(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】イメージングシステム、イメージング処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
G01N21/27 A
(21)【出願番号】P 2021112795
(22)【出願日】2021-07-07
(62)【分割の表示】P 2016241355の分割
【原出願日】2016-12-13
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】大槻 盛一
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-154628(JP,A)
【文献】国際公開第2013/002349(WO,A1)
【文献】特開2013-30626(JP,A)
【文献】特開平10-83455(JP,A)
【文献】国際公開第2014/199720(WO,A1)
【文献】特開平4-352078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある物体を撮像してマルチスペクトル画像を取得するマルチスペクトルカメラと、
前記物体を撮像してカラー画像を取得するRGBカメラと、
複数の物体が写された前記マルチスペクトル画像から予め求められ、前記物体の種別ごとに特有の分光特性を示すスペクトル情報を保持するスペクトル情報保持部と、
前記マルチスペクトルカメラにより取得された前記マルチスペクトル画像において教師データを生成する対象となる物体の分光特性を表すスペクトル情報を取得し、
前記スペクトル情報保持部に保持されている複数の前記スペクトル情報のうち、その取得したスペクトル情報と最も高い類似度の前記スペクトル情報に対応付けられている種別を認識結果として取得し、
前記RGBカメラにより取得された前記カラー画像に前記認識結果を付加した教師データを記憶装置に記憶させる
処理装置と
を備えるイメージングシステム。
【請求項2】
前記処理装置は、
前記最も高い類似度を所定の閾値と比較し、
前記最も高い類似度が前記閾値よりも大きい場合のみ、前記最も高い類似度の前記スペクトル情報に対応付けられている種別を前記認識結果として取得して、その認識結果を前記カラー画像に付加する
請求項1に記載のイメージングシステム。
【請求項3】
前記処理装置は、前記マルチスペクトルカメラから供給されるマルチスペクトル画像において前記教師データを生成する対象となる前記物体が写されている領域における分光特性を抽出することで、その物体の分光特性を表すスペクトル情報を取得する
請求項1に記載のイメージングシステム。
【請求項4】
前記マルチスペクトルカメラおよび前記RGBカメラは、多波長を検出可能な1台のカメラにより構成される
請求項1に記載のイメージングシステム。
【請求項5】
前記記憶装置に記憶されている前記教師データを読み出して、同一の種別の物体が写されている複数枚の画像について、それらの物体に共通する特徴を抽出する学習を行う学習器を
をさらに備える請求項1に記載のイメージングシステム。
【請求項6】
前記学習器は、前記学習を行った学習結果を使用して物体認識を行う
請求項5に記載のイメージングシステム。
【請求項7】
前記学習器は、前記RGBカメラにより撮像された前記カラー画像に写されている物体の特徴と、予め学習した特徴とを比較することにより、そのカラー画像に写されている物体の種別を認識した認識結果を出力する
請求項6に記載のイメージングシステム。
【請求項8】
前記学習器から供給される認識結果、および、前記RGBカメラにより撮像されたカラー画像を表示する表示部
をさらに備える請求項7に記載のイメージングシステム。
【請求項9】
前記表示部は、前記認識結果である前記物体の種別を示す名称を、前記カラー画像に重畳させて表示する
請求項8に記載のイメージングシステム。
【請求項10】
対象の物体を定量的に評価する、その対象の物体の種別に適した評価指標を算出するのに必要な指標計算式および係数を前記認識結果に従って自動に選択し、前記マルチスペクトル画像に基づいて前記評価指標を算出する評価指標算出部
をさらに備える請求項1に記載のイメージングシステム。
【請求項11】
ある物体を撮像してマルチスペクトル画像を取得するマルチスペクトルカメラと、
前記物体を撮像してカラー画像を取得するRGBカメラと、
複数の物体が写された前記マルチスペクトル画像から予め求められ、前記物体の種別ごとに特有の分光特性を示すスペクトル情報を保持するスペクトル情報保持部と
を備えるイメージングシステムが、
前記マルチスペクトルカメラにより取得された前記マルチスペクトル画像において教師データを生成する対象となる物体の分光特性を表すスペクトル情報を取得することと、
前記スペクトル情報保持部に保持されている複数の前記スペクトル情報のうち、その取得したスペクトル情報と最も高い類似度の前記スペクトル情報に対応付けられている種別を認識結果として取得することと、
前記RGBカメラにより取得された前記カラー画像に前記認識結果を付加した教師データを記憶装置に記憶させることと
を含むイメージング処理方法。
【請求項12】
ある物体を撮像してマルチスペクトル画像を取得するマルチスペクトルカメラと、
前記物体を撮像してカラー画像を取得するRGBカメラと、
複数の物体が写された前記マルチスペクトル画像から予め求められ、前記物体の種別ごとに特有の分光特性を示すスペクトル情報を保持するスペクトル情報保持部と
を備えるイメージングシステムのコンピュータに、
前記マルチスペクトルカメラにより取得された前記マルチスペクトル画像において教師データを生成する対象となる物体の分光特性を表すスペクトル情報を取得することと、
前記スペクトル情報保持部に保持されている複数の前記スペクトル情報のうち、その取得したスペクトル情報と最も高い類似度の前記スペクトル情報に対応付けられている種別を認識結果として取得することと、
前記RGBカメラにより取得された前記カラー画像に前記認識結果を付加した教師データを記憶装置に記憶させることと
を含むイメージング処理を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イメージングシステム、イメージング処理方法、およびプログラムに関し、特に、物体に対するラベリング処理を自動化することができるようにしたイメージングシステム、イメージング処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、広域な領域で育成されている様々な作物が写されている画像から、それらの作物の種別などを認識して、作物ごとに収穫量を予測する収穫予測装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、プラズモンフィルタを用いて、所定の狭い波長帯域(狭帯域)の光(以下、狭帯域光とも称する)を検出する撮像素子が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-6612号公報
【文献】特開2010-165718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したように画像に写されている作物の種別の認識などのように、画像から物体を認識する物体認識処理では、一般的に、大量の教師データを用いて事前に機械学習を行う必要があった。従来、例えば、目視により物体を判断してラベリングすることによって教師データを生成していたため、大量の教師データを用意するためには膨大な工数を要することになっていなっていた。
【0006】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、物体のラベリングを自動化することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面のイメージングシステムは、ある物体を撮像してマルチスペクトル画像を取得するマルチスペクトルカメラと、前記物体を撮像してカラー画像を取得するRGBカメラと、複数の物体が写された前記マルチスペクトル画像から予め求められ、前記物体の種別ごとに特有の分光特性を示すスペクトル情報を保持するスペクトル情報保持部と、前記マルチスペクトルカメラにより取得された前記マルチスペクトル画像において教師データを生成する対象となる物体の分光特性を表すスペクトル情報を取得し、前記スペクトル情報保持部に保持されている複数の前記スペクトル情報のうち、その取得したスペクトル情報と最も高い類似度の前記スペクトル情報に対応付けられている種別を認識結果として取得し、前記RGBカメラにより取得された前記カラー画像に前記認識結果を付加した教師データを記憶装置に記憶させる処理装置とを備える。
【0008】
本開示の一側面のイメージング処理方法またはプログラムは、ある物体を撮像してマルチスペクトル画像を取得するマルチスペクトルカメラと、前記物体を撮像してカラー画像を取得するRGBカメラと、複数の物体が写された前記マルチスペクトル画像から予め求められ、前記物体の種別ごとに特有の分光特性を示すスペクトル情報を保持するスペクトル情報保持部とを備えるイメージングシステムが、または、そのイメージングシステムのコンピュータに、前記マルチスペクトルカメラにより取得された前記マルチスペクトル画像において教師データを生成する対象となる物体の分光特性を表すスペクトル情報を取得することと、前記スペクトル情報保持部に保持されている複数の前記スペクトル情報のうち、その取得したスペクトル情報と最も高い類似度の前記スペクトル情報に対応付けられている種別を認識結果として取得することと、前記RGBカメラにより取得された前記カラー画像に前記認識結果を付加した教師データを記憶装置に記憶させることとを含む。
【0009】
本開示の一側面においては、マルチスペクトルカメラにより取得されたマルチスペクトル画像において教師データを生成する対象となる物体の分光特性を表すスペクトル情報が取得され、スペクトル情報保持部に保持されている複数のスペクトル情報のうち、その取得されたスペクトル情報と最も高い類似度のスペクトル情報に対応付けられている種別が認識結果として取得され、RGBカメラにより取得されたカラー画像に認識結果が付加された教師データが記憶装置に記憶される。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一側面によれば、物体のラベリングを自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本技術を適用した撮像装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【
図2】撮像素子の回路の構成例を示すブロック図である。
【
図3】撮像素子の第1の実施形態の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図4】ホールアレイ構造のプラズモンフィルタの構成例を示す図である。
【
図5】表面プラズモンの分散関係を示すグラフである。
【
図6】ホールアレイ構造のプラズモンフィルタのスペクトル情報の第1の例を示すグラフである。
【
図7】ホールアレイ構造のプラズモンフィルタのスペクトル情報の第2の例を示すグラフである。
【
図8】プラズモンモードと導波管モードを示すグラフである。
【
図9】表面プラズモンの伝搬特性の例を示すグラフである。
【
図10】ホールアレイ構造のプラズモンフィルタの他の構成例を示す図である。
【
図11】2層構造のプラズモンフィルタの構成例を示す図である。
【
図12】ドットアレイ構造のプラズモンフィルタの構成例を示す図である。
【
図13】ドットアレイ構造のプラズモンフィルタのスペクトル情報の例を示すグラフである。
【
図14】GMRを用いたプラズモンフィルタの構成例を示す図である。
【
図15】GMRを用いたプラズモンフィルタのスペクトル情報の例を示すグラフである。
【
図16】撮像素子の第2の実施形態の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図17】撮像装置のフレアの発生の様子を模式的に示す図である。
【
図18】撮像装置のフレアの低減方法を説明するための図である。
【
図19】狭帯域フィルタと透過フィルタのスペクトル情報の第1の例を示すグラフである。
【
図20】狭帯域フィルタと透過フィルタのスペクトル情報の第2の例を示すグラフである。
【
図21】狭帯域フィルタと透過フィルタのスペクトル情報の第3の例を示すグラフである。
【
図22】撮像素子の第3の実施形態の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図23】本技術を適用した教師データ生成システムの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【
図24】物体認識システムの構成例を示すブロック図である。
【
図25】教師データ生成処理を説明するフローチャートである。
【
図26】本技術を適用した評価指標提示システムの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【
図27】評価指標提示システムが搭載された情報処理端末の使用例を説明する図である。
【
図28】評価指標提示処理を説明するフローチャートである。
【
図29】コンピュータの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【
図30】本技術を適用し得る積層型の固体撮像装置の構成例の概要を示す図である。
【
図32】食品のうまみや鮮度を検出する場合の検出帯域の例を示す図である。
【
図33】果物の糖度や水分を検出する場合の検出帯域の例を示す図である。
【
図34】プラスチックの分別を行う場合の検出帯域の例を示す図である。
【
図35】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図36】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図37】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図38】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)について図面を用いて詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.撮像装置の実施形態
2.マルチスペクトル画像の利用例
3.変形例
4.応用例
【0013】
<<1.撮像装置の実施形態>>
まず、
図1乃至
図22を参照して、本技術の撮像装置の実施形態について説明する。
【0014】
<撮像装置の構成例>
図1は、本技術を適用した電子機器の一種である撮像装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【0015】
図1の撮像装置10は、例えば、静止画及び動画のいずれも撮像することが可能なデジタルカメラからなる。また、撮像装置10は、例えば、色の3原色若しくは等色関数に基づく従来のR(赤)、G(緑)、B(青)、又は、Y(黄)、M(マゼンダ)、C(シアン)の3つの波長帯域(3バンド)より多い4以上の波長帯域(4バンド以上)の光(マルチスペクトル)を検出可能なマルチスペクトルカメラからなる。
【0016】
撮像装置10は、光学系11、撮像素子12、メモリ13、信号処理部14、出力部15、及び、制御部16を備える。
【0017】
光学系11は、例えば、図示せぬズームレンズ、フォーカスレンズ、絞り等を備え、外部からの光を、撮像素子12に入射させる。また、光学系11には、必要に応じて偏光フィルタ等の各種のフィルタが設けられる。
【0018】
撮像素子12は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサからなる。撮像素子12は、光学系11からの入射光を受光し、光電変換を行って、入射光に対応する画像データを出力する。
【0019】
メモリ13は、撮像素子12が出力する画像データを一時的に記憶する。
【0020】
信号処理部14は、メモリ13に記憶された画像データを用いた信号処理(例えば、ノイズの除去、ホワイトバランスの調整等の処理)を行い、出力部15に供給する。
【0021】
出力部15は、信号処理部14からの画像データを出力する。例えば、出力部15は、液晶等で構成されるディスプレイ(不図示)を有し、信号処理部14からの画像データに対応するスペクトル(画像)を、いわゆるスルー画として表示する。例えば、出力部15は、半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等の記録媒体を駆動するドライバ(不図示)を備え、信号処理部14からの画像データを記録媒体に記録する。例えば、出力部15は、図示せぬ外部の装置との通信を行う通信インタフェースとして機能し、信号処理部14からの画像データを、外部の装置に無線又は有線で送信する。
【0022】
制御部16は、ユーザの操作等に従い、撮像装置10の各部を制御する。
【0023】
<撮像素子の回路の構成例>
図2は、
図1の撮像素子12の回路の構成例を示すブロック図である。
【0024】
撮像素子12は、画素アレイ31、行走査回路32、PLL(Phase Locked Loop)33、DAC(Digital Analog Converter)34、カラムADC(Analog Digital Converter)回路35、列走査回路36、及び、センスアンプ37を備える。
【0025】
画素アレイ31には、複数の画素51が2次元に配列されている。
【0026】
画素51は、行走査回路32に接続される水平信号線Hと、カラムADC回路35に接続される垂直信号線Vとが交差する点にそれぞれ配置されており、光電変換を行うフォトダイオード61と、蓄積された信号を読み出すための数種類のトランジスタを備える。すなわち、画素51は、
図2の右側に拡大して示されているように、フォトダイオード61、転送トランジスタ62、フローティングディフュージョン63、増幅トランジスタ64、選択トランジスタ65、及び、リセットトランジスタ66を備える。
【0027】
フォトダイオード61に蓄積された電荷は、転送トランジスタ62を介してフローティングディフュージョン63に転送される。フローティングディフュージョン63は、増幅トランジスタ64のゲートに接続されている。画素51が信号の読み出しの対象となると、行走査回路32から水平信号線Hを介して選択トランジスタ65がオンにされ、選択された画素51の信号は、増幅トランジスタ64をソースフォロワ(Source Follower)駆動することで、フォトダイオード61に蓄積された電荷の蓄積電荷量に対応する画素信号として、垂直信号線Vに読み出される。また、画素信号はリセットトランジスタ66をオンすることでリセットされる。
【0028】
行走査回路32は、画素アレイ31の画素51の駆動(例えば、転送、選択、リセット等)を行うための駆動信号を、行ごとに順次、出力する。
【0029】
PLL33は、外部から供給されるクロック信号に基づいて、撮像素子12の各部の駆動に必要な所定の周波数のクロック信号を生成して出力する。
【0030】
DAC34は、所定の電圧値から一定の傾きで電圧が降下した後に所定の電圧値に戻る形状(略鋸形状)のランプ信号を生成して出力する。
【0031】
カラムADC回路35は、比較器71及びカウンタ72を、画素アレイ31の画素51の列に対応する個数だけ有しており、画素51から出力される画素信号から、CDS(Correlated Double Sampling:相関2重サンプリング)動作により信号レベルを抽出して、画素データを出力する。すなわち、比較器71が、DAC34から供給されるランプ信号と、画素51から出力される画素信号(輝度値)とを比較し、その結果得られる比較結果信号をカウンタ72に供給する。そして、カウンタ72が、比較器71から出力される比較結果信号に応じて、所定の周波数のカウンタクロック信号をカウントすることで、画素信号がA/D変換される。
【0032】
列走査回路36は、カラムADC回路35のカウンタ72に、順次、所定のタイミングで、画素データを出力させる信号を供給する。
【0033】
センスアンプ37は、カラムADC回路35から供給される画素データを増幅し、撮像素子12の外部に出力する。
【0034】
<撮像素子の第1の実施形態>
図3は、
図1の撮像素子12の第1の実施形態である撮像素子12Aの断面の構成例を模式的に示している。
図3には、撮像素子12の画素51-1乃至画素51-4の4画素分の断面が示されている。なお、以下、画素51-1乃至画素51-4を個々に区別する必要がない場合、単に画素51と称する。
【0035】
各画素51においては、上から順に、オンチップマイクロレンズ101、層間膜102、狭帯域フィルタ層103、層間膜104、光電変換素子層105、及び、信号配線層106が積層されている。すなわち、撮像素子12は、光電変換素子層105が信号配線層106より光の入射側に配置された裏面照射型のCMOSイメージセンサからなる。
【0036】
オンチップマイクロレンズ101は、各画素51の光電変換素子層105に光を集光するための光学素子である。
【0037】
層間膜102及び層間膜104は、SiO2等の誘電体からなる。後述するように、層間膜102及び層間膜104の誘電率は、できる限り低い方が望ましい。
【0038】
狭帯域フィルタ層103には、所定の狭い波長帯域(狭帯域)の狭帯域光を透過する光学フィルタである狭帯域フィルタNBが各画素51に設けられている。例えば、アルミニウム等の金属製の薄膜を用いた金属薄膜フィルタの一種であり、表面プラズモンを利用したプラズモンフィルタが、狭帯域フィルタNBに用いられる。また、狭帯域フィルタNBの透過帯域は、画素51毎に設定される。狭帯域フィルタNBの透過帯域の種類(バンド数)は任意であり、例えば、4以上に設定される。
【0039】
ここで、狭帯域とは、例えば、色の3原色若しくは等色関数に基づく従来のR(赤)、G(緑)、B(青)、又は、Y(黄)、M(マゼンダ)、C(シアン)のカラーフィルタの透過帯域より狭い波長帯域のことである。また、以下、狭帯域フィルタNBを透過した狭帯域光を受光する画素を、マルチスペクトル画素又はMS画素と称する。
【0040】
光電変換素子層105は、例えば、
図2のフォトダイオード61等を備え、狭帯域フィルタ層103(狭帯域フィルタNB)を透過した光(狭帯域光)を受光し、受光した光を電荷に変換する。また、光電変換素子層105は、各画素51間が素子分離層により電気的に分離されて構成されている。
【0041】
信号配線層106には、光電変換素子層105に蓄積された電荷を読み取るための配線等が設けられる。
【0042】
<プラズモンフィルタについて>
次に、
図4乃至
図15を参照して、狭帯域フィルタNBに用いることが可能なプラズモンフィルタについて説明する。
【0043】
図4は、ホールアレイ構造のプラズモンフィルタ121Aの構成例を示している。
【0044】
プラズモンフィルタ121Aは、金属製の薄膜(以下、導体薄膜と称する)131Aにホール132Aがハニカム状に配置されたプラズモン共鳴体により構成されている。
【0045】
各ホール132Aは、導体薄膜131Aを貫通しており、導波管として作用する。一般的に導波管には、辺の長さや直径などの形状により決まる遮断周波数及び遮断波長が存在し、それ以下の周波数(それ以上の波長)の光は伝搬しないという性質がある。ホール132Aの遮断波長は、主に開口径D1に依存し、開口径D1が小さいほど遮断波長も短くなる。なお、開口径D1は透過させたい光の波長よりも小さい値に設定される。
【0046】
一方、光の波長以下の短い周期でホール132Aが周期的に形成されている導体薄膜131Aに光が入射すると、ホール132Aの遮断波長より長い波長の光を透過する現象が発生する。この現象をプラズモンの異常透過現象という。この現象は、導体薄膜131Aとその上層の層間膜102との境界において表面プラズモンが励起されることによって発生する。
【0047】
ここで、
図5を参照して、プラズモンの異常透過現象(表面プラズモン共鳴)の発生条件について説明する。
【0048】
図5は、表面プラズモンの分散関係を示すグラフである。グラフの横軸は角波数ベクトルkを示し、縦軸は角周波数ωを示している。ω
pは導体薄膜131Aのプラズマ周波数を示している。ω
spは層間膜102と導体薄膜131Aとの境界面における表面プラズマ周波数を示しており、次式(1)により表される。
【0049】
【0050】
εdは、層間膜102を構成する誘電体の誘電率を示している。
【0051】
式(1)より、表面プラズマ周波数ωspは、プラズマ周波数ωpが高くなるほど高くなる。また、表面プラズマ周波数ωspは、誘電率εdが小さくなるほど、高くなる。
【0052】
線L1は、光の分散関係(ライトライン)を示し、次式(2)で表される。
【0053】
【0054】
cは、光速を示している。
【0055】
線L2は、表面プラズモンの分散関係を表し、次式(3)で表される。
【0056】
【0057】
εmは、導体薄膜131Aの誘電率を示している。
【0058】
線L2により表される表面プラズモンの分散関係は、角波数ベクトルkが小さい範囲では、線L1で表されるライトラインに漸近し、角波数ベクトルkが大きくなるにつれて、表面プラズマ周波数ωspに漸近する。
【0059】
そして、次式(4)が成り立つとき、プラズモンの異常透過現象が発生する。
【0060】
【0061】
λは、入射光の波長を示している。θは、入射光の入射角を示している。Gx及びGyは、次式(5)で表される。
【0062】
|Gx|=|Gy|=2π/a0 ・・・(5)
【0063】
a0は、導体薄膜131Aのホール132Aからなるホールアレイ構造の格子定数を示している。
【0064】
式(4)の左辺は、表面プラズモンの角波数ベクトルを示し、右辺は、導体薄膜131Aのホールアレイ周期の角波数ベクトルを示している。従って、表面プラズモンの角波数ベクトルと導体薄膜131Aのホールアレイ周期の角波数ベクトルが等しくなるとき、プラズモンの異常透過現象が発生する。そして、このときのλの値が、プラズモンの共鳴波長(プラズモンフィルタ121Aの透過波長)となる。
【0065】
なお、式(4)の左辺の表面プラズモンの角波数ベクトルは、導体薄膜131Aの誘電率εm及び層間膜102の誘電率εdにより決まる。一方、右辺のホールアレイ周期の角波数ベクトルは、光の入射角θ、及び、導体薄膜131Aの隣接するホール132A間のピッチ(ホールピッチ)P1により決まる。従って、プラズモンの共鳴波長及び共鳴周波数は、導体薄膜131Aの誘電率εm、層間膜102の誘電率εd、光の入射角θ、及び、ホールピッチP1により決まる。なお、光の入射角が0°の場合、プラズモンの共鳴波長及び共鳴周波数は、導体薄膜131Aの誘電率εm、層間膜102の誘電率εd、及び、ホールピッチP1により決まる。
【0066】
従って、プラズモンフィルタ121Aの透過帯域(プラズモンの共鳴波長)は、導体薄膜131Aの材質及び膜厚、層間膜102の材質及び膜厚、ホールアレイのパターン周期(例えば、ホール132A開口径D1及びホールピッチP1)等により変化する。特に、導体薄膜131A及び層間膜102の材質及び膜厚が決まっている場合、プラズモンフィルタ121Aの透過帯域は、ホールアレイのパターン周期、特にホールピッチP1により変化する。すなわち、ホールピッチP1が狭くなるにつれて、プラズモンフィルタ121Aの透過帯域は短波長側にシフトし、ホールピッチP1が広くなるにつれて、プラズモンフィルタ121Aの透過帯域は長波長側にシフトする。
【0067】
図6は、ホールピッチP1を変化させた場合のプラズモンフィルタ121Aの分光特性の例を示すグラフである。グラフの横軸は波長(単位はnm)を示し、縦軸は感度(単位は任意単位)を示している。線L11は、ホールピッチP1を250nmに設定した場合の分光特性を示し、線L12は、ホールピッチP1を325nmに設定した場合の分光特性を示し、線L13は、ホールピッチP1を500nmに設定した場合の分光特性を示している。
【0068】
ホールピッチP1を250nmに設定した場合、プラズモンフィルタ121Aは、主に青色の波長帯域の光を透過する。ホールピッチP1を325nmに設定した場合、プラズモンフィルタ121Aは、主に緑色の波長帯域の光を透過する。ホールピッチP1を500nmに設定した場合、プラズモンフィルタ121Aは、主に赤色の波長帯域の光を透過する。ただし、ホールピッチP1を500nmに設定した場合、プラズモンフィルタ121Aは、後述する導波管モードにより、赤色より低波長の帯域の光も多く透過する。
【0069】
図7は、ホールピッチP1を変化させた場合のプラズモンフィルタ121Aの分光特性の他の例を示すグラフである。グラフの横軸は波長(単位はnm)を示し、縦軸は感度(単位は任意単位)を示している。この例では、ホールピッチP1を250nmから625nmまで25nm刻みで変化させた場合の16種類のプラズモンフィルタ121Aの分光特性の例を示している。
【0070】
なお、プラズモンフィルタ121Aの透過率は、主にホール132Aの開口径D1により決まる。開口径D1が大きくなるほど透過率が高くなる一方、混色が発生しやすくなる。一般的に、開口率がホールピッチP1の50%~60%になるように開口径D1を設定することが望ましい。
【0071】
また、上述したように、プラズモンフィルタ121Aの各ホール132Aは、導波管として作用する。従って、プラズモンフィルタ121Aのホールアレイのパターンによっては、分光特性において、表面プラズモン共鳴により透過される波長成分(プラズモンモードにおける波長成分)だけでなく、ホール132A(導波管)を透過する波長成分(導波管モードにおける波長成分)が大きくなる場合がある。
【0072】
図8は、
図6の線L13により表される分光特性と同様に、ホールピッチP1を500nmに設定した場合のプラズモンフィルタ121Aの分光特性を示している。この例において、630nm付近の遮断波長より長波長側がプラズモンモードにおける波長成分であり、遮断波長より短波長側が導波管モードにおける波長成分である。
【0073】
上述したように、遮断波長は、主にホール132Aの開口径D1に依存し、開口径D1が小さいほど遮断波長も短くなる。そして、遮断波長とプラズモンモードにおけるピーク波長との間の差をより大きくするほど、プラズモンフィルタ121Aの波長分解能特性が向上する。
【0074】
また、上述したように、導体薄膜131Aのプラズマ周波数ωpが高くなるほど、導体薄膜131Aの表面プラズマ周波数ωspが高くなる。また、層間膜102の誘電率εdが小さくなるほど、表面プラズマ周波数ωspが高くなる。そして、表面プラズマ周波数ωspが高くなるほど、プラズモンの共鳴周波数をより高く設定することができ、プラズモンフィルタ121Aの透過帯域(プラズモンの共鳴波長)をより短い波長帯域に設定することが可能になる。
【0075】
従って、プラズマ周波数ωpがより小さい金属を導体薄膜131Aに用いた方が、プラズモンフィルタ121Aの透過帯域をより短い波長帯域に設定することが可能になる。例えば、アルミニウム、銀、金等が好適である。ただし、透過帯域を赤外光などの長い波長帯域に設定する場合には、銅なども用いることが可能である。
【0076】
また、誘電率εdがより小さい誘電体を層間膜102に用いた方が、プラズモンフィルタ121Aの透過帯域をより短い波長帯域に設定することが可能になる。例えば、SiO2、Low-K等が好適である。
【0077】
また、
図9は、導体薄膜131Aにアルミニウムを用い、層間膜102にSiO2を用いた場合の導体薄膜131Aと層間膜102の界面における表面プラズモンの伝搬特性を示すグラフである。グラフの横軸は光の波長(単位はnm)を示し、縦軸は伝搬距離(単位はμm)を示している。また、線L21は、界面方向の伝搬特性を示し、線L22は、層間膜102の深さ方向(界面に垂直な方向)の伝搬特性を示し、線L23は、導体薄膜131Aの深さ方向(界面に垂直な方向)の伝搬特性を示している。
【0078】
表面プラズモンの深さ方向の伝搬距離ΛSPP(λ)は、次式(6)により表される。
【0079】
【0080】
kSPPは、表面プラズモンが伝搬する物質の吸収係数を示す。εm(λ)は、波長λの光に対する導体薄膜131Aの誘電率を示す。εd(λ)は、波長λの光に対する層間膜102の誘電率を示す。
【0081】
従って、
図9に示されるように、波長400nmの光に対する表面プラズモンは、SiO2からなる層間膜102の表面から深さ方向に約100nmまで伝搬する。従って、層間膜102の厚みを100nm以上に設定することにより、層間膜102と導体薄膜131Aとの界面における表面プラズモンに、層間膜102の導体薄膜131Aと反対側の面に積層された物質の影響が及ぶことが防止される。
【0082】
また、波長400nmの光に対する表面プラズモンは、アルミニウムからなる導体薄膜131Aの表面から深さ方向に約10nmまで伝搬する。従って、導体薄膜131Aの厚みを10nm以上に設定することにより、層間膜102と導体薄膜131Aとの界面における表面プラズモンに、層間膜104の影響が及ぶことが防止される。
【0083】
<プラズモンフィルタのその他の例>
次に、
図10乃至
図15を参照して、プラズモンフィルタのその他の例について説明する。
【0084】
図10Aのプラズモンフィルタ121Bは、導体薄膜131Bにホール132Bが直行行列状に配置されたプラズモン共鳴体により構成されている。プラズモンフィルタ121Bにおいては、例えば、隣接するホール132B間のピッチP2により透過帯域が変化する。
【0085】
また、プラズモン共鳴体において、全てのホールが導体薄膜を貫通する必要はなく、一部のホールを導体薄膜を貫通しない非貫通穴により構成しても、プラズモン共鳴体はフィルタとして機能する。
【0086】
例えば、
図10Bには、導体薄膜131Cに貫通穴からなるホール132C、及び、非貫通穴からなるホール132C’がハニカム状に配置されたプラズモン共鳴体により構成されたプラズモンフィルタ121Cの平面図および断面図(平面図におけるA-A’での断面図)が示されている。すなわち、プラズモンフィルタ121Cには、貫通穴からなるホール132Cと非貫通穴からなるホール132C’とが周期的に配置されている。
【0087】
さらに、プラズモンフィルタとしては、基本的に単層のプラズモン共鳴体が使用されるが、例えば、2層のプラズモン共鳴体により構成することもできる。
【0088】
例えば、
図11に示されているプラズモンフィルタ121Dは、2層のプラズモンフィルタ121D-1及びプラズモンフィルタ121D-2により構成されている。プラズモンフィルタ121D-1及びプラズモンフィルタ121D-2は、
図4のプラズモンフィルタ121Aを構成するプラズモン共鳴体と同様に、ホールがハニカム状に配置された構造となっている。
【0089】
また、プラズモンフィルタ121D-1とプラズモンフィルタ121D-2との間隔D2は、透過帯域のピーク波長の1/4程度とすることが好適である。また、設計自由度を考慮すると、間隔D2は、透過帯域のピーク波長の1/2以下がより好適である。
【0090】
なお、プラズモンフィルタ121Dのように、プラズモンフィルタ121D-1及びプラズモンフィルタ121D-2において同一のパターンでホールが配置されるようにする他、例えば、2層のプラズモン共鳴体構造において互いに相似するパターンでホールが配置されていてもよい。また、2層のプラズモン共鳴体構造において、ホールアレイ構造とドットアレイ構造(後述)とが反転するようなパターンでホールとドットとが配置されていてもよい。さらに、プラズモンフィルタ121Dは2層構造となっているが、3層以上の多層化も可能である。
【0091】
また、以上では、ホールアレイ構造のプラズモン共鳴体によるプラズモンフィルタの構成例を示したが、プラズモンフィルタとして、ドットアレイ構造のプラズモン共鳴体を採用してもよい。
【0092】
図12を参照して、ドットアレイ構造のプラズモンフィルタについて説明する。
【0093】
図12Aのプラズモンフィルタ121A’は、
図4のプラズモンフィルタ121Aのプラズモン共鳴体に対してネガポジ反転した構造、すなわち、ドット133Aが誘電体層134Aにハニカム状に配置されたプラズモン共鳴体により構成されている。各ドット133A間には、誘電体層134Aが充填されている。
【0094】
プラズモンフィルタ121A’は、所定の波長帯域の光を吸収するため、補色系のフィルタとして用いられる。プラズモンフィルタ121A’が吸収する光の波長帯域(以下、吸収帯域と称する)は、隣接するドット133A間のピッチ(以下、ドットピッチと称する)P3等により変化する。また、ドットピッチP3に合わせて、ドット133Aの径D3が調整される。
【0095】
図12Bのプラズモンフィルタ121B’は、
図10Aのプラズモンフィルタ121Bのプラズモン共鳴体に対してネガポジ反転した構造、すなわち、ドット133Bが誘電体層134Bに直行行列状に配置されたプラズモン共鳴体構造により構成されている。各ドット133B間には、誘電体層134Bが充填されている。
【0096】
プラズモンフィルタ121B’の吸収帯域は、隣接するドット133B間のドットピッチP4等により変化する。また、ドットピッチP4に合わせて、ドット133Bの径D3が調整される。
【0097】
図13は、
図12Aのプラズモンフィルタ121A’のドットピッチP3を変化させた場合の分光特性の例を示すグラフである。グラフの横軸は波長(単位はnm)を示し、縦軸は透過率を示している。線L31は、ドットピッチP3を300nmに設定した場合の分光特性を示し、線L32は、ドットピッチP3を400nmに設定した場合の分光特性を示し、線L33は、ドットピッチP3を500nmに設定した場合の分光特性を示している。
【0098】
この図に示されるように、ドットピッチP3が狭くなるにつれて、プラズモンフィルタ121A’の吸収帯域は短波長側にシフトし、ドットピッチP3が広くなるにつれて、プラズモンフィルタ121A’の吸収帯域は長波長側にシフトする。
【0099】
なお、ホールアレイ構造及びドットアレイ構造のいずれのプラズモンフィルタにおいても、ホール又はドットの平面方向のピッチを調整するだけで、透過帯域又は吸収帯域を調整することができる。従って、例えば、リソグラフィ工程においてホール又はドットのピッチを調整するだけで、画素毎に透過帯域又は吸収帯域を個別に設定することが可能であり、より少ない工程でフィルタの多色化が可能になる。
【0100】
また、プラズモンフィルタの厚さは、有機材料系のカラーフィルタとほぼ同様の約100~500nm程度であり、プロセスの親和性が良い。
【0101】
また、狭帯域フィルタNBには、
図14に示されるGMR(Guided Mode Resonant)を用いたプラズモンフィルタ151を用いることも可能である。
【0102】
プラズモンフィルタ151においては、上から順に、導体層161、SiO2膜162、SiN膜163、SiO2基板164が積層されている。導体層161は、例えば、
図3の狭帯域フィルタ層103に含まれ、SiO2膜162、SiN膜163、及び、SiO2基板164は、例えば、
図3の層間膜104に含まれる。
【0103】
導体層161には、例えばアルミニウムからなる矩形の導体薄膜161Aが、所定のピッチP5で、導体薄膜161Aの長辺側が隣接するように並べられている。そして、ピッチP5等によりプラズモンフィルタ151の透過帯域が変化する。
【0104】
図15は、ピッチP5を変化させた場合のプラズモンフィルタ151の分光特性の例を示すグラフである。グラフの横軸は波長(単位はnm)を示し、縦軸は透過率を示している。この例では、ピッチP5を280nmから480nmまで40nm刻みで6種類に変化させるとともに、隣接する導体薄膜161Aの間のスリットの幅をピッチP5の1/4に設定した場合の分光特性の例を示している。また、透過帯域のピーク波長が最も短い波形が、ピッチP5を280nmに設定した場合の分光特性を示し、ピッチP5が広くなるにつれて、ピーク波長が長くなっている。すなわち、ピッチP5が狭くなるにつれて、プラズモンフィルタ151の透過帯域は短波長側にシフトし、ピッチP5が広くなるにつれて、プラズモンフィルタ151の透過帯域は長波長側にシフトする。
【0105】
このGMRを用いたプラズモンフィルタ151も、上述したホールアレイ構造及びドットアレイ構造のプラズモンフィルタと同様に、有機材料系のカラーフィルタと親和性が良い。
【0106】
<撮像素子の第2の実施形態>
次に、
図16乃至
図21を参照して、
図1の撮像素子12の第2の実施形態について説明する。
【0107】
図16は、撮像素子12の第2の実施形態である撮像素子12Bの断面の構成例を模式的に示している。なお、図中、
図3の撮像素子12Aと対応する部分には、同じ符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
【0108】
撮像素子12Bは、撮像素子12Aと比較して、オンチップマイクロレンズ101と層間膜102の間に、カラーフィルタ層107が積層されている点が異なる。
【0109】
撮像素子12Bの狭帯域フィルタ層103においては、全ての画素51ではなく、一部の画素51にのみ狭帯域フィルタNBが設けられている。狭帯域フィルタNBの透過帯域の種類(バンド数)は任意であり、例えば、1以上に設定される。
【0110】
カラーフィルタ層107には、カラーフィルタが各画素51に設けられる。例えば、狭帯域フィルタNBが設けられていない画素51においては、一般的な赤色フィルタR、緑色フィルタG、及び、青色フィルタB(不図示)のいずれかが設けられている。これにより、例えば、赤色フィルタRが設けられたR画素、緑色フィルタGが設けられたG画素、青色フィルタが設けられたB画素、及び、狭帯域フィルタNBが設けられたMS画素が、画素アレイ31に配列される。
【0111】
また、狭帯域フィルタNBが設けられている画素51においては、カラーフィルタ層107に透過フィルタPが設けられる。透過フィルタPは、後述するように、同じ画素51の狭帯域フィルタNBの透過帯域を含む波長帯域の光を透過する光学フィルタ(ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、又は、バンドパスフィルタ)により構成される。
【0112】
なお、カラーフィルタ層107に設けられるカラーフィルタは、有機材料系及び無機材料系のいずれであってもよい。
【0113】
有機材料系のカラーフィルタには、例えば、合成樹脂若しくは天然蛋白を用いた染色着色系、及び、顔料色素若しくは染料色素を用いた色素含有系がある。
【0114】
無機材料系のカラーフィルタには、例えば、TiO2、ZnS、SiN、MgF2、SiO2、Low-k等の材料が用いられる。また、無機材料系のカラーフィルタの形成には、例えば、蒸着、スパッタリング、CVD(Chemical Vapor Deposition)成膜等の手法が用いられる。
【0115】
また、層間膜102は、
図9を参照して上述したように、層間膜102と狭帯域フィルタ層103との界面における表面プラズモンに、カラーフィルタ層107の影響が及ぶことが防止可能な膜厚に設定される。
【0116】
ここで、カラーフィルタ層107に設けられた透過フィルタPにより、フレアの発生が抑制される。この点について、
図17及び
図18を参照して説明する。
【0117】
図17は、カラーフィルタ層107が設けられていない
図2の撮像素子12Aを用いた撮像装置10におけるフレアの発生の様子を模式的に示している。
【0118】
この例において、撮像素子12Aは、半導体チップ203に設けられている。具体的には、半導体チップ203は、基板213上に実装され、周囲がシールガラス211及び樹脂212により覆われている。そして、
図1の光学系11に設けられているレンズ201及びIRカットフィルタ202、並びに、シールガラス211を透過した光が、撮像素子12Aに入射する。
【0119】
ここで、撮像素子12Aの狭帯域フィルタ層103の狭帯域フィルタNBがプラズモンフィルタからなる場合、プラズモンフィルタには金属製の導体薄膜が形成されている。この導体薄膜は反射率が高いため、透過帯域以外の波長の光を反射しやすい。そして、導体薄膜で反射された光の一部が、例えば、
図17に示されるように、シールガラス211、IRカットフィルタ202、又は、レンズ201で反射され、撮像素子12Aに再入射する。これらの再入射光によりフレアが発生する。特にホールアレイ構造を用いたプラズモンフィルタは、開口率が低いため、フレアが発生しやすい。
【0120】
この反射光を防止するために、例えば、導体薄膜とは異なる金属や誘電率の高い材料からなる反射防止膜を使用することが考えられる。しかし、プラズモンフィルタは、表面プラズモン共鳴を利用しており、そのような反射防止膜が導体薄膜の表面に触れてしまうと、プラズモンフィルタの特性が劣化してしまったり、所望の特性が得づらくなったりする可能性がある。
【0121】
一方、
図18は、カラーフィルタ層107が設けられている
図16の撮像素子12Bを用いた撮像装置10におけるフレアの発生の様子を模式的に示している。なお、図中、
図17と対応する部分には、同じ符号を付してある。
【0122】
図18の例は、
図17の例と比較して、半導体チップ203の代わりに半導体チップ221が設けられている点が異なる。半導体チップ221は、半導体チップ203と比較して、撮像素子12Aの代わりに撮像素子12Bが設けられている点が異なる。
【0123】
上述したように、撮像素子12Bにおいては、狭帯域フィルタNBより上方(光の入射側)に透過フィルタPが設けられている。従って、撮像素子12Bに入射した光は、透過フィルタPにより所定の波長帯域が遮断されてから狭帯域フィルタNBに入射するため、狭帯域フィルタNBへの入射光の光量が抑制される。その結果、狭帯域フィルタNB(プラズモンフィルタ)の導体薄膜による反射光の光量も低減するため、フレアが低減される。
【0124】
図19乃至
図21は、狭帯域フィルタNBの分光特性と、狭帯域フィルタNBの上方に配置される透過フィルタPの分光特性の例を示している。なお、
図19乃至
図21のグラフの横軸は波長(単位はnm)を示し、縦軸は感度(単位は任意単位)を示している。
【0125】
図19の線L41は、狭帯域フィルタNBの分光特性を示している。この狭帯域フィルタNBの分光特性のピーク波長は、約430nm付近である。線L42は、ローパス型の透過フィルタPの分光特性を示している。線L43は、ハイパス型の透過フィルタPの分光特性を示している。線L44は、バンドパス型の透過フィルタPの分光特性を示している。いずれの透過フィルタPの感度も、狭帯域フィルタNBの分光特性のピーク波長を含む所定の波長帯域において、狭帯域フィルタNBの感度を上回っている。従って、いずれの透過フィルタPを用いても、狭帯域フィルタNBの透過帯域の光をほぼ減衰させずに、狭帯域フィルタNBに入射する入射光の光量を低減させることができる。
【0126】
図20の線L51は、狭帯域フィルタNBの分光特性を示している。この狭帯域フィルタNBの分光特性のピーク波長は、約530nm付近である。線L52は、ローパス型の透過フィルタPの分光特性を示している。線L53は、ハイパス型の透過フィルタPの分光特性を示している。線L54は、バンドパス型の透過フィルタPの分光特性を示している。いずれの透過フィルタの感度も、狭帯域フィルタNBの分光特性のピーク波長を含む所定の波長帯域において、狭帯域フィルタNBの感度を上回っている。従って、いずれの透過フィルタPを用いても、狭帯域フィルタNBの透過帯域の光をほぼ減衰させずに、狭帯域フィルタNBに入射する入射光の光量を低減させることができる。
【0127】
図21の線L61は、狭帯域フィルタNBの分光特性を示している。この狭帯域フィルタNBの分光特性のプラズモンモードにおけるピーク波長は、約670nm付近である。
線L62は、ローパス型の透過フィルタPの分光特性を示している。線L63は、ハイパス型の透過フィルタPの分光特性を示している。線L64は、バンドパス型の透過フィルタPの分光特性を示している。いずれの透過フィルタPの感度も、狭帯域フィルタNBの分光特性の遮断波長である約630nm以上のプラズモンモードのピーク波長を含む所定の波長帯域において、狭帯域フィルタNBの感度を上回っている。従って、いずれの透過フィルタPを用いても、狭帯域フィルタNBのプラズモンモードにおける透過帯域の光をほぼ減衰させずに、狭帯域フィルタNBに入射する入射光の光量を低減させることができる。ただし、ハイパス型又はバンドパス型の透過フィルタPを用いた方が、狭帯域フィルタNBの導波管モードの波長帯域の光を遮断できるため、狭帯域のフィルタ特性としてより望ましい。
【0128】
なお、赤色フィルタR、緑色フィルタG、又は、青色フィルタBの透過帯域が、下層の狭帯域フィルタNBの透過帯域を含む場合、それらのフィルタを透過フィルタPに用いてもよい。
【0129】
また、
図16の例では、一部の画素51にのみ狭帯域フィルタNBを設ける例を示したが、全ての画素51に狭帯域フィルタNBを設けることも可能である。この場合、画素51毎に、その画素51の狭帯域フィルタNBの透過帯域を含む透過帯域を有する透過フィルタPをカラーフィルタ層107に設けるようにすればよい。
【0130】
さらに、カラーフィルタ層107のカラーフィルタの色の組合せは上述した例に限定されるものではなく、任意に変更することが可能である。
【0131】
また、上述したフレア対策の必要がない場合には、例えば、狭帯域フィルタNBの上層に透過フィルタPを設けないようにしたり、全ての波長の光を透過するダミーのフィルタを設けたりしてもよい。
【0132】
<撮像素子の第3の実施形態>
次に、
図22を参照して、
図1の撮像素子12の第3の実施形態について説明する。
【0133】
図22は、撮像素子12の第3の実施形態である撮像素子12Cの断面の構成例を模式的に示している。なお、図中、
図3の撮像素子12Aと対応する部分には、同じ符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
【0134】
撮像素子12Cは、撮像素子12Aと比較して、狭帯域フィルタ層103の代わりに、フィルタ層108が設けられている点が異なる。また、撮像素子12Cは、
図16の撮像素子12Bと比較して、狭帯域フィルタNBとカラーフィルタ(例えば、赤色フィルタR、緑色フィルタG、青色フィルタB)が同じフィルタ層108に設けられている点が異なる。
【0135】
これにより、撮像素子12Cの画素アレイ31にR画素、G画素、B画素、及び、MS画素を配置する場合に、カラーフィルタ層107を省略することができる。
【0136】
なお、有機材料系のカラーフィルタを用いる場合、熱によるカラーフィルタの損傷等を防止するために、例えば、狭帯域フィルタNBが先に形成され、シンター処理等の高温の最終熱処理が行われた後、カラーフィルタが形成される。一方、無機材料系のカラーフィルタを用いる場合、基本的に上記の形成順の制約は必要ない。
【0137】
また、
図16の撮像素子12Bのようにフレア対策を施す場合、撮像素子12Bと同様に、オンチップマイクロレンズ101と層間膜102の間に、カラーフィルタ層を積層するようにしてもよい。この場合、フィルタ層108に狭帯域フィルタNBが設けられている画素51においては、カラーフィルタ層に上述した透過フィルタPが設けられる。一方、フィルタ層108にカラーフィルタが設けられている画素51においては、カラーフィルタ層にフィルタが設けられなかったり、又は、全ての波長の光を透過するダミーのフィルタ、若しくは、フィルタ層108と同じ色のカラーフィルタが設けられたりする。
【0138】
<<2.マルチスペクトル画像の利用例>>
次に、
図23乃至
図29を参照して、
図1の撮像素子12から出力される画像(以下、マルチスペクトル画像と称する)を利用して行われる処理について説明する。
【0139】
<第1の利用例>
【0140】
図23には、マルチスペクトル画像を利用して行われる処理の第1の利用例として、機械学習に用いられる教師データを自動的に生成する処理を行う教師データ生成システムの構成例が示されている。
【0141】
図23に示すように、教師データ生成システム301は、マルチスペクトルカメラ311、RGBカメラ312、記憶装置313、および教師データ生成処理装置314を備えて構成される。
【0142】
マルチスペクトルカメラ311は、
図1の撮像素子12を備えて構成されており、教師データを生成する対象となる物体(例えば、リンゴや人物の顔など)を撮像して得られるマルチスペクトル画像を教師データ生成処理装置314に供給する。
【0143】
RGBカメラ312は、カラー画像(いわゆるRGB画像)を撮像可能な撮像装置であり、マルチスペクトルカメラ311により撮像されるのと同一の物体を撮像し、その結果得られるカラー画像を教師データ生成処理装置314に供給する。
【0144】
記憶装置313は、例えば、ハードディスクドライブや半導体メモリなどにより構成され、教師データ生成処理装置314から供給される教師データを記憶する。
【0145】
教師データ生成処理装置314は、マルチスペクトルカメラ311から供給されるマルチスペクトル画像、および、RGBカメラ312から供給されるカラー画像に基づいて、機械学習に用いられる教師データを自動的に生成する処理を行う。
【0146】
一般的に、多数の波長帯域に分光された光により物体を撮像することにより取得されるマルチスペクトル画像から、被写体となった物体の種別ごとに特有の分光特性を示すスペクトル情報を抽出することができる。従って、物体ごとの分光特性に基づいて、マルチスペクトル画像に写されている物体を高精度に認識することが可能とされている。これに対し、カラー画像は、3つの波長帯域(例えば、R,G,B)の光により物体を撮像するだけであり、カラー画像に写されている物体を高精度に認識するためには、大量の教師データを用いた機械学習を事前に行う必要がある。そのため、カラー画像による物体認識を行うための機械学習に用いられる教師データ、例えば、物体の種別を示す名称が付加されたカラー画像を自動的に生成することが必要とされている。
【0147】
図示するように、教師データ生成処理装置314は、スペクトル情報保持部321、認識処理部322、およびラベリング部323を備えて構成される。
【0148】
スペクトル情報保持部321は、様々な物体が写されたマルチスペクトル画像から予め求められ、それらの物体の種別ごとに特有の分光特性を表すスペクトル情報を、それぞれの物体の種別を示す名称と対応付けて保持している。
【0149】
認識処理部322は、マルチスペクトルカメラ311から供給されるマルチスペクトル画像において教師データを生成する対象となる物体が写されている領域における分光特性を抽出することで、その物体の分光特性を表すスペクトル情報を取得する。さらに、認識処理部322は、マルチスペクトル画像から取得したスペクトル情報について、スペクトル情報保持部321に保持されている複数のスペクトル情報との類似度を求める。
【0150】
そして、認識処理部322は、スペクトル情報保持部321に保持されている複数のスペクトル情報のうち、最も類似度の高いスペクトル情報に対応付けられている名称を、教師データを生成する対象となる物体の認識結果として、ラベリング部323に供給する。
なお、認識処理部322は、ここで求められた最も高い類似度が、所定の規定値(同一の種別と判断できる閾値)以下である場合には、マルチスペクトル画像に写されている物体を認識することができなかった旨(認識不可)を認識結果とする。
【0151】
ラベリング部323は、RGBカメラ312から供給されるカラー画像に対するラベリング処理、即ち、RGBカメラ312から供給されるカラー画像に、認識処理部322から供給される認識結果を付加する処理を行う。そして、ラベリング部323は、認識結果が付加されたカラー画像を、カラー画像による物体認識を行うための機械学習に用いる教師データとして、記憶装置313に供給して記憶させる。
【0152】
このように教師データ生成システム301は構成されており、マルチスペクトル画像に写されている物体の認識結果が付加されたカラー画像を、カラー画像による物体認識を行うための機械学習に用いる教師データとして生成することができる。これにより、教師データ生成システム301を利用して、マルチスペクトルカメラ311およびRGBカメラ312により様々な物体を撮像することにより、それらの物体についての教師データを自動的に生成することができる。
【0153】
従って、従来では、例えば、教師データを生成する対象となる物体の種別が何であるかを目視により判断して、手動でラベリングを行うという膨大な手間を要していたのに対し、教師データ生成システム301による自動化によって、その手間を省くことができる。
即ち、教師データ生成システム301により、大量の教師データを迅速に生成することができる。
【0154】
そして、教師データ生成システム301が自動的に生成する大量の教師データを用いて、カラー画像による物体認識を行うための機械学習を行うことができる。
【0155】
図24には、教師データ生成システム301において生成された教師データを用いて機械学習を行い、その学習結果を使用して物体認識を行う物体認識システム302の構成例が示されている。
【0156】
図24に示すように、物体認識システム302は、記憶装置331、学習器332、RGBカメラ333、および出力装置334を備えて構成される。なお、物体認識システム302において学習が行われるときには、少なくとも記憶装置331および学習器332を備えた構成であればよい。また、物体認識システム302において学習結果を使用するときには、少なくとも学習器332、RGBカメラ333、および出力装置334を備えた構成であればよい。
【0157】
記憶装置331には、
図23の教師データ生成システム301において自動的に生成された大量の教師データ、即ち、様々な物体についての認識結果(物体の種別を示す名称)が付加されたカラー画像が記憶されている。
【0158】
学習器332は、学習時において、記憶装置331に記憶されている大量の教師データを順に読み出して、例えば、同一の種別の物体が写されている複数枚の画像について、それらの物体に共通する特徴を抽出する学習を行う。そして、学習器332は、学習結果を使用して物体認識を行うとき、RGBカメラ333により撮像されたカラー画像に写されている物体の特徴と、予め学習した特徴とを比較する。これにより、学習器332は、RGBカメラ333により撮像されたカラー画像に写されている物体の種別を認識し、その認識結果(物体の種別を示す名称)を出力装置334に供給する。
【0159】
RGBカメラ333は、一般的なカラー画像を撮像可能な撮像装置であり、物体認識を行う対象となる物体を撮像して得られるカラー画像を学習器332に供給する。
【0160】
出力装置334は、例えば、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネルなどの表示ディスプレイにより構成され、学習器332から供給される認識結果を、RGBカメラ333により撮像されたカラー画像に重畳させて表示する。なお、出力装置334がスピーカにより構成される場合には、認識結果を表現する合成音声を出力してもよい。
【0161】
このように、物体認識システム302は、教師データ生成システム301において生成された教師データを用いて機械学習を行い、その学習結果を使用することによって、より高精度に、物体認識を行うことができる。
【0162】
図25は、教師データ生成システム301における教師データ生成処理を説明するフローチャートである。
【0163】
例えば、教師データを生成する対象となる物体に対してマルチスペクトルカメラ311およびRGBカメラ312が向けられた状態で、その物体の教師データの生成を指示する操作が行われると処理が開始される。ステップS11において、マルチスペクトルカメラ311は、対象の物体が写されたマルチスペクトル画像を認識処理部322に供給し、RGBカメラ312は、対象の物体が写されたカラー画像をラベリング部323に供給する。
【0164】
ステップS12において、認識処理部322は、ステップS11でマルチスペクトルカメラ311から供給されたマルチスペクトル画像から分光特性を抽出し、教師データを生成する対象となる物体の分光特性を表すスペクトル情報を取得する。
【0165】
ステップS13において、認識処理部322は、ステップS12で取得したスペクトル情報について、スペクトル情報保持部321に保持されている複数のスペクトル情報との類似度を求める。そして、認識処理部322は、最も高い類似度が求められたスペクトル情報に対応付けられている名称を、教師データを生成する対象となる物体の認識結果として求めて、ラベリング部323に供給する。
【0166】
ステップS14において、ラベリング部323は、ステップS11でRGBカメラ312から供給されたカラー画像に対して、ステップS13で認識処理部322から供給された認識結果をラベリングして、対象の物体の教師データを生成する。そして、ラベリング部323は、生成した教師データを記憶装置313に供給する。
【0167】
ステップS15において、記憶装置313が、ステップS14でラベリング部323から供給された教師データを記憶した後、教師データ生成処理は終了される。その後、例えば、次の物体を対象として教師データの生成を指示する操作が行われると、以下、同様の処理が繰り返して行われる。
【0168】
以上のように、教師データ生成システム301では、教師データを生成する対象となる物体に対するラベリング処理を自動化することができ、大量の教師データを容易に生成することができる。
【0169】
<第2の利用例>
【0170】
図26には、マルチスペクトル画像を利用して行われる処理の第2の利用例として、対象の物体について適切な評価指標を提示する処理を行う評価指標提示システムの構成例が示されている。
【0171】
図26に示すように、評価指標提示システム303は、マルチスペクトルカメラ311、RGBカメラ312、出力装置315、および評価指標取得処理装置316を備えて構成される。なお、マルチスペクトルカメラ311およびRGBカメラ312は、
図23の教師データ生成システム301と同様の構成であり、その詳細な説明は省略する。
【0172】
出力装置315は、例えば、液晶パネルや有機ELパネルなどの表示ディスプレイにより構成され、評価指標取得処理装置316から供給される評価指標を、RGBカメラ312により撮像されたカラー画像に重畳させて表示する。なお、出力装置315がスピーカにより構成される場合には、評価指標を表現する合成音声を出力してもよい。
【0173】
評価指標取得処理装置316は、マルチスペクトルカメラ311から供給されるマルチスペクトル画像、および、RGBカメラ312から供給されるカラー画像に基づいて、対象の物体を認識するとともに、その物体を定量的に評価する評価指標を取得する処理を行う。
【0174】
図示するように、評価指標取得処理装置316は、スペクトル情報保持部321、認識処理部322、ラベリング部323、および評価指標算出部324を備えて構成される。
なお、スペクトル情報保持部321、認識処理部322、およびラベリング部323は、
図23の教師データ生成処理装置314と同様の構成であり、その詳細な説明は省略する。
【0175】
評価指標算出部324には、マルチスペクトルカメラ311により撮像されたマルチスペクトル画像とともに、認識処理部322による認識結果が供給される。そして、評価指標算出部324は、認識処理部322から供給される認識結果、即ち、評価指標を算出する対象となる物体の種別を示す名称に従って、その物体の種別に適した評価指標を自動的に選択する。例えば、評価指標算出部324は、物体の種別と、その種別について最適な評価指標とを対応付けて保持している。そして、
図27を参照して後述するように、トマトが対象である場合には評価指標として糖度が選択され、キャベツが対象である場合には評価指標として鮮度が選択される。
【0176】
さらに、評価指標算出部324は、対象の物体の種別に適した評価指標を算出するのに必要な指標計算式および係数を自動に選択して、マルチスペクトル画像に基づいて評価指標を算出し、ラベリング部323に供給する。
【0177】
これにより、ラベリング部323は、RGBカメラ312から供給されるカラー画像に対するラベリング処理、即ち、RGBカメラ312から供給されるカラー画像に、認識処理部322から供給される認識結果、および、評価指標算出部324から供給される評価指標を付加する処理を行う。そして、ラベリング部323は、認識結果および評価指標が付加されたカラー画像を、評価結果として出力装置315に供給して表示させる。
【0178】
このように評価指標提示システム303は構成されており、マルチスペクトル画像に写されている物体の認識結果および評価指標が付加されたカラー画像を、出力装置315の表示ディスプレイに表示することができる。これにより、評価指標提示システム303は、所望の物体をマルチスペクトルカメラ311およびRGBカメラ312で撮像するだけで、自動的に、その物体に適した評価指標を提示することができる。
【0179】
従って、従来では、例えば、食品ごとに適した評価指標が異なることより、ユーザが、食品ごとに専用のソフトウェアを起動させたり、その動作モードや係数などの設定を行ったりする必要があったのに対し、評価指標提示システム303による自動化によって、それらの手間を省くことができる。即ち、ユーザは、対象の物体に関係なく、評価指標を提示するソフトウェアを起動させるだけで良いので、評価指標提示システム303により、より良好なユーザ体験を提供することができる。
【0180】
図27には、評価指標提示システム303が搭載された情報処理端末の使用例が示されている。
【0181】
例えば、
図27Aに示すように、トマト売り場において、情報処理端末のマルチスペクトルカメラ311およびRGBカメラ312によりトマトを撮像するだけで、評価指標を提示する対象がトマトであると自動的に認識される。そして、トマトに適した評価指標として糖度が選択され、情報処理端末の出力装置315である表示ディスプレイには、対象のトマトに対する評価結果「このトマトの糖度 14.0」が、RGBカメラ312により撮像されたカラー画像に重畳して提示される。なお、例えば、物体認識処理中および評価指標取得中には、それらの処理途中であることを示すメッセージ「食品種別認識中」が表示される。
【0182】
同様に、例えば、
図27Bに示すように、キャベツ売り場において、情報処理端末のマルチスペクトルカメラ311およびRGBカメラ312によりキャベツを撮像するだけで、評価指標を提示する対象がキャベツであると自動的に認識される。そして、キャベツに適した評価指標として鮮度が選択され、情報処理端末の出力装置315である表示ディスプレイには、対象のキャベツに対する評価結果「このキャベツの鮮度70%」が、RGBカメラ312により撮像されたカラー画像に重畳して提示される。なお、例えば、物体認識処理中および評価指標取得中には、それらの処理途中であることを示すメッセージ「食品種別認識中」が表示される。
【0183】
この他、評価指標提示システム303は、例えば、
図32を参照して後述するような食品のうまみや、
図33を参照して後述するような果物の水分などを評価指標として求めることができる。
【0184】
図28は、評価指標提示システム303における評価指標提示処理を説明するフローチャートである。
【0185】
例えば、評価指標を提示する対象となる物体に対してマルチスペクトルカメラ311およびRGBカメラ312が向けられた状態で、その物体の評価指標の提示を指示する操作が行われると処理が開始される。そして、ステップS21乃至S23では、
図25のステップS11乃至S13と同様の処理が行われる。
【0186】
ステップS24において、評価指標算出部324は、ステップS23で認識処理部322から供給される認識結果に従って、対象の物体の種別について最適な評価指標を自動的に選択する。
【0187】
ステップS25において、評価指標算出部324は、ステップS24で選択した評価指標を算出するのに必要な指標計算式および係数を自動に選択して、その評価指標を算出し、ラベリング部323に供給する。
【0188】
ステップS26において、ラベリング部323は、ステップS21でRGBカメラ312から供給されるカラー画像に、ステップS23で認識処理部322から供給される認識結果、および、ステップS25で評価指標算出部324から供給される評価指標をラベリングして、対象の物体の評価結果を生成する。そして、ラベリング部323は、生成した評価結果を出力装置315に供給する。
【0189】
ステップS27において、出力装置315が、ステップS26でラベリング部323から供給された評価結果を出力した後、評価指標提示処理は終了される。その後、例えば、次の物体を対象として評価指標の提示を指示する操作が行われると、以下、同様の処理が繰り返して行われる。
【0190】
以上のように、評価指標提示システム303では、評価指標を提示する対象となる物体を撮像するだけで、その物体に適した評価結果を自動的に提示することができ、例えば、より良好なユーザ体験を提供することができる。
【0191】
図29は、上述した一連の処理(
図25の教師データ生成処理、および、
図28の評価指標提示処理)をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
【0192】
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)401,ROM(Read Only Memory)402,RAM(Random Access Memory)403、およびEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)404は、バス405により相互に接続されている。バス405には、さらに、入出力インタフェース406が接続されており、入出力インタフェース406が外部(例えば、マルチスペクトルカメラ311やRGBカメラ312など)に接続される。
【0193】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU401が、例えば、ROM402およびEEPROM404に記憶されているプログラムを、バス405を介してRAM403にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。また、コンピュータ(CPU101)が実行するプログラムは、ROM402に予め書き込んでおく他、入出力インタフェース405を介して外部からEEPROM404にインストールしたり、更新したりすることができる。
【0194】
なお、教師データ生成システム301および評価指標提示システム303は、マルチスペクトルカメラ311とRGBカメラ312との2台を備える構成とする他、例えば、多波長を検出可能な1台のカメラを備える構成としてもよい。
【0195】
また、教師データ生成システム301および評価指標提示システム303が、
図1の撮像素子12を備えた撮像装置10に組み込まれて構成されてもよく、例えば、撮像装置10から教師データや評価結果などが出力されるようにすることができる。
【0196】
なお、教師データ生成システム301および評価指標提示システム303は、上述したようなマルチスペクトルカメラ311だけを使用して物体を認識するのに限定されることはなく、その他の種類のセンサを使用してもよい。例えば、輝度情報を取得する輝度センサや、距離情報を取得するToF(Time-of-Flight)センサ、種々の環境情報を取得するアビエントセンサ、赤外線情報を取得する赤外線センサ、温度情報を取得するサーマルセンサなどを使用して、それらのセンサにより取得される情報により構成される画像を物体の認識に用いることができる。
【0197】
さらに、
図1の撮像素子12から出力されるマルチスペクトル画像を利用して自動化されるラベリング処理は、物体の認識結果や評価結果に限られることはなく、様々な情報のラベリングを行うことができる。
【0198】
<<3.変形例>>
以下、上述した本技術の実施形態の変形例について説明する。
【0199】
例えば、ホールピッチ(透過帯域)に応じて、導体薄膜の膜厚を3種類以上設定するようにしてもよい。
【0200】
また、ドットアレイ構造のプラズモンフィルタにおいても、ドットピッチ(吸収帯域)に応じて、導体薄膜(ドット)の膜厚を変えるようにしてもよい。
【0201】
具体的には、
図13に示されるように、基本的に、ドットピッチが狭くなり、吸収帯域が短波長になるにつれて、吸収帯域のピーク幅及び半値幅は狭くなるが、吸収率(吸収帯域の負のピーク値)は低下する。逆に、基本的に、ドットピッチが広くなり、吸収帯域が長波長になるにつれて、吸収率(吸収帯域の負のピーク値)は向上するが、吸収帯域のピーク幅及び半値幅は広くなる。
【0202】
また、基本的に、ドットを構成する導体薄膜が薄くなるにつれて、吸収率は低下するが、吸収帯域のピーク幅及び半値幅は狭くなる。逆に、基本的に、ドットを構成する導体薄膜が厚くなるにつれて、吸収帯域のピーク幅及び半値幅は広くなるが、吸収率は向上する。
【0203】
従って、例えば、プラズモンフィルタのドットピッチが狭くなり、吸収帯域が短波長になるにつれて、吸収帯域のピーク幅及び半値幅が少し広くなっても、導体薄膜を厚くし、吸収率を上げることが望ましい。一方、プラズモンフィルタのドットピッチが広くなり、吸収帯域が長波長になるにつれて、吸収率が少し低下しても、導体薄膜を薄くし、透過帯域のピーク幅及び半値幅を狭くすることが望ましい。
【0204】
さらに、例えば、同じ透過帯域(ホールピッチ)又は吸収帯域(ドットピッチ)のプラズモンフィルタに対して、導体薄膜の膜厚を画素毎に変えるようにしてもよい。これにより、透過帯域又は吸収帯域が同じであるが、感度又は吸収率が異なる画素を設けることが可能になる。従って、例えば、一部の画素の狭帯域光の検出精度を向上させることができる。
【0205】
また、本技術は、上述した裏面照射型のCMOSイメージセンサだけでなく、プラズモンフィルタを用いる他の撮像素子に適用することが可能である。例えば、表面照射型のCMOSイメージセンサ、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、有機光電変換膜や量子ドット構造などを内包したフォトコンダクタ構造のイメージセンサ等に、本技術を適用することができる。
【0206】
また、本技術は、例えば、
図30に示される積層型の固体撮像装置に適用することが可能である。
【0207】
図30Aは、非積層型の固体撮像装置の概略構成例を示している。固体撮像装置1010は、
図30Aに示すように、1枚のダイ(半導体基板)1011を有する。このダイ1011には、画素がアレイ状に配置された画素領域1012と、画素の駆動その他の各種の制御を行う制御回路1013と、信号処理するためのロジック回路1014とが搭載されている。
【0208】
図30B及び
図30Cは、積層型の固体撮像装置の概略構成例を示している。固体撮像装置1020は、
図30B及び
図30Cに示すように、センサダイ1021とロジックダイ1022との2枚のダイが積層され、電気的に接続されて、1つの半導体チップとして構成されている。
【0209】
図30Bでは、センサダイ1021には、画素領域1012と制御回路1013が搭載され、ロジックダイ1022には、信号処理を行う信号処理回路を含むロジック回路1014が搭載されている。
【0210】
図30Cでは、センサダイ1021には、画素領域1012が搭載され、ロジックダイ1024には、制御回路1013及びロジック回路1014が搭載されている。
【0211】
さらに、本技術は、プラズモンフィルタ以外の金属薄膜を用いた金属薄膜フィルタに適用することができ、また応用例として、半導体材料を用いたフォトニック結晶への適用の可能性も考えられる。
【0212】
<<4.応用例>>
次に、本技術の応用例について説明する。
【0213】
<本技術の応用例>
例えば、本技術は、
図31に示されるように、可視光や、赤外光、紫外光、X線等の光をセンシングする様々なケースに応用することができる。
【0214】
・デジタルカメラや、カメラ機能付きの携帯機器等の、鑑賞の用に供される画像を撮影する装置
・自動停止等の安全運転や、運転者の状態の認識等のために、自動車の前方や後方、周囲、車内等を撮影する車載用センサ、走行車両や道路を監視する監視カメラ、車両間等の測距を行う測距センサ等の、交通の用に供される装置
・ユーザのジェスチャを撮影して、そのジェスチャに従った機器操作を行うために、TVや、冷蔵庫、エアーコンディショナ等の家電に供される装置
・内視鏡や、赤外光の受光による血管撮影を行う装置等の、医療やヘルスケアの用に供される装置
・防犯用途の監視カメラや、人物認証用途のカメラ等の、セキュリティの用に供される装置
・肌を撮影する肌測定器や、頭皮を撮影するマイクロスコープ等の、美容の用に供され装置
・スポーツ用途等向けのアクションカメラやウェアラブルカメラ等の、スポーツの用に供される装置
・畑や作物の状態を監視するためのカメラ等の、農業の用に供される装置
【0215】
以下、より具体的な応用例について説明する。
【0216】
例えば、
図1の撮像装置10の各画素51の狭帯域フィルタNBの透過帯域を調整することにより、撮像装置10の各画素51が検出する光の波長帯域(以下、検出帯域と称する)を調整することができる。そして、各画素51の検出帯域を適切に設定することにより、撮像装置10を様々な用途に用いることができる。
【0217】
例えば、
図32は、食品のうまみや鮮度を検出する場合の検出帯域の例が示されている。
【0218】
例えば、マグロや牛肉等のうまみ成分を示すミオグロビンを検出する場合の検出帯域のピーク波長は580~630nmの範囲内であり、半値幅は30~50nmの範囲内である。マグロや牛肉等の鮮度を示すオレイン酸を検出する場合の検出帯域のピーク波長は980nmであり、半値幅は50~100nmの範囲内である。小松菜などの葉物野菜の鮮度を示すクロロフィルを検出する場合の検出帯域のピーク波長は650~700nmの範囲内であり、半値幅は50~100nmの範囲内である。
【0219】
図33は、果物の糖度や水分を検出する場合の検出帯域の例が示されている。
【0220】
例えば、メロンの一品種であるらいでんの糖度を示す果肉光路長を検出する場合の検出帯域のピーク波長は880nmであり、半値幅は20~30nmの範囲内である。らいでんの糖度を示すショ糖を検出する場合の検出帯域のピーク波長は910nmであり、半値幅は40~50nmの範囲内である。メロンの他の品種であるらいでんレッドの糖度を示すショ糖を検出する場合の検出帯域のピーク波長は915nmであり、半値幅は40~50nmの範囲内である。らいでんレッドの糖度を示す水分を検出する場合の検出帯域のピーク波長は955nmであり、半値幅は20~30nmの範囲内である。
【0221】
りんごの糖度の糖度を示すショ糖を検出する場合の検出帯域のピーク波長は912nmであり、半値幅は40~50nmの範囲内である。みかんの水分を示す水を検出する場合の検出帯域のピーク波長は844nmであり、半値幅は30nmである。みかんの糖度を示すショ糖を検出する場合の検出帯域のピーク波長は914nmであり、半値幅は40~50nmの範囲内である。
【0222】
図34は、プラスチックの分別を行う場合の検出帯域の例が示されている。
【0223】
例えば、PET(Poly Ethylene Terephthalate)を検出する場合の検出帯域のピーク波長は1669nmであり、半値幅は30~50nmの範囲内である。PS(Poly Styrene)を検出する場合の検出帯域のピーク波長は1688nmであり、半値幅は30~50nmの範囲内である。PE(Poly Ethylene)を検出する場合の検出帯域のピーク波長は1735nmであり、半値幅は30~50nmの範囲内である。PVC(Poly Vinyl Cloride)を検出する場合の検出帯域のピーク波長は1716~1726nmの範囲内であり、半値幅は30~50nmの範囲内である。PP(Polyepropylene)を検出する場合の検出帯域のピーク波長は1716~1735nmの範囲内であり、半値幅は30~50nmの範囲内である。
【0224】
また、例えば、本技術は、切り花の鮮度管理に適用することができる。
【0225】
さらに、例えば、本技術は、食品に混入している異物検査に適用することができる。例えば、本技術は、アーモンド、ブルーベリー、クルミ等のナッツや果物類に混入している皮、殻、石、葉、枝、木片等の異物の検出に適用することができる。また、例えば、本技術は、加工食品や飲料等に混入しているプラスチック片等の異物の検出に適用することができる。
【0226】
さらに、例えば、本技術は、植生の指標であるNDVI(Normalized Difference Vegetation Index)の検出に適用することができる。
【0227】
また、例えば、本技術は、人の肌のヘモグロビン由来の波長580nm付近の分光形状、及び、人肌に含まれるメラニン色素由来の波長960nm付近の分光形状のどちらか一方、又は、両者に基づいて、人の検出に適用することができる。
【0228】
さらに、例えば、本技術は、生体検知(生体認証)、ユーザインタフェース、サイン等の偽造防止及び監視等に適用することができる。
【0229】
<内視鏡手術システムへの応用例>
また、例えば、本開示に係る技術(本技術)は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0230】
図35は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0231】
図35では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0232】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0233】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0234】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0235】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0236】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0237】
光源装置11203は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0238】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0239】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0240】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。
また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0241】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0242】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。
光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0243】
図36は、
図35に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0244】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0245】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。
鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0246】
撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。
なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0247】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0248】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0249】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0250】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0251】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0252】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0253】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0254】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0255】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0256】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0257】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0258】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0259】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0260】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。
本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、カメラヘッド11102や、カメラヘッド11102の撮像部11402に適用され得る。具体的には、例えば、
図1の撮像素子12を、撮像部11402に適用することができる。撮像部11402に本開示に係る技術を適用することにより、より詳細かつ高精度な術部画像を得ることができるため、術者が術部を確実に確認することが可能になる。
【0261】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0262】
<移動体への応用例>
また、例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0263】
図37は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0264】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図37に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(Interface)12053が図示されている。
【0265】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0266】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0267】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0268】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0269】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0270】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0271】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0272】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0273】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図37の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0274】
図38は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0275】
図38では、撮像部12031として、撮像部12101、12102、12103、12104、12105を有する。
【0276】
撮像部12101、12102、12103、12104、12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102、12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0277】
なお、
図38には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0278】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0279】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0280】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0281】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。
マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0282】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、撮像部12031に適用され得る。具体的には、例えば、
図1の撮像装置10を撮像部12031に適用することができる。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、例えば、車外の情報をより詳細かつ高精度に取得することができ、自動運転の安全性の向上等を実現することができる。
【0283】
なお、本技術の実施形態は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0284】
<構成の組み合わせ例>
また、例えば、本技術は、以下のような構成も取ることができる。
(1)
多数の波長帯域に分光された光により物体が撮像されたマルチスペクトル画像を使用して、前記物体の種別を認識する物体認識処理を行う認識処理部と、
前記認識処理部による認識結果を、前記物体が写されたカラー画像に付加するラベリング部と
を備えるデータ処理装置。
(2)
前記認識処理部は、少なくとも一部の画素において光電変換素子より光の入射側に設けられ、導体薄膜の膜厚が画素により異なる金属薄膜フィルタを備える撮像素子が、前記物体を撮像して得られる前記マルチスペクトル画像を使用する
上記(1)に記載のデータ処理装置。
(3)
複数の物体が写された前記マルチスペクトル画像から予め求められ、前記物体の種別ごとに特有の分光特性を示すスペクトル情報を保持するスペクトル情報保持部
をさらに備え、
前記認識処理部は、前記物体認識処理の対象となる前記物体が写された前記マルチスペクトル画像から求められる前記スペクトル情報と、前記スペクトル情報保持部に保持されている複数の前記スペクトル情報との類似度に基づいて、前記物体の種別を認識する
上記(1)または(2)に記載のデータ処理装置。
(4)
前記ラベリング部により前記認識結果が付加された前記カラー画像を、任意の物体が写されたカラー画像による物体認識を行うための機械学習に用いる教師データとして記憶する記憶部
をさらに備える上記(1)から(3)までのいずれかに記載のデータ処理装置。
(5)
前記認識処理部により認識された前記物体の種別に従って、前記物体を定量的に評価する評価指標を選択し、その評価指標を算出する評価指標算出部
をさらに備え、
前記ラベリング部は、前記認識結果および前記評価指標を、前記物体が写されたカラー画像に付加する
上記(1)から(4)までのいずれかに記載のデータ処理装置。
(6)
前記認識結果および前記評価指標を、前記物体が写されたカラー画像に重畳して表示する表示部
をさらに備える上記(5)に記載のデータ処理装置。
(7)
多数の波長帯域に分光された光により物体が撮像されたマルチスペクトル画像を使用して、前記物体の種別を認識する物体認識処理を行い、
前記認識結果を、前記物体が写されたカラー画像に付加する
ステップを含むデータ処理方法。
(8)
多数の波長帯域に分光された光により物体が撮像されたマルチスペクトル画像を使用して、前記物体の種別を認識する物体認識処理を行い、
前記認識結果を、前記物体が写されたカラー画像に付加する
ステップを含むデータ処理をコンピュータに実行させるプログラム。
(9)
少なくとも一部の画素において光電変換素子より光の入射側に設けられ、導体薄膜の膜厚が画素により異なる金属薄膜フィルタを備える撮像素子と、
前記撮像素子が、多数の波長帯域に分光された光により物体を撮像して得られるマルチスペクトル画像を使用して、前記物体の種別を認識する物体認識処理を行う認識処理部と、
前記認識処理部による認識結果を、前記物体が写されたカラー画像に付加するラベリング部と
を備える電子機器。
【符号の説明】
【0285】
301 教師データ生成システム, 302 物体認識システム, 303 評価指標提示システム, 311 マルチスペクトルカメラ, 312 RGBカメラ, 313 記憶装置, 314 教師データ生成処理装置, 315 出力装置, 321 スペクトル情報保持部, 322 認識処理部, 323 ラベリング部, 324 評価指標算出部, 331 記憶装置, 332 学習器, 333 RGBカメラ, 334 出力装置