(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】サイトメガロウイルスの安定な製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/245 20060101AFI20220829BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220829BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220829BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220829BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
A61K39/245 ZNA
A61K47/38
A61K47/02
A61K47/26
A61P31/22
(21)【出願番号】P 2020524074
(86)(22)【出願日】2018-10-29
(86)【国際出願番号】 US2018057914
(87)【国際公開番号】W WO2019089410
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-08-10
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596129215
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Merck Sharp & Dohme Corp.
【住所又は居所原語表記】126 East Lincoln Avenue,Rahway,New Jersey 07065-0907 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】メディ,ムニースワラ・バブ
(72)【発明者】
【氏名】デービス,ハリソン・ブラッドフォード
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ロレンツォ・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】イソピ,リン・アン
(72)【発明者】
【氏名】ブルー,ジェフリー・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ピクスリー,ハイディ・ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】グリーントレクスラー,エリン・ジェー
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527809(JP,A)
【文献】特表2016-501023(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0228532(US,A1)
【文献】特表2017-515503(JP,A)
【文献】特表2017-500298(JP,A)
【文献】特開2011-225578(JP,A)
【文献】特表2002-516850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0228369(US,A1)
【文献】特表2005-538939(JP,A)
【文献】特表2007-514450(JP,A)
【文献】特表2011-500592(JP,A)
【文献】国際公開第02/018954(WO,A2)
【文献】特表2011-520901(JP,A)
【文献】特表2015-512400(JP,A)
【文献】米国特許第08734697(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0246281(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61K 47/00
A61K 9/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトメガロウイルス(CMV);
pH約6.0~8.0の緩衝液;
アルカリ又はアルカリ塩;
糖;
カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、2-ヒドロキシエチルセルロース(2-HEC)、クロスカルメロース及びメチルセルロースからなる群から選択されるセルロース誘導体又はその薬学的に許容される塩;及び
任意に、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及び糖アルコールからなる群から選択されるポリオール;
を含む製剤。
【請求項2】
緩衝液が、リン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、TRIS、MES、MOPS、HEPES、酢酸塩及びクエン酸塩からなる群から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
アルカリ又はアルカリ塩が、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム又はそれらの組合せである、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
糖がトレハロース又はスクロースである、請求項1~3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
セルロース誘導体が、カルボキシメチルセルロース(CMC)の薬学的に許容される塩である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
ポリオールが、プロピレングリコール、グリセロール及びソルビトールからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
ポリオールがプロピレングリコールであり、セルロース誘導体がカルボキシメチルセルロースナトリウムである請求項1~5のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
約50~600μg/mlのCMV、pH約6.0~7.5の緩衝液、約50~300mMのNaCl、約40~150mg/mlのスクロース、及び約0.3~10mg/mlのカルボキシメチルセルロースの薬学的に許容される塩を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
約50~600μg/mlのCMV、pH約6.0~7.5の約5~500mMの緩衝液、約50~300mMのNaCl、約40~150mg/mlのスクロース、及び約50,000~1,000,000の平均分子量を有する約0.3~10mg/mlのカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
約50~600μg/mlのCMV、pH約6.0~7.5の約10~100mMのヒスチジン又はTRIS又はHEPES緩衝液、約50~300mMのNaCl、約40~150mg/mlのスクロース、約2.5~7.5mg/mlのプロピレングリコール(PG)、及び約90,000の平均分子量を有する約3~10mg/mlのカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む、請求項1記載の製剤。
【請求項11】
約50~600μg/mlのCMV、pH約6.0~7.5の約10~100mMのヒスチジン又はTRIS又はHEPES緩衝液、約50~150mMのNaCl、約60~110mg/mlのスクロース、約3~7mg/mlのプロピレングリコール(PG)、及び約90,000の平均分子量を有する約3~7mg/mlのカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む、請求項1記載の製剤。
【請求項12】
約100~350μg/mlのCMV、pH約7.0の約25mMのヒスチジン、TRIS又はそれらの組合せの緩衝液、約75mMのNaCl、約90mg/mlのスクロース、約5mg/mlのプロピレングリコール(PG)、及び約90,000の平均分子量を有する約5mg/mlのカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む、請求項1記載の製剤。
【請求項13】
アルミニウムアジュバントをさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項14】
約200~700μg/mlのリン酸アルミニウムアジュバントをさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項15】
凍結乾燥前の水溶液である請求項1~14のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
再構成された溶液である請求項1~14のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項17】
再構成された溶液である請求項1~14のいずれか1項に記載の製剤であって、再構成が水で行われる、製剤。
【請求項18】
再構成された溶液である請求項1~14のいずれか1項に記載の製剤であって、再構成が生理食塩水で行われる、製剤。
【請求項19】
再構成された溶液である請求項1~12のいずれか1項に記載の製剤であって、再構成が、緩衝液、生理食塩水又は水で製剤化された0.5~1mlのアルミニウムアジュバントを含む希釈剤を用いて行われる、製剤。
【請求項20】
再構成は、リン酸アルミニウムアジュバント(APA)及び生理食塩水を含む0.7ml希釈剤で実施される、請求項19記載の製剤。
【請求項21】
APAが、再構成溶液中で約400~500μg/mlである、請求項20に記載の製剤。
【請求項22】
約25~300μgのCMV、約1.39~1.9mgのヒスチジン、約6~6.7mgのNaCl、約32.2~45mgのスクロース、約1.79~2.5mgのプロピレングリコール(PG)、及び平均分子量が約90,000である約1.79~2.5mgのカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む、CMVの0.5ml用量である、請求項19記載の製剤。
【請求項23】
乾燥固体形態であり、約25~300μgのCMV、約1.9~2.7mgのヒスチジン、TRIS又はそれらの組合せ、約2.2~3.07mgのNaCl、約45~63mgのスクロース、約2.5~3.5mgのプロピレングリコール(PG)、及び平均分子量が90,000である約2.5~3.5mgのカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む、請求項1記載の製剤。
【請求項24】
CMVが約1、ヒスチジンが6~108、NaClが7~123、スクロースが150~2520、プロピレングリコールが8~140、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムが8~140の重量比を含む乾燥固体形態である、請求項1記載の製剤。
【請求項25】
乾燥された固体形態である請求項1及び23~24のいずれかの製剤であって、ここで、2~8℃における2年後のCMV力価が、約7.77x10E
4~3.8x10E
8pfu/mlである製剤。
【請求項26】
乾燥された固体形態である請求項1及び23~24のいずれかの製剤であって、ここで、2~8℃における6ヶ月後のCMVが、CMV対照試料と比較して約0.2log10感染力損失以下である製剤。
【請求項27】
乾燥された固体形態である請求項1及び23~24のいずれかの製剤であって、ここで、2~8℃における2年後のCMVが、CMV対照試料と比較して約0.5log10感染力損失以下である製剤。
【請求項28】
乾燥された固体形態である請求項1及び23~24のいずれかの製剤であって、ここで、2~8℃における2年後のCMVが、CMV対照試料と比較して約1.0log10感染力損失以下である製剤。
【請求項29】
CMVが、弱毒生CMV、死滅CMV又は不活性化CMVである、請求項1~28のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項30】
CMVが、条件付き複製欠損である弱毒生CMVであり、そして、(a)UL128、UL130、UL131、gH及びgLを含む5量体gH複合体、及び(b)必須タンパク質及び不安定化タンパク質の融合タンパク質をコードする核酸を含み、
ここで、必須タンパク質が、IE1/2、UL51、UL52、UL79及びUL84からなる群から選択される、請求項29記載の製剤。
【請求項31】
不安定化タンパク質が、FK506結合タンパク質(FKBP)又はFKBP誘導体のいずれかであり、
ここで、FKBP誘導体は、F15S、V24A、H25R、F36V、E60G、M66T、R71G、D100G、D100N、E102G、K105I及びL106Pからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含むFKBPである、請求項30に記載の製剤。
【請求項32】
FKBP誘導体が、アミノ酸置換F36V及びL106Pを含むFKBPである、請求項31記載の製剤。
【請求項33】
必須タンパク質がIE1/2である、請求項30~32のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項34】
必須タンパク質がUL51である、請求項30~32のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項35】
CMVが、少なくとも2つの融合タンパク質をコードする核酸を含み、ここで、融合タンパク質の各々における必須タンパク質が異なることを特徴とする、請求項30~32のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項36】
融合タンパク質の1つが、IEl/2又はUL51を含む、請求項35記載の製剤。
【請求項37】
第1の融合タンパク質がIE1/2を含み、そして、第2の融合タンパク質がUL51を含む、請求項35記載の製剤。
【請求項38】
CMVが、条件付き複製欠損である弱毒生CMVであり、そして、(a)UL128、UL130、UL131、gH及びgLを含む5量体gH複合体、及び(b)IE1/2及び不安定化タンパク質の第1の融合タンパク質、及び、UL51及び不安定化タンパク質の第2の融合タンパク質をコードする核酸、を含む請求項29記載の製剤であって、
ここで、不安定化タンパク質は、アミノ酸置換F36V及びL106Pを含むFK506結合タンパク質(FKBP)誘導体であり、ここで、野生型IE1/2及びUL51はもはや存在せず、そしてここで、CMVは、UL131遺伝子の変異の修復に起因してgH複合発現を回復した弱毒化株である、製剤。
【請求項39】
(a)第1の融合タンパク質が配列番号1又は配列番号1と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列であり、そして、(b)第2の融合タンパク質が配列番号3又は配列番号3と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列である、請求項38記載の製剤。
【請求項40】
第1の融合タンパク質が配列番号1を含み、第2の融合タンパク質が配列番号3を含む、請求項38記載の製剤。
【請求項41】
(a)第1の融合タンパク質が配列番号2又は配列番号2と少なくとも95%同一である核酸配列によってコードされ、そして、(b)第2の融合タンパク質が配列番号4又は配列番号4と少なくとも95%同一である核酸配列によってコードされる、請求項38記載の製剤。
【請求項42】
第1の融合タンパク質が配列番号2によってコードされ、そして、第2の融合タンパク質が配列番号4によってコードされる、請求項38に記載の製剤。
【請求項43】
CMVが、条件付き複製欠損である弱毒生CMVであり、そして、(a)UL128、UL130、UL131、gH及びgLを含む5量体gH複合体、及び(b)必須タンパク質及び不安定化タンパク質の第1の融合タンパク質、及び必須タンパク質及び不安定化タンパク質の第2の融合タンパク質をコードする核酸、を含む請求項29に記載の製剤であって、
ここで、第1の融合タンパク質が配列番号1を含み、第2の融合タンパク質が配列番号3を含み、ここで、野生型IE1/2及びUL51がもはや存在せず、
そしてここで、CMVがUL131遺伝子の変異の修復に起因してgH複合発現を回復した弱毒化株である、製剤。
【請求項44】
CMVが、UL131遺伝子における変異の修復に起因するgH複合発現を回復したAD169である、請求項43記載の製剤。
【請求項45】
条件付き複製欠損CMVが、配列番号14に示すようなゲノムを有する、請求項43記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイトメガロウイルス(CMV)の安定な製剤に関する。一実施形態において、CMVは、条件付き複製欠損である遺伝的に改変されたCMVである。
【0002】
配列表への参照
配列表テキストファイルは、37 CFR§1.52(E)(5)に準拠したEFS-Web経由で明細書と同時に提出される。配列表は、「24527-PCT-SEQ-14SEPT2018.txt」のファイル名を有し、2018年9月14日に作成され、サイズは316キロバイトである。配列表は、本明細書の一部であり、参照により本明細書にその全体が組み込まれる。
【0003】
発明の背景
ヒトヘルペスウイルス5(HHV-5)として知られているサイトメガロウイルス(CMV)は、ヘルペスウイルスのベータサブファミリーのメンバーとして分類されるヘルペスウイルスである。疾病管理予防センター(CDC)によると、CMV感染は、ヒト集団においてかなり普遍的に発見され、米国の成人人口の推定40から80パーセントで感染していた。このウイルスは、主に体液を介して拡散され、頻繁に胎児や新生児へ妊娠中の母親から伝わる。ほとんどの個体ではCMV感染は潜伏であるが、ウイルス活性化は、高熱、悪寒、倦怠感、頭痛、吐き気及び脾腫を生じ得る。
【0004】
ほとんどのヒトCMV感染は無症候性であるが、免疫障害個体(例えば、HIV陽性患者、同種移植患者及び癌患者)又は免疫系がまだ完全に開発されていない人(新生児)におけるCMV感染は、特に問題となり得る(Mocarskiら、サイトメガロウイルス、Infieldvirology、2701-2772、編集:Knipes及びHowley、2007年)。このような個体におけるCMV感染は、他の有害な症状の中で、肺炎、肝炎、脳炎、大腸炎、ブドウ膜炎、網膜炎、失明、及び神経障害を含む重度の罹患を引き起こし得る。加えて、妊娠中のCMV感染は、出生不良の原因である(Adler、2008年、J Clin Virol、41:231;Arvinら、2004年、Clin Infect Dis、39:233;revelloら、2008年、J.Med.Virol、80:1415)。CMVは、単球、マクロファージ、樹状細胞、好中球、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、ニューロン、平滑筋細胞、肝細胞及び間質細胞を含む種々の細胞においてインビボで感染する(Pleacterら、1996年、Adv.Virus Res,46:195)。臨床的なCMV単離物は種々の細胞型で複製するが、実験室株AD169(Elek及びStern、1974、Lancet 1:1)及びTowne(Plotkinら、1975、Infect.immun.12:521)は、線維芽細胞中でほとんど排他的に複製する(Hahnら、2004年、J.Virol.78:10023)。線維芽細胞におけるウイルスの連続的な継代及び最終的な適合に起因する指向性の制限は、弱毒化のマーカーであることが規定されている(Gernaら、2005年、J.Genvirol.86:275;Gernaら、2002年、J.Genvirol.83:1993;Gernaら、2003年、J.Genvirol.84:1431;Daranら、2010年、J.Genvirol.91:1535)。ヒトCMV実験株における上皮細胞、内皮細胞、白血球及び樹状細胞指向性の損失を引き起こす変異は、3つのオープンリーディングフレーム(ORF):UL128、UL130及びUL131でマッピングされている(hahnetal、2004、J.Virol.78:10023;Wang及びShenk、2005年、J.Virol.79:10330;Wang及びShenk、2005年、Proc Natl Acad Sci USA.102:18153)。生化学的及び再構成研究は、UL128、UL130及びUL131が、gH/gI足場上に組み立てられて、5量体gh複合体を形成することを示している(Wang及びShenk、2005年、procnatlacadsciusa.102:1815;Ryckmanら、2008年、J.Virol.82:60)。ビリオン中のこの複合体の回復は、実験株におけるウイルス性上皮指向性を回復させる(Wang及びShenk、2005年、J.Virol.79:10330)。
【0005】
内皮及び上皮指向性の喪失は、Towneのようなワクチンとして以前に評価されたCMV株の欠損として疑われている(Gernaら、2002年、J.Gen Virol.83:1993;Gernaら、2003年、J.Genvirol.84:1431)。天然CMV感染のヒト被験者由来の血清中の中和抗体は、線維芽細胞侵入よりもウイルス上皮侵入に対して15倍高い活性を有する(Cuiら、2008年、Vaccine、26:5760)。一次感染を伴うヒトは、ウイルス内皮及び上皮侵入に対する中和抗体を急速に発現するが、ウイルス線維芽細胞侵入に対する中和抗体をゆっくりと展開する(Gernaら、2008年、J.Genvirol.89:853)。さらに、Towneワクチンを受けたヒト被験者(Cuiら、2008、Vaccine 26:5760)からの免疫血清には、ウイルス上皮及び内皮侵入に対する中和活性が存在しない。より最近では、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染を有する4人のドナーからのヒトモノクローナル抗体のパネルが記載され、パネルからのより強力な中和クローンが5量体gH複合体の抗原を認識した(Macagniら、2010年、J.Virol.84:1005)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開番号US2016/0228532号
【文献】米国特許出願公開US2014/0298482号
【文献】米国特許出願公開第US2014/0294872号
【文献】米国特許出願公開第2009/0215169号
【文献】米国特許第9,119,794号
【文献】米国特許許第9,546,355号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
全ウイルスは、体液性及び細胞性免疫応答を生成する能力のために、いくつかのワクチン製品中の一般に使用される抗原の1つである。全ウイルスを含有するワクチン製品は、これらが熱、凍結/解凍及び有意な効力損失をもたらす他の処理ストレスに敏感であり、安定化することは困難である。これらの製品は、典型的には冷凍(-20℃未満)又は乾燥粉末として保存される。冷凍製品は、効力の喪失を防止するために厳しい冷却鎖要件を必要とするので、保存し配送することは容易ではない。全ウイルス、特にエンベロープウイルスの乾燥は、しばしば乾燥工程中に遭遇する凍結及び乾燥ストレスによる効力の著しい損失をもたらす。従って、当技術分野では、CMVの安定な製剤を生成する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要約
本発明は、サイトメガロウイルス(CMV)の安定な製剤を提供する。セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース塩の添加は、乾燥後のCMV安定性及び/又は収量を改良した。ポリオール、例えばプロピレングリコールのさらなる添加は、乾燥後のウイルス安定性及び/又は収量をさらに改善した。一実施形態において、CMV製剤は、2~8℃において、約7.77x10E4~3.8x10E8pfu/mlのCMV力価によって測定される、2年以上(≧2)の貯蔵寿命を有する。
【0009】
本発明の一態様において、製剤は、サイトメガロウイルス(CMV)、pH約6.0-8.0の緩衝液、アルカリ又はアルカリ塩、糖、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、2-ヒドロキシエチルセルロース(2-HEC)、クロスカルメロース及びメチルセルロースよりなる群から選択されるセルロース誘導体又はその薬学的に許容される塩、及び、任意に、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、及び、糖アルコール、例えばグリセロールからなる群から選択されるポリオールを含む。
【0010】
本発明の一態様において、製剤は、サイトメガロウイルス(CMV)、pH約6.0-7.5の緩衝液、アルカリ又はアルカリ塩、糖、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、2-ヒドロキシエチルセルロース(2-HEC)、クロスカルメロース及びメチルセルロースからなる群から選択されるセルロース誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩、及び、任意にプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、及び、糖アルコール、例えばグリセロールからなる群から選択されるポリオールを含む。
【0011】
一実施形態において、緩衝液は、リン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、TRIS、MES、MOPS、HEPES、酢酸塩及びクエン酸塩からなる群から選択されるか、又はそれらの任意の組み合わせである。本実施形態の一態様において、緩衝液は、リン酸塩、ヒスチジン及びHEPESからなる群から選択される。別の実施形態において、アルカリ又はアルカリ塩は、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム又はそれらの組合せである。本実施形態の一態様において、塩は塩化カリウム及び塩化ナトリウムからなる群から選択される。さらなる態様において、糖は、トレハロース又はスクロースである。さらに別の実施形態において、セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロースの薬学的に許容される塩である。
【0012】
一実施形態において、ポリオールは、プロピレングリコール、グリセロール及びソルビトールである。特定の実施形態において、ポリオールは、プロピレングリコールである。さらなる特定の実施形態において、ポリオールはプロピレングリコールであり、そして、セルロース誘導体はカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCナトリウム)である。
【0013】
本発明の他の態様において、製剤は、約50~600μg/mlのCMV、pH約6.0~8.0の緩衝液、約50~300mMのアルカリ塩、約40~150mg/mlのスクロース又はトレハロース、及び約0.3~10mg/mlのカルボキシメチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースの薬学的に許容される塩を含む。別の実施形態において、製剤は、約50~600μg/mlのCMV、pH約6.0~8.0の約5~500mMの緩衝液、約50~300mMのNaCl又はKCl、約40~150mg/mlのスクロース又はトレハロース、及び平均分子量約50,000から1,000,000を有する約0.3~10mg/mlのカルボキシメチルセルロースナトリウム又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0014】
本発明の他の態様において、製剤は、約50~600μg/mlのCMV、pH約6.0~7.5の緩衝液、約50~300mMのNaCl、約40~150mg/mlのスクロース、及び約0.3~10mg/mlのカルボキシメチルセルロースの薬学的に許容される塩を含む。別の実施形態において、製剤は、約50~600μg/mlのCMV、pH約6.0~7.5の約5~500mMの緩衝液、約50~300mMのNaCl、約40~150mg/mlのスクロース、及び約50,000~1,000,000の平均分子量を有する約0.3~10mg/mlのカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。
【0015】
さらなる実施形態において、製剤は、約50~600μg/mlのCMV、pH約6.0~8.0の約10~100mMのヒスチジン又はリン酸塩又はHEPES緩衝液、又はそれらの任意の組み合わせ、約50~300mMのNaCl、約40~150mg/mlスクロース、約2.5~7.5mg/mlプロピレングリコール(PG)、及び平均分子量が約90,000の約3~10mg/mlのカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。さらに別の実施形態において、製剤は、約50~600μg/mlのCMV、pH約6.0~7.5の、約10~100mMのヒスチジン、リン酸塩又はHEPES緩衝液、又はそれらの任意の組み合わせ、約50~150mMのNaCl、約60~110mg/mlのスクロース、約3~7mg/mlのプロピレングリコール(PG)、及び平均分子量が約90,000の約3~7mg/mlのカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。さらに他の実施形態において、製剤は、約100~350μg/mlのCMV、pH約7.0の約25mMのヒスチジン、リン酸塩、HEPESの緩衝液又はそれらの組み合わせ、約75mMのNaCl、約90mg/mlのスクロース、約5mg/mlのプロピレングリコール(PG)、及び平均分子量が約90,000の約5mg/mlのカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。一実施形態において、製剤は、アルミニウムアジュバントをさらに含む。
【0016】
さらなる実施形態において、製剤は、約50~600μg/mlのCMV、pH約6.0~7.5の、約10~100mMのヒスチジン又はトリス又はHEPES緩衝液、又はそれらの任意の組み合わせ、約50~300mMNaCl、約40~150mg/mlスクロース、約2.5~7.5mg/mlプロピレングリコール(PG)、及び平均分子量約90,000の約3~10mg/mlカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。なおさらなる実施形態において、製剤は、約50~600μg/mlのCMV、pH約6.0~7.5の約10~100mMのヒスチジン、TRIS又はHEPES緩衝液、又はそれらの任意の組み合わせ、約50~150mMのNaCl、約60~110mg/mlのスクロース、約3~7mg/mlのプロピレングリコール(PG)、及び平均分子量が約90,000の約3~7mg/mlのカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。さらに別の実施形態において、製剤は、約100~350μg/mlのCMV、pH約7.0の約25mMのヒスチジン、TRIS緩衝液又はそれらの組み合わせ、約75mMのNaCl、約90mg/mlのスクロース、約5mg/mlプロピレングリコール(PG)、及び平均分子量が約90,000の約5mg/mlカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。一実施形態において、製剤は、アルミニウムアジュバントをさらに含む。
【0017】
前述の実施形態の一態様において、製剤は、凍結乾燥前の水溶液である。
【0018】
前述の実施形態の別の態様において、製剤は、水又は生理食塩水で再構成された再構成溶液である。一実施形態において、再構成された溶液は、生理食塩水、水又は緩衝液中に製剤化されたアルミニウムアジュバントを含む0.5~1mlの希釈剤を用いて行われる。別の実施形態において、再構成は、リン酸アルミニウムアジュバント(APA)及び生理食塩水を含む希釈剤(0.5ml又は0.7ml)で行われる。さらなる実施形態において、リン酸アルミニウムアジュバントは、約400~500μg/ml又は200~700μg/mlである。特定の実施形態において、再構成された溶液は、約25~300μgのCMV、約1.39~1.9mgのヒスチジン、約6~6.7mgのNaCl、約32.2~45mgのスクロース、約1.79~2.5mgのプロピレングリコール(PG)、及び平均分子量が約90,000の1.79~2.5mgのカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む0.5ml用量のCMVである。
【0019】
本発明の別の態様において、製剤は乾燥した固形であって、約25~300μgのCMV、約1.9~2.7mgのヒスチジン、TRIS、又はそれらの組み合わせ、約2.2~3.07mgのNaCl、約45~63mgのスクロース、約2.5~3.5mgのプロピレングリコール(PG)、及び平均分子量90,000の約2.5~3.5mgのカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。本発明のさらなる態様において、製剤は、約CMV1、ヒスチジン6~108、NaCl7~123、スクロース150~2520、プロピレングリコール8~140、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム8~140の重量比を含む乾燥した固体形態である。一実施形態において、製剤は乾燥固体製剤であって、ここで、2~8℃で2年後のCMV力価は、約7.77x10E4から3.8x10E8pfu/mlである。別の実施形態において、製剤は乾燥固形製剤であって、ここで、2~8℃で6か月後のCMVは、CMV対照試料と比較して約0.2log10以下の感染力損失を有する。さらなる実施形態において、製剤は乾燥固形製剤であって、ここで、2~8℃で2年後のCMVは、CMV対照試料と比較して約0.5log10以下の感染力損失を有する。さらに別の実施形態において、製剤は乾燥固形製剤であって、ここで、2~8℃で2年後のCMVは、CMV対照試料と比較して約1.0log10以下の感染力損失を有する。別の実施形態において、乾燥固形製剤は、アルミニウムアジュバント、例えばAPAをさらに含む。
【0020】
前述の実施形態の一態様において、CMVは、弱毒生CMV、又は死滅又は非活性化CMVである。一実施形態において、弱毒生CMVは、以下を含む条件付き複製欠陥CMV(rdCMV)である:
(a)UL128、UL130、UL131、gH及びgLを含む五量体gH複合体;及び(b)必須タンパク質と不安定化タンパク質との融合タンパク質をコードする核酸であって、必須タンパク質は、IE1/2、UL51、UL52、UL79及びUL84からなる群から選択される。別の実施形態において、不安定化タンパク質は、FK506結合タンパク質(FKBP)又はFKBP誘導体のいずれかであり、ここで、FKBP誘導体は、F15S、V24A、H25R、F36V、E60G、M66T、R71G、D100G、D100N、E102G、K105I及びL106Pからなる群から選択される1以上のアミノ酸置換を含むFKBPである。別の実施形態において、FKBP誘導体は、アミノ酸置換F36V及びL106Pを含むFKBPである。一実施形態において、必須タンパク質はIE1/2である。別の実施形態において、必須タンパク質はUL51である。前述の実施形態の別の実施形態において、CMVは、少なくとも2つの融合タンパク質をコードする核酸を含み、ここで、各融合タンパク質の必須タンパク質は異なる。一実施形態において、融合タンパク質の1つは、IE1/2又はUL51を含む。別の実施形態において、第1の融合タンパク質はIE1/2を含み、第2の融合タンパク質はUL51を含む。
【0021】
前述の実施形態の別の態様において、弱毒生CMVは、以下を含む条件付き複製欠陥CMVであり;(a)UL128、UL130、UL131、gH及びgLを含む五量体gH複合体;及び(b)IE1/2及び不安定化タンパク質の第1融合タンパク質、ならびに、UL51及び不安定化タンパク質の第2融合タンパク質をコードする核酸、ここで、不安定化タンパク質は、アミノ酸置換F36V及びL106Pを含むFK506結合タンパク質(FKBP)誘導体であり、ここで、野生型IE1/2及びUL51はもはや存在せず、そしてここで、CMVはUL131遺伝子の変異の修復によりgH複合体発現を回復した弱毒株である。
【0022】
前述の実施形態の一実施形態において、(a)第1の融合タンパク質は、配列番号1、又は配列番号1と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列であり、そして(b)第2の融合タンパク質は、配列番号3又は配列番号3と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列である。前述の実施形態の別の実施形態において、第1の融合タンパク質は配列番号1を含み、そして、第2の融合タンパク質は配列番号3を含む。前述の実施形態の別の実施形態において、(a)第1の融合タンパク質は、配列番号2又は配列番号2と少なくとも95%同一である核酸配列によってコードされ;そして、(b)第2の融合タンパク質は、配列番号4又は配列番号4と少なくとも95%同一である核酸配列によってコードされる。前述の実施形態のさらに別の実施形態において、第1の融合タンパク質は配列番号2によってコードされ、第2の融合タンパク質は配列番号4によってコードされる。
【0023】
前述の実施形態の別の態様において、弱毒生CMVは、条件付き複製欠陥CMVであり、以下を含み;(a)UL128、UL130、UL131、gH及びgLを含む五量体gH複合体、及び(b)必須タンパク質と不安定化タンパク質の第1の融合タンパク質及び必須タンパク質と不安定化タンパク質の第2の融合タンパク質をコードする核酸;ここで、第1の融合タンパク質は配列番号1を含み、第2の融合タンパク質は配列番号3を含み、ここで、野生型IE1/2及びUL51はもはや存在せず、そしてここで、CMVは、UL131遺伝子の変異の修復によりgH複合体発現を回復した弱毒株である。一実施形態において、CMVは、UL131遺伝子の変異の修復によりgH複合体発現を回復したAD169である。別の実施形態において、条件付き複製欠陥CMVは、配列番号14に示されるゲノムを有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】CMV凍結乾燥収量の製剤賦形剤スクリーニングを示す。パーセント凍結乾燥収率は、凍結液体製剤の測定された感染力を100パーセントとして使用して計算された。-70℃で保存された凍結乾燥バイアルは、細胞ベースの感染力アッセイを使用して凍結液体対照バイアル(-70℃で保存)とともにテストされ、凍結乾燥収率は、液体対照試料のパーセンテージとして計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【
図2】CMV安定性のための製剤賦形剤スクリーニングを示す。異なる保存条件にさらされた安定性試料は、-70℃で保存された凍結乾燥対照試料とともに、細胞ベースの感染力アッセイを使用して1週間でテストされた。安定性試料のLog10感染力損失は、各製剤について70℃で保存された凍結乾燥対照試料と比較して計算された。
【
図3】CMV凍結乾燥収量のための製剤賦形剤の最適化を示す。パーセント凍結乾燥収率は、凍結液体製剤の測定された感染力を100パーセントとして使用して計算された。-70℃で保存された凍結乾燥バイアルは、細胞ベースの感染力アッセイを使用して凍結液体対照バイアル(-70℃で保存)とともにテストされ、凍結乾燥収率は液体対照試料のパーセンテージとして計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【
図4】CMVの安定性のための製剤賦形剤の最適化を示す。異なる時間(1か月、3か月、6か月)で2~8℃の保存に供された安定性試料は、-70℃で保存された凍結乾燥対照試料と共に、細胞ベースの感染力アッセイを使用してテストされた。安定性試料のLog10感染力損失は、各製剤について70℃で保存された凍結乾燥対照試料と比較して計算された。
【
図5A】CMV凍結乾燥プロセスの収量に対する製剤のpHの影響を示す。異なるCMV製剤の凍結乾燥収量(A:pH6.0、6.5、7.0及び7.5;B:pH6.0、7.0及び8.0)である。パーセント凍結乾燥収率は、凍結液体製剤の測定された感染力を100パーセントとして使用して計算された。-70℃で保存された凍結乾燥バイアルは、細胞ベースの感染力アッセイを使用して凍結液体対照バイアル(-70℃で保存)とともにテストされ、凍結乾燥収率は、液体対照試料のパーセンテージとして計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【
図5B】CMV凍結乾燥プロセスの収量に対する製剤のpHの影響を示す。異なるCMV製剤の凍結乾燥収量(A:pH6.0、6.5、7.0及び7.5;B:pH6.0、7.0及び8.0)である。パーセント凍結乾燥収率は、凍結液体製剤の測定された感染力を100パーセントとして使用して計算された。-70℃で保存された凍結乾燥バイアルは、細胞ベースの感染力アッセイを使用して凍結液体対照バイアル(-70℃で保存)とともにテストされ、凍結乾燥収率は、液体対照試料のパーセンテージとして計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【
図6A】CMVの安定性に対する製剤のpHの影響を示す。異なるCMV製剤の安定性試験(A:pH6.0、6.5、7.0及び7.5;B:pH6.0、7.0及び8.0)である。2~8℃で1か月間及び3か月間(A)又は2~8℃又は25℃で1週間(B)保存された安定性試料は、細胞ベースの感染アッセイを用いて、-70℃で保存された凍結乾燥対照試料とともにテストされた。安定性試料のLog10感染力損失は、各製剤について70℃で保存された凍結乾燥対照試料と比較して計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【
図6B】CMVの安定性に対する製剤のpHの影響を示す。異なるCMV製剤の安定性試験(A:pH6.0、6.5、7.0及び7.5;B:pH6.0、7.0及び8.0)である。2~8℃で1か月間及び3か月間(A)又は2~8℃又は25℃で1週間(B)保存された安定性試料は、細胞ベースの感染アッセイを用いて、-70℃で保存された凍結乾燥対照試料とともにテストされた。安定性試料のLog10感染力損失は、各製剤について70℃で保存された凍結乾燥対照試料と比較して計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【
図7】プロピレングリコール濃度がCMV凍結乾燥収量に及ぼす影響を示す。パーセント凍結乾燥収率は、凍結液体製剤の測定された感染力を100パーセントとして使用して計算された。-70℃で保存された凍結乾燥バイアルは、細胞ベースの感染力アッセイを使用して凍結液体対照バイアル(-70℃で保存)とともにテストされ、凍結乾燥収率は、液体対照試料のパーセンテージとして計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【
図8】CMVの安定性に対するプロピレングリコール濃度の影響を示す。異なるCMV製剤の安定性試験である。15℃(1週間)及び2~8℃(1週間及び1か月)の保存に供された安定性試料は、細胞ベースの感染力アッセイを用いて-70℃で保存された凍結乾燥対照試料とともにテストされた。安定性試料のLog10感染力損失は、各製剤について70℃で保存された凍結乾燥対照試料と比較して計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【
図9】CMV凍結乾燥収率に対するCMCナトリウム濃度の影響を示す。パーセント凍結乾燥収率は、凍結液体製剤の測定された感染力を100パーセントとして使用して計算された。-70℃で保存された凍結乾燥バイアルは、細胞ベースの感染力アッセイを使用して凍結液体対照バイアル(-70℃で保存)とともにテストされ、凍結乾燥収率は、液体対照試料のパーセンテージとして計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【
図10】CMVの安定性に対するナトリウムCMC濃度の影響を示す。異なるCMV製剤の安定性研究である。15℃(1週間)及び2~8℃(1週間及び1か月)の保存に供された安定性試料は、細胞ベースの感染力アッセイを使用して、-70℃で保存された凍結乾燥対照試料とともにテストされた。安定性試料のLog10感染力損失は、各製剤について70℃で保存された凍結乾燥対照試料と比較して計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【
図11】CMV凍結乾燥収率に対する充填量の影響を示す。パーセント凍結乾燥収率は、凍結液体製剤の測定された感染力を100パーセントとして使用して計算された。-70℃で保存された凍結乾燥バイアルは、細胞ベースの感染力アッセイを使用して凍結液体対照バイアル(-70℃で保存)とともにテストされ、凍結乾燥収率は、液体対照試料のパーセンテージとして計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【
図12】充填量がCMVの安定性に及ぼす影響を示す。2~8℃(1か月、3か月及び6か月)の保存に供された安定性試料は、-70℃で保存された凍結乾燥対照試料とともに、細胞ベースの感染力アッセイを使用してテストされた。安定性試料のLog10感染力損失は、各製剤について70℃で保存された凍結乾燥対照試料と比較して計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【
図13】静的光散乱によって測定された液体及び凍結乾燥APA製剤の粒子サイズデータを示す。
【
図14A】(A)静的光散乱により測定された、CMV-202製剤中のAPAを含む液体、凍結/解凍及び凍結乾燥CMVの粒子サイズデータを示す。1か月間2~8℃又は25℃で保存された安定性試料は、-70℃で保存された凍結乾燥対照試料とともに、細胞ベースの感染力アッセイを使用してテストされた。3つの試料がテストされ、3つのテストからの平均パーセント相対感染性データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告された。
【
図14B】(B)CMV-202製剤におけるCMV安定性に対するAPAの存在下での製剤の効果を示す。1か月間2~8℃又は25℃で保存された安定性試料は、-70℃で保存された凍結乾燥対照試料とともに、細胞ベースの感染力アッセイを使用してテストされた。3つの試料がテストされ、3つのテストからの平均パーセント相対感染性データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告された。
【
図15】
図15AからCは、五量体gH複合体の発現が回復したCMV株の構築の略図を示す。(A)AD169ウイルスゲノムを操作するための自己切除可能な細菌人工染色体(BAC)の生成のための戦略である。(B)その発現を復元するためのUL131のフレームシフト変異の修復である。(C)自己切除可能なCMV BACを作成するためのGFPのcreリコンビナーゼ遺伝子による置換である。
【
図16】CMV-202製剤の凍結乾燥プロセスの収率に対するpH7.0のバッファー種の影響を示す。パーセント凍結乾燥収率は、凍結液体製剤の測定された感染力を100パーセントとして使用して計算された。-70℃で保存された凍結乾燥バイアルは、細胞ベースの感染力アッセイを使用して凍結液体対照バイアル(-70℃で保存)とともにテストされ、凍結乾燥収率は、液体対照試料のパーセンテージとして計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告された。
【
図17】CMV-202製剤のCMV安定性に対するpH7.0のバッファー種の影響を示す。2~8℃又は25℃で1週間保存された安定性試料、及び試料は、-70℃で保存された凍結乾燥対照試料とともに、セルベースの感染力アッセイを使用してテストされた。安定性試料のLog10感染力損失は、各製剤について-70℃で保存された凍結乾燥対照試料と比較して計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【
図18】CMV-202製剤の凍結乾燥工程におけるスクロース濃度の影響を示す。パーセント凍結乾燥収率は、凍結液体製剤の測定された感染力を100パーセントとして使用して計算された。-70℃で保存された凍結乾燥バイアルは、細胞ベースの感染力アッセイを使用して凍結液体対照バイアル(-70℃で保存)とともにテストされ、凍結乾燥収率は、液体対照試料のパーセンテージとして計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告された。
【
図19】CMV-202製剤のCMV安定性に対するスクロース濃度の影響を示す。2~8℃又は25℃で1週間保存された安定性試料、及び試料は、-70℃で保存された凍結乾燥対照試料とともに、セルベースの感染力アッセイを使用してテストされた。安定性試料のLog10感染力損失は、各製剤について-70℃で保存された凍結乾燥対照試料と比較して計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【
図20】CMV-202製剤の凍結乾燥工程におけるトレハロース濃度の影響を示す。パーセント凍結乾燥収率は、凍結液体製剤の測定された感染力を100パーセントとして使用して計算された。-70℃で保存された凍結乾燥バイアルは、細胞ベースの感染力アッセイを使用して凍結液体対照バイアル(-70℃で保存)とともにテストされ、凍結乾燥収率は、液体対照試料のパーセンテージとして計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告された。
【
図21】CMV-202製剤のCMV安定性に対するトレハロース濃度の影響を示す。2~8℃又は25℃で1週間保存された安定性試料、及び、試料は、-70℃で保存された凍結乾燥対照試料とともに、セルベースの感染力アッセイを使用してテストされた。安定性試料のLog10感染力損失は、各製剤について-70℃で保存された凍結乾燥対照試料と比較して計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【
図22】CMV-202製剤の凍結乾燥工程における糖の種類(スクロース対トレハロース)の影響を示す。パーセント凍結乾燥収率は、凍結液体製剤の測定された感染力を100パーセントとして使用して計算された。-70℃で保存された凍結乾燥バイアルは、細胞ベースの感染力アッセイを使用して凍結液体対照バイアル(-70℃で保存)とともにテストされ、凍結乾燥収率は、液体対照試料のパーセンテージとして計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告された。
【
図23】CMV-202製剤のCMV安定性に対する糖の種類(スクロース対トレハロース)の影響を示す。1~2℃又は25℃で1週間保存された安定性試料は、-70℃で保存した凍結乾燥対照試料とともに、細胞ベースの感染力アッセイを使用してテストされた。安定性試料のlog10感染力損失は、各製剤について-70℃で保存された凍結乾燥対照試料と比較して計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均(sem)の標準誤差が計算され、2xsemが報告された。
【
図24】CMV-202製剤の凍結乾燥工程におけるアルカリ塩(塩化ナトリウム対塩化カリウム)の効果を示す。パーセント凍結乾燥収率は、凍結液体製剤の測定された感染力を100パーセントとして使用して計算された。-70℃で保存された凍結乾燥バイアルは、細胞ベースの感染力アッセイを使用して凍結液体対照バイアル(-70℃で保存)とともにテストされ、凍結乾燥収率は、液体対照試料のパーセンテージとして計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告された。
【
図25】CMV-202製剤のCMV安定性に対するアルカリ塩(塩化ナトリウム対塩化カリウム)の影響を示す。2~8℃又は25℃で1週間保存された安定性試料、及び、試料は、-70℃で保存された凍結乾燥対照試料とともに、セルベースの感染力アッセイを使用してテストされた。安定性試料のLog10感染力損失は、各製剤について-70℃で保存された凍結乾燥対照試料と比較して計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【
図26】CMV-202製剤の凍結乾燥工程におけるセルロースタイプ(CMC対HPMC)の影響を示す。パーセント凍結乾燥収率は、凍結液体製剤の測定された感染力を100パーセントとして使用して計算された。-70℃で保存された凍結乾燥バイアルは、細胞ベースの感染力アッセイを使用して凍結液体対照バイアル(-70℃で保存)とともにテストされ、凍結乾燥収率は、液体対照試料のパーセンテージとして計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告された。
【
図27】CMV-202製剤のCMV安定性に対するセルロースの種類(CMC対HPMC)の影響を示す。2~8℃又は25℃で1週間保存された安定性試料、及び、試料は、-70℃で保存された凍結乾燥対照試料とともに、セルベースの感染力アッセイを使用してテストされた。安定性試料のLog10感染力損失は、各製剤について-70℃で保存された凍結乾燥対照試料と比較して計算された。3つの試料がテストされ、3つのテストの平均データが報告された。試料の平均の標準誤差(SEM)が計算され、2xSEMが報告される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
「約」という用語は、物質又は組成物の量(mM、Mなど)、製剤成分のパーセンテージ(v/v又はw/v)、溶液/製剤のpH、又は方法におけるステップを特徴づけるパラメーターの値などを変更する場合、起こりうる数値の変化を指し、例えば、物質又は組成物の調製、特性評価、及び/又は使用に関連する、典型的な測定;取り扱い及びサンプリング手順を通じて;これらの手順の機器エラーによる、製造又は原料による相違、又は、組成物の製造又は使用又は手順の実施に使用される成分の純度、などである。特定の実施形態において、「約」は、±0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%又は10%の変動を意味し得る。
【0026】
「増量剤」という用語は、凍結乾燥製品の構造を提供する薬剤を含む。増量剤に使用される一般的な例には、マンニトール、グリシン及びラクトースが含まれる。薬学的にエレガントなケーキを提供することに加えて、増量剤は、崩壊温度の変更、凍結融解保護の提供、及び長期保存にわたるタンパク質安定性の強化に関して有用な品質を付与することもできる。これらの薬剤はまた、張度調整剤としても役立つ。
【0027】
「CMV対照試料」は、CMV製剤試験試料と同じCMV処方を有し、CMV製剤試験試料と同じ条件(すなわち、凍結乾燥、マイクロ波乾燥、リゾスフェア乾燥)でCMV製剤を乾燥させた直後の乾燥固体組成物を指すか、又はCMVウイルスの感染力損失がないか又は最小限の感染力損失である条件で保存された(つまり、-70℃以下で保存された)前述の乾燥した固形組成物を指す。
【0028】
「不活化ウイルス」は、死滅した又は不活性な全ウイルスを指し、ここで、ウイルスは、化学物質、熱又は放射線を含む任意の手段によって不活性化される。不活化ウイルスは、不活化後の残存感染性が低くなり、例えば、不活性化後のプラーク形成単位(PFU)は5mL未満である。好ましい実施形態において、不活化後、非常に少量の残存感染性が存在し、例えば、≦4PFU/mL、≦3PFU/mL、≦2PFU/mL、<1PFU/mL、≦0.5PFU/mL又は≦0.1PFU/mLである。特定のウイルス又はその製剤のPFUは、例えば、プラークアッセイ、免疫染色アッセイ、又はウイルス感染性を検出するための当技術分野で既知の他の方法を使用することによって決定することができる。
【0029】
「感染力喪失」とは、当技術分野で公知の方法を使用してCMV試験試料のウイルス複製の喪失をCMV対照試料と比較することを指す。一実施形態において、CMV対照試料へのCMV試験試料におけるウイルス複製に必須のウイルスタンパク質の発現の喪失が測定される。別の実施形態において、感染力損失は、実施例3の相対感染力アッセイ(例えば、IRVEアッセイ)を使用して測定される。別の実施形態において、感染力損失は、プラークアッセイを使用して測定される。
【0030】
「凍結乾燥」(Lyophilization)、「凍結乾燥した」、及び「凍結乾燥」(freeze-dried)という用語は、乾燥させる材料を最初に凍結し、次に真空環境での昇華によって氷又は凍結溶媒を除去するプロセスを指す。保存時の凍結乾燥製品の安定性を高めるために、賦形剤を前凍結乾燥製剤に含めることができる。
【0031】
本明細書で使用される「リオスフェア」(Lyosphere)は、実質的に球形又は卵形の治療活性剤を含む乾燥凍結単一体を指す。いくつかの実施形態において、リオスフェアの直径は、約2から約12mm、好ましくは2から8mm、例えば2.5から6mm又は2.5から5mmである。いくつかの実施形態において、リオスフェアの容量は、約20から550μL、好ましくは20から100μL、例えば20から50μLである。リオスフェアが実質的に球形ではない実施形態においては、リオスフェアのサイズは、より長い寸法のより短い寸法に対する比であるアスペクト比に関して説明することができる。リオスフェアのアスペクト比は、0.5から2.5、好ましくは0.75から2、例えば1から1.5であり得る。
【0032】
「弱毒生CMV」は、ウイルスが疾患を引き起こす能力が野生型CMVと比較して低下しているCMVを指す。一実施形態において、疾患を引き起こす能力の低下は、CMVの感染力の低下によって測定される。
【0033】
本明細書で使用される「マイクロ波真空乾燥」は、昇華によるワクチン製剤の乾燥ワクチン製品(好ましくは、<6%水分)の形成のために、マイクロ波放射(放射エネルギー又は非電離放射としても知られている)を利用する乾燥方法を指す。特定の実施形態において、マイクロ波乾燥は、米国特許出願公開番号US2016/0228532号に記載されているように行われる。一実施形態において、マイクロ波放射は進行波形式である。
【0034】
「再構成された溶液」は、ウイルスが再構成された溶液中に分散されるように、固体形態(凍結乾燥ケーキなど)の乾燥ウイルスを希釈剤に溶解することによって調製されたものである。再構成された溶液は、投与(例えば、筋肉内投与)に適しており、場合により皮下投与に適している場合がある。
【0035】
本明細書で使用される「塩(類)」は、無機及び/又は有機酸で形成された酸性塩、ならびに無機及び/又は有機塩基で形成された塩基性塩を示す。他の塩もまた有用であるが、薬学的に許容される(すなわち、非毒性の生理学的に許容される)塩が好ましい。例示的な塩基性塩には、アンモニウム塩、ナトリウム、リチウム及びカリウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム及びマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、亜鉛塩、N-Me-D-グルカミン、コリン、トロメタミン、ジシクロヘキシルアミン、t-ブチルアミンのような有機塩基(例えば、有機アミン)との塩、及びアルギニン、リジンなどのようなアミノ酸との塩を含む。
【0036】
「糖アルコール」は、一般式HOCH2(CHOH)nCH2OH、n=1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10を有する糖から誘導されたポリオールを指す。例には、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール及びグリセロールが含まれ、これらに限定されない。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「x%(w/v)」は、xg/100mlと同等である(例えば、5%w/vは、50mg/mlに等しい)。
【0038】
本明細書で使用する場合、「免疫応答を誘発する」という用語は、それが投与される患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおいて免疫応答を生じさせる弱毒生、死滅又は不活化CMVの能力を指し、ここで、応答には、CMVに特異的に結合し、好ましくは中和し、及び/又はT細胞活性化を引き起こす要素(抗体など)の産生が含まれるが、これに限定されない。「防御免疫応答」とは、患者がCMV感染(一次、再発、及び/又は重複感染を含む)にかかる可能性を低下させ、及び/又はCMV感染に関連する少なくとも1つの病理を改善及び/又はCMV感染の重症度/長さを低下させる免疫応答である。
【0039】
本明細書で使用する場合、「免疫学的有効量」という用語は、CMV感染(一次、再発、及び/又は超免疫を含む)から保護できる患者に投与したときに、CMVに対する免疫応答を誘発でき、及び/又はCMV感染に関連する少なくとも1つの病状を改善し、及び/又は患者のCMV感染の重症度/長さを軽減できる免疫原の量をいう。この量は、CMV感染の可能性又は重症度を大幅に軽減するのに十分でなければならない。当技術分野で公知の動物モデルを使用して、免疫原の投与の保護効果を評価することができる。例えば、免疫原を投与された個体からの免疫血清又は免疫T細胞は、抗体又は細胞傷害性T細胞による中和能力、又は免疫T細胞によるサイトカイン産生能力についてアッセイすることができる。そのような評価に一般的に使用されるアッセイには、ウイルス中和アッセイ、抗ウイルス抗原ELISA、インターフェロン-ガンマサイトカインELISA、インターフェロン-ガンマELISPOT、細胞内マルチサイトカイン染色(ICS)、及び51クロム放出細胞毒性アッセイが含まれ、これらに限定されない。動物チャレンジモデルは、免疫学的に有効な量の免疫原を決定するためにも使用できる。
【0040】
本明細書で使用する場合、「条件付き複製欠陥CMV」という用語は、ウイルス複製に必須の1以上のタンパク質が不安定化したCMVを指す。野生型の不安定化されていない必須タンパク質をコードする核酸は、条件付き複製欠損ウイルスにはもはや存在しない。1以上の必須タンパク質が不安定化する条件下で、ウイルス複製は、不安定な必須タンパク質を含まないウイルスと比較して、好ましくは50%、75%、90%、95%、99%又は100%以上減少する。しかし、不安定化した必須タンパク質を安定化させる条件下では、ウイルス複製は、不安定化された必須タンパク質を含まないCMVの複製量の好ましくは少なくとも75%、80%、90%、95%、99%又は100%で起こり得る。より好ましい実施形態において、1以上の必須タンパク質は、FKBP又はその誘導体のような不安定化タンパク質との融合によって不安定化される。このような融合タンパク質は、Shield-1のような安定剤の存在によって安定化できる。本明細書で使用する場合、「rdCMV」という用語は、条件付き複製欠陥サイトメガロウイルスを指す。
【0041】
好ましい実施形態において、複製生ウイルスによって誘発される免疫応答は、その生ウイルスの対応物と比較して、程度及び/又は幅において同一であるか又は実質的に類似している。他の好ましい実施形態において、電子顕微鏡分析による複製欠陥ウイルスの形態は、区別できないか又はその生ウイルスの対応物と実質的に類似している。
【0042】
本明細書で使用される場合、「FKBP」という用語は、配列番号11の不安定化タンパク質を指す。FKBPを含む融合タンパク質は、宿主細胞によって機械的に分解される。本明細書で使用する場合、「FKBP誘導体」という用語は、1以上のアミノ酸の置換、欠失及び/又は付加によって変更されているFKBPタンパク質又はその一部を指す。FKBP誘導体は、タンパク質に融合された場合、FKBPの不安定化特性の実質的にすべてを保持し、FKBPがShield-1によって安定化される能力の実質的にすべてを保持する。好ましいFKBP誘導体は、以下のアミノ酸位置F15S、V24A、H25R、F36V、E60G、M66T、R71G、D100G、D100N、E102G、K105I及びL106Pにおいて示される置換の1つ以上を有する。F36V及びL106P置換(配列番号12)を有するFKBP誘導体が特に好ましい。好ましい実施形態において、FKBP又はFKBP誘導体をコードする核酸は、内因性FKBPのためにヒトで一般的に使用されない少なくともいくつかのコドンを含む。これにより、融合タンパク質のFKBP又はFKBP誘導体は、ヒトゲノムの対応物と再配置又は再結合する可能性が減少する。配列番号13の核酸配列は、そのようなコドンを使用して配列番号12をコードする。
【0043】
本明細書で使用する場合、「Shield-1」又は「Shld-1」という用語は、野生型FKBP及びその誘導体に結合し、安定剤として作用する合成小分子を指す。野生型FKBPと比較して、F36V誘導体への結合は約1,000倍強くなる(Clacksonら、1998、Proc Natl Acad Sci USA 95:10437-42)。Shield-1は合成でき(基本的にはHoltら、1993、J.Am.Chem.Soc.115:9925-38、及び、Yangら、2000、J.Med.Chem.43:1135-42、及びGrimleyら、2008、Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters.18:759に記載される)、又は、Cheminpharma LLC(Farmington、CT)、又は、Clontech Laboratories、INC.(Mountain View、CA)から市販されている。Shield-1の塩も本発明の方法で使用することができる。Shield-1の構造は次のとおりである。
【0044】
【0045】
本明細書で使用される場合、「融合したタンパク質」又は「融合タンパク質」という用語は、2つのポリペプチドが同一の連続したアミノ酸配列の一部としてインフレームで配置されたものを指す。融合は、ポリペプチド間に追加のアミノ酸残基がないように直接的であるか、又は性能を改善するか又は機能性を追加する小さなアミノ酸リンカーが存在するように間接的であり得る。好ましい実施形態において、融合は直接的である。
【0046】
本明細書で使用される場合、「五量体gH複合体」又は「gH複合体」という用語は、CMVビリオンの表面上の5つのウイルスタンパク質の複合体を指す。複合体は、gH/gL足場(scaffold)に組み立てられたUL128、UL130、及びUL131によってコードされるタンパク質で構成されている(Wang及びShenk、2005、Proc Natl Acad Sci USA 102:1815;Ryckmanら、2008、J.Virol.82:60)。CMV株AD169の複合タンパク質の配列は、GenBankアセッション番号NP_783797.1(UL128)、NP_040067(UL130)、CAA35294.1(UL131)、NP_040009(gH、別名UL75)及びNP_783793(gL、UL115とも呼ばれる)に示される。一部の弱毒CMV株は、UL131に1以上の変異がありタンパク質が発現せず、したがってgH複合体が形成されない。このような場合、gH複合体がrdCMVで発現されるように、UL131を修復する必要がある(Wang及びShenk、2005、J.Virol.79:10330のような方法を使用)。これらのウイルスは、五量体gH複合体を構成し、ウイルスエンベロープ上で五量体gH複合体を組み立てる5つのウイルスタンパク質を発現する。
【0047】
本明細書で使用する場合、「必須タンパク質」という用語は、インビボ及び組織培養において、ウイルス複製に必要なウイルスタンパク質を指す。CMVの必須タンパク質の例には、IE1/2、UL37x1、UL44、UL51、UL52、UL53、UL56、UL77、UL79、UL84、UL87及びUL105が含まれ、これらに限定されない。
【0048】
本明細書で使用する場合、「不安定化された必須タンパク質」という用語は、ウイルス複製において発現され、その機能を果たし、そして、安定剤の非存在下で分解される必須タンパク質を指す。好ましい実施形態において、必須タンパク質は、FKBP又はその誘導体のような不安定化タンパク質に融合される。通常の成長条件下(すなわち、安定剤が存在しない場合)では、融合タンパク質は発現されるが、宿主細胞の機構によって分解される。分解により、必須タンパク質がウイルス複製で機能することができなくなり、必須タンパク質が機能的にノックアウトされる。Shield-1のような安定剤が存在する条件下で、融合タンパク質は安定化され、ウイルス複製を維持できるレベルでその機能を実行でき、このレベルは、好ましくは、不安定化した必須タンパク質を含まないCMVの複製量の少なくとも75%、80%、90%、95%、99%又は100%である。
【0049】
複製欠陥CMV
本発明の一態様において、製剤では、五量体gH複合体を発現する複製欠陥CMV(rdCMV)を使用する。五量体gH複合体を発現する任意の弱毒CMVは、本明細書に記載されるように複製欠損にすることができる。1つの実施形態において、弱毒CMVは、UL131遺伝子における変異の修復のためにgH複合体発現を回復したAD169である(実施例1を参照のこと)。
【0050】
条件付き複製欠陥ウイルスは、1以上の必須ウイルスタンパク質が、必須タンパク質の不安定化した対応物に置き換わった変異体である。不安定化された対応物は、必須タンパク質と不安定化タンパク質との間の融合タンパク質をコードする核酸によってコードされる。不安定化した必須タンパク質は、安定化剤が存在する場合にのみウイルス複製をサポートするように機能できる。好ましい実施形態において、米国特許出願公開第2009/0215169号に記載されている方法を使用して、条件付き複製欠陥表現型を、CMVを発現する五量体gH複合体に付与する。手短に言えば、CMV複製に必須の1以上のタンパク質は、不安定化タンパク質、例えば、FKBP又はFKBP誘導体に融合される。野生型必須タンパク質をコードする核酸は、もはやrdCMVには存在しない。外から加えられた細胞透過性の小分子安定剤であるShield-1(Shld-1)の存在下で、融合タンパク質は安定化され、そして、必須タンパク質は、ウイルス複製をサポートするように機能することができる。安定剤の存在下でのrdCMVの複製は、好ましくは、不安定化融合タンパク質を含まないCMV(例えば、rdCMVを構築するために使用される親の弱毒CMV)の複製量の少なくとも75%、80%、90%、95%、99%又は100%である。Shield-1がない場合、融合タンパク質の不安定化タンパク質は、融合タンパク質が機械的に宿主細胞によって実質的に分解されるようにする。必須タンパク質が存在しない又は最小限の量では、CMVは患者のCMV感染を生成又は維持する量で複製できない。安定化剤の非存在下でrdCMVの複製は起こらないか、又は、不安定化融合タンパク質を含まないCMV(たとえば、rdCMVを構築するために使用される親の弱毒CMV)と比較して好ましくは50%、75%、90%、95%又は99%以上減少する。
【0051】
本発明での使用に適した融合タンパク質は、安定剤の存在下で宿主細胞におけるウイルス複製を促進するために十分な必須タンパク質活性を保持し、そして安定剤がない場合は、CMV複製の減少(好ましくは50%、75%、90%、95%以上、99%の減少)を起こす。好ましくは、融合タンパク質で使用するための必須タンパク質は、非構造的タンパク質をコードし、したがって、rdCMVビリオンにパッケージされない。本明細書で同定される適切な必須タンパク質には、必須遺伝子IE1/2、UL51、UL52、UL79及びUL84によってコードされるCMVタンパク質が含まれる。
【0052】
当技術分野で周知の組換えDNA法を使用して、CMV複製及び/又はCMV感染の確立/維持に必須のタンパク質をコードする核酸を、FKBP又はその誘導体をコードする核酸に付着させる。コード化された融合タンパク質は、必須タンパク質にインフレームで融合されたFKBP又はFKBP誘導体を含む。コード化された融合タンパク質は、Shield-1の存在下で安定である。しかしながら、コード化された融合タンパク質はShield-1がないと不安定化し、破壊の対象となる。好ましい実施形態において、FKBPは、配列番号11である。他の好ましい実施形態において、FKBP誘導体は、F15S、V24A、H25R、F36V、E60G、M66T、R71G、D100G、D100N、E102G、K105I及びL106Pからなる群から選択される1以上のアミノ酸置換を含むFKBPである。より好ましい実施形態において、FKBP誘導体は、F36V及び/又はL106P置換(配列番号12)を含む。より好ましい実施形態において、FKBP誘導体は、配列番号13によってコードされる。
【0053】
FKBP又はその誘導体との融合による不安定化の標的となる必須タンパク質は、1)ウイルス複製に必須であり;2)必須タンパク質の機能を実質的に妨害することなく、不安定化タンパク質の融合に対応でき;そして、3)他の周囲のウイルス遺伝子のORFを実質的に破壊することなく、必須タンパク質をコードするウイルスORFの5’又は3’末端においてFKBP又はその誘導体をコードする核酸の挿入に対応することができる。好ましい実施形態において、FBBP又はその誘導体との融合による不安定化の標的となる必須タンパク質は、非構造タンパク質をコードし、したがって、組換えCMVビリオンにパッケージされる可能性が低い。表1は、前述の基準を満たすCMV遺伝子を示す。
【0054】
【0055】
本発明は、不安定化タンパク質に融合された必須タンパク質又はその誘導体との融合タンパク質を含むrdCMVの製剤を包含する。必須タンパク質誘導体は、野生型必須タンパク質と比較して、1つ以上のアミノ酸置換、追加、及び/又は削除を含み、Shield-1の存在下でウイルス複製をサポートするのに十分な必須タンパク質の活性を提供できる。ウイルス活性を測定する例は、以下の実施例に提供されている。当該分野で公知の方法を使用して、目的のCMV必須タンパク質と誘導体との間の差異の程度を決定し得る。一実施形態において、関連性を決定するために配列同一性が使用される。本発明の誘導体は、好ましくは、塩基配列に対して少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも97%同一、少なくとも99%同一であろう。同一性パーセントは、同一残基の数を残基の総数で割って100を掛けたものとして定義される。アラインメント内のシーケンスの長さが異なる場合(ずれ又は拡張のため)、合計の長さの値を表す最も長いシーケンスの長さが計算に使用される。
【0056】
いくつかの実施形態において、不安定化の標的となるウイルス複製に必須の1以上のウイルスタンパク質は、IE1/2、UL51、UL52、UL84、UL79、UL87、UL37x1、UL77及びUL53又はそれらの誘導体からなる群から選択される。特定の実施形態において、不安定化の標的となるウイルス複製に必須の1以上のウイルスタンパク質は、IE1/2、UL51、UL52、UL84、UL79、UL87からなる群から選択される。より具体的な実施形態において、不安定化の標的となるウイルス複製に必須の1以上のウイルスタンパク質は、IE1/2、UL51、UL52、UL79及びUL84からなる群から選択される。
【0057】
FKBP又はその誘導体への融合により、2つ以上の必須タンパク質を不安定化することができる。いくつかの実施形態において、必須タンパク質は、CMV複製及び/又は感染の異なる段階で機能する(限定されないが、即時初期(immediate early)、初期(early)又は後期(late)段階を含む)。好ましい実施形態において、不安定化の標的となるウイルス複製に必須のウイルスタンパク質の組み合わせは、IE1/2及びUL51、IE1/2及びUL52、IE1/2及びUL79、IE1/2及びUL84、UL84及びUL51、並びに、UL84及びUL52からなる群から選択される。より好ましい実施形態において、IE1/2及びUL51は、同じ組換えCMVにおける不安定化を標的とする。最も好ましい実施形態において、IE1/2を含む融合タンパク質は配列番号1であり、UL51を含む融合タンパク質は配列番号3である。配列番号1及び3は、それぞれ、配列番号2及び4によってコードされ得る。不安定化されたIE1/2及びUL51を有するrdCMVのゲノムは、配列番号14に示される。
【0058】
FKBP又はその誘導体は、必須タンパク質に直接的又は間接的に融合させることができる。好ましい実施形態において、FKBP又はその誘導体は、必須タンパク質に直接融合される。
【0059】
FKBP又はその誘導体は、必須タンパク質のN末端又はC末端のいずれかで必須タンパク質に融合することができる。好ましい実施形態において、FKBPは、必須タンパク質のN末端に融合される。
【0060】
2以上のFKBP又はその誘導体を、必須タンパク質に融合させることができる。必須タンパク質に融合した2つ以上のFKBP又はその誘導体が存在する実施形態において、個々のFKBP又はその誘導体のそれぞれは、同じでも異なっていてもよい。好ましい実施形態において、必須タンパク質に融合した1つのFKBP又はその誘導体がある。
【0061】
不活化CMV
いくつかの実施形態において、上記のrdCMV又はCMVは、化学的又は物理的不活化を使用してさらに不活化される。そのような例には、熱処理、ホルムアルデヒド、β-プロピオラクトン(BPL)又はバイナリーエチレンイミン(BEI)とのインキュベーション又はガンマ線照射が含まれる。好ましい方法は、限定されるものではないが、五量体gH複合体によって誘発される免疫原性を含む免疫原性を破壊しないか、又は実質的に破壊しない。そのように、さらに不活化されたCMVによって誘発された免疫応答は、追加の不活化処理を行わないrdCMVと比較して、維持されるか又は実質的に維持される。好ましい実施形態において、中和抗体を誘導するさらなる不活化CMVの能力は、追加の不活化処理のないrdCMVによって誘導される能力に匹敵する。五量体gH複合体を含むCMVの免疫原性を確保するために、化学的方法又は物理的方法のいずれか1つ又は組み合わせによる不活化レジメンが経験的に決定される。
【0062】
ウイルス複製の評価
当業者は、ウイルス複製アッセイを使用して、FKBP又はその誘導体に融合された特定の必須タンパク質の機能を決定することができる。遺伝子発現/コード化された製品の機能は、Shield-1の存在下での必須タンパク質へのFKBP又はその誘導体の結合によって実質的に影響されるべきではないため、rdCMVは、Shield-1の存在下で親CMVに匹敵する速度で複製する必要がある(できれば、親のウイルスレベルの75%、80%、90%、95%、99%又は100%で)。rdCMVの複製は、Shield-1の非存在下では、親CMVから実質的に変更される(不安定化融合タンパク質が含まれていないCMVと比較して、50%、75%、90%、95%、99%又は100%以上減少することが好ましい)。
【0063】
好ましい実施形態において、少なくとも2μMのShield-1の存在下でのrdCMVは、非rdCMVが複製する量の好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%複製する。
【0064】
一実施形態において、本発明のrdCMVを含む組成物は、少なくとも2μMのShield-1の存在下で、少なくとも105pfu/ml、より好ましくは少なくとも107pfu/mlのウイルス力価を有する。
【0065】
逆に、rdCMVは、Shield-1の非存在下では実質的に複製すべきではない。複製欠陥メカニズムの質は、コントロールがウイルス複製を許容しない条件下、すなわち、これらの条件下で子孫ビリオンの感染力価がどの程度ストリンジェントであるかによって判断される。ここで説明するrdCMVは、Shield-1の存在なしでは、実質的に(細胞培養内又は患者内で)複製できない。ARPE-19細胞及び他の種類のヒト初代細胞での複製は条件付きであり、ウイルス複製を維持するには、培養培地に0.1μM以上、好ましくは少なくとも2μMのShield-1のモル濃度が必要である。
【0066】
一実施形態において、本発明のrdCMVを含む組成物は、Shield-1の非存在下では、2pfu/ml未満、より好ましくは1pfu/ml未満のウイルス力価を有する。
【0067】
CMV複製を評価する方法を使用して、Shield-1が存在しない場合と存在する場合のrdCMV複製を評価できる。しかしながら、好ましい実施形態において、TCID50が使用される。
【0068】
別の実施形態において、rdCMV力価は、50%組織培養感染用量(TCID50)アッセイによって決定される。簡潔には、この希釈アッセイは、感染した宿主の50%を殺すのに必要なウイルスの量を定量する。宿主細胞(例えば、ARPE-19細胞)をプレーティングし、ウイルスの段階希釈液を加える。インキュベーション後、細胞死(すなわち感染細胞)のパーセンテージが観察され、各ウイルス希釈について記録される。結果は、TCID50を数学的に計算するために使用される。
【0069】
別の実施形態において、rdCMV力価は、プラークアッセイを使用して決定される。ウイルスプラークアッセイは、ウイルス試料中のプラーク形成単位(pfu)の数を決定する。簡潔には、宿主細胞(例えばARPE-19細胞)のコンフルエントな単層をさまざまな希釈率でrdCMVに感染させ、寒天やカルボキシメチルセルロースのような半固形培地で覆い、ウイルス感染が無差別に広がるのを防ぐ。ウイルスプラークは、ウイルスが固定細胞単層内の細胞に感染すると形成される。ウイルス感染細胞は溶解し、隣接する細胞に感染を広げ、そこで感染から溶解のサイクルが繰り返される。感染した細胞領域は、目視又は光学顕微鏡で確認できるプラーク(感染していない細胞に囲まれた感染領域)を作成する。プラークをカウントし、プレートの準備に使用した希釈係数と組み合わせた結果を使用して、試料単位体積あたりのプラーク形成単位の数(pfu/mL)を計算する。pfu/mLの結果は、試料内の感染性粒子の数を表し、形成された各プラークは1つの感染性ウイルス粒子を表すという仮定に基づいている。本発明の特定の実施形態において、製剤は、凍結乾燥後、2.5x10E05~1.2x10E09pfu/mLの弱毒生CMV又はrdCMVを含む。
【0070】
アジュバント
アジュバントは、免疫原が免疫応答を引き起こすのを補助することができる物質である。アジュバントは、以下の1つ以上のようなさまざまなメカニズムによって機能することができる;抗原の生物学的又は免疫学的半減期の増加;抗原提示細胞への抗原送達の改善;抗原提示細胞による抗原プロセッシングと提示の改善;用量節約を達成し、免疫調節性サイトカインの産生を誘導する(Vogel、2000、Clin Infect Dis 30:S266)。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、rdCMV及びアジュバントを含む。アジュバントは、凍結乾燥、マイクロ波乾燥、リオスフェアの形成前に製剤に添加するか、又は乾燥したCMV製剤の再構成時に添加することができる。
【0071】
免疫応答の生成を補助するために、さまざまな異なるタイプのアジュバントを使用することができる。特定のアジュバントの例には、水酸化アルミニウム;リン酸アルミニウム、ヒドロキシリン酸アルミニウム、無定形ヒドロキシリン酸アルミニウム硫酸アジュバント(AAHSA)又はアルミニウムの他の塩;リン酸カルシウム;DNA CpGモチーフ;モノホスホリルリピドA;コレラ毒素;大腸菌熱不安定毒素;百日咳毒素;ムラミルジペプチド;フロイントの不完全アジュバント;MF59;SAF;免疫刺激複合体;リポソーム;生分解性ミクロスフェア;サポニン;非イオン性ブロックコポリマー;ムラミルペプチド類似体;ポリホスファゼン;合成ポリヌクレオチド;IFN-γ;IL-2;IL-12;及びISCOMSを含む。例えば、Vogel,2000,Clin Infect Dis 30:S266;Kleinら,2000,J Pharm Sci 89:311;Rimmelzwaanら,2001,Vaccine 19:1180;Kersten,2003,Vaccine 21:915;O’Hagen,2001,Curr.Drug Target Infect.Disord.1:273を参照のこと。
【0072】
他の実施形態において、ISCOMATRIX(登録商標)アジュバント及び/又はリン酸アルミニウムアジュバントを含む粒子状アジュバントが本発明の組成物において使用されるが、これらに限定されない。リン酸アルミニウムアジュバントは、凍結乾燥前に水溶液に添加するか、又は凍結乾燥製剤の再構成のために希釈剤に添加することができる。
【0073】
製剤
特定の実施形態において、本発明の製剤は、サイトメガロウイルス(CMV)、pH約6.0~8.0の緩衝液、アルカリ又はアルカリ塩、糖;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、2-ヒドロキシエチルセルロース(2-HEC)、クロスカルメロース及びメチルセルロースからなる群から選択されるセルロース誘導体を含み、そして任意に、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及び糖アルコールからなる群から選択されるポリオールを含む。
【0074】
特定の実施形態において、本発明の製剤は、サイトメガロウイルス(CMV)、pH約6.0~7.5の緩衝液、アルカリ又はアルカリ塩、糖;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、2-ヒドロキシエチルセルロース(2-HEC)、クロスカルメロース及びメチルセルロースからなる群から選択されるセルロース誘導体を含み、そして任意に、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及び糖アルコールからなる群から選択されるポリオールを含む。
【0075】
好ましい実施形態において、セルロース誘導体はアニオン性であり、CMV製剤中で、塩、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はカリウムを、約0.3~10mg/ml、1~10mg/ml、3~7mg/ml又は5mg/mlで形成する。カルボキシメチルセルロース塩は、平均分子量が約700,000の高粘度タイプ、平均分子量が約250,000の中粘度タイプ、及び、平均分子量約90,000の低粘度タイプで入手できる。一実施形態において、セルロース誘導体は、CMV製剤中で、平均分子量が約700,000の約0.3~1.5mg/mlのカルボキシメチルセルロース塩である。別の実施形態において、セルロース誘導体は、平均分子量が約250,000の約1~4mg/mlのカルボキシメチルセルロース塩である。さらなる実施形態において、セルロース誘導体は、平均分子量が約90,000の約3~7又は3~10mg/mlのカルボキシメチルセルロース塩である。なおさらなる実施形態において、セルロース誘導体は、平均分子量が約50,000~1,000,000の約0.3~10mg/mlのカルボキシメチルセルロース塩である。
【0076】
一実施形態において、緩衝液は、約5~500mM、50~300mM、10~100mM又は20~30mMの、リン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、TRIS、MES、MOPS、HEPES、酢酸塩、クエン酸塩からなる群から選択される。一実施形態において、緩衝液は、約5~500mM、50~300mM、10~100mM又は20~30mMのリン酸塩、ヒスチジン及びHEPESからなる群から選択される。
【0077】
アルカリ又はアルカリ塩は、安定化効果を提供することができ、約50~300mM、50~150mM又は60~80mMの、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム又はそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。特定の実施形態において、塩は、約50~300mM、50~150mM又は60~80mMの塩化カリウム及び塩化ナトリウムからなる群から選択される。
【0078】
糖及びポリオールは、凍結防止剤又は安定化賦形剤として機能する。一実施形態において、糖は、約40~150mg/ml、60~110mg/ml又は80~100mg/mlの、トレハロース又はスクロースである。別の実施形態において、ポリオールは、約2.5~7.5mg/ml、3~7mg/ml又は5mg/mlの、プロピレングリコール、グリセロール又はソルビトールである。
【0079】
本発明の組成物は、当業者に知られている1以上の方法、例えば、非経口的、経粘膜的、経皮的、筋肉内、静脈内、皮内、鼻腔内、皮下、腹腔内によって対象に投与することができ、そしてそれに応じて製剤化され得る。
【0080】
一実施形態において、本発明の組成物は、液体製剤の表皮注射、筋肉内注射、静脈内、動脈内、皮下注射又は呼吸器内粘膜注射を介して投与される。注射用の液体製剤には、溶液などが含まれる。本発明の組成物は、単回用量バイアル、複数回用量バイアル又は事前充填シリンジとして製剤化され得る。
【0081】
別の実施形態において、本発明の組成物は経口投与され、したがって、経口投与に適した形態で、すなわち固体又は液体調製物として製剤化される。固体経口製剤には、錠剤、カプセル、丸薬、顆粒、ペレットなどが含まれる。液体経口製剤には、溶液、懸濁液、分散液、乳濁液、油などが含まれる。
【0082】
本発明の一態様において、製剤は、凍結乾燥、凍結、マイクロ波乾燥から又はリゾスフェアの生成によって調製された固体乾燥製剤である。製剤は、-70℃、-20℃、2~8℃又は室温で保存できる。乾燥した製剤は、単位用量バイアルの成分の重量で表すことができ、しかしながら、これは、用量やバイアルサイズによって異なる。あるいは、本発明の乾燥製剤は、同じ試料(バイアルなど)の原薬(DS)の重量と比較した成分の重量の比率として成分の量で表すことができる。この比率はパーセンテージで表すことができる。そのような比率は、バイアルのサイズ、投与及び再構成プロトコルとは独立して、本発明の乾燥製剤の固有の特性を反映している。一実施形態において、製剤は、20、15、10又は5μm未満のd(0.5)μmを有する。他の実施形態において、製剤はリオスフェア中にある。
【0083】
本発明の別の態様において、製剤は再構成された溶液である。乾燥固形製剤は、投与経路や投与量のような臨床的要因に応じて異なる濃度で再構成できる。例えば、乾燥製剤は、皮下投与に必要な場合、高濃度で(すなわち、少量で)再構成することができる。特定の対象に高用量が必要な場合、特に注射量を最小限に抑えなければならない場合に皮下投与する場合、高濃度が必要になる場合もある。その後の水又は等張緩衝液による希釈は、医薬品をより低い濃度に希釈するために容易に使用できる。より低い薬物濃度で等張性が望まれる場合、乾燥粉末を標準的な少量の水で再構成し、次に0.9%塩化ナトリウムのような等張希釈剤でさらに希釈することができる。
【0084】
再構成は、完全な水和を確実にするために一般に約25℃の温度で行われるが、必要に応じて他の温度を使用することもできる。再構成に必要な時間は、例えば、希釈剤の種類、賦形剤及びタンパク質の量に依存する。例示的な希釈剤には、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンガー溶液又はブドウ糖溶液が含まれる。再構成容量は、約0.5~1.0ml、好ましくは0.5ml又は0.7mlであり得る。
【0085】
本発明の別の実施形態において、製剤は、凍結乾燥、凍結、マイクロ波乾燥又はリオスフェアの生成の前に調製された水溶液である。
【0086】
一部の実施形態において、rdCMVは、免疫応答を誘発するために患者に投与される。免疫原性組成物の保存中にrdCMV組成物の感染力の損失を最小限にするか又は回避することが望ましい。そのような目的を支持する条件には、限定されるものではないが、(1)保存中の持続的な安定性、(2)ストレスのかかった凍結融解サイクルに対する耐性、(3)周囲温度で1週間までの安定性、(4)免疫原性の維持、及び(5)アジュバント戦略との互換性、を含む。rdCMVの安定性に影響を与える条件には、バッファーのpH、バッファーのイオン強度、特定の賦形剤の有無及び温度が含まれ、これらに限定されない。組成物は、ワクチン組成物に適した精製されたrdCMVウイルス粒子の安定性を高めるために緩衝液を含む。
【0087】
ウイルス粒子の完全性の保存は、マウスの免疫原性アッセイ及び/又はウイルス侵入アッセイによって評価される。ウイルス侵入イベントは、五量体gH複合体を含むウイルス糖タンパク質の完全性と機能に依存する。五量体gH複合体は、rdCMVの実質的な免疫原性も提供するため、2つの特性がリンクされている。
【0088】
リオスフェアを調製するためのプロセス
リオスフィアを調製するためのプロセスは、米国特許出願公開US2014/0298482号に開示されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。この方法は、形状が実質的に球形である乾燥ペレットを製造するために、実質的に球状の形状を有する少なくとも1つの液滴を固体及び平坦な表面(すなわち、試料ウェル又は空洞がない)上に分配し、液滴を極低温物質と接触させずに表面上の液滴を凍結し、そして、凍結した液滴を凍結乾燥することを含む。米国特許第9,119,794号(その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)にも、リオスフェアを形成するためのプロセスが開示されている。水性媒体混合物を含む単一体積は、空洞を含む固体要素上に形成される。固体要素は、混合物の凝固温度未満に冷却され、キャビティは混合物で満たされ、そして、混合物はキャビティ内に存在する間に固化し、単一型(the unitary forms)を形成する。単一型は、真空中で乾燥されてリオスフェアを提供する。
【0089】
他の実施形態において、リオスフェアは、実質的に球形に形成され、平坦な固体表面、特に、空洞のない表面上で、所望の生物学的材料の液体組成物の液滴を凍結し、続いて単一型を凍結乾燥することにより調製される。米国特許出願公開第US2014/0294872号)は、リオスフェアを形成するための同様のプロセスを開示し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
簡単に言えば、いくつかの実施形態において、プロセスは、実質的に球状の形状を有する少なくとも1つの液滴を固体及び平坦な表面(すなわち、試料ウェル又はキャビティがない)上に分配し、液滴を極低温物質と接触させずに表面上の液滴を凍結し、そして凍結した液滴を凍結乾燥して、形状が実質的に球形の乾燥したペレットを生成することを含む。このプロセスをハイスループットモードで使用して、固体の平らな表面に望ましい数の液滴を同時に分注し、液滴を凍結し、そして、凍結した液滴を凍結乾燥することにより複数の乾燥ペレットを準備できる。このプロセスにより液体製剤から調製されたペレットは、高濃度の生物学的物質(タンパク質治療薬など)を含んでいてもよく、乾燥ペレットのセットに組み合わせることができる。
【0091】
一部の実施形態において、固体の平らな表面は、金属板の上面を-90℃以下の温度に保つため、ヒートシンクと物理的に接触している底面を含む金属板の上面である。金属板の上面は液体製剤の凝固点よりかなり下にあるので、液滴の底面が金属板の上面に接触する液滴は、本質的に瞬時に凍結する。
【0092】
他の実施形態において、固体の平坦な表面は疎水性であり、分配ステップ中に0℃を超えて維持される薄膜の上面を含む。分配された液滴は、製剤の凝固温度よりも低い温度に薄膜を冷却することにより凍結される。
【0093】
凍結乾燥プロセス
本発明の凍結乾燥製剤は、前凍結乾燥溶液の凍結乾燥(フリーズドライ)により形成される。凍結乾燥は、製剤を凍結し、その後、一次乾燥に適した温度で水を昇華させることによって達成される。この条件下では、製品の温度は共晶点又は製剤の崩壊温度より低い。典型的には、一次乾燥の棚温度は、約30~250mTorrの範囲の適切な圧力で、約-50~25℃(但し、製品が一次乾燥中に凍結したままである)の範囲である。製剤、試料を保持する容器(例えばガラスバイアル)、サイズ、種類、及び液体の容量が乾燥に必要な時間を決定し、それは、数時間から数日(たとえば、40~60時間)の範囲である。二次乾燥段階は、主に容器のタイプとサイズ、及び使用するタンパク質のタイプに応じて、約0~40℃で実行され得る。二次乾燥時間は、製品の望ましい残留水分レベルによって決まり、通常は少なくとも約5時間かかる。典型的には、凍結乾燥製剤の含水量は、約5%未満、好ましくは約3%未満である。圧力は、一次乾燥工程中に使用される圧力と同じであってもよい。凍結乾燥条件は、製剤、バイアルのサイズ及び凍結乾燥トレイに応じて変化する。
【0094】
いくつかの例では、移送工程を回避するために、再構成が行われる容器内でタンパク質-多糖製剤を凍結乾燥又はマイクロ波乾燥してもよい。この場合の容器は、例えば、2、3、5、10又は20mlバイアルであり得る。
【0095】
投与
本明細書に記載されるように処方されたrdCMVは、当技術分野で周知の技術と共に本明細書に提供されるガイダンスを使用して患者に投与することができる。一般的な医薬品投与のガイドラインは、例えば、Vaccines Eds.Plotkin及びOrenstein,W.B.Sanders Company, 1999;Remington’s Pharmaceutical Sciences 20th Edition,Ed.Gennaro,Mack Publishing, 2000;及び、Modern Pharmaceutics 2nd Edition,Eds.Banker及びRhodes,Marcel Dekker,Inc.,1990、で提供される。
【0096】
ワクチンは、皮下、筋肉内、静脈内、粘膜、非経口、経皮、皮内のような異なる経路で投与できる。皮下及び筋肉内投与は、例えば、針又はジェットインジェクターを使用して行うことができる。一実施形態において、本発明のワクチンは筋肉内に投与される。経皮又は皮内送達は、皮内注射針注射器を介して又はミクロン針又はミクロンアレイパッチのような可能なデバイスで達成される。
【0097】
本明細書に記載の製剤は、単位投与量に適合する方法で、そしてCMV感染(一次、再発及び/又は超を含む)の可能性を治療及び/又は軽減するのに免疫原性のある量で投与することができる。本発明の文脈において、患者に投与される用量は、CMV感染のレベルの低下、CMV感染に関連する疾患の症状の改善、及び/又は、CMV感染の長さ及び/又は重症度を短くするのに、又はCMVによる感染の可能性を減少させる(一次、再発、及び/又は超を含む)のに十分であるべきである。
【0098】
適切な投与レジメは、当業者によって容易に決定され得、そして好ましくは、患者の年齢、体重、性別及び医学的症状、投与経路;望ましい効果;使用した特定の組成物を含む当該分野で周知の因子を考慮して決定される。CMVに対する治療又は予防において投与されるrdCMVの有効量を決定する際に、医師は、ウイルスの循環血漿レベル、疾患の進行、及び/又は抗CMV抗体の産生を評価することができる。ワクチン組成物の用量は、103~1012プラーク形成単位(pfu)の範囲からなる。異なる実施形態において、投与量範囲は、104~1010pfu、105~109pfu、106~108pfu、又はこれらの規定された範囲内の任意の用量である。2以上のワクチンが投与される場合(すなわち、混合ワクチンにおいて)、各ワクチン剤の量はそれらの記載された範囲内である。
【0099】
ワクチン組成物は、単回投与又は複数投与の形式で投与することができる。ワクチンは、安定化緩衝液及び適切なアジュバント組成物を同定して、投与の数時間又は数日前にアジュバントとともに調製することができる。ワクチンは、一般的に行われている量である、0.1mLから0.5mLの範囲で投与できる。
【0100】
投与のタイミングは、当技術分野でよく知られている要因に依存する。最初の投与後、抗体力価及びT細胞免疫を維持及び/又はブーストするために、1回以上の追加用量が投与されてもよい。抗体価やELISPOTのようなT細胞免疫に反映される免疫応答の保護レベルを維持するには、追加のブーストが必要になりうる。そのような免疫応答のレベルは、臨床調査の対象である。
【0101】
混合ワクチン接種の場合、免疫原のそれぞれは、1つの組成物中に一緒に又は異なる組成物中で別々に投与することができる。本明細書に記載されるrdCMVは、1以上の所望の免疫原と同時に投与することができる。「同時に」という用語は、正確に同時に治療薬を投与することに限定されず、しかし、むしろ、ここで説明されているrdCMVと他の望ましい免疫原が、他の方法で投与された場合よりも一緒に作用して効果を高めることができるように、順番に、時間間隔内に対象に投与されることを意味する。例えば、各治療薬は、同時に又は異なる時点で任意の順序で順次投与されてもよく;しかしながら、同時に投与されない場合、それらは、所望の治療効果を提供するように、時間的に十分に接近して投与されるべきである。各治療薬は、任意の適切な形態で及び任意の適切な経路で、別々に投与することができる。
【0102】
実施形態はまた、(a)治療(例えば、人体の);(b)薬;(c)CMV複製の阻害;(d)CMVによる感染の治療又は予防、又は(e)CMV関連疾患の治療、予防、又は発症又は進行の遅延において、(i)そのための使用、(ii)医薬としての使用、又は(iii)医薬の調製において使用、するために、前記CMV又は組成物を含むか又はそれらからなるCMVの製剤を含む。これらの使用において、前記CMV又は組成物を含む又はそれからなるCMVの製剤は、任意に1以上の抗ウイルス剤(例えば、抗ウイルス化合物又は抗ウイルス免疫グロブリン;以下に記載する混合ワクチン)と組み合わせて使用できる。
【0103】
患者集団
「患者」は、CMVに感染することができる哺乳動物を指す。好ましい実施形態において、患者はヒトである。患者は予防的又は治療的に処置され得る。予防的処置は、一次感染、再発性感染(すなわち、潜伏CMVの再活性化に起因する感染)及び重複感染(すなわち、以前に患者が経験したものとは異なるCMVの染色による感染に起因する感染)を含む、CMV感染の可能性又は重症度を軽減するのに十分な防御免疫を提供する。治療的処置は、CMV感染の重症度を軽減したり、再発や重感染の可能性/重症度を低下させるために行うことができる。
【0104】
本明細書に記載のrdCMVを含む医薬組成物を使用して、処置を行うことができる。医薬組成物は、一般集団、特にCMV感染のリスクが高い人(一次、再発、超のいずれか)又はCMV感染が特に問題となる人(例えば免疫不全の人、移植患者、妊婦)に投与される。一実施形態において、妊娠可能年齢の女性、特に思春期前の女性は、妊娠中のCMV感染(一次、再発、超)の可能性を減らすためにワクチン接種を受ける。
【0105】
処置を必要とする人には、すでに感染している人、ならびに感染しやすい人、又は感染の可能性の低減が望まれる人を含む。処置は、CMV感染に関連する疾患の徴候を改善し、及び/又は、潜在的なCMVの再活性化による感染を含め、CMV感染の長さ及び/又は重症度を短くできる。
【0106】
CMV感染のリスクが高い人(一次、再発又は超)には、免疫力が低下している患者、又は免疫力が低下する治療に直面している患者が含まれる(たとえば、癌の化学療法又は放射線療法を受けているか、免疫抑制薬を服用している)。本明細書中で使用される場合、「低下した免疫」は、正常に機能していないか、又は正常な健康な成人のレベルで機能していない免疫応答のために感染と闘う能力が低い免疫系を指す。免疫力が低下した患者の例は、乳児、幼児、高齢者、妊娠中の患者、又はHIV感染やAIDSのような免疫系の機能に影響を与える疾患のある患者を含む。
【0107】
添付の説明及び図面を参照して本発明の様々な実施形態を説明してきたが、本発明はそれらの正確な実施形態には限定されず、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、当業者によって様々な変更及び修正が行われ得ることを理解されたい。
【0108】
以下の実施例を例示するが、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0109】
実施例1:五量体gH複合体の回復
感染性CMVバクテリア人工染色体クローンは、UL128、UL130及びUL131からなる五量体gH複合体を発現するコード化されたビリオンがgH/gL足場(scaffold)に組み立てられるように構築された。
【0110】
CMV株AD169株は、もともと7歳の女の子のアデノイドから分離された(Elek及びStern、1974、Lancet、1:1)。ウイルスを弱毒化するために、ウイルスはいくつかのタイプのヒト線維芽細胞で58回継代された(Neffら、1979、Proc Soc Exp Biol Med、160:32、WI-38ヒト線維芽細胞での最後の5継代)。本研究ではメルクAD169(MAD169)と呼ばれるこの継代されたAD169ウイルスの変異体を、感染性BACクローンを構築するための親ウイルスとして使用した。親ウイルスAD169も継代変異ウイルスMAD169も、UL131又は五量体gH複合体を発現しなかった。
【0111】
MAD169は、感染性細菌人工染色体(BAC)クローンを構築するための親ウイルスとして使用された。BACベクターは、大腸菌でCMVゲノム(約230Kb)のような大きなサイズのDNA断片を遺伝子操作できる分子ツールである。GFPマーカー遺伝子と一緒にBAC要素を、US28オープンリーディングフレーム(ウイルスゲノム中のUS28とUS29 ORFの間)の停止コドンの直後に挿入し、LoxP部位を断片の両端に作成した(
図15A)。簡単に言えば、2つのloxPサイトとCMV US28-US29配列が隣接するGFP発現カセットを含むDNAフラグメントを合成し、pBeloBAC11ベクターにクローニングした。BACベクターを制限酵素PmeIで線形化し、精製したビリオンから抽出したMAD169 DNAをMRC-5細胞に共トランスフェクトした。緑色蛍光発現により同定された組換え変異体は、プラーク精製された。1ラウンドの増幅後、ウイルスゲノムの環状型が感染細胞から抽出され、大腸菌DH10細胞にエレクトロポレーションされた。細菌コロニーは、US28及びUS29領域の存在についてPCRによってスクリーニングされた。候補となるクローンは、EcoRI、EcoRV、Hind II、SpeI及びBamHI制限分析によってさらに検査された。スクリーニング後、1つのクローンbMAD-GFPは、親のMAD169ウイルスと同一の制限パターンを示した。
【0112】
MAD169の上皮指向性欠損症の根底にあるUL131の最初のエクソンのフレームシフト変異は、大腸菌で遺伝的に修復された(
図15B)。具体的には、UL131遺伝子の7 nt Aストレッチから1つのアデニンヌクレオチド(nt)が削除された(
図15B)。UL131による上皮及び内皮細胞指向性を救うには、1 ntの削除で十分であり、よって、五量体gH複合体が発現される。発現はELISA及びウエスタンブロットにより確認された(データは示されていない)。このクローンは、LoxP/Cre組換えによってBACセグメントを削除することでさらに変更された。BAC DNAをARPE-19細胞、ヒト網膜色素上皮細胞(ATCCアセッション番号CRL-2302)にトランスフェクトして、感染性ウイルスを回収した(
図15C)。結果として生じる感染性ウイルスは、BAC由来の上皮指向性MAD169ウイルス(beMAD)と呼ばれ、MAD169とは2つの遺伝子座、(1)UL131 ORF(ここで、単一のアデニンヌクレオチドは削除されている)、及び、(2)US28とUS29 ORFの間に挿入された34bp LoxPサイト、のみが異なる(表2を参照)。
【0113】
BACクローンbeMADのゲノムは完全に配列決定された。beMADの全体的なゲノム構造は、ATCC AD169バリアント(GenBankアセッション番号X17403)で報告されているものと同一であり、ユニークロング(UL)とユニークショート(US)の2つのユニークな領域で構成されている。各ユニーク領域は、2つのリピートシーケンス、ターミナルリピートロング(TRL)-内部リピートロング(IRL)、ターミナルリピートショート(TRS)-内部リピートショート(IRS)で囲まれている。継代された変異型MAD169及びbeMAD由来ウイルスの成長速度論は、ヒト線維芽細胞株であるMRC-5細胞(ATCCアセッション番号CCL-171)では区別できなかった(データ示さず)。5量体gH複合体は線維芽細胞での増殖には必要ないため、MAD169とbeMADの間の5量体gH複合体発現の相違は関係ない。
【0114】
【0115】
実施例2:CMVへの従来の不活化方法の影響
五量体gH複合体を発現するCMVについて、従来の2つのウイルス不活性化方法であるγ線照射とβ-プロピオラクトン(BPL)の効果を調査した。
【0116】
γ線照射は凍結乾燥したビリオンに行われた。HNS(25mMヒスチジン、150mM NaCl、9%w/vスクロース、pH6.0)製剤中の濃度0.15mg/mLの組換えCMVを、保存的な凍結乾燥サイクル(-50℃の凍結及び-35℃で~30時間の一次乾燥、続いて25℃での6時間の二次乾燥)を使用して凍結乾燥し、乾燥粉末を取得した。ワクチンは、各バイアルに0.5mlを充填した3mLガラスバイアルで凍結乾燥した。凍結乾燥の最後に、バイアルに窒素環境で栓をし、試料を取り出し、ラベルを付け、圧着し、ガンマ線照射まで-70℃で保存した。バイアルは、所望の照射量のために、Co照射器の下で照射された。
【0117】
BPL処理では、ARPE-19細胞での増殖からの粗ウイルス培養上清にBPLストック溶液を加え、最終濃度を0.01%又は0.1%(v/v)にした。反応は、種々の時点でチオ硫酸ナトリウムで停止させた。次に、BPL処理された五量体gH複合体発現CMVを、超遠心分離で精製した。
【0118】
実施例3:FKBP必須タンパク質融合体の構築とスクリーニング
CMVは、条件付き複製欠陥を持ちながら上皮親和性を取り戻す弱毒AD169株のバックボーンを使用して構築させた。実施例1に記載された方法を使用して、上皮指向性を回復させた。
【0119】
FKBP誘導体に融合されるウイルスタンパク質は、2つの基準に基づいて選択された。第一に、プロテオミクス分析によりCMVビリオンで目的のタンパク質が検出されなかった(Varnumら、2004、J.Virol.78:10960)ので、FKBP融合タンパク質がウイルスに組み込まれる可能性が低くなる。第二に、目的のタンパク質は、組織培養におけるウイルス複製に不可欠である。
【0120】
親ウイルスとしてbeMADを使用して、FKBP誘導体(配列番号12)は、IE1/2(配列番号1)、pUL37x1、pUL44、pUL51(配列番号3)、pUL52(配列番号5)、pUL53、pUL56、pUL77、pUL79(配列番号7)、pUL84(配列番号9)、pUL87及びpUL105を含む、12の必須ウイルスタンパク質と個別に融合された。IE1/2とUL51のそれぞれをFKBP誘導体と融合した2つの異なる必須タンパク質がFKBPに融合したウイルスも構築された(不安定化されたIE1/2とUL51を含むrdCMVのゲノムを配列番号14に示す)。構築後、すべての組換えBAC DNAをARPE-19細胞にトランスフェクトし、Shld-1を含む培地で培養した。
【0121】
実施例4:凍結乾燥プロセスの収量と短期安定性のための製剤添加剤スクリーニング
材料:ヒスチジンは米国ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich又は米国ペンシルバニア州センターバレーのAvantorから購入した。トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)及び塩化カルシウムは、米国ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrichから購入した。カルボキシメチルセルロースナトリウム(平均分子量90,000)は、米国ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich又は米国デラウェア州ウィルミントンのAshland Speciality Ingredientsから購入した。塩化ナトリウムは、米国ペンシルベニア州センターバレーのAvantorから購入した。プロピレングリコールは、米国ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich又は米国ミシガン州ミッドランドのダウケミカル社から購入した。ソルビトールとグリセロールと尿素は、米国ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich又は米国フィッシャーサイエンティフィックから購入した。希塩酸及び水酸化ナトリウムは、米国ペンシルベニア州センターバレーのAvantorから購入した。
【0122】
製剤の調製:
上記及び米国特許許第9,546,355号(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)で記載されるように調製されたrdCMV(配列番号:14)バルクは、25mMヒスチジン、150mM塩化ナトリウム、90mg/mLスクロース、pH6.0で、又は、25mMヒスチジン、75mM塩化ナトリウム、90mg/mLスクロース、pH7.0で製剤化され、-70℃で保存された。製剤組成物は、1.25~2倍の濃度でストックとして調製され、CMVバルクとの混合後に示される最終組成物を達成するために製剤において使用された。CMVバルクを解凍し、100~350単位のCMV/mL(100~350μg/mL又は2.5x10E05~1.2x10E09pfu/mL)で適切な製剤組成物に製剤化した。
【0123】
製剤を0.7mL又は0.5mLの2mLガラスバイアルに充填した。液体対照用のバイアルをストッパーで閉じ、アルミキャップで圧着し、バイアルを-70℃の冷凍庫又は窒素冷却高速冷凍庫で凍結し、分析するまで-70℃で保存した。
【0124】
凍結乾燥用のバイアルを、凍結乾燥トレイ上に0.7mL又は0.5mLのいずれかで満たし、凍結乾燥ストッパーで部分的に栓をした。バイアルは、≦-50℃に設定された窒素冷却高速冷凍庫で、又は≦-50℃で事前に冷却された凍結乾燥機の棚で凍結された。凍結乾燥は、Lyostar II又はIII(SP Scientific、Warminster、PA)を利用して行われた。液体製剤又は凍結製剤を、予冷して-50℃に保持した凍結乾燥機の棚に載せた。-50℃に浸した後、一次乾燥のために棚の温度を-50℃から-30から-17℃の間まで、0.1℃~0.5℃/minの上昇率で上昇させた。棚の温度は、二次乾燥のために、0.1~0.5℃/minの昇温速度で15~30℃の設定値に上昇させた。
【0125】
ウイルス複製(感染力)の測定:
相対ウイルス発現(IRVE)イメージングアッセイ:CMV感染性は、細胞ベースの相対感染力アッセイ、相対ウイルス発現(IRVE)イメージングアッセイを使用して測定された。この安定性を示す方法は、CMVの前初期(IE)タンパク質1(IE1)の発現に基づく細胞ベースの相対感染力アッセイである。このアッセイでは、ARPE-19細胞を384ウェルマイクロタイタープレートに植え、24時間±4時間インキュベートした後、rdCMV(配列番号14)の標準希釈液、陽性対照、及び試験アーティクルの段階希釈液に感染させる。感染は、37℃、5%CO2で20時間進行した後、希ホルムアルデヒド溶液で細胞を固定する。この方法は、過剰なShld-1を配合した培地を使用して実行された。固定された細胞を透過処理し、次に一次抗体をプレートに加え、1時間インキュベートする。プレートを洗浄した後、二次抗体(AlexaFluorコンジュゲート)をウェルに加え、室温で30分間インキュベートした後、洗い流した。プレートを洗浄した後、Nuclei染色液(Hoechst 33342 DNA染色液)をウェルに加え、室温で5分間インキュベートした後、洗い流した。PBSをプレートに加え、Cytation 3イメージングリーダーを使用して読み取った。対照に対する試料の効力は、試料のEC50と対照EC50の値から、4パラメーターロジスティック回帰の低減、4-PL%RP=(試料ED50)/(対照ED50)x100を使用して計算された(%RP)。IRVEアッセイで使用される対照標準のCMV力価(pfu/mL)は、CMVプラークアッセイを使用して測定され、%RPを被験物質のIRVEアッセイからpfu/mLに変換するために使用できる。
【0126】
試験前に、凍結した液体対照試料を周囲温度で解凍した。試験前に、凍結乾燥したバイアルを滅菌水又は滅菌9mg/mL塩化ナトリウム溶液で再構成した。
【0127】
データ分析
報告された各データポイントについて、n=3の個別の試料がテストされ、3つのテストからの平均データが報告された。試料の標準偏差(STDEV)又は平均の標準誤差(SEM)がデータに対して計算され、2xSEMが報告される。
【0128】
凍結乾燥プロセスの収量:
凍結乾燥収量については、-70℃で保存された凍結乾燥バイアルは、細胞ベースの感染力アッセイを使用して液体対照バイアル(-70℃で保存)とともにテストされ、凍結乾燥収率は、液体対照試料のパーセンテージとして計算された。予想されるアッセイの変動は約30%である。
【0129】
凍結乾燥安定性
異なる時点での安定性試料は、細胞ベースの感染力アッセイと-70℃で保存された凍結乾燥対照試料を使用してテストされ、凍結乾燥安定性は、凍結乾燥対照試料と比較したLog10の損失として計算された。
【0130】
CMVの基本製剤は、12.5mMヒスチジン、12.5mMTris、75mM塩化ナトリウム、90mg/mL w/vスクロース、pH7.0(CMV-098)であった。賦形剤のスクリーニングは、凍結乾燥プロセスの収率と2~8℃(4℃)と15℃での短期ウイルス感染性安定性の安定性を改善するために行われた。製剤を表3に記載する。
【0131】
【0132】
パーセント凍結乾燥収率データ(
図1)は、スクロースのみの製剤(CMV-098)へのプロピレングリコール及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMV-188及びCMV-189)の添加により、凍結乾燥プロセスの収率が約2倍に大幅に向上したことを示している。異なる保存条件(
図2)での凍結乾燥rdCMV(配列番号14)の安定性は、スクロース単独製剤(CMV-098)と比較して、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMV-165)、グリセロール(CMV-142)、グリセロール及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMV-170)、ソルビトール及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMV-182)、プロピレングリコール及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMV-188及び189)、を含む製剤類で低い感染性の損失を示した。加えて、CMV-098製剤は、より高いSEMで示されているように、安定性に大きなばらつきを示した。
【0133】
実施例5:凍結乾燥プロセスの収量と2~8℃での長期安定性のための製剤添加剤スクリーニング:
最初のスクリーニング研究に続いて、安定化製剤を特定するために長期安定性研究が行われた。rdCMV(配列番号14)の基本製剤は、12.5mMヒスチジン、12.5mM Tris、75mM塩化ナトリウム、90mg/mLw/vスクロース、pH7.0であった(CMV-098)。賦形剤スクリーニングは、凍結乾燥プロセスの収率と2~8℃(4℃)での長期ウイルス感染性安定性の安定性を改善するために行われた。試験した製剤を表4に示す。
【0134】
【0135】
パーセント凍結乾燥収率データ(
図3)は、ベーススクロース製剤(CMV-098)へのプロピレングリコール及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMV-188、CMV-202)の添加により約2倍の大幅な改善を示したことを再度示した。CMV-188での凍結乾燥プロセスの収量は、
図1と同様である。塩化カルシウム(CMV-220)をCMV-202製剤に添加しても、プロセスの歩留まりに影響はなかった(
図3)。尿素(CMV-099)の添加は、スクロース製剤(CMV-098)と比較してrdCMV(配列番号14)のプロセス収率又は安定性のいずれも改善しなかった。カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMV-165)、グリセロール(CMV-165)、プロピレングリコール及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMV-188及びCMV-202)、プロピレングリコール及びカルボキシメチルセルロースナトリウム及び塩化カルシウム(CMV-220)の添加により、rdCMV(配列番号14)の安定性が、6か月時点で約3倍著しく改善した(
図4)。製剤CMV-188及びCMV-202及びCMV-220は、6か月後に2~8℃で0.2log10未満の感染力損失を示した(
図4)。製剤CMV-188、CMV-202及びCMV-220の場合、2~8℃で2年間保存した後、感染性の損失は0.5log10未満になると予想される。
【0136】
実施例6:CMV-202製剤における凍結乾燥プロセスの収率とCMVの安定性に対するpHの影響:
製剤のpHを調整することにより、CMV-202組成物のpH範囲6.0~7.5でpHの影響を研究した。製剤及びpHを表5に記載する。液体製剤は200単位/mLのrdCMV(配列番号14)を用いて調製し、0.7mLを2mLガラスバイアルに充填し、栓をし、圧着し、液体管理のために-70℃で凍結保存した。凍結乾燥のために、製剤を0.7mLで2mLガラスバイアルに充填し、凍結乾燥ストッパーで部分的に栓をして凍結乾燥した。凍結乾燥プロセスが完了したら、対照の凍結乾燥製品を-70℃で保存し、安定性試料を1~3か月間リアルタイム(2~8℃)の安定条件にさらす。
【0137】
【0138】
pH7.0でのCMV-202(
図5A)の凍結乾燥プロセスの収量は、CMV-098と比較して一貫して高い凍結乾燥収量を示した(
図1及び3を参照)。試験した他のpHレベルの凍結乾燥収量は、CMV-098よりも高く(
図1及び3に示すように)、CMV-202と同様であった(
図5A)。2~8℃で1及び3か月にテストされたすべてのpHレベル(
図6A)でのCMV-202の感染力損失は、CMV-098と比較して低かった(
図4を参照)。
【0139】
その後の研究は、pH6.0、7.0及び8.0でのCMV-202組成物におけるpHの影響を決定するために行われた。製剤とpHを表5-1に示す。液体製剤は、280単位/mLのrdCMV(配列番号14)を用いて調製し、2mLガラスバイアルに0.5mLで充填し、栓をし、圧着し、液体管理のために-70℃で凍結保存した。凍結乾燥のために、製剤を2mLのガラスバイアルに0.5mLで充填し、凍結乾燥ストッパーで部分的に栓をして凍結乾燥した。凍結乾燥プロセスが完了したら、対照の凍結乾燥製品を-70℃で保存し、安定性試料をリアルタイム(2~8℃)安定条件又は加速安定条件(25℃)に1週間供する。試料は、試験用に0.7mLの生理食塩水(0.9%w/v塩化ナトリウム)溶液で再構成した。
【0140】
【0141】
pH7.0でのCMV-202(
図5B)の凍結乾燥プロセスの収量は、pH6.0(CMV-214)及びpH8.0(CMV-253)での製剤と同様であった。また、プロピレングリコールとカルボキシメチルセルロースナトリウムを含まないCMV-240製剤と比較して、プロピレングリコールとカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む製剤では、凍結乾燥の収率が大幅に高くなる。2~8℃及び25℃で1週間試験したすべてのpHレベル(
図6B)でのCMV-202の感染性の低下は、CMV-240と比較して類似しており、大幅に低かった。これらのデータは、本発明の製剤が6.0~8.0のpH範囲で使用できることを示している。
【0142】
実施例7:プロピレングリコール濃度の影響
プロピレングリコール濃度の影響は、CMV-202と共にCMV-188製剤で研究された。製剤組成を表6に記載する。液体製剤は200単位/mLのrdCMV(配列番号14)を用いて調製し、0.7mLを2mLガラスバイアルに充填し、栓をし、圧着し、液体管理のために-70℃で凍結保存した。凍結乾燥のために、製剤を0.7mLで2mLガラスバイアルに充填し、凍結乾燥ストッパーで部分的に栓をして凍結乾燥した。凍結乾燥プロセスが完了したら、対照の凍結乾燥製品を-70℃で保存し、安定性試料を加速(15℃)及びリアルタイム(2~8℃)安定条件に1週間及び1か月間さらす。
【0143】
【0144】
0.25%w/v(2.5mg/mL)から0.75%w/v(7.5mg/mL)のプロピレングリコール(
図7)を用いる凍結乾燥プロセスの収率は、CMV-098よりも高かった(
図1を参照)。テストしたすべてのプロピレングリコールレベルの感染力損失(
図8)は、CMV-098と比較して低かった(
図2及び4に示すように)。2~8℃と15℃での安定性は、試験したすべての濃度のプロピレングリコールで同等であった。
【0145】
実施例8:カルボキシメチルセルロースナトリウム濃度の影響
カルボキシメチルセルロースナトリウム濃度(2mg/mL~5mg/mL)の影響を、CMV-202製剤で検討した。表7に記載されている製剤組成物が試験された。液体製剤は200単位/mLのrdCMV(配列番号14)を用いて調製し、0.7mLを2mLガラスバイアルに充填し、栓をし、圧着し、液体管理のために-70℃で凍結保存した。凍結乾燥のために、製剤を0.7mLで2mLガラスバイアルに充填し、凍結乾燥ストッパーで部分的に栓をして凍結乾燥した。凍結乾燥プロセスが完了したら、対照の凍結乾燥製品を-70℃で保存し、安定性試料を加速(15℃)及びリアルタイム(2~8℃)安定条件に1週間供する。
【0146】
【0147】
CMCナトリウムの濃度が低いほど凍結乾燥の収率は低くなり、2mg/mLは5mg/mLと比較して低い凍結乾燥収率を示した(
図9)。CMVの感染性の安定性は、CMCナトリウム濃度が低いほど安定性が低下する傾向を示した(
図10)。
【0148】
0.2%w/v(2mg/mL)、0.3%w/v(3mg/mL)及び0.5%w/v(5mg/mL)のCMCナトリウム(
図9)を使用した凍結乾燥プロセスの収量は、CMV-098よりも高かった(
図1に示すとおり)。テストされたすべてのナトリウムCMCレベル(
図10)の感染力損失は、CMV-098と比較して低かった(
図2に示すように)。
【0149】
実施例9:CMV-202製剤中のrdCMVの凍結乾燥における充填量の影響(0.7mL対0.5mL)
rdCMV(配列番号14)は、200単位/mL及び0.7mLで又は280単位/mL及び0.5mLで製剤され、2mLバイアルに充填され、凍結乾燥された。凍結乾燥したバイアルを0.7mLの水で再構成し、凍結乾燥の収率と2~8℃の保存条件での経時安定性をテストした。凍結乾燥プロセスの収量(
図11)、2~8℃保存(
図12)での感染性損失は、0.7mLと0.5mLの充填の両方で類似していることがわかった。
【0150】
実施例10:リン酸アルミニウムアジュバント(APA)の存在下でのCMVの凍結乾燥
アルミニウムアジュバント、特にAPAの凝集/凝集を防止する能力を、CMVなしの3つの製剤(表8)を使用してテストした。APAは3つの製剤で450μg/mLで製剤化され、試料は0.7mLで2mLガラスバイアルに充填された。液体対照用の試料は2~8℃で保存され、凍結乾燥用の試料は窒素冷却高速冷凍庫を使用して凍結され、試料は凍結乾燥機にロードされた。
【0151】
【0152】
粒子サイズ分析
アルミニウムアジュバントは、凍結及び凍結乾燥プロセス中に凝集する傾向がある。APAの存在下での凍結及び凍結乾燥rdCMV製剤は、物理的安定性を静的光散乱(SLS)を使用して解凍又は再構成した試料の粒度分布を測定することにより評価した。粒子サイズの評価は、Malvern(コピーライト)Mastersizer 2000システムを使用して行われた。
【0153】
粒子サイズデータは、D[3,2]、d(0.5)及びD[4,3]として表示される。D[3,2]は、表面積加重平均であり、この値は、粒子サイズ分布の小さい直径の粒子に影響される。d(0.5)は中央の体積直径であり、粒子を2つの等しい半分に分割する粒子の直径を示し、即ち、粒子の50%がこの値を上回り、50%がこの値を下回る。D[4,3]は、体積加重平均(De Brouckereの平均直径)を表し、試料ボリュームのバルクを構成する粒子の直径を示し、これは、粒子サイズ分布でより大きな直径の粒子に敏感である。
【0154】
粒子サイズ分布データは、カルボキシメチルセルロースナトリウムのみ(CMV-165)を含む又はプロピレングリコール(CMV-188)と組み合わせたrdCMV(配列番号14)安定化製剤が、スクロース製剤(CMV-098)と比較して凍結又は凍結乾燥により導かれるAPA粒子の凝集を防ぐことを示した(
図13)。
【0155】
その後の研究は、CMV-202製剤において450μg/mLのAPAと共に製剤化された200単位/mLのCMVで行われた。液体製剤は、CMV-202組成物(25mMヒスチジン、75mM塩化ナトリウム、90mg/mLスクロース、5mg/mLプロピレングリコール、5mg/mL CMCナトリウム、pH7.0)で調製し、2mLガラスバイアルに0.7mLで充填し、栓をし、圧着し、液体制御のために2~8℃で保存された。凍結液体試料用のバイアルは、窒素冷却高速冷凍庫を使用して凍結され、試料は-70℃で保存された。凍結乾燥のために、製剤を2mLガラスバイアルに0.7mLで充填し、凍結乾燥ストッパーで部分的に栓をした。バイアルを、窒素冷却高速冷凍庫を使用して凍結し、凍結したバイアルを凍結乾燥チャンバーに装填した。凍結乾燥プロセスが完了した後、凍結乾燥された製品は2~8℃で保存された。液体対照、凍結液体、及び凍結乾燥試料を、凍結及び凍結乾燥プロセス中の物理的安定化の尺度として、粒子サイズ分析について試験された。
【0156】
CMV-202組成中でAPAとともに製剤したCMVの粒子サイズデータは、液体対照試料(2~8℃で保存)と凍結試料及び凍結乾燥試料との間に有意差を示さなかった(
図14A)。このデータは、CMV及びAPAの両方に対して安定化している組成物中のAPAの存在下でのCMVの凍結及び凍結乾燥の実現可能性を実証した。
【0157】
安定性分析
リン酸アルミニウムアジュバントの存在下でのCMV-202製剤における凍結乾燥の実現可能性とCMVの安定性を評価する追加の研究が行われた。あるケースでは、CMVはCMV-202処方で製剤され、その後凍結乾燥され、凍結乾燥された製品がテスト前にAPA希釈剤で再構成された。別のケースでは、CMVは、APAとともにCMV-202製剤中で製剤化され、その後、試験前に凍結乾燥し、生理食塩水希釈液で製品を再構成した。
【0158】
凍結乾燥プロセスが完了した後、凍結乾燥対照試料を-70℃で保存し、安定性試料は、1か月間リアルタイム(2~8℃)安定条件又は加速安定条件(15℃及び25℃)にさらされた。APAなしで凍結乾燥したCMV試料を、テスト用に0.7mLのAPA希釈液(450μg/mL)溶液で再構成した。APAで凍結乾燥したCMV試料を、テスト用に0.7mLの生理食塩水(0.9%w/v塩化ナトリウム)溶液で再構成した。どちらの製剤も、再構成後CMVとAPAの含有量が類似していると予想された。
【0159】
図14Bに示すように、凍結乾燥の収量とCMVの安定性は、凍結乾燥前に製剤にAPAを添加することの実現可能性を示している。
【0160】
実施例11:CMV製剤組成
rdCMV(配列番号14)は、凍結乾燥前に、25mM L-ヒスチジン、75mM塩化ナトリウム、90mg/mLスクロース、5mg/mLプロピレングリコール、及び5mg/mLナトリウムCMC、pH7.0に製剤された。製剤を0.5mL~0.7mLで無菌の2mLバイアルに充填し、凍結乾燥した。
【0161】
以下の表9は、凍結乾燥前のrdCMV(配列番号14)製剤の製剤組成を示す。
【0162】
【0163】
以下の表10は、最終的な容器で凍結乾燥されたrdCMV(配列番号14)の製剤組成を示す。
【0164】
【0165】
rdCMV(配列番号14)の凍結乾燥したケーキを、ワクチン投与前に0.7mLの水又は9mg/mL塩化ナトリウム溶液又はAPA希釈剤(0.9%w/v塩化ナトリウム中450μg/mLのAPAで製剤)で再構成した。以下の表11は、APA希釈剤(注射用滅菌水中0.9%w/v塩化ナトリウム)の組成を示す。
【0166】
【0167】
投与前に、rdCMV(配列番号14)活性凍結乾燥ケーキを0.70mLのAPA希釈液で再構成し、合計約0.70mLの再構成ウイルスを得た。ウイルスの投与量は0.50mLの容量で投与され、100μgのrdCMV(配列番号14)と225μgのAPAの目標臨床投与量が含まれている。表12は、APA希釈剤で再構成した後のrdCMV(配列番号14)の目標製剤組成をまとめた。
【0168】
【0169】
実施例12:CMV-202製剤における凍結乾燥プロセスの収率とCMVの安定性に対するpH7.0でのバッファー種の影響:
異なる緩衝液を使用して、pH7.0のCMV-202組成物における緩衝液種の影響を検討した。製剤を表13に示す。液体製剤は、280単位/mLのrdCMV(配列番号14)で調製し、0.5mLを2mLガラスバイアルに充填し、栓をし、圧着し、液体管理のために-70℃で凍結保存した。凍結乾燥のために、製剤を2mLのガラスバイアルに0.5mLで充填し、凍結乾燥ストッパーで部分的に栓をして凍結乾燥した。凍結乾燥プロセスが完了したら、対照凍結乾燥製品を-70℃で保存し、安定性試料をリアルタイム(2~8℃)安定条件又は加速安定条件(25℃)に1週間供する。試料は、テスト用に0.7mLの生理食塩水(0.9%w/v塩化ナトリウム)溶液で再構成した。
【0170】
【0171】
凍結乾燥プロセスの収量は、pH7.0における異なるバッファー種で同様であった(
図16)。データは、プロピレングリコールとカルボキシメチルセルロースナトリウムを含まないCMV-240製剤と比較して、プロピレングリコールとカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む製剤の凍結乾燥収率が大幅に高いことも示している。2~8℃及び25℃での1週間での異なる緩衝液種(
図17)によるCMV-202の感染力損失は類似しており、CMV-240と比較して大幅に低下した。
【0172】
このデータは、本発明の製剤に様々な緩衝液を使用できることを示している。
【0173】
実施例13:CMV-202製剤における凍結乾燥プロセスの収量及びCMVの安定性に対する糖(スクロース及びトレハロース)及び糖濃度の影響:
糖の種類と糖濃度の影響を、40、90、150mg/mLのスクロースとトレハロースを含むCMV-202組成物で検討した。製剤を表14に示す。液体製剤は、280単位/mLのrdCMV(配列番号14)で調製し、2mLガラスバイアルに0.5mLで充填し、栓をし、圧着し、液体管理のために-70℃で凍結保存した。凍結乾燥のために、製剤を2mLのガラスバイアルに0.5mLで充填し、凍結乾燥ストッパーで部分的に栓をして凍結乾燥した。凍結乾燥プロセスが完了した後、対照の凍結乾燥製品を-70℃で保存し、安定性試料をリアルタイム(2~8℃)安定条件又は加速安定条件(25)に1週間供した。試料は、テスト用に0.7mLの生理食塩水(0.9%w/v塩化ナトリウム)溶液で再構成した。
【0174】
【0175】
CMV-202製剤中で試験したすべてのスクロース濃度での凍結乾燥プロセスの収量(
図18)は、プロピレングリコールとカルボキシメチルセルロースナトリウムを欠くCMV-240製剤と比較して有意に高い収量を示した。安定性データ(
図19)は、プロピレングリコールとカルボキシメチルセルロースナトリウムを含まないCMV-240製剤と比較して、CMV-202製剤でテストしたすべてのスクロース濃度で有意に優れた安定性を示した。スクロースを別の糖であるトレハロースで置き換えた場合も、同様の結果が得られた(
図20及び21)。凍結乾燥の収量(
図22)と安定性(
図23)は、CMV-202製剤中でのスクロースとトレハロースが90mg/mLの場合と同様であることが判明した。
【0176】
実施例14:CMV-202製剤中のCMVの凍結乾燥プロセスの収率と安定性に対するアルカリ塩の影響:
CMV-202組成物中のアルカリ塩の影響は、塩化ナトリウムを塩化カリウムで置き換えることによって検討された。製剤を表15に示す。液体製剤は、280単位/mLのrdCMV(配列番号14)で調製し、0.5mLを2mLガラスバイアルに充填し、栓をし、圧着し、液体管理のために-70℃で凍結保存した。凍結乾燥のために、製剤を2mLのガラスバイアルに0.5mLで充填し、凍結乾燥ストッパーで部分的に栓をして凍結乾燥した。凍結乾燥プロセスが完了したら、対照の凍結乾燥製品を-70℃で保存し、安定性試料をリアルタイム(2~8℃)安定条件又は加速安定条件(25℃)に1週間供する。試料は、テスト用に0.7mLの生理食塩水(0.9%w/v塩化ナトリウム)溶液で再構成した。
【0177】
【0178】
CMV-202製剤中の塩化ナトリウムを塩化カリウムで置き換えた場合、凍結乾燥の収率(
図24)と安定性(
図25)は同様であることが判明した。このデータは、本発明の製剤にアルカリ塩を使用できるという考えを支持している。
【0179】
実施例15:CMV-202製剤中の凍結乾燥プロセスの収率とCMVの安定性に対するセルロースの種類の影響:
CMV-202組成物中のセルロースの種類の影響は、カルボキシメチルセルロース(CMC)をヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)で置き換えることにより検討された。製剤を表16に示す。液体製剤は、280単位/mLのrdCMV(配列番号14)で調製し、0.5mLを2mLガラスバイアルに充填し、栓をし、圧着し、液体管理のために-70℃で凍結保存した。凍結乾燥のために、製剤を2mLのガラスバイアルに0.5mLで充填し、凍結乾燥ストッパーで部分的に栓をして凍結乾燥した。凍結乾燥プロセスが完了した後、対照の凍結乾燥製品を-70℃で保存し、安定性試料をリアルタイム(2~8℃)安定条件又は加速安定条件(25℃)に1週間供した。試料は、テスト用に0.7mLの生理食塩水(0.9%w/v塩化ナトリウム)溶液で再構成した。
【0180】
【0181】
HPMC製剤(CMV-260)の凍結乾燥収率(
図26)は、カルボキシメチルセルロースナトリウム製剤(CMV-202)と比較して大幅に低かった。ただし、CMVの安定性は、HPMCとCMCの両方の製剤で同様であることが判明した(
図27)。セルロース(HPMC又はCMC)を含む製剤におけるCMVの安定性は、セルロースを含まない製剤(CMV-240)よりも著しく優れていた。このデータは、CMVワクチンの臨床製剤用のカルボキシメチルセルロースナトリウムの選択を支持している。凍結乾燥収率とウイルス安定性の両方で改善が見られた。ヒドロキシメチルセルロースの使用は、CMCナトリウムほど好ましいものではないが、安定したCMV製剤の設計を可能にするであろう。ただし、凍結乾燥の収率を考慮する必要がある。
【0182】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。いくつかの実施形態を示して説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の修正を行うことができよう。
【0183】
ここに引用されているすべての参考文献は、個々の出版物、データベースエントリ(たとえば、Genbankシーケンス又はGeneIDエントリ)、特許出願又は特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同程度に参照により組み込まれる。この参照による組み込みの声明は、37 C.F.R.§1.57(b)(1)に従って出願人が意図したものであり、個々のすべての出版物、データベースエントリ(Genbankシーケンス又はGeneIDエントリなど)、特許出願又は特許に関連し、そのような引用は、参照により組み込まれた専用の声明に直接隣接していない場合でも、37 C.F.R.§1.57(b)(2)に準拠して明確に識別される。本明細書における参考文献の引用は、その参考文献が関連する先行技術であることの自認として意図されておらず、これらの刊行物又は文書の内容又は日付に関する自認を構成するものでもない。参照が本明細書で提供される定義と矛盾する請求項の用語の定義を提供する程度に、本明細書で提供される定義は、請求された発明を解釈するために使用される。
【配列表】