(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ダイレータ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
A61B17/34
(21)【出願番号】P 2020521001
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2018035092
(87)【国際公開番号】W WO2019225026
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-10-28
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/019981
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伏屋 友希弘
(72)【発明者】
【氏名】細見 椋
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0046357(US,A1)
【文献】特開2017-221562(JP,A)
【文献】特開2002-177289(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0074398(US,A1)
【文献】国際公開第2012/002299(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/180209(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端から基端に向かって外径が増大するテーパ部を有する中空シャフトと、
前記テーパ部の外周に設けられ、前記テーパ部の外周を、前記中空シャフトの長軸方向に沿って螺旋状に延びる凸部と、を有し、
前記凸部は、前記テーパ部の先端側に位置する第1凸部と、前記テーパ部の基端側に位置する第2凸部とを有し、
前記第1凸部および前記第2凸部は、前記テーパ部の外周面からの高さが互いに異な
り、
前記凸部は、前記テーパ部の外周面に巻き回された第1素線を有する
ダイレータ。
【請求項2】
前記第1凸部の前記テーパ部の外周面からの高さは、前記第2凸部の前記テーパ部の外周面からの高さよりも低い、請求項1に記載のダイレータ。
【請求項3】
前記第1凸部は、前記テーパ部の先端側に位置する前記第1素線と、前記テーパ部の先端側に位置する前記第1素線の外周面を被覆する樹脂からなる第1被覆層と、を有し、
前記第2凸部は、前記テーパ部の基端側に位置する前記第1素線と、前記テーパ部の基端側に位置する前記第1素線の外周面を被覆する樹脂からなる第2被覆層と、を有し、
前記第1被覆層の厚さは、前記第2被覆層の厚さよりも薄い、請求項2に記載のダイレータ。
【請求項4】
前記第2凸部の前記テーパ部の外周面からの高さは、前記第1凸部の前記テーパ部の外周面からの高さよりも低い、請求項1に記載のダイレータ。
【請求項5】
前記第1凸部は、前記テーパ部の先端部に位置する前記第1素線と、前記テーパ部の先端部に位置する前記第1素線の外周面を被覆する樹脂からなる第1被覆層と、を有し、
前記第2凸部は、前記テーパ部の基端部に位置する前記第1素線と、前記テーパ部の基端部に位置する前記第1素線の外周面を被覆する樹脂からなる第2被覆層と、を有し、
前記第1被覆層の厚さは、前記第2被覆層の厚さよりも厚い、請求項4に記載のダイレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレータに関する。
【背景技術】
【0002】
治療のために、患者の消化管等における病変部の壁に形成された孔を拡張するダイレータが知られている。壁に形成された孔にダイレータの先端を挿入してテーパ部を孔に押し込んでいくことで、孔を拡張する。このようなダイレータは、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該ダイレータでは、ロッドのテーパ形状の先端にねじ山が設けられている。そして、ダイレータを回転させて、ねじ山が病変部の壁に引っ掛かることにより、ダイレータに推進力が生じる。また、ダイレータを回転させてダイレータを病変部から抜去する時には、ねじ山が、病変部の壁との摩擦により抵抗を受ける。
【0005】
そこで、本発明は、推進力の向上または抵抗の減少が可能なダイレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の一態様に係るダイレータは、先端から基端に向かって外径が増大するテーパ部を有する中空シャフトと、前記テーパ部の外周に設けられ、前記テーパ部の外周を、前記中空シャフトの長軸方向に沿って螺旋状に延びる凸部と、を有し、前記凸部は、前記テーパ部の先端側に位置する第1凸部と、前記テーパ部の基端側に位置する第2凸部とを有し、前記第1凸部および前記第2凸部は、前記テーパ部の外周面からの高さが互いに異なる。
【0007】
また、前記第1凸部の前記テーパ部の外周面からの高さは、前記第2凸部の前記テーパ部の外周面からの高さよりも低くてもよい。
【0008】
また、前記凸部は、前記テーパ部の外周面に巻き回された第1素線を有し、前記第1凸部は、前記テーパ部の先端側に位置する前記第1素線と、前記テーパ部の先端側に位置する前記第1素線の外周面を被覆する樹脂からなる第1被覆層と、を有し、前記第2凸部は、前記テーパ部の基端側に位置する前記第1素線と、前記テーパ部の基端側に位置する前記第1素線の外周面を被覆する樹脂からなる第2被覆層と、を有し、前記第1被覆層の厚さは、前記第2被覆層の厚さよりも薄くてもよい。
【0009】
また、前記第2凸部の前記テーパ部の外周面からの高さは、前記第1凸部の前記テーパ部の外周面からの高さよりも低くてもよい。
【0010】
また、前記凸部は、前記テーパ部の外周面に巻き回された第1素線を有し、前記第1凸部は、前記テーパ部の先端部に位置する前記第1素線と、前記テーパ部の先端部に位置する前記第1素線の外周面を被覆する樹脂からなる第1被覆層と、を有し、前記第2凸部は、前記テーパ部の基端部に位置する前記第1素線と、前記テーパ部の基端部に位置する前記第1素線の外周面を被覆する樹脂からなる第2被覆層と、を有し、前記第1被覆層の厚さは、前記第2被覆層の厚さよりも厚くてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、推進力の向上または抵抗の減少が可能なダイレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態のダイレータの全体図である。
【
図2】第1の実施形態のダイレータのテーパ部の部分断面図である。
【
図3】第2の実施形態のダイレータの全体図である。
【
図4】第2の実施形態のダイレータのテーパ部の部分断面図である。
【
図5】第3の実施形態のダイレータのテーパ部の部分断面図である。
【
図6】第4の実施形態のダイレータのテーパ部の部分断面図である。
【
図7】変形例に係るダイレータのテーパ部の部分断面図である。
【
図8】第5の実施形態のダイレータのテーパ部の部分断面図である。
【
図9】第6の実施形態のダイレータの全体図である。
【
図10】第6の実施形態のダイレータのテーパ部の部分断面図である。
【
図11】変形例に係るダイレータのテーパ部の部分断面図である。
【
図12】変形例に係るダイレータのテーパ部の部分断面図である。
【
図13】変形例に係るダイレータのテーパ部の部分断面図である。
【
図14】変形例に係るダイレータの先端部図面である。
【
図15】変形例に係るダイレータの先端部図面である。
【
図16】変形例に係るダイレータの先端部図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面に示したダイレータの寸法は、実施内容の理解を容易にするために示した寸法であり、実際の寸法に対応するものではない。
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態のダイレータ1について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、第1の実施形態のダイレータ1の全体図である。
図2は、本実施形態のダイレータ1のテーパ部7Bの部分断面図である。
また、
図1及び
図2において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される基端側(手元側、近位側)である。
【0014】
図1において、ダイレータ1は、第1コイル2と、外周被覆層3と、第2コイル4と、コイル被覆層5と、コネクタ6とを有する。
【0015】
第1コイル2は、1又は複数の金属素線を巻回して中空状に形成されている。第1コイル2は、例えば10本のステンレス鋼からなる金属素線を巻回して形成されている。第1コイル2には、基端から先端へ貫通する内腔2Aが形成されている。第1コイル2は、基端部2Cと、テーパ部2Dと、先端部2Eとを有している。
【0016】
基端部2Cは、ダイレータ1のうちの基端側に位置し、その基端にコネクタ6が接続されている。また、基端部2Cは、その基端から先端にわたって略一定の外径を有する。
【0017】
テーパ部2Dは、基端部2Cの先端側に位置し、基端部2Cの先端から先端側に延び、先端側に向かうにつれて外径が小さくなるように構成されている。換言すれば、テーパ部2Dは、先端から基端に向かって外径が増大している。
【0018】
先端部2Eは、テーパ部2Dの先端側に位置し、テーパ部2Dの先端から先端側に延びている。先端部2Eは、その基端から先端にわたって略一定の外径を有する。このように、第1コイル2は、先端から基端に向かって外径が増大する。
【0019】
外周被覆層3は、基端部2Cの先端側、テーパ部2D、および先端部2Eの外周面2Bを被覆している。外周被覆層3は、例えば熱収縮チューブであり、外周被覆層3を構成する樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂やフッ素樹脂等の生体適合性を有する樹脂材料、あるいは親水性のコーティング材料等が挙げられる。外周被覆層3の厚さは、略一定であるが、基端側から先端側に向かうにつれて徐々に薄くなるように構成してもよい。
【0020】
このように、第1コイル2と外周被覆層3とにより中空シャフト7が構成される。そして、第1コイル2の基端部2Cと、外周被覆層3のうち基端部2Cを被覆している部分とにより、中空シャフト7の基端部7Aが構成される。第1コイル2のテーパ部2Dと、外周被覆層3のうちテーパ部2Dを被覆している部分とにより、中空シャフト7のテーパ部7Bが構成される。第1コイル2の先端部2Eと、外周被覆層3のうち先端部2Eを被覆している部分とにより、中空シャフト7の先端部7Cが構成される。よって、中空シャフト7のテーパ部7Bは、基端から先端に向かうにつれて外径が小さくなるように構成されている。換言すれば、当該テーパ部7Dは、先端から基端に向かって外径が増大している。
【0021】
第2コイル4は、1本の金属素線からなり、中空シャフト7の外周面7Dに、第1コイル2(S巻き)とは反対向き(Z巻き)に巻回されている。第2コイル4は、複数の金属素線から構成されていてもよい。第1コイル2および第2コイル4を構成する素線は、例えば、ステンレス鋼およびニッケル-チタン等の超弾性合金等の金属素線、または、樹脂素線である。第2コイル4は、第1素線に対応する。ここで、第2コイル4のピッチについては特に限定されないが、基端側においては素線同士が互いに接触する密巻きとなっており、中空シャフト7の基端部7Aの先端側、テーパ部7B、および先端部7Cにおいては素線同士が互いに離間する疎巻きとなっている。よって、第2コイル4は、中空シャフト7の長軸方向に沿って隣り合う素線間に隙間4Aを有する。
【0022】
コイル被覆層5は、第2コイル4のうち外周被覆層3の外周に巻き回されている部分(第2コイル4のうち離間して巻回されている部分)の外周を被覆している。コイル被覆層5は、例えば熱収縮チューブであり、コイル被覆層5を構成する樹脂は、外周被覆層3を構成する樹脂と同様である。コイル被覆層5の厚さは、基端側から先端側に向かうにつれて徐々に薄くなるように構成されている。なお、コイル被覆層5は、第2コイル4のその全長にわたって被覆してもよい。
【0023】
そして、第2コイル4のうち外周被覆層3の外周に巻き回されている部分(第2コイル4のうち離間して巻回されている部分)と、コイル被覆層5とにより、中空シャフト7の長軸方向に沿って螺旋状に延びる凸部8が構成される。よって、中空シャフト7のテーパ部7Bの外周に、中空シャフト7の長軸方向に沿って螺旋状に延びる凸部8が設けられる。凸部8は、テーパ部7Bの先端側に位置する第1凸部8Aと、テーパ部7Bの基端側に位置する第2凸部8Bとを有する。凸部8のネジ作用により、ダイレータ1の回転操作によってもダイレータ1を前進させることができる。
【0024】
図2に示すように、第1凸部8Aは、テーパ部7Bの先端側に位置する第2コイル4と、コイル被覆層5のうちテーパ部7Bの先端側に位置する第2コイル4の外周面を被覆する第1被覆層5Aとから構成される。第2凸部8Bは、テーパ部7Bの基端側に位置する第2コイル4と、コイル被覆層5のうちテーパ部7Bの基端側に位置する第2コイル4の外周面を被覆する第2被覆層5Bとから構成される。そして、第1被覆層5Aの厚さT1は、第2被覆層5Bの厚さT2よりも薄く構成されている。第2コイル4の外径は、全長にわたって一定であるので、第1凸部8Aのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH1は、第2凸部8Bのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH2よりも低く構成されている。すなわち、第1凸部8Aおよび第2凸部8Bは、テーパ部7Bの外周面7Dからの高さが互いに異なっている。
【0025】
本実施形態及びこれ以降に記載される他の実施形態におけるダイレータの長さは、例えば2000mm、好ましくは1600mm~2500mmであり、先端部2Eの長さは、例えば10mm、好ましくは0~100mmであり、テーパ部2Dの長さは、例えば30mm、好ましくは5~100mmである。第1コイル2の先端における内径は、例えば0.7mm、好ましくは0.4~1.0mmであり、第1コイル2の基端における内径は、例えば1.5mm、好ましくは1.0~3.0mmである。第2コイル4の先端における外径は、例えば1.84mm、好ましくは0.8~3.0mmであり、第2コイル4の基端における外径は、例えば2.64mm、好ましくは1.4mm~5.0mmである。また、第1コイル2の金属素線の直径は、例えば0.21mm、好ましくは0.1~0.5mmであり、第2コイル4の金属素線の直径は、例えば0.36mm、好ましくは0.1~0.5mmである。外周被覆層3の厚さは、例えば、0.1mm、好ましくは0.005~0.300mmであり、第1被複層5Aの厚さは、例えば、0.05mm、好ましくは0.005~0.300mmであり、第2被覆層5Bの厚さは、例えば、0.1mm、好ましくは0.006~0.400mmである。
【0026】
把持部であるコネクタ6は、手技者がダイレータを体内に押し込んだり、回転操作を行う部位である。コネクタ6は、その先端が第1コイル2の基端及び第2コイル4の基端に接続されている。コネクタ6は樹脂からなり、第1コイル2の内腔2Bに連通する内腔を有する中空形状である。
【0027】
本実施形態のダイレータ1において、第1凸部8Aおよび第2凸部8Bは、テーパ部7Bの外周面7Dからの高さが互いに異なっている。すなわち、第1凸部8Aのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH1は、第2凸部8Bのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH2よりも低く構成されている。これにより、ダイレータ1による拡張対象である病変部の拡張時に、病変部からの締め付けが強くなるテーパ部7Bの基端側において、ダイレータ1の推進力を向上させることができる。この結果、病変部を容易に拡張することができる。
【0028】
また、第1凸部8Aを構成する第1被覆層5Aの厚さT1は、第2凸部8Bを構成する第2被覆層5Bの厚さT2よりも薄く構成されている。よって、ダイレータ1の曲げ剛性が大きく変化するのを抑制することができる。このように、コイル被覆層5の厚さを変えることにより、凸部8の高さを所望の高さに容易に変更することができる。
【0029】
次に、当該ダイレータの使用態様の一例について説明する。
【0030】
まず、導入針を用いて対象物を穿刺して孔を開ける。次いで、導入針の内腔にガイドワイヤを挿入した後、導入針を抜き取る。
【0031】
次に、ガイドワイヤの基端を当該ダイレータの内腔に差し入れ、ダイレータを挿入する。次いで、シャフトを回転させながらダイレータを押し進め、穿刺部の孔を拡張する。この際、シャフトの回転操作による螺旋状の凸部のネジ作用等によりテーパ部が前進するため、テーパ部による孔の拡張を円滑に行うことができる。
【0032】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係るダイレータ10について説明する。
図3は、第2の実施形態のダイレータ10の全体図である。
図4は、ダイレータ10のテーパ部17Bの部分断面図である。
また、
図3及び
図4において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される基端側(手元側、近位側)である。なお、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、第1の実施形態における説明を援用する。
【0033】
図3において、ダイレータ10は、シャフト本体11と、外周被覆層3と、第2コイル4と、コイル被覆層5と、コネクタ6とを有する。
【0034】
シャフト本体11は、基端から先端へ貫通する内腔11Aが形成された中空状をなしている。また、シャフト本体11は、基端部12と、テーパ部13と、先端部14とを有している。
【0035】
シャフト本体11を構成する材料は、テーパ部13および先端部14の柔軟性を確保すると共に、生体適合性を有している限り特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、ニッケル-チタン合金等の超弾性合金材料、または、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、およびフッ素樹脂等の合成樹脂により構成されている。シャフト本体11は、鋳造等により形成される。
【0036】
基端部12は、ダイレータ10のうちの基端側に位置し、その基端にコネクタ6が接続されている。また、基端部12は、その基端から先端にわたって略一定の外径を有する。
【0037】
テーパ部13は、基端部12の先端に接続され、当該先端から先端側に延び、先端側に向かうにつれて先細る形状をなしている。すなわち、テーパ部13は、その先端側の外形が基端側の外形よりも小さく構成されている。換言すれば、テーパ部13は、先端から基端に向かって外径が増大している。
【0038】
先端部14は、テーパ部13の先端に接続され、当該先端から先端側に延びている。先端部14は、その基端から先端にわたって略一定の外径を有する。このように、シャフト本体11は、先端の外径が基端の外径よりも小さい中空形状をなしている。
【0039】
外周被覆層3は、基端部12の先端側、テーパ部13、および先端部14の外周面11Bを被覆している。
【0040】
シャフト本体11と外周被覆層3とにより中空シャフト17が構成される。そして、シャフト本体11の基端部12と、外周被覆層3のうち基端部12を被覆している部分とにより、中空シャフト17の基端部17Aが構成される。シャフト本体11のテーパ部13と、外周被覆層3のうちテーパ部13を被覆している部分とにより、中空シャフト17のテーパ部17Bが構成される。シャフト本体11の先端部14と、外周被覆層3のうち先端部14を被覆している部分とにより、中空シャフト17の先端部17Cが構成される。よって、中空シャフト17のテーパ部17Bは、基端から先端に向かうにつれて外径が小さくなるように構成されている。換言すれば、当該テーパ部17Bは、先端から基端に向かって外径が増大している。
【0041】
そしてれ、第2コイル4およびコイル被覆層5は、第1の実施形態のダイレータ1と同様に構成されている。これにより、中空シャフト17のテーパ部17Bの外周に、中空シャフト17の長軸方向に沿って螺旋状に延びる凸部8が設けられる。
【0042】
図4に示すように、第1の実施形態のダイレータ1と同様に、第1被覆層5Aの厚さT1は、第2被覆層5Bの厚さT2よりも薄く構成され、第2コイル4の外径は、全長にわたって一定であるので、第1凸部8Aのテーパ部17Bの外周面17Dからの高さH1は、第2凸部8Bのテーパ部17Bの外周面17Dからの高さH2よりも低く構成されている。すなわち、第1凸部8Aおよび第2凸部8Bは、テーパ部17Bの外周面17Dからの高さが互いに異なっている。
【0043】
本実施形態のダイレータ10によっても、第1の実施形態のダイレータ1と同様の効果を奏する。
【0044】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係るダイレータ20について説明する。
図5は、第3の実施形態のダイレータ20のテーパ部7Bの部分断面図である。
また、
図5において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される基端側(手元側、近位側)である。
【0045】
ダイレータ20は、第1コイル2と、外周被覆層3と、第2コイル4と、コイル被覆層25と、コネクタ6(
図1)とを有する。当該ダイレータ20は、コイル被覆層25が第1の実施形態と異なっている。第1コイル2、外周被覆層3、第2コイル4、およびコネクタ6の構成は、第1の実施形態のものと同様であるため、その説明を援用する。
【0046】
コイル被覆層25は、第1の実施形態のコイル被覆層5と同様に、第2コイル4のうち外周被覆層3の外周に巻き回されている部分(第2コイル4のうち離間して巻回されている部分)の外周を被覆している。コイル被覆層25を構成する材料は、第1の実施形態のコイル被覆層5と同様である。コイル被覆層25の厚さは、基端側から先端側に向かうにつれて徐々に厚くなるように構成されている。なお、コイル被覆層25は、第2コイル4のその全長にわたって被覆していてもよい。
【0047】
そして、第2コイル4のうち外周被覆層3の外周に巻き回されている部分(第2コイル4のうち離間して巻回されている部分)と、コイル被覆層25とにより、中空シャフト7の長軸方向に沿って螺旋状に延びる凸部28が構成される。よって、中空シャフト7のテーパ部7Bの外周に、中空シャフト7の長軸方向に沿って螺旋状に延びる凸部28が設けられている。凸部28は、テーパ部7Bの先端側に位置する第1凸部28Aと、テーパ部7Bの基端側に位置する第2凸部28Bとを有する。
【0048】
第1凸部28Aは、テーパ部7Bの先端側に位置する第2コイル4と、コイル被覆層25のうちテーパ部7Bの先端側に位置する第2コイル4の外周面を被覆する第1被覆層25Aとから構成される。第2凸部28Bは、テーパ部7Bの基端側に位置する第2コイル4と、コイル被覆層25のうちテーパ部7Bの基端側に位置する第2コイル4の外周面を被覆する第2被覆層25Bとから構成される。そして、第1被覆層25Aの厚さT3は、第2被覆層25Bの厚さT4よりも厚く構成されている。第2コイル4の外径は、全長にわたって一定であるので、第1凸部28Aのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH3は、第2凸部28Bのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH4よりも高く構成されている。すなわち、第1凸部28Aおよび第2凸部28Bは、テーパ部7Bの外周面7Dからの高さが互いに異なっている。
【0049】
本実施形態のダイレータ20において、第1凸部28Aおよび第2凸部28Bは、テーパ部7Bの外周面7Dからの高さが互いに異なっている。すなわち、第1凸部28Aのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH3は、第2凸部28Bのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH4よりも高く構成されている。病変部からのダイレータ20抜去時に、テーパ部7Bの基端側における病変部からの抵抗を減少させることができる。この結果、ダイレータ20を病変部から容易に抜去することができる。
【0050】
また、第1凸部28Aを構成する第1被覆層25Aの厚さT3は、第2凸部28Bを構成する第2被覆層25Bの厚さT4よりも厚く構成されている。よって、ダイレータ20の曲げ剛性が大きく変化するのを抑制することができる。このように、コイル被覆層25の厚さを変えることにより、凸部28の高さを所望の高さに容易に変更することができる。
【0051】
また、本実施形態のコイル被覆層25は、第2の実施形態のダイレータ10のコイル被覆層5に適用してもよい。第2の実施形態のダイレータ10のコイル被覆層5に変えて第2コイル4をコイル被覆層25で被覆することにより、本実施形態のダイレータ20と同様の効果を奏するダイレータを提供することができる。
【0052】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態に係るダイレータ30について説明する。
図6は、第4の実施形態のダイレータ30のテーパ部7Bの部分断面図である。
また、
図6において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される基端側(手元側、近位側)である。
【0053】
ダイレータ30は、第1コイル2と、被覆層33と、第2コイル4と、コネクタ6(
図1)とを有する。当該ダイレータ30は、第1の実施形態の外周被覆層3およびコイル被覆層5に変えて被覆層33を用いている点が第1の実施形態と異なっている。第1コイル2、第2コイル4、およびコネクタ6の構成は、第1の実施形態のものと同様であるため、その説明を援用する。
【0054】
本実施形態のダイレータ30では、基端部2Cの先端側、テーパ部2D、および先端部2Eの外周面2Bに、第2コイル43が直接接触して巻き回されている。そして、基端部2Cの先端側、テーパ部2D、および先端部2Eと、それらの外周面2Bに設けられた第2コイル43との外周全体が、厚さが略一定の被覆層33に被覆されている。しかし、テーパ部7Bの先端側に位置する第2コイル43は、被覆層33に覆われておらず露出している。被覆層33を構成する材料は、第1の実施形態の外周被覆層3と同様である。被覆層33の厚さは、略一定であるが、基端側から先端側に向かうにつれて徐々に薄くなるように構成してもよい。
【0055】
本実施形態において、第1コイル2と、被覆層33のうち第1コイル2の外周面2Bを被覆する部分により、中空シャフト7が構成されている。第2コイル4と、被覆層33のうち第2コイル4を被覆している部分とにより、第2コイル4のうち被覆層33から露出している部分により、中空シャフト7の長軸方向に沿って螺旋状に延びる凸部8が構成される。
【0056】
これにより、第1凸部8Aは、第2コイル4のみから構成され、第2凸部8Bは、第2コイル4と被覆層33とから構成される。当該構成により、第1凸部8Aのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH1は、第2凸部8Bのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH2よりも低くなる。
【0057】
当該構成のダイレータ30によれば、ダイレータ30による拡張対象である病変部の拡張時に、病変部からの締め付けが強くなるテーパ部7Bの基端側において、ダイレータ30の推進力を向上させることができる。この結果、病変部を容易に拡張することができる。
【0058】
また、
図7に示すダイレータ40のように、テーパ部7Bにおいて、先端側に位置する第2コイル4の外周を被覆層33で覆い、基端側に位置する第2コイル4の外周を露出するように構成してもよい。
【0059】
第1凸部8Aは、第2コイル4と被覆層33とから構成され、第2凸部8Bは、第2コイル4のみから構成される。当該構成により、第1凸部8Aのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH3は、第2凸部8Bのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH4よりも高くなる。
【0060】
当該構成のダイレータ40によれば、病変部からのダイレータ40抜去時に、テーパ部7Bの基端側における病変部からの抵抗を減少させることができる。この結果、ダイレータ40を病変部から容易に抜去することができる。
【0061】
また、
図6、7に示したダイレータ30、40において、第1コイル2に変えて第2の実施形態のダイレータ10のシャフト本体11を適用してもよい。
【0062】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態に係るダイレータ50について説明する。
図8は、第5の実施形態のダイレータ50のテーパ部7Bの部分断面図である。
また、
図8において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される基端側(手元側、近位側)である。
【0063】
ダイレータ50は、第1コイル2と、被覆層53と、第2コイル4と、コネクタ6(
図1)とを有する。当該ダイレータ50は、第1コイル2の構成、第2コイル4の構成、および、第1の実施形態の外周被覆層3およびコイル被覆層5に変えて被覆層53を用いている点が第1の実施形態と異なっている。コネクタ6の構成は、第1の実施形態のものと同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0064】
第1コイル2および第2コイル4の構成は、その先端側の素線径が基端側の素線径よりも小さくなっている以外は、第1の実施形態の第1コイル2および第2コイル4と同じであるので、第1コイル2および第2コイル4の素線径に関する構成以外の構成は、第1の実施形態の説明を援用する。
【0065】
第1コイル2は、先端側の素線径が基端側の素線径よりも小さく構成されている。具体的には、は、テーパ部7Bの先端側の第1コイル2の素線径が、テーパ部7Bの基端側の第1コイル2の素線径よりも、小さく構成されている。第2コイル4も同様に、基端側の素線径よりも先端側の素線径が小さく構成されている。具体的には、
図8に示すように、第2コイル4は、テーパ部7Bの先端側の素線径D1が、テーパ部7Bの基端側の素線径D2よりも小さく構成されている。
【0066】
当該第1コイル2および第2コイル4の構成は、基端から先端にわたって同一素線径の第1コイルに対し、基端から先端にわたって同一素線径の第2コイルを直接接触して巻き付けた後、例えば、先端側を電解研磨等することにより得られる。当該電解研磨は、例えば、電解研磨液に研磨したい範囲のコイルを浸漬させた状態にて、電解研磨液に通電することにより行われる。この結果、コイル表面が溶解し、コイルの素線径を小さくすることができる。
【0067】
基端部2Cの先端側、テーパ部2D、および先端部2Eと、それらの外周面2Bに設けられた第2コイル4との外周全体が、厚さが略一定の被覆層53に被覆されている。被覆層53を構成する材料は、第1の実施形態の外周被覆層3と同様である。
【0068】
本実施形態において、第1コイル2と、被覆層53のうち第1コイル2の外周面2Bを被覆する部分により、中空シャフト7が構成されている。第2コイル4と、被覆層53のうち第2コイル4を被覆している部分とにより、中空シャフト7のテーパ部7Bの外周に、中空シャフト7の長軸方向に沿って螺旋状に延びる凸部58が構成される。これにより、第1凸部58Aは、テーパ部7Bの先端側に位置する第2コイル4と、被覆層53のうちテーパ部7Bの先端側に位置する第2コイル4の外周面を被覆する第1被覆層53Aとから構成される。第2凸部58Bは、テーパ部7Bの基端側に位置する第2コイル4と、被覆層53のうちテーパ部7Bの基端側に位置する第2コイル4の外周面を被覆する第2被覆層53Bとから構成される。
【0069】
テーパ部7Bの先端側に位置する第2コイル4の素線径D1は、テーパ部7Bの基端側に位置する第2コイル4の素線径D2よりも小さく構成され、被覆層53は厚さが略一定であるので、第1凸部58Aのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH1は、第2凸部58Bのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH2よりも低くなる。これにより、ダイレータ50による拡張対象である病変部の拡張時に、病変部からの締め付けが強くなるテーパ部7Bの基端側において、ダイレータ50の推進力を向上させることができる。この結果、病変部を容易に拡張することができる。
【0070】
<第6の実施形態>
次に、本発明の第6の実施形態に係るダイレータ60について説明する。
図9は、第6の実施形態のダイレータ60の全体図である。
図10は、ダイレータ60のテーパ部67Bの部分断面図である。
また、
図9及び
図10において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される基端側(手元側、近位側)である。
【0071】
ダイレータ60は、シャフト本体61と、螺旋状に延びる凸部62と、被覆層63と、コネクタ6とを有する。
【0072】
シャフト本体61は、基端から先端へ貫通する内腔61Aが形成された中空状をなしている。シャフト61および凸部62を構成する材料は、第2の実施形態に係るダイレータ10のシャフト本体11を構成する材料と同じである。
【0073】
また、シャフト本体61は、基端部64と、テーパ部65と、先端部66とを有している。シャフト本体61は、基端部64、テーパ部65、および先端部66の構成は、第2の実施形態のシャフト本体11の基端部12、テーパ部13、および先端部14の構成と同じである。
【0074】
凸部62は、シャフト本体61の外周面61Bに、外部に突出するように設けられている。凸部62は、基端部64の先端側部分、テーパ部65、および先端部66に長軸方向に沿って螺旋状に設けられ、シャフト本体61の長軸方向に沿って隣り合う部分に隙間61Cを有する。すなわち、凸部62の当該隣り合う部分は互いに離間している。凸部62は、シャフト本体61と鋳造等により一体に構成されている。また、凸部62のシャフト本体61の外周面61Bからの高さは略一定に構成されている。
【0075】
被覆層63は、基端部64の先端側、テーパ部65、および先端部66の外周面61Bを被覆している。被覆層63を構成する材料は、第1の実施形態の外周被覆層3と同様である。被覆層63の厚さは、略一定であるが、基端側から先端側に向かうにつれて徐々に薄くなるように構成してもよい。
【0076】
シャフト本体61と被覆層63とにより中空シャフト67が構成される。そして、シャフト本体61の基端部64と、被覆層63のうち基端部64を被覆している部分とにより、中空シャフト67の基端部67Aが構成される。シャフト本体61のテーパ部65と、被覆層63のうちテーパ部65を被覆している部分とにより、中空シャフト67のテーパ部67Bが構成される。シャフト本体61の先端部66と、被覆層63のうち先端部66を被覆している部分とにより、中空シャフト67の先端部67Cが構成される。よって、中空シャフト67のテーパ部67Bは、基端から先端に向かうにつれて外径が小さくなるように構成されている。換言すれば、当該テーパ部67Bは、先端から基端に向かって外径が増大している。
【0077】
また、被覆層63は、凸部62のうち、テーパ部67Bの基端側よりもダイレータ60の基端側に位置する凸部62を覆っているが、テーパ部67Bの先端側よりもダイレータ60の先端側に位置する凸部62を覆っていない。よって、凸部62のうち、テーパ部67Bの先端側よりもダイレータ60の先端側に位置する凸部62は露出している。本実施形態において。凸部62と、被覆層33のうち凸部62を被覆している部分とにより、凸部62のうち被覆層33から露出している部分により、中空シャフト67の外周に中空シャフト67の長軸方向に沿って螺旋状に延びる凸部68が構成される。
【0078】
図10に示すように、凸部68のうち第1凸部68Aは、凸部62のみから構成され、第2凸部68Bは、凸部62と被覆層63とから構成される。当該構成により、第1凸部68Aのテーパ部67Bの外周面67Dからの高さH1は、第2凸部68Bのテーパ部67Bの外周面67Dからの高さH2よりも低くなる。
【0079】
当該構成のダイレータ60によれば、ダイレータ60による拡張対象である病変部の拡張時に、病変部からの締め付けが強くなるテーパ部67Bの基端側において、ダイレータ60の推進力を向上させることができる。この結果、病変部を容易に拡張することができる。
【0080】
また、
図11に示すダイレータ70のように、テーパ部67Bにおいて、先端側に位置する凸部62の外周を被覆層63で覆い、基端側に位置する凸部62の外周を露出するように構成してもよい。
【0081】
第1凸部68Aは、凸部62と被覆層63とから構成され、第2凸部68Bは、凸部62のみから構成される。当該構成により、第1凸部68Aのテーパ部67Bの外周面67Dからの高さH3は、第2凸部68Bのテーパ部67Bの外周面67Dからの高さH4よりも高くなる。
【0082】
当該構成のダイレータ70によれば、病変部からのダイレータ70抜去時に、テーパ部67Bの基端側における病変部からの抵抗を減少させることができる。この結果、ダイレータ70を病変部から容易に抜去することができる。
【0083】
<第7の実施形態>
次に、本発明の第7の実施形態に係るダイレータ80について説明する。
図12は、第7の実施形態のダイレータ80のテーパ部7Bの部分断面図である。
また、
図12において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される基端側(手元側、近位側)である。
【0084】
ダイレータ80は、第1コイル2と、被覆層83と、第2コイル4と、コネクタ6(
図1)とを有する。当該ダイレータ80は、第2コイル4の構成、および、第1の実施形態の外周被覆層3およびコイル被覆層5に変えて被覆層83を用いている点が第1の実施形態と異なっている。第1コイル2およびコネクタ6の構成は、第1の実施形態のものと同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0085】
第2コイル4の構成は、その先端側の素線径が基端側の素線径よりも小さくなっている以外は、第1の実施形態の第2コイル4と同じであるので、第2コイル4の素線径に関する構成以外の構成は、第1の実施形態の説明を援用する。
【0086】
第2コイル4は、基端側の素線径よりも先端側の素線径が小さく構成されている。具体的には、
図8に示すように、第2コイル4は、テーパ部7Bの先端側の素線径D1が、テーパ部7Bの基端側の素線径D2よりも小さく構成されている。当該第2コイル4の構成は、基端から先端にわたって同一素線径の第2コイルの先端側を電解研磨等することにより得られる。そして、電解研磨等した第2コイル4を、第1コイル2に直接接触して巻回することにより、
図12に示した第1コイル2および第2コイル4の構成が得られる。
【0087】
基端部2Cの先端側、テーパ部2D、および先端部2Eと、それらの外周面2Bに設けられた第2コイル4との外周全体が、厚さが略一定の被覆層83に被覆されている。被覆層83を構成する材料は、第1の実施形態の外周被覆層3と同様である。
【0088】
本実施形態において、第1コイル2と、被覆層83のうち第1コイル2の外周面2Bを被覆する部分により、中空シャフト7が構成されている。第2コイル4と、被覆層83のうち第2コイル4を被覆している部分とにより、中空シャフト7のテーパ部7Bの外周に、中空シャフト7の長軸方向に沿って螺旋状に延びる凸部88が構成される。これにより、第1凸部88Aは、テーパ部7Bの先端側に位置する第2コイル4と、被覆層83のうちテーパ部7Bの先端側に位置する第2コイル4の外周面を被覆する第1被覆層83Aとから構成される。第2凸部88Bは、テーパ部7Bの基端側に位置する第2コイル4と、被覆層83のうちテーパ部7Bの基端側に位置する第2コイル4の外周面を被覆する第2被覆層83Bとから構成される。
【0089】
テーパ部7Bの先端側に位置する第2コイル4の素線径D1は、テーパ部7Bの基端側に位置する第2コイル4の素線径D2よりも小さく構成され、被覆層83は厚さが略一定であるので、第1凸部88Aのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH1は、第2凸部88Bのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH2よりも低くなる。これにより、ダイレータ80による拡張対象である病変部の拡張時に、病変部からの締め付けが強くなるテーパ部7Bの基端側において、ダイレータ80の推進力を向上させることができる。この結果、病変部を容易に拡張することができる。
【0090】
また、
図12のダイレータ80の第2コイル4の素線径を、基端側の素線径よりも先端側の素線径が大きくなるように構成してもよい。すなわち、
図13に示すダイレータ90の第2コイル4において、テーパ部7Bの先端側の素線径D3を、テーパ部7Bの基端側の素線径D4よりも大きく構成してもよい。
【0091】
テーパ部7Bの先端側に位置する第2コイル4の素線径D3は、テーパ部7Bの基端側に位置する第2コイル4の素線径D4よりも大きく構成され、被覆層83は厚さが略一定であるので、第1凸部88Aのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH3は、第2凸部88Bのテーパ部7Bの外周面7Dからの高さH4よりも高くなる。
【0092】
当該構成のダイレータ90によれば、病変部からのダイレータ90抜去時に、テーパ部7Bの基端側における病変部からの抵抗を減少させることができる。この結果、ダイレータ90を病変部から容易に抜去することができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について述べてきたが、本発明は、これらの実施形態に限られるものではなく、種々の変形が可能である。
【0094】
例えば、上記実施形態のダイレータ1、10は、第2コイル5が第1コイル3の長軸方向に沿ってその基端まで隣り合う部分に隙間を有するダイレータ1、10であってもよい。
【0095】
また、
図14に示すように、第1の実施形態のダイレータ1の中空シャフト7は、先端部2Eを有していなくてもよいし、
図15に示すように、第3の実施形態のダイレータ10の中空シャフト17は、先端部17Cを有していなくてもよいし、
図16に示すように、第6の実施形態のダイレータ60の中空シャフト67は、先端部67Cを有していなくてもよい。
【0096】
また、
図8の第5の実施形態のダイレータ50において、第1コイル2および第2コイル4に変えて、
図10の第6の実施形態のダイレータ60のシャフト本体61を用い、シャフト本体61の先端側を電解研磨等することにより、テーパ部65の先端側の凸部62を基端側の凸部62よりも低くなるように構成し、これら凸部62を被覆層53により被覆するように構成してもよい。
【0097】
また、上述の実施形態では、第1コイル2を10本の素線から構成された中空コイル体として説明したが、素線の本数は、10本に限られるものではなく、1本又は複数本であってよい。
【0098】
図1~
図16に示す実施形態において、螺旋状の凸部は、刃物を構成していないことが好ましい。本実施形態のダイレータは、対象物(例、患者の胃等の消化管の壁)に予め形成された孔を拡張するものである。従って、螺旋状の凸部が、刃物を構成していると、孔の内面の生体組織を損傷させるからである。
【0099】
従って、螺旋状の凸部は、その断面形状(例えば、
図10に示す螺旋状の凸部62の螺旋方向に直交する断面の形状)の、シャフトの径方向外側の端部に、鋭角の角部を有しないことが好ましい。すなわち、当該端部は、例えば、鈍角の角部、あるいは曲線(例、円や楕円の一部を含む曲線)を含む形状で構成された部位を有していることが好ましい。
【符号の説明】
【0100】
1、10、20、30、40、50、60、70、80、90 ダイレータ
2 第1コイル
4 第2コイル
7、17、67 中空シャフト
7D、17D、67D 外周面
8、28、58、68、88 凸部
8A、28A、58A、68A、88A 第1凸部
8B、28B、58B、68B、88B 第2凸部
5A、25A、53A、83A 第1被覆層
5B、25B、53B、83B 第2被覆層