(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】除菌システム
(51)【国際特許分類】
B66B 31/02 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
B66B31/02 A
(21)【出願番号】P 2021120440
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100211502
【氏名又は名称】富田 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】坪田 幸裕
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-89215(JP,A)
【文献】特開2019-89630(JP,A)
【文献】特開2006-347648(JP,A)
【文献】特開平10-109877(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0217971(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 23/24,31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する乗客コンベアの手摺ベルトにおける除菌システムであって、
前記手摺ベルトに取り付け再剥離可能な接着面と、前記接着面の上面に設けられ液体を含有可能な吸収面とを有した多層構造のフィルムと、
前記吸収面に消毒液を塗布する消毒装置と、
前記接着面を前記手摺ベルトに圧着させる貼り付け装置と、
前記貼り付け装置から送り出され前記手摺ベルトとともに周回してきた前記フィルムを、前記手摺ベルトから回収し、回収した前記フィルムを前記消毒装置に送る巻き取り装置と、
を具備する除菌システム。
【請求項2】
前記接着面は、前記手摺ベルトへの吸着機能を有し、前記手摺ベルト側への液体の漏れを防止する素材であることを特徴とする請求項1に記載の除菌システム。
【請求項3】
前記吸収面は、抗菌機能を持つ素材もしくは前記消毒液が吸収される保水可能な素材であることを特徴とする請求項2に記載の除菌システム。
【請求項4】
前記フィルムは、前記接着面と前記吸収面とが一体となって前記巻き取り装置による巻き取りが可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の除菌システム。
【請求項5】
前記フィルムは、前記乗客コンベアを支持するトラス内における前記手摺ベルトの動作に影響を及ぼさない、0.8mm以下の厚みを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の除菌システム。
【請求項6】
前記フィルムは、前記接着面と前記吸収面との間に表示面の層を備え、
前記吸収面は透過可能な性質を有し、前記吸収面側から利用者に前記表示面が視認可能となることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の除菌システム。
【請求項7】
前記表示面は、利用者に提供するための情報を表示することを特徴とする請求項6に記載の除菌システム。
【請求項8】
前記消毒装置、前記貼り付け装置、前記巻き取り装置は、前記乗客コンベアの進行方向手前側のインレット近傍もしくは乗降口の手前に外付けで設けることを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれか一項に記載の除菌システム。
【請求項9】
前記消毒装置、前記貼り付け装置、前記巻き取り装置は、前記乗客コンベアのトラス内に設けることを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれか一項に記載の除菌システム。
【請求項10】
前記乗客コンベアへの利用者の乗り込み等を検知し、前記消毒装置と連動するセンサを備え、
前記消毒装置は、前記センサによって利用者の近づきを検知した場合に、前記消毒液を塗布することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の除菌システム。
【請求項11】
利用者に視認可能な位置に表示装置を備え、
前記表示装置は、前記消毒装置によって前記フィルムを消毒している間は除菌中である旨を表示することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の除菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、除菌システム、特に乗客コンベア用手摺ベルトの除菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータを利用する際には、手摺を掴んで乗り込むことが推奨されており、それに伴い近年、清掃や除菌に関する需要が高まっている。不特定多数が手を触れるとされる手摺ベルトについて、清掃や除菌、消毒機能を追加するものが存在しており、例えば、ベルトに直接消毒液を吹きかける構造や、直接拭き取り清掃を行う構造等が提案されている。しかしながら、いずれも手摺ベルトに直接手を加えることで目的を達成するものであるため、摩擦等による劣化が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-063103号公報
【文献】特開2011-116536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エスカレータの手摺ベルトに限らず、利用者が直接手を触れるものに対して、除菌や消毒を施したフィルムで覆うようにして予め備えておき、そのフィルムを移動させ定期的に表面を除菌する機能の提案が存在するが、この場合は、フィルムを動かすための動力が必要となってしまう。
【0005】
そこで、本実施形態では、エスカレータの手摺ベルトに消毒液を直接吹きかけることなく、除菌済みのフィルムを手摺に巻き付けることで、ベルトの劣化を有効に抑制しつつ、除菌済みの面を利用者に把持させることが可能となる除菌システムを提案する。また、エスカレータの動作に連動して作用することで他の動力源を必要とせず、通常のエスカレータに付加可能となる。なお、本実施形態の除菌システムを外付け等後付けで設けることで、エスカレータ本体の設置後であっても、大幅な工事等を必要とせずに追加して取り付けることが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、実施形態の除菌システムは、回転する乗客コンベアの手摺ベルトにおける除菌システムであって、前記手摺ベルトに取り付け再剥離可能な接着面と、前記接着面の上面に設けられ液体を含有可能な吸収面とを有した多層構造のフィルムと、前記吸収面に消毒液を塗布する消毒装置と、前記接着面を前記手摺ベルトに圧着させる貼り付け装置と、前記貼り付け装置から送り出され前記手摺ベルトとともに周回してきた前記フィルムを、前記手摺ベルトから回収し、回収した前記フィルムを前記消毒装置に送る巻き取り装置と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】本実施形態に係るエスカレータの概略図である。
【
図3】本実施形態に係るフィルムの構造を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る除菌システムの及び周辺の構造を示す拡大図である。
【
図5】本実施形態に係る貼り付け装置の側面図と正面図である。
【
図6】本実施形態に係る巻き取り装置の側面図と正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本実施形態のエレベータ及び周辺の構成と動作を説明する。なお、以下の説明において、略または実質的に同一の機能及び構成要素については、同一符号を付し、必要に応じて説明を行う。
【0009】
エスカレータ10の構造について、
図1を参照して説明する。
図1は一般的なエスカレータ10の側面図であり、エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて支持されている。
【0010】
図1に示すように、トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の駆動スプロケット(駆動輪)24,24、左右一対のベルトスプロケット27,27が設けられている。駆動装置18は、モータ20と、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する駆動チェーン22と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキとを有している。この駆動チェーン22により駆動スプロケット24が回転する。左右一対の駆動スプロケット24,24と左右一対のベルトスプロケット27,27とは、不図示の連結ベルトにより連結されて同期して回転する。また、上階側の機械室14内部には、モータ20やディスクブレーキなどを制御する制御装置50が設けられている。
【0011】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、従動スプロケット(従動輪)26が設けられている。上階側の駆動スプロケット24と下階側の従動スプロケット26との間には、左右一対の無端状の踏段チェーン28,28が掛け渡されている。左右一対の踏段チェーン28,28には、
図1に示すように、複数の踏段30の前輪301が等間隔で取り付けられている。踏段30の前輪301は、トラス12に固定された不図示の前案内レールに沿って走行すると共に、駆動スプロケット24の外周部にある凹部と従動スプロケット26の外周部にある凹部に係合して上下に反転する。後輪302は、
図1に示すようにトラス12に固定された後案内レール25を走行する。
【0012】
トラス12の左右両側には、左右一対のスカートガード44,44と左右一対の欄干36,36が立設されている。欄干36の上部に手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って手摺りベルト38が移動する。欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられ、正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。スカートガード44は、欄干36の側面下部に設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。上下階のスカートガード44の内側面には、操作盤52,56、スピーカ54,58がそれぞれ設けられている。
【0013】
手摺りベルト38は、上階側のインレット部46から正面スカートガード40内に侵入し、案内ローラ群64を介してベルトスプロケット27に掛け渡され、その後、案内ローラ群66を介してスカートガード44内を移動し、下階側のインレット部48から正面スカートガード42外に表れる。そして、手摺りベルト38は、ベルトスプロケット27が駆動スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。また、回転するベルトスプロケット27に走行する手摺りベルト38を押圧するための押圧部材68が設けられている。
【0014】
上階側の機械室14の天井面にある乗降口には、上階側の乗降板32が水平に設けられ、下階側の機械室16の天井面にある乗降口には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60から踏段30が進出または侵入する。また、乗降板34にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0015】
次に、本実施形態の除菌システムの仕組みについて、
図2から
図6を参照して説明する。
【0016】
図2は、本実施形態に係る除菌システムを備えたエスカレータの概略図である。
【0017】
消毒装置72によって除菌したフィルム70を、手摺ベルト38の動作に合わせて提供することを可能とした構造である。ここでエスカレータ10は、踏段30及び手摺ベルト38が下階から上階へと動作する上昇運転を行っているとする。消毒装置72は、利用者が乗り込む前の下階側に設けられており、除菌後のフィルム70を供給している。フィルム70は、手摺ベルト38の上面、すなわち乗客が把持する側に貼り付けられ、手摺ベルト38と一体となって上階まで移動する。その後インレット部46から手摺ベルト38とともにトラス12内に入り込み、運行動作に合わせて移動し、インレット部48から出現する。フィルム70は、手摺ベルト38とともにおよそ一回りし、消毒装置72まで戻ってくる。
【0018】
フィルム70は、手摺ベルト38への貼り付け及び手摺ベルト38からの巻き取りが可能な長さを有しており、手摺ベルト38よりも長い輪状となっている。またフィルム70は、手摺ベルト38に接する層と、乗客が把持可能な層とから成る多層構造となっている。なお実施形態内では、利用者のうち、特に踏段30に乗り込んだ利用者のことを乗客と表記する。フィルムの構造を簡略化した斜視図を
図3に示した。フィルム70は、手摺ベルト38に吸着して接する層であり、再剥離可能な接着面(以下、吸着素材70aとする)と、抗菌機能を持ち、フィルム70回転の際に吸着素材70aの上面に位置する層である吸収面(以下、吸収素材70bとする)とから一体的に構成される。
【0019】
吸着素材70aは、粘着剤により手摺ベルト38に取り付けることを可能としており、消毒液等液体の漏れが生じにくい防水材等の素材であることが望ましい。
【0020】
吸収素材70bは、乗客に把持されることを可能として、吸着素材70aの上面に設けられる。吸収素材70bは、少なくとも液体を含有できる素材、例えば高分子吸収剤のポリマーシートやセルロースを用いたパルプ等であって、フィルム70の周回ごとに消毒液を塗布される。抗菌機能を有するものもしくは消毒液塗布による劣化や損傷が激しくないものが適している。なお、吸収素材70bは、乗客が触れたときに消毒済みと実感できるよう消毒液を吸収し保水可能な素材であることが望ましい。これにより、消毒液を含ませたフィルムとすることで乗客はあえて消毒液に触れることができ、手摺ベルト38を把持したエスカレータ10の利用を促進することが期待される。この場合、乗客が下階から上階へ移動している間、もしくは手摺ベルト38とともに一周する間に蒸発する程度の量の消毒液を吸収することが望ましい。周回ごとにさらに消毒液が塗布されるため、出現時に常に衛生的な状態が保持される。
【0021】
このようにフィルム70の構造により、最上面の吸収素材70bで含ませた消毒液は、漏れが発生しにくい吸着素材70aよりも下面側への浸透を防ぎつつ、上面側に液体が留まることを可能としている。手摺ベルト38まで消毒液が届かないようにすることで、手摺ベルト38の劣化を有効に抑制している。
【0022】
吸着素材70a、吸収素材70bの二層を一体としたフィルム70の厚みはおよそ0.1mmであり、例えば保水テープ等である。また、例えば0.8mm程度までであればトラス内での手摺ベルト38の動作に影響は生じず、運行に影響を及ぼすことはない。吸収素材70bは、開孔フィルムと吸収ポリマー等の吸収体とを組み合わせたものであっても構わない。また、吸着素材70aと吸収素材70bは各層が剥離可能でなくても、粘着可能な面と除菌される面の役割を有していれば上述の形状に限定しない。
【0023】
図4は、除菌システムの及び周辺の構造を示すエスカレータ10の下階側の拡大図である。除菌システムは、消毒装置72と、貼り付け装置74と、巻き取り装置76とから構成される。
【0024】
消毒装置72は、手摺ベルト38の動作と連動する従動ローラ78、フィルム70の弛みの発生を抑制する押圧用バネ80、従動ローラ78に連動する従動ローラ82、フィルム70の導線を指示する導線用ローラ84、周回し手摺ベルト38からフィルム70剥離後の導線を指示する導線用ローラ86、周回ごとに接着面の粘着力低下を防ぐための接着剤88、周回ごとに吸収素材70bに塗布する消毒液90とから構成される。
【0025】
貼り付け装置74は、消毒液を塗布したフィルム70を手摺ベルト38に貼り付けるための装置である。
図4における貼り付け装置74の構成として、
図5に側面図(a)と正面図(b)を示した。消毒装置72から繰り出されたフィルム70は、導線を指示する指示機構74aにより手摺ベルト38と重なり、圧着機構74bによって貼り付けられる。圧着機構74bは押圧用のローラであって、手摺の平面部分と、丸みがかった曲線部分とにそれぞれ設けることで、手摺ベルト38の動作中に剥がれないよう圧着することを可能としている。
【0026】
巻き取り装置76は、手摺ベルト38とともに周回したフィルム70を手摺ベルト38から剥がすための装置である。
図4における巻き取り装置76の構成として、
図6に側面図(a)と正面図(b)を示した。手摺ベルト38とともにトラス12内を移動してきたフィルム70は、剥離機構76aによって手摺ベルト38から剥がし回収される。剥離機構76aはフィルム70を剥がすためのヘラであって、圧着機構74bのように手摺の平面部分と、丸みがかった曲線部分とにそれぞれ設ける。剥離したフィルム70は、消毒装置72の次の動作へと続く。
【0027】
なお、フィルム70は、手摺ベルト38に取り付けられている間であっても巻き取り装置76に剥がされた後であっても吸着素材70aと吸収素材70bとが一体となって動作する。
【0028】
消毒装置72における接着剤88及び消毒液90は、回収したフィルム70を上下の面から挟み込むような位置に配置する。このとき消毒液90は、液だめ等を設けておき表面に塗り付ける仕組みであっても、噴霧する仕組みであっても構わない。なお、手摺ベルト38から剥がして回収したフィルム70は、再度利用し、繰り返し手摺ベルト38に貼り付けられることとなる。
【0029】
このようにして、手摺ベルト38が一周するごとにフィルム70の消毒可能な機構を用いることで手摺ベルト38の劣化を有効に抑制しつつ、除菌したフィルム70を乗客に把持させることが可能となる。保水素材を用いる場合には、フィルム70に吸収させた消毒液に触れることができるため、消毒済みであることを乗客が認識でき、利用の際に手摺ベルト38の把持を促進させることが可能である。
【0030】
さらに、エスカレータ10の運行中は従動ローラ78に連動して除菌システムが作動している状態となるが、このときに乗客に対して視認可能に「消毒中」もしくは「除菌中」である旨を表示するとしてもよい。ここでの表示機構は、例えば、除菌システムを構成する消毒装置72の外側や、乗り込み側の乗降板34近傍、踏段30等に設けることとするが、他に液晶等何らかの表示装置を設けても構わない。これにより、手摺ベルト38の把持を憚られる乗客に対して安心感を与え、エスカレータ10の安全な利用方法を推奨する要素ともなり得る。
【0031】
フィルム70において、吸着素材70aと吸収素材70bの間に別の層として表示面の層を設け、その表示面には利用者に提供するための情報を表示する。提供する情報は、例えば、除菌中である旨の注意喚起を促す表示、「手摺を掴みましょう」等安全な利用を促進する表示の他、ラッピング広告のような宣伝広告等、アピール性を有する内容とする。なお、情報の形態としては、文字に限らず図形やイラスト等であっても構わない。
【0032】
すなわち、フィルム70は多層構造として二層に限定されず、厚みに配慮しつつ三層以上とすることを可能とする。これにより乗客に対して視覚的なアプローチが可能となる。なお、吸収素材70bは反対面の文字やイラストが透過可能な性質を有する透明等の材質であるとする。このようにして、表示面の表示内容を乗客に対して視認可能に表すことが可能となる。
【0033】
他にも、消毒液90は噴射装置を配置するとし、消毒装置72と連動するセンサを用いて、利用者の近づきや乗り込みを検知した場合に、消毒液を吹きかける構造であっても構わない。これにより、周回ごとに必ず塗布していた消毒液について、閑散時には使用量を節約できるという利点がある。
【0034】
本実施形態の除菌システムでは、エスカレータ10が上昇運転の場合について説明したが、下降運転の場合であっても適用可能である。この場合は、消毒装置他除菌システムに必要な装置は上階側に設けることとする。これにより、乗客の利用直前に手摺を除菌することが可能となり、消毒液の蒸発をする前にフィルム70を提供することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態では除菌システムに係る消毒装置は、
図2及び
図4に示すように利用者が視認可能な位置に外付けで設けているが、一周ごとに除菌を行う仕組みであればそれに限定されずエスカレータ10の一部、例えばトラス12内部や機械室16内部に設けるとしても構わない。除菌システムを外付けで設けると、後付けが容易となり、エスカレータ10本体の設置後に追加して取り付ける際に大幅な工事等を必要としないため、リニューアル等での取付性を得ることができる。対して、エスカレータ10の内部に設けると、設置場所を見えないように配置することができる。このようにして、従来のエスカレータ10の利用性を確保しつつ、状況に応じて取付位置を決定して除菌システムを適用することが可能となる。
【0036】
本実施形態では、上下階にわたって搬送するエスカレータ10の手摺ベルト38を除菌するシステムを例に説明してきたが、一定速度で移動する装置であれば水平型のエスカレータや傾斜型のエスカレータ、いわゆる動く歩道(オートロード)等の他の乗客コンベアに適用しても構わない。
【0037】
以上に述べたように、実施形態によれば、フィルム70に消毒液を塗布する機構と、手摺ベルト38にフィルム70を取り付ける機構と、を設けた除菌システムを設け、手摺ベルト38に常に消毒されたフィルム70が貼り付けられることにより、手摺ベルト38を掴むときに雑菌等が手に付くことを有効に抑制した状態を提供することが可能である。消毒されたフィルム70は手摺ベルト38に貼り付けられ、手摺ベルト38とともに一周し、再び除菌システムに取り込まれ再び消毒される。なお、フィルム70は漏れを防ぐ素材を用いることで、消毒液が手摺ベルト38に直接触れることを防ぎ、劣化を軽減させることができる。フィルム70は手摺ベルト38に比較して保守点検が行いやすく、取り替えが容易であるといえる。このようにして除菌システムを活用することで、手摺ベルト38の劣化を有効に抑制しつつ、除菌済みの面を乗客に提供することができる。
【0038】
本発明の実施形態及びいくつかの変形例を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、そのほかの様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1…建屋、2…支持アングル、3…支持アングル、10…エスカレータ、12…トラス、14…上階側の機械室、16…下階側の機械室、18…駆動装置、20…モータ、22…駆動チェーン、24…駆動スプロケット(駆動輪)、25…案内レール、26…従動スプロケット(従動輪)、27…ベルトスプロケット、28…踏段チェーン、30…踏段、32…乗降板、34…乗降板、36…欄干、38…手摺ベルト、39…手摺レール、40…正面スカートガード、42…正面スカートガード、44…スカートガード、46…インレット部、48…インレット部、50…制御装置、60…コム、62…コム、64…案内ローラ群、66…案内ローラ群、68…押圧部材、70…フィルム、70a…吸着素材(接着面)、70b…吸収素材(吸収面)、72…消毒装置、74…貼り付け装置、74a…指示機構、74b圧着機構、76…巻き取り装置、76a…剥離機構、78…従動ローラ、80…押圧用バネ、82…従動ローラ、84…導線用ローラ、86…導線用ローラ、88…接着剤、90…消毒液
【要約】 (修正有)
【課題】エスカレータの手摺を清掃や除菌する際に、ベルトに直接消毒液を吹きかける構造のものは摩擦等による劣化が懸念される。そこで、ベルトの劣化を有効に抑制しつつ、除菌済みの面を利用者に把持させることが可能となる、動力源を必要とせずエスカレータの動作に連動して作用する除菌システムを提供する。
【解決手段】手摺ベルト38に取り付け再剥離可能な接着面と、接着面の上面に設けられ液体を含有可能な吸収面とを有した多層構造のフィルム70と、吸収面に消毒液を塗布する消毒装置72と、接着面を手摺ベルトに圧着させる貼り付け装置と、貼り付け装置から送り出され手摺ベルト38とともに周回してきたフィルム70を、手摺ベルト38から回収し、回収したフィルム70を消毒装置72に送る巻き取り装置とを具備する、回転する乗客コンベアの手摺ベルト38における除菌システム。
【選択図】
図2