(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】パーキングロックユニット、およびこのようなパーキングロックユニットを備えた駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 63/34 20060101AFI20220829BHJP
B60K 17/12 20060101ALI20220829BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20220829BHJP
B60L 15/00 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
F16H63/34
B60K17/12
B60T1/06 G
B60L15/00 Z
(21)【出願番号】P 2020559447
(86)(22)【出願日】2018-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2018060816
(87)【国際公開番号】W WO2019206422
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ザシャ ミーバッハ
(72)【発明者】
【氏名】マーク シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ズィーモン ブロイヒャー
(72)【発明者】
【氏名】エルヴィン ツィラギ
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-121550(JP,A)
【文献】特開2013-061008(JP,A)
【文献】特開2013-241953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
B60K 17/12
B60T 1/06
B60L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に電気モータ(18)を備えた駆動装置(17)のためのパーキングロックユニット(2)であって、
パーキングロックケーシング(3)と、
少なくとも1つの軸受(24,24’,24’’,25,25’,25’’)によって回転軸線(X1)を中心として回転可能に支持されている、前記駆動装置(17)の部分(22)に相対回動不能に結合されていて、ウェブ区分(9)を介して互いに結合されている結合区分(10)および係止区分(8)を有しているパーキングロックギヤ(5)と、
前記パーキングロックケーシング(3)内に支持されていて、前記パーキングロックギヤ(5)の長手方向軸線を中心とした前記パーキングロックギヤ(5)の回転運動をロックおよび解放することができるロックエレメント(6)と、
前記ロックエレメント(6)を、前記パーキングロックギヤ(5)をロックする位置と、前記パーキングロックギヤ(5)を解放する位置とに可逆的に移行させることができる制御可能なロックアクチュエータ(7)と、
を含む、パーキングロックユニット(2)において、
前記パーキングロックギヤ(5)は、前記係止区分(8)が前記結合区分(10)に対して軸方向にずらされて形成されて
おり、
前記ウェブ区分(9)の壁の厚さ(B2)は、少なくとも部分領域において、前記部分領域に生じる応力が少なくともほぼ一定となるように、半径方向外側から半径方向内側に向かって増大していることを特徴とする、パーキングロックユニット(2)。
【請求項2】
特に電気モータ(18)を備えた駆動装置(17)のためのパーキングロックユニット(2)であって、
パーキングロックケーシング(3)と、
少なくとも1つの軸受(24,24’,24’’,25,25’,25’’)によって回転軸線(X1)を中心として回転可能に支持されている、前記駆動装置(17)の部分(22)に相対回動不能に結合されていて、ウェブ区分(9)を介して互いに結合されている結合区分(10)および係止区分(8)を有しているパーキングロックギヤ(5)と、
前記パーキングロックケーシング(3)内に支持されていて、前記パーキングロックギヤ(5)の長手方向軸線を中心とした前記パーキングロックギヤ(5)の回転運動をロックおよび解放することができるロックエレメント(6)と、
前記ロックエレメント(6)を、前記パーキングロックギヤ(5)をロックする位置と、前記パーキングロックギヤ(5)を解放する位置とに可逆的に移行させることができる制御可能なロックアクチュエータ(7)と、
を含む、パーキングロックユニット(2)において、
前記パーキングロックギヤ(5)は、前記係止区分(8)が前記結合区分(10)に対して軸方向にずらされて形成されており、
前記パーキングロックギヤ(5)は、前記駆動装置(17)の前記回転可能に支持された部分(22)の突出した自由な軸端部(23)に配置されている、ことを特徴とする、パーキングロックユニット(2)。
【請求項3】
前記パーキングロックギヤ(5)の前記係止区分(8)の中央平面(E1)は、前記パーキングロックギヤ(5)の前記結合区分(10)の中央平面(E2)に対して、前記ウェブ区分の最も小さい軸方向の厚さ(B2)よりも大きい第1の間隔(A1)を有している、請求項1
または2記載のパーキングロックユニット
(2)。
【請求項4】
前記パーキングロックギヤ(5)の前記係止区分(8)の前記中央平面(E1)は、軸方向において、前記パーキングロックギヤ(5)の前記結合区分(10)の前記中央平面(E2)と、前記パーキングロックギヤに隣接している前記軸受(24,24’,24’’,25,25’,25’’)の中央平面(E3)との間に配置されて
おり、
前記パーキングロックギヤ(5)の前記結合区分(10)の前記中央平面(E2)と、前記パーキングロックギヤに隣接している前記軸受(24,24’,24’’,25,25’,25’’)の中央平面(E3)との間の第2の間隔(A2)に対する、前記第1の間隔(A1)の比は、0.25よりも大きく、かつ、1よりも小さい、請求項
3記載のパーキングロックユニット
(2)。
【請求項5】
前記第1の間隔(A1)の、前記パーキングロックギヤ(5)の外径(Da)に対する比は、0.08よりも大きく
、かつ、0.5よりも小さく、
前記第1の間隔(A1)の、前記外径(Da)における前記パーキングロックギヤ(5)の幅(B1)に対する比は、0.85よりも大きく、かつ、3よりも小さい、請求項
3または4記載のパーキングロックユニット
(2)。
【請求項6】
前記外径(Da)における前記パーキングロックギヤ(5)の前記幅(B1)の、内径(Di)における前記パーキングロックギヤ(5)の幅(B3)に対する比は、1.0よりも小さく
、かつ、0.7よりも大き
い、請求項
5記載のパーキングロックユニット
(2)。
【請求項7】
前記ウェブ区分(9)は、少なくとも部分領域において、前記係止区分(8)および前記結合区分(10)よりも薄い壁厚を有している、請求項
1から6までのいずれか1項記載のパーキングロックユニット
(2)。
【請求項8】
自動車の電気モータ駆動のための駆動装置であって、
請求項1から
7までのいずれか1項記載のパーキングロックユニット(2)と、
ケーシングアッセンブリ(15)と、
前記ケーシングアッセンブリ(15)に接続されていて、回転駆動可能なモータ軸(16)を有している電気モータ(18)と、
少なくとも1つの伝動機構軸(22)と、
出力分岐ユニット(20)と、
を含み、
前記モータ軸(16)、前記少なくとも1つの伝動機構軸(22)、および前記出力分岐ユニット(20)は、それぞれ回転可能に、前記ケーシングアッセンブリ(15)に支持されていて、運動伝達およびトルク伝達のために、少なくとも1つの伝動機構段を介して互いに接続されており、
パーキングロックギヤ(5)が相対回動不能に結合されている、回転可能に支持された部分(22)は、前記モータ軸(16)、前記伝動機構軸(22)、および出力分岐ユニット(20)の部分のうちの1つである、駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に電気モータを備えた自動車の駆動装置のためのパーキングロックユニット、ならびにこのようなパーキングロックユニットを備えた駆動装置に関する。
【0002】
駆動装置には、パーキングロックユニットを設けることができ、その主たる課題は、駐車状態にある車両を確実に停止させておくことである。特に、機械的に作動するパーキングブレーキの代わりに、電気的に作動するパーキングブレーキを使用することにより、パーキングロックはますます頻繁に、車両の意図しない動きに対する主要な保護手段となっている。この場合、ロック作用は通常、形状接続によりパーキングロックギヤに係止するロックエレメントによって達成される。この場合、パーキングロックユニットは、5km/時の車両速度を超えた状態での望ましくない係止状態を排除するように、機械的にまたは電気機械的に設計されている。したがって、パーキングロックユニットは、5km/時未満で係止することができる。結果として生じるトルク衝撃により、一方ではパーキングロックとタイヤの間の動力伝達経路にある、他方ではパーキングロックと駆動ユニットとの間の動力伝達経路にある機械エレメントには負荷がかけられるので、それに応じた寸法設計が必要である。
【0003】
国際公開第2018/001476号により、電気駆動装置用のパーキングロックユニットが公知である。このパーキングロックユニットは、パーキングロックケーシングと、このパーキングロックケーシング内に回転可能に支持されていて、電気駆動装置の駆動軸に相対回動不能に接続するための接続成形部を有するスリーブ状の軸取付け部と、を含む。ロックギヤが、軸取付け部に相対回動不能に接続されていて、まっすぐなギヤボディを有している。パーキングロックケーシング内で可動に支持されているロックエレメントは、制御可能なアクチュエータによって、ロックギヤをロックする閉鎖位置と、ロックギヤを解放するための解放位置とに移行可能である。
【0004】
本発明の根底を成す課題は、その構造により、パーキングロックの係止の際の、駆動装置の機械エレメントへの負荷が減じられる、駆動装置のためのパーキングロックユニットを提案することである。課題はさらに、動力伝達経路の確実な遮断を可能にし、パーキングロックの係止の際の運動エネルギを吸収することができ、所要構成スペースが僅かである、このようなパーキングロックユニットを備えた相応の駆動装置を提案することである。
【0005】
この課題を解決するために、特に電気モータを備えた駆動装置のためのパーキングロックユニットあって、パーキングロックケーシングと、少なくとも1つの軸受によって回転軸線を中心として回転可能に支持されている、駆動装置の部分に相対回動不能に結合されていて、ウェブ区分を介して互いに結合される結合区分および係止区分を有しているパーキングロックギヤとを含み、パーキングロックケーシング内に支持されていて、パーキングロックギヤの長手方向軸線を中心としたパーキングロックギヤの回転運動をロックおよび解放することができるロックエレメントと、ロックエレメントを、パーキングロックギヤをロックする位置と、パーキングロックギヤを解放する位置とに可逆的に移行させることができる制御可能なロックアクチュエータと、を有していて、パーキングロックギヤは、係止区分が結合区分に対して軸方向にずらされて形成されているパーキングロックユニットが提案される。
【0006】
パーキングロックの係止により、一方ではパーキングロックギヤとタイヤとの間の動力伝達経路の、他方ではパーキングロックギヤと駆動ユニットとの間の動力伝達経路の回転する部分の運動エネルギが衝撃エネルギに変換される。衝突により、パーキングロックギヤには、半径方向の力成分と、ねじりモーメントをさらに誘導する接線方向の力成分とが作用する。結合区分に対して係止区分が軸方向でずらされていることにより、提案されたパーキングロックユニットは、一方ではパーキングロックとタイヤとの間の動力伝達経路の、他方ではパーキングロックと駆動ユニットとの間の動力伝達経路のねじれ長さが増大されて、動力伝達経路のねじり剛性が小さくなるという利点を有している。さらに、パーキングロックギヤの係止区分は半径方向に変形することができ、これにより変形エネルギを弾性的にパーキングロックギヤに蓄積することができる。上述した両作用により、パーキングロックの係止の際に衝突エネルギのより多くの割合を弾性的に、ひずみエネルギもしくは変形エネルギに変換することができ、駆動装置の機械エレメントへの負荷が減じられる。したがって1つの可能な実施形態では、パーキングロックギヤの係止区分の中央平面は、パーキングロックギヤの結合区分の中央平面に対して、ウェブ区分の最も小さい軸方向の厚さよりも大きい第1の間隔を有していてよい。
【0007】
構成部品の中央平面もしくは構成部品の区分の中央平面としてはそれぞれ、各構成部品の回転軸線に対して垂直に延び、かつ各構成部品のもしくは構成部品の区分のその回転軸線に沿った延在部分の真ん中に配置されている仮想平面であると理解されたい。
【0008】
パーキングロックギヤの係止区分は、半径方向外側に配置されたほぼリング状の部分であって、周囲に沿って均一に分配された複数の係止凹部を含んでいる。係止凹部には、ロックエレメントが係合して、パーキングロックギヤの回転自由度を拘束することができる。凹部はロックエレメントと共に、臨界的な回転速度を超えると、ロックエレメントが退避され、したがってパーキングロックの係止が機械的に阻止されるように(ラチェッティング)、構成されていてよい。係止区分の幅B1は、パーキングロックの係止の際に生じる力と圧力とを確実に伝達することができるように選択されている。
【0009】
パーキングロックギヤの結合区分は、パーキングロックギヤの半径方向内側に位置する部分を形成するほぼリング状の部分である。結合区分の半縦断面図の断面はT字型に形成されていてよい。この場合、結合区分は、パーキングロックギヤの回転軸線を中心として延在するほぼスリーブ状の部分と、この部分から半径方向外側に向かって突出する部分とを有している。結合区分のスリーブ状の部分は、パーキングロックギヤを、駆動装置の回転可能に支持された部分に結合するために機能する。このために内周面の領域は、プレス嵌めのために円筒状に形成されてていよく、または結合構造は、例えばスプライン歯列を有していてもよい。相対回動不能な結合を可能にする軸・ハブ接続としての各種別の構成も考えられる。スリーブ状の部分の幅B3は、駆動装置の回転可能に支持されたエレメントと接触して、トルクを伝えることができる領域によって規定される。この場合、幅B3は、生じたトルクを軸・ハブ接続によって確実に伝達することができるように選択されている。1つの可能な実施形態では、外径におけるパーキングロックギヤの幅B1の、内径におけるパーキングロックギヤの幅B3に対する比は、1.0よりも小さく、特に0.85よりも小さく、特に0.8よりも小さく、かつ/または0.7よりも大きく、特に0.75よりも大きくてよい。スリーブ状の部分には、軸方向で位置決め段部が続いていてよく、この位置決め段部は、パーキングロックギヤが相対回動不能に結合されている構成部品に対して、パーキングロックギヤが軸方向で位置決めされ、支持され得るように構成されている。
【0010】
結合区分は、ウェブ区分から、結合区分のスリーブ状の部分への力およびトルクの所定の導入のために機能する半径方向外側に突出する部分を含んでいてよい。この半径方向外側に突出する部分は、スリーブ状の部分に対して中央に配置されていてよく、これにより軸・ハブ接続における均一な、特に対称の負荷分配が保証されている。結合区分への移行部は、ギヤボディが、まっすぐな形状から屈曲された形状へと移行する個所に配置されていてよい。半径方向外側に突出する部分が省かれ、ウェブ区分が直接、結合区分のスリーブ状の部分に結合されることも考えられる。
【0011】
係止区分の中央平面と結合区分の中央平面とは、パーキングロックギヤの長手方向軸線に沿って間隔を置いて位置しているので、パーキングロックギヤはオフセットされた形状を有している。1つの可能な実施形態では、第1の間隔A1の、パーキングロックギヤの外径Daに対する比は、0.08よりも大きく、特に0.10よりも大きく、かつ/または0.5よりも小さく、特に0.4よりも小さくてよい。別の実施形態では、第1の間隔A1の、外径におけるパーキングロックギヤの幅B1に対する比は、0.85よりも大きく、特に0.9よりも大きく、特に0.95よりも大きく、かつ/または3よりも小さく、特に2.7よりも小さくてよい。
【0012】
パーキングロックギヤの上述した両区分の間には、ウェブ区分が延在しており、ウェブ区分の形状は、まっすぐなギヤボディと比較して、パーキングロックギヤの半径方向の剛性とねじり剛性とが減じられるように選択されている。したがって、ウェブ区分は、ばね区分と呼ぶこともできる。1つの可能な構成では、このためにウェブ区分は、少なくとも部分領域で、係止区分および結合区分よりも薄い壁を有していてよい。別の実施形態ではこのために、ウェブ区分の壁の幅若しくは厚さは、少なくとも部分領域で、この部分領域で生じる応力が少なくともほぼ一定となるように、半径方向外側から半径方向内側に向かって増大していてよい。これにより、僅かなねじり剛性もしくは曲げ剛性のもと効果的な材料変形が得られる。少なくともほぼ一定の応力とは、一定の設計公称応力から±5%のずれを含む応力でもあると理解されたい。
【0013】
1つの可能な実施形態では、パーキングロックギヤは、駆動装置の回転可能に支持された部分の突出した自由な軸端部に配置されていてよい。パーキングロックの係止の際の半径方向の力成分により、自由な軸端部は、曲げビームのように、力作用方向に曲がることができる。これにより、自由な軸端部で付加的な変形エネルギを弾性的に蓄積することができ、したがって周辺に位置する機械エレメントへの負荷を減じることができる。
【0014】
別の実施形態では、パーキングロックギヤの係止区分の中央平面は、軸方向で、パーキングロックギヤの結合区分の中央平面と、パーキングロックギヤに隣接している軸受の中央平面との間に配置されていてよい。隣接している軸受としてはそれぞれ、駆動装置の回転可能に支持された部分上にパーキングロックギヤと共に配置されていて、パーキングロックギヤに対して最小の間隔を有している軸受であると理解されたい。これにより、パーキングロックユニットのコンパクトな軸方向の構造寸法を達成することができる。さらにこれにより、半径方向のロック力の力作用平面が、それぞれ隣接している軸受の方向にずらされ、結果として生じる軸受の負荷は減じられる。特にこれにより係止区分を、隣接している軸受の上方に配置することができる。このために1つの実施形態では、第1の間隔A1の、パーキングロックギヤの結合区分の中央平面と、パーキングロックギヤに隣接している軸受の中央平面との間の第2の間隔A2に対する比は、0.25よりも大きく、特に0.35よりも大きく、かつ/または1よりも小さくてよい。
【0015】
パーキングロックケーシングには、ロックエレメントとロックアクチュエータとが収容されている。さらに、パーキングロックケーシングは、パーキングロックギヤを収容することができるスペースを形成している。
【0016】
本発明のさらなる構成は、自動車の電気モータ駆動のための駆動装置であって、上述したパーキングロックユニットと、ケーシングアッセンブリと、ケーシングアッセンブリに接続されていて、回転駆動可能なモータ軸を有している電気モータと、少なくとも1つの伝動機構軸と、出力分岐ユニットと、を含み、モータ軸、少なくとも1つの伝動機構軸、および出力分岐ユニットは、それぞれ回転可能に、ケーシングアッセンブリに支持されていて、運動伝達およびトルク伝達のために、少なくとも1つの伝動機構段を介して互いに接続されており、パーキングロックギヤが相対回動不能に接続されている、回転可能に支持された部分は、モータ軸、伝動機構軸、および出力分岐ユニットの部分のうちの1つである、駆動装置に関する。
【0017】
本発明によるパーキングロックユニットを備えた駆動装置は、上記にパーキングロックユニットとの関連で説明したのと同様の利点を提供し、これについては省略する。
【0018】
次に、図面につき好適な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1a】本発明によるパーキングロックユニットを示す縦断面図である。
【
図1b】
図1aのパーキングロックユニットの一部を示す横断面図である。
【
図2】
図1のパーキングロックユニットのパーキングロックギヤを示す斜視図である。
【
図3】
図1に示した本発明によるパーキングロックユニットを備えた電気駆動装置を示す斜視図である。
【
図4】
図3の駆動装置をIV-IV線に沿って示す縦断面図である。
【0020】
次にまとめて説明する
図1および
図2には、自動車の駆動装置のための本発明によるパーキングロックユニット2が示されている。パーキングロックは一般的に、自動車の意図せぬ発動つまり移動を阻止するために、駆動装置の動力伝達経路を可逆的にロックするために用いられる。
【0021】
パーキングロックユニット2は、パーキングロックケーシング3と、駆動ユニットの回転可能に支持された部分22に相対回動不能に結合されているパーキングロックギヤ5と、パーキングロックケーシング3内に可動に支持されているロックエレメント6とを含む。ロックエレメント6は、制御可能なアクチュエータ7によって、ロック位置から解放位置へと可逆的に移行され得る。回転可能に支持された部分22は、この場合、軸として構成されているが、これに限定されるものではない。
【0022】
ロックギヤ5は、半径方向外側に位置する係止区分8を有しており、この係止区分の、外径Daに沿って位置する最も外側の周面には、均一に分配された複数の係止凹部13が配置されており、この係止凹部には、ロックエレメント6のロック歯14が形状接続的に係合することができる。ロックエレメント6は、ロックギヤ5と形状接続的に結合しているロック位置で示されているので、固有の長手方向軸線を中心としたロックギヤ5の回転運動は阻止される。ロック位置を起点としてアクチュエータ7はロックエレメント6を可逆的に解放位置へと移行させることができ、解放位置ではロックエレメントはロックギヤ5の作用領域外に位置するので、ロックギヤ5に相対回動不能に結合された軸22は自由に回転可能である。係止区分8は、パーキングロックの係止により生じる力と圧力とに、パーキングロックギヤ5が確実に耐えることができるように寸法設計されている幅B1を有している。
【0023】
係止区分8には、半径方向内側でウェブ区分9が続いていて、このウェブ区分9は、この実施形態では、パーキングロックギヤ5の回転軸線に対してほぼ45°の設置角度αで傾けられていて、ウェブ区分9の中央の幅若しくは厚さB2は、係止区分8の幅B1の約25%に相当する。この場合、半径方向外側から半径方向内側に向けて変化するウェブ区分9の幅若しくは厚さB2は、そこに生じる応力がほぼ一定となるように選択されている。幅若しくは厚さB2と設置角度αとに基づいて、さらに、ウェブ区分9のねじれ特性と曲げ特性とを調節することができるので、これらは、使用例に応じて可変に設計されてよい。代替的には、ウェブ区分9が、まっすぐとは異なる延在形状、特にメアンダ状の延在形状を有していることも考えられる。
【0024】
パーキングロックギヤ5はさらに、パーキングロックギヤ5を軸22に結合させる結合区分10を半径方向内側に有している。図示した実施形態では結合部は、公称直径Diを有するスプライン軸歯列として形成されている。代替的に、別の軸・ハブ接続も、例えばプレス嵌めも考えられる。半縦断面図における結合区分10の断面はT字型に形成されている。円筒状部分のトルク支持領域の幅B3は、生じたトルクをパーキングロックギヤ5から軸22へと確実に伝達することができるように選択することができる。図示した構成では、係止区分8の幅B1は、結合区分10の幅B3の約0.75倍に相当する。結合区分10の円筒状部分に軸方向で続いて、位置決め段部11が延在しており、パーキングロックギヤ5はこの位置決め段部11で軸22に対して軸方向で位置決めされて、支持され得る。結合区分10の半径方向外側に突出する部分は、実質的に、結合区分10をウェブ区分9に結合させるために機能している。したがってウェブ区分9の構成に応じて、この部分は省かれてもよい。係止区分8は、結合区分10に対して軸方向にずらされている。この場合、パーキングロックギヤ5の回転軸線に対して垂直に延びる、係止区分8の仮想中央平面E1と、結合区分10の仮想中央平面E2との間には間隔A1が形成されている。第1の間隔A1は、この実施形態では、係止区分の幅B1にほぼ相当する、もしくはパーキングロックギヤ5の外径Daの15%にほぼ相当するが、これに限定されない。
【0025】
ロックエレメント6がパーキングロックギヤ5を係止することにより、パーキングロック機構が接続されている動力伝達経路(ドライブトレイン)の回転する部材の運動エネルギは衝撃エネルギに変換される。パーキングロックギヤ5には、衝突により半径方向の力成分と、ねじりモーメントもしくは制動モーメントをさらに誘導する接線方向の力成分とが作用する。平面E1と平面E2とが軸方向にずれていて、これらの間にウェブ区分9が配置されていることにより、動力伝達経路のねじり長さは増大して、動力伝達経路のねじり剛性は低減する。さらにパーキングロックギヤ5の係止区分8は半径方向で変形され得る。上述した両作用により、ロックエレメント6がパーキングロックギヤ5を係止する際の衝撃エネルギの多くの割合が、ひずみエネルギもしくは(弾性)変形エネルギに変換されるので、周辺の機械エレメントへの負荷は減じられる。
【0026】
パーキングロックケーシング3は、図示した実施形態では、リング室を形成する第1のケーシング区分4と、第1のケーシング区分4にねじ固定されている、ケーシングカバーの形態の第2のケーシング区分4’とを含む。第1のケーシング区分4は、駆動装置の伝動装置ケーシング32と一体に形成されている。代替的には、パーキングロックユニット2をモジュール式に形成することができ、パーキングロックケーシング3が、ケーシング区分4を駆動装置のケーシングに接続可能であるように形成することも考えられる。
【0027】
次に一緒に説明する
図3および
図4には、
図1および
図2に示した本発明によるパーキングロックユニット2を備えた電気駆動装置17が示されている。
【0028】
電気駆動装置17は、電気機械18と、トルクを伝達するために電気機械18に駆動接続された減速伝動機構19と、上述したようなパーキングロックユニット2と、トルクを伝達するために減速伝動機構19に駆動接続されたディファレンシャルギヤ20とを含む。電気駆動装置17はさらにケーシングアッセンブリ15を有しており、このケーシングアッセンブリ内に、電気機械18と、減速伝動機構19と、本発明によるパーキングロックユニット2と、ディファレンシャルギヤ20とが配置されている。
【0029】
減速伝動機構19は、伝動機構軸22を含み、伝動機構軸22の長手方向軸線は、モータ軸16の長手方向軸線に対して平行にずらされて配置されていて、伝動機構軸22は2つの軸受24,25を介して回転可能に支持されている。伝動機構軸22は、中間軸と呼ばれてもよい。伝動機構軸22には、切替可能な駆動歯車27が支持されていて、この駆動歯車は、モータ軸16の駆動ピニオン21と噛み合う。被駆動ピニオン28は、伝動機構軸22に相対回動不能に結合されていて、ディファレンシャルギヤ20を駆動するためにリングギヤ29と噛み合う。リングギヤ29は、ディファレンシャルギヤ20のディファレンシャルケージ30に堅固に結合されており、例えば、ディファレンシャルケージと一体に構成されていてよい。
【0030】
パーキングロックユニット2のパーキングロックギヤ5は、伝動機構軸22の自由な軸端部23に、軸・ハブ接続を介して相対回動不能に結合されていて、スナップリング26によって軸方向で固定されている。パーキングロックギヤ5は、係止区分8と、ウェブ区分9と、結合区分10とを有している。係止区分8の中央平面E1は、結合区分10の中央平面E2よりも、軸受24の中央平面E3に対してより小さな間隔を有している。係止区分8は、軸受24を回転可能に支持しているケーシング区分と、軸方向において部分的にオーバラップして配置されている。これにより、電気駆動装置17の軸方向の構成スペースを減じることができる。さらに、ロックエレメント6がパーキングロックギヤ5を係止する際の衝撃の半径方向の力成分の力作用面が、軸受24に向かって移動する。これにより、軸受24に作用する負荷が軽減される。
【0031】
ウェブ区分9により、一方ではパーキングロックギヤ5とディファレンシャル20の被駆動軸(図示せず)との間の動力伝達経路の、他方ではパーキングロックギヤ5と駆動ユニットとの間の動力伝達経路の、合成されたねじれ長さが拡大され、動力伝達経路のねじれ剛性が減じられる。さらに、パーキングロックの係止の際に係止区分8は半径方向に変位することができる。これら両作用により、ロックエレメント6がパーキングロックギヤ5を係止する際のより多くの衝撃のエネルギを、ひずみエネルギもしくは(弾性)変形エネルギに変換することができ、電気駆動装置17の機械エレメントに対する負荷が減じられる。
【0032】
パーキングロックギヤ5に半径方向の負荷が作用する際に、自由な軸端部23は、曲げビームのように、同様に半径方向において力導入方向に変位することができるので、自由な軸端部23にパーキングロックギヤ5を配置することにより、変形エネルギを付加的に吸収することができる。
【0033】
ケーシングアッセンブリ15は複数の個々のケーシング部分から組み立てられている。特に、ケーシングアッセンブリ15は、電気機械18ならびに伝動機構軸22の軸受25が収容されている第1のケーシング区分31、ならびにディファレンシャルギヤ20および軸受24が収容されている第2のケーシング区分32および中間プレート33を含む。中間プレート33は、第1のケーシング区分31,32の間に配置されていて、これらケーシング区分31,32に堅固に結合されている。パーキングロックケーシング3は、この実施形態では、部分的にケーシング区分32に組み込まれている。しかしながら、パーキングロックケーシング3が別個に形成されていて、ケーシング区分32に取外し可能に結合可能であることも考えられる。
【符号の説明】
【0034】
2 パーキングロック装置
3 パーキングロックケーシング
4,4’ ケーシング区分
5 ロックギヤ
6 ロックエレメント
7 アクチュエータ
8 係止区分
9 ウェブ区分
10 結合区分
11 位置決め段部
12
13 係止凹部
14 ロック歯列
15 ケーシングアッセンブリ
16 モータ軸
17 電気駆動装置
18 電気機械
19 減速伝動機構
20 ディファレンシャルギヤ
21 駆動歯車
22 伝動機構軸
23 自由な軸端部
24,24’,24’’ 軸受
25,25’,25’’ 軸受
26 スナップリング
27 駆動歯車
28 被駆動歯車
29 リングギヤ
30 ディファレンシャルケージ
31 ケーシング区分
32 ケーシング区分
33 中間プレート
A 間隔
B 幅
E 中央平面
α 設置角度