそ2回(1月あたりおよそ6日の片頭痛日数)の頻度を有する、およそ3日間持続する、前兆を伴わない片頭痛の発作;
・片頭痛開始前に音及び光に対する過敏並びに時には下痢を含んだ症状を随伴する、片頭痛発作を伴う。
【0152】
Tanganil(登録商標)による治療開始前に、患者は、最も最近にはリザトリプタン及びナプロキセンにより治療された。Tanganil(登録商標)による治療のほぼ8週間の間、患者は、期間が短縮されたおよそ4回の片頭痛の発作の頻度の減少を報告した。Tanganil(登録商標)による治療前の1回の発作あたり経験した3日の片頭痛日数と比べ、2回の発作は2日間持続し、2回の発作はわずかに1日持続した。
【0153】
患者は、Tanganil(登録商標)の服用を継続し、且つ4ヶ月の治療にわたり、1月あたり6日から1月あたり1.33日への片頭痛日数の減少を経験した。
【0154】
(実施例7:症例研究:前庭性片頭痛のためのアセチル-ロイシンの投与)
(患者の詳細)
性別:男性、
年齢:70歳。
【0155】
(治療)
1日あたり10錠のTanganil(登録商標)錠剤:朝4錠、昼3錠、及び晩3錠。実施例1に説明されたTanganil(登録商標)錠剤。
【0156】
Tanganil(登録商標)による治療前に、患者は、数年にわたり以下の症状を経験した:
・1月あたりおよそ3.3回の頻度の片頭痛の発作;
・この発作を伴うめまいの症状。
【0157】
Tanganil(登録商標)による治療開始後、8ヶ月の期間以内に、患者は、合計10回の発作、及び1月あたりおよそ3.3回から1月あたり1.25回への発作の頻度の減少を報告した。患者は、めまいの症状を含む発作は、より短くなり、且つ強度がより低くなったことを報告した。
【0158】
対象は、この用量の服用を継続した。生活の質はかなり改善されている。
【0159】
(実施例8:症例研究:片頭痛のためのアセチル-ロイシンの投与)
(患者の詳細)
性別:男性、
年齢:65歳。
【0160】
(治療)
1日あたり10錠のTanganil(登録商標)錠剤:朝4錠、昼3錠、及び晩3錠。実施例1に説明されたTanganil(登録商標)錠剤。
【0161】
Tanganil(登録商標)による治療前に、患者は、数年間にわたり以下の症状を経験した:
・1月あたりおよそ20回の頻度の、慢性片頭痛を含む、前兆を伴う又は伴わない片頭痛の発作;
・ペインキラーの定期的投与により治療した、毎日の頭痛。
【0162】
Tanganil(登録商標)による治療の開始前に、患者は、ペインキラーのほぼ毎日の投与、並びにトリプタンによる治療を含む、様々な薬物治療を受けた。Tanganil(登録商標)による治療の開始後、2ヶ月間以内に、患者は、数年間で初めての片頭痛を伴わず且つ追加の薬物治療の必要のない数週間を報告した。患者は、合計1月あたりおよそ8日の頭痛日数を伴うものの、1月あたりおよそ20回から1月あたり5回への発作の頻度の減少を報告した。
【0163】
対象は、この用量の服用を継続した。生活の質はかなり改善されている。
【0164】
(実施例9:症例研究:片頭痛のためのアセチル-ロイシンの投与)
(患者の詳細)
性別:女性、
年齢:27歳。
【0165】
(治療)
1日あたり10錠のTanganil(登録商標)錠剤:朝4錠、昼3錠、及び晩3錠。実施例1に説明されたTanganil(登録商標)錠剤。
【0166】
Tanganil(登録商標)による治療前に、患者は、数年間にわたり以下の症状を経験した:
・1月あたりおよそ12回の頻度での、前兆を伴わない片頭痛の発作;
・ほぼ毎日の頭痛。
【0167】
Tanganil(登録商標)による治療開始後、患者は、1月あたりおよそ12回から1月あたり4回への片頭痛の発作の頻度の減少、及び4日への1月あたりの頭痛日数の減少を報告した。
【0168】
対象は、この用量の服用を継続した。生活の質はかなり改善されている。
【0169】
(実施例10:)
NPCチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、インビトロにおいて、それぞれ1mMのアセチル-DL-ロイシン、アセチル-L-ロイシン、アセチル-D-ロイシン、DL-ロイシン、L-ロイシン、及びD-ロイシンにより72時間処理した。相対リソソーム容積を、LysoTrackerにより定量した。
【0170】
NPC CHO細胞は、野生型対照と比べ、上昇したLysoTracker蛍光レベルを有することが認められ、これは罹患した表現型の増大したリソソーム容積の指標である。
【0171】
NPC CHO細胞のアセチル-DL-ロイシン、アセチル-L-ロイシン、アセチル-D-ロイシン、DL-ロイシン、L-ロイシン、及びD-ロイシンの各々による処理は、それらの細胞におけるリソソーム容積を有意に減少した。図1に示したデータは、未処理の野生型の線維芽細胞に対する倍数変化として表したリソソーム容積による、各処理に関する結果を示している。アスタリスク(**)は、未処置のNPC1-ヌルに対するp-値<0.01を示している。
【0172】
このデータは、ロイシン及びアセチル-ロイシンは、インビトロにおいて同様の活性を明らかにし、且つ両方共、リソソーム容積を減少することによる妨害されたリソソーム貯蔵の修正(rectification)に関連していることを示している。
【0173】
本発明の範囲及び精神からの逸脱を伴わない、本発明の様々な修飾及び変動は、当業者には明らかであろう。本発明は特定の好ましい実施態様と結びつけて説明されているが、請求される本発明は、そのような特定の実施態様に過度に限定されないことは理解されなければならない。実際、関連技術分野の業者には明らかである本発明を実行するために説明された様式の様々な修飾は、本発明により対象とされることが意図されている。
【0174】
本明細書において言及される各特許文書及び科学文献の全体の開示は、全ての目的のために参照することにより組み入れられる。
(参考文献)
【化1】
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
片頭痛、又はそれに関連した1以上の症状の治療又は予防において使用するための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様2)
前記アセチル-ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、頭痛、疲労感、前兆、悪心、吐気、光過敏、音過敏、臭気過敏、発汗、集中力不足、熱感、冷感、腹痛及び下痢から選択される1以上の片頭痛症状の頻度を減少するか、該症状を緩和するか又は除去する、態様1記載の使用のためのアセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様3)
前記アセチル-ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、片頭痛様頭痛を軽減するか、緩和するか又は除去する、態様1又は2記載の使用のためのアセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様4)
前記アセチル-ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、前兆の治療又は予防における使用のためのものである、態様1又は2記載の使用のためのアセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様5)
前記アセチル-ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、片頭痛様頭痛に関連した前兆の治療又は予防における使用のためのものである、態様1又は2記載の使用のためのアセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様6)
前記アセチル-ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、片頭痛様頭痛を伴わない前兆の治療又は予防における使用のためのものである、態様1又は2記載の使用のためのアセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様7)
前記アセチル-ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、視力の問題又は視覚障害、しびれ又はうずき、眩暈感、平衡障害、運動障害、会話困難及び意識喪失から選択される1以上の症状の頻度を減少するか、該症状を緩和するか又は除去する、態様4~6のいずれか一項記載の使用のためのアセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様8)
前記アセチル-ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、前兆に関連しない片頭痛の治療又は予防における使用のためのものである、態様1又は2記載の使用のためのアセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様9)
前兆に関連した片頭痛の治療又は予防における使用のための、態様1又は2記載の使用のためのアセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様10)
片麻痺性片頭痛、散発性片麻痺性片頭痛、前庭性片頭痛、脳底性片頭痛又は網膜性片頭痛の治療又は予防における使用のための、態様1又は2記載の使用のためのアセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様11)
前記アセチル-ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、
前庭性片頭痛ではない片頭痛の治療又は予防;
めまいの症状に関連した前庭性片頭痛ではない片頭痛の治療又は予防;
めまい又はめまいの症状に関連しない片頭痛の治療又は予防;及び/又は
急性めまい又は急性末梢前庭病巣に起因しためまいに関連しない片頭痛の治療又は予防:
における使用のためのものである、態様1又は2記載の使用のためのアセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様12)
慢性片頭痛の治療又は予防における使用のための、態様1又は2記載の使用のためのアセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様13)
反復性片頭痛の治療又は予防における使用のための、態様1又は2記載の使用のためのアセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様14)
片頭痛に関連した1以上の前駆症状の治療又は予防における使用のための、態様1又は2記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様15)
片頭痛に関連した疼痛の治療又は予防における使用のための、態様1又は2記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様16)
片頭痛に関連した1以上の後発症状の治療又は予防における使用のための、態様1又は2記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様17)
前記アセチル-ロイシンが、ラセミ形である、態様1~16のいずれか記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様18)
前記アセチル-ロイシンが、L-鏡像異性体の鏡像体過剰又はD-鏡像異性体の鏡像体過剰である、態様1~16のいずれか一項記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様19)
前記アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日1回又は1日2回の投与のためのものである、態様1~18のいずれか記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様20)
前記アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日3回の投与のためのものである、態様1~18のいずれか一項記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様21)
前記アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、2週間以上の治療期間にわたる投与のためのものである、態様1~20のいずれか記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様22)
前記アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日あたり約500mg~約15gの投与量での投与のためのものである、態様1~21のいずれか記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様23)
前記アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日あたり約1500mg~約6000mgの投与量での投与のためのものである、態様1~22のいずれか記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様24)
前記アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日あたり約2500mg~約5500mgの投与量での投与のためのものである、態様1~23のいずれか記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様25)
前記アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日あたり約3000mgの総投与量での投与のためのものである、態様1~24のいずれか記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様26)
前記アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日3回1000mgの投与量での、好ましくは500mg錠剤2錠の1日3回投与での投与のためのものである、態様25記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様27)
前記アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日あたり約4500mgの総投与量で投与される、態様1~24のいずれか一項記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様28)
前記アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日3回1500mgの投与量での、好ましくは500mg錠剤3錠の1日3回投与での投与のためのものである、態様27記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様29)
前記アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日あたり約5000mgの総投与量での投与のためのものである、態様1~24のいずれか一項記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様30)
前記アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、500mg錠剤4錠の1回投与量、及び500mg錠剤3錠の2回投与量での投与のためのものである、態様29記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様31)
前記アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日あたり約5500mgの総投与量での投与のためのものである、態様1~24のいずれか一項記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様32)
前記アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、500mg錠剤4錠の2回投与量、及び500mg錠剤3錠の1回投与量での投与のためのものである、態様31記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様33)
片頭痛、又はそれに関連した1以上の症状の治療又は予防のための医薬品の調製における、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩の使用。
(態様34)
アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩の治療的又は予防的有効量を対象へ投与することを含む、対象において片頭痛又はそれに関連した1以上の症状を治療又は予防する方法。
(態様35)
前記対象が、ヒトである、態様34記載の方法。
(態様36)
前兆の予防において使用するための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様37)
前記前兆が、視覚の前兆である、態様36記載の使用のための、アセチル-ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様38)
片頭痛、又はそれに関連した1以上の症状の治療又は予防における使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様39)
前記ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、中枢神経系へ直接送達されるように製剤化される、態様38記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様40)
前記ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、頭痛、疲労感、前兆、悪心、吐気、光過敏、音過敏、臭気過敏、発汗、集中力不足、熱感、冷感、腹痛及び下痢から選択される1以上の片頭痛症状の頻度を減少するか、該症状を緩和するか又は除去する、態様38又は39記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様41)
前記ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、片頭痛様頭痛を軽減するか、緩和するか又は除去する、態様38~40のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様42)
前記ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、前兆の治療又は予防における使用のためのものである、態様38~40のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様43)
前記ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、片頭痛様頭痛に関連した前兆の治療又は予防における使用のためのものである、態様38~40のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様44)
前記ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、片頭痛様頭痛を伴わない前兆の治療又は予防における使用のためのものである、態様38~40のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様45)
前記ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、視力の問題又は視覚障害、しびれ又はうずき、眩暈感、平衡障害、運動障害、会話困難及び意識喪失から選択される1以上の症状の頻度を減少するか、該症状を緩和するか又は除去する、態様38~40のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様46)
前記ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、前兆に関連しない片頭痛の治療又は予防における使用のためのものである、態様38~40のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様47)
前兆に関連した片頭痛の治療又は予防における使用のための、態様38~40のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様48)
片麻痺性片頭痛、散発性片麻痺性片頭痛、前庭性片頭痛、脳底性片頭痛又は網膜性片頭痛の治療又は予防における使用のための、態様38~40のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様49)
慢性片頭痛の治療又は予防における使用のための、態様38~40のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様50)
反復性片頭痛の治療又は予防における使用のための、態様38~40のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様51)
片頭痛に関連した1以上の前駆症状の治療又は予防における使用のための、態様38~40のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様52)
片頭痛に関連した疼痛の治療又は予防における使用のための、態様38~40のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様53)
片頭痛に関連した1以上の後発症状の治療又は予防における使用のための、態様38~40のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様54)
前記ロイシンが、ラセミ形である、態様38~53のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様55)
前記ロイシンが、L-鏡像異性体の鏡像体過剰又はD-鏡像異性体の鏡像体過剰である、態様38~53のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様56)
前記ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日1回又は1日2回の投与のためのものである、態様38~55のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様57)
前記ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日3回の投与のためのものである、態様38~55のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様58)
前記ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、2週間以上の治療期間にわたる投与のためのものである、態様38~57のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様59)
前記ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日あたり約500mg~約15gの投与量での投与のためのものである、態様38~58のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様60)
前記ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日あたり約1500mg~約6000mgの投与量での投与のためのものである、態様38~59のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様61)
前記ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日あたり約2500mg~約5500mgの投与量での投与のためのものである、態様38~60のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様62)
前記ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日あたり約3000mgの総投与量での投与のためのものである、態様38~61のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様63)
前記ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日3回1000mgの投与量での、好ましくは500mg錠剤2錠の1日3回投与での投与のためのものである、態様62記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様64)
前記ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日あたり約4500mgの総投与量で投与される、態様38~61のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様65)
前記ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日3回1500mgの投与量での、好ましくは500mg錠剤3錠の1日3回投与での投与のためのものである、態様64記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様66)
前記ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日あたり約5000mgの総投与量での投与のためのものである、態様38~61のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様67)
前記ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、500mg錠剤4錠の1回投与量、及び500mg錠剤3錠の2回投与量での投与のためのものである、態様66記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様68)
前記ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、1日あたり約5500mgの総投与量での投与のためのものである、態様38~61のいずれか一項記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様69)
前記ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩が、500mg錠剤4錠の2回投与量、及び500mg錠剤3錠の1回投与量での投与のためのものである、態様68記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様70)
片頭痛、又はそれに関連した1以上の症状の治療又は予防のための医薬品の調製における、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩の使用。
(態様71)
ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩の治療的又は予防的有効量を対象へ投与することを含む、対象における片頭痛又はそれに関連した1以上の症状を治療又は予防する方法。
(態様72)
前記対象が、ヒトである、態様71記載の方法。
(態様73)
前記ロイシン又はその医薬として許容し得る塩が、中枢神経系へ直接送達されるように製剤化される、態様71又は72記載の方法。
(態様74)
前記直接送達が、鼻腔内投与、脳室内投与、髄腔内投与、頭蓋内投与、及び鼻粘膜移植を介した投与から選択される投与による、態様73記載の方法。
(態様75)
前記直接送達が、髄腔内投与による、態様74記載の方法。
(態様76)
前兆の予防における使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
(態様77)
前記前兆が、視覚の前兆である、態様76記載の使用のための、ロイシン、又はその医薬として許容し得る塩。
図1