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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/52 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
H01Q1/52
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020559882
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2019045221
(87)【国際公開番号】W WO2020121748
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2018232661
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000165848
【氏名又は名称】原田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍治
(72)【発明者】
【氏名】ゴロブリョフ イーゴリ
(72)【発明者】
【氏名】坂野 猛
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0093026(US,A1)
【文献】特開2013-081119(JP,A)
【文献】国際公開第2015/107983(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/072683(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/180627(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を有するアンテナベースと、
前記アンテナベースの上に配置された第1アンテナエレメントと、
前記アンテナベースの上に配置され、前記第1アンテナエレメントよりも高い周波数帯の電波を送受信可能な一対の第2アンテナエレメントと、
を有し、
平面視において、前記第1アンテナエレメントの中心点で互いに交差する、前記長手方向に沿う第1線分と該第1線分に直交する第2線分とで前記アンテナベースを4つの領域に区分したとき、前記第2アンテナエレメントの一方が配置される領域は、前記第2アンテナエレメントの他方が配置される領域に隣接せず、
前記アンテナベースを基準としたとき、前記第2アンテナエレメントの上縁における最高点の高さは、前記第1アンテナエレメントの最低点と最高点の間にあり、前記第2アンテナエレメントの上縁における最低点の高さは、前記第1アンテナエレメントの最低点よりも下にある、アンテナ装置。
【請求項2】
前記第2アンテナエレメントが配置される各領域を、前記中心点を通る他の線分により、さらに複数の領域に区分したとき、前記複数の領域のうち、前記第2アンテナエレメントの一方が配置される領域と、前記第2アンテナエレメントの他方が配置される領域とは、前記中心点について対称の位置にある、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
平面視において、前記第2アンテナエレメントは、前記第1線分に沿う前記第1アンテナエレメントの長さを直径とする円の外側に配置される、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1アンテナエレメントは、前記長手方向に延在するアンテナエレメントである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第2アンテナエレメントは、前記第2線分に沿う方向から見た側面視において前記第1アンテナエレメントと重畳しない、請求項1乃至のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
平面視において、前記第2アンテナエレメントは、前記第1アンテナエレメントから遠ざかるように湾曲する面を有する、請求項1乃至のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第2アンテナエレメントは、テーパー状アンテナである、請求項1乃至のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記一対の第2アンテナエレメントは、互いに同一の周波数帯の電波を送受信する、請求項1乃至のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記一対の第2アンテナエレメントは、MIMOに用いられるアンテナエレメントである、請求項1乃至のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記第2アンテナエレメントを支持する支持部材をさらに有し、
前記支持部材は、第1固定点、第2固定点及び第3固定点を含む少なくとも3つの固定点で固定され、
平面視において、前記第1固定点は、前記第2アンテナエレメントを基準として、当該第2アンテナエレメントの重心の位置する側に設けられている、請求項1乃至のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記第1固定点は、前記第2アンテナエレメントの給電点と前記重心とを結ぶ線分の延長線上に位置する、請求項10に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記第2アンテナエレメントを支持する支持部材をさらに有し、
前記支持部材は、第1固定点、第2固定点及び第3固定点を含む少なくとも3つの固定点で固定され、
平面視において、前記第1固定点は、前記第2アンテナエレメントを基準として、当該第2アンテナエレメントの内側湾曲面の側に設けられている、請求項1乃至のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項13】
平面視において、前記第1固定点と前記第2固定点とを結ぶ線分及び前記第1固定点と前記第3固定点とを結ぶ線分は、前記第2アンテナエレメントと交差する、請求項10乃至12のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項14】
長手方向を有するアンテナベースと、
前記アンテナベースの上に配置された第1アンテナエレメントと、
前記アンテナベースの上に配置され、前記第1アンテナエレメントよりも一部又は全部が高い周波数帯の電波を送受信可能な一対の第2アンテナエレメントと、
を有し、
平面視において、前記第1アンテナエレメントの中心点で互いに交差する、前記長手方向に沿う第1線分と該第1線分に直交する第2線分とで前記アンテナベースを4つの領域に区分したとき、前記第2アンテナエレメントの一方が配置される領域は、前記第2アンテナエレメントの他方が配置される領域に隣接せず、
前記アンテナベースを基準としたとき、前記第2アンテナエレメントの上縁における最高点の高さは、前記第1アンテナエレメントの最低点と最高点の間にあり、前記第2アンテナエレメントの上縁における最低点の高さは、前記第1アンテナエレメントの最低点よりも下にある、アンテナ装置。
【請求項15】
前記第2アンテナエレメントが配置される各領域を、前記中心点を通る他の線分により、さらに複数の領域に区分したとき、前記複数の領域のうち、前記第2アンテナエレメントの一方が配置される領域と、前記第2アンテナエレメントの他方が配置される領域とは、前記中心点について対称の位置にある、請求項14に記載のアンテナ装置。
【請求項16】
平面視において、前記第2アンテナエレメントは、前記第1線分に沿う前記第1アンテナエレメントの長さを直径とする円の外側に配置される、請求項14又は15に記載のアンテナ装置。
【請求項17】
前記第1アンテナエレメントは、円偏波の信号を受信するアンテナエレメントである、請求項14乃至16のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項18】
前記一対の第2アンテナエレメントは、MIMOに用いられるアンテナエレメントである、請求項14乃至17のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用のアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等に搭載するアンテナ装置として、車両のルーフ上に装着する低姿勢のアンテナ装置が知られている。このようなアンテナ装置は、ベース材とカバー材とで構成される閉空間に、アンテナエレメント及び通信用の回路基板がコンパクトに収納された構造を有している。また、最近の車載用アンテナ装置は、テレビ信号やラジオ信号に加えて、GNSS(Global Navigation Satellite System)信号、ETC(Electronic Toll Collection System)信号といった様々な周波数帯の信号を受信することが必要となっている。
【0003】
上記理由から、近年では、異なる周波数帯に対応する複数種類のアンテナエレメントを搭載したマルチバンド型アンテナ装置が主流となっている。例えば、特許文献1には、様々な周波数帯の信号に対応するため、2つのパッチアンテナ、2つのセルラーアンテナ、及びDSRC(Dedicated Short Range Communications)アンテナを有したアンテナ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9270019号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたアンテナ装置は、装置後方の中央付近にセルラーアンテナを配置し、その両サイドに2つのDSRCアンテナを配置した構造となっている。このような構造とした場合、セルラーアンテナと各DSRCエレメントとの間、及び、各DSRCエレメントの間の距離が短く、3つのアンテナの間において、互いにアイソレーションを確保することができない。そこで、特許文献1に記載されたアンテナ装置では、上記アイソレーションを確保するために、テフロン(登録商標)で構成される回路基板に、導体で構成されるアイソレータを設けた構造を採用している。しかしながら、テフロン(登録商標)で構成される回路基板は高価であり、特許文献1に記載されたアンテナ装置は、コスト面で不利であった。
【0006】
本発明の課題の一つは、アイソレータを要することなく、アンテナ装置を構成する複数のアンテナエレメントのアイソレーションを確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態におけるアンテナ装置は、長手方向を有するアンテナベースと、前記アンテナベースの上に配置された第1アンテナエレメントと、前記アンテナベースの上に配置され、前記第1アンテナエレメントよりも高い周波数帯の電波を送受信可能な一対の第2アンテナエレメントと、を有し、平面視において、前記第1アンテナエレメントの中心点で互いに交差する、前記長手方向に沿う第1線分と該第1線分に直交する第2線分とで前記アンテナベースを4つの領域に区分したとき、前記第2アンテナエレメントの一方が配置される領域は、前記第2アンテナエレメントの他方が配置される領域に隣接しない。
【0008】
前記第2アンテナエレメントが配置される各領域を、前記中心点を通る他の線分により、さらに複数の領域に区分したとき、前記複数の領域のうち、前記第2アンテナエレメントの一方が配置される領域と、前記第2アンテナエレメントの他方が配置される領域とは、前記中心点について対称の位置にあってもよい。
【0009】
平面視において、前記第2アンテナエレメントは、前記第1線分に沿う前記第1アンテナエレメントの長さを直径とする円の外側に配置されていることが好ましい。
【0010】
前記第1アンテナエレメントは、前記長手方向に延在するアンテナエレメントであってもよい。
【0011】
前記アンテナベースを基準としたとき、前記第2アンテナエレメントの上縁における最高点の位置は、前記第1アンテナエレメントの最低点と最高点の間にあり、前記第2アンテナエレメントの上縁における最低点の位置は、前記第1アンテナエレメントの最低点よりも下にあることが好ましい。
【0012】
前記第2アンテナエレメントは、前記第2線分に沿う方向から見た側面視において前記第1アンテナエレメントと重畳しないことが好ましい。
【0013】
平面視において、前記第2アンテナエレメントは、前記第1アンテナエレメントから遠ざかるように湾曲する面を有していてもよい。
【0014】
前記第2アンテナエレメントは、テーパー状アンテナであってもよい。
【0015】
前記一対の第2アンテナエレメントは、互いに同一の周波数帯の電波を送受信するものであってもよい。
【0016】
前記一対の第2アンテナエレメントは、MIMO(Multiple Input Multiple Output)(以下、単に「MIMO」と呼ぶ。)に用いられるアンテナエレメントであってもよい。
【0017】
上記アンテナ装置は、前記第2アンテナエレメントを支持する支持部材をさらに有していてもよい。前記支持部材は、第1固定点、第2固定点及び第3固定点を含む少なくとも3つの固定点で固定されていてもよい。このとき、平面視において、前記第1固定点は、前記第2アンテナエレメントを基準として、当該第2アンテナエレメントの重心の位置する側に設けられていてもよい。前記第1固定点は、前記第2アンテナエレメントの給電点と前記重心とを結ぶ線分の延長線上に位置していてもよい。
【0018】
また、上記アンテナ装置は、平面視において、前記第1固定点が、前記第2アンテナエレメントを基準として、当該第2アンテナエレメントの内側湾曲面(図12(B)の第2面242a-2)の側に設けられていてもよい。
【0019】
平面視において、前記第1固定点と前記第2固定点とを結ぶ線分及び前記第1固定点と前記第3固定点とを結ぶ線分は、前記第2アンテナエレメントと交差してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態によれば、アイソレータを要することなく、アンテナ装置を構成する複数のアンテナエレメントのアイソレーションを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態のアンテナ装置における内部構成を示す分解斜視図である。
図2】第1実施形態のアンテナ装置における内部構成を示す平面図である。
図3】第1実施形態のアンテナ装置における内部構成を示す左側面図である。
図4】第1実施形態のアンテナ装置における内部構成を示す正面図である。
図5】第1実施形態のアンテナ装置における内部構成を示す背面図である。
図6】第1実施形態のアンテナ装置における第1アンテナエレメントと第2アンテナエレメントの位置関係を説明するための模式図である。
図7】第1実施形態のアンテナ装置における第1アンテナエレメントと第2アンテナエレメントの位置関係を説明するための模式図である。
図8】第1実施形態のアンテナ装置における第1アンテナエレメントと第2アンテナエレメントの位置関係を説明するための模式図である。
図9】第1実施形態のアンテナ装置における第1アンテナエレメントと第2アンテナエレメントの位置関係を説明するための模式図である。
図10】第1実施形態の変形例4のアンテナ装置における第1アンテナエレメントと第2アンテナエレメントの位置関係を説明するための模式図である。
図11】第2実施形態のアンテナ装置における内部構成を示す分解斜視図である。
図12】第2実施形態のアンテナ装置における第2アンテナエレメントの具体的な支持構造を説明するための図である。
図13】第2実施形態のアンテナ装置の支持構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、本発明は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0023】
本明細書では、説明の便宜上、「上」又は「下」という語句を用いる場合があるが、アンテナ装置を車両に装着した状態において、車両からアンテナ装置に向かう方向を「上」とし、その逆の方向を「下」とする。また、「前」、「後」、「左」又は「右」という語句を用いる場合があるが、車両の進行方向を「前」とし、その逆の方向を「後」とする。さらに、車両の進行方向に向かって左側を「左」とし、右側を「右」とする。
【0024】
〈第1実施形態〉
(アンテナ装置の構成)
第1実施形態のアンテナ装置10における内部構成について、図1~5を用いて説明する。アンテナ装置10は、車両のルーフ上に装着されるアンテナ装置である。具体的には、アンテナ装置10は、前方に向かうほど細くなる流線型のアンテナ装置である。このような形状のアンテナ装置は、一般的に、シャークフィンアンテナと呼ばれる。なお、本実施形態では、車両のルーフに装着する車載用アンテナ装置を例にして説明するが、アンテナ装置を装着する箇所は、車両のルーフに限定されない。例えば、本実施形態で説明するアンテナ装置10は、車両ルーフ以外にも、スポイラー、トランクカバー等に装着することができる。
【0025】
図1は、第1実施形態のアンテナ装置10における内部構成を示す分解斜視図である。図2図5は、それぞれ、第1実施形態のアンテナ装置10における内部構成を示している。具体的には、図2は、第1実施形態のアンテナ装置10における内部構成を示す平面図である。図3は、第1実施形態のアンテナ装置10における内部構成を示す左側面図である。図4は、第1実施形態のアンテナ装置10における内部構成を示す正面図である。図5は、第1実施形態のアンテナ装置10における内部構成を示す背面図である。
【0026】
図1において、アンテナ装置10は、アンテナケース100、アンテナベース110、ベースパッド120、第1アンテナ部130、第2アンテナ部140、及び第3アンテナ部150を備える。なお、本実施形態では、アンテナ装置10の前方に第3アンテナ部150を有した一例を示すが、第3アンテナ部150は省略することも可能である。
【0027】
アンテナケース100は、例えば、電波透過性の合成樹脂で構成されたカバー部材である。アンテナケース100は、第1アンテナ部130、第2アンテナ部140、及び第3アンテナ部150を覆って、アンテナベース110にねじ止め等で固定される。これにより、第1アンテナ部130、第2アンテナ部140、及び第3アンテナ部150は、アンテナケース100とアンテナベース110とで構成される閉空間に収納される。この際、アンテナケース100とアンテナベース110との間にベースパッド120が挟まれた構造となるため、アンテナケース100とアンテナベース110とを隙間なく嵌合させることができる。これにより、第1アンテナ部130、第2アンテナ部140、及び第3アンテナ部150は、外部からの圧力、衝撃、水分及びゴミなどから保護される。
【0028】
図1及び図2において、アンテナベース110は、D1方向を長手方向とする略長円状の金属部材である。ここで、D1方向は、アンテナ装置10の進行方向(すなわち、車両の進行方向)を含む。つまり、D1方向に沿って第1アンテナ部130から第3アンテナ部150に向かう方向が、アンテナ装置10の進行方向である。なお、D2方向は、D1方向に直交する方向であり、アンテナ装置10の左右方向である。
【0029】
また、図3図5に示されるように、アンテナベース110の下面からは、アンテナ装置10を車両に取り付けるためのボルト部112が下方に突出するように設けられている。
【0030】
ベースパッド120は、例えばゴム、エラストマー等で構成される部材である。本実施形態では、アンテナベース110の縁をベースパッド120の外周部分で覆い、アンテナ装置10を組み立てた際に、アンテナケース100とアンテナベース110とでベースパッド120を挟む構造とする。アンテナベース110の輪郭は、アンテナケース100の縁の輪郭と略一致する。したがって、ベースパッド120を介して両者を隙間なく嵌合させることにより、上述の閉空間を形成することができる。また、ベースパッド120の下面はアンテナベース110よりも下方に位置するため、アンテナ装置10を車両に装着した際、ベースパッド120が車両のルーフに密着する。これにより、アンテナ装置10の外部から水分及びゴミが侵入しないように保護することができる。
【0031】
第1アンテナ部130は、AM/FM信号を受信して増幅する機能を有する部位である。第1アンテナ部130は、アンテナベース110の上に配置された第1アンテナエレメント130a及び第1回路基板130bを含む。第1アンテナエレメント130aは、傘型の平板状導体で構成され、AM/FM信号を受信するアンテナとして機能する。第1回路基板130bは、第1アンテナエレメント130aを支持すると共に、第1アンテナエレメント130aで受信されたAM/FM信号を増幅するアンプ回路(図示せず)を備えている。第1アンテナエレメント130aは、第1回路基板130bの上に配置され、図示しない配線によって上述のアンプ回路等と接続される。
【0032】
図1図3に示されるように、第1アンテナ部130は、アンテナベース110の後方における略中央に配置される。本実施形態では、第1アンテナ部130を構成する第1アンテナエレメント130a及び第1回路基板130bが、共にD1方向を長手方向とする部材で構成されている。つまり、第1アンテナエレメント130a及び第1回路基板130bは、アンテナベース110の長手方向に延在する。第1回路基板130bは、アンテナベース110に設けられた支持部材(図示せず)に対してねじ止め等により固定され、アンテナベース110に対して略垂直に保持される。
【0033】
なお、本実施形態では、第1アンテナ部130をAM/FM信号を受信するアンテナとした例を示しているが、これに限らず、例えばAM/FM/DAB(Digital Audio Broadcast)信号を受信する複合アンテナとすることも可能である。
【0034】
第2アンテナ部140は、アンテナベース110の上に配置され、第2アンテナエレメント142a及び第2回路基板142bと、第2アンテナエレメント144a及び第2回路基板144bとを含む。具体的には、本実施形態の第2アンテナ部140は、例えば699MHz~5.9GHzの周波数帯の電波を送受信する、いわゆる5G(第5世代移動通信システム)に対応したセルラーアンテナである。ただし、第2アンテナ部140は、数百MHzから数GHzの電波を送受信する、3G(第3世代移動通信システム)、4G(第4世代移動通信システム)又はC-V2X(Cellular Vehicle to Everything)に対応したセルラーアンテナであってもよい。
【0035】
なお、第2アンテナ部140をセルラーアンテナとして用いる場合、図1に示されるように、第2アンテナエレメント142a及び144aとしては、テーパー状アンテナを用いることが好ましい。テーパー状アンテナとは、給電点から上方に向けて徐々に広がるように加工された面を有するアンテナエレメントのことを指す。このようなテーパー状アンテナは、広い周波数帯の信号に対応できるというメリットを有する。
【0036】
ところで、5Gに対応したセルラーアンテナは、高速な通信速度の確保が優先されるため、数GHzの高い周波数帯の電波を送受信する必要がある。そのため、本実施形態では、第2アンテナ部140に対し、高速通信を可能とするMIMOと呼ばれる技術を用いる。すなわち、本実施形態において、一対の第2アンテナエレメント142a及び144aは、互いに協働して、MIMOエレメントとして用いられる。
【0037】
MIMOを用いた第2アンテナ部140では、第2アンテナエレメント142a及び144aは、互いに同一の周波数帯の電波を送受信するように構成され、所望の情報を分割して多重伝送する。ただし、第2アンテナエレメント142a及び144aは、上限及び下限が完全に同一の周波数帯の電波を送受信するものに限定されない。すなわち、MIMOに用いるアンテナエレメントとして機能しうる限り、送受信する周波数帯が多少ずれていても問題はない。なお、MIMOに用いるアンテナエレメントの数は、2つに限らず、3つ以上とすることも可能である。つまり、本実施形態の場合、第2アンテナ部140に、少なくとも2つのアンテナエレメント、すなわち、一対のアンテナエレメントが含まれていればよい。
【0038】
ここで、MIMOによる高速通信を活かすためには、各アンテナエレメントの相関を低くすることが重要である。一般的に、各アンテナエレメントのアイソレーションが良いほど相関が低く、MIMOの通信速度が良好に保たれることが知られている。つまり、MIMOの通信速度を良好に保つためには、各アンテナエレメントのアイソレーションを確保することが有効である。したがって、無指向性の第2アンテナエレメント142a及び144aを用いて高速な通信を可能とするMIMOを実現するためには、第2アンテナエレメント142a及び144aの相関を低くし、アイソレーションを確保することが望ましい。
【0039】
複数のアンテナエレメントの相関が低いとは、通常、各アンテナエレメントそれぞれの電波の放射パターンが異なることを意味する。すなわち、MIMOに用いる複数のアンテナエレメントが、空間を相補的にカバーするように電波を放射するとき、各アンテナエレメントの相関は低いと言える。
【0040】
そこで、本実施形態では、MIMOに用いる第2アンテナエレメント142aと第2アンテナエレメント144aとの間に、第2アンテナ部140よりも低い周波数帯の電波(ここではAM/FM信号)を受信する第1アンテナ部130を配置する。これにより、本実施形態では、第2アンテナエレメント142a及び144aの相関係数を小さくしている。つまり、第2アンテナエレメント142a及び144aの放射パターンを、それぞれ意図的に異なるものとすることにより、両者の相関を低くし、アイソレーションを確保している。
【0041】
ここで、図1~5に示されるように、本実施形態のアンテナ装置10において、第2アンテナエレメント142a及び144aは、第1アンテナエレメント130aを挟んで左右両サイドに配置される。具体的には、第2アンテナエレメント142aは、第1アンテナエレメント130aの斜め左前方に配置され、第2アンテナエレメント144aは、第1アンテナエレメント130aの斜め右後方に配置される。
【0042】
このように配置する理由は、アンテナケース100及びアンテナベース110で構成される閉空間の中に、第1アンテナ部130及び第2アンテナ部140をコンパクトに収納しつつ、従来技術のようにアイソレータを設けることなく、第2アンテナエレメント142a及び144aのアイソレーションを確保するためである。この構成についての詳細は、後述する。
【0043】
第2回路基板142b及び144bは、それぞれ第2アンテナエレメント142a及び144aを支持すると共に、第2アンテナエレメント142a及び144aの出力端とケーブルとのインピーダンスを合わせるためのマッチング素子(図示せず)を備えている。ただし、第2アンテナエレメント142a及び144aの出力端とケーブルとのマッチングが取れていればマッチング素子を省略してもよい。
【0044】
第3アンテナ部150は、アンテナベース110上の前方に配置され、第3アンテナエレメント150a及び第3回路基板150bを含む。本実施形態において、第3アンテナエレメント150aは、平面アンテナ(具体的には、パッチアンテナ)であり、GNSS信号を受信する。第3回路基板150bは、第3アンテナエレメント150aを支持すると共に、第3アンテナエレメント150aで受信されたGNSS信号を増幅するアンプ回路(図示せず)を備えている。
【0045】
(アンテナエレメントの位置関係)
次に、第1アンテナエレメント130aに対する、第2アンテナエレメント142a及び144aの位置関係について、図6~8を用いて説明する。図6図8は、第1実施形態のアンテナ装置10における第1アンテナエレメント130aと第2アンテナエレメント142a及び144aの位置関係を説明するための模式図である。具体的には、図2に示したアンテナ装置10における内部構成の平面図を模式的に表した図に相当する。
【0046】
なお、説明を簡単にするため、図6図8において、アンテナベース110は、長方形の枠として模式的に表される。また、第2アンテナエレメント142a及び144aの位置は、それぞれの給電点の位置を用いて表される。勿論、第2アンテナエレメント142a及び144aの位置は、給電点の位置に限らず、アンテナエレメントの中心又は重心の位置としてもよい。
【0047】
図6に示す平面視において、アンテナベース110は、第1アンテナエレメント130aの中心点Oで互いに交差する第1線分22と第2線分24とで4つの領域(第1領域110a、第2領域110b、第3領域110c、及び第4領域110d)に区分される。第1線分22は、アンテナベース110の長手方向(D1方向)に沿う線分である。第2線分24は、第1線分22に直交する線分である。
【0048】
ここで、第2アンテナエレメント142a(厳密には、第2アンテナエレメント142aの給電点)は、アンテナベース110の第1領域110aに配置され、第2アンテナエレメント144a(厳密には、第2アンテナエレメント144aの給電点)は、アンテナベース110の第3領域110cに配置される。また、図6に示されるように、平面視において、第2アンテナエレメント142a及び144aは、ともに第1アンテナエレメント130aとは重畳しない位置に配置される。
【0049】
図6に示されるように、第2アンテナエレメント142aと第2アンテナエレメント144aとは、互いに第1アンテナエレメント130aの中心点Oについて点対称の位置にある。換言すれば、第2アンテナエレメント142a及び144aの一方が配置される領域は、他方が配置される領域に隣接しない。このように、平面視において、第1アンテナエレメント130aの略対角線上に一対の第2アンテナエレメント142a及び144aを配置することにより、両者の間の距離を長く空けることが可能となり、電気的なアイソレーションを確保することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、第2アンテナエレメント142aと第2アンテナエレメント144aとが、互いに第1アンテナエレメント130aの中心点Oについて点対称の位置にある例を示したが、これに限られるものではない。すなわち、第2アンテナエレメント142aが第1領域110aの任意の位置に配置され、第2アンテナエレメント144aが第3領域110cの任意の位置に配置されていればよい。
【0051】
上述の関係は、アンテナベース110をさらに複数の領域に分割した場合についても成立する。例えば、図7に示されるように、中心点Oを通る第3線分26及び第4線分28により、第1領域110aをさらに複数の領域110aa、110ab、及び110acに区分する。第3線分26及び第4線分28は、さらに第3領域110cを、複数の領域110ca、110cb、及び110ccに区分する。このとき、複数の領域110aa、110ab、110ac、110ca、110cb、及び110ccのうち、第2アンテナエレメント142aが配置される領域110abと、第2アンテナエレメント144aが配置される領域110cbとは、中心点Oについて対称の位置にある。
【0052】
なお、図7では、第2アンテナエレメント142aが領域110abに配置された例を示したが、これに限らず、領域110aa又は領域110acに配置されてもよい。この場合も、第2アンテナエレメント142aが領域110aa(又は領域110ac)に配置されると、第2アンテナエレメント144aは、中心点Oについて対称の位置となる領域110ca(又は領域110cc)に配置される。
【0053】
ただし、第2アンテナエレメント142aを領域110aaに配置し、第2アンテナエレメント144aを領域110caに配置した場合、第2アンテナエレメント142a及び144aを第2線分24に近づけるほど、第2アンテナエレメント142aと第2アンテナエレメント144aとの間の距離が短くなる。したがって、第2アンテナエレメント142aを領域110aaに配置し、第2アンテナエレメント144aを領域110caに配置する場合には、アイソレーションが確保できる範囲内に収まるように、第2アンテナエレメント142aと第2アンテナエレメント144aとの間の距離を適切に調整することが望ましい。
【0054】
また、第2アンテナエレメント142aを領域110acに配置し、第2アンテナエレメント144aを領域110ccに配置した場合、第2アンテナエレメント142aと第2アンテナエレメント144aとの間の距離は十分に確保できる。しかしながら、第2アンテナエレメント142a、第1アンテナエレメント130a及び第2アンテナエレメント144aが、第1線分22に沿ってほぼ直線上に並んでしまうと、アンテナ装置10の長手方向におけるサイズが大きくなってしまう虞がある。
【0055】
以上のことから、第2アンテナエレメント142a及び144aは、図6に示すように、第1アンテナエレメント130aの隅部付近の位置に配置することが好ましい。また、第2アンテナエレメント142aと第2アンテナエレメント144aとの間の距離は、例えば、第1アンテナエレメント130aの長手方向における長さよりも大きく確保することが好ましい。つまり、図8に示されるように、平面視において、第2アンテナエレメント142a及び144aは、第1線分22に沿う第1アンテナエレメント130aの長さRを直径とする円160の外側に配置することが好ましい。
【0056】
なお、図6図8では、第2アンテナエレメント142aを第1領域110aに配置し、第2アンテナエレメント144aを第3領域110cに配置した例について説明したが、これに限られるものではない。例えば、第2アンテナエレメント142aを第2領域110bに配置し、第2アンテナエレメント144aを第4領域110dに配置した場合についても、上述した関係は同様に成り立つ。
【0057】
ここまでは、第1アンテナエレメント130aと第2アンテナエレメント142a及び144aとの、平面視における位置関係について説明した。次に、図9では、第1アンテナエレメント130aと第2アンテナエレメント142a及び144aとの、側面視における位置関係について説明する。図9に示す側面図は、図3に示したアンテナ装置10の内部構成を示す側面図における、第1アンテナ部130及び第2アンテナ部140が配置された付近を模式的に表した図に相当する。
【0058】
図9に示されるように、側面視において、第1アンテナエレメント130aは、アンテナベース110を基準として、第2アンテナエレメント142a及び144aよりも高い位置に配置される。このとき、図3及び図9に示されるように、D2方向(図6に示した第2線分24に沿う方向)から見た側面視において、第1アンテナエレメント130aと第2アンテナエレメント142a及び第2アンテナエレメント144aとは互いに重畳しない。このような構造とすることにより、本実施形態のアンテナ装置10は、第1アンテナエレメント130aと第2アンテナエレメント142a及び第2アンテナエレメント144aとの間の電気的な干渉を極力抑えている。
【0059】
上述の構造とするために、本実施形態では、第2アンテナエレメント142a及び第2アンテナエレメント144aの形状に工夫が施されている。具体的には、第2アンテナエレメント142a及び第2アンテナエレメント144aの上縁が、側面視において第1アンテナエレメント130aを避けるように加工されている。さらに、図2に示されるように、平面視において、第2アンテナエレメント142a及び144aは、ともに第1アンテナエレメント130aから遠ざかるように湾曲する面を有する。このように湾曲させることにより、第1アンテナエレメント130aからの距離を確保しやすくなる。
【0060】
上述した第2アンテナエレメント142a及び144aの形状について、図9を用いてさらに詳細に説明する。図9に示されるように、第2アンテナエレメント142a及び144aは、その上縁がカットされている。つまり、アンテナベース110を基準としたとき、第2アンテナエレメント142aの上縁における最高点の高さH3は、第1アンテナエレメント130aの最低点の高さH2と最高点の高さH4の間にある。また、第2アンテナエレメント142aの上縁における最低点の高さH1は、第1アンテナエレメント130aの最低点の高さH2よりも下にある。
【0061】
さらに、本実施形態の第2アンテナエレメント142aは、その上縁における最高点の高さH3から最低点の高さH1までを結ぶ縁が、曲線状に加工されている。このような形状とすることにより、図3及び図9に示されるように、第1アンテナエレメント130aの左前方側の隅部52から第2アンテナエレメント142aまでの距離を確保する(距離を長くする)ことができる。
【0062】
以上のように、本実施形態の第2アンテナエレメント142aは、図2に示すように、平面視において湾曲した面を有するとともに、図9に示すように、側面視において湾曲した辺を有する。これにより、第2アンテナエレメント142aは、第1アンテナエレメント130aの近くに配置しても、第1アンテナエレメント130aとの間の電気的な干渉を極力抑えることができる。なお、ここまでは第2アンテナエレメント142aを例示して説明したが、第2アンテナエレメント144aと第1アンテナエレメント130aとの関係についても同様である。
【0063】
(変形例1)
第1実施形態の変形例1について説明する。第1実施形態では、第1アンテナ部130として、AM/FM信号を受信するアンテナを用いた例について説明したが、第1アンテナ部130は、例えば750~960MHzの電波を受信するセルラーアンテナであってもよい。また、この場合に、第2アンテナ部140として、1.7~5.9GHzの電波を受信するセルラーアンテナを用いてもよい。
【0064】
本変形例1によれば、アンテナ装置10は、いわゆる3G、4G、及び5Gのあらゆる世代の移動通信システムにも対応することができる。
【0065】
(変形例2)
第1実施形態の変形例2について説明する。第1実施形態では、第2アンテナ部140として、MIMOに用いる一対のアンテナエレメントを配置した例について説明したが、第2アンテナ部140として、DSRC(Dedicated Short Range Communications)に用いる一対のアンテナエレメントを配置してもよい。この場合、第2アンテナ部140は、例えば5.8GHz帯の電波を送受信し、増幅する機能を有する。
【0066】
(変形例3)
第1実施形態の変形例3について説明する。第1実施形態では、第1アンテナ部130として、AM/FM信号を受信するアンテナを用いた例について説明したが、第1アンテナ部130は、GNSS信号を受信するアンテナとすることも可能である。例えば、第1アンテナ部130として、パッチアンテナを配置してもよい。具体的には、第1実施形態において第3アンテナ部150として配置したGNSS用アンテナを、第1アンテナ部130を構成するパッチアンテナとして配置してもよい。この場合、アンテナ装置10の前方側には、第3アンテナ部150として、GNSS用アンテナ、セルラーアンテナ以外のアンテナを配置してもよい。また、アンテナベース110の長手方向のサイズを短くし、アンテナ装置10の小型化を図っても良い。
【0067】
本変形例3においても、第2アンテナ部140としてMIMOに用いる一対のアンテナエレメントを配置した場合に、一対のアンテナエレメントの相関を低くすることができ、高速通信に適したアンテナ装置10を実現することができる。
【0068】
(変形例4)
第1実施形態の変形例4について説明する。第1実施形態では、第2アンテナエレメント142a及び144aを、第1アンテナエレメント130aの中心点Oについて対称の位置となる領域に配置する例を示した。しかしながら、このような配置に限られるものではなく、第2アンテナエレメント142a及び144aが、第1アンテナエレメント130aの中心点Oについて非対称の位置となる領域に配置されていてもよい。
【0069】
図10(A)及び図10(B)は、第1実施形態の変形例4のアンテナ装置における第1アンテナエレメント130aと第2アンテナエレメント142a及び144aの位置関係を説明するための模式図である。
【0070】
図10(A)において、第2アンテナエレメント142aは、領域110abに配置され、第2アンテナエレメント144aは、領域110ccに配置される。領域110abと領域110ccは、中心点Oについて非対称の位置となる領域である。また、図10(B)において、第2アンテナエレメント142aは、領域110abに配置され、第2アンテナエレメント144aは、領域110caに配置される。領域110abと領域110caも、中心点Oについて非対称の位置となる領域である。図10(A)及び図10(B)のような場合であっても、第2アンテナエレメント142aと第2アンテナエレメント144aの間の距離が十分であればアイソレーションを確保することができる。
【0071】
なお、図10(A)において、第2アンテナエレメント142aが、領域110acに配置され、第2アンテナエレメント144aが、領域110cbに配置される場合もあり得る。また、図10(B)において、第2アンテナエレメント142aが、領域110aaに配置され、第2アンテナエレメント144aが、領域110cbに配置される場合もあり得る。さらには、例えば、第2アンテナエレメント142aが、領域110acに配置され、第2アンテナエレメント144aが、領域110caに配置される場合もあり得る。
【0072】
このように、第2アンテナエレメント142aと第2アンテナエレメント144aの間のアイソレーションを十分に確保できるのであれば、第2アンテナエレメント142a及び144aを配置する位置は任意に決定することができる。
【0073】
〈第2実施形態〉
第1実施形態では特に言及していないが、第2回路基板142b及び144bに対してそれぞれ第2アンテナエレメント142a及び144aを固定する方法としては、例えば、第2アンテナエレメント142a及び144aの給電点を、はんだ溶接等により第2回路基板142b及び144bに接続することが例示できる。しかしながら、アンテナ装置10に強い振動が加わった場合、溶接部分には強い負荷がかかる。この場合、溶接部分が破損して、第2アンテナエレメント142a又は144aが第2回路基板142b又は144bから脱落してしまうおそれがある。そのため、第2回路基板142b及び144bに対して第2アンテナエレメント142a及び144aを固定する場合は、第2アンテナエレメント142a及び144aの溶接部分(すなわち、給電点)を補強することが望ましい。
【0074】
本実施形態では、第2回路基板に対して第2アンテナエレメントを固定する際における第2アンテナエレメントの支持構造の例について説明する。なお、第1実施形態で説明した要素と同じ要素については、同じ符号を用いて図面に表し、詳細な説明は省略する。
【0075】
図11は、第2実施形態のアンテナ装置10Aにおける内部構成を示す分解斜視図である。図11に示すアンテナ装置10Aにおいて、第1実施形態に示したアンテナ装置10と異なる点は、第2アンテナ部240が、第2アンテナエレメント242a、第2回路基板242b及び支持部材242cと、第2アンテナエレメント244a、第2回路基板244b及び支持部材244cとを含む点である。なお、第2アンテナエレメント242a及び244aの支持構造は同じであるため、以下の説明においては、第2アンテナエレメント242aの支持構造に着目して説明する。
【0076】
第1実施形態と同様に、第2アンテナエレメント242aは、第2回路基板242bに対して、はんだ溶接等により直接的に固定されている。さらに、本実施形態の第2アンテナエレメント242aは、第2回路基板242b上に固定された支持部材242cによって支持されている。すなわち、本実施形態では、第2アンテナエレメント242aの溶接部分が、支持部材242cによって補強されている。
【0077】
図12は、第2実施形態のアンテナ装置10Aにおける第2アンテナエレメント242aの具体的な支持構造を説明するための図である。具体的には、図12(A)は、第2アンテナエレメント242aを第1面242a-1の側から見た分解斜視図である。図12(B)は、第2アンテナエレメント242aを第1面242a-1とは反対側の第2面242a-2の側から見た分解斜視図である。図12(C)及び図12(D)は、それぞれ、図12(A)及び図12(B)に示した第2アンテナエレメント242a、第2回路基板242b及び支持部材242cを組み立てた様子を示している。なお、第2面(内側湾曲面)242a-2は、第1回路基板130bに対向する面に相当する。
【0078】
図12(A)及び図12(B)に示されるように、第2アンテナエレメント242aは、第1開口部41及び2つの第2開口部42を有する。本実施形態において、第1開口部41の形状は、円形であり、第2開口部42の形状は、四角形である。ただし、第1開口部41及び第2開口部42の形状は、この例に限られるものではない。例えば、第1開口部の形状は、楕円形であってもよいし、多角形であってもよい。また、第2開口部の形状は、四角形以外の多角形であってもよいし、円形又は楕円形であってもよい。
【0079】
本実施形態において、支持部材242cは、第1支持部43及び2つの第2支持部44を有するプラスチック部材である。図12(C)及び図12(D)に示されるように、第1支持部43の一部は、第2アンテナエレメント242aの第2面242a-2の側から第1開口部41に挿入される。また、第2支持部44は、第2アンテナエレメント242aの第2面242a-2の側から第2開口部42に挿入された後、第1面242a-1に当接する。
【0080】
第2支持部44は、断面がL字形状となっており、フックとして機能する。つまり、図12(C)に示されるように、第2開口部42に対して第2支持部44を挿入した後、第2アンテナエレメント242aを支持部材242cに対して相対的に下方にずらすと、第2支持部44に対して第2アンテナエレメント242aを引っ掛けたような構成となる。この状態で、第1開口部41に対して第1支持部43を挿入すると、第2支持部44が第1面242a-1に当接し、第1支持部43と第2支持部44とで第2アンテナエレメント242aを挟んで固定することができる。さらに、本実施形態のアンテナ装置10Aにおける第2アンテナ部240は、第1支持部43によって上下方向、左右方向及び斜め方向の動きが規制され、2つの第2支持部44によって第2アンテナエレメント242aの回転方向の動きが規制される。このように、第2アンテナ部240は、支持部材242cによって全方向への動きが規制される。
【0081】
支持部材242cは、第2回路基板242bに対して熱かしめ又はねじ止め等により固定される。また、第2アンテナエレメント242aは、第2回路基板242bに対してはんだ溶接等により固定される。
【0082】
以上のように、本実施形態では、支持部材242cを用いることにより、第2アンテナエレメント242aの溶接部分を補強する支持構造を実現している。また、本実施形態では、支持部材242cを用いた支持構造において、第2アンテナエレメント242aの重心を考慮した構造を用いている。その点について、図13を用いて説明する。
【0083】
図13は、第2実施形態のアンテナ装置10Aの支持構造を説明するための図である。具体的には、図13(A)は、第2実施形態のアンテナ装置10Aにおける第2アンテナ部240の構成を示す平面図である。図13(B)は、第2実施形態のアンテナ装置10Aにおける第2アンテナエレメント242aの重心45と、支持部材242cの固定点46a~46cとの位置関係を示す模式図である。
【0084】
図13(A)に示されるように、本実施形態の支持部材242cは、第2回路基板242bに対して3点で固定されている。ここで、平面視において、固定点46aは、第2アンテナエレメント242aを基準として、第2面242a-2の側に位置している。他方、固定点46b及び46cは、第1面242a-1の側に位置している。つまり、支持部材242cの底部が固定点46aで屈曲する略V字形状になっており、平面視において、固定点46aと他の固定点46b及び46cとが、それぞれ第2アンテナエレメント242aを基準として、異なる側に位置する構成となっている。
【0085】
上述の構成を別の観点からみると、図13(B)に示されるように、本実施形態では、第2アンテナエレメント242aの給電点(溶接部分)47が、支持部材242cの固定点46a、46b及び46cを結ぶ三角形の内側の範囲内に位置する。このように、本実施形態では、平面視において、固定点46aと固定点46bとを結ぶ線分及び固定点46aと固定点46cとを結ぶ線分が第2アンテナエレメント242aと交差するように構成されている。
【0086】
このとき、第2面242a-2の側に位置する固定点46aは、第2アンテナエレメント242aの重心45が位置する側に設けられている。具体的には、本実施形態の固定点46aは、第2アンテナエレメント242aの給電点47と重心45とを結ぶ線分の延長線48の上に位置する。逆に、第1面242a-1の側に位置する固定点46b及び46cは、第2アンテナエレメント242aの重心45が位置しない側に設けられている。
【0087】
本発明者らの知見によれば、回路基板に対するアンテナの溶接部分にかかる負荷は、アンテナの重心に近い部分を固定することにより軽減することができる。この知見に基づき、本実施形態のアンテナ装置10Aは、第2アンテナエレメント242aの重心45に近い位置に支持部材242cの固定点46aが配置された構造になっている。本実施形態では、上述の支持構造を用いることにより、第2アンテナエレメント242aの給電点47(すなわち、溶接部分)に加わる負荷を軽減している。これにより、本実施形態のアンテナ装置10Aは、振動等によって第2回路基板242bから第2アンテナエレメント242aが脱落することを防止することができる。
【0088】
本実施形態の支持構造は、特に、湾曲面を有する部材の支持構造として有効である。すなわち、本実施形態の第2アンテナエレメント242aのように、湾曲面を有するアンテナを固定する構造として、本実施形態で説明した支持構造は特に有効である。
【0089】
(変形例1)
第2実施形態の変形例1について説明する。第2実施形態の支持構造は、例えば第2アンテナエレメント242aが湾曲面を有していない平板状のアンテナエレメントであっても適用することができる。この場合、第2アンテナエレメント242aの重心45の位置は、平面視において第2アンテナエレメント242aと重畳する。このような場合、図13(A)及び図13(B)に示した例に比べて、支持部材242cの固定点46aの位置を第2アンテナエレメント242aに近づければよい。また、第2実施形態の支持構造は、平板状のアンテナエレメントに限らず、V字形状もしくは山型形状(屈曲した平面を有する形状)、ギザギザ形状(複数の山型形状が連なった形状)、又は、波状形状(複数の曲面が連なった形状)のアンテナエレメントに適用してもよい。
【0090】
(変形例2)
第2実施形態の変形例2について説明する。図13(A)及び図13(B)に示す例では、第2アンテナエレメント242aの給電点47と重心45とを結ぶ線分の延長線48の上に固定点46aを配置したが、この例に限られるものではない。すなわち、固定点46aは、重心45にできるだけ近い位置に配置されていればよい。換言すれば、固定点46aは、図13(B)に示されるように、第2アンテナエレメント242aを基準として、重心45が位置する側に配置されていればよい。この場合であっても、固定点46aは、できるだけ重心45に近い位置に配置することが望ましい。
【0091】
(変形例3)
第2実施形態の変形例3について説明する。図13(A)及び図13(B)に示す例では、第2回路基板242bに対して支持部材242cを3点で固定しているが、この例に限られるものではない。すなわち、支持部材242cは、4点以上の固定点を用いて固定されていてもよい。この場合においても、少なくとも1つの固定点は、第2アンテナエレメント242aの重心45の近傍に配置することが望ましい。
【0092】
(変形例4)
第2実施形態の変形例4について説明する。第2回路基板242bに対して第2アンテナエレメント242aを固定した上で、第2アンテナエレメント242aを支持部材242cにより支持する構造とした。しかしながら、この例に限らず、第2回路基板242bと支持部材242cとを一体化した部材を用いることも可能である。例えば、第2回路基板242bが備える要素(例えば、マッチング素子等)を支持部材242cに搭載すれば、第2回路基板242bを省略することが可能である。
【0093】
また、第2アンテナエレメント242aで受信した信号をそのままマッチング素子等を経由することなく第1回路基板130bに送信して処理することが可能であれば、第2回路基板242bを省略することも可能である。
【0094】
以上のように、本実施形態において、第2回路基板242bは必須の構成ではない。したがって、支持部材242cをアンテナベース110に直接的に固定して、第2アンテナエレメント242aを支持することも可能である。
【0095】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、上述した実施形態と変形例は、特に技術的な矛盾を生じない限り、それぞれ組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
10…アンテナ装置、22…第1線分、24…第2線分、26…第3線分、28…第4線分、52…隅部、100…アンテナケース、110…アンテナベース、110a…第1領域、110b…第2領域、110c…第3領域、110d…第4領域、110aa、110ab、110ac、110ca、110cb、110cc…領域、112…ボルト部、120…ベースパッド、130…第1アンテナ部、130a…第1アンテナエレメント、130b…第1回路基板、140…第2アンテナ部、142a…第2アンテナエレメント、142b…第2回路基板、144a…第2アンテナエレメント、144b…第2回路基板、150…第3アンテナ部、150a…第3アンテナエレメント、150b…第3回路基板、160…円、240…第2アンテナ部、242a…第2アンテナエレメント、242b…第2回路基板、242c…支持部材、244a…第2アンテナエレメント、244b…第2回路基板、244c…支持部材、41…第1開口部、42…第2開口部、43…第1支持部、44…第2支持部、45…重心、46a~46c…固定点、47…給電点、48…延長線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13