IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニコベンチャーズ トレーディング リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-電子エアロゾル供給装置 図1
  • 特許-電子エアロゾル供給装置 図2
  • 特許-電子エアロゾル供給装置 図3
  • 特許-電子エアロゾル供給装置 図4
  • 特許-電子エアロゾル供給装置 図5A
  • 特許-電子エアロゾル供給装置 図5B
  • 特許-電子エアロゾル供給装置 図6A
  • 特許-電子エアロゾル供給装置 図6B
  • 特許-電子エアロゾル供給装置 図7
  • 特許-電子エアロゾル供給装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】電子エアロゾル供給装置
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/57 20200101AFI20220829BHJP
   A24F 40/65 20200101ALI20220829BHJP
【FI】
A24F40/57
A24F40/65
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020546130
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 GB2019050364
(87)【国際公開番号】W WO2019171017
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-10-07
(31)【優先権主張番号】1803648.3
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【弁理士】
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】マロニー、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ディケンズ、コリン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ジャスティン ハン ヤン
【審査官】竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0108840(US,A1)
【文献】国際公開第2017/121979(WO,A1)
【文献】特表2017-509339(JP,A)
【文献】特表2017-538408(JP,A)
【文献】特開平05-212100(JP,A)
【文献】特表2016-509481(JP,A)
【文献】国際公開第2016/188967(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00 - 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子蒸気供給装置のユーザーが吸引するペイロードを、電力が供給されてから有限の時間をかけて気化させる気化器と、
ユーザーによる作動に応答して前記ペイロードを気化させる前記気化器に電力を供給する電力供給装置と、
前記ユーザーの前記電子蒸気供給装置との相互作用に応答してそれぞれの信号を出力するように動作可能な1つ以上のセンサと、
前記それぞれの信号のうちの1つ以上の解析に基づいてユーザーによる作動が行われると予測したその瞬間を推定するように構成される推定プロセッサと、
推定される前記ユーザーの作動が行われると予測したその瞬間に先行する時刻に前記気化器に電力を供給させるように構成される制御プロセッサとを含む電子蒸気供給装置。
【請求項2】
前記推定プロセッサは、1つ以上のセンサからの信号の相関を計算し、それぞれの相関閾値を満たさない、センサからの信号を無視することを特徴とする請求項1記載の電子蒸気供給装置。
【請求項3】
前記推定プロセッサは、ユーザーによる後続の作動に関する、1つ以上のセンサからの信号のタイミングの変動性を計算し、1つ以上のそれぞれの信号の検出に対して、ユーザーによる作動のそれぞれの予測タイミングを生成することを特徴とする請求項1または2記載の電子蒸気供給装置。
【請求項4】
前記推定プロセッサは、好ましい信号を含む2つ以上の信号が検出された場合、最も小さい変動性を持つ信号を、前記予測タイミングを選択する好ましい信号として選択することを特徴とする請求項3記載の電子蒸気供給装置。
【請求項5】
前記推定プロセッサは、2つ以上の信号が連続的に検出された場合、一連の信号を、前記予測タイミングを選択する信号として選択し、それにより前記予測タイミングを更新することを特徴とする請求項3または4記載の電子蒸気供給装置。
【請求項6】
前記推定プロセッサは、2つ以上の信号が連続的に検出された場合、より小さい変動性を持つ一連の信号を、前記予測タイミングを選択する信号として選択し、それにより前記予測タイミングを更新することを特徴とする請求項5記載の電子蒸気供給装置。
【請求項7】
前記気化器は、ヒーターであり、前記推定プロセッサは、前記予測タイミングに応答して予備加熱開始時刻を計算することを特徴とする請求項3乃至6いずれか1項記載の電子蒸気供給装置。
【請求項8】
前記気化器はヒーターであり、前記推定プロセッサは、前記予測タイミングおよび前記気化器の現在の温度に応答して加熱勾配を計算することを特徴とする請求項3乃至6いずれか1項記載の電子蒸気供給装置。
【請求項9】
前記制御プロセッサを含む電子タバコと、
前記推定プロセッサを含む携帯電話とを含むことを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項記載の電子蒸気供給装置。
【請求項10】
電子蒸気供給装置の一部を構成し、ユーザーが吸引するペイロードを、電力が供給されてからの有限の時間をかけて気化させる気化器を提供する工程と、
前記電子蒸気供給装置の一部を構成し、ユーザーによる作動に応答して前記ペイロードを気化させる前記気化器に電力を供給する電力供給装置を提供する工程と、
前記ユーザーの前記電子蒸気供給装置との相互作用に応答してそれぞれの信号を出力するように動作可能な1つ以上のセンサを提供する工程と、
前記それぞれの信号のうちの1つ以上の解析に基づいてユーザーによる作動が行われると予測したその瞬間を推定する工程と、
推定される前記ユーザーの作動が行われると予測したその瞬間に先行する時刻に前記気化器に電力を供給させる工程とを含む蒸気の供給方法。
【請求項11】
前記推定工程は1つ以上のセンサからの信号の相関を計算し、それぞれの相関閾値を満たさない、センサからの信号を無視する工程を含むことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記推定工程はユーザーによる後続の作動に関する、1つ以上のセンサからの信号のタイミングの変動性を計算し、1つ以上のそれぞれの信号の検出に対して、ユーザーによる作動のそれぞれの予測タイミングを生成する工程を含むことを特徴とする請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記推定工程は好ましい信号を含む2つ以上の信号が検出された場合、最も小さい変動性を持つ信号を、前記予測タイミングを選択する好ましい信号として選択する工程を含むことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記推定工程は、2つ以上の信号が連続的に検出された場合、一連の信号を、前記予測タイミングを選択する信号として選択し、それにより前記予測タイミングを更新する工程を含むことを特徴とする請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
前記推定工程は、2つ以上の信号が連続的に検出された場合、より小さい変動性を持つ一連の信号を、前記予測タイミングを選択する信号として選択し、それにより前記予測タイミングを更新する工程を含むことを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記推定工程は、
ユーザーによる後続の作動時にユーザーに提供されるエアロゾルの性質に関連するフィードバックデータを受信する工程と、
ユーザーによる作動の予測瞬間のこれからの推定を当該フィードバックデータの解析に基づいて調整する工程とを含むことを特徴とする請求項10乃至15いずれか1項記載の方法。
【請求項17】
気化器はヒーターであり、前記推定工程は、
前記予測タイミングに応答して予備加熱開始時刻を計算する工程を含むことを特徴とする請求項12乃至15いずれか1項または請求項12乃至15いずれか1項に従属する請求項16記載の方法。
【請求項18】
気化器はヒーターであり、前記推定工程は、
前記予測タイミングおよび前記気化器の現在の温度に応答して加熱勾配を計算する工程を含むことを特徴とする請求項12乃至15いずれか1項または請求項12乃至15いずれか1項に従属する請求項16記載の方法。
【請求項19】
請求項10乃至15いずれか1項、請求項12乃至15いずれか1項に従属する請求項16、請求項17または請求項18記載の方法をコンピュータシステムに行わせるようになっているコンピュータが実行可能な命令を有するコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ニコチン送出装置などの電子エアロゾル供給装置(例えば電子タバコ等)に関する。
【背景技術】
【0002】
電子タバコ(e-シガレット)などの電子エアロゾル供給装置は、一般にエアロゾルが例えば熱気化によって発生する典型的にはニコチンを含有する製剤を含有する原料液の容器を含む。これとは別にゲルまたは処理または未処理タバコ葉などの固形材料が同様に非燃焼熱気化によってエアロゾルを発生させるために使用してもよい。従って、より一般的にはこのような装置は、エアロゾル化されるペイロード(payload)を含むものとして参照してもよい。エアロゾル供給装置のエアロゾル源は、従って、例えば吸い上げ/毛管現象または熱伝導を介してペイロードを受け、これと係合するように配置された加熱エレメントを有するヒーターを含む。ユーザーが装置を介して吸入している間、電力が加熱エレメントに供給され、ヒーターの近傍のペイロードを気化し、ユーザーによる吸入のためのエアロゾルを発生させる。このような装置には、通常装置のマウスピース端部から離れて配置された1つ以上の空気取り込み穴が設けられている。ユーザーが装置のマウスピース端部に接続されているマウスピースを介して吸い込むと、空気が取り込み穴を通って引き込まれ、エアロゾル源を通過する。エアロゾル源とマウスピースの開口部間を接続する流路があり、エアロゾル源を通過して引き込まれる空気がエアロゾル源からのエアロゾルの一部を搬送しながらこの流路に沿ってマウスピース開口部へと引き込まれるようになっている。エアロゾルを搬送する空気は、ユーザーの吸引のためにマウスピース開口部を介してエアロゾル供給装置から出る。
【0003】
通常、ユーザーが装置で吸い込み/パフを行った場合、電流がヒーターに供給される。通常、電流は、ユーザーが吸引または吸い込みまたはパフした際に流れ経路に沿った空気流センサの作動に応じてまたはユーザーによるボタンの操作に応じてヒーター、例えば抵抗加熱エレメントに供給される。加熱エレメントによって発せられた熱は、製剤を気化するために使用される。放出された蒸気は、消費者のパフによって装置を介して引き込まれた空気と混ざり、エアロゾルを形成する。ユーザーがパフを終えると(空気流の降下/圧力の降下)、流れまたは圧力センサが電流を遮断して電気ヒーターを停止させる。
【0004】
しかしながら、反応的な感覚を供するために装置がユーザーによって始動させた際にペイロードの急速な蒸気化を行うことが必要であり、そしてこれはヒーターの迅速な始動を必要とする。しかしながら、これはヒーターをゆっくりと始動させた場合より装置のバッテリーをより速く消耗させる。さらにヒーターの急速な始動は、例えばペイロードから離れている抵抗加熱エレメントを有し、熱導体に沿った熱の流れを介して限られた時間で発せられた熱がペイロードに伝えられるヒーターなどの使用される特定の種類のヒーターに影響を与える。
【0005】
これらの問題のいくつかを対処することを目的として種々の試みについて説明する。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様において請求項1に記載の電子蒸気供給装置が提供される。
【0007】
別の態様では請求項10記載の蒸気の供給方法が提供される。
【0008】
当然のことながら本発明の第1および他の態様に関連して上述した本発明の特徴および態様は、適宜本発明の他の態様による本発明の実施態様に適用可能であり、組み合わせてもよく、上述の特定の組み合わせのみ限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付図面を参照して本発明の実施態様をあくまで例示を目的として説明する。
図1】本発明の一部の実施態様による電子タバコなどの電子蒸気供給装置の略図(分解)である。
図2】本発明の一部の実施態様による図1の電子タバコの本体の略図である。
図3】本発明の一部の実施態様による図1の電子タバコの気化器部分の略図である。
図4】本発明の一部の実施態様による図1の電子タバコの本体部の一端の特定の態様を示す略図である。
図5A】信号特性の分散を示している。
図5B】本発明の一部の実施態様による予備加熱挙動を調節すための分散測定の使用を例示している。
図6A】本発明の一部の実施態様による連続した信号特性の発生に応じた加熱勾配に対する変化を示している。
図6B】本発明の一部の実施態様による連続した信号特性の発生に応じた加熱勾配に対する変化を示している。
図7】本発明の一部の実施態様による電子蒸気供給装置を示す略図である。
図8】本発明の一部の実施態様による蒸気の供給方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特定の例および実施態様の様相および特徴をここで述べ、説明する。特定の例および実施態様の様相および特徴は従来通り実施してもよく、それらについては簡潔にするために詳しく述べたり、説明したりしない。当然のことながら詳しくは説明されないここで述べられる装置および方法の様相および特徴はこのような様相および特徴を実行するための何らかの従来の技術に従って実行してもよい。
【0011】
上述のように本開示は、電子タバコのようなエアロゾル供給装置に関する。以下の説明を通して「電子タバコ」なる用語がしばしば用いられるが、この用語はエアロゾル(蒸気)供給装置とほぼ同じ意味で使用される。
【0012】
図1は本発明の一部の実施態様による電子タバコ10などの電子蒸気供給装置の略図である(正確な縮尺ではない)。電子タバコは、ほぼ円筒状であり、破線LAで示す長手方向軸に沿って延び、2つの主要部材、即ち本体20とカトマイザー30とを含む。カトマイザーは、例えば溶液、ゲルまたは発泡体マトリックス状のニコチンまたは植物材料の塊などのペイロードを含む内部チェンバーと、気化器(ヒーターなどの)と、マウスピース35とを含む。以下、「ニコチン」と言った場合、これは単に例示であり、あらゆる好適な活性成分と代えることができると理解されたい。同様に「容器」と言った場合、あらゆる好適なペイロードと同義であると考慮される。ペイロードはニコチンが気化器に送られる必要が生じるときまでニコチンを保持するためのあらゆる好適な構造の形体を取る。また当然のことながら他の実施においてはペイロードは直接装置に収容されてもよい(カトマイザーに貯蔵されるのとは対照的に)。例えば、ペイロードは、紙または類似材料に包まれたタバコロッドの形体を取ってもよく、またはペイロードは平坦な紙/板紙の層の一面に堆積させてもよい。ペイロードを気化するための機構は、それに応じて選択してもよい。本開示の態様の例示のためにカトマイザー30として参照する。
【0013】
気化器はニコチンを含む液体(またはより一般的にはペイロード)を気化するためのものであり、カトマイザー30は、気化器上にあるまたは気化器に隣接して位置する気化する場所に貯蔵部から少量の液体を輸送する芯または類似の機器をさらに含んでもよい。以下の説明ではヒーターを気化器の具体例として使用する。選択的に本明細書で既に述べたようにヒーターは、電気抵抗によって動作し、ペイロードから少し離れて位置する加熱エレメントと、気化する場所に加熱エレメントからの熱を伝える熱伝導部材とを含む。しかしながら、当然のことながら他の形体の気化器(例えば、超音波を利用するもの)も使用可能であり、ヒーターと言った場合、適宜、他の形体の気化器を包含するものとする。
【0014】
本体20は電子タバコ10に電力を供給する充電式電池またはバッテリーと、電子タバコ全体を制御する回路基板とを備える。
【0015】
従来はヒーターが回路板によって制御されながらバッテリーから電力を受け取ると、ヒーターがペイロードを気化し、その蒸気はマウスピース35を介してユーザーによって吸い込まれる。一部の特定の実施態様では本体にはその外側に手動の始動装置265、例えばボタン、スイッチまたはタッチセンサなどがさらに設けられている。
【0016】
しかしながら、本明細書で既に述べたようにユーザーによる始動に迅速に反応するために通常はヒーターの温度をペイロードの気化温度より高い温度に素早く上げなければならず、これはより高い放電またはピーク電流を必要とする可能性があり、通常、高いピーク電流または放電は所定の電池構造または化学において全体的なバッテリー容量または有効容量を含む。
【0017】
その結果、本発明の一実施態様ではヒーターがペイロードの気化温度より低い温度に予め加熱され、これにより小さい温度差上昇がユーザーによる始動に応じた気化を行うために必要とされる。その結果、周囲温度から作動温度への急な加熱に伴うバッテリーの消耗を避けつつより迅速な反応が可能になる。
【0018】
しかしながら、この方法はヒーターの速すぎる予備加熱によってまたはユーザーが実際にその後装置を始動させない場合に電力を無駄にする可能性があり、各予備加熱操作はバッテリーからの電力を必要とし、従って、それ自体の始動の瞬間にセーブされるより多くの電力を使用する可能性がある。
【0019】
従って、この予備加熱操作を行っている時間を短縮し、好ましくはユーザーによる差し迫った始動の誤検出に応答して予備加熱が起こる回数を減らすことが望まれている。
【0020】
これらの問題を対処または軽減する装置および方法について後で詳しく説明する。
【0021】
本体20とカトマイザー30は、図1に示すように長手方向軸LAに対して平行な方向に分離させることによって互いに取り外し可能であるが、装置10の使用時には25Aおよび25Bとして図1において略式に示す接続によって接合され、本体20とカトマイザー30間の機械的および電気的接続を供する。カトマイザー30への接続に使用される本体20の電気接続部25B 本体20をカトマイザー30から外した際に充電装置(図示せず)に接続するためのソケットとしての役割を果たす。充電装置の他端は電子タバコ10の本体20の電池を充電するためにUSBソケットに差し込むことができる。他の実行例ではケーブルを本体20の電気接続部25BとUSBソケット間の直接の接続用に設けてもよい。
【0022】
電子タバコ10には空気取り入れ用の穴(図1には示されていない)が1つ以上設けられている。これらの穴は電子タバコ10を通ってマウスピース35までの空気通路に繋がっている。ユーザーがマウスピース35を介して吸引すると、空気が電子タバコの外側に好適に配置された1つ以上の空気取り込み穴を介してこの空気通路内に引き込まれる。ヒーターをカートリッジからの液体を気化させるために始動させると、気流が蒸気を通過して蒸気と混ざり、この気流と蒸気の混合物はマウスピース35を通って出て、ユーザーに吸引される。使い捨て装置を除いて、カトマイザー30は本体20から取り外してもよく、液体の供給が終わった時点で廃棄してもよい(およびもしそうすることが望まれるなら別のカトマイザーと交換してもよい)。
【0023】
当然のことながら図1に示した電子タバコ10は例示であって、種々の他の実施例を採用することができる。例えば、一部の実施態様ではカトマイザー30は2つの分離可能な部品として提供される、即ち液体容器とマウスピースを含むカートリッジ(容器の液体を使い切ったら交換することができる)とヒーターを含む気化器(通常、交換されずに維持される)として設けられる。別の例として 充電設備は追加のまたは別の電力源、例えば車のシガレットライターに接続してもよい。
【0024】
図2は本発明の一部の実施態様による図1の電子タバコ10の本体20の略図(単純化した)である。図2は一般に電子タバコ10の長手方向軸LAを通る面の断面図として見なすことができる。なお図2では分かりやすくする目的で、本体の種々の構成要素および詳細、例えば配線およびより複雑な形状は省略されている。
【0025】
本体20はユーザーによる装置の始動に応じて電子タバコ10に給電するためのバッテリーまたは電池210を含む。本体20は、電子タバコ10を制御するためのコントロールユニット(図2に示していない)、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)またはマイクロコントローラなどのチップを含む。マイクロコントローラまたはASICは、CPUまたはマイクロプロセッサーを含む。CPUおよび他の電子部品の操作は、一般にCPU(または他の部品)上で動作するソフトウェアプログラムによって少なくとも一部が制御される。そのようなソフトウェアプログラムは、マイクロコントローラ自体内に組み込まれる、または別個の部材として供されるROMなどの不揮発性メモリに記憶させもよい。CPUはROMにアクセスして必要に応じておよび必要な場合に個々のソフトウェアプログラムをロードし、実行してもよい。マイクロコントローラは、本体10の他の装置と必要時に通信する適切な通信インターフェイス(および制御ソフトウェア)も含む。
【0026】
本体20はさらに電子タバコ10の遠い方(遠位にある)の端部を封止し、保護するキャップ225を含む。キャップ225にまたはこれに隣接して空気取り込み穴があり、これはユーザーがマウスピース35で吸引すると空気を本体20に入らせる。コントロールユニットまたはASICはバッテリー210と並んでまたはその一端に配置されてもよい。一部の実施態様ではASICはマウスピース35での吸引を検知するためのセンサユニット215に取り付けられる(またはこれとは別にセンサユニット215をASIC自体に設けてもよい)。空気取り入れ口から電子タバコ内を通り、空気流センサ215およびヒーター(気化器またはカトマイザー30内)を通過してマウスピース35に至る空気通路が設けられている。従って、ユーザーが電子タバコのマウスピースで吸引すると、CPUが空気流センサ215からの情報に基づいてその吸引を検出する。従って、当然のことながら空気流センサは、ユーザーの吸入が所定の始動閾値を越えたという信号を空気流センサから発した際に電子タバコの代替または追加の始動機構として機能する。
【0027】
従って、より具体的には空気流センサは、装置での吸引によってペイロードを気化させるためにユーザーが装置を始動させ、コントロールユニットに気化器への電力の供給を行わせるように装置で実行させてもよい。これらの実施態様ではユーザーによる空気流センサの始動によってユーザーが装置を始動しやすくなる。本体20は、本体20を通って空気入り口から空気出口(気化器へと)に至る空気経路にまたはこれに隣接して位置するセンサユニット215を含む。センサユニット215は圧力降下センサおよび温度センサ(この空気経路にまたはこれに隣接して)を含んでもよい。しかしながら、当然のことながらセンサユニット215は温度センサ無しで圧力降下センサを含んでもよく、または直接空気流(圧力降下ではなく)を測定するための空気流モニターを含んでもよい。従って、ユーザーが電子タバコのマウスピースを介して吸引すると、コントロールユニットが圧力降下からの情報に基づいてそのような吸引を検知する。吸引の検知に応じてCPUがヒーターに電力を供給し、これによりユーザーによる吸引のためにペイロードを加熱し、気化する。
【0028】
本体20のキャップ225と反対側は、本体20をカトマイザー30に接続するコネクター25Bである。コネクター25Bによって本体20とカトマイザー30の間の機械的接続および電気的接続が得られる。コネクター25Bは本体コネクター240を含む。本体コネクター240は金属製で(一部の実施態様では銀メッキされており)、カトマイザー30との電気的接続端子の一方(陽極または陰極)の役割を果たす。コネクター25Bはさらに電気接点250を含む。電気接点250はカトマイザー30との電気的接続のための第2の端子(上記第1の端子即ち、本体コネクター240と逆極性の端子)を提供する。電気接点250はコイルばね255に取り付けられている。本体20がカトマイザー30に取り付けられるとき、カトマイザーのコネクター25Aはコイルばねを軸方向即ち、長軸LAと平行な方向(それに沿う方向)に圧縮するように電気接点250を押す。ばね255には弾性があるため、この圧縮によってばね255は付勢されて延びようとし、電気接点250をコネクター25Aにしっかり押し付ける効果が得られ、本体20とカトマイザー30の間が確実に電気的に良好に接続される。本体コネクター240と電気接点250は非導電材料(プラスチックなど)で作られたトレッスル260で隔てられており、2つの電気接点の間の絶縁が良好になる。トレッスル260はコネクター25Aとコネクター25Bの相互の機械的結合を補助する形状をしている。
【0029】
上述したように手動の作動装置265の形体を表すボタン265は本体20の外方ハウジングに位置している。ボタン265はユーザーによって手動で作動させるように操作可能ななんらかの適当な機構、例えば機械的ボタンまたはスイッチ、静電的または抵抗性タッチセンサなどを使用して実行してもよい。当然のことながら手動の作動装置265は本体20の外方ハウジングではなく、カトマイザー30の外方ハウジングに配置してもよく、この場合、手動の作動装置265はコネクター25A、25Bを介してASICに取り付けられてもよい。ボタン265はキャップ225の代わりに(または加えて)本体20の端部に配置してもよい。
【0030】
図3は本発明の一部の実施態様による図1の電子タバコ10のカトマイザー30の略図である。図3は一般に電子タバコ10の長手方向軸LAの介した面の断面と見なすことができる。なお図3では、わかりやくする目的で、種々の構成要素および本体の詳細、例えば配線およびより複雑な形状は省略されている。
【0031】
カトマイザー30は、カトマイザー30の中心軸(長軸)に沿ってマウスピース35からカトマイザー30を本体20に繋ぐコネクター25Aまで延びる空気通路355を含む。液体貯蔵部360が空気通路の周囲に設けられている。空気通路355の周りにニコチンの容器360が設けられている。カトマイザー30は容器360の液体を加熱するヒーター365も含み、ユーザーによる電子タバコ10の吸引に応答して蒸気を発生させて空気通路355に流し、マウスピース35から出す。ヒーター365には配線366と367経由で電力が供給され、これらの配線の他方は、主本体20のバッテリー210の互いに逆極(陽極と陰極、またはその逆)にコネクター25Aを介して接続されている(図3では電源線366、367とコネクター25Aの間の配線の詳細は省略されている)。
【0032】
コネクター25Aは内部電極375を含む。内部電極375は銀メッキされていてもよく、あるいは何らかの他の適切な金属で作られていてもよい。カトマイザー30が本体20に接続されるとき、内部電極375は本体20の電気接点250と接触して、カトマイザーと本体の間の第1の電気経路を作る。具体的には、コネクター25Aとコネクター25Bが繋がると、内部電極375はコイルばね255を圧縮するように電気接点250を押し、内部電極375と電気接点250の間が確実に電気的に良好に接触する。
【0033】
内部電極375は絶縁リング372に囲まれている。絶縁リング372はプラスチック、ゴム、シリコン、または任意の他の適切な材料で作られてもよい。絶縁リングはカトマイザーコネクター370で囲まれている。カトマイザーコネクター370は銀メッキされていてもよく、あるいは何らかの他の適切な金属即ち、導電材料で作られていてもよい。カトマイザー30が本体20に接続されると、カトマイザーコネクター370は本体20の本体コネクター240に接触して、カトマイザーと本体の間の第2の電気経路を作る。言い換えると、内部電極375とカトマイザーコネクター370は陽極端子と陰極端子(あるいはその逆)の役割を果たし、本体内のバッテリー210の電力を供給用配線366および367経由でカトマイザー内のヒーター365に適切に供給する。
【0034】
カトマイザーコネクター370には、電子タバコの長手方向軸から遠ざかる互いに反対の方向に延びた2つのタブ380A、380Bが設けられている。これらを用いて本体コネクター240との差し込み式接続具を構成して、カトマイザー30を本体20に接続する。この差し込み式接続具により、カトマイザー30と本体20を互いに確実かつ堅牢に接続することができるため、カトマイザーと本体は互いに固定位置に保持され、ふらついたり曲がったりすることがなく、不意に外れるというような何らかの可能性は非常に低い。同時に差し込み式接続具によって、挿入、回転による簡単かつ瞬時の着脱と、(逆方向)回転と引き抜きによる分離ができる。なお、他の実施態様では本体20とカトマイザー30の間に異なる形態の接続、例えば嵌め込み式の接続あるいはネジ式の接続を用いてもよい。
【0035】
図4は本発明の一部の実施態様による本体20の端部のコネクター25Bの特定の詳細概略図である(ただしわかりやすくするため、図2に示すコネクターの内部構造の大部分、例えばトレッスル260は省略されている)。具体的には、図4は本体20の外部ハウジング201を示しており、全体に円筒管の形態をしている。この外部ハウジング201は、例えば、紙またはそれに類似するものからなる外方のカバーを有する金属からなる内方管を含んでもよい。外部ハウジング201は手動作動装置265(図4には示されていない)をユーザーが容易に手動作動装置265に触れられるように含んでもよい。
【0036】
本体コネクター240は、本体20のこの外部ハウジング201から延びている。図4に示すように本体コネクターは、本体20の外部ハウジング201の内側に嵌る大きさの中空の円柱管の形状のシャフト部分241および電子タバコの主長手方向軸(LA)から離れるように半径方向外方に向けられたリップ部分242の2つの主要部分を含む。シャフト部分が外部ハウジング201と重ならないところで本体コネクター240のシャフト部分241を囲んでいるのはカラーまたはスリーブ290であり、これも円柱管形状である。カラー290は本体コネクター240のリップ部分242と本体の外部ハウジング201の間に保持され、これらは共にカラー290に軸方向の移動を妨げる(即ち軸LAに平行な)。しかしながら、カラー290はシャフト部分241の周囲を自由に回転する(従って軸LAの周囲で)。
【0037】
上述したように キャップ225にはユーザーがマウスピース35を介して吸引した際に空気を流す空気取り込み穴が設けられている。しかしながら、一部の実施態様ではユーザーが吸引した際に装置に入る空気の大半は、図4の2本の矢印で示すようにカラー290と本体コネクター240を介して流れる。
【0038】
本明細書で既に述べたように図1~4の電子タバコは電子蒸気供給装置の例示であるが、これらに限定されない。
【0039】
本発明の一実施態様では本発明の電子タバコは1つ以上のセンサを含んでもよい。これらのセンサは、上述のボタン265の形体のプレス始動の検知、例えば上述の吸引(空気流)検知器215による吸入の検知、1つ以上のタッチセンサ(図示せず)、加速度計および/またはジャイロセンサ(図示せず)、フォトレジスター、ソーラーセルまたは他の感光センサ(図示せず)、電気皮膚センサ(図示せず)または高度計(図示せず)などの電子タバコとユーザーによる相互作用の検知に適した他のセンサまたはカメラ(図示せず)を含む多くの異なる形体を取ってもよい。
【0040】
上述したようにヒーターは、その時点での周囲温度からペイロードの気化が生じる作動温度まで加熱するある程度の時間を要する。その結果、電子タバコの作動からペイロードの蒸発までの時間を最低限に抑えるために、ペイロードの蒸発温度に近いが、それより低い温度にヒーターを予備加熱し、それによりこの蒸発温度付近から動作温度に温度を加熱するのに必要な時間を、ヒーターを室温から加熱するのに掛かる時間よりもはるかに短くすることができる。
【0041】
最初の概算で、およそ15~30℃の室温を想定することができる。なぜならたいていの人は装置を身体の周囲に保持しかつ彼ら自身がこの温度範囲内にいるからである。この室温付近での変動は、気化温度に比べて小さいとみなすことができる。
【0042】
ヒーターを必要以上に長く蒸発付近の温度に保つことも望ましくないのは明らかである。なぜならそれにより電池の電力が消耗するからである。従って、ヒーターの予備加熱を、電子タバコの作動前に、室温から蒸発付近の温度に加熱するのに必要な時間と等しくなる時刻に開始するのが理想的である。
【0043】
この装置において、加熱エレメントに印加される電流の関数としての加熱エレメントの温度の変化率を経験的に計算即ち決定し、その結果、気化温度付近に到達するのに必要な時間を、現在の測定温度から、あるいは所定の電流でヒーターがすでにどのくらい長く作動しているかに基づいて予め知り、計算し、または表を参照することができる。
【0044】
ユーザーが作動を理想的に予測すれば、電池の寿命をさらに失わずに作動に対する最短の応答が得られるであろう。早く予備加熱するほど、ヒーターを気化温度付近に保つ電池の寿命を消耗させるが、後で予備加熱するほど、気化が発生するまでの作動後の遅延が大きくなる。
【0045】
電子タバコを気化温度直下の温度に予備加熱する代わりに、あるいは予備加熱に加えて、一実施態様では、ユーザーが装置で活発にパフする前に、装置は動作可能温度に加熱またはさらに加熱され、エアロゾルを発生する。この場合、エアロゾルは、吸引/作動を予測して装置内の空洞または消耗品の内部に有効に蓄えられる。
【0046】
この場合も、ユーザーが作動を理想的に予測すれば、電池の寿命をさらに失わずに作動に対する最短の応答が得られるであろう。この場合、容認できない水準の結露が生じる前に装置が保持することができるものに対応する所定の最大量/期間の気化が起こる。
【0047】
より一般的に、ユーザーが通常受け取ることができるよりも長い期間にわたって望ましいエアロゾルを電子タバコが発生する場合、本発明の実施態様は、電子タバコが(例えば、上記の予備加熱および/または事前気化により)潜在的にはより長期間にわたってエアロゾルを生成し、要求に応じてエアロゾルが利用可能であると消費者が思えるように、ユーザーによる作動を予測してもよい。次に、電子タバコは、バッテリーの要求特性、例えばピーク電流を低減するために、より長い期間にわたって望ましいエアロゾルを意図的に発生してもよい。
【0048】
本開示の実施形態はそのような理想的予測の見積りを試みる。
【0049】
本開示のある一つの実施態様では、適切なソフトウェア命令の下で動作するコントロールユニットは、ユーザーが電子タバコを意図的に作動した瞬間にほぼ気化温度にヒーターが到達したと推定される時点で、ヒーターはペイロードの気化温度より低い温度に予備加熱されており、その結果電子タバコは非常に反応が早いように見えるが、作動が行われるまでヒーターを気化温度付近に保つのに用いられる電力量は抑えられる。
【0050】
これを行うために、コントロールユニットは、電子タバコの1つ以上のセンサから出力される信号とユーザーによる作動の瞬間の間のタイミング相関を検出するようになっている。
【0051】
従って、例えばヒーターが好ましいバッテリー負荷の下で気化温度付近に到達するのに0.3秒を必要とし、かつユーザーが習慣として、吸引する0.5秒前に電子タバコを口にくわえる場合、コントロールユニットは理想的には、ユーザーが電子タバコを口に加えた0.2秒後に予備加熱を開始すればよい。
【0052】
予測量および関連する信号特性と作動の瞬間の間のタイミングの分散の両方の観点から、信号とユーザーによる作動の瞬間の間の相関はユーザー毎に異なる可能性があり、かつ信号源によっても異なる可能性がある。
【0053】
従って、例えば電子タバコが水平方向にあることを(ユーザーが電子タバコを口にくわえる場合にこの可能性が高い)加速度計から検出する場合、電子タバコをハンドバッグ内に横置きしたままに保つユーザーによる作動とは低い相関を持つかもしれないが、電子タバコをポケット内に略垂直方向に保つユーザーによる作動とは高い相関を持つ場合がある。その結果、第2の使用事例においてのみ、加速度計からの信号が潜在的な予測能力を持つ。
【0054】
一方で、両事例において肘を曲げる(例えば、ユーザーが装置をほぼ腰の位置から口の位置に運ぶことを示す)ことと関連する装置の高さの変化の加速度計による検出および/または弓形の動きは、これらのユーザーの両方による作動と強く相関する場合がある。同様に直立または横向きの使用と関連する高さの特性変化とともに向きの変化も作動と強い相関を持つ場合がある。
【0055】
その結果、必要なら相関閾値を用いて特定の信号源を無視してもよい。信号データの実例(またはその特定の特性、例えば電子タバコが水平方向にあるか)およびユーザーによる作動の実例の間で非作動を示す一時中断と相互相関を行うことで1つの信号源に対する相関を確立することができる。また、相互相関を用いて信号データ(または特定の信号特性)およびユーザーによる作動の瞬間の相対的タイミングを明らかにしてもよい。一方、一時中断(否定的な相関を示す)は設計者の選択、例えば1秒、5秒、10秒、30秒、または60秒であってもよく、かつセンサ間で異なってもよい。
【0056】
しかしながら、一時中断時間帯内のセンサ信号特性と作動の間に閾値を超える相関が全体としてある場合であっても、相互相関が明らかにする相対的タイミングは変動しやすいので所定の信号の予測力に同じように影響を与える場合がある。
【0057】
ヒーターを予め作動するタイミングの変動性、従って信号の予測量もユーザーおよび信号源毎に異なる場合がある。例えば、あるユーザーが電子タバコを口にくわえながら話すことが多い場合、電子タバコが水平方向にあるときとユーザーが電子タバコを作動するときとの間には高い変動性があり、従って加速度計信号の予測値は限られる可能性がある。一方、別のユーザーが電子タバコを用いるときだけ電子タバコを口にくわえる場合、変動性ははるかに小さく、従って、加速度計信号の予測値はより大きくなる可能性がある。
【0058】
従って、当然のことであるが、吸引のために装置を意図的に作動する前に電子蒸気供給装置の個々のユーザーが電子蒸気供給装置との相互作用の仕方に応じて、異なる信号は異なる予測量を持つ。
【0059】
その結果、コントロールユニットは、ユーザーが電子タバコを作動させると(即ち、作動との相関の関数および/または作動の瞬間に対する信号特性のタイミングの変動性の関数として信号を自動的に順位付け、および/または選択する)、どの好ましい信号が最も良く予測するかを知り、かつ好ましい各信号の検出を用いてユーザーによる装置の作動が行われるとき、つまりユーザーが装置を作動させるとヒーターを気化前温度に予備加熱するときを予測するようになっている。
【0060】
従って、基準線相関閾値を満たす信号用の所定のセンサまたはセンサ装置に対して、最後のN番目の実例の相対的タイミング値を保存してもよい。信号特性は装置の作動に先行しており、かつそれらのタイミング値の平均および分散を計算してもよい。Nは小さくてもよいが、かなりの数の標本であってもよい。この場合も、分散の閾値を用いていくつかの信号源を無視してもよい。
【0061】
次に、最も小さいタイミングの分散を持つ複数の信号を、ユーザーが装置を作動する際の最良の指標として選択してもよい。というのは、これらの信号は信号特性と作動の瞬間の間の最も信頼できる関係を持つものとして測定されるからである。
【0062】
従って、関連するセンサからの関連する信号特性を次に検出すると、当該信号特性と装置のユーザーによる作動との間の以前に計算した相対的タイミングに応じて装置のユーザーによる作動の予測タイミングを予測することができる。典型的には、これはタイミングの平均値である。しかし、作動前の気化温度付近に到達する機会を向上させることが優先事項と考えられる場合(即ち、通常以上のバッテリーの消耗が要求される頻度を下げるため)には、タイミングは平均からより長い期間までの1つの標準偏差であってもよく、あるいは作動前に気化付近で待機する機会を減らすことが優先事項と考えられる場合には、タイミングは平均からより短い期間までの1つの標準偏差であってもよい。
【0063】
変形例
以下の変形例は、独立しているか任意に適切に組み合わされているものと考えてもよい。
【0064】
変形実施態様では、電子タバコの異なる状態を選択するのに異なるセンサを用いてもよい。
【0065】
例えば、電子タバコまたは電子タバコと対をなすスマートフォンに搭載されたカメラからの画像を分析してユーザーと電子タバコの間の相互作用を決定してもよい。物理的相互作用(例えば、ユーザーの頭、手、および/または電子タバコの相対位置からの)を用いて予備加熱処理を開始しつつ、必要に応じて、物理的相互作用を含まない(または物理的相互作用と並列な)予測的相互作用、例えばユーザーの電子タバコの一瞥、頭の向き、または口の形状を、装置を休止状態から作動すること、または予備加熱状態から気化前状態に移行すること(例えば、電子タバコの吸い口をくわえる直前であることを示す口の形状をユーザーが形作った場合)に任意に限定してもよい。
【0066】
相関閾値をセンサ信号に適用して信号と、ユーザーによる装置の後続の作動の間に十分強い相関があるかを決定することができることを本明細書ですでに示唆した。従って、別の変形実施態様では2つ以上のセンサ信号と装置の作動の間の相関を考慮してもよい。
【0067】
例えば、電子タバコが定期的に持ち上げられたり下ろされたりするハンドバッグ内に保持される上記の状況では、加速度計のみでは作動との不十分な相関を持つ場合がある。しかしながら、光センサまたは触覚センサからの信号と併せて考慮される場合、加速度は作動との非常に良好な相関を持つ場合がある。従って、相関および後続の予測のためにセンサ信号を評価するかは、同時にまたは経験的に決定してもよいタイミング時間帯内で別のセンサから別の信号が予め送信された場合の条件次第にしてもよい。
【0068】
補強と同様に、センサの組み合わせを用いて誤判定を防止または低減することができる。従って、例えば、皮膚の接触(例えば、ハンドバッグ内にない場合)の検出と併せる場合、加速度計は良好な相関を持つ場合があるので、加速と作動の間の相関をタッチセンサが動作して誤判定を防止する場合に限定することができる。
【0069】
同様に、1つのセンサ信号、他の状況データ、および装置の作動の間の相関を考慮してもよい。
【0070】
例えば、加速度計は、1日のうちの特定の時間または1週間のうちの特定の曜日、例えばユーザーが自宅または事務所にいるためにハンドバッグを定期的に移動しない(または電子タバコをハンドバッグ内に保持しない)場合に自力で作動との良好な相関を提供してもよい。従って、異なる時間および/または異なる場所で(例えば、対をなす携帯電話のGPSにより)センサ信号の異なる評価を行い、かつこれに応じて異なるユーザーの状況、例えば自宅/仕事/旅行/晩/週末などの異なる相関分析結果を作成してもよい。
【0071】
より一般的には電子タバコまたは対をなす携帯装置は必要であれば、状況とともに信号/指標の組み合わせを検索し、必要であれば所定の状況に関する1つ以上の信号および/または指標と作動の間に特に高い相関がある組み合わせを求めてもよい。光センサまたは触覚センサを含む加速度計、および特定の時間または特定の位置における加速度計などの例は、非限定的な例に過ぎない。
【0072】
当然のことであるが、ユーザーによる作動に関する最も小さい分散を持つ最も強い相関のうちの1つが吸気の開始であり、測定可能な気流が電子タバコを作動させる水準になるまで当該気流を発生してもよい。
【0073】
しかしながら、この信号は装置の実際の作動の間際になって生成される可能性がある。というのは、信号は実際にはユーザーによる作動に対する起動の一部だからである。
【0074】
その結果、この信号の特性により提供される予測は時間が掛かりすぎて、バッテリーの放電(バッテリーからの電流)を望ましい水準以上に上昇させずに室温から気化温度付近にヒーターを加熱することができない場合がある。
【0075】
従って、これに代えてコントロールユニットは、最も小さいタイミングの分散を持つ第2の信号を選択してもよい。第2の信号が示すタイミング(平均または平均よりも長い1つの標準偏差)は、好ましいバッテリー動作条件内で室温から気化温度付近にヒーターを加熱する既知の、即ち計算された時間よりも長い。
【0076】
この場合に、コントロールユニットは、必要なら第2の信号に応答してヒーターをより低い温度に加熱してもよい。このより低い温度は、検出された吸気の開始と、装置を作動するのに用いられる閾値気流の間の時間内に気化温度付近への移行を達成することができるものとして選択される。
【0077】
従って、より一般的に、かつ図5Aおよび図5Bに示すように、相関および分散の基準を満たすいくつかの信号特性があり、かつある信号特性の後に生成されるもう1つの信号特性がより小さい分散を持つ場合(即ち、作動の瞬間のより間際に生成されるようになるに従ってこれらの異なる信号特性の予測精度が改善される場合)、段階的な予備加熱方法を用いてもよい。
【0078】
図5Aは水平方向の時刻軸と任意の信号軸を持ち、予測作動時刻に対する平均タイミングtm#を持つ3つの異なる信号を示し、より先の信号はより後の信号よりも大きなタイミングの変動性Vを持つ。
【0079】
図5Bは(異なる)時刻軸と温度軸を持ち、室温から望ましい気化前温度までのヒーターの加熱勾配を示す。図5Bは第1の信号の検出に基づく加熱の推定開始地点も示す。開始地点は、第1の信号と、使用による作動からヒーターを加熱するのに掛かる時間を引き、さらに信号の変動性を反映する値Vを引いたものとの間の平均時間に基づく。その結果、第1の信号のみを検出した場合、ヒーターは加熱勾配を進んで、この信号の変動性を反映する値に対応する予測作動時刻に先行する時刻の気化前温度に到達する。
【0080】
その結果、ヒーターをこの第1の信号の変動性を反映する期間中のこの気化前温度に保つと、比較的大量の電力を用いることになる。
【0081】
従って、本変形実施態様では第2の信号を検出すると、第2の信号を受信した時刻に基づく類似の計算値と、第2の信号の変動性の値Vを用いてヒーターを加熱するタイミングを更新する。変動性はより小さいので、再開前に中間温度で加熱処理を中断してもよい。この中間温度は、中断期間中に気化前温度を保つよりも少ない電力で保つことができる。
【0082】
同様に、第3の信号を検出すると、第1の信号を受信した時刻および第3の信号の変動性の値Vに基づく類似の計算値を用いてヒーターのタイミングを再び更新する。この場合も、再開前に中間温度で加熱処理を中断してもよく、この中間温度は、中断期間中に気化前温度を保つよりも少ない電力で保つことができる。
【0083】
その結果、単に第1の信号に応答してヒーターを加熱するよりも全体の電力を節約することができる。さらに、当然のことであるが、予測作動時刻に十分近い期間に第3の信号、場合によっては第2の信号も受信してもよい。望ましい加熱勾配で室温から望ましい気化前温度にヒーターを時間内に加熱することはできず、その結果、これらの信号を通常は用いることができなかったであろう。しかしながら、望ましい加熱勾配で加熱を開始することが必要になるまでに生成される信号に基づいて中間温度にヒーターを加熱することで、より後の信号をより正確なタイミングに用いることが可能になる。この場合、現在の温度と望ましい気化前温度の間の差温を、より後の信号と予測作動時刻の間で利用可能な時間内に達成することができる。
【0084】
一方、当然のことであるが、第2または第3の信号に遭遇しなかった場合、装置を第1の信号に基づいて予備加熱してもよい。
【0085】
より一般的には本実施態様では加熱を開始する時刻を分散の計算に含めるのではなく、信号の典型的な実例に対する平均タイミングまたはいくつかの他のタイミングを用いてもよい。この場合、生成されたときの3つの信号の特定の実例のタイミングが予測作動時刻を絞り込むように機能し、必要ならタイミングを引き続いて更新するときに予測作動時刻で望ましい気化前温度に到達するように電流を変更することで加熱勾配を調整してもよい。しかしながら、この場合も当然のことであるが、作動の間際に生成された信号に応答して調整したとしても、加熱勾配は、室温から望ましい気化前温度にヒーターを加熱しようとする場合よりも中間温度から望ましい気化前温度に移行する場合の方が緩くなり、従ってバッテリーの消耗が低減される。
【0086】
従って、図6Aに示すように信号S1を受信すると、信号S1に関連する分散補正値を持つ予測作動時刻を計算し、加熱は初期設定加熱勾配で開始する。しかしながら、信号S2を受信し、信号S2に関連する分散補正値を持つ予測作動時刻を計算し直すと、望ましいタイミングの前に加熱が現れるので勾配をより低くすることができる。さらに、信号S3を受信すると、信号S3に関連する分散補正値を持つ予測作動時刻を計算し直し、望ましいタイミングの前に加熱が再び現れるので勾配をより低くすることができる。
【0087】
一方、図6Bでは信号S1を受信すると、予測作動時刻(ここでは、任意で信号S1に関連する分散補正値を持たない)を計算し、初期設定加熱勾配で加熱を開始する。しかしながら、信号S2を受信し、予測作動時刻を計算し直すと、この例の加熱は望ましいタイミングに遅れて現れるので勾配をより高くする(しかしながら、信号S2を受信した後に室温から加熱する場合ほど高くない)。同様に、信号S3を受信し、予測作動時刻を計算し直すと、この例の加熱は望ましいタイミングに遅れて現れるのでさらに勾配を高くする(しかしながら、信号S3を受信した後に室温から加熱する場合ほど高くない)。
【0088】
実際には、所定の信号源の全体的な分散が加熱のタイミングの計算に含まれるか否かにかかわらず、個々の信号事象のタイミングが変動しやすいので加熱勾配を大きくしたり小さくしたりを混ぜて行ってもよい。
【0089】
別の変形実施態様では、上記の技術に代えてあるいは加えて、(単一の事象または広く定期的な事象により生じるかにかかわらず)初期設定の一時中断を超える相関時間を持つ信号特性を用いて装置の感度時間帯を制御してもよい。従って、例えばユーザーが通常、使用の30秒前にポケットから電子タバコを取り出す場合、これは電気の正味の節約となるように予備加熱を事前に開始するには早すぎる場合があるが、必要に応じて10~50秒、20~40秒、または25~35秒を経た直後に60秒の時間帯で予備加熱評価のために信号特性の受信を準備するのに用いてもよい。具体的なタイミングは単に例示的なものである。
【0090】
しかしながら、そのような手法は信号検出の誤判定の事例を低減し、従って、全体として電力を節約する可能性が高い。この手法は加速度計および光検出信号の例と同様に、ある信号特性の存在下で(または特定の時刻の後に)別の異なる信号特性の相関のみを考慮するという上記の手法にも関連しているのは明らかである。
【0091】
上記の技術は、どのセンサから送信されるどの信号特性を用いて、ユーザーが電子タバコを作動させる時刻、従って予備加熱処理の時刻を予測することができるかを判断する際に相関、かつ必要なら分散の評価を参照する。
【0092】
しかしながら、原則的には一連の例示的な信号出力値に基づいてタイミングの予測出力値を提供することができるいずれの統計解析技術も用いてもよい。
【0093】
従って例えば、ベイズ解析を用いて所定の信号または一連の信号の最も可能性が高い作動時刻を予測してもよく、同様に、人工的ニューラルネットワーク、例えばいわゆる深層学習ネットワーク(または任意の適切なネットワーク構成)を用いてもよい。
【0094】
ただし、そのような解析およびネットワークの訓練時間は通常は非常に長く掛かり、数千の事例を学習することを必要とする。従って、ユーザーの訓練集団内で最も一般的な方法で信号特性に応答する包括的な解析/ネットワークを提供してもよく、かつこの解析/ネットワークを変更してユーザーによる利用に公開することで個人向けにしてもよい。
【0095】
必要なら、集成された訓練データ(例えば、装置の作動を生じさせた過去の100種類の相互作用)をこのように構築し、かつこれらを複数回用いて装置が動いていないときに解析/ネットワークを訓練し、その結果、訓練がより早く行われるようにしてもよい。
【0096】
そのような解析/ネットワークまたは上述の相関/分散技術を用いて、1日のうちの別の時刻または1週間のうちの別の曜日に複数組の統計を生成してもよい。従って例えば、夜および/または週末の使用パターンが平日の使用パターンと異なっていてもよいので、別々のモデルを使用して予測精度を改善してもよい。
【0097】
別の変形実施態様では、上記の技術に代えてあるいは加えて、必要ならユーザーによる後続の作動時にユーザーに提供されるエアロゾルの性質に関連するフィードバックデータを受信してもよく、その次に、ユーザーによる作動の予測瞬間のこれからの推定を当該フィードバックデータの解析に基づいて調整してもよい。従って、フィードバックを用いて予備加熱のタイミングおよび/または温度を調整してもよい。このフィードバックをユーザーおよび/または装置内のセンサから送信してもよい。
【0098】
例えば、ユーザーのフィードバックを取得して推定処理を格付けすることができる。従って、ユーザーが装置で吸引し、かつ十分なエアロゾル(体積で)を受け取っていない場合、これによりユーザーによる作動の時刻を実際よりも後として推定していることを示してもよい。ユーザーのフィードバックを、推定プロセッサと通信するように動作可能な携帯電話のコンパニオンアプリケーション、または装置内入力手段、例えば、ボタン、電子タバコ自体のスライダーまたはダイアルを介して提供してもよい。従って、推定プロセッサはフィードバックに基づいて次のパフに対する推定処理を更新することができる(例えば、この場合に直ぐに、および/またはより高い電力で加熱を開始し、より多くのエアロゾルを発生することができる)。これにより推定処理の較正に有効に役立つ。ユーザーは必要な場合にのみ、このように装置を較正してもよい。従って、これはパフが満足できるものと思われない場合にユーザーが用いるモードであってもよい。
【0099】
一方、これに代えてあるいは加えて、フィードバックを電子タバコ内の1つ以上のセンサで提供してもよい。例えば、気流センサが吸引を開始した時刻を検出することができ、かつさらなるセンサがその近くを通り過ぎて流れる任意のエアロゾルの密度または他の性質を評価してもよい。従って例えば、吸い口壁部の両側に標準光源や光検出器等の光学センサを用いて、吸引が検出された瞬間からエアロゾル密度を推定し、ユーザーへのエアロゾル供給の迅速さと品質に関するデータを提供してもよい。これに代えてあるいは加えて、他のセンサを気流経路内の適切な地点に用いて、所定の規格に合わせてエアロゾルが生成されているかを評価してもよい。従って例えば、熱センサをヒーターの直ぐ下流に配置し、気流が気化を生じさせるのに十分なほどに熱いか否かを検出してもよい。エアロゾル密度が初期に不十分な場合、または加熱で現在の周囲温度を十分な水準に上げることができなかった場合、これらのセンサからのデータを推定プロセッサにフィードバックし、これに応じて推定モデルを更新することができる。
【0100】
当然のことであるが、上記の技術を適切なソフトウェア命令の下で、電子タバコのプロセッサで実行することができる。この場合、電子蒸気供給装置を、電子タバコ単体であるものと理解することができる。
【0101】
しかしながら、図7に示すように、必要ならばそのような技術の少なくとも一部を、例えばBluetooth(登録商標)接続201を経て電子タバコ10と通信する携帯電話200または類似の装置で実行してもよい。この場合、電子蒸気供給装置は、電子タバコ、および協力して動作する携帯電話または類似の装置の両方を含むものとして理解することができる。
【0102】
従って、この構成で、電子タバコのコントロールユニット(710)は、例えば本明細書ですでに考察したASICの一部として、Bluetooth(登録商標)送受信機712を経て携帯電話200と通信してもよい。携帯電話は、データを携帯電話のプロセッサ720に中継する、対応するBluetooth(登録商標)送受信機722を含んでもよい。プロセッサ自体は、アプリケーション724等からの適切なソフトウェア命令の下で本明細書に記載する技術を実装する。
【0103】
この場合、信号特性履歴データの保持(例えば、センサ毎のN個の信号特性の実例の保存)、相関、平均および分散、または標準偏差の計算を、アプリケーションからの適切なソフトウェア命令の下で携帯電話により実行してもよい。設計者の選好に応じて、電子タバコからのデータを、ユーザーによる各作動の後に携帯電話に送信し、または電子タバコで収集し、かつ定期的に(例えば、時間毎または日毎に)送信してもよい。
【0104】
必要なら、携帯電話は、電子タバコから携帯電話に送信されたセンサ信号に応答して加熱エレメントの予備加熱を制御する信号も送信してもよいが、これにより応答に容認できない遅延を生じさせ、かつ/または送受信により電子タバコ内のバッテリーの望ましくない消耗を強いる場合がある。従って、携帯電話はこれに代えて、データを電子タバコに送信し、どの信号を単独または組み合わせて用いることができるか(即ち、どの信号特性が単独または他の信号特性と協力して(上記のように、例えばその信号特性に関して、またはその信号特性の分散を考慮して)予測した作動までの時間とともに相関閾値を満たすか)を示すことができる。
【0105】
次に、電子タバコが水平になった、ユーザーの唇に接触した、または装置の両側全体で皮膚抵抗を検出した等の信号特性、あるいは任意の他のセンサで出力され、装置の使用を準備する際にユーザーと装置の相互作用中に値が変化する信号特性の生成に応答して、電子タバコは、この情報を用いてヒーターを予備加熱する時刻を計算することができる。
【0106】
従って、当然のことであるが、上記の方法および技術をソフトウェア命令により、または専用ハードウェアを含むか置き換えることにより使用できるように適切に適合された従来のハードウェア(例えば、上記の電子タバコ、かつ必要なら携帯電話)で実行してもよい。
【0107】
従って、従来の同等の装置の既存の部品への必要な適合は、非一時的機械可読媒体、例えばフロッピーディスク、光ディスク、ハードディスク、PROM、RAM、フラッシュメモリ、またはこれらもしくは他の記憶媒体の任意の組み合わせに保存されるプロセッサ実装可能な命令を含むコンピュータプログラム製品の形態で実装、あるいは従来の同等の装置を適合する際に用いるのに適した特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ、または他の構成可能な回路としてハードウェア内で実現されてもよい。それとは別に、そのようなコンピュータプログラムをネットワーク、例えばイーサネット、無線ネットワーク、インターネット、またはこれらまたは他のネットワークの組み合わせ上でデータ信号を介して送信してもよい。
【0108】
上記の実施態様が、ユーザーによるパフの前にヒーターを気化温度付近に予備加熱する場合に供給されるエネルギーを低減するように機能するのは有利である。従って、これにより所定のバッテリー容量でパフの回数を増やし、または装置のバッテリー容量を低減する機会を提示してもよい。気化前加熱段階の期間を短くしても、装置の内壁表面の望ましくない結露を減らし、所定の量のペイロードでパフの回数を改善し、かつヒーターを作動させたが、装置内に気流がない場合に発生する可能性があるカルボニルの集結を緩和する一助となってもよい。
【0109】
このように、本発明の要約実施態様において、電子蒸気供給装置(例えば、独立し、または携帯電話100と協力する電子タバコ10)を記載している。この電子蒸気供給装置は、前記電子蒸気供給装置のユーザーが吸引するペイロードを、電力が供給されてから有限の時間をかけて気化させる気化器(ヒーターまたは代替のシステム、例えば、超音波気化器であるかを問わない)と、ユーザーによる作動(例えば、作動ボタン265を押すこと、またはセンサ215により気流閾値または圧力低下閾値を満たすのに十分であるものとして検出された吸引による)に応答して前記液体ペイロードを気化させる前記気化器に電力を供給する電力供給装置(例えば、バッテリーもしくは潜在的には燃料バッテリー、コンデンサ、または他の電源)と、前記ユーザーの前記電子蒸気供給装置との相互作用に応答してそれぞれの信号を出力するように動作可能な1つ以上のセンサ(例えば本明細書で上述したもの)と、(例えば、適切なソフトウェア命令により)前記それぞれの信号のうちの1つ以上の解析に基づいてユーザーによる作動の予測瞬間を推定するように構成される推定プロセッサ(例えば、電子タバココントローラ710および/または携帯電話プロセッサ720)と、(例えば、作動の準備で前記ヒーターの温度を気化温度付近に上昇させるために計算された(または予め計算されて取得された)時間により)推定される前記ユーザーの作動の予測瞬間に先行する時刻に(例えば適切なソフトウェア命令により)前記気化器に電力を供給させるように構成される制御プロセッサ(例えば、電子タバココントローラ710)とを含む。
【0110】
本要約実施態様の一例において、前記推定プロセッサは、1つ以上のセンサからの信号の相関を計算し、それぞれの相関閾値を満たさない、センサからの信号を無視する。
【0111】
本要約実施態様の一例において前記推定プロセッサは、ユーザーによる後続の作動に関する、1つ以上のセンサからの信号のタイミングの変動性を計算し、1つ以上のそれぞれの信号の検出に対して、ユーザーによる作動のそれぞれの予測タイミングを生成する。
- この場合に、前記推定プロセッサは、好ましい信号を含む2つ以上の信号が検出された場合、最も小さい変動性を持つ信号を、前記予測タイミングを選択する好ましい信号として選択する。
【0112】
本要約実施態様の一例において、前記推定プロセッサは、2つ以上の信号が連続的に検出された場合、一連の信号を、前記予測タイミングを選択する信号として選択し、それにより前記予測タイミングを更新する。
【0113】
本要約実施態様の一例において、前記推定プロセッサは、2つ以上の信号が連続的に検出された場合、より小さい変動性を持つ一連の信号を、前記予測タイミングを選択する信号として選択し、それにより前記予測タイミングを更新する。
【0114】
本要約実施態様の一例において、必要に応じて、前記気化器は、ヒーターであり、前記推定プロセッサは、前記予測タイミングに応答して予備加熱開始時刻を計算する。
【0115】
本要約実施態様の一例において、必要に応じて、前記気化器はヒーターであり、前記推定プロセッサは、前記予測タイミングおよび前記気化器の現在の温度に応答して加熱勾配を計算する。
【0116】
本要約実施態様の一例において、前記電子蒸気供給装置は、前記制御プロセッサを含む電子タバコ、および前記推定プロセッサを含む携帯電話を含む。
【0117】
同様に、図8に示すように、本発明の要約実施態様において、蒸気供給の方法は、
- 第1の工程s810で、ユーザーが吸引するペイロードを、電力が供給されてからの有限の時間をかけて気化させる気化器を提供すること、
- 第2の工程s820で、ユーザーによる作動に応答して前記ペイロードを気化させる前記気化器に電力を供給する電力供給装置を提供すること、
- 第3の工程s830で、前記ユーザーの前記電子蒸気供給装置との相互作用に応答してそれぞれの信号を出力するように動作可能な1つ以上のセンサを提供すること、
- 第4の工程s840で、前記それぞれの信号のうちの1つ以上の解析に基づいてユーザーによる作動の予測瞬間を推定すること、および
- 第5の工程s850で、推定される前記ユーザーの作動の予測瞬間に先行する時刻に前記気化器に電力を供給させること、を含む。
【0118】
本明細書に記載され、かつ特許請求の範囲において請求される装置の様々な実施態様の動作に対応する上記の方法における変形例が本発明の範囲内であるとみなされることが当業者には明らかである。この変形例は、
- 1つ以上のセンサからの信号の相関を計算し、それぞれの相関閾値を満たさない、センサからの信号を無視する工程を含む推定工程と、
- ユーザーによる後続の作動に関する、1つ以上のセンサからの信号のタイミングの変動性を計算し、1つ以上のそれぞれの信号の検出に対して、ユーザーによる作動のそれぞれの予測タイミングを生成する工程を含む推定工程と、
- 好ましい信号を含む2つ以上の信号が検出された場合、最も小さい変動性を持つ信号を、前記予測タイミングを選択する好ましい信号として選択する工程を含む推定工程と、
- 2つ以上の信号が連続的に検出された場合、一連の信号を、前記予測タイミングを選択する信号として選択し、それにより前記予測タイミングを更新する工程を含む推定工程、またはより具体的には、2つ以上の信号が連続的に検出された場合、より小さい変動性を持つ一連の信号を、前記予測タイミングを選択する信号として選択し、それにより前記予測タイミングを更新する工程を含む推定工程と、
- 前記気化器はヒーターであり、前記予測タイミングに応答して予備加熱開始時刻を計算する工程、および/または前記予測タイミングおよび前記気化器の現在の温度に応答して加熱勾配を計算する工程を含む推定工程とを含むが、これらに限定されない。
【0119】
上記の実施態様は、いくつかの点でいくつかの特定の例示的なエアロゾル供給システムに焦点を当てたが、当然ながら同じ原理が他の技術を用いるエアロゾル供給システムにも適用できる。即ち、エアロゾル供給システムの様々な実施態様が機能する具体的な方法が本明細書に記載される実例の基礎となる原理に直接関連するものではない。
【0120】
種々の事項に取り組み本技術を進歩させるため、本発明は種々の実施態様を例示するが、特許請求の範囲に記載の発明を実践することができる。本発明の利点および特徴は実施態様の単なる代表例であって包括的なものではなく、および/または排他的なものでもない。これらは特許請求された本発明の理解を助け、教示するためだけに提供されている。当然だが、本発明の利点、実施態様、実施例、機能、特徴、構造、および/または他の側面は、本発明を特許請求の範囲で規定されたようにまたは特許請求の範囲の均等物に制限するものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく他の実施態様を利用し改良を加えてもよいと考えるべきである。種々の実施態様は、開示された要素、構成要素、特徴、部品、工程、手段、本明細書に具体的に説明された以外のものを適切に備えても、それらのみで構成されても、実質的にそれらのみで構成されても、それらを種々に組み合わせてもよい。本発明には、現在特許請求されてはいないが将来請求される可能性がある他の発明も含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8