(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】リニアコンベア
(51)【国際特許分類】
B65G 54/02 20060101AFI20220829BHJP
H02K 41/02 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B65G54/02
H02K41/02 C
(21)【出願番号】P 2021506090
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 JP2019011726
(87)【国際公開番号】W WO2020188791
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 学
(72)【発明者】
【氏名】川内 基範
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-271623(JP,A)
【文献】特開2015-50831(JP,A)
【文献】特開2003-324888(JP,A)
【文献】特開昭61-262067(JP,A)
【文献】特開2000-159317(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0019299(KR,A)
【文献】国際公開第2005/062446(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 54/02
H02K 41/00 - 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台に固定されるリニアコンベアであって、
搬送用スライダと、
前記搬送用スライダの移動方向を案内するレールを有するフレームと、
前記フレームの長手方向における一方の側に配され、前記フレームを固定状態で支持し、前記架台に対して固定される第1支持部と、
前記フレームの長手方向における他方の側に配され、前記フレームを非固定状態で支持し、前記架台に対して固定される第2支持部と、
前記架台と前記フレームとの熱伸縮量の相違に応じて前記長手方向について前記第2支持部と前記フレームとを相対的にスライド移動させるスライド機構と、を備え、
前記スライド機構は、前記第2支持部及び前記フレームの一方に対して固定される筒状の筒状部と、前記第2支持部及び前記フレームの他方に対して固定され、前記筒状部に対してスライド可能に挿通される挿通部と、を備える、リニアコンベア。
【請求項2】
前記スライド機構は、前記第1支持部及び前記第2支持部の一方に対して固定され、前記第1支持部及び前記第2支持部の他方に対してスライド可能に嵌合する嵌合部を備える請求項1に記載のリニアコンベア。
【請求項3】
前記筒状部は、前記挿通部に対して摺動するリニアブッシュと、リニアブッシュを保持するホルダ部と、を備える請求項1又は請求項2に記載のリニアコンベア。
【請求項4】
前記スライド機構は、前記架台及び前記フレームの一方に対して直接的に固定される補助レールと、前記架台及び前記フレームの他方に対して直接的に固定され、前記補助レールに対してスライド可能な補助スライダと、を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のリニアコンベア。
【請求項5】
前記スライド機構は、前記第2支持部及び前記フレームの一方に対して直接的に固定される補助レールと、前記第2支持部及び前記フレームの他方に対して直接的に固定され、前記補助レールに対してスライド可能な補助スライダと、を備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のリニアコンベア。
【請求項6】
前記フレーム、前記第1支持部、前記第2支持部及び前記スライド機構を有する固定側モジュールと、前記固定側モジュールの前記フレームの前記レールに対して直線状に並んで配される昇降用レールを有する昇降用フレームを備えて前記搬送用スライダを昇降移動させる昇降装置と、を備える請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のリニアコンベア。
【請求項7】
架台に固定されるリニアコンベアであって、
搬送用スライダと、
前記搬送用スライダの移動方向を案内するレールを有するフレームと、
前記フレームの長手方向における一方の側に配され、前記フレームを固定状態で支持し、前記架台に対して固定される第1支持部と、
前記フレームの長手方向における他方の側に配され、前記フレームを非固定状態で支持し、前記架台に対して固定される第2支持部と、
前記架台と前記フレームとの熱伸縮量の相違に応じて前記長手方向について前記第2支持部と前記フレームとを相対的にスライド移動させるスライド機構と、を備え、
前記スライド機構は、前記架台及び前記フレームの一方に対して直接的に固定される補助レールと、前記架台及び前記フレームの他方に対して直接的に固定され、前記補助レールに対してスライド可能な補助スライダと、を備える、リニアコンベア。
【請求項8】
架台に固定されるリニアコンベアであって、
搬送用スライダと、
前記搬送用スライダの移動方向を案内するレールを有するフレームと、
前記フレームの長手方向における一方の側に配され、前記フレームを固定状態で支持し、前記架台に対して固定される第1支持部と、
前記フレームの長手方向における他方の側に配され、前記フレームを非固定状態で支持し、前記架台に対して固定される第2支持部と、
前記架台と前記フレームとの熱伸縮量の相違に応じて前記長手方向について前記第2支持部と前記フレームとを相対的にスライド移動させるスライド機構と、を備え、
前記スライド機構は、前記第2支持部及び前記フレームの一方に対して直接的に固定される補助レールと、前記第2支持部及び前記フレームの他方に対して直接的に固定され、前記補助レールに対してスライド可能な補助スライダと、を備える、リニアコンベア。
【請求項9】
架台に固定されるリニアコンベアであって、
搬送用スライダと、
前記搬送用スライダの移動方向を案内するレールを有するフレームと、
前記フレームの長手方向における一方の側に配され、前記フレームを固定状態で支持し、前記架台に対して固定される第1支持部と、
前記フレームの長手方向における他方の側に配され、前記フレームを非固定状態で支持し、前記架台に対して固定される第2支持部と、
前記架台と前記フレームとの熱伸縮量の相違に応じて前記長手方向について前記第2支持部と前記フレームとを相対的にスライド移動させるスライド機構と、を備え、
前記搬送用スライダには、複数の永久磁石を有する可動子が配置され、
前記フレームには、前記搬送用スライダの搬送方向に沿って複数の電機子コイルが埋め込まれ、前記可動子とリニアモータを構成する固定子が設けられ、
前記スライド機構は、前記固定子とは、別に設けられて
おり、
前記スライド機構は、前記固定子の両側に設置されている、リニアコンベア。
【請求項10】
前記スライド機構は、前記第2支持部及び前記フレームの一方に対して固定される筒状の筒状部と、前記第2支持部及び前記フレームの他方に対して固定され、前記筒状部に対してスライド可能に挿通される挿通部と、を備える、
請求項9に記載のリニアコンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、リニアコンベアに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送用スライダをレールに沿って移動させるリニアコンベアが知られている。この種のリニアコンベアは、例えば架台に対して固定されるユニット型の固定側モジュールに、直線状のレールと、複数の電機子コイルを備える固定子とが備えられる。一方、スライダには、上記レールに案内されるレールガイドと、永久磁石からなる可動子とが備えられている。
【0003】
特許文献1は、固定ベースと、固定ベース上の長手方向に沿って設けられたゲート状のフレームと、一対の電機子とを備えている。フレームに一方の電機子が固定されており、固定ベースに対してガイドレール及び他方の電機子が固定されている。ガイドレールに対してはスライダが移動可能に支持されている。固定ベース及びフレームは、冷媒が流れる冷媒孔が設けられて冷却ジャケットを形成しており、電機子コイルで発生する熱を冷媒により熱交換し、ガイドレール等の熱変形の問題を解消するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1の構成では、ガイドレール等の熱変形の問題を解消するために、冷媒を冷媒孔に流す必要があるため、冷媒を流すための循環ポンプ等が必要になり、構成が複雑になるという問題がある。
【0006】
本明細書に記載された技術は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、熱変形の影響による不具合を抑制することが可能なリニアコンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載されたリニアコンベアは、架台に固定されるリニアコンベアであって、搬送用スライダと、前記搬送用スライダの移動方向を案内するレールを有するフレームと、前記フレームの長手方向における一方の側に配され、前記フレームを固定状態で支持し、前記架台に対して固定される第1支持部と、前記フレームの長手方向における他方の側に配され、前記フレームを非固定状態で支持し、前記架台に対して固定される第2支持部と、前記架台と前記フレームとの熱伸縮量の相違に応じて前記長手方向について前記第2支持部と前記フレームとを相対的にスライド移動させるスライド機構と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、架台とフレームとの熱伸縮量に差が生じた場合であっても、フレームの長手方向における他方の側は、第2支持部に対して非固定状態とされているため、熱伸縮によるフレームの反りや撓み等を抑制することができる。よって、リニアコンベアの熱変形の影響による不具合を抑制することが可能になる。また、架台とフレームとの熱伸縮量の相違に応じて長手方向について第2支持部とフレームとを相対的にスライド移動させるスライド機構を備えるため、フレームにおいて非固定状態の第2支持部側について、長手方向とは異なる方向(例えば長手方向に対して側方)への位置ずれを抑制することができる。これにより、複数のレール間における搬送用スライダの乗り継ぎの不具合を抑制することができる。
【0009】
本明細書に記載された技術の実施態様としては以下の態様が好ましい。
前記スライド機構は、前記第1支持部又は前記第2支持部の一方に対して固定され、前記第1支持部又は前記第2支持部の他方に対してスライド可能に嵌合する嵌合部を備える。
このようにすれば、第1支持部及び第2支持部の他方に対して嵌合部がスライド可能に嵌合することにより、簡素な構成で、フレームの反りや撓みを抑制して、レール間の乗り継ぎを良好に行うことが可能になる。また、必ずしもスライド機構を架台に対して直接固定しなくてもよいため、架台に対してスライド機構の固定のための構成(ネジ孔等)を設けなくてもよくなり、既存の構成に対してスライド機構の追加を容易に行うことが可能になる。
【0010】
前記スライド機構は、前記第2支持部又は前記フレームの一方に対して固定される筒状の筒状部と、前記第2支持部又は前記フレームの他方に対して固定され、前記筒状部に対してスライド可能に挿通される挿通部と、を備える。
このようにすれば、架台とフレームとの熱伸縮量に差が生じた場合には、フレームに対して(第1支持部を介さず)直接的に長手方向とは異なる方向への位置ずれを抑制することができる。
【0011】
前記筒状部は、前記挿通部に対して摺動するリニアブッシュと、リニアブッシュを保持するホルダ部と、を備える。
このようにすれば、筒状部の内面や挿通部の外周面の摩耗を抑制することができる。
【0012】
前記スライド機構は、前記架台又は前記フレームの一方に対して直接的に固定される補助レールと、前記架台又は前記フレームの他方に対して直接的に固定され、前記補助レールに対してスライド可能な補助スライダと、を備える。
このようにすれば、スライド機構を構成するために必ずしも第1支持部や第2支持部の加工が必要ないため、第1支持部や第2支持部を専用部品とする必要がなくなり、製造コストを低減することができる。また、スライド機構の構成の追加を容易に行うことが可能になる。
【0013】
前記スライド機構は、前記第2支持部又は前記フレームの一方に対して直接的に固定される補助レールと、前記第2支持部又は前記フレームの他方に対して直接的に固定され、前記補助レールに対してスライド可能な補助スライダと、を備える。
このようにすれば、補助レールと補助スライダとを用いて第2支持部に対してフレームを非固定状態とすることが可能になるため、構成を簡素化することが可能になる。
【0014】
前記フレーム、前記第1支持部、前記第2支持部及び前記スライド機構を有する固定側モジュールと、前記固定側モジュールの前記フレームの前記レールに対して直線状に並んで配される昇降用レールを有する昇降用フレームを備えて前記搬送用スライダを昇降移動させる昇降装置と、を備える。
このようにすれば、搬送用スライダが昇降装置により昇降するために、レール間の乗り継ぎのためにレール間の位置精度が要求される構成であってもレール間の乗り継ぎの不具合を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に記載された技術によれば、リニアコンベアの熱変形の影響による不具合を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態1のリニアコンベアを備えるリニアコンベア装置を示す斜視図
【
図4】リニアコンベアのスライド機構の部分を含むX-Z平面の断面図
【
図6】リニアコンベアにおけるスライド機構を含むY-Z平面の断面図
【
図7】
図4の状態から架台に対してフレームの熱伸縮量が異なる状態を示す断面図
【
図9】実施形態2のリニアコンベアのスライド機構の部分を含むX-Z平面の図
【
図10】リニアコンベアにおけるスライド機構を含むY-Z平面の断面図
【
図11】
図9の状態から架台に対してフレームの熱伸縮量が異なる状態を示す図
【
図13】実施形態3のリニアコンベアにおけるスライド機構の部分を含むX-Z平面の断面図
【
図14】
図13の状態から架台に対してフレームの熱伸縮量が異なる状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
実施形態1のリニアコンベア10Aについて
図1~
図8を参照しつつ説明する。以下では、
図1のX方向を左方、Y方向を前方、Z方向を上方として説明する。
図1に示すように、リニアモータ駆動によって搬送用スライダ50を移動させるリニアコンベア10Aは、架台11に取り付けられてリニアコンベア装置10を構成する。
【0018】
架台11は、鉄等の金属からなる格子状の架台本体12と、鉄等の金属からなり、リニアコンベア10Aが設置される複数の設置板15とを備える。架台本体12の下端部には、図示しない床板等に載置される複数の足部13を備えている。複数の設置板15は、長方形状の平板であって、架台本体12における異なる高さにそれぞれ固定され、架台本体12における長手方向の両端側を除いた領域に配される。架台本体12のうち、設置板15で覆われていない空間には、搬送用スライダ50を昇降移動させる一対の昇降装置80が配置される。
【0019】
(リニアコンベア10Aの全体構成)
リニアコンベア10Aは、架台11の設置板15に固定される複数台(本実施形態では各段3台、計6台)の固定側モジュール20と、架台本体12に対してそれぞれ固定された一対の昇降装置80と、搬送用スライダ50とを備える。
【0020】
複数の固定側モジュール20は、
図2に示すように、上下一対の設置板15上に直線状に並んで配されており、
図4に示すように、金属製のフレーム23と、フレーム23の右端側(長手方向における一方の側)に配され、フレーム23を固定状態で支持する第1支持部40と、フレーム23の左端側(長手方向における他方の側)に配され、フレーム23を非固定状態で支持する第2支持部42と、第2支持部42とフレーム23とを左右方向に相対的にスライド移動させるスライド機構60とを備える。
【0021】
(フレーム23)
フレーム23は、アルミニウム合金等の金属の押出成形品を所定長さに切断したものであり、固定側モジュール20における搬送方向の長さの全体に延びており、同一形状の断面が搬送方向の全長に連続している。フレーム23は、
図6に示すように、基部23Aと、基部23Aの上方側を覆う天面カバー24とを備える。天面カバー24は、略T字状であって、板状のカバー本体25と、カバー本体25を支持し、カバー本体25の下側の空間を仕切る仕切壁26とを備える。カバー本体25は、落下異物からレール28等を保護するものであり、前後の端縁部は屈曲されて下方に延びている。基部23Aの前後の端部(フレーム23の長手方向と直交する前後方向の端部)には、後述するスライド機構60の筒状部70が取り付けられる取付部27が前後方向に延出されている。
【0022】
基部23Aの上面部は、搬送用スライダ50の移動方向を案内する左右一対のレール28と、固定子30と、磁気センサ31とを備える。各レール28は、直線状に延びており、搬送用スライダ50のガイド溝57と凹凸嵌合することで、搬送用スライダ50が直線状にスライド移動するように案内する。
図4に示すように、複数台の固定側モジュール20及びそれらの両側の一対の昇降装置80が一列に並んで配置されると、固定側モジュール20のフレーム23(及びレール28)は、昇降装置80の昇降用フレーム81(及び昇降用フレーム81の昇降用レール81A)に対して直線状に並んだ状態となる。この状態では、隣り合うフレーム23,81の端部A1,B1間には、フレーム23の熱伸縮を可能とする隙間Gが形成されている。なお、レール28は、基部23Aと一体に形成することができるが、これに限られず、基部23Aに対してレールを別体で形成し、基部23Aにレール28を組み付ける構成としてもよい。
【0023】
固定子30は、
図6に示すように、端面が矩形状とされた細長い略角柱状をなしている。固定子30には、搬送用スライダ50の搬送方向に沿って並んで配置された複数の電機子コイルが埋め込まれている。複数の電機子コイルに供給される電流が制御されることにより、リニアモータ駆動によって搬送用スライダ50がレール28及び固定子30に沿って移動する。磁気センサ31は、磁気スケール59を検出可能なホール素子やMR素子等からなる。磁気スケール59と対向する位置に磁気センサ31が設けられることにより、搬送用スライダ50の位置を検出する。
【0024】
(第1支持部40及び第2支持部42)
第1支持部40及び第2支持部42は、アルミニウム合金等の金属からなり、フレーム23や搬送用スライダ50等の重量を支持することができる強度で形成されている。第1支持部40の下端部は、架台11の設置板15に対して、ボルト等の固定部材44で固定されている。第1支持部40の上端部は、
図4に示すように、フレーム23の右端部(長手方向の一方の端部)に対してボルト等の固定部材45により固定(締結)されている。第1支持部40には、
図5に示すように、後述するスライド機構60のシャフト部61の先端部が嵌合する被嵌合部41が形成されている。被嵌合部41は、第1支持部40における第2支持部42側の面が円柱状に窪んで形成されており、シャフト部61の先端部を(わずかな隙間を有して)嵌め入れ可能とされている。
【0025】
第2支持部42は、
図4に示すように、金属製のケース42Aの内部に基板等を有する回路が収容されている。第2支持部42の下端部は、架台11の設置板15に対して、ボルト等の固定部材44で固定されている。第2支持部42の上端部は、フレーム23の左端部(長手方向の他方の端部)に対してボルト等の固定部材により固定されておらず、フレーム23と第2支持部42との間の相対的移動(位置ずれ)が許容されている。隣り合う固定側モジュール20(のフレーム23)間、及び、固定側モジュール20(のフレーム23)と昇降装置80(の昇降用フレーム81)との間には、フレーム23等の熱伸縮を吸収可能な隙間Gが形成されている。
【0026】
(搬送用スライダ50)
搬送用スライダ50は、
図6に示すように、フレーム23の天面カバー24におけるカバー本体25の上に対向配置される対向部51と、天面カバー24と基部23Aとの間の空間に差し込まれる一対の差込部52と、対向部51と差込部52との間をU字状に折り返して連結する一対の連結部53とを備える。一対の差込部52には、それぞれ下方に開口するレールガイド56が固定されている。各レールガイド56には、搬送用スライダ50の搬送方向に溝状に延びるガイド溝57が形成されている。このガイド溝57にレール28が嵌め入れられると、ガイド溝57に沿って配置された図示しない多数のボールがレール28に接して転動する。
【0027】
一対の差込部52の一方には、複数の永久磁石を有する可動子58が搬送用スライダ50の搬送方向に並んで配置されている。一対の差込部52の他方には、複数の磁気スケール59が配置されている。各磁気スケール59は、ネオジム磁石等の磁石を有し、搬送用スライダ50の搬送方向に並んで配置されている。各磁気センサ31が対向する磁気スケール59を検出することで、搬送用スライダ50の位置が検出される。
【0028】
搬送用スライダ50は、複数台の固定側モジュール20及び一対の昇降装置80の駆動により搬送される。固定側モジュール20のレール28により搬送用スライダ50の移動方向が案内されて、フレーム23における昇降装置80側の端部を超え、昇降装置80の昇降用フレーム81に移動する。リニアコンベア10Aは、搬送経路上の所定の部品供給位置において搬送用スライダ50が停止され、部品の供給やネジ締め、シーリング等の作業が実施される。
【0029】
(スライド機構60)
スライド機構60は、
図4に示すように、シャフト部61と、シャフト部61が挿通される複数(本実施形態では2つ)の筒状の筒状部70と、シャフト部61の先端部が嵌合可能に窪んだ形状の被嵌合部41と、を備える。
【0030】
シャフト部61は、搬送用スライダ50の搬送方向に長い円柱の棒状であって、シャフト部61の右端部(長手方向の一方の端部)は、第1支持部40の左端側に設けられた被嵌合部41に嵌合する嵌合部62とされ、嵌合部62は、被嵌合部41に対してスライド可能に嵌合する。シャフト部61の左端部(長手方向の他方の端部)は、連結固定部65を介して第2支持部42に固定される被固定部63とされている。連結固定部65は、固定板66と、固定板66を第2支持部42及びシャフト部61に固定するための締結部材としてのボルトBTとを備える。固定板66には、複数のネジ孔が形成され、ボルトBTを各ネジ孔に通して締結することにより、第2支持部42とシャフト部61との間が固定される(第2支持部42とシャフト部61との間の相対的な移動が規制される)。
【0031】
シャフト部61における両端部間(被固定部63と嵌合部62との間)は、フレーム23の下方に延出された複数の筒状部70に対してスライド可能に挿通される挿通部68とされている。複数の筒状部70は、フレーム23の取付部27に固定されており、第1支持部40と第2支持部42との間に左右方向に並んで配されている。各筒状部70は、
図5に示すように、アルミニウム合金等の金属製のホルダ部71と、ホルダ部71内における軸方向の両端部側に保持される複数のリニアブッシュ72とを備える。ホルダ部71は、
図6に示すように、フレーム23の取付部27に対してボルト等の固定部材74で固定される。リニアブッシュ72は、金属製又は合成樹脂製であって、挿通部68と筒状部70との間の摩耗を防止するように設けられている。なお、リニアブッシュ72には、シャフト部61の移動を円滑にするためのボールが設けられるようにしてもよい。
【0032】
(一対の昇降装置80)
図2に示すように、一対の昇降装置80は、複数台の固定側モジュール20の両側に、複数台の固定側モジュール20と共に直線状に並べて配置される。各昇降装置80は、
図4に示すように、固定側モジュール20のフレーム23(及びレール28)に連なるフレーム23(及びレール28)を有する。昇降装置80は、
図3に示すように、昇降用フレーム81上の所定位置まで移動した搬送用スライダ50に対して、駆動モータを駆動させて昇降移動させる(
図3では、搬送用スライダ50及び昇降用フレーム81が昇降移動する状態を二点鎖線で示す)。昇降装置80の駆動により搬送用スライダ50が昇降した後、搬送用スライダ50の進行方向が反転し、異なる段の固定側モジュール20のレール28に沿って搬送される。
【0033】
(本実施形態の作用、効果)
リニアコンベア10Aは、架台11に固定されるリニアコンベアであって、
図4に示すように、搬送用スライダ50と、搬送用スライダ50の移動方向を案内するレール28を有するフレーム23と、フレーム23の長手方向における一方の側に配され、フレーム23を固定状態で支持し、架台11に対して固定される第1支持部40と、フレーム23の長手方向における他方の側に配され、フレーム23を非固定状態で支持し、架台11に対して固定される第2支持部42と、架台11とフレーム23との熱伸縮量の相違に応じて長手方向について第2支持部42とフレーム23とを相対的にスライド移動させるスライド機構60と、を備える。
【0034】
リニアコンベア10Aは、稼働時の熱等によりフレーム23及び架台11の温度が上昇する。ここで、上記実施形態とは異なり、例えば、フレーム23と第1支持部40との間だけでなく、フレーム23と第2支持部42との間についても固定状態とすると、フレーム23と架台11との材質が異なる場合には線膨張係数が異なることにより、フレーム23と架台11と間に熱応力が発生し、フレーム23に反りが生じることが懸念される。また、フレーム23と架台11との材質が同じである場合であっても、回路の発熱部品やフレームや架台の形状等が相違する場合には、熱応力が発生し、フレーム23に反りが生じることが懸念される。
【0035】
これに対して、上記実施形態によれば、架台11とフレーム23との熱伸縮量に差が生じた場合には、フレーム23の左端部側(長手方向における他方の側)は、第2支持部42に対して非固定状態とされている。これにより、
図7に示すように、材質等の相違により、フレーム23の熱伸長が、架台11の設置板15よりも大きくなったとしても、
図8に示すように、フレーム23の端部A2が架台11の設置板15(及び第2支持部42)の端部A3よりも、昇降装置80側に移動することにより、フレーム23の反りや撓み等を抑制することができる(なお、
図8のA1は、熱伸縮前のフレーム23の端部)。また、架台11とフレーム23との熱伸縮量の相違に応じて長手方向について第2支持部42とフレーム23とを相対的にスライド移動させるスライド機構60を備えるため、フレーム23において非固定状態の第2支持部42側について、長手方向とは異なる方向への位置ずれを抑制することができる。これにより、複数のレール28間における搬送用スライダ50の乗り継ぎの不具合を抑制することができる。
【0036】
また、スライド機構60は、(第1支持部40及び)第2支持部42(の一方)に対して固定され、第1支持部40(及び第2支持部42の他方)に対してスライド可能に嵌合する嵌合部62を備える。
このようにすれば、第1支持部40(及び第2支持部42の他方)に対して嵌合部62がスライド可能に嵌合することにより、簡素な構成で、フレーム23の反りや撓みを抑制して、レール28間の乗り継ぎを良好に行うことが可能になる。また、必ずしもスライド機構60を架台11に対して直接固定しなくてもよいため、架台11に対してスライド機構60の固定のための構成(ネジ孔等)を設けなくてもよくなり、既存の構成に対してスライド機構60の追加を容易に行うことが可能になる。
【0037】
また、スライド機構60は、(第2支持部42及び)フレーム23(の一方)に対して固定される筒状の筒状部70と、第2支持部42(及びフレーム23の他方)に対して固定され、筒状部70に対してスライド可能に挿通される挿通部68と、を備える。
このようにすれば、架台11とフレーム23との熱伸縮量に差が生じた場合には、フレーム23に対して(第1支持部40を介さず)直接的に長手方向とは異なる方向への位置ずれを抑制することができる。
【0038】
また、筒状部70は、挿通部68に対して摺動するリニアブッシュ72と、リニアブッシュ72を保持するホルダ部71と、を備える。
このようにすれば、筒状部70の内面や挿通部68の外周面の摩耗を抑制することができる。
【0039】
また、フレーム23、第1支持部40、第2支持部42及びスライド機構60を有する固定側モジュール20と、固定側モジュール20のフレーム23のレール28に対して直線状に並んで配される昇降用レール81Aを有する昇降用フレーム81を備えて搬送用スライダ50を昇降移動させる昇降装置80と、を備える。
このようにすれば、搬送用スライダ50が昇降装置80により昇降するために、レール28,81A間の乗り継ぎのためにレール間の位置精度が要求される構成であってもレール28,81A間の乗り継ぎの不具合を抑制することができる。
【0040】
<実施形態2>
次に、実施形態2について、
図9~
図12を参照しつつ説明する。実施形態2のリニアコンベア90は、実施形態1のスライド機構60に代えて、補助レール92と補助スライダ93とを有するスライド機構91を備えるものである。以下では実施形態1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
スライド機構91は、
図9,
図10に示すように、架台11上における第1支持部40と第2支持部42との間のうち、第2支持部42側に設けられており、左右方向(搬送方向)に延びる前後一対の補助レール92を備える。補助レール92は、架台11の設置板15に対してボルト等の固定部材44により固定されている。補助スライダ93は、連結固定部95を介してフレーム23の取付部27に固定される。連結固定部95は、
図10に示すように、固定板96と、固定板96を取付部27及び補助スライダ93に固定するための複数のボルトBTとを備える。固定板96には、複数のネジ孔が形成され、ボルトBTを各ネジ孔に通して締結することにより、取付部27と補助スライダ93との間が固定板96を介して固定される。補助レール92及び補助スライダ93は、フレーム23と架台11の熱伸縮量の相違を吸収可能となるように、補助レール92と補助スライダ93との相対的に移動可能な長さが設定されている。本実施形態では、補助スライダ93の左右方向の長さは、補助レール92の左右方向の長さよりも短くされている。
【0042】
実施形態2によれば、
図11に示すように、材質等の相違により、フレーム23の熱伸長が、架台11の設置板15よりも大きくなったとしても、
図12に示すように、フレーム23の端部A2が架台11の設置板15(及び第2支持部42)の端部A3よりも、昇降装置80側に移動することにより、フレーム23の反りや撓み等を抑制することができる。また、架台11とフレーム23との熱伸縮量の相違に応じて第2支持部42とフレーム23とを長手方向に相対的にスライド移動させるための補助レール92及び補助スライダ93を備えるため、フレーム23において非固定状態の第2支持部42側について、長手方向とは異なる方向への位置ずれを抑制することができる。これにより、複数のレール28間における搬送用スライダ50の乗り継ぎの不具合を抑制することができる。
【0043】
また、スライド機構91は、架台11(及びフレーム23の一方)に対して固定される補助レール92と、(架台11及び)フレーム23(の他方)に対して固定され、補助レール92に対してスライド可能な補助スライダ93と、を備える。
このようにすれば、スライド機構91を構成するために必ずしも第1支持部40や第2支持部42の加工が必要ないため、第1支持部40や第2支持部42を専用部品とする必要がなくなり、製造コストを低減することができる。また、スライド機構91の構成の追加を容易に行うことが可能になる。
【0044】
<実施形態3>
次に、実施形態3について、
図13~
図15を参照しつつ説明する。実施形態3のリニアコンベア100は、実施形態2のスライド機構91とは異なり、フレーム23と第2支持部104との間にスライド機構101を設けたものである。以下では上記実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
スライド機構101は、
図13に示すように、架台11上に固定された補助レール92と、フレーム23の端部側に固定された補助スライダ93とを備える。フレーム23の端部側の重量を支持する第2支持部104は、アルミニウム合金等の金属製とされて高さ寸法が小さくされており、補助レール92は、第2支持部104上に固定されている。第2支持部104は、架台11の設置板15に対してボルト等の固定部材105により固定されている。フレーム23の左端部の下側には、基板等を有する回路がケースに収容された回路ユニット108が配されている。回路ユニット108は、フレーム23に対してボルト等の固定部材106により固定されている。回路ユニット108の下には、ボルト等の固定部材107によりスペーサユニット103が固定されている。スペーサユニット103と補助スライダ93とは、ボルト等の固定部材105により固定されている。補助スライダ93、スペーサユニット103及び回路ユニット108は、第2支持部104及び補助レール92上でフレーム23の長手方向にスライド可能な状態でフレーム23を支持する。
【0046】
実施形態3によれば、
図14に示すように、材質等の相違により、フレーム23の熱伸長が、架台11の設置板15よりも大きくなったとしても、
図15に示すように、フレーム23の端部A2が架台11の設置板15の端部A3よりも、昇降装置80側に移動することにより、フレーム23の反りや撓み等を抑制することができる。また、スライド機構101は、第2支持部104(及びフレーム23の一方)に対して固定される補助レール92と、(第2支持部42及び)フレーム23(の他方)に対して固定される。これにより、補助レール92と補助スライダ93とを用いて第2支持部42に対してフレーム23を非固定状態とすることが可能になるため、構成を簡素化することが可能になる。
【0047】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1では、第2支持部42に固定されるシャフト部61がフレーム23の筒状に挿通され、第1支持部40の被嵌合部41に嵌合する構成としたが、これに限られず、シャフト部61に代えて筒状の筒状部を第2支持部42に固定し、フレーム23や第1支持部40に筒状部70に挿通されるシャフト部を設けるようにしてもよい。
【0048】
(2)第2実施形態及び第3実施形態では、補助レール92は、架台11に固定され、補助スライダ93がフレーム23側に固定される構成としたが、これに限られず、補助レール92がフレーム23側に固定され、補助スライダ93が架台11側に固定される構成としてもよい。
【0049】
(3)筒状部70は、ホルダ部71に加えて、リニアブッシュ72を備える構成としたが、リニアブッシュ72を備えない構成としてもよい。
(4)フレーム23の熱伸縮により、固定側モジュールのフレーム23と昇降装置80の昇降用フレーム81との間の隙間Gの寸法が変わる構成としたが、フレーム23の熱伸縮により、隣り合う固定側モジュール(のフレーム23)間の隙間Gの寸法が変わる構成とし、隣り合う固定側モジュールの少なくとも一方にスライド機構60を設けるようにしてもよい。
【0050】
(5)一対の昇降装置80を備える構成としたが、一対の昇降装置80を備えない構成としてもよい。例えば、搬送用スライダ50が直線状のみに移動するリニアコンベアとしてもよい。また、例えば複数の固定側モジュール20を同じ高さで並列に設け、複数の固定側モジュール20間を移動する移動装置を備える構成としてもよい。また、固定側モジュール20の数は、上記実施形態の数に限られず、任意の数の固定側モジュール20を用いてリニアコンベアを構成することができる。
【符号の説明】
【0051】
10,90,100:リニアコンベア,11:架台,20:固定側モジュール,23:フレーム,28:レール,30:固定子,40:第1支持部,41:被嵌合部,42,104:第2支持部,50:搬送用スライダ,56:レールガイド,60,91,101:スライド機構,61:シャフト部,62:嵌合部,68:挿通部,70:筒状部,71:ホルダ部,72:リニアブッシュ,80:昇降装置,81:昇降用フレーム,81A:昇降用レール,92:補助レール,93:補助スライダ,G:隙間