(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ガスタービン翼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F01D 5/14 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
F01D5/14
(21)【出願番号】P 2020538126
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(86)【国際出願番号】 US2019012672
(87)【国際公開番号】W WO2019194878
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-11-16
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】エシャク,ダニエル エム.
(72)【発明者】
【氏名】カメンツキー,スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ロハウス,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】フォーリンガー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ジュニア,サミュエル アール.
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-536404(JP,A)
【文献】特開平10-212903(JP,A)
【文献】米国特許第8720526(US,B1)
【文献】特表2003-520313(JP,A)
【文献】米国特許第8506256(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/14
F01D 5/18
F02C 7/00
F02C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造された金属翼型部(2)を有し、前記金属翼型部(2)は、少なくとも1つの内部空洞部(9)を規定し、前縁(5)及び後縁(6)で互いに結合され、翼根部(7)から翼端部(8)まで径方向に延び、前記翼根部(7)の0%から前記翼端部(8)の100%までの径方向翼長を規定する第1の側壁(3)及び第2の側壁(4)を有する主壁であるガスタービン翼であって、前記金属翼型部(2)は、前記前縁部(5)及び前記後縁部(6)を結ぶ直線によって規定される径方向翼長依存翼弦長並びに全断面積領域に対する金属領域の径方向翼長依存剛率比を有し、翼長の80%~85%の前記金属翼型部(2)の機械加工領域の
径方向翼長依存剛率
比が、35%未満で
あり、かつ、前記翼長の90%~100%における径方向翼長依存剛率比よりも低いことを特徴とする、ガスタービン翼(1)。
【請求項2】
前記翼長の75%~90%における
径方向翼長依存剛率比が、35%未満であることを特徴とする、請求項1に記載のガスタービン翼(1)。
【請求項3】
前記主壁の外面から前記内部空洞(9)に延びる前記主壁の壁厚は、前記翼長の85%~100%の領域で一定であることを特徴とする、請求項1又は2に記載にガスタービン翼(1)。
【請求項4】
前記主壁の外面から前記内部空洞(9)に延びる前記主壁の壁厚は、前記翼長の60%~0%までの翼長に対して1%以上の割合で増加することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のガスタービン翼(1)。
【請求項5】
前記主壁の外面から前記内部空洞(9)に延びる前記翼端部における前記主壁の壁厚が1~2mmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のガスタービン翼(1)。
【請求項6】
前記翼長の50%~70%までの領域における翼弦長は、前記翼長の100%における前記翼弦長の長さよりも短いことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のガスタービン翼(1)。
【請求項7】
前記後縁の厚さは、前記翼長の60%~80%までの領域において最も薄いことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のガスタービン翼(1)。
【請求項8】
前記翼長の100%における前記後縁厚さが2.5~4.0mmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のガスタービン翼(1)。
【請求項9】
前記機械加工領域は、所定の径方向高さで前記翼型部の全周に沿って延びていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のガスタービン翼(1)。
【請求項10】
前記翼型部の外面は、前記翼根部から始まる部分的な翼長にわたって鋳放し状態にあることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のガスタービン翼(1)。
【請求項11】
前記請求項1~10のいずれか1項に記載のガスタービン翼の製造方法であって、
中空の翼型部(2)を鋳造する工程と、
前記鋳造された翼型部(2)の外面を機械加工して、前記領域内の主壁及び/又は後縁厚さの壁厚を減少させる工程と、
を含むことを特徴とするガスタービン翼の製造方法。
【請求項12】
前記機械加工は、フライス加工、研削加工、放電加工(EDM)又は電解加工(ECM)によって行うことを特徴とする、請求項11に記載のガスタービン翼の製造方法。
【請求項13】
ガスタービンの最終タービン段における請求項1~10のいずれか1項に記載のガスタービン翼の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造された金属翼型を有し、この翼型は、前縁及び後縁で互いに結合され、翼根から翼端まで径方向に伸び、翼端で0%~100%の径方向翼長を規定する、第1の側壁及び第2の側壁を有する、少なくとも1つの内部空洞を画定する主壁を備え、この翼型は、前縁と後縁とを結ぶ直線によって規定される径方向翼長依存翼弦長及び金属領域の全断面積に対する金属領域の径方向翼長依存剛率比を有する、ガスタービン翼に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンにおける回転ガスタービン翼の設計は、ガスタービンエンジンを通過するガス流がタービン翼と相互作用する効率の点で非常に重要である。より高い電力出力、効率及び経済的魅力を得るために、新世代の産業用ガスタービンは、50Hz又は60Hzの固定周波数で回転するより大型のタービン翼を有する傾向がある。これは、空気力学、機械的完全性、製造という競合するニーズのため、難しいがやりがいのある課題である。
【0003】
許容可能な空気力学的性能を得るためには、タービン翼の先端部分の翼端対翼弦比を1.0前後に保つ必要がある。翼端と翼弦比の比率は、次のように定義される。
2π[(rt
2+rh
2)/2]0.5/c
ここで、rtはエンジン中心線から翼端までの外半径であり、rhはエンジン中心線から翼根までの内半径であり、cは翼弦長である。
【0004】
従って、より背の高いタービン翼では、空気力学的性能の観点から、より小さなタービン翼と比較して、理想的な翼端翼弦長は実際に増加するであろう。
【0005】
しかし、これは、翼長と翼弦長にそれぞれ比例する、回転速度と質量と共に引張荷重が増加する機械的完全性のニーズに逆行する。タービン翼の全翼長にわたってある一定の許容レベルで引張荷重を維持するためには、翼端から翼根に及ぶ断面積の両方の増加が必要である。所定の翼型翼長、翼端での断面積及び全翼長にわたって保持しなければならない引張応力限界に対して、翼根での金属の最小必要断面積は、積分方程式によって決定される。
【0006】
ガスタービン翼は、通常、セラミックコアの周囲にニッケル超合金を焼流し精密鋳造することによって製造され、いったん取り除かれると、冷却空気及び/又は軽量化のための内部空洞が形成される。壁厚、セラミックコア厚及び後縁厚の制限は、部品寸法及び重量と相関する。例えば、約3mmの最小壁厚は、翼端で満たされなければならない。約長さ1メートルの経済的な鋳造のために、翼型を下方に移動させながら、翼長に対して1%の割合で増加させなければならない。これらのテーパ要件は、引張応力限界を満たすために必要な厚さを超えて翼型の上部翼長の壁厚さ及び断面積を規定することになり、翼型のより低い翼長のための課題である不要な重量を加えることになる。
【0007】
方向性凝固や単結晶のようなより小さな翼型に一般的に使用される先進的な鋳造プロセスは、寸法制限をある程度改善できるが、非常に大きな翼型に対しては不経済である。
【0008】
壁厚、コア厚、及び後縁厚さに関する最小寸法(従来の鋳造プロセスからの)は、空気力学の最小必要翼端翼弦長と組み合わせて、翼端における理論的最小断面積を与える。上部の質量を減らすためにそれ以上の方策を講じなければ、大きなタービン翼の下部は、翼根において絶対断面積が指数関数的に増加することになる。鋳造プロセスのためのこの追加のテーパリングにより、過度の妨害物による空気力学に対する不利益、高い応力による機械的完全性に対する不利益、及び翼全体の増大した質量を支持するために必要とされるより大きなローター(動翼列)、ケーシング(車室)及び軸受けによる経済面に対する不利益を生じる。
【0009】
要約すると、従来の鋳造プロセスは、空気力学的、機械的、経済的に同時に許容できる翼長を制限する。
【0010】
AN2は、平方メートル[m2]×1分あたりの回転数(N2)の2乗[1/min2]のタービン翼によって掃引された環状領域(A)表したもので、タービン翼の相対的な大きさの尺度として用いることができる。これまでのところ、空気力学、機械的完全性、製造上の要求が競合しているため、動作ガスタービン翼は7.0e7m2/min2を超えていない。既知のガスタービン翼は、6.0e7~6.8e7m2/min2である。約6.0e7m2/min2の値に達するこのような翼は、一方向凝固合金を使用し、冷却を省略するか、全翼長にわたってドリルで開けられた中空翼端シュラウドと冷却孔の複雑な組合せを使用するか、又は従来法で鋳造された翼型を使用し、翼長と排気温度を制限することができる。しかしながら、これらの設計の全ては、後縁損失だけでなくより多いタービン翼数を必要とする翼端シュラウド構成に依存している。また、冷却が不足していたり、冷却が最小であったりすると、これらのタービン翼で可能な最大排気温度が制限され、蒸気サイクル効率と品質向上の可能性を低下させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
こうした背景の下、本発明の目的は、ガスタービンエンジンをより高い出力、効率及び経済的魅力で運転することを可能にする上記種類のガスタービン翼を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明は、翼長の80%~85%までの翼型の機械加工領域における剛率比が35%未満であること、特に、機械加工領域における全ての剛率比であることを特徴とする上記種類のガスタービン翼であって、機械加工領域は、翼長の16%~100%内にのみ延びることが好ましいガスタービン翼を提供する。
【0013】
翼端翼弦長は空気力学によって設定され、壁厚及びコア厚はそれぞれ鋳造及び熱伝達基準によって設定されるので、本発明のガスタービン翼を規定する別の方法は、剛率比、即ち、全断面積に対する金属領域の比を調べることである。この剛性比は構造物としてのタービン翼の効率の尺度として考えることができる。理想的な自立タービン翼は、翼端でゼロに近い剛率比を有し、下部への引張荷重を低減するためにほとんどゼロに近い薄い壁を有し、優れた性能を発揮するために翼端で大きな翼弦長を有する。ガスタービンエンジンの最後の列用の冷却自立タービン翼の理想的な翼根部は、70%を超える高い剛率比を有する。これは、上部の引張荷重を支えるために大量の金属が必要であり、クリープ破壊を軽減するために十分な量の冷却空気を通過させるのにわずかな中心通路しか必要としないためである。前段翼型は、翼長が短いため翼端の引張荷重がそれほど重要ではなく、翼根部をより強く冷却して酸化に抵抗する必要があるため、その翼長全体にわたって、より適度な剛率比を維持する。
【0014】
ハブ近傍の高い剛率比は製造上の観点からの挑戦ではないが、翼端近傍の低い剛率比は、鋳造中の上述の壁厚要件のために課題である。本発明は、翼長の80%~85%までの35%未満の剛率比を達成するために翼端の局所的な機械加工によって具現化され、その上方の翼型の引張荷重を支持するために何れにも厚い壁を必要とする翼型の下半分において50%~75%のような従来のレベルの剛率比に戻る。従って、翼型加工は、経済的な鋳造を空気力学的及び機械的に最適な翼型に変えるために、特定の及び目標とする方法で適用される。このような翼端構成により、AN2が7.0e7m2/minより大きい翼を設計できる。
【0015】
好適には、翼長の75%~90%における剛率比は、35%未満であり、特に、上記領域における全ての剛率比である。このような翼端の構成は、さらに良い結果をもたらす。
【0016】
本発明の一態様によれば、主壁の外面から内部空洞まで延びる主壁の壁厚は、翼長の85%~100%の領域で一定である。従って、この領域では、最小壁厚を調整することができる。
【0017】
主壁の外面から内部空洞に延びる主壁の壁厚は、引張応力要件を満たすために、翼長の60%~0%までの翼長に対して1%以上の割合で増加することが好ましい。
【0018】
好適には、主壁の外面から内部空洞まで延在する翼端部における主壁の壁厚は、1~2mmの範囲内にある。
【0019】
本発明の一態様によれば、翼長の50%~70%までの領域、特に、翼長の50%~90%までの領域における翼弦長は、翼長の100%における翼弦長、特に、上記領域における全ての翼弦長よりも短い。これは、低い剛率比による上部翼長における引張強度の独創的な最小化により可能である。
【0020】
好適には、後縁の厚さは、翼長の60%~80%の領域、特に、翼長の68%~72%の領域で最も薄い。
【0021】
翼長の100%における後縁の厚さは、2.5~4.0mmの範囲内にあるのが好ましい。
【0022】
機械加工された領域は、所与の径方向高さで翼型部の全周に沿って延在するのが好ましい。
【0023】
好適には、翼型部の外面は、翼根部から始まる部分的な翼長、特に翼長の0%~5%の領域にわたって、鋳放し状態にある。
【0024】
上記目的を達成するために、本発明は、このようなガスタービン翼の製造方法を更に提供する。この方法は、中空の翼型を鋳造する工程と、この領域内の主壁の壁厚及び/又は後縁の厚さを減少させるために、翼長の16%~100%内にのみ鋳造された翼型の外面を機械加工する工程とを含む。
【0025】
機械加工は、フライス加工、研削加工、放電加工(EDM)又は電解加工(ECM)によって、特に単一のフライス加工、研削加工、放電加工又はECM動作の間に行うことが好ましい。
【0026】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付図面を参照して、本発明によるガスタービン翼の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【0027】
本発明は、本発明によるガスタービン翼を、ガスタービンの最終タービン段、すなわち最下流のタービン段で使用することをさらに提案する。これにより、7.0e7m2/min2より大きいAN2値への到達を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係るガスタービン翼の斜視図である。
【
図3】機械加工及び鋳放し領域を示す
図2としてのガスタービン翼の正面図である。
【
図4】
図1及び
図2のIV-IV線に沿ったガスタービン翼の断面図である。
【
図5】
図1及び
図2のV-V線に沿ったガスタービン翼の断面図である。
【
図6】
図1~
図4に示すガスタービン翼及び鋳放し設計の従来技術のガスタービン翼の径方向翼長に対する剛率比を示すグラフである。
【
図7】
図1~
図4に示すガスタービン翼及び鋳放し設計の従来技術のガスタービン翼について、径方向翼長に対する壁厚/翼端壁厚の比を示すグラフである。
【
図8】
図1~
図4に示した中空でない従来技術の自立翼及び従来技術のシュラウド翼の翼弦長/翼端翼弦長の比に対する径方向翼長を示すグラフである。
【
図9】
図1~
図4に示す翼及び鋳放し設計の従来技術のガスタービン翼に対する翼端後縁幅/後縁幅の比に関連する径方向翼長を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1及び
図2は、本発明の一実施形態によるガスタービン翼1の別の図を示す。ガスタービン翼1は、第1の側壁3と第2の側壁4とを有する主壁を有する金属翼型2を備え、これらの翼型は、前縁5と後縁6で互いに連結されている。翼型部2は、翼根部7から翼端部8まで径方向に延在し、翼根部7の0%から翼端部8の100%までの径方向翼長sを規定し、前縁部5と後縁部6とを結ぶ直線によって規定される径方向翼長依存翼弦長cを有し、全断面積に対する径方向翼長依存剛率比r
s金属領域を有する。しかも、主壁は、第1側壁3と第2側壁4との間に延びる隔壁10によって互いに隔てられた3つの内部空洞9を規定している。
【0030】
ガスタービン翼1は鋳造品であるのに対し、鋳造翼型2の主壁の外面は、
図3に示すように、好ましくはフライス加工によって翼長sの16%~100%の領域内にのみ機械加工される。従って、翼型部2は、翼根部7から径方向外側に延びる鋳放し領域11、機械加工してもしなくてもよい後続の遷移領域12、及び後続の機械加工領域13に細分することができる。機械加工は、主壁の壁厚を減らすために、並びに機械加工された領域における後縁の厚さ、いやむしろ
図4~
図9に示された結果を達成するために行われる。
【0031】
図4及び
図5は、翼長の約58%(
図4)及び翼長の100%(
図5)での翼型2の断面図を示す。比較すると、翼長の58%での壁厚tは、翼長の100%でのそれよりはるかに厚いことが分かる。この場合は、翼長が58%時の壁厚は約4mmであるのに対し、翼長が100%時の壁厚は約1mmである。
【0032】
図6は、翼1及び参照番号14で示する鋳放し設計による従来技術のガスタービン翼についての、径方向翼長に対する剛率比r
sを示す。ガスタービン翼1の剛率比r
sは、下部の引張荷重を低減するために、翼長sの90%~75%までは35%未満であり、上部翼型部によって加えられた引張荷重を支持するためにより厚い壁を必要とする翼型2の下半分において、50%~75%の従来レベルに戻る。
【0033】
図7は、ガスタービン翼1及び鋳放し設計による先行技術のガスタービン翼14についての、径方向翼長sに対する壁厚/翼端壁厚の比を示す。ガスタービン翼1は、翼長の100%~85%までの壁厚tがテーパ形状を示さず、翼長のより低い60%で1%より大きいテーパ形状を有する。この結果、翼端部8で薄い壁を有する翼型は、従来の鋳造プロセスでは実際的であるよりも相対的な厚さの増加が大きくなる。梱包及び空気力学的制約のために、ガスタービン翼1及び14はいずれも翼長の0%で同様の絶対壁厚を有するが、壁厚の相対的増加は、機械的及び鋳造的基準にとって重要なものである。本発明によるガスタービン翼1の壁厚比は、一般に、従来の鋳造では不可能であり、上部翼長領域での適応翼型加工を使用することによって、すなわち、径方向翼長sに対して可変である壁厚減少に関して材料の量を減少させることによって達成される。
【0034】
薄い壁と低い剛率比のおかげで上部翼長の引張荷重を最小にすることによって、翼型2は、翼長の50%まで翼端翼弦長より実際に低い翼弦長を減少させることもできる。
図8は、ガスタービン翼1、従来技術の自立翼14、及び従来技術のシュラウド翼16の翼弦長/翼端翼弦長の比に対する径方向翼長を示しており、一定の翼端対翼弦比1:1が空気力学的に理想的であるので、理想的な翼弦長は翼型2を下方に移動しながら減少するはずである。しかしながら、これは、鋳造要件を満たし、翼型部2の上部部分の引張荷重を支持するために必要とされる追加の金属のために、一般に不可能である。翼型2が翼長の70%~100%までの非常に低い剛率比r
sは、翼長の70%~50%までのより短い翼弦長cを可能にする。従来技術の自立翼15は、翼型がこの領域で中空でないので、翼長の下方40%においてのみ、より低い翼端翼弦倍を達成することができる。
【0035】
図9は、ガスタービン翼1及び鋳放し設計による従来技術のガスタービン翼14についての翼端後縁幅/後縁幅の比に対する径方向翼長を示す。鋳放し設計による従来技術のガスタービン翼14は、典型的なテーパ要件に従って、後縁厚さが連続的に増加する。ガスタービン翼1は、加工プロセスの結果、翼長の約70%で最も薄い後縁厚さdを有する。これは、後縁損失を低減することによって、更なる空気力学的利点を提供する。翼端8での絶対後縁厚さは、2.5mm~3.5mmの間である。
【0036】
これらの機能はすべて、7.0e7m2/min2以上のAN2を有するガスタービン翼2に組み込まれている。
【0037】
本発明によるガスタービン翼の実施形態は、本発明を限定するものではないことに留意されたい。むしろ、添付のクレームによって規定される保護の範囲から逸脱することなく、変更が可能である。