(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】高度自動化車両又は自律車両のための多系統液圧開放型ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 17/18 20060101AFI20220829BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20220829BHJP
B60T 13/138 20060101ALI20220829BHJP
B60T 13/20 20060101ALI20220829BHJP
B60T 13/68 20060101ALI20220829BHJP
B60T 17/06 20060101ALI20220829BHJP
B60T 13/18 20060101ALI20220829BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T8/17 B
B60T13/138 A
B60T13/20
B60T13/68
B60T17/06
B60T13/18
B60T7/12 D
(21)【出願番号】P 2020544741
(86)(22)【出願日】2019-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2019050241
(87)【国際公開番号】W WO2019161982
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-08-25
(31)【優先権主張番号】102018202885.0
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス フリードリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ディルク ドロトレフ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ クレーマン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ブレンデルファー
(72)【発明者】
【氏名】ベルント ヒーンツ
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102014225958(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60T 13/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に高度自動化車両又は自律車両のための多系統液圧開放型ブレーキシステム(1)であって、
圧力排出経路(9.1,9.2)を有するそれぞれ1つのブレーキ系統(BK1,BK2)に割り当てられた少なくとも2つのホイールブレーキ(RB1,RB2,RB3,RB4)と、
流体容器(7)と前記少なくとも2つのホイールブレーキ(RB1,RB2,RB3,RB4)との間で直列に液圧接続された2つの多系統圧力発生器(12,22)と、
前記圧力発生器(12,22)を前記少なくとも2つのホイールブレーキ(RB1,RB2,RB3,RB4)に液圧接続させ、前記少なくとも2つのホイールブレーキ(RB1,RB2,RB3,RB4)内で個別に制動圧調整するための液圧ユニット(16)と、
を備え、
第1の圧力発生器(12)は、プランジャシステム(12A)として構成されており、かつ、第1のエネルギー供給源(EV1)と第1の評価及び制御ユニット(14)とを含むメインシステム(10)に割り当てられており、
第2の圧力発生器(22)は、第2のプランジャシステム(22A)又はポンプシステム(22B)として構成されており、かつ、前記第1のエネルギー供給源(EV1)に依存しない第2のエネルギー供給源(EV2)と、前記第2の圧力発生器(22)を駆動制御する第2の評価及び制御ユニット(24)とを含むセカンダリシステム(20)に割り当てられており、
個別の制動圧調整のための前記液圧ユニット(16)の複数のコンポーネントが、前記メインシステム(10)に割り当てられており、それによって、前記液圧ユニット(16)の当該コンポーネントと前記第1の圧力発生器(12)とが、前記第1の評価及び制御ユニット(14)によって駆動制御され、前記第1のエネルギー供給源(EV1)からエネルギーを供給され、
前記流体容器(7)の下流側に、最初に前記第2の圧力発生器(22)が配置され、次いで前記第1の圧力発生器(12)が配置されている、
ブレーキシステム(1)。
【請求項2】
前記ブレーキ系統(BK1,BK2)において、それぞれ、前記第1の圧力発生器(12)及び/又は前記第2の圧力発生器(22)に対して並列に液圧バイパスが形成されている、
請求項
1に記載のブレーキシステム(1)。
【請求項3】
それぞれ1つの第1の切換弁(BP1)は、前記第1の圧力発生器(12)及び/又は前記第2の圧力発生器(22)周りで前記第1のブレーキ系統(BK1)の前記液圧バイパスを遮断又は開放させ、それぞれ1つの第2の切換弁(BP2)は、前記第1の圧力発生器(12)及び/又は前記第2の圧力発生器(22)周りで前記第2のブレーキ系統(BK2)の前記液圧バイパスを遮断又は開放させる、
請求項
2に記載のブレーキシステム(1)。
【請求項4】
前記流体容器(7)は、前記第1のブレーキ系統(BK1)の流体供給のための第1の流体チャンバ(7.1)と、前記第2のブレーキ系統(BK2)の流体供給のための第2の流体チャンバ(7.2)とを含む、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のブレーキシステム(1)。
【請求項5】
前記第1のプランジャシステム(12A)及び前記第2のプランジャシステム(22A)は、2つのピストン及び2つのチャンバ(12.1,12.2,22.1A,22.2A)と駆動部(12.3,22.3)とを有するそれぞれ1つのピストンシリンダユニットを有し、前記各駆動部(12.3,22.3)は、それぞれ、前記チャンバ(12.1,12.2,22.1A,22.2A)内の圧力調整のために対応する前記プランジャシステム(12A,22A)の2つのピストンを対応するリターンスプリングの力に逆らって移動させる、
請求項
1に記載のブレーキシステム(1)。
【請求項6】
それぞれ1つの第1のチャンバ(12.1,22.1A)は、前記第1のブレーキ系統(BK1)に割り当てられており、それぞれ1つの第2のチャンバ(12.2,22.2A)は、前記第2のブレーキ系統(BK2)に割り当てられており、前記プランジャシステム(12A,22A)の前記ピストンシリンダユニットは、無通電状態において通流可能である、
請求項
5に記載のブレーキシステム(1)。
【請求項7】
前記ポンプシステム(22B)は、前記第1のブレーキ系統(BK1)に割り当てられた第1のポンプ(22.1B)と、前記第2のブレーキ系統(BK2)に割り当てられた第2のポンプ(22.2B)と、前記2つのポンプ(22.1B,22.2B)を駆動する共通の駆動部(22.3)とを有している、
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載のブレーキシステム(1)。
【請求項8】
前記液圧ユニット(16)は、前記ホイールブレーキ(RB1,RB2,RB3,RB4)ごとに個別の制動圧調整のためにそれぞれ1つの入口弁(IV1,IV2,IV3,IV4)とそれぞれ1つの出口弁(OV1,OV2,OV3,OV4)とを含む、
請求項1乃至
7のいずれか一項に記載のブレーキシステム(1)。
【請求項9】
前記各ブレーキ系統(BK1,BK2)における前記第1のプランジャシステム(12A)のための前記液圧ユニット(16)は、流体容器(7)からのブレーキ液の補給を可能にするそれぞれ1つの遮断弁(RVP1,RVP2)を有している、
請求項
5乃至
8のいずれか一項に記載のブレーキシステム(1)。
【請求項10】
前記各ブレーキ系統(BK1,BK2)における前記第1のプランジャシステム(12A)のための前記液圧ユニット(16)は、前記第1のプランジャシステム(12A)を付加的に前記流体容器(7)に液圧接続させる、逆止弁を有するそれぞれ1つの吸引管路を有している、
請求項
9に記載のブレーキシステム(1)。
【請求項11】
前記各ブレーキ系統(BK1,BK2)における前記ポンプシステム(22B)のための前記液圧ユニット(16)は、前記セカンダリシステム(20)に割り当てられ、前記第2の評価及び制御ユニット(24)によって駆動制御され、前記第2のエネルギー供給源(EV2)からエネルギーを供給されるそれぞれ1つの圧力維持及び圧力制御弁(PRV1,PRV2)を有する、
請求項
7乃至
9のいずれか一項に記載のブレーキシステム(1)。
【請求項12】
前記各ブレーキ系統(BK1,BK2)における前記ポンプシステム(22B)のための前記液圧ユニット(16)は、前記ポンプシステム(22B)を付加的に前記流体容器(7)に液圧接続させる、逆止弁を有するそれぞれ1つの吸引管路を有する、
請求項
11に記載のブレーキシステム(1)。
【請求項13】
請求項1乃至
12のいずれか一項に記載の特に高度自動化車両又は自律車両のための多系統液圧開放型ブレーキシステムのための動作方法であって、
通常モードにおいて、メインシステム(10)が、第1の圧力発生器(12)を用いてブレーキ系統(BK1,BK2)内の圧力を増加させ又は低減させ又は維持させ、液圧ユニット(16)を用いて前記少なくとも2つのホイールブレーキ(RB1,RB2,RB3,RB4)内の個別の制動圧調整を実施し、
前記メインシステム(10)に障害が発生した場合、セカンダリシステム(20)が、第2の圧力発生器(22)を用いて前記ブレーキ系統(BK1,BK2)内の圧力を増加させ又は低減させ又は維持させ、前記少なくとも2つのホイールブレーキ(RB1,RB2,RB3,RB4)内の個別の制動圧調整は、省略され、
通常モードにおいて、前記ブレーキ系統(BK1,BK2)内の増圧又は減圧のために、遮断弁(RVP1,RVP2)を無通電開放状態に移行させ、第1のプランジャシステム(12A)の駆動部(12.3)は、ピストンを前記ブレーキ系統(BK1,BK2)内の圧力の増加のために第1の方向に移動させるために又は前記ブレーキ系統(BK1,BK2)内の圧力の減少のために前記第1の方向とは逆の第2の方向に移動させるために駆動制御され、前記ブレーキ系統(BK1,BK2)内の圧力維持のために、前記遮断弁(RVP1,RVP2)を無通電開放状態に移行させ、前記第1のプランジャシステム(12A)の駆動部(12.3)は、ピストンを現在の位置に維持させる、
動作方法。
【請求項14】
通常モードにおいて、割り当てられた前記ホイールブレーキ(RB1,RB2,RB3,RB4)内の個別の増圧のために、対応する入口弁(IV1,IV2,IV3,IV4)を開放させ、対応する出口弁(OV1,OV2,OV3,OV4)を閉成させ、前記割り当てられたホイールブレーキ(RB1,RB2,RB3,RB4)内の個別の圧力維持のために、前記対応する入口弁(IV1,IV2,IV3,IV4)及び前記対応する出口弁(OV1,OV2,OV3,OV4)を閉成させ、前記割り当てられたホイールブレーキ(RB1,RB2,RB3,RB4)内の個別の減圧のために、前記対応する入口弁(IV1,IV2,IV3,IV4)を閉成させ、前記対応する出口弁(OV1,OV2,OV3,OV4)を開放させる、
請求項
13に記載の動作方法。
【請求項15】
前記メインシステム(10)に障害が発生し、かつ、第2の圧力発生器(22)が第2のプランジャシステム(22A)として構成されている場合に、前記ブレーキ系統(BK1,BK2)内の増圧又は減圧のために、前記遮断弁(RVP1,RVP2)を無通電開放状態に移行させ、前記第2のプランジャシステム(22A)の駆動部(22.3)は、ピストンを前記ブレーキ系統(BK1,BK2)内の圧力の増加のために第1の方向に移動させるために又は前記ブレーキ系統(BK1,BK2)内の圧力の減少のために前記第1の方向とは逆の第2の方向に移動させるために駆動制御され、前記ブレーキ系統(BK1,BK2)内の圧力維持のために、前記遮断弁(RVP1,RVP2)を無通電開放状態に移行させ、前記第2のプランジャシステム(22A)の前記駆動部(22.3)は、ピストンを現在の位置に維持させる、
請求項
13に記載の動作方法。
【請求項16】
前記メインシステム(10)に障害が発生し、かつ、第2の圧力発生器(22)がポンプシステム(22B)として構成されている場合に、前記ブレーキ系統(BK1,BK2)内の増圧のために、前記遮断弁(RVP1,RVP2)を無通電開放状態に移行させ、圧力維持及び圧力制御弁(PRV1,PRV2)を閉成させ、前記第2の圧力発生器(22)の駆動部(22.3)は、ポンプ(22.1B,22.2B)を用いて圧力を増加させるために駆動制御され、前記ブレーキ系統(BK1,BK2)内の圧力維持のために、前記遮断弁(RVP1,RVP2)を無通電開放状態に移行させ、前記圧力維持及び圧力制御弁(PRV1,PRV2)を閉成させ、前記ブレーキ系統(BK1,BK2)内の減圧のために、前記遮断弁(RVP1,RVP2)を無通電開放状態に移行させ、前記圧力維持及び圧力制御弁(PRV1,PRV2)を開放させる、
請求項
13に記載の動作方法。
【請求項17】
前記ブレーキ系統(BK1,BK2)内で漏れが識別された場合に、対応する前記遮断弁(RVP1,RVP2)を閉成させる、
請求項
15又は
16に記載の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の上位概念による、特に高度自動化車両又は自律車両のための多系統液圧開放型ブレーキシステムに関する。本発明の対象はまた、そのような多系統液圧開放型ブレーキシステムのための動作方法である。
【背景技術】
【0002】
従来技術からは、実際の運転タスクを少なくとも部分的に引き受けることができる、少なくとも1つの高度自動化運転機能又は自律運転機能を備えた車両が公知である。車両は、例えば道路形状、他の道路利用者又は障害物を自動的に認識し、対応する駆動制御命令を車両内で計算して、車両内のアクチュエータに転送することによって、車両の走行経路に適正に影響が与えられることにより、車両は、高度自動化運転又は自律運転を実施することができる。運転者は、そのような高度自動化車両又は自律車両の場合、通常、運転事象には関与しない。それでもなお、運転者にいつでも自ら運転事象に介入することができるようにし得る措置及び手段が設けられている。
【0003】
加えて、従来技術からは、車両運転者による液圧的介入を用いた駆動制御用に設計された車両用ブレーキシステムも公知である。それにより、ブレーキシステムに障害が発生した場合にも、運転者はブレーキペダルの操作によって、まだ十分に制動力を車両のホイールに加えられることが保証されている。この設計は、今日のブレーキシステムの接続構成に多大な影響を与える。そのため、例えばタンデムマスタブレーキシリンダのサイズは、フォールバックレベルでの良好な性能の維持によって理由付け可能である。加えて、ブレーキシステムは、いわゆる連結ブレーキシステム又は補助ブレーキシステムとして実施することができる。ただし、これらのシステムも、フォールバックレベルとして、依然として運転者による液圧的介入が行われるように実現されている。補助ブレーキシステムは、高度自動化車両又は自律車両には適していない。なぜなら、そこでは、自律運転機能の期間中、運転者は増幅のためにそこに居合わせず、ブレーキシステムは、完全に独立して制動エネルギーを形成する必要があるからである。
【0004】
独国特許出願公開第102009001135号明細書からは、液圧車両ブレーキ装置を操作するための方法が公知である。この車両ブレーキ装置は、電気機械式ブレーキブースタと、ホイールスリップ制御部と、を含む。ここでは、この車両ブレーキ装置は、ブレーキペダルが操作されていない状況において、例えば、先行車両に対する車両速度の制限若しくは車間距離の制御のために、又は、駐車の際に、ブレーキブースタを用いて操作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102009001135号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の開示
独立請求項1の特徴を有する、特に高度自動化車両又は自律車両のための多系統液圧開放型ブレーキシステム、及び、独立請求項15の特徴を有する、そのような多系統液圧開放型ブレーキシステムのための対応する動作方法は、運転者を介した機械的及び/又は液圧的介入のない、簡素で堅牢かつ安価なブレーキシステムアーキテクチャが提供されるという利点を有する。このアーキテクチャは、障害が発生した場合でも、適当な冗長的構想によって十分な制動能力を可能にする。
【0007】
本発明の実施形態は、公知のブレーキシステムよりも少ないコンポーネントを有する。なぜなら、運転者踏力を生成し、増幅し、転送するための若干のバルブ、ペダル距離シミュレータ及び機構を必要としないからである。そのため、よりわずかなブレーキシステムコストしか生じない。加えて、システムコストもよりわずかとなる。なぜなら、ホイールブレーキには単一の液圧ポートしか存在せず、ブレーキキャリパ内で異なるピストンに作用する2つのポートを有する代替的手段が不要になるからである。さらに、流体容器は、ブレーキ系統ごとに単一の液圧ポートしか有さず、複数のポートを有する代替的手段は余分である。
【0008】
その他に、車両製造業者においてよりわずかな統合化コストがもたらされる。なぜなら、本発明の実施形態は、運転者を介した機械的及び/又は液圧的介入のない電気的な駆動制御に基づいて、特に右ハンドル車及び左ハンドル車への簡単な取り付けを可能にし、エンジンルームと車室内との間の隔壁における取り付けスペースを解放するからである。ブレーキシステムアクチュエータを隔壁に取り付ける必要がないため、NVH(NVH:Noise, Vibration, Harshness「ノイズ、振動、ハーシュネス」)関係の利点も生じる。加えて、より少ない数のコンポーネントに基づいて、重量及び体積も公知のブレーキシステムに比較してより少なくなる。
【0009】
メインシステム及びセカンダリシステムに分割することにより、2つのアセンブリを備えたモジュール構想を簡単に実現することができる。
【0010】
本発明の実施形態は、圧力排出経路を有するそれぞれ1つのブレーキ系統に割り当てられた少なくとも2つのホイールブレーキと、流体容器と少なくとも2つのホイールブレーキとの間で直列に液圧接続された2つの多系統圧力発生器と、圧力発生器を少なくとも2つのホイールブレーキに液圧接続させ、少なくとも2つのホイールブレーキ内で個別に制動圧調整するための液圧ユニットと、を備えた、特に高度自動化車両又は自律車両のための多系統液圧開放型ブレーキシステムを提供する。ここでは、第1の圧力発生器は、プランジャシステムとして構成されており、かつ、第1のエネルギー供給源と第1の評価及び制御ユニットとを含むメインシステムに割り当てられている。第2の圧力発生器は、第2のプランジャシステム又はポンプシステムとして構成されており、かつ、第1のエネルギー供給源に依存しない第2のエネルギー供給源と第2の圧力発生器を駆動制御する第2の評価及び制御ユニットとを含むセカンダリシステムに割り当てられている。加えて、個別の制動圧調整のための液圧ユニットの複数のコンポーネントが、メインシステムに割り当てられており、それによって、液圧ユニットの当該コンポーネントと第1の圧力発生器とが、第1の評価及び制御ユニットによって駆動制御され、第1のエネルギー供給源からエネルギーを供給される。
【0011】
加えて、特に高度自動化車両又は自律車両のためのそのような多系統液圧開放型ブレーキシステムの動作方法が提案される。通常モードにおいて、メインシステムが、第1の圧力発生器を用いてブレーキ系統内の圧力を増加させ又は低減させ又は維持させ、液圧ユニットを用いて少なくとも2つのホイールブレーキ内の個別の制動圧調整を実施する。メインシステムに障害が発生した場合、セカンダリシステムが、第2の圧力発生器を用いてブレーキ系統内の圧力を増加させ又は低減させ又は維持させ、少なくとも2つのホイールブレーキ内の個別の制動圧調整は省略される。
【0012】
液圧開放型ブレーキシステムとは、個別の制動圧調整中に排出されたブレーキ液を、ホイールブレーキから圧力排出経路を介して流体容器に還流させることができるブレーキシステムを意味するものと理解されたい。本発明の実施形態においては、このブレーキシステムは、通常モードでは開放されている。メインシステムに障害が発生した場合には、ブレーキシステムは閉成され、そのため、ホイールブレーキの個別の制動圧調整は不可能である。
【0013】
個々のホイールブレーキ内の個別の制動圧調整により、例えばアンチロックコントロールシステムABS、トラクションコントロールシステムASR、走行動特性コントロールシステムFDR又はESPなどの様々な制御機能を、車両の長手方向及び横方向安定化のために好適に実現することができる。これらの制御機能は、それ自体公知なものなので、ここではこれについてより詳細に触れることは省略する。
【0014】
プランジャシステムとしての第1の圧力発生器の構成によって、システム全体において良好なNVH性能と、より簡単でかつ/又はより正確な監視及び改良された制御が得られる。このことは、メインシステム内の状況も体積及び圧力上昇情報も、他の構想(ポンプシステム)に比較してより簡単にかつ特により正確に検出することができることを可能にさせる。
【0015】
プランジャシステムとしての第2の圧力発生器の構成によって、通常モードにおいても、メインシステムに障害が発生した場合においても、非常に良好なNVH性能を得ることができる。
【0016】
ポンプシステムとしての第2の圧力発生器の構成により、他の構想(プランジャシステム)に比較して、さらにより削減されたコスト、構造空間及び重量が生じる。
【0017】
本明細書においては、評価及び制御ユニットとは、検出されたセンサ信号を処理又は評価する、例えば制御装置などの電気機器を意味するものと理解されたい。この評価及び制御ユニットは、ハードウェア及び/又はソフトウェアに基づいて構成され得る少なくとも1つのインタフェースを有することができる。ハードウェアに基づく構成の場合、このインタフェースは、例えば評価及び制御ユニットのあらゆる種類の機能を含む、いわゆるシステムASICの一部であってもよい。しかしながら、このインタフェースが、固有の集積回路であること、又は、少なくとも部分的に別個の構成要素からなることも可能である。ソフトウェアに基づく構成の場合、このインタフェースは、例えば1つのマイクロコントローラー上に他のソフトウェアモジュールとともに存在するソフトウェアモジュールであってもよい。また、半導体メモリ、ハードディスクメモリ又は光学メモリなどの機械可読担体上に記憶され、プログラムが評価及び制御ユニットによって実行されるときに評価の実施のために使用されるプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品も有利である。
【0018】
センサ信号を検出するために、センサユニットが設けられており、このセンサユニットとは、本明細書においては、物理的変数又は物理的変数の変化を直接的に又は間接的に検出し、好適にはそれを電気的センサ信号に変換する少なくとも1つのセンサ素子を含むアセンブリを意味するものと理解されたい。このことは、例えば、音波及び/又は電磁波の送信及び/又は受信を介して、及び/又は、磁場又は磁場の変化を介して、及び/又は、例えばGPS信号などの衛星信号の受信を介して行うことができる。そのようなセンサユニットは、例えば車両の加速度に関連する情報を検出する加速度センサ素子、及び/又は、物体及び/又は障害物及び/又はその他の衝突に関連する車両周辺データを特定して評価に利用するセンサ素子を含み得る。そのようなセンサ素子は、例えばビデオ及び/又はレーダ及び/又はライダ及び/又はPMD及び/又は超音波技術に基づくことができる。加えて、既存のABSセンサシステムの信号及び情報やこの目的のために設けられた制御装置で導出された変数も評価することができる。加速度に関連する情報及び/又はそこから特定された変数に基づいて、例えば車両の運動及び車両の位置を3次元空間において推定し、事故識別のために評価することができる。
【0019】
車両の位置特定のために、例えば全地球航法衛星システムGNSS(GNSS:Global Navigation Satellite System)を使用することができる。ここでは、GNSSは、アメリカ合衆国のNAVSTAR GPS(Global Positioning System)、ロシア連邦のGLONASS(Global Navigation Satellite System)、欧州連合のガリレオ、中華人民共和国の北斗(Beidou)などの既存の及び将来的な全地球航法衛星システムの使用に関する総称として使用される。
【0020】
高度自動化車両又は自律車両とは、実際の運転タスクを少なくとも部分的に引き受けることができる、少なくとも1つの高度自動化運転機能又は自律運転機能を備えた車両を意味するものと理解されたい。この少なくとも1つの高度自動化運転機能又は自律運転機能を介して、車両は、例えば道路形状、他の道路利用者又は障害物を自動的に認識し、対応する制御命令を計算する。これらの制御命令は、車両のアクチュエータに転送され、これによって、車両の走行経路は適正に影響を受ける。運転者は、そのような高度自動化車両又は自律車両の場合、通常は、運転事象には関与しない。それでもなお、運転者にいつでも自ら運転事象に介入することができるようにし得る、例えば電気的又は電子的操作要素の形態の措置及び手段が設けられている。従って、運転者により操作要素を用いて生成された制動要求は、電気信号を介してメインシステム及び/又はセカンダリシステムに転送される。ただし、運転者による機械的及び/又は液圧的介入は存在しない。
【0021】
少なくとも1つの運転機能は、軌道計画のために、内部センサユニットによって検出された、ABS介入、操舵角、位置、方向、速度、加速度などの車両データ及び/又は例えばカメラ、レーダ、ライダ及び/又は超音波センサユニットを介して検出される車両周辺データを評価し、それに応じて、所望の制動圧を生成するために、及び/又は、ホイールブレーキにおける個々の制動圧調整による長手方向及び/又は横方向における安定化過程を実現するために、メインシステム及びセカンダリシステムの評価及び制御ユニットを駆動制御する。
【0022】
従属請求項に記載されている措置及び発展形態によって、独立請求項1に示された、特に高度自動化車両又は自律車両のための多系統液圧開放型ブレーキシステムの好適な改良例、及び、独立請求項15に示された、特に高度自動化車両又は自律車両のためのそのような多系統液圧開放型ブレーキシステムのための動作方法の好適な改良例が可能になる。
【0023】
特に好適には、直列に流体接続される圧力発生器の順序を、機能性への悪影響を与えることなく取り付け条件に適合化させることが可能である。そのため、例えば流体容器の下流側に、最初に第1の圧力発生器が配置され、次いで第2の圧力発生器が配置され得る。代替的に、流体容器の下流側に、最初に第2の圧力発生器が配置され、次いで第1の圧力発生器が配置され得る。
【0024】
ブレーキシステムの好適な実施形態においては、ブレーキ系統において、それぞれ、第1の圧力発生器及び/又は第2の圧力発生器に対して並列に液圧バイパスが形成され得る。ここでは、それぞれ1つの第1の切換弁が、第1の圧力発生器及び/又は第2の圧力発生器周りで第1のブレーキ系統の液圧バイパスを遮断又は開放させ、それぞれ1つの第2の切換弁は、第1の圧力発生器及び/又は第2の圧力発生器周りで第2のブレーキ系統の液圧バイパスを遮断又は開放させ得る。これにより、圧力発生器による絞りを好適に防止することができる。
【0025】
ブレーキシステムのさらなる好適な実施形態においては、流体容器は、第1のブレーキ系統の流体供給のための第1の流体チャンバと、第2のブレーキ系統の流体供給のための第2の流体チャンバとを含み得る。加えて、第1のプランジャシステム及び第2のプランジャシステムは、2つのピストン及び2つのチャンバと駆動部とを有するそれぞれ1つのピストンシリンダユニットを有し得る。ここでは、各駆動部は、それぞれ、チャンバ内の圧力調整のために対応するプランジャシステムの2つのピストンを対応するリターンスプリングの力に逆らって移動させることができる。ここでは、それぞれ1つの第1のチャンバは、第1のブレーキ系統に割り当てられ、それぞれ1つの第2のチャンバは、第2のブレーキ系統に割り当てられ得る。この場合、プランジャシステムのピストンシリンダユニットは、無通電状態において通流可能である。そのため、ブレーキ液は、実質的に妨げられることなくピストンシリンダユニットを通って通流可能である。さらに、ポンプシステムは、第1のブレーキ系統に割り当てられた第1のポンプと、第2のブレーキ系統に割り当てられた第2のポンプと、当該2つのポンプを駆動する共通の駆動部とを有し得る。それにより、本発明の実施形態においては、好適な方法により、流体容器からホイールブレーキまでの連続的な二系統を実現することができ、そのため、漏れ監視の要件を低減することが可能になる。
【0026】
ブレーキシステムのさらなる好適な実施形態においては、液圧ユニットは、ホイールブレーキごとに個別の制動圧調整のためにそれぞれ1つの入口弁及びそれぞれ1つの出口弁を含むことができる。加えて、各ブレーキ系統における第1のプランジャシステムのための液圧ユニットは、流体容器からのブレーキ液の補給を可能にするそれぞれ1つの遮断弁を有することができる。オープンアーキテクチャに基づいて、第1のプランジャシステムは、流体を補給又は再吸引することができる。ここでは、これらの遮断弁は、好適には、プランジャシステムが補給過程中にホイールブレーキからブレーキ液を吸引することを防止する。さらに、各ブレーキ系統における第1のプランジャシステムのための液圧ユニットは、第1のプランジャシステムを付加的に流体容器に液圧接続させ得る、逆止弁を有するそれぞれ1つの吸引管路を有することができる。それにより、特に低温での補給過程をより迅速に実施することができる。
【0027】
ブレーキシステムのさらなる好適な実施形態においては、各ブレーキ系統におけるポンプシステムのための液圧ユニットは、セカンダリシステムに割り当てられ、第2の評価及び制御ユニットによって駆動制御され、第2のエネルギー供給源からエネルギーを供給され得るそれぞれ1つの圧力維持及び圧力制御弁を有することができる。入口弁並びに圧力維持及び圧力制御弁は、例えば制御可能な無通電開放ソレノイド弁として構成することができる。出口弁及び遮断弁は、例えば電磁的な無通電閉成切換弁として構成することができる。この液圧ユニットの構成により、好適には、既知のESPシステムを使用し、既存のスケーリング効果(ESPは何百万回も構築されている)を介してシステム全体のコストを非常に低く抑えることが可能になる。さらに、第1のホイールブレーキ及び第2のホイールブレーキを第1のブレーキ系統に割り当て、第3のホイールブレーキ及び第4のホイールブレーキを第2のブレーキ系統に割り当てることができる。ここでは、X型分割方式の、即ち、左前輪のホイールブレーキ及び右後輪のホイールブレーキは第1のブレーキ系統に割り当てられ、右前輪のホイールブレーキ及び左後輪のホイールブレーキは第2のブレーキ系統に割り当てられている、ブレーキ系統も、II型分割方式の、即ち、左前輪のホイールブレーキ及び左後輪のホイールブレーキは第1のブレーキ系統に割り当てられ、右前輪のホイールブレーキ及び右後輪のホイールブレーキは第2のブレーキ系統に割り当てられている、ブレーキ系統も可能である。
【0028】
加えて、各ブレーキ系統における、特にポンプシステムが第1のプランジャシステムの下流に配置されている場合のポンプシステムのための液圧ユニットは、ポンプシステムを付加的に流体容器に液圧接続させ得る、逆止弁を有するそれぞれ1つの吸引管路を有することができる。ポンプシステムのためのこの付加的な吸引経路は、プランジャシステムに代えて流体容器からブレーキ液を吸引するために使用することができる。これにより、低温の場合であっても、吸引過程中に問題は生じない。
【0029】
動作方法の好適な実施形態においては、通常モードにおいて、ブレーキ系統内の増圧又は減圧のために、遮断弁を無通電開放状態に移行させることができ、プランジャシステムの駆動部は、ピストンをブレーキ系統内の圧力の増加のために第1の方向に移動させるために又はブレーキ系統内の圧力の減少のために第1の方向とは逆の第2の方向に移動させるために駆動制御され得る。ブレーキ系統内の圧力維持のために、遮断弁を無通電開放状態に移行させることができ、プランジャシステムの駆動部は、ピストンを自身の現在の位置に維持させることができる。
【0030】
動作方法のさらなる好適な実施形態においては、通常モードにおいて、割り当てられたホイールブレーキ内の個別の増圧のために、対応する入口弁は開放可能であり、対応する出口弁は閉成可能である。割り当てられたホイールブレーキ内の個別の圧力維持のために、対応する入口弁及び対応する出口弁は閉成可能である。割り当てられたホイールブレーキ内の個別の減圧のために、対応する入口弁は閉成可能であり、対応する出口弁は開放可能である。
【0031】
動作方法のさらなる好適な実施形態においては、メインシステムに障害が発生し、かつ、第2の圧力発生器が第2のプランジャシステムとして構成されている場合に、ブレーキ系統内の増圧又は減圧のために、遮断弁を無通電開放状態に移行させることができ、第2のプランジャシステムの駆動部は、ピストンをブレーキ系統内の圧力の増加のために第1の方向に移動させるために又はブレーキ系統内の圧力の減少のために第1の方向とは逆の第2の方向に移動させるために駆動制御され得る。ブレーキ系統内の圧力維持のために、遮断弁を無通電開放状態に移行させることができ、第2のプランジャシステムの駆動部は、ピストンを自身の現在の位置に維持させることができる。
【0032】
動作方法のさらなる好適な実施形態においては、メインシステムに障害が発生し、かつ、第2の圧力発生器がポンプシステムとして構成されている場合に、ブレーキ系統内の増圧のために、遮断弁を無通電開放状態に移行させ、圧力維持及び圧力制御弁を閉成させることができ、第2の圧力発生器の駆動部は、ポンプを用いて圧力を増加させるために駆動制御され得る。ブレーキ系統内の圧力維持のために、遮断弁を無通電開放状態に移行させ、圧力維持及び圧力制御弁を閉成させることができる。ブレーキ系統内の減圧のために、遮断弁を無通電開放状態に移行させ、圧力維持及び圧力制御弁を開放させることができる。
【0033】
動作方法のさらなる好適な実施形態においては、ブレーキ系統内で漏れが識別された場合に、対応する遮断弁を閉成させることができる。
【0034】
本発明の実施例は、図面に示され、以下の明細書においてより詳細に説明される。図面においては、同一の、又は、同等の機能を実行するコンポーネント又は要素には、同一の参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】特に高度自動化車両又は自律車両のための本発明に係る多系統液圧開放型ブレーキシステムの一実施例の概略的ブロック図である。
【
図2】
図1の本発明に係るブレーキシステムの圧力発生器の液圧迂回路の一実施例の概略的ブロック図である。
【
図3】特に高度自動化車両又は自律車両のための本発明に係る多系統液圧開放型ブレーキシステムの第1の実施例の概略的液圧系統図である。
【
図4】特に高度自動化車両又は自律車両のための本発明に係る多系統液圧開放型ブレーキシステムの第2の実施例の概略的液圧系統図である。
【
図5】特に高度自動化車両又は自律車両のための本発明に係る多系統液圧開放型ブレーキシステムの第3の実施例の概略的液圧系統図である。
【
図6】特に高度自動化車両又は自律車両のための本発明に係る多系統液圧開放型ブレーキシステムの第4の実施例の概略的液圧系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の実施形態
図1乃至
図6から明らかなように、特に高度自動化車両又は自律車両のための本発明に係る多系統液圧開放型ブレーキシステム1,1A,1B,IC,IDの図示の実施例は、圧力排出経路9.1,9.2を有するそれぞれ1つのブレーキ系統BK1,BK2に割り当てられたそれぞれ少なくとも2つのホイールブレーキRB1,RB2,RB3,RB4と、流体容器7と少なくとも2つのホイールブレーキRB1,RB2,RB3,RB4との間で直列に液圧接続された2つの多系統圧力発生器12,22と、圧力発生器12,22を少なくとも2つのホイールブレーキRB1,RB2,RB3,RB4に液圧接続させ、少なくとも2つのホイールブレーキRB1,RB2,RB3,RB4内で個別に制動圧調整するための液圧ユニット16と、を含む。
図3乃至
図6からさらに明らかなように、第1の圧力発生器12は、プランジャシステム12Aとして構成されており、
図1からさらに明らかなように、第1のエネルギー供給源EVIと第1の評価及び制御ユニット14とを含むメインシステム10に割り当てられている。
図3乃至
図6からさらに明らかなように、第2の圧力発生器22は、第2のプランジャシステム22A又はポンプシステム22Bとして構成されており、かつ、第1のエネルギー供給源EV1に依存しない第2のエネルギー供給源EV2と、第2の圧力発生器22を駆動制御する第2の評価及び制御ユニット24とを含むセカンダリシステム20,20A,20Bに割り当てられている。個別の制動圧調整のための液圧ユニット16の複数のコンポーネントが、メインシステム10に割り当てられており、それによって、液圧ユニット16の当該コンポーネントと第1の圧力発生器12とが、第1の評価及び制御ユニット14によって駆動制御され、第1のエネルギー供給源EV1からエネルギーを供給される。
【0037】
図1乃至
図6からさらに明らかなように、図示のブレーキシステム1,1A,1B,IC,IDは、それぞれ1つの圧力排出経路9.1,9.2と4つのホイールブレーキRB1,RB2,RB3,RB4とを有するそれぞれ2つのブレーキ系統BK1,BK2を含み、ここでは、第1のホイールブレーキRB1及び第2のホイールブレーキRB2及び第1の圧力排出経路9.1は、第1のブレーキ系統BK1に割り当てられ、第3のホイールブレーキRB3及び第4のホイールブレーキRB4及び第2の圧力排出経路9.2は、第2のブレーキ系統に割り当てられている。ここでは、ホイールブレーキRB1,RB2,RB3,RB4を2つのブレーキ系統BK1,BK2にX型に分割する方式が可能であり、即ち、第1のホイールブレーキRB1は左前輪に、第2のホイールブレーキRB2は右後輪に、第3のホイールブレーキRB3は右前輪に、第4のホイールブレーキRB4は左後輪に配置されている。代替的に、ホイールブレーキRB1,RB2,RB3,RB4を2つのブレーキ系統BK1,BK2にII型に分割する方式も可能であり、即ち、第1のホイールブレーキRB1は左前輪に、第2のホイールブレーキRB2は左後輪に、第3ホイールブレーキRB3は右前輪に、第4のホイールブレーキRB4は右後輪に配置されている。
【0038】
図1乃至
図6からさらに明らかなように、流体容器7は、ブレーキシステム1,1A,1B,1C,1Dの図示の実施例においては、第1のブレーキ系統BK1の流体供給のためのそれぞれ1つの第1の流体チャンバ7.1と、第2のブレーキ系統BK2の流体供給のための第2の流体チャンバ7.2と、を含む。
【0039】
図3乃至
図6からさらに明らかなように、第1のプランジャシステム12Aは、ブレーキシステム1,1A,1B,1C,1Dの図示の実施例においては、2つのピストン及び2つのチャンバ12.1,12.2と、電気モータとして構成されていて、チャンバ12.1,12.2内の圧力調整のために2つのピストンを対応するリターンスプリングの力に逆らって移動させる駆動部12.3とを有するそれぞれ1つのピストンシリンダユニットを有している。ここでは、第1のチャンバ12.1は、第1のブレーキ系統BK1に割り当てられ、第2のチャンバ12.2は、第2のブレーキ系統BK2に割り当てられている。加えて、ピストンシリンダユニットは、第1の圧力発生器12の無通電状態において通流可能に構成されており、そのため、ブレーキ液は、2つのチャンバ12.1,12.2を通って通流することができる。
【0040】
図2からさらに明らかなように、ブレーキ系統BK1,BK2においては、それぞれ、第1の圧力発生器12及び/又は第2の圧力発生器22に対して並列に液圧バイパス若しくは液圧迂回路を形成することができる。図示の実施例においては、それぞれ1つの第1の切換弁BP1は、第1の圧力発生器12及び/又は第2の圧力発生器22周りで第1のブレーキ系統BK1の液圧バイパスを遮断又は開放させる。それぞれ1つの第2の切換弁BP2は、第1の圧力発生器12及び/又は第2の圧力発生器22周りで第2のブレーキ系統BK2の液圧バイパスを遮断又は開放させる。
【0041】
図3及び
図4からさらに明らかなように、ブレーキシステム1A,1Bの図示の実施例においては、第2の圧力発生器22は、プランジャシステム22Aとして構成されている。図示の実施例においては、この第2のプランジャシステム22Aは、第1のプランジャシステム12Aに類似して、2つのピストン及び2つのチャンバ22.1A,22.2Aと、チャンバ22.1A,22.2A内の圧力調整のために2つのピストンを対応するリターンスプリングの力に逆らって移動させる駆動部22.3と、を有するピストンシリンダユニットを有している。加えて、第1のチャンバ22.1Aは、第1のブレーキ系統BK1に割り当てられ、第2のチャンバ22.2Aは、第2のブレーキ系統BK2に割り当てられている。第2のプランジャシステム22Aのピストンシリンダユニットは、無通電状態において通流可能である。
【0042】
図5及び
図6からさらに明らかなように、ブレーキシステム1C,1Dの図示の実施例においては、第2の圧力発生器22は、ポンプシステム22Bとして構成されている。このポンプシステムは、第1のブレーキ系統BK1に割り当てられた第1のポンプ22.1Bと、第2のブレーキ系統BK2に割り当てられた第2のポンプ22.2Bと、2つのポンプ22.1B,22.2Bを駆動する共通の駆動部22.3と、を含む。
【0043】
図3及び
図5からさらに明らかなように、ブレーキシステム1A,ICの図示の実施例においては、流体容器7の下流側に、最初に第2の圧力発生器22が配置され、次いで第1の圧力発生器12が配置されている。
【0044】
図4及び
図6からさらに明らかなように、ブレーキシステム1B,1Dの図示の実施例においては、流体容器7の下流側に、最初に第1の圧力発生器12が配置され、次いで第2の圧力発生器22が配置されている。
【0045】
図3乃至
図6からさらに明らかなように、ブレーキシステム1,1A,1B,1C,1Dの図示の実施例の液圧ユニット16は、ホイールブレーキRB1,RB2,RB3,RB4ごとにそれぞれ1つの入口弁IV1,IV2,IV3,IV4とそれぞれ1つの出口弁OV1,OV2,OV3,OV4とを含み、この場合、第1の入口弁IV1及び第1の出口弁OV1は、第1のホイールブレーキRB1に割り当てられている。第2の入口弁IV2及び第2の出口弁OV2は、第2のホイールブレーキRB2に割り当てられており、第3の入口弁IV3及び第3の出口弁OV3は第3のホイールブレーキRB3に割り当てられており、第4の入口弁IV4及び第4の出口弁OV4は、第4のホイールブレーキRB4に割り当てられている。加えて、各ブレーキ系統BK1,BK2におけるプランジャシステム12Aとして構成された第1の圧力発生器12のための液圧ユニット16は、それぞれ1つの遮断弁RVP1,RVP2と、第1のプランジャシステム12Aのチャンバ12.1,12.2を付加的に流体容器7に液圧接続させる、逆止弁を有する付加的な吸引管路とを含む。ここでは、第1の遮断弁RVP1は、第1のブレーキ系統BK1に割り当てられ、第2の遮断弁RVP2は、第2のブレーキ系統BK2に割り当てられている。これらの遮断弁RVP1,RVP2は、流体容器7からのブレーキ液の補給を可能にする。この目的のために、遮断弁が開放され、ホイールブレーキRB1,RB2,RB3,RB4への第1のプランジャシステム12Aの接続は中断される。次いで、第1のプランジャシステム12Aのチャンバ12.1,12.2には、流体容器7の流体チャンバ7.1,7.2からのブレーキ液を補給することができる。
図3及び
図5からさらに明らかなように、この補給は、図示の実施例においては、第2の圧力発生器22によって、付加的な吸引管路を介して行われる。
図4及び
図6からさらに明らかなように、この補給は、図示の実施例においては、直接、流体容器7から付加的な吸引管路を介して行われる。
【0046】
図5及び
図6からさらに明らかなように、各ブレーキ系統BK1,BK2におけるポンプシステム22Bのための、ブレーキシステム1C,1Dの図示の実施例での液圧ユニット16は、セカンダリシステム20Bに割り当てられ、第2の評価及び制御ユニット24によって駆動制御され、第2のエネルギー供給源EV2からエネルギーを供給されるそれぞれ1つの圧力維持及び圧力制御弁PRV1,PRV2を有する。ここでは、第1の圧力維持及び圧力制御弁PRV1は、第1のブレーキ系統BK1に割り当てられ、第2の圧力維持及び圧力制御弁PRV2は、第2のブレーキ系統BK2に割り当てられている。
【0047】
図6からさらに明らかなように、各ブレーキ系統BK1,BK2におけるポンプシステム22Bのための、ブレーキシステム1Dの図示の実施例での液圧ユニット16は、ポンプシステム22Bを付加的に流体容器7に液圧接続させる、逆止弁を有するそれぞれ1つの吸引管路を有する。
【0048】
図3乃至
図6からさらに明らかなように、ブレーキシステム1A,1B,1C,1Dの図示の実施例においては、入口弁IV1,IV2,IV3,IV4及び圧力維持及び圧力制御弁PRV1,PRV2はそれぞれ、制御可能な無通電開放ソレノイド弁として構成されている。出口弁OV1,OV2,OV3,OV4及び遮断弁RVP1,RVP2は、図示の実施例においては、電磁的な無通電閉成切換弁として構成されている。
【0049】
本発明に係るブレーキシステム1,1A,1B,1C,1Dは、液圧開放型システムとして構成されているので、ホイールブレーキRB1,RB2,RB3,RB4における個別の制動圧調整中に、対応する出口弁OV1,OV2,OV3,OV4を介してホイールブレーキRB1,RB2,RB3,RB4から排出されるブレーキ液を、図示の実施例においては、圧力排出経路9.1,9.2を介して流体容器7に還流させる。ブレーキシステム1,1A,1B,1C,1Dの図示の実施例においては、第1のブレーキ系統BK1のホイールブレーキRB1,RB2から出口弁OV1,OV2を介して排出されたブレーキ液は、第1の圧力排出経路9.1を介して流体容器7の第1の流体チャンバ7.1に還流する。第2のブレーキ系統BK2のホイールブレーキRB3,RB4から出口弁OV3,OV4を介して排出されたブレーキ液は、第2の圧力排出経路9.2を介して流体容器7の第2の流体チャンバ7.2に還流する。
【0050】
特に高度自動化車両又は自律車両のための上述した多系統液圧開放型ブレーキシステム1,1A,1B,1C,1Dのための本発明に係る動作方法においては、通常モードにおいて、メインシステム10が、第1の圧力発生器12を用いてブレーキ系統BK1,BK2内の圧力を増加させ又は低減させ又は維持させ、液圧ユニット16を用いて少なくとも2つのホイールブレーキRB1,RB2,RB3,RB4内の個別の制動圧調整を実施する。メインシステム10に障害が発生した場合、セカンダリシステム20,20A,20Bが、第2の圧力発生器22を用いてブレーキ系統BK1,BK2内の圧力を増加させ又は低減させ又は維持させ、少なくとも2つのホイールブレーキRB1,RB2,RB3,RB4内の個別の制動圧調整は、省略される。
【0051】
通常モードにおいて、ブレーキ系統BK1,BK2内の増圧又は減圧のために、遮断弁RVP1,RVP2を無通電開放状態に移行させ、第1のプランジャシステム12Aの駆動部12.3は、ピストンをブレーキ系統BK1,BK2内の圧力の増加のために第1の方向に移動させるために又はブレーキ系統BK1,BK2内の圧力の減少のために第1の方向とは逆の第2の方向に移動させるために駆動制御される。ブレーキ系統BK1,BK2内の圧力維持のために、遮断弁RVP1,RVP2を無通電開放状態に移行させ、第1のプランジャシステム12Aの駆動部12.3は、ピストンを現在の位置に維持させる。
【0052】
さらに、通常モードにおいて、割り当てられたホイールブレーキRB1,RB2,RB3,RB4内の個別の増圧のために、対応する入口弁IV1,IV2,IV3,IV4を開放させ、対応する出口弁OV1,OV2,OV3,OV4を閉成させる。割り当てられたホイールブレーキRB1,RB2,RB3,RB4内の個別の圧力維持のために、対応する入口弁IV1,IV2,IV3,IV4及び対応する出口弁OV1,OV2,OV3,OV4を閉成させる。割り当てられたホイールブレーキRB1,RB2,RB3,RB4内の個別の減圧のために、対応する入口弁IV1,IV2,IV3,IV4を閉成させ、対応する出口弁OV1,OV2,OV3,OV4を開放させる。
【0053】
メインシステム10に障害が発生し、かつ、第2の圧力発生器22が第2のプランジャシステム22Aとして構成されている場合に、ブレーキ系統BK1,BK2内の増圧又は減圧のために、遮断弁RVP1,RVP2を無通電開放状態に移行させ、第2のプランジャシステム22Aの駆動部22.3は、ピストンをブレーキ系統BK1,BK2内の圧力の増加のために第1の方向に移動させるために又はブレーキ系統BK1,BK2内の圧力の減少のために第1の方向とは逆の第2の方向に移動させるために駆動制御される。ブレーキ系統BK1,BK2内の圧力維持のために、遮断弁RVP1,RVP2を無通電開放状態に移行させ、第2のプランジャシステム22Aの駆動部22.3は、ピストンを現在の位置に維持させる。
【0054】
メインシステム10に障害が発生し、かつ、第2の圧力発生器22がポンプシステム22Bとして構成されている場合に、ブレーキ系統BK1,BK2内の増圧のために、遮断弁RVP1,RVP2を無通電開放状態に移行させ、圧力維持及び圧力制御弁PRV1,PRV2を閉成させ、第2の圧力発生器22の駆動部22.3は、ポンプ22.1,22.2を用いて圧力を増加させるために駆動制御される。ブレーキ系統BK1,BK2内の圧力維持のために、遮断弁RVP1,RVP2を無通電開放状態に移行させ、圧力維持及び圧力制御弁PRV1,PRV2を閉成させる。ブレーキ系統BK1,BK2内の減圧のために、遮断弁RVP1,RVP2を無通電開放状態に移行させ、圧力維持及び圧力制御弁PRV1,PRV2を開放させる。
【0055】
その他に、ブレーキ系統BK1,BK2内で漏れが識別された場合には、対応する遮断弁RVP1,RVP2が閉成される。
【0056】
この方法は、例えばソフトウェア又はハードウェアで実現されてもよいし、あるいは例えば制御装置内でソフトウェアとハードウェアとからなる混合形態で実現されてもよい。
【0057】
本発明の実施形態は、特に高度自動化車両又は自律車両のための、運転者による機械的及び/又は液圧的介入のない多系統液圧開放型ブレーキシステム、並びに、対応する動作方法を提供し、この場合、使用される、液圧的に直列に配置された圧力発生器は、液圧ユニットを介した液圧接続によって、車両のすべてのホイールブレーキに作用する。