(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】薄膜バルク音響波共振器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/17 20060101AFI20220829BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
H03H9/17 F
H03H3/02 B
(21)【出願番号】P 2021503031
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 CN2020099645
(87)【国際公開番号】W WO2021012916
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-01-19
(31)【優先権主張番号】201910656067.3
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520281859
【氏名又は名称】中芯集成電路(寧波)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】隋 歓
(72)【発明者】
【氏名】斉 飛
(72)【発明者】
【氏名】楊 国煌
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106849897(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108075743(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108667437(CN,A)
【文献】国際公開第2009/022578(WO,A1)
【文献】特開2013-258519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜バルク音響波共振器であって、
第1の基板と、
第1のキャビティが貫通して形成されるように前記第1の基板に結合された支持層と、
前記第1のキャビティを覆うとともに順次積層された第1の電極、圧電層、および第2の電極を含む圧電積層構造と、
前記第1のキャビティの上方に位置する第2のキャビティが貫通して形成されるように前記圧電積層構造の上に生成された誘電体層と、
前記誘電体層に結合されるとともに前記第2のキャビティを覆う第2の基板と、
前記第1の電極および前記圧電層を貫通するように前記第1のキャビティと前記第2のキャビティとの間に位置する前記圧電積層構造に形成されるとともに前記第1のキャビティと連通する第1のトレンチと、
前記第2の電極および前記圧電層を貫通するように前記第1のキャビティと前記第2のキャビティとの間に位置する前記圧電積層構造に形成されるとともに前記第2のキャビティと連通する第2のトレンチと、を含み
前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとによって取り囲まれた領域は、共振器の有効動作領域であり、
前記第1の基板の底面における前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとの投影の二つの境界部は、互いに接し、
または、前記二つの境界部には、ギャップが設けられる、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項2】
請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器であって、
前記
有効動作領域は、断面形状が多角形であり、前記多角形の任意の2つの辺が平行しない、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項3】
請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器であって、
前記第1のトレンチの側壁と前記第2の電極が位置する平面とをなす傾斜角は、90度より大きく、
前記第2のトレンチの側壁と前記第1の電極が位置する平面とをなす傾斜角は、90度より大きい、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項4】
請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器であって、
前記第1の電極と前記支持層との間に配置された絶縁層をさらに含む、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項5】
請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器であって、
前記圧電層の材料は、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、ジルコン酸鉛またはチタン酸鉛を含む、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項6】
請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器であって、
前記支持層または前記誘電体層の材料は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムおよび窒化アルミニウムのうちの1つまたはそれらの組み合わせを含む、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項7】
請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器であって、
前記第1の電極または前記第2の電極の材料は、モリブデン、タングステン、アルミニウム、銅、タンタル、プラチナ、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、クロム、またはチタンのいずれか1つ、またはこれらの金属で形成された積層を含む、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器。
【請求項8】
薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
第3の基板を提供することと、
前記第3の基板に順次形成された第2の電極層、圧電層、および第1の電極層を含む圧電積層構造を前記第3の基板に形成することと、
前記圧電積層構造に支持層を形成することと、
前記支持層に前記支持層を貫通する第1のキャビティを形成することと、
前記第1の電極層および前記圧電層を貫通する第1のトレンチを前記第1のキャビティの底に形成することと、
前記支持層に前記第1のキャビティを覆う第1の基板を結合することと、
前記第3の基板を除去することにより露出された表面に誘電体層を形成することと、
前記第1のキャビティの上に位置する第2のキャビティを前記誘電体層に貫通させるように前記誘電体層に形成することと、
前記第1のキャビティの上に位置する第2のトレンチを前記第2の電極層および前記圧電層に貫通させるように前記第2のキャビティの底に形成することと、
前記誘電体層に前記第2のトレンチを覆う第2の基板を結合することと、を含み、
前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとによって取り囲まれた領域は、共振器の有効動作領域であり、
前記第1の基板の底面における前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとの投影の二つの境界部は、互いに接し、
または、前記二つの境界部には、ギャップが設けられる、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項9】
請求項
8に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
前記
有効動作領域は、断面形状が多角形であり、前記多角形の任意の2つの辺が平行しない、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項10】
請求項
8に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
前記第1のトレンチの側壁と前記第2の電極層が位置する平面とをなす傾斜角は、90度より大きく、
前記第2のトレンチの側壁と前記第1の電極層が位置する平面とをなす傾斜角は、90度より大きい、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項11】
請求項
8に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
前記第3の基板をエッチングまたは機械的研削によって除去する、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項12】
請求項
8に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
前記第1のトレンチおよび前記第2のトレンチを形成するための方法は、乾式エッチングを含む、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項13】
請求項
8に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
前記第1のキャビティまたは前記第2のキャビティを形成するための方法は、湿式エッチングまたは乾式エッチングを含む、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項14】
請求項
8に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
前記第1の電極層を形成してから、前記支持層を形成する前に、さらに、前記第1の電極層にエッチング停止層を形成することを含む、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【請求項15】
請求項1
4に記載の薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
前記エッチング停止層の材料は、窒化ケイ素または酸窒化ケイ素を含む、
ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス製造の分野に関し、特に薄膜バルク音響波共振器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ無線周波数通信技術が1990年代初頭に開発されて以来、無線周波数フロントエンドモジュールは徐々に通信機器のコアコンポーネントになっている。すべての無線周波数(Radio Frequency、以下は「RF」と略す)フロントエンドモジュールの中で、フィルタは最も成長の勢い強く、最も開発の見通しのあるコンポーネントになっている。ワイヤレス通信技術の急速な発展に伴い、5G通信プロトコルはより成熟し、市場のRFフィルタパフォーマンスのさまざまな側面に対してパフォーマンス上の要求も高まっている。フィルタのパフォーマンスは、フィルタを構成する共振器ユニットによって決まる。現在のフィルタの中で、薄膜バルク音響波共振器(FBAR)は、サイズが小さく、挿入損失が小さく、帯域外抑制が大きく、品質係数が高く、動作周波数が高く、電力容量が大きく、静電衝撃に対する耐性が優れるなどの特徴があるので、5Gアプリケーションに最適なフィルタの1つになっている。
【0003】
一般に、薄膜バルク音響波共振器は、2つの薄膜電極を含み、2つの薄膜電極の間に圧電薄膜層が配置される。その動作原理は、圧電薄膜層が交番電界下で振動を発生し、当該振動が圧電薄膜層の厚さ方向に伝播するバルク音響波を励起させ、当該音響波が上/下電極と空気との界面に伝達されてから反射され、このように薄膜内で繰り返し反射されて振動することである。当該音響波が圧電薄膜層を半波長のちょうど奇数倍で伝播すると、定在波振動が形成される。
【0004】
しかし、現在製造されている薄膜バルク音響波共振器は横波損失があり、品質係数(Q)をこれ以上改善できないため、高パフォーマンスRFシステムのニーズに対応できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、共振器の横波損失を改善し、薄膜バルク音響波共振器の品質係数を改善するとともに、共振器を外部環境汚染から保護することができ、デバイスのパフォーマンスを全体的に改善できる薄膜バルク音響波共振器およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、薄膜バルク音響波共振器であって、
第1の基板と、
第1のキャビティが貫通して形成されるように前記第1の基板に結合された支持層と、
前記第1のキャビティを覆うとともに順次積層された第1の電極、圧電層、および第2の電極を含む圧電積層構造と、
前記第1のキャビティの上方に位置する第2のキャビティが貫通して形成されるように前記圧電積層構造の上に生成された誘電体層と、
前記誘電体層に結合されるとともに前記第2のキャビティを覆う第2の基板と、
前記第1の電極および前記圧電層を貫通するように前記第1のキャビティと前記第2のキャビティとの間に位置する前記圧電積層構造に形成されるとともに前記第1のキャビティと連通する第1のトレンチと、
前記第2の電極および前記圧電層を貫通するように前記第1のキャビティと前記第2のキャビティとの間に位置する前記圧電積層構造に形成されるとともに前記第2のキャビティと連通する第2のトレンチと、を含み
前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとによって取り囲まれた領域は、共振器の有効動作領域であり、
前記第1の基板の底面における前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとの投影の二つの境界部は、互いに接し、
または、前記二つの境界部には、ギャップが設けられる薄膜バルク音響波共振器が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、薄膜バルク音響波共振器の製造方法であって、
第3の基板を提供することと、
前記第3の基板に順次形成された第2の電極層、圧電層、および第1の電極層を含む圧電積層構造を前記第3の基板に形成することと、
前記圧電積層構造に支持層を形成することと、
前記支持層に前記支持層を貫通する第1のキャビティを形成することと、
前記第1の電極層および前記圧電層を貫通する第1のトレンチを前記第1のキャビティの底に形成することと、
前記支持層に前記第1のキャビティを覆う第1の基板を結合することと、
第3の基板を除去することにより露出された表面に誘電体層を形成することと、
前記第1のキャビティの上に位置する第2のキャビティを前記誘電体層に貫通させるように前記誘電体層に形成することと、
前記第1のキャビティの上に位置する第2のトレンチを前記第2の電極層および前記圧電層に貫通させるように前記第2のキャビティの底に形成することと、
前記誘電体層に前記第2のトレンチを覆う第2の基板を結合することと、を含み、
前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとによって取り囲まれた領域は、共振器の有効動作領域であり、
前記第1の基板の底面における前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとの投影の二つの境界部は、互いに接し、
または、前記二つの境界部には、ギャップが設けられる薄膜バルク音響波共振器が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上述により、本発明によって提供される薄膜バルク音響波共振器は、上/下2つのキャビティ、上/下2つのキャビティの間に配置された圧電積層構造、およびキャビティ内に位置する圧電積層構造に形成される第1のトレンチと第2のトレンチを含み、前記第1のトレンチと第2のトレンチに囲まれた領域は薄膜バルク音響波共振器の有効動作領域である。本発明では、前記第1のトレンチにより圧電層と第2の電極との境界部が空気に露出され、圧電層材料および電極材料は、空気とは大きなインピーダンス不整合を有するので、圧電積層構造内の寄生横波が空気界面で反射され、横波のエネルギー漏れが防止される。同理で、第2のトレンチも横波のエネルギー漏れを防止する。したがって、本発明は、音響波損失を改善し、薄膜バルク音響波共振器の品質係数を改善し、そしてデバイスパフォーマンスをさらに改善する。同時に、本発明はまた、共振器本体のプロセスと互換性があり、プロセスが簡略化され、共振領域を効果的に保護できる、上記薄膜バルク音響波共振器を製造するための方法を提供する。
【0009】
さらに、有効動作領域が不規則な多角形であるため、第1トレンチと空気との界面で反射される横波及び第1トレンチと空気との界面で反射される横波がいずれも追加の定在波振動を発生しないので、音響波損失がさらに改善され、薄膜バルク音響波共振器の品質係数が改善され、それによってデバイスのパフォーマンスがさらに改善される。
【0010】
本発明はまた、他の特徴および利点を有するが、これらの特徴および利点は、本明細書に組み込まれる図面および発明を実施するための形態から明らかであるか、または本明細書に組み込まれる図面および発明を実施するための形態において詳細に説明するが、これらの図面および発明を実施するための形態はともに本発明の特定の原理を説明するに用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面を参照しながら本発明の例示的な実施形態をより詳細に説明することにより、本発明に関する上記の説明および他の目的、特徴および利点がより明らかになるであろう。本発明の例示的な実施形態において、同じ符号は一般に同じ部材を表す。
【0012】
【
図1A】本発明の一実施形態における薄膜バルク音響波共振器の断面構造の概略図である。
【
図3】本発明によって提供される薄膜バルク音響波共振器を製造するための方法のフローチャートである。
【
図4】本実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
【
図5】本実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
【
図6】本実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
【
図7】本実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
【
図8】本実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
【
図9】本実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
【
図10】本実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
【
図11】本実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
【
図12】本実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
【
図13】本実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
【
図14】本実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。図面には本発明の選択可能な実施形態を示しているが、本発明は様々な形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態によって限定されるべきではないことを理解されたい。その反面、これらの実施形態は、本発明をより完備かつ完全にするために、そして本発明の範囲を当業者に完全に伝えるために提供される。
【0014】
以下に、添付の図面および特定の実施形態を参照して、さらに本発明の薄膜バルク音響波共振器および薄膜バルク音響波共振器の製造方法を詳細に説明する。以下の説明および図面によれば、本発明の利点および特徴はより明確になるであろうが、本発明の技術方案は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の特定の実施例に限定されないことに留意されたい。図面は、非常に簡略化された形式であり、すべて精確でない比例を使用し、本発明の実施例を容易かつ明瞭に補助して説明するためのみに使用される。
【0015】
明細書および特許請求の範囲における「第1」、「第2」などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも特定の順序または時系列を説明するために使用されるわけではない。適切な状況で、そのように使用されるこれらの用語は、例えば、本明細書に記載または示された以外の順序で本明細書に記載の本発明の実施形態を実施できるように置き換えることができることを理解されたい。同様に、本明細書に記載の方法が一連の工程を含み、本明細書に記載のこれらの工程の順序が必ずしもこれらの工程を実行できる唯一の順序ではなく、記載された工程のいくつかが省略され得るおよび/または本明細書に記載されない他の工程も方法に追加できる。特定の図面の部材が他の図面の部材と同じである場合、これらの部材はすべての図面で簡単に識別できるが、図面の説明を明確にするために、同じ部材の符号をすべて各図に示されるわけではない。
【0016】
本発明の実施形態によれば、薄膜バルク音響波共振器が提供される。
図1Aを参照して、
図1Aは、本発明の一実施形態における薄膜バルク音響波共振器の断面構造の概略図であり、第1の基板100と、第1の基板100に位置するとともに第1の基板100に結合される支持層101と、支持層101に形成される第1のキャビティ110aと、第1のキャビティ110aを覆う圧電積層構造120(第1の電極130、圧電層140、および第2の電極150を含む)と、第1の電極130と圧電層140とを貫通するように圧電積層構造120に形成される第1のトレンチ130a及び第2の電極150と圧電層140とを貫通するように圧電積層構造120に形成される第2のトレンチ130bと、圧電積層構造120に形成される誘電体層106と、誘電体層106に形成されるとともに誘電体層106を貫通するように第1のキャビティ110aの上方に位置する第2のキャビティ110bと、第2のキャビティ110bを覆う第2の基板200と、含み、第1のトレンチ130aは第1のキャビティ110aと連通し、第2のトレンチ130bは第2のキャビティ110bと連通し、垂直面における第1のトレンチ130aと第2のトレンチ130bとによって取り囲まれた領域の投影により、閉じたまたはほぼ閉じたパターンが構成される。
【0017】
薄膜バルク音響波共振器の動作原理からわかるように、薄膜バルク音響波共振器の動作領域は、第1の電極103、圧電層104、および第2の電極105が同時に重なる領域であり、本発明における有効動作領域は、第1のトレンチ130aと第2のトレンチ130bとによって取り囲まれた内部領域である。
図2Aは一実施形態の薄膜バルク音響波共振器の上面図である。
図2Aを参照して、一実施形態において、第1のトレンチ130aと第2のトレンチ130bとによって取り囲まれた領域は、閉じた五角形であり、ジョイント部は、第1のジョイント部150aおよび第2のジョイント部150bである。
図2Bは、本発明の別の実施形態における薄膜バルク音響波共振器の上面図である。
図2Bを参照して、別の実施形態において、第1のトレンチ130aと第2のトレンチ130bとによって取り囲まれた領域は、ほぼ閉じた五角形であり、ジョイント部開口は、第1のジョイント部開口150a’および第2のジョイント部開口150b’である。
【0018】
本実施形態において、第1のトレンチは第1のキャビティと連通し、第2のトレンチは第2のキャビティと連通する。第1のトレンチと第2のトレンチとによって取り囲まれた領域は有効動作領域であり、さらに、有効動作領域は不規則な多角形であるため、第1のトレンチと空気との界面で反射される横波及び第2のトレンチと空気との界面で反射される横波はいずれも追加の定在波振動を発生しないので、音響波損失がさらに改善され、薄膜バルク音響波共振器の品質係数が向上し、それによってデバイスのパフォーマンスがさらに向上する。同時に、上部パッケージカバー構造を有する薄膜バルク音響波共振器は、上部スペースに露出している各層が外部環境による汚染問題を効果的に解決でき、デバイス全体のパフォーマンスを向上させることができる。
【0019】
第1の基板100は、当業者に知られている任意の適切な基板であってよく、例えば、以下に記載の材料の少なくとも1つであってよい。シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、シリコンカーボン(SiC)、カーボンゲルマニウムシリコン(SiGeC)、インジウムヒ素(InAs)、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)または他のIII/V複合半導体(これらの半導体で構成される多層構造なども含まれる)、またはシリコンオンインシュレーター(SOI)、積層シリコンオンインシュレーター(SSOI)、積層シリコンゲルマニウムオンインシュレーター(S-SiGeOI)、シリコンゲルマニウムオンインシュレーター(SiGeOI)およびゲルマニウムオンインシュレーター(GeOI)、または両面研磨ウェーハ(Double Side Polished Wafers,DSP)、アルミナなどのセラミック基板、石英またはガラス基板など。この実施形態における第1の基板100は、結晶配向のP型高抵抗単結晶シリコンである。支持層101の材料は、任意の適切な誘電材料であってよく、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭窒化ケイ素などの材料のうちの少なくとも1つを含むが、これらに限られるものではない。
【0020】
支持層101は第1の基板100に位置し、支持層101には第1のキャビティ110aが設けられ、第1のキャビティ110aはエッチングプロセスにより支持層101をエッチングすることによって形成することができる。しかしながら、本発明の技術はこれに限られるものではない。この実施形態において、第1のキャビティ110aの底面の形状は長方形であるが、本発明の他の実施形態において、第1のキャビティ110aの底面の形状は円形、楕円形、または例えば、五角形、六角形などの長方形以外の多角形などであってよい。第1のキャビティ110aは、支持層101に形成されることに限られない。支持層101が設けられない場合、第1のキャビティ110aを直接第1の基板100に形成し、圧電積層構造120を直接第1の基板100に設けてよい。
【0021】
圧電積層構造120は、第1の電極103、圧電層104、および第2の電極105を含み、第1の電極103は支持層101に位置する。圧電層104は第1の電極103に位置し、第2の電極105は圧電層104に位置する。第1の電極103、圧電層104、および第2の電極105の厚さ方向における重なり合う領域は、第1のキャビティ110aの真上にある。第1の支持層101と第1の電極103との間には、さらにエッチング停止層102が設けられ、その材料は、窒化ケイ素(Si3N4)および酸窒化ケイ素(SiON)を含むが、これらに限られるものではない。エッチング停止層102は、最終製造された薄膜バルク音響波共振器の構造安定性を向上させる一方、支持層101よりも低いエッチング速度を有するので、支持層101をエッチングしてキャビティ110aを形成する過程において、オーバーエッチングを防ぐことができ、その下に位置する第1の電極103を表面損傷から保護することができ、デバイスのパフォーマンスと信頼性を向上させることができる。その後の電気信号の入力/出力を容易にするために、第1の電極103が圧電層104と第2の電極105によって覆われていないエッジ領域103aを含むことに留意されたい。
【0022】
第2の電極105には誘電体層106が位置し、誘電体層106には第2の基板200が位置する。誘電体層106には、第2のキャビティ110bが形成され、第2のキャビティ110bは、第1のキャビティ110aと対向して設けられ、誘電体層106をエッチングすることによって形成することができる。この実施形態において、第2のキャビティ110bの底面の形状は長方形であるが、本発明の他の実施形態において、第2のキャビティ110bの底面の形状は円形、楕円形、または例えば、五角形、六角形などの長方形以外の多角形などであってよい。この実施形態において、第2のキャビティ110bおよび第1のキャビティ110aは、それぞれ、圧電積層構造120の上側および下側に設けられる。選択肢として、第2のキャビティ110bおよび第1のキャビティ110aは、圧電積層構造120に対して対称的に設けられる。第2の基板200の材料は、第1の基板100の材料と同じであってよく、また、当業者に知られている他の適切な基板であってよい。その後の電気信号の入力/出力を容易にするために、第2の電極105は誘電体層106によって覆われていないエッジ領域105aを含むことに留意されたい。
【0023】
トレンチ(Air Trench)構造は、エアギャップキャビティ(Air Trench)とも呼ばれ、圧電積層構造120に設けられ、第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bを含み、第1のトレンチ130aは、第1の電極103と圧電層104とを貫通するとともに第1のキャビティ110aと連通し、第2のトレンチ130bは、第2の電極105と圧電層104とを貫通するとともに第2のキャビティ110bと連通する。
図2Aを参照して、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bの投影は、ハーフ環状またはハーフ環状に近い多角形であり、ちょうど互いに接しまたはほぼ互いに接し、即ち、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bの投影により、完全に閉じた環状またはほぼ閉じた環状が構成される。ここで、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ130aと第2のトレンチ130bとの投影のジョイント部は、第1のジョイント部150aおよび第2のジョイント部105bを含む。第1のトレンチ130aと第2のトレンチ130bとの組み合わせは、圧電共振層1042の周りの横波をブロックでき、すなわち、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bの投影によって取り囲まれたパターン(円形または多角形)が位置する領域は、薄膜バルク音響波共振器の有効動作領域001である。第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bは、有効動作領域001の周辺に位置し、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bの投影のサイズは、両者の組み合わせにより成された環状を均等に分割してもよく(このとき、第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bは有効動作領域001の両側にあり、すべての部分がいずれも完全に対向する)、不均等に分割してもよい(このとき、第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bは有効動作領域001の両側にあり、一部だけが対向する)。
【0024】
図13を参照して、圧電積層構造120において、第1の電極103は第1の電極共振領域1032を含み、第1の電極共振領域1032は有効動作領域001と重なり合う。第2の電極105は第2の電極共振領域1052を含み、第2の電極共振領域1052は有効動作領域001と重なり合う。圧電層104は圧電共振領域1042を含み、圧電共振領域1042は第1の電極共振領域1032と第2の電極共振領域1052との間に位置し、すなわち、有効動作領域001と重なり合う。第2のキャビティ110bと第1のキャビティ110aとの厚さ方向における重なり合う領域は、第1のトレンチ130a、第2のトレンチ130b、および有効動作領域001(すなわち、第1の電極共振領域1032、第2の電極共振領域1052および圧電共振領域1042)を覆う。
【0025】
本発明の他の実施形態において、薄膜バルク音響波共振器は信号入力/出力構造をさらに含む。例えば、
図2Bと
図14を参照して、信号入力/出力構造は、それぞれ第1の電極103および第2の電極105に接続される第1のパッド107aおよび第2のパッド107bである。具体的には、第1のパッド107aは圧電層104および第2の電極105に覆われていない第1の電極103のエッジ領域103aに接続され、第2のパッド107bは誘電体層106に覆われていない第2の電極105のエッジ領域105aに接続されている。
【0026】
本発明によれば、薄膜バルク音響波共振器の製造方法がさらに提供される。
図3は、本発明の薄膜バルク音響波共振器の製造方法のフローチャートであり、
図3を参照して、薄膜バルク音響波共振器の製造方法は、
第3の基板を提供し、第3の基板に順次形成された第2の電極層、圧電層、および第1の電極層を含む圧電積層構造を第3の基板に形成するS01と、圧電積層構造に支持層を形成し、支持層に支持層を貫通する第1のキャビティを形成し、第1の電極層および圧電層を貫通する第1のトレンチを第1のキャビティの底に形成するS02と、支持層に第1のキャビティを覆う第1の基板を結合するS03と、第2の電極層が露出されるように第3の基板を除去するS04と、第2の電極層に誘電体層を形成し、第1のキャビティの上に位置する第2のキャビティを誘電体層に貫通させるように誘電体層に形成し、第2のトレンチを第2の電極層および圧電層に貫通させるように第2のキャビティの底に形成するS05と、誘電体層に第2のキャビティを覆う第2の基板を結合するS06と、を含む。
【0027】
図4~
図14は、本実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法の各工程に対応する概略構造図である。以下に、この実施形態によって提供される薄膜バルク音響波共振器の製造方法を詳細に説明する。
【0028】
図4と
図5に示されるように、工程S01を実行し、第3の基板300を提供し、第3の基板300に圧電積層構造120を形成する。圧電積層構造120は第2の電極層105、圧電層104および第1の電極層103を含む。ここで、圧電層104は、第1の電極層103と第2の電極層105との間に位置し、また、第1の電極層103と第2の電極層105とは対向して設けられる。第1の電極層103と第2の電極層105をパターニングすることにより第1の電極103と第2の電極105とを形成する。第1の電極103は、無線周波数(RF)信号などの電気信号を受信または発信する入力電極または出力電極として使用することができる。例えば、第2の電極105が入力電極として使用される場合、第1の電極103は出力電極として使用することができ、また、第2の電極105が出力電極として使用される場合、第1の電極103は入力電極として使用することができる。圧電層104は、第1の電極103または第2の電極105を介して入力された電気信号をバルク音響波に変換する。例えば、圧電層104は、物理的振動を通じて電気信号をバルク音響波に変換する。
【0029】
第3の基板300と第2の電極層105との間には、隔離層(
図5には示されていない)がさらに形成される。その後の剥離プロセスにおいて、隔離層を腐食させることにより、第3の基板300をその後に形成される圧電積層構造120から分離させることができ、第3の基板300の迅速剥離に有利であるため、プロセス製造効率が向上する。隔離層の材料は、いずれも二酸化ケイ素(SiO
2)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、または窒化アルミニウム(AlN)のうちのすくなくとも一つを含むが、これらに限られるものではない。隔離層は、化学蒸着、マグネトロンスパッタリングまたは蒸着などの方式によって形成することができる。この実施形態において、第3の基板300は単結晶シリコンであり、隔離層の材料は二酸化ケイ素(SiO
2)である。
【0030】
第2の電極層105と第1の電極層103の材料は、当業者に知られている任意の適切な導電性材料または半導体材料を使用することができ、ここの導電性材料は、導電性を有する金属材料であってよい。例えば、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、プラチナ(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、金(Au)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、パラジウム(Pd)などの金属のうちの1つまたは上述金属からなる積層体でできている。半導体材料は、例えば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiGeCなどである。第2の電極層105および第1の電極層103は、マグネトロンスパッタリング、蒸着などの物理的蒸着法または化学的蒸着法によって形成することができる。圧電層104の材料は、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、石英(Quartz)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)または、タンタル酸リチウム(LiTaO3)などのようなウルツ鉱型結晶構造を有する圧電材料とそれらの組み合わせを使用することができる。圧電層104が窒化アルミニウム(AlN)を含む場合、圧電層104は希土類金属、例えば、スカンジウム(Sc)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)およびランタン(La)のうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。さらに、圧電層104が窒化アルミニウム(AlN)を含む場合、圧電層104は遷移金属、例えば、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、およびハフニウム(Hf)のうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。圧電層104は、化学的蒸着、物理的蒸着、または原子層堆積などの当業者に知られている任意の適切な方法によって堆積することができる。好ましくは、この実施形態において、第2の電極層105および第1の電極層103は金属モリブデン(Mo)ででき、圧電層104は窒化アルミニウム(AlN)でできている。
【0031】
第2の電極105、圧電層104および第1の電極103の形状は、同じでも同じでなくてもよい。第2の電極105、圧電層104および第1の電極103の面積は、同じでも同じでなくてもよい。第2の電極層105を形成する前に、隔離層にシード層(
図5には示されていない)を形成することができ、シード層は、隔離層と第2の電極層105との間に形成され、その後形成される第2の電極層105(圧電層104および第1の電極層103)の結晶配向に対して配向性を有し、その後形成される圧電積層構造120が特定の結晶配向に沿って生成するのに便利であり、圧電層104の均一性が保証されることになる。シード層の材料は、窒化アルミニウム(AlN)とすることができるが、シード層は、AlNに加えて、六方最密充填(HCP)構造を持つ金属または誘電性材料で形成することもできる。例えば、シード層は金属チタン(Ti)で形成することもできる。
【0032】
図6から
図9に示されるように、工程S02を実行し、第1の電極層103に支持層101を形成し、支持層101をエッチングして第1のキャビティ110aを形成し、第1のキャビティ110aと連通する第1のトレンチ130aが形成されるように第1のキャビティ110aで第1の電極層103と圧電層104をエッチングする。支持層101に第1の基板100を結合する。具体的には、
図6に示されるように、まず、化学的堆積法により第1の電極層103に支持層101を形成する。支持層101の材料は、例えば、二酸化ケイ素(SiO
2)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、および窒化アルミニウム(AlN)のうちの一種類または複数種類の組み合わせである。この実施形態において、支持層101の材料は、二酸化ケイ素(SiO
2)である。次に、
図7に示されるように、第1の電極層103の一部を露出させるようにエッチングプロセスにより支持層101をエッチングして第1の開口110a’を形成する。当該エッチングプロセスは、湿式エッチングまたは乾式エッチングプロセスであってよい。好ましくは、乾式エッチングプロセスが使用される。乾式エッチングは、反応性イオンエッチング(RIE)、イオンビームエッチング、プラズマエッチング、またはレーザーカットを含むが、これらに限られるものではない。第1の開口110a’の深さおよび形状は、いずれも製造される薄膜バルク音響波共振器に必要なキャビティの深さおよび形状に依存する。即ち、形成される支持層101の厚さにより第1の開口110a’の深さを特定することができる。第1の開口110a’の底面の形状は、長方形または例えば、五角形、六角形、八角形などの長方形以外の多角形であってよく、円形または楕円形であってよい。本発明の他の実施形態において、第1の開口110a’の縦断面の形状は、上広下狭の球形キャップであり、すなわち、その縦断面はU字形である。
【0033】
この実施形態において、支持層101を形成する前に、第1の電極103上にさらにエッチング停止層102を形成する。前記エッチング停止層102の材料は、窒化ケイ素(Si3N4)および酸窒化ケイ素(SiON)を含むが、これらに限られるものではない。エッチング停止層102は、後で形成される支持層101よりも低いエッチング速度を有するので、その後支持層101をエッチングして第1の開口110a’を形成する際に、オーバーエッチングを防ぐことができ、その下に位置する第1の電極103を表面損傷から保護することができる。
【0034】
次に、
図8に示されるように、第1の開口110a’に第1のトレンチ130aが形成されるように第1の電極層103および圧電層104をエッチングする。第1のトレンチ130aの側壁は、傾斜しても垂直であってもよい。この実施形態において、第1のトレンチ130aの側壁と第2の電極層105が位置する平面とは鈍角を形成する(第1のトレンチ130aの縦断面(基板の厚さ方向に沿った断面)の形状は逆台形である)。圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ130aの投影は、ハーフ環状またはハーフ環状に近い多角形である。
【0035】
工程S03を実行し、第1の基板100と支持層101とを結合させ、第1の基板100と第1の電極層103とは、支持層101の第1の開口110a’に第1のキャビティ110aを形成する。第1の基板100は、当業者に知られている任意の適切な基板であってよく、例えば、以下に記載の材料の少なくとも1つであってよい。シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、シリコンカーボン(SiC)、カーボンゲルマニウムシリコン(SiGeC)、インジウムヒ素(InAs)、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)または他のIII/V複合半導体(これらの半導体で構成される多層構造なども含まれる)、またはシリコンオンインシュレーター(SOI)、積層シリコンオンインシュレーター(SSOI)、積層シリコンゲルマニウムオンインシュレーター(S-SiGeOI)、シリコンゲルマニウムオンインシュレーター(SiGeOI)およびゲルマニウムオンインシュレーター(GeOI)、または両面研磨ウェーハ(Double Side Polished Wafers,DSP)、アルミナなどのセラミック基板、石英またはガラス基板など。第1の基板100と支持層101との結合は、ホットプレス結合やドライフィルム接合によって実現することができる。
【0036】
本発明の他の実施形態において、第1のトレンチ130aと第1の開口110a’の形成方法は、第1の基板100を提供し、第1の基板100上に支持層101を形成し、第1の基板100の一部を露出させるように支持層101をエッチングすることにより、支持層101に第1の開口110a’を形成することと、第1の電極層103と圧電層104をエッチングして第1のトレンチ130aを形成することと、第1の開口110a’が形成された支持層101と第1のトレンチ130aが形成された圧電積層構造120とを結合させることと、をさらに含む。ここで、第1のトレンチ130a及び、第1の開口110a’を有する支持層101を製造するプロセス工程は、時系列に限定されず、当業者は、実際のプロセス条件に従ってそれを具体的に実施することができる。結合プロセスが完了した後、工程S04を実行し、第3の基板200を除去し、結合後の上記薄膜バルク音響波共振器を反転させて、
図10に示される構造が得られる。この実施形態において、隔離層(図示しない)を腐食させることによって第3の基板300を剥離する。本発明の他の実施形態において、例えば、エッチングまたは機械的研削などの他の方法を使用して、第3の基板300を除去することができる。
【0037】
図11から
図13に示されるように、工程S05を実行し、第2のトレンチ130bが形成されるように第2の電極層105および圧電層104をエッチングし、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bの投影により、閉じたまたはほぼ閉じたパターンが取り囲まれる。
【0038】
具体的には、まず、化学的堆積の方法により第2の電極層105に誘電体層106を形成し、
図11に示されるように、誘電体層106と支持層101との材料は同じで、例えば、二酸化ケイ素(SiO
2)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、または窒化アルミニウム(AlN)の一種類または複数種類の組み合わせである。この実施形態において、誘電体層106の材料は二酸化ケイ素(SiO
2)である。そして、
図12に示されるように、エッチングプロセスにより誘電体層106をエッチングして第2の開口110b’を形成することにより、第2の電極層105の一部を露出させるようになる。当該エッチングプロセスは、湿式エッチングまたは乾式エッチングプロセスであってよい。好ましくは、乾式エッチングプロセスが使用される。乾式エッチングは、反応性イオンエッチング(RIE)、イオンビームエッチング、プラズマエッチング、またはレーザーカットを含むが、これらに限られるものではない。第2の開口110b’の深さおよび形状は、いずれも製造される薄膜バルク音響波共振器に必要なキャビティの深さおよび形状に依存する。即ち、形成される誘電体層106の厚さにより第2の開口110b’の深さを特定することができる。第2の開口110b’の底面の形状は、長方形または例えば、五角形、六角形、八角形などの長方形以外の多角形であってよく、円形または楕円形であってよい。本発明の他の実施形態において、第2の開口110b’の縦断面の形状は上広下狭の球形キャップであり、すなわち、その縦断面はU字形である。次に、
図13に示されるように、第2の開口110b’に第2のトレンチ130bが形成されるように第2の電極層105および圧電層104をエッチングする。第2のトレンチ130bの側壁は、傾斜しても垂直であってもよい。この実施形態において、第2のトレンチ130bの側壁と第1の電極層103が位置する平面とは鈍角を形成する(第2のトレンチ130bの縦断面(基板の厚さ方向に沿った断面)の形状は逆台形である)。圧電層104が位置する平面における第2のトレンチ130bの投影は、ハーフ環状またはハーフ環状に近い多角形である。
【0039】
図2Aと
図2Bに示されるように、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bの投影は、ハーフ環状またはハーフ環状に近い多角形であり、ちょうど互いに接しまたはほぼ互いに接し、即ち、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bの投影により、完全に閉じた環状またはほぼ閉じた環状が構成される。ここで、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ130aと第2のトレンチ130bとの投影のジョイント部は、第1のジョイント部150aおよび第2のジョイント部105bを含む。第1のトレンチ130aと第2のトレンチ130bとの組み合わせは、圧電共振領域1042の周りの横波をブロックでき、すなわち、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bの投影によって取り囲まれたパターン(円形または多角形)が位置する領域は、薄膜バルク音響波共振器の有効動作領域001である。第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bは、有効動作領域001の周辺に位置し、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bの投影のサイズは、両者の組み合わせにより成された環状を均等に分割してもよく(このとき、第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bは有効動作領域001の両側にあり、すべての部分がいずれも完全に対向する)、不均等に分割してもよい(このとき、第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bは有効動作領域001の両側にあり、一部だけが対向する)。
【0040】
この実施形態において、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bの投影によって取り囲まれたパターン(有効動作領域001)は、ちょうど互いに接する五角形であり、且つ、多角形の任意の二つの辺は平行しない。本発明の他の実施形態において、
図2Bに示されるように、圧電層104が位置する平面における第1のトレンチ130aおよび第2のトレンチ130bの投影によって取り囲まれたパターンは、2箇所のジョイント部に開口(第1の開口150a’と第2の開口150b’)を有するほぼ閉じた五角形であってよい。この実施形態において、第2の開口110b’を形成する過程において、第2の電極層105の信号入力/出力が便利になるように、誘電体層106の一部をエッチングして第2の電極層105のエッジ部分105aを露出させてよい。例えば、第2のパッド107bは、エッジ部分105aに形成してよい。さらに、第2の電極層105および圧電層104をエッチングして第2のトレンチ130bを形成する過程において、第1の電極103の信号入力/出力が便利になるように、第2の電極層105の一部(エッジ部分105a)および圧電層104をエッチングして第1の電極層103の側のエッジ部分103aを露出させてよい。例えば、第1のパッド107aは、エッジ部分103aに形成してよい。
【0041】
最後に、
図14を参照して、工程S06を実行し、第2の基板200を提供し、誘電体層106の第2の開口110b’に第2のキャビティ110bが形成されるように誘電体層106を第2の基板200に結合する。第2の基板200は、当業者に知られている任意の適切な基板であり得る。この実施形態において、第2の基板200の材料は、P型高抵抗単結晶シリコンである。第2の基板200と誘電体層106との間の結合は、ホットプレス結合によって実現することができ、またはドライフィルム接合によって実現することができる。
【0042】
本発明の他の実施形態において、第2のトレンチ130bおよび第2のキャビティを形成するための方法は、
第2の開口110b’に第2のトレンチ130bが形成されるように第2の電極層105および圧電層104をエッチングすることと、第2の基板200を提供し、第2の基板200上に誘電体層106を形成し、誘電体層106をエッチングして第2の基板200の一部を露出させることにより、誘電体層106に第2の開口110b’を形成することと、第2の開口110b’が形成された誘電体層106と第2のトレンチ130bが形成された圧電積層構造120とを結合させることと、をさらに含む。ここで、第2のトレンチ130bおよび、第2の開口110b’を有する誘電体層106を製造するプロセス工程は、時系列に限定されず、当業者は、実際のプロセス条件に従ってそれを実施することができる。
【0043】
本明細書の各実施形態は、関連する方式で説明され、各実施形態の間の同じまたは類似の部分は、互いに参照され得ることに留意されたい。各実施形態は、他の実施形態との違いを重要点として説明し、特に、構造に関する実施形態につき、基本的に方法の実施形態と同様であるため、その説明は比較的簡単であり、関連部材につき、方法に関する実施形態についての説明を参照されたい。
【0044】
以上で本発明の各実施形態を説明したが、上記の説明は例示的であり、網羅的ではないので、これらの実施形態に限られるものではない。説明された実施形態の範囲および精神から逸脱しない前提では、多くの修正および変更は、当業者にとって自明なことである。
【0045】
符号の説明:
100-第1の基板; 200-第2の基板; 300-第3の基板; 120-圧電積層構造; 130-トレンチ構造; 101-支持層; 110a’-第1の開口; 110b’-第2の開口; 110a-第1のキャビティ; 110b-第2のキャビティ; 130a-第1のトレンチ; 130b-第2のトレンチ; 103-第1の電極/第1の電極層(第1の電極層をパターニングすることにより第1の電極を形成する); 103a-第1の電極エッジ領域; 1032-第1の電極共振領域; 104-圧電層; 1042-圧電共振領域; 105-第2の電極/第2の電極層(第2の電極層をパターニングすることにより第2の電極を形成する); 105a-第2の電極エッジ領域; 1052-第2の電極共振領域; 106-誘電体層; 107a-第1のパッド; 107a-第2のパッド; 150a-第1のジョイント部; 150b-第2のジョイント部; 150a’-第1のジョイント部開口; 150b’-第2のジョイント部開口; 001-有効動作領域。