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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】線材供給装置
(51)【国際特許分類】
   B21F 23/00 20060101AFI20220829BHJP
   B65H 57/06 20060101ALI20220829BHJP
   H02G 1/06 20060101ALN20220829BHJP
【FI】
B21F23/00 A
B65H57/06
H02G1/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021072147
(22)【出願日】2021-04-21
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100211502
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】浦山 巧大
(72)【発明者】
【氏名】藤塚 啓司
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-151677(JP,U)
【文献】特開平08-268641(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0130473(EP,A2)
【文献】特開平09-227024(JP,A)
【文献】実開平04-066166(JP,U)
【文献】実開昭63-166568(JP,U)
【文献】特開2001-025868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21F 23/00
B65H 49/10 - 49/32
B65H 57/06
H02G 1/06
H01B 13/00
B23K 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材を円滑に繰り出す線材供給装置であって、
床面に支持されて略垂直に延びる支柱と、
前記支柱の周方向に回動可能に設けられ、前記線材を挿通可能であって水平面に対して傾いて円板状に開口した第一の開口部と、前記第一の開口部よりも上方に位置し前記第一の開口部よりも径が小さい第二の開口部と、前記第二の開口部よりも上方に位置し前記線材の繰り出しを案内する孔部を含める案内ガイドと、を有し、前記支柱を軸として同一の周方向に継続動作が可能な絡まり防止手段と、
芯材に前記線材を巻回して形成し、前記床面と略垂直に配置する複数の電線束と、
を具備し、
前記線材は、前記第一の開口部、前記第二の開口部、及び前記案内ガイドの前記孔部を挿通し、
前記絡まり防止手段は、投影面上で最も前記支柱に近い点が、前記支柱から順に、前記案内ガイドの前記孔部、前記第二の開口部、前記第一の開口部となるよう配置され、前記線材から加わる引張力の大きさに基づいて動作することを特徴とする線材供給装置。
【請求項2】
前記絡まり防止手段の前記第一の開口部及び前記第二の開口部は、前記第一の開口部から前記第二の開口部にかけて前記線材の移動を規制する内壁面を有する一体型のかさの形状に構成されることを特徴とする請求項1に記載の線材供給装置。
【請求項3】
前記第一の開口部及び前記第二の開口部、もしくは、前記かさは、前記支柱から前記床面と略平行に回動可能に設けられた支柱腕と連動して動作することを特徴とする請求項2に記載の線材供給装置。
【請求項4】
材を円滑に繰り出す線材供給装置であって、
床面に支持されて略垂直に延びる支柱と、
前記支柱の周方向に回動可能に設けられ、前記線材を挿通可能であって水平面に対して傾いて円板状に開口した第一の開口部と、
前記第一の開口部よりも上方であって、前記支柱の先端近傍に位置し、前記線材の繰り出しを案内する孔部と、を有し、前記第一の開口部から前記孔部にかけて前記線材の移動を規制する内壁面を有する一体型のかさの形状に構成する絡まり防止手段と、
芯材に前記線材を巻回して形成し、前記床面と略垂直に配置する複数の電線束と、
を具備し、
前記線材は、前記第一の開口部、前記孔部を挿通し、
前記絡まり防止手段は、前記線材から加わる引張力の大きさに基づいて、前記支柱を軸として周方向に動き、同一の周方向に継続動作が可能であることを特徴とする線材供給装置。
【請求項5】
記電線束は、隣接配置した電線束間で巻き終わりと巻き始めとが連続しており、前記電線束の上方に繰り出し、前記絡まり防止手段を挿通して供給する仕組みであって、
複数の前記電線束は、前記支柱からそれぞれの前記電線束の軸心までの間隔が略均等となるように、前記支柱の周囲に2つ以上配置し、
前記絡まり防止手段は、少なくとも前記線材が繰り出されている間は、前記支柱を軸として繰出中の前記電線束の方向に位置することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の線材供給装置。
【請求項6】
それぞれの前記電線束は、前記第一の開口部の軌道の直下と重なる位置に配置することを特徴とする請求項に記載の線材供給装置。
【請求項7】
それぞれの前記電線束は、前記第一の開口部の軌道の直下よりも前記支柱から離れた位置に配置することを特徴とする請求項に記載の線材供給装置。
【請求項8】
それぞれの前記電線束の軸心は、前記孔部と前記第一の開口部の延長線上と重なる位置に配置することを特徴とする請求項または請求項に記載の線材供給装置。
【請求項9】
それぞれの前記電線束は、前記電線束の軸心が、前記絡まり防止手段における前記線材の挿通する軸心と重なる位置に配置することを特徴とする請求項乃至請求項のいずれか一項に記載の線材供給装置。
【請求項10】
前記電線束は階段状に配置することを特徴とする請求項乃至請求項のいずれか一項に記載の線材供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造現場における線材の供給については、従来、予め定められた長さに自動で測長、切断する加工装置へ線材を送る線材供給システムが存在する。そのための線材は、芯材となるボビン等に巻回し、一つの電線束を形成する。巻回された線材を電線束から引き出して供給する際には、捻りやクセが生じないよう、多くのローラや穴を介して線材を引き出せるように工夫が施されている。
【0003】
線材供給のシステムは、例えば、図15に示すように、電線束110と端子圧着機130との間にプレフィーダー120を設置し、弛みを持たせた機構で電線送りを行うものがある。端子圧着機130は、いわゆる線材加工装置であり、線材100の測長、切断、圧着を行う設備である。図15に示す構造で線材を供給する場合には、プレフィーダー12のローラに沿って案内されるものの、線材に動きが生じるとローラから外れやすいという難点がある。また、電線束110から線材100が引き出される方向を支持し線材を案内する別のガイド部材を有さないため、複数の電線束を連ねて配置することは難しいとされていた。複数の電線束の配置が難しいとなると、芯材に巻装された一束分の線材100が全て引き出されると、新たな電線束110に取り換える等の準備が都度必要となってしまい、作業効率が低下してしまう。
【0004】
そこで、効率的に線材を供給することを目的として、あらかじめ複数の電線束を配置し、各電線束の端部を連結させておくことで、連続的に線材を供給可能とした供給システムが存在する。例えば、電線束の搬送機構を帯状に設け、その搬送機構の長手方向に複数の電線束を配置して電線束を一定方向に移動可能とすることで、一つ目の電線束に巻装された線材が終端まで引き出されると搬送機構が動作し、次の電線束からも線材の引き出し位置を同一とした仕組みのものや、電線束の上方にレールと往復移動が可能なガイド部材を設け、引き出し位置を可変とする仕組みのもの、線材の動作を規制する部品を備えて複数の電線束から連続して線材を引き出す仕組みのものが存在する。いずれも、一つ目の電線束の線材を引き出し終えると、連結された次の電線束から線材を引き出すことが可能となっている。
【0005】
また、電線束から線材を引き出して加工装置に送り出す際には、線材の絡まりを防止しつつ適切に供給する必要があるため、線材が通過する軌道上に線材の動きを規制する部材を設け、絡まりの発生を抑制する機能を有するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭58-093514号公報
【文献】特開2015-138661号公報
【文献】特開2014-034465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、いずれも、定められた位置及び個数の電線束を配置する必要があり、状況に応じて電線束の配置数等を変動させるには適していない。電線束を任意の個数設ける必要があった場合、搬送機構や別のガイド部材を用いる際には、部材を増設する必要があり、状況に応じて配置個数を増加させることは難しい。また、線材規制部品を用いる際には、部材の増設の可否に関係なく、動作が規制されるため、任意の個数の配置が難しい。
【0008】
他方、線材が勢いよく引き出される際に電線束が激しく動き、線材が絡まりやすくなるという難点があり、同時に解消可能とした。捻りやクセが生じないよう、ローラだけでなく絡まりを防止する手段や線材がたどる道筋を方向付ける手段を有することが望ましい。また、長期間使用可能とするためにも、複雑なシステムを有する仕組みは適しておらず、動力を用いず単純な仕組みで電線の捻りや絡まりを防止することが求められる。
【0009】
そこで、本実施形態では、供給する線材の電線束数に左右されることなく、任意の個数配置することで、連続的に線材を供給できる仕組みを備える線材供給装置を提供する。また、繰り出された線材がたどる道筋を方向付ける案内ガイドの構成によって、線材にはたらく動力を用いた電気的ではない仕組みで線材の供給切替を可能とすることで、動力を用いずに加工装置に線材を供給することができる。
【0010】
これによれば、準備や設置を目的とした作業時間を格段に減少させるとともに、絡まりや詰まりを原因とした設備停止時間を削減することができ、作業効率の低減を有効に抑制することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の線材供給装置は、材を円滑に繰り出す線材供給装置であって、床面に支持されて略垂直に延びる支柱と、前記支柱の周方向に回動可能に設けられ、前記線材を挿通可能であって水平面に対して傾いて円板状に開口した第一の開口部と、前記第一の開口部よりも上方に位置し前記第一の開口部よりも径が小さい第二の開口部と、前記第二の開口部よりも上方に位置し前記線材の繰り出しを案内する孔部を含める案内ガイドと、を有し、前記支柱を軸として同一の周方向に継続動作が可能な絡まり防止手段と、芯材に前記線材を巻回して形成し、前記床面と略垂直に配置する複数の電線束と、を具備し、前記線材は、前記第一の開口部、前記第二の開口部、及び前記案内ガイドの前記孔部を挿通し、前記絡まり防止手段は、投影面上で最も前記支柱に近い点が、前記支柱から順に、前記案内ガイドの前記孔部、前記第二の開口部、前記第一の開口部となるよう配置され、前記線材から加わる引張力の大きさに基づいて動作する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態の線材供給装置の構成を示す図である。
図2図2は、絡まり防止手段の形状を示す別の例(1)である。
図3図3は、絡まり防止手段の形状を示す別の例(2)である。
図4図4は、絡まり防止手段の形状を示す別の例(3)である。
図5図5は、本実施形態の線材供給装置と電線束の配置を示す図である。
図6図6は、図5を上から見た平面図である。
図7図7は、本実施形態の動作を示す図である。
図8図8は、絡まり防止手段の形状を示す別の例(4)である。
図9図9は、絡まり防止手段の形状を示す別の例(5)である。
図10図10は、絡まり防止手段の形状を示す別の例(6)である。
図11図11は、電線束の配置を示す別の例(1)の平面図である。
図12図12は、電線束の配置を示す別の例(2)の平面図である。
図13図13は、絡まり防止手段と電線束との位置関係を示す図である。
図14図14は、電線束を階段状に配置した図である。
図15図15は、従来の線材供給システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態の線材供給装置について、加工装置に線材を供給するための構成を説明する。
【0014】
図1は、線材供給装置10の構成を示す図である。本実施形態で供給する線材は、芯材となるボビンに巻回して形成した電線束を用いる。線材は、電線束の上方から繰り出し、線材供給装置10を介して加工装置に供給される。
【0015】
線材供給装置10は、支柱11と絡まり防止手段12とから構成される。支柱11は、床面におよそ垂直に立てられており、不図示の支持台や重り等で床面に支持されている。支柱10は、周方向に円滑な動作を可能とした円柱状であることが望ましい。これにより、支柱11は線材供給装置10の軸として、外部からある程度力がかかったとしても重心を安定させることが可能である。絡まり防止手段12は、一方は電線束の外径とほぼ同等の大きさである二つの開口部13a・13bを有するかさ13と、かさ13を支柱11に対して回動可能に接続する支柱腕14と、繰り出された線材の動きを規制し不図示の加工装置へとたどる道筋を方向付ける案内ガイド15と、から成る。
【0016】
かさ13は、円錐台に近い形状であって、下面と上面の二つの底面は有さずに開口部13a・13bを有し、側面のみをポリプロピレン等の素材を用いて形成している。かさ13の素材は、端部や縁が鋭いものでない限りプラスチック全般の他の樹脂でも適用可能である。
【0017】
開口部13aは電線束の外径とほぼ同等の口径を有し、開口部13bは開口部13aに比較して口径が小さい。かさ13は、一方の縁に向かって径が広がっているコップのような形状を想定しており、底を有さないコップをさかさまにして構成するとしてもよい。また、一方の口径が狭まっている形状であれば、例えば漏斗のようにあらかじめ二つの開口部を有する円錐状の器具でも構わない。もしくは、底を有するものであっても、貫通した孔部を形成するなどして、開口部13bに代わるものを有するものとしても構わない。ただし、孔部は余裕を持たせて線材を挿通可能な口径であるとする。
【0018】
かさ13は、大きい方の開口部13aが下向きに、小さい方の開口部13bが上向きになるように支柱腕15に取り付ける。この際、開口部13a・13bの面が、床面に対して角度を有し、支柱11より外側に傾く位置となるようにかさ13を取り付けることで、開口部13aよりも開口部13bの一部が投影面上で支柱に近い位置となるように配置できる。ただし、図2のように開口部13aのおよそ直上部に開口部13bが位置する配置であっても構わない。このようにすることで、引き出す際の線材の方向を制限することが可能となる。
【0019】
開口部13aの径は、線材を巻き付けて保管している電線束の径とほぼ同等である。これにより、電線束の上部から繰り出される線材のたどる経路を適切に制限し、線材を絡みにくくしている。かさ13は、図1等に示すような円錐台でなくても、筒状に近いものでも構わない。または、かさ13は、開口部13a・13bを有していれば良いため形状は限定されず、図3のように間に隙間のあるようなものでも構わない。いずれの場合も、少なくとも、上部と下部に挿通可能な開口部を有するものとする。したがって、二つの開口部13a・13bを有するものであれば内壁面を有するようなものに限られず、図4に少なくとも示すように開口部13a・13bをそれぞれ支柱11に回動可能に設けていても構わない。
【0020】
案内ガイド15は、線材を通す貫通孔15aを有し、支柱11の周方向へ回動可能に取り付けられている。貫通孔15aは、かさ13の開口部13a・13bよりも支柱11の軸に近い位置に設けられることとなる。
【0021】
したがって、絡まり防止手段12において線材が挿通するかさ13の開口部13a・13b及び案内ガイド15の貫通孔15aは、その最も支柱に近い点が、支柱11から順に、貫通孔15a、開口部13b、開口部13aとなる。つまり、支柱から貫通孔15aまでの距離d1、支柱から開口部13bまでの距離d2、支柱から開口部13aまでの距離d3の順に長くなる。このようにして、引き出された線材が送り出される位置を規制することが可能となる。貫通孔15aを挿通した線材は、例えば、支柱の延長線上かつ貫通孔15aよりも上部に設けられた不図示のローラを介して線材加工装置へと送られる。供給の安定性を保ち、ローラから線材が外れることを有効に抑制するために、ローラ直前の貫通孔15aが最も支柱に近い位置に配置される。
【0022】
次に、線材供給装置10と周辺の電線束の配置との関係を説明する。図5は、線材供給装置と電線束の配置を示す図であり、図6図5を上から見た図である。
【0023】
線材供給装置10の周辺には、電線束を配置するための区画20が設けられている。ここでは便宜上区画20として示しているが、広さや形状等は適宜決定してよい。区画20には、梱包箱に入った電線束A・B・C・Dを配置する場所を明確にすることができる。また、配置範囲として区画20を設定してはいるものの、電線束の置台等は必須ではないため、線材供給装置を構成する部品を少なくすることができ、より単純で使用しやすい形状となる。電線束A・B・C・Dは全て同じ線材が巻き付けられており、かさ13は始めに供給する電線束Aの直上近傍かそれよりも支柱11側に配置する。電線束A・B・C・Dは、支柱11を中心に、支柱11から均等の距離だけ離れている。
【0024】
また、それぞれの電線束の接続関係としては、線材が巻回形態に維持された電線束A・B・C・Dは、端部を次の電線束の端部にあらかじめ取り付けておく。1つ目の電線束Aの終端と2つ目の電線束Bの先端をテープ等で接続し、2つ目の電線束Bの終端もまた次の3つ目の電線束Cの先端とを接続する。このようにしてすべての電線束を接続すると、端部A1から端部D2まで巻き終わりと巻き始めとが連続した一本の長い線材1となる。また、電線束を梱包する箱には、図6に示すように、切り欠き部21等を設けることが好ましい。切り欠き部21にひっかけるようにして線材を配置することで、線材の供給装置へ引き出される部分と、次の電線束へ接続するつながる部分との絡まりを防止することが可能となる。
【0025】
ここから図7を用いて、線材供給装置における、線状部材の供給の流れの動作を説明する。
【0026】
まず、線材1をかさ13の下方(開口部13a)から上方(開口部13b)に向け挿通し、案内ガイド15の貫通孔15aに通す。貫通孔15aから出た線材1は、ローラ等を介して図示せぬ線材加工装置へと供給する(ステップI)。線材1は、電線束の径とほぼ同じ大きさの径を有するかさ13の開口部13aから入り、かさ13の内壁面をたどって反対側の開口部13bに出る。一つの電線束Aを引き出し終えると、それまで供給していた電線束Aのおよそ上部に位置していた絡まり防止手段12が、端部同士のつながった電線束Bの方に引っ張られ(ステップII)、電線束Bの上部に位置することとなる(ステップIII)。このようにして、定位置に配置した電線束から線材が繰り出されるときには、供給する電線束周辺に引き寄せるために線材の引張力が加わることで、その力の大きさに基づいてかさ13が支柱を軸として周方向に動作する。ステップIからIIIを繰り返し、電線束Bの次は電線束C、電線束Dの上部へと絡まり防止手段12が支柱11の周方向に移動することで、四つの電線束A・B・C・Dの線材1を連続的に供給することが可能となる。これによって、絡まり防止手段12は、電線束の変わり目の度に、支柱11を軸とした周方向に引っ張られ、同じ方向に移動していくことによって最大360°動き、一周することとなる。
【0027】
以上のようにI~IIIのステップで、線材供給装置10を介して送り出しの作業を行うことで、線材1を加工装置に供給させることができる。絡まり防止手段12のかさ13は、線材1の張力により、次の電線束の上部に自動的に配置され、線材1はかさ13の内壁面をたどることで線材加工装置からの張力で暴れる線材を抑えることができ、線材の絡まりを防止することが可能である。
【0028】
ここで、目的を実現し得る他の機構を示す。例えば、図8図9に示すように、絡まり防止手段12のうち、かさ16を直接支柱11に設ける形としても良い。図8図9いずれの場合も、二つの開口部を有するものとする。かさ16は、図1におけるかさ13と支柱腕14の機能が一体となったものである。このとき、図1と同様に、支柱11の上部に線材1の方向を規制する案内ガイド15を設け、かさ16の移動範囲となる軌道の直下部かそれよりも外側に複数の電線束を配置することで、回動可能なかさ16と案内ガイド15を介して線材1を加工装置に送ることができる。これらの構成を用いると線材供給装置10を成立させるための部品数の削減が可能である。
【0029】
その他、かさ13は、かさ状のバネや他の材質であってもよく、バネを用いる場合は、伸縮性があるため、上方向に引っ張られる際に線材1にかかる力を逃がすはたらきがある。また、電線束の線材が絡まったまま引っ張られる等して、かさ13に衝突してしまったとしても弾力で振り払いやすく、電線束の激しい動きによる絡まりの発生、いわゆるばたつきを抑制することができる。
【0030】
また、図10に示すように、支柱11の頂部近傍まであるかさ17から成る機構であっても構わない。絡まり防止手段12は、上述したように案内ガイド15とかさ18の二つで構成されずとも、これらが一体型となったものでよい。かさ17は、開口部17a・17bを有し、開口部17bは、線材が挿通可能な程度に開口しており、線材1の出口である開口部17bは、線材加工装置に経路を案内するガイドと同じ役割を有する。この構成を用いると図8図9よりも部品数が少なくなり、点検や取替の手間を減らすことが可能である。
【0031】
次に、電線束の配置方法について説明する。本実施形態では4つの電線束を配置しているが、支柱の周囲に配置できるのであれば個数は任意に設定できるため、2つや3つ、5つ等でも構わない。この場合は、支柱から各電線束までの距離は略同等となるよう、支柱を軸としてほぼ対称に配置することができればなお良い。
【0032】
図11図12は、複数の電線束の配置方法の例であり、これらは床面に対して上から見た平面図である。ここでは、支柱腕を持たない構成の線材供給装置であるとしている。かさ16の移動範囲となる軌道の直下部に電線束を配置している。軌道のほぼ直下部に配置するためには、支柱11を中心に対象の位置となることが望ましい。なお、図11は梱包箱で配置する様子を示しており、図12は梱包箱から電線束を取り出した状態での配置の様子を示している。いずれの場合も、複数の電線束のそれぞれが接触しないように配置する。このように、複数の電線束を所定の条件下で自由に配置できるため、線材の種類や状況などに応じて適切に配置場所を検討することができる。また複数の電線束を配置できれば、一度に供給可能な電線長が長くなり、作業員の電線束の取り換え及び準備の頻度が下がる。
【0033】
また、電線束の配置位置としてはかさの直下よりも外側に配置すると前に説明しているが、特に、図13に示すように、特に支柱腕14を有する構造の場合は、案内ガイド15とかさ13のおよそ延長線上に電線束を配置するとなお良い。つまり、引き出す際に線材1がたどる道筋の軸心と重なるように絡まり防止手段12を有する。電線束、かさ13、案内ガイド15が同軸上に存在することとなる。かさ13の角度や開口部13a・13bに対応して、電線束は任意に配置調整可能である。これによれば、直下に配置する場合に比べて捻り等のクセが生じる可能性を削減させることができる。このように支柱11から離れた位置に電線束を配置すると、支柱11を軸としてドーナツ状に複数の電線束が配置されることとなり、直下に配置する場合に比較してより多くの電線束を配置することが可能である。また、特別な部材を加える必要はないため、電線束の配置個数を自由に決定することが可能となる。それぞれは終端と始端を繋いでおくこととする。
【0034】
その他、図14に示すように、階段状に電線束を配置する方法をとっても構わない。これによれば、配置に適した電線束の個数及び位置が明瞭となり、配置の際に作業員が考える手間等を無くすことができる。
【0035】
以上に述べたように、本実施形態の線材供給装置によれば、一度に複数の電線束を配置し、供給の際の電線束切り替わり時にも問題を生じさせることなく円滑に絡まり防止手段が機能するため、絡まり等を防止しつつ複数の電線束から適切に線材を引き出し、加工装置へと供給することができる。また、電線の種類や電線束の大きさ、配置できるスペース、作業者の作業頻度等状況に合わせてセッティングする電線束の個数や位置を任意に決定できるため汎用性が十分にある。このようにすれば、線材の供給効率を向上させることができ、より的確に多くの線材を加工することができる。
【0036】
また、本実施形態の線材供給装置は、動力を必要としない構成のため、従来例に比較してより複雑な仕組みとなることなく、スムーズな線材供給を実現することが可能である。さらに、設置の状況に応じて絡まり防止手段の構成を選定することで、電線束の配置範囲を縮小でき、広さに制限がある場合も適用可能となる。
【0037】
本発明の実施形態は、いずれも例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、そのほかの様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1…線材、
10…線材供給装置、11…支柱、12…絡まり防止手段、
13…かさ、13a…開口部(第一の開口部)、13b…開口部(第二の開口部)、14…支柱腕、
15…案内ガイド、15a…貫通孔(孔部)、
16…かさ、17…かさ、17a…開口部(第一の開口部)、17b…貫通孔(孔部)、
20…電線置台(区画)、A・B・C・D…電線束、A1・D2…端部、21…切り欠き部、
100…線材、110…電線束、120…プレフィーダー、130…端子圧着機
【要約】      (修正有)
【課題】供給する線材の電線束数に左右されることなく、任意の個数配置で、連続的に線材を供給できる仕組みを備える線材供給装置を提供する。
【解決手段】芯材に巻回された線材A、B、C及びDを円滑に繰り出す線材供給装置10であって、床面に支持されて略垂直に延びる支柱と、支柱の周方向に回動可能に設けられ、線材を挿通可能であって円板状に開口した第一の開口部と、それよりも上方に位置し第一の開口部よりも径が小さい第二の開口部と、それよりも上方に位置し線材の繰り出しを案内する孔部を含める案内ガイドと、を有する絡まり防止手段と、を具備し、線材A、B、C及びDは、第一の開口部、第二の開口部、案内ガイドの孔部を挿通し、絡まり防止手段は、線材から加わる引張力の大きさに基づいて、支柱を軸として周方向に動き、同一の周方向に継続動作が可能とする。
【選択図】図5
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