(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】残留ワークからワーク部分を取り出す方法および装置
(51)【国際特許分類】
B26D 7/18 20060101AFI20220829BHJP
B21D 43/20 20060101ALI20220829BHJP
B21D 45/00 20060101ALI20220829BHJP
B26F 1/44 20060101ALN20220829BHJP
【FI】
B26D7/18 F
B21D43/20
B21D45/00 A
B26F1/44 G
(21)【出願番号】P 2021514538
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2019071285
(87)【国際公開番号】W WO2020057852
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】102018215738.3
(32)【優先日】2018-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン エス・エー プルス コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Werkzeugmaschinen SE + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Str. 2, 71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デニス ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル エルザー
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016208872(DE,A1)
【文献】特開2015-199078(JP,A)
【文献】特開平08-002670(JP,A)
【文献】特開平07-171643(JP,A)
【文献】特開2006-122931(JP,A)
【文献】特開平07-024795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 45/00 ー 45/06
B26D 7/18
B21D 43/20 43/22
B26F 1/44
B23Q 3/00
B23Q 7/00
B23K 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持平面(E)内に支持された残留ワーク(2a)からワーク部分(20)を取り出す方法であって、押出し装置(17,32)の少なくとも1つの押出し部材(18,52)と保持装置(19,34)の少なくとも1つの保持部材(14a,14b,49b,49c,47)との間に緊締された前記ワーク部分(20)を取出し方向(Z)に沿って移動させるステップ、ならびに前記取出し方向(Z)に沿った移動に際して前記ワーク部分(20)が前記残留ワーク(2a)から完全に切断されたか否かを点検するステップを含む、方法において、
点検時に前記ワーク部分(20)が前記残留ワーク(2a)から完全には切断されなかったことが確認されると、前記ワーク部分(20)の緊締を軽減するかまたは完全に解消し、次いで前記ワーク部分(20)の緊締を再形成するステップ
と、
前記ワーク部分(20)を前記取出し方向(Z)に沿って移動させる際に、前記残留ワーク(2a)を前記支持平面(E)内に支持するワーク台(27)と、少なくとも1つの別の保持部材(49a,49d,47)との間に前記残留ワーク(2a)を緊締し、前記ワーク部分(20)の前記緊締を軽減するかまたは完全に解消する前あるいはその最中に、前記残留ワーク(2a)の前記緊締を軽減するかまたは完全に解消するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ワーク部分(20)の緊締を軽減するかまたは完全に解消し、前記ワーク部分(20)の緊締を再形成する前記ステップは複数回実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記緊締が解消されるとまず、前記押出し部材(18,52)と前記ワーク部分(20)との間の接触が解消される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記緊締の軽減または解消に際して前記ワーク部分(20)は、位置固定状態にある前記保持装置(34)の前記少なくとも1つの保持部材(49b,49c,47)に位置固定されている、請求項1から
3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記保持装置(34)は前記緊締が解消されると、前記取出し方向(Z)に対して垂直な少なくとも1つの方向(X,Y)で、前記ワーク部分(20)を前記残留ワーク(2a)に対して相対的に移動させ、好適には追加的に、前記取出し方向(Z)に沿って前記ワーク部分(20)を前記残留ワーク(2a)に対して相対的に移動させる、請求項1から
4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ワーク部分(20)を前記残留ワーク(2a)から切断するために、前記ワーク部分(20)は前記保持装置(19)の複数の前記保持部材(14a,14b)により緊締され、これらの保持部材(14a,14b)は前記取出し方向(Z)に沿って互いに逆方向に移動させられる、請求項1から
5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ワーク部分(20)を前記取出し方向(Z)に沿って移動させる際に、前記保持部材(14a,14b)の、前記ワーク部分(20)を支持する少なくとも1つの支持面(15a,15b)が前記残留ワーク(2a)の前記支持平面(E)の下に降下させられ、降下中に前記押出し部材(18)が上方から前記ワーク部分(20)を押圧する、請求項1から
6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
さらに:
前記緊締が軽減されるかまたは完全に解消された状態で前記ワーク部分(20)を前記取出し方向(Z)に沿って前記残留ワーク(2a)の前記支持平面(E)内に移動させるステップ、前記押出し装置(17,32)の少なくとも1つの押出し部材(18,52)と前記保持装置(19,34)の少なくとも1つの保持部材(14a,14b,49b,49c,47)との間での前記ワーク部分(20)の緊締を再形成するステップ、ならびに
好適には前記ワーク部分(20)を前記取出し方向(Z)に沿って移動させる前記ステップにおける速度(v1)とは異なる速度(v2)で、前記ワーク部分(20)を前記取出し方向(Z)に沿って再び移動させるステップ、
を含む、請求項1から
7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
さらに:前記ワーク部分(20)および好適には前記残留ワーク(2a)の前記緊締を軽減するかまたは完全に解消してから再形成する際および/または前記取出し方向(Z)に沿って前記ワーク部分(20)を再び移動させる際に、取り出そうとする前記ワーク部分(20)の幾何学形状パラメータ、取出し結果および前記少なくとも1つの押出し部材(18,52)および/または前記少なくとも1つの保持部材(14a,14b,47,49b,49c)の動作パラメータセットを結果メモリ(54)に記憶させるステップを含む、請求項1から
8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
さらに:取り出そうとする前記ワーク部分(20)の幾何学形状パラメータおよび前記結果メモリ(54)に記憶された、取出し済みのワーク部分(20)の幾何学形状パラメータおよび対応する各取出し結果に基づき、取り出そうとする前記ワーク部分(20)に関する取出し診断を自動作成するステップを含む、請求項
9記載の方法。
【請求項11】
さらに:前記結果メモリ(54)に記憶させた前記動作パラメータセットを、取り出そうとする前記ワーク部分(20)の前記幾何学形状パラメータに応じて自動選出するステップを含む、請求項
9または
10記載の方法。
【請求項12】
支持平面(E)内に支持された残留ワーク(2a)からワーク部分(20)を取り出す装置(1,26)であって、
取出し方向(Z)に沿って可動の少なくとも1つの押出し部材(18,52)を有する押出し装置(17,32)、ならびに
前記取出し方向(Z)に沿って可動の少なくとも1つの保持部材(14a,14b,49b,49c,47)を有する保持装置(19,34)、ならびに
前記少なくとも1つの押出し部材(18,52)と前記少なくとも1つの保持部材(14a,14b,49b,49c)との間に緊締された前記ワーク部分(20)が前記残留ワーク(2a)から完全に切断されたか否かを点検するセンサ装置(25,53)、
を有する装置(1,26)において、
前記押出し装置(17,32)および/または前記保持装置(19,34)を発動させ、これにより前記押出し装置(17,32)の前記少なくとも1つの押出し部材(18)と前記保持装置(19,34)の前記少なくとも1つの保持部材(14a,14b,49b,49c,47)との間に緊締された前記ワーク部分(20)を前記取出し方向(Z)に沿って移動させ、該取出し方向(Z)に沿った移動に際して前記ワーク部分(20)が前記残留ワーク(2a)から完全に切断されたか否かを点検する際に、前記ワーク部分(20)が前記残留ワーク(2a)から完全には切断されなかったことが確認された場合には、前記ワーク部分(20)の緊締を軽減するかまたは完全に解消し、次いで前記ワーク部分(20)の緊締を再形成するように構成された制御装置(16)が設けられて
おり、
前記制御装置(16)には、前記ワーク部分(20)の前記緊締を軽減するかまたは完全に解消するとき、次いで前記ワーク部分(20)の前記緊締を再形成するときおよび/または前記取出し方向(Z)に沿って前記ワーク部分(20)を再び移動させるときの、異なる幾何学形状パラメータを有する複数のワーク部分(20)に関する前記少なくとも1つの押出し部材(18,52)および/または前記少なくとも1つの保持部材(14a,14b,47,49b,49c)の複数の動作パラメータセットが記憶させられており、前記制御装置(16)は、取り出そうとする前記ワーク部分(20)の前記幾何学形状パラメータに基づき、前記ワーク部分(20)を前記残留ワーク(2a)から取り出すための少なくとも1つの動作パラメータセットを選出するように形成されていることを特徴とする、装置(1,26)。
【請求項13】
前記制御装置(16)は、結果メモリ(54)に接続されているかまたは該結果メモリ(54)を含んでおり、かつ取り出そうとする前記ワーク部分(20)の取出し確率に関する自動化された取出し診断を前記ワーク部分(20)の幾何学形状パラメータおよび前記結果メモリ(54)に記憶された取出し済みのワーク部分(20)の幾何学形状パラメータおよび対応する各取出し結果に基づき作成するように形成されている、請求項
12記載の装置(1,26)。
【請求項14】
支持平面(E)内に支持された残留ワーク(2a)からワーク部分(20)を取り出す方法であって、押出し装置(17,32)の少なくとも1つの押出し部材(18,52)と保持装置(19,34)の少なくとも1つの保持部材(14a,14b,49b,49c,47)との間に緊締された前記ワーク部分(20)を取出し方向(Z)に沿って移動させるステップ、ならびに前記取出し方向(Z)に沿った移動に際して前記ワーク部分(20)が前記残留ワーク(2a)から完全に切断されたか否かを点検するステップを含む、方法において、
点検時に前記ワーク部分(20)が前記残留ワーク(2a)から完全には切断されなかったことが確認されると、前記ワーク部分(20)の緊締を軽減するかまたは完全に解消し、次いで前記ワーク部分(20)の緊締を再形成するステップと、
前記ワーク部分(20)および好適には前記残留ワーク(2a)の前記緊締を軽減するかまたは完全に解消してから再形成する際および/または前記取出し方向(Z)に沿って前記ワーク部分(20)を再び移動させる際に、取り出そうとする前記ワーク部分(20)の幾何学形状パラメータ、取出し結果および前記少なくとも1つの押出し部材(18,52)および/または前記少なくとも1つの保持部材(14a,14b,47,49b,49c)の動作パラメータセットを結果メモリ(54)に記憶させるステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
支持平面(E)内に支持された残留ワーク(2a)からワーク部分(20)を取り出す装置(1,26)であって、
取出し方向(Z)に沿って可動の少なくとも1つの押出し部材(18,52)を有する押出し装置(17,32)、ならびに
前記取出し方向(Z)に沿って可動の少なくとも1つの保持部材(14a,14b,49b,49c,47)を有する保持装置(19,34)、ならびに
前記少なくとも1つの押出し部材(18,52)と前記少なくとも1つの保持部材(14a,14b,49b,49c)との間に緊締された前記ワーク部分(20)が前記残留ワーク(2a)から完全に切断されたか否かを点検するセンサ装置(25,53)、
を有する装置(1,26)において、
前記押出し装置(17,32)および/または前記保持装置(19,34)を発動させ、これにより前記押出し装置(17,32)の前記少なくとも1つの押出し部材(18)と前記保持装置(19,34)の前記少なくとも1つの保持部材(14a,14b,49b,49c,47)との間に緊締された前記ワーク部分(20)を前記取出し方向(Z)に沿って移動させ、該取出し方向(Z)に沿った移動に際して前記ワーク部分(20)が前記残留ワーク(2a)から完全に切断されたか否かを点検する際に、前記ワーク部分(20)が前記残留ワーク(2a)から完全には切断されなかったことが確認された場合には、前記ワーク部分(20)の緊締を軽減するかまたは完全に解消し、次いで前記ワーク部分(20)の緊締を再形成するように構成された制御装置(16)が設けられており、
前記制御装置(16)は、結果メモリ(54)に接続されているかまたは該結果メモリ(54)を含んでおり、かつ取り出そうとする前記ワーク部分(20)の取出し確率に関する自動化された取出し診断を前記ワーク部分(20)の幾何学形状パラメータおよび前記結果メモリ(54)に記憶された取出し済みのワーク部分(20)の幾何学形状パラメータおよび対応する各取出し結果に基づき作成するように形成されていることを特徴とする、装置(1,26)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持平面内に支持された残留ワークからワーク部分を取り出す方法であって、押出し装置の少なくとも1つの押出し部材と保持装置の少なくとも1つの保持部材との間に緊締されたワーク部分を取出し方向に沿って移動させるステップならびに取出し方向に沿った移動に際してワーク部分が残留ワークから完全に切断されたか否かを点検するステップ、を含む方法に関する。本発明は、支持平面内に支持された残留ワークからワーク部分を取り出す装置であって、取出し方向に沿って可動の少なくとも1つの押出し部材を有する押出し装置、取出し方向に沿って可動の少なくとも1つの保持部材を有する保持装置、ならびに少なくとも1つの押出し部材と少なくとも1つの保持部材との間に緊締されたワーク部分が残留ワークから完全に切断されたか否かを点検するセンサ装置、を有する装置にも関する。
【0002】
自動化されたレーザカット機では、(残留)ワーク、例えば金属薄板から切り離されたワーク部分が、グリッパ設備、押出し設備および/または吸着グリッパ設備により周囲の残留ワーク(残留グリッド)から取り出される。確実な手順での部分取出しには、ワーク部分が残留グリッドから実際に切断されたか否かを点検することが重要である。部分取出しが失敗した場合、特に部分取出しがワーク全体の完全加工後に初めて行われるのではなく、複数のワーク部分の切断加工時の中間ステップとして行われる場合には、取出し試行を繰り返すためのストラテジ(反復ストラテジもしくはリトライストラテジ)が必要である。このような自動化手段が統合されたレーザカット機は、例えば独国特許発明第102014209811号明細書または独国特許出願公開第102016208872号明細書に記載されている。
【0003】
従来技術から、部分取出しにおける様々な反復ストラテジが知られている。
【0004】
特開平10-80738号公報から、ワーク台に配置された部分フラップを介してワーク部分を下方に向かって取出す際にワーク部分が落下したことが検出されない場合には、部分フラップの開閉を複数回繰り返すことが公知である。繰り返す数には制限値が決められている。
【0005】
米国特許第6827544号明細書から、残留グリッドからワーク部分を外すために、複数の吸着グリッパを有する吸着グリッパ装置により部分を把持することが公知であり、この場合、部分取出しに際して十分な真空形成が行われない場合には、ワーク部分上の、吸着グリッパ装置もしくは吸着グリッパの載置位置が変更される。
【0006】
国際公開第2014023323号には、ワーク台に載置された板状のワークにおける切断加工により形成されたワーク部分を残留ワークから取り出す方法が記載されている。ワークは加工用に保持装置により位置固定され、ワークのXY平面内で少なくとも1つ方向に沿って移動可能である。取り出すには、(吸着)グリッパ装置によりワーク部分が把持される。残留ワークにワーク部分が引っかかったことが認められると、少なくともXY平面内での保持装置またはグリッパ装置の移動運動、またはグリッパ装置と保持装置との相対的な移動運動が発動される、少なくとも1つの取外しストラテジが導入される。さらに説明すると、保持装置および/またはグリッパ装置のZ方向での移動運動も追加的に実施され得る。
【0007】
ワーク部分が押出し装置により押圧されると同時に保持体により支持される、ワーク部分の残留グリッドからの取出し(「サンドイッチ式取出し」)に際して国際公開第2014023323号に記載の取外しストラテジを適用した場合には、ワーク部分および取出し装置、すなわち押出し装置もしくは保持装置に作用する力が極度に大きくなるため、これらが損傷される恐れがある、というリスクが生じる。例えばこのような取外しストラテジでは、押出し装置の持上げピンの形態の持上げ部材が曲げられる恐れがある。
【0008】
発明の課題
本発明の根底を成す課題は、サンドイッチ式取出しに適合した反復ストラテジを用いてワーク部分を取り出す方法および装置を提供することにある。
【0009】
発明の対象
この課題は本発明に基づき、点検時にワーク部分が残留ワークから完全には切断されなかったことが確認されると、ワーク部分の緊締を軽減するかまたは完全に解消し、次いでワーク部分の緊締を再形成するステップをさらに含む、冒頭で述べた形式の方法により解決される。この場合、緊締を軽減するとは、ワーク部分に作用している押出し部材および/または保持部材の緊締力を段階的または連続的に減少させることを意味する。緊締の軽減または解消は、少なくとも1つの押出し部材および/または少なくとも1つの保持部材の取出し方向に沿った圧力制御もしくは圧力調整または運動により行われてよい。緊締が完全に解消されると、ワーク部分に緊締力が作用することは最早ない。追加的に、緊締が完全に解消されると、押出し部材および/または保持部材とワーク部分との間の機械的な接触も解消されてよい。
【0010】
発明者らは、取出し装置とワーク部分との間ならびに取出し装置と残留ワーク/残留グリッドとの間で交互に機械的な応力が形成され、再び減少されることにより、高確率で取出しが達成され得る、ということに気づいた。つまり、各コンポーネントの協働において、様々な形態のリトライ時に「サンドイッチ」が部分的にまたは完全に分解され、次いで再び形成される。これにより機械的な応力を除去することができ、その結果、ワーク部分を引っかかり位置から外すことができる。この場合に重要なのは、各コンポーネントの協働において、取出し装置またはワーク部分を損傷する恐れのある相対運動が発動されることは一切ない、という点である。緊締解除は、典型的には一方の側から行われる、すなわち、一方の側から作用する力の減少および/または少なくとも1つの押出し部材または少なくとも1つの保持部材の、取出し方向に沿ってワーク部分から離れる運動により行われ、これにより、押出し部材または保持部材とワーク部分との間の機械的な接触が解消されることになる。取出し方向に沿った運動とは、本願の意味では取出し方向での運動および/または取出し方向とは逆方向での運動を意味する、すなわち重力方向(Z方向)に延在する取出し方向では、正および/または負のZ方向での運動を意味する。
【0011】
1つの変化態様では、ワーク部分の緊締を軽減/完全に解消し、緊締を再形成するステップが複数回実施される。通常、機械的な応力を形成してから解消することを複数回行うと、取出し確率が高まる。
【0012】
1つの別の変化態様では、緊締が完全に解消されるとまず、押出し部材とワーク部分との間の接触が解消される。好適には、緊締が解消されると最初に、機械的な押圧力をワーク部分に加える押出し部材がワーク部分から外され、ワーク部分を水平に保っている保持体もしくは保持部材の支持作用は保たれ続け、ワーク部分が残留ワークに対して傾かないまたはずれないようになっている。
【0013】
1つの別の変化態様では、当該方法は追加的に:ワーク部分を取出し方向に沿って移動させる際に、残留ワークを支持平面内に支持するワーク台と、別の保持部材との間に残留ワークを緊締し、好適にはワーク部分の緊締を軽減するもしくは完全に解消する前に残留ワークの緊締を軽減するまたは完全に解消するステップを含む。追加的に、残留グリッドもワーク台に対して相対的に位置固定されると、取出しに有利であるということが判った。このことは押さえとして働く少なくとも1つの(別の)保持部材により達成され得る。好適にはリトライ時に、残留グリッドに対する保持部材の圧着力が減少させられるかまたは別の保持部材が取出し方向に沿って運動させられ、このようにして別の保持部材と残留ワークとの間の接触が解消されることにより、残留グリッドに対する別の保持部材の予荷重も解消される。
【0014】
ワーク部分の緊締を軽減もしくは解消し、次いでワーク部分の緊締を再形成する際に、ワーク部分はその取出し方向に沿った位置に残留していてよい。択一的に、ワークの緊締解消時に、ワーク部分の位置を取出し方向に沿って変化させることも可能である。
【0015】
1つの変化態様では、緊締の解消に際してワーク部分は、位置固定状態にある保持装置の少なくとも1つの保持部材に位置固定される。この場合、保持装置は例えば冒頭で引用した、参照により全体が本願の対象となる、独国特許発明第102014209811号明細書の場合と同様に形成されていてよい。この場合、保持装置は、保持装置にワーク部分を位置固定する位置固定状態と、保持装置からワーク部分を外す解放状態との間で切換可能である。このために保持装置は、例えば真空を供給可能な複数の吸着グリッパを有していてよく、これらの吸着グリッパは、1つの共通の保持部材と協働するか、または個別の保持部材として働く。ワーク部分を保持装置もしくは保持部材に位置固定することにより、この場合はワーク部分の下面に作用してワーク部分を保持装置に向かって押し当てる押出し部材を降下させることができ、これにより緊締が解消される一方で、ワーク部分は、保持部材に位置固定されることにより取出し方向に沿って規定された位置に残留する。この場合、緊締の再形成は、押出し部材を再び上昇させ、ワーク部分の下面に押し当て、保持装置に応力を加えることにより行われてよい。この応力の増減は、ワーク部分を残留ワークから完全に切断するために、場合により複数回繰り返されてよい。(導電性の)ワーク部分が(導電性の)残留ワークから完全に切断されたか否か、ならびにワーク部分が位置固定状態にある保持装置に位置固定されているか否かを点検するためには、例えば参照により全体を本願の内容とする独国特許発明第102017205095号明細書に記載されているようなセンサ装置が使用され得る。
【0016】
1つの別の変化態様では、保持装置は緊締が解消されると、取出し方向に対して垂直な少なくとも1つの方向で、ワーク部分を残留ワークに対して相対的に移動させ、好適には追加的に、取出し方向に沿ってワーク部分を残留ワークに対して相対的に移動させる。冒頭に述べた国際公開第2014023323号に記載されているように、取外しストラテジもしくは取外しストラテジの一部は、比較的小さな振幅を有する運動でもって、ワーク台により規定された支持平面(例えばXY平面)内のもしくは支持平面に対して平行な少なくとも1つの空間方向にワーク部分を動かす、という点に生じ得る。特にこの運動は、残留ワークに対して相対的な、ワーク部分の場合により急速な往復運動であってよい。支持平面に対して平行な運動には、比較的小さな振幅を有する、取出し方向(Z方向)に沿った運動が重畳され得る。この取出し方向での運動は、特にワーク部分の交番昇降運動であってよい。緊締が解消された状態での保持装置の移動は、上述したように、特にワーク部分が位置固定状態にある保持装置に位置固定されている場合に行われてよい。
【0017】
1つの別の変化態様では、ワーク部分を残留ワークから切断するために、ワーク部分が保持装置の複数の保持部材により緊締され、これらの保持部材は取出し方向に沿ってそれぞれ互いに逆方向に移動させられる。この変化態様では、取り出そうとするワーク部分を支持するために協働する複数の保持部材が、特に以下でさらに説明するように支持キャリッジとして形成されている場合には、取出し方向に沿って個別に動かされてよいもしくは移動させられてよい、ということが利用される。数ミリメートルの比較的短い移動距離にわたる、各保持部材の、取出し方向に沿った互いに逆方向の移動により、ワーク部分を残留ワークから「振り切る」ことができる。この場合、各保持部材の互いに逆方向の移動は、同時に、または時間的にずらして行われてよい。
【0018】
独国特許発明第102014209811号明細書に記載の、ワークを残留ワークから取り出す方法では、支持平面の下に位置する押出し装置によりワーク部分に予荷重が加えられ、このときワーク部分は、支持平面の上に配置された、位置固定状態と解放状態との間で切換可能な保持装置により支持される。この場合、押出し装置は、支持平面の上に位置する取出し位置にワーク部分を上昇させる上昇装置として働く。しかしまた、逆のケース、すなわち、以下で説明するように支持平面の下の取出し位置にワーク部分が降下させられることも可能である。
【0019】
この方法の1つの変化態様では、ワーク部分を取出し方向に沿って移動させる際に、少なくとも1つの保持部材の、ワーク部分を支持する支持面が残留ワークの支持平面の下に降下させられ、降下中に少なくとも1つの押出し部材が上方からワーク部分を押圧する。当該方法のこの変化態様では、ワーク部分が支持平面から移動させられる際に取出し方向に沿って降下させられる。この場合、少なくとも1つの押出し部材がワーク部分の上面を押圧し、降下時にワーク部分を保持部材の支持面上に位置固定する。この場合、支持面が形成された保持部材は、例えば冒頭で引用した、参照により全体を本願の内容とする独国特許出願公開第102016208872号明細書に記載されているような、板状のワークを切断加工する機械の支持キャリッジであってよい。そこに記載された機械の場合、支持面が-通常支持キャリッジと共に-支持平面の下に降下可能である。ワーク部分は、共に降下可能であるが取出し方向に沿って互いに逆方向に可動でもある複数の、好適には2つの支持キャリッジ上に載置され得る。
【0020】
押出し部材は、機械の加工ヘッドに取り付けられた、押出しシリンダの形態の押出し装置のピストンロッドであってよい。押出しシリンダは、加工ヘッドの移動により取出し方向に沿って可動であり、ピストンロッドの形態の押出し部材は、押出しシリンダに対して相対的に、少なくとも上方終端位置と下方終端位置との間で移動可能である。
【0021】
本願に含めて説明することができない複数の別の構成の保持装置および/または押出し装置も可能である、ということは自明である。
【0022】
1つの別の変化態様では、当該方法は、緊締が解消された状態でワーク部分を取出し方向に沿って残留ワークの支持平面内に移動させるステップ、押出し装置の少なくとも1つの押出し部材と保持装置の少なくとも1つの保持部材との間でのワーク部分の緊締を再形成するステップ、ならびに好適にはワーク部分を取出し方向に沿って移動させるステップにおける速度とは異なる速度で、緊締されたワーク部分を取出し方向に沿って再び移動させるステップを含む。
【0023】
この場合、緊締の解消は、ワークが再び緊締される支持平面内にワーク部分を戻す、すなわち、引き続く取出し試行のためにワーク部分を取出し方向に沿って、最初のもしくは先行の取出し試行が開始された出発位置に移動させるために利用される。支持平面内のワーク部分のこの出発位置から再び、「サンドイッチ式取出し」もしくはリトライが実施される、すなわち、ワーク部分は再び取出し方向で取出し位置に移動させられる。取出し試行を繰り返す場合に取出し確率を高めるためには通常、ワーク部分の移動速度が変更され、この場合、移動は取出し方向に沿ってより低速で、すなわちより小さな速度で、またはより高い速度で、場合により急速に、すなわちより高い加速度でもって実施される。高い加速度を有するこのような急速な移動の場合も、典型的には保持部材もしくは保持装置と押出し部材の両方共が急速に、ただし同時に移動するため、ワーク部分は緊締状態に保たれる。例えば保持装置が制御されて急速に移動させられると、例えば押出しピンの形態で形成された押出し部材も、押出し部材自体は制御されずに取出し方向に移動させられるにもかかわらず、保持装置の制御された急速な移動に追従することができるようになっている。この場合、押出し部材には一般に空気圧が供給され、これにより、急速な移動に際してもワーク部分を緊締するためもしくは保持装置の移動と同時の移動を生ぜしめるために十分な、ワーク部分の押出しもしくは上昇を生ぜしめる。
【0024】
上述したリトライ手順の個々のまたは全ての方法ステップは、それぞれ設定された反復数に達するまで複数回繰り返されてもよい。リトライ手順の最後のステップもワーク部分の取出しの成功につながらない場合には、典型的には加工が停止させられ、エラーメッセージが送出される。
【0025】
当該方法の1つの別の変化態様は:ワーク部分および好適には残留ワークの緊締を解消してから再形成する際および/または取出し方向に沿ってワーク部分を再び移動させる際に、取り出そうとするワーク部分の幾何学形状パラメータ、取出し結果および少なくとも1つの押出し部材および/または少なくとも1つの保持部材の動作パラメータセットを結果メモリに記憶させるステップを含む。結果メモリに取出し結果を記憶させることは、場合により、ポジティブな取出し結果の場合にのみ、取り出そうとするワーク部分の幾何学形状パラメータおよび対応する動作パラメータを結果メモリに記憶させることであってよい。取出し結果は、典型的には2つの値、例えば「取出し成功」または「取出し失敗」のことである。動作パラメータセットおよび幾何学形状パラメータが取出し失敗に際しても結果メモリに記憶させられる場合には追加的に、取出し結果も結果メモリに記憶させることが必要とされている。
【0026】
当該方法のこの変化態様では、例えば機械制御装置内でのまたはコンピュータに実装された別個のプログラミングソフトウェアにおけるリトライ手順の分析により、またはクラウドに基づくアプリケーションプログラムにより、取り出そうとするワーク部分の幾何学形状パラメータもしくは幾何学形状と、成功した方法ステップとの間の関係を求めることができ、この関係に基づき、新規に取り出そうとするワーク部分に関して成功するステップのみが適用されるように、当該方法を変更することができる。これにより、部分取出しにかかる時間が節約されることになる。このために例えば機械制御装置、中央コンピュータまたはクラウド内の結果メモリには、どのリトライステップがどの部分幾何学形状において部分取出しの成功をもたらすのか、もしくは取出しを成功させるために、どの動作パラメータを用いて取出し装置、すなわち押出し装置もしくはその押出し部材および/または保持装置もしくはその保持部材を制御装置により制御すべきなのか、ということに関するデータが集められる。
【0027】
動作パラメータセットの動作パラメータは、最も簡単なケースでは取出し装置もしくは取出し装置の取出し部材の初期位置および/または終端位置であってよい。追加的に動作パラメータは、押出し部材もしくは保持部材が取出し方向に沿って移動する際の移動速度に関する情報を含んでいてもよい。複数の機械のデータを評価することにより、このようにして部分幾何学形状と、実際に必要とされるリトライステップとの間の関係を求めることができる。場合により、装置にはリトライ用に設定される複数の動作パラメータセットが存在していてよく、結果メモリに記憶された動作パラメータは、その都度設定される動作パラメータセットを選択する1つの指標である。
【0028】
1つの変化態様において当該方法は:取り出そうとするワーク部分の幾何学形状パラメータおよび結果メモリに記憶された、既に取り出されたワーク部分の幾何学形状パラメータおよび対応する各取出し結果に基づき、取り出そうとするワーク部分に関する取出し診断を自動作成するステップを含む。この場合は結果メモリを用いて、取り出そうとする別のワーク部分に関して、その幾何学形状に基づき取出しの成功確率を評価することができるもしくは例えば独国特許出願公開第102018208126.3号明細書に記載されているように、取出し診断を作成することができる。例えばレーザ加工機の形態の取出し装置に関して制御プログラムを作成する場合、診断は、機械制御装置または通常ソフトウェアとして機械制御装置から独立したコンピュータに実装されたプログラミングシステムにおいて作成され得、部分取出しの成功を期待することができない場合には警告が送出され得る。さらに、ワーク部分の部分輪郭もしくは幾何学形状パラメータに対する適切な変更の提案がプログラマに成されてもよい。
【0029】
1つの別の変化態様において当該方法は:結果メモリに記憶させた動作パラメータセットを、取り出そうとするワーク部分の幾何学形状パラメータに応じて自動選出するステップを含む。複数の機械において得られた、その都度1つの動作パラメータセットにより表されるもしくは1つの動作パラメータセットに対応する、部分幾何学形状とリトライステップの成功との関係に関する知見を分析することにより、これらの関係が機械制御装置またはプログラミングシステムに実装され得、その結果、機械制御装置またはプログラミングシステムは類似のワーク部分のために、最も的確なリトライストラテジを選出することができる。このためには当該装置から結果メモリが読み出されるか、または結果メモリのデータがプログラミングシステムに伝送される。このようにして、ワーク部分を取り出すために順次処理されるリトライステップの固定的な設定順序に代えて、取り出そうとするワーク部分のその時々の幾何学形状に対して最適化された順序でリトライステップが実施され得るもしくは最適化された動作パラメータセットまたは最適化された動作パラメータセット順序が選択され得る。
【0030】
本発明の別の態様は、冒頭で述べた形式の装置であって、さらに:押出し装置および/または保持装置を発動させ、これにより押出し装置の少なくとも1つの押出し部材と保持装置の少なくとも1つの保持部材との間に緊締されたワークを取出し方向に沿って移動させ、取出し方向に沿った移動に際してワーク部分が残留ワークから完全に切断されたか否かを点検する際に、ワーク部分が残留ワークから完全には切断されなかったことが確認された場合には、ワーク部分の緊締を解消し、次いでワーク部分の緊締を再形成するように構成された制御装置を有する装置に関する。
【0031】
ワーク部分を残留ワークから取り出す装置は、例えば冒頭で引用した独国特許出願公開第102016208872号明細書に記載されているような、ワークを切断加工する機械であってよい。この場合、ワーク部分の取出しは、2つのワーク支持面の間に形成された間隙を介して行うことができる。取出し装置は、このような切断加工機械と共に、冒頭で引用した独国特許発明第102014209811号明細書に記載されているような機械ユニットを形成していてよい。この場合、切断加工機械とワーク部分を取り出す装置とは、ワークもしくは残留ワーク用の支持平面を規定する1つの共通のワーク支持手段を有していてよい。
【0032】
1つの実施形態において、制御装置は、結果メモリに接続されているかまたは結果メモリを含んでおりかつ取り出そうとするワーク部分の取出し確率に関する自動化された取出し診断を、ワーク部分の幾何学形状パラメータおよび結果メモリに記憶された、既に取り出されたワーク部分の幾何学形状パラメータおよび対応する各取出し結果に基づき作成するように形成されている。結果メモリを用いて、取り出そうとするワーク部分に関する取出し診断を、既に取り出された、類似の幾何学形状パラメータを有するワーク部分の各取出し結果に依拠させることができる。
【0033】
1つの別の実施形態では、制御装置は、ワーク部分の緊締を軽減するかまたは完全に解消するとき、次いでワーク部分の緊締を再形成するときおよび/または取出し方向に沿ってワーク部分を再び移動させるときの、異なる幾何学形状パラメータを有する複数のワーク部分に関する少なくとも1つの押出し部材および/または少なくとも1つの保持部材の複数の動作パラメータセットを有しており、制御装置は、取り出そうとするワーク部分の幾何学形状パラメータに基づき、ワーク部分を残留ワークから取り出すための少なくとも1つの動作パラメータセットを選出するように形成されている。典型的には、取り出そうとするワーク部分の幾何学形状パラメータに可能な限り類似した幾何学形状パラメータを有するワーク部分に対応した動作パラメータセットが選出される。
【0034】
本発明の別の利点は、説明および図面から明らかである。同様に、上述の、さらに説明する特徴も、それ自体で、または複数の任意の組合せにおいて使用され得る。図示して説明する各実施形態は、最終的な列挙を意味するものではなく、むしろ本発明を説明するための例示的な特徴を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】2つの固定ワーク支持面を備え、これらの固定ワーク支持面の間に、Y方向に延在する間隙が形成されており、間隙内では、加工ヘッドに取り付けられた押出し装置用の保持部材として用いられる2つの支持キャリッジが可動である、レーザ加工機の概略図である。
【
図2a】残留グリッドから切り離されたワーク部分を取り出す方法の複数のステップを示す概略図である。
【
図2b】残留グリッドから切り離されたワーク部分を取り出す方法の複数のステップを示す概略図である。
【
図2c】残留グリッドから切り離されたワーク部分を取り出す方法の複数のステップを示す概略図である。
【
図2d】残留グリッドから切り離されたワーク部分を取り出す方法の複数のステップを示す概略図である。
【
図2e】残留グリッドから切り離されたワーク部分を取り出す方法の複数のステップを示す概略図である。
【
図2f】残留グリッドから切り離されたワーク部分を取り出す方法の複数のステップを示す概略図である。
【
図2g】残留グリッドから切り離されたワーク部分を取り出す方法の複数のステップを示す概略図である。
【
図3】各2つの押出し装置および保持装置を備えた、残留ワークから切り離されたワーク部分を取り出す装置の概略図である。
【
図4a】
図3に示した装置を用いて、切り離されたワーク部分を取り出す方法の複数のステップを示す概略図である。
【
図4b】
図3に示した装置を用いて、切り離されたワーク部分を取り出す方法の複数のステップを示す概略図である。
【
図4c】
図3に示した装置を用いて、切り離されたワーク部分を取り出す方法の複数のステップを示す概略図である。
【
図4d】
図3に示した装置を用いて、切り離されたワーク部分を取り出す方法の複数のステップを示す概略図である。
【
図4e】
図3に示した装置を用いて、切り離されたワーク部分を取り出す方法の複数のステップを示す概略図である。
【0036】
以下の図面の説明において、同じもしくは機能が同じ構成部材には、同一の符号が用いられる。
【0037】
図1には、レーザビーム3の形態の加工ビームにより板状のワーク(破線で図示)をレーザ加工、より正確にはレーザカットする装置1の例示的な構成が示されている。ワーク2を切断加工するためには、レーザビーム3の代わりに、別の形式の熱加工ビーム、例えばプラズマトーチ、またはウォータージェットが使用されてもよい。択一的に、装置1はワーク2を機械的に切断するように、例えば打抜き機として、または打抜き・レーザコンビネーション機として形成されていてもよい。
【0038】
ワーク2は、加工時に2つの固定ワーク支持面4,5に支持されており、固定ワーク支持面4,5は、図示の例では2つのワーク台の上面を形成しておりかつワーク2を支持するワーク支持平面E(XYZ座標系のX-Y平面)を画定している。駆動装置ならびにワーク2を固定するクランプの形態の複数の緊締装置8を有する従来の移動・保持装置7により、ワーク2はワーク支持面4,5上で第1の方向X(以下:X方向)に制御されてずらされ、設定されたワーク位置X
Wに移動させられてよい。X方向でのワーク2の移動を容易にするために、
図1に示すワーク台には、本来のワーク支持面4,5を成すブラシ、ボールまたは滑りローラが取り付けられていてよい。
【0039】
2つの固定ワーク支持面4,5の間には間隙6が形成されており、間隙6は、固定ワーク支持面4,5により側方を画定される。間隙6は、第2の方向(以下:Y方向)に、2つのワーク支持面4,5の全幅にわたって延在している。レーザビーム3をワーク2に向けて集束させるレーザカットヘッド9は、固定ゲート10に沿って案内された、移動装置として働くモータ駆動式のキャリッジ11を介して、Y方向に制御されて移動可能である。レーザカットヘッド9は、図示の例では追加的にX方向にも移動可能であり、キャリッジ11に取り付けられた、例えばリニア駆動装置の形態の追加的な移動装置12を介してX方向に制御されて移動可能である。
【0040】
重なり合って形成された移動装置11,12を介して、レーザカットヘッド9はX方向とY方向の両方において、間隙6内の所望のカットヘッド位置XS,YSに位置決めされ得る。追加的に、レーザカットヘッド9は図示の例において、第2の移動装置12上に形成された、例えばリニア駆動装置の形態の第3の移動装置13を介して、第3の移動方向Z(重力方向、以下:Z方向または取出し方向)に沿って移動させられてよく、これにより、レーザカットヘッド9の加工ノズル9aとワーク2の上面との間の間隔を調整することができるもしくはレーザカットヘッド9を、ワーク支持平面Eに対して相対的なZ方向において所望のカットヘッド位置ZSに位置決めすることができる。
【0041】
この場合、機械コンポーネントの制御された移動はその都度、正のX方向、Y方向もしくはZ方向にも、負のX方向、Y方向もしくはZ方向にも行われる。
【0042】
図1に示す間隙6内には、ワーク2を追加的に支持しかつ切断加工時に切断されたワーク部分20を支持するために、2つの支持キャリッジ14a,14bが配置されている。2つの支持キャリッジ14a,14bは、それぞれ間隙6の全幅bにわたって延在しておりかつ間隙6内で正負のY方向に制御されておりかつ互いに独立して移動可能である。固定ワーク支持面4,5の側縁間での支持キャリッジ14a,14bの制御された移動は、例えばスピンドル駆動装置を介して行われてよく、この場合、各支持キャリッジ14a,14bにスピンドルナットが取り付けられており、両方の固定ワーク支持部4,5の一方にスピンドルならびに駆動モータが取り付けられている。支持キャリッジ14a,14bの制御された移動は他の形式でも実現され得る、ということは自明である。
【0043】
支持キャリッジ14a,14bは、間隙6内でそれぞれ第2の方向Yに沿って所望の位置YUA,YUBに移動させられてよく、これにより、そこでワーク2ならびにワーク2から切り離されるもしくは加工時に切り離されたワーク部分20を、各支持キャリッジ14a,14bに取り付けられた支持面15a,15bにより支持することができるようになっている。各支持キャリッジ14a,14bの支持面15a,15bは、図示のケースではZ方向においてワーク支持面4,5と整合している、すなわち支持キャリッジ14a,14bの支持面15a,15bは、ワーク2用の支持平面E内に位置している。
【0044】
図1に示す例では、支持キャリッジ14a,14bの支持面15a,15bの、X方向に延在する互いに反対の側の各側縁に、2つのワーク支持面4,5間の間隙6を覆うカバー部材24a,24bがそれぞれ取り付けられている。カバー部材24a,24bは、間隙6の全幅bにわたって延在しておりかつ支持キャリッジ14a,14bがY方向に移動すると連動するようになっており、図示の例では巻上げシャッタ状に形成されている。
【0045】
X方向またはY方向に延在する長い舌片状の部分領域を有するワーク部分20をより良好に支持するために、
図2a~
図2gに示す例では、2つの支持キャリッジ14a,14bの支持面15a,15bの、互いに向かい合って平行に向けられた側縁は、斜めに、すなわちX方向に対してもY方向に対しても所定の角度に向けられている。
【0046】
切断加工を制御するために、装置1は、典型的にはCNC制御装置の形態の制御装置16を有しており、制御装置16は、ワーク2、レーザカットヘッド9ならびに支持キャリッジ14a,14bの移動を協調させ、これにより所望のワーク位置X
W、所望のカットヘッド位置X
S,Y
S,Z
Sならびに支持キャリッジ14a,14bの所望の位置Y
UA,Y
UBを調節するために用いられ、これにより、設定された切断輪郭21を可能にしかつワーク2を十分に支持することができるようになっている。制御装置16は、例えばCNC制御装置であるSiemens SINUMERIK 840D siに基づいていてよい。制御装置16は、図示の例ではレーザカットヘッド9の側方に取り付けられた、押出しシリンダの形態で形成された押出し装置17の制御にも用いられ、押出しシリンダのピストンロッドは、以下に
図2a~
図2gに基づき説明するように、切り離されたワーク部分20を押し出すもしくは切り離されたワーク部分20をワーク2の支持平面Eから取り出す押出し部材18として用いられる。この場合、2つの支持キャリッジ14a,14bは、制御式の駆動装置を有しかつ2つの支持キャリッジ14a,14bの取出し方向(Z方向)での移動を可能にする保持装置19の保持部材を形成している。
【0047】
図2aには、レーザビーム3により残留ワーク2a(残留グリッド)から切り離されたワーク部分20が示されており、ワーク部分20は、2つの支持キャリッジ14a,14bにより支持される。レーザビーム3の遮断後に、レーザカットヘッド9は
図2aに示す、押出し部材18が押出し位置APの上位に位置決めされている位置に到達するまで、間隙6内で第2の移動装置12によりY方向に移動させられかつ第3の移動装置13によりX方向に移動させられた。切り離されたワーク部分20の上面20aもしくは残留ワーク2aからの間隔を増大させるために、レーザカットヘッド9ひいては押出し装置17(以下押出しシリンダとも言う)も、第4の移動装置13によりZ方向で上方に向かって同時に移動させられた。
【0048】
この場合、レーザカットヘッド9は、押出し部材18が
図2aに示す、押出し部材18(以下ピストンロッドとも言う)が下方に向かってレーザカットヘッド9を越えて、より正確に言うと加工ノズル9aを越えては突出していない、第1の引っ込められた位置S1から、
図2bに示す、押出し部材18が加工ノズル9aを越えて突出している、第2の進出させられた位置S2へ移動可能である程度に、上方に向かって移動させられた。
【0049】
押出しシリンダ17のピストンロッドとして形成された押出し部材18は、アクチュエータにより、上方終端位置を形成する第1の上方位置S1から、押出し部材18の下方終端位置を形成する第2の下方位置S2に移動させられる。押出しシリンダ17は、図示の例ではピストンロッド18を移動させるために作業ガスが供給される空圧シリンダである。よって押出しシリンダ17は、ガスばねとして働くことができる、すなわちピストンロッド18は第2の位置S2で、切り離されたワーク部分20の上面20aに支持されてワーク部分20に押し当てられると、ばね力に抗して上方に向かって押圧され得る。択一的に、アクチュエータとして、例えば軸を介して押出し部材18の移動を生ぜしめるモータ駆動装置が用いられてもよい。この場合、押出し部材18は、典型的には第2の位置S2に係止されるもしくは送られるため、押出し部材18が第2の位置S2から上方に向かって、すなわち第1の位置S1に向かって移動させられることはない。
【0050】
図示の例では、加工ヘッド9は、押出しシリンダ17のピストンロッド18が切り離されたワーク部分20の上面20aを押圧するまで、下方に向かって移動させられる。この場合、ピストンロッド18は
図2bに示す第2の位置S2から、
図2cに示す、第2の位置S2に比べて第1の位置S1の方にずらされた中間位置ZSに押し戻される。
図2dに示すように、2つの支持キャリッジ14a,14bがワーク支持平面Eから下方に向かって降下させられると、中間位置ZSにおいてピストンロッド18が切り離されたワーク部分20に加える押圧力により、ワーク部分20が(残留)ワーク2から押し出される。
【0051】
中間位置ZSは、2つの支持キャリッジ14a,14bがワーク支持平面Eの下方に同時に降下する際に、ピストンロッド18が、
図2dに示す支持キャリッジ14a,14bの下方終端位置でも依然として、切り離されたワーク部分20の上面20aを押圧しかつワーク20をその水平位置に位置固定する程度に進出可能であるように選択されている。択一的または補足的に、支持キャリッジ14a,14bの降下に際して加工ヘッド9は(特に同時に)所定の行程長さだけ共に降下させられてよく、これにより、中間位置ZSに位置するピストンロッド18の、ワーク部分20に対する予荷重を維持することができ、その結果、ワーク部分20が取出し方向を形成するZ方向に移動させられると、押出し部材として働くピストンロッド18と保持部材として働く支持キャリッジ14a,14bとの間に挟まれるようになっている。
【0052】
支持キャリッジ14a,14bは、これらが
図2dに示す下方終端位置に達するまで降下させられる。
図2dに示す例ではこのとき、ピストンロッド18の下方終端位置ESに到達していない、すなわちワーク部分20の取出しは不成功であった。つまり、ワーク部分20が残留ワーク2aに引っかかってしまい、よって下方終端位置に位置する支持キャリッジ14a,14bに支持されていない。切り離されたワーク部分20が残留ワーク2aから完全に押し出されたか否かを点検するために、押出しシリンダ17は、例えば距離センサとして形成されていてよくかつ押出しシリンダ17の下端部に対して相対的な、押出し部材18のポジションもしくは位置を測定するセンサ装置25を有している。
【0053】
押出し部材18の下方終端位置ESは、第2の位置S2に押出し部材18を送ることができるようになっているのかまたは押出し部材18がばね弾性的に支持されているのかに応じて、第2の位置S2に比べて押出しシリンダ17の下端部の方向に引き戻されているかまたは一致していてよい。押出し部材18の終端位置ESに到達したか否かの点検は、様々な方法で、場合により様々なセンサ装置を用いて行うことができる。終端位置ESに到達したか否かの点検に関する詳細については、冒頭で引用した独国特許出願公開第102016208872号明細書を参照されたい。
【0054】
図2dに示す、取出しが不成功であった、すなわち、ワーク部分20が残留ワーク2aに引っかかってしまい、よって残留ワーク2aから完全には切り離されなかった、ということが点検により判明した場合については、以下で
図2e~
図2gに関連して説明する反復ストラテジ(リトライストラテジ)が適用される。
【0055】
図2eに認められるように、第1のステップでは、カットヘッド9が上方に、すなわち正のZ方向に移動することによりピストンロッド18が移動させられることで、押出し部材として働くピストンロッド18と、保持部材として働く支持キャリッジ14bとの間でのワーク部分20の緊締が、完全に解消される。択一的に、ピストンロッド18によりワーク部分20にもたらされる力が、例えば比例弁を介した押圧力制御により減少されることで、ワーク部分20の挟まりが(さしあたり)減少させられるだけでもよい。このようにして、ワーク部分20内の応力を減少させることができる。次いで、2つの支持キャリッジ14a,14bが上昇させられ、これによりワーク部分20を再び、ワーク2もしくは残留ワーク2aの支持平面E内にもたらすことができる。
【0056】
別のステップにおいて、押出し部材18の圧着圧力が再び高められるか、または
図2fに示すように、押出し部材18がワーク部分20の上面20a上に降下させられることにより、ワーク部分20の緊締が再形成される。
図2fに示す出発位置は、
図2cに示した最初の取出し試行の際の出発位置に相当する。
図2fに示す出発位置から再び、ワーク部分20を残留ワーク2aから取り出すことが試行される。
【0057】
このためには、押出し部材18と保持部材14bとの間に緊締されたワーク部分20が再び下方に向かって、すなわち取出し方向Zに沿って降下させられる。ワーク部分20の降下は、取出し試行の反復時には、最初の取出し試行時の速度v1とは異なる速度v2で行われる。図示の例では、ワーク部分20は取出し再試行時には、最初の取出し試行時よりも低速で、すなわちより小さな速度v2で降下させられる(v2<v1)。ただし、逆の場合も生じ得る、すなわち、第2の取出し試行時の速度v2は最初の取出し試行時の速度v1より大きく選択されてもよい、ということは自明である。
【0058】
第2の取出し試行時には、
図2gに示すように押出し部材18の下方終端位置ESに到達し、すなわち、ワーク部分20が残留ワーク2aから完全に外されて、保持部材として働く支持キャリッジ14bに支持される。この場合、支持キャリッジ14a,14bがその下方終端位置に到達すると直ちに、ピストンロッド18はその下方終端位置ESから、
図2aに示した第1の位置S1に戻されてよい。導出するためには、切り離されたワーク部分20が下方に向かって導出される導出位置(図示せず)へ第2の支持キャリッジ14bがY方向に移動させられることにより、切り離されたワーク部分20が例えば間隙6内でワーク支持平面Eの下側に移動させられてよい。
【0059】
上述した場合とは異なり、第2の取出し試行が成功しなかった場合には引き続き、
図2eおよび
図2fに関連して上述した、ワーク部分20の緊締が軽減されるかまたは完全に解消されてから再形成される反復ストラテジが、取出しが成功するまでまたは設定した反復数に達するまで、少なくとももう一度繰り返されてよい。取出し試行が全く成功しなかった場合には、設定した試行(リトライ)の数に達した後でワーク2の加工が停止され、エラーメッセージが送出される。
【0060】
ワーク部分20が、保持部材として働く2つの支持キャリッジ14a,14bに支持されると、押出し部材18による緊締の軽減または完全解消後の1つの補足的な方法ステップにおいて、支持キャリッジ14a,14bの逆方向移動が数ミリメートルだけ取出し方向に沿って行われてよい、すなわち、支持キャリッジ14a,14bのZ方向での短い昇降運動が行われてよい。支持キャリッジ14a,14bの逆方向移動により、ワーク部分20を残留ワーク2aから「振り切る」ことができる。この場合、逆方向移動は同時にまたは時間的にずらして行われるか、またはワーク部分20を支持するキャリッジのうち、一方のキャリッジ14bだけが移動を実施するのに対し、他方のキャリッジ14aは移動しない形態で行われてよい。
【0061】
間隙6を介した、ワーク部分20の確実な手順での取出しもしくは導出は、ワーク部分20が極度に大きな寸法を有していない、すなわち通常、間隙6の幅bよりも大きな幅を有していない場合にのみ可能である。比較的大きなワーク部分20を取り出すためには、X方向においてゲート10に隣接して配置されかつワーク支持面5の上下に延在する、以下で
図3に関連して説明する取出し装置26を使用することができる。
図1に示したレーザカットヘッド9によりワーク部分20がワーク2から切り離された後で、切断加工時に形成された残留ワーク2aが切り離されたワーク部分20と共に
図3に示した取出し位置に到達するまで、保持・移動装置7によりX方向に移動させられる。装置26により残留ワーク2aからワーク部分20が取り出された後に、ワーク部分20は加工機1の近傍領域から搬出され得ることが望ましい。このとき、残留ワーク2aはワーク支持面5(
図1参照)上に残留しており、全てのワーク部分が取り出された後で同様に、加工機1の近傍領域から導出される。
【0062】
残留ワーク2aおよびワーク部分20用のワーク支持手段としては、板状のワーク台27が用いられ、ワーク台27の上面にワーク支持面5が形成されている。ワーク台27の毛材またはローラ上での被加工ワーク2の支持位置は、ワーク部分20および残留ワーク2aが互いに面一になる、
図3に示唆するワーク台27の支持平面Eを規定する。
【0063】
図3から判るように、加工機1のワーク台27は、図示の例では複数の貫通開口29を備えた穴あき板として形成されている。ワーク台27の下には押出し設備30が配置されており、ワーク台27の上には保持設備31が配置されている。押出し設備30は、構造が同じ2つの押出し装置32,33を有しており、保持設備31は、構造が同じ2つの保持装置34,35を有している。
【0064】
押出し装置32,33は押出し・移動ユニット36により、支持平面Eに対して平行に、ワーク台27の下のあらゆる任意の位置に送ることができるようになっている。このために押出し・移動ユニット36は長手方向レール37を有しており、長手方向レール37に沿って押出し装置32,33はモータ駆動式に移動させられてよい。押出し装置32,33の駆動モータ38が
図3に認められる。押出し装置32,33と共に長手方向レール37は、長手方向レール37に対して垂直に延在する、押出し・移動ユニット36の2つの横方向レール39,40に沿って移動可能である。横方向レール39,40は、長手方向レール37および長手方向レール37により案内される押出し装置32,33と共に、ワーク台27もしくは支持平面Eに対して垂直に(取出し方向Zに)昇降可能である。
【0065】
同様に保持設備31の保持装置34,35も、支持平面Eに対して平行に、被加工ワーク2のあらゆる任意の位置に移動可能でありかつ支持平面Eに対して垂直に昇降可能である。保持・移動ユニット41が長手方向レール42を有しており、長手方向レール42に沿って保持装置34,35はモータ駆動式に送られてよい。長手方向レール42は保持装置34,35と共にモータ駆動式に2つの横方向レール43,44に沿って移動可能であり、2つの横方向レール43,44自体は長手方向レール42に対して垂直に延在しかつ長手方向レール42および長手方向レール42に沿って案内される保持装置34,35と共に鉛直方向(Z方向)に昇降可能である。
【0066】
機械1の全ての主要機能ひいては特に装置26の全ての主要機能は、
図1に示した制御ユニット16により数値制御され、制御ユニット16は、例えばCNC制御装置であるSiemens SINUMERIK 840D siに基づいていてよい。
【0067】
図3に示した第1の保持装置34および第1の保持装置34と協働する第1の押出し装置32をそれぞれ示す
図4a~
図4eに認められるように、保持装置34は、支持体もしくは保持部材として働き、複数の孔48が設けられた平らな当接板47を備えたボックス状のケーシング46を有している。孔48は、吸着グリッパ49a~49dの形態の保持部材を収容しており、吸着グリッパ49a~49dは受動吸盤として形成されていてよく、当接板47に対して垂直方向に弾性変形可能な吸盤スリーブ50を有している。
図4aでは、第2および第3の吸着グリッパ49b,49cの2つの吸盤スリーブ50がワーク部分20に当接しているのに対し、第1および第4の吸着グリッパ49a,49dは残留ワーク2aに当接している。
【0068】
図4a~
図4eに示す、構造が同じ2つの押出し装置32,33のうちの第1の押出し装置32は、押出しケーシング51を有しており、押出しケーシング51において押出し装置32,33は、押出し・移動ユニット36の長手方向レール37とつながっている。押出しケーシング51の内部には、それぞれ複動シリンダを備えた複数の従来の空圧ピストン・シリンダユニット(詳しくは図示せず)が収納されている。各ピストンには押出しピン52の形態の押出し部材が結合されている。
【0069】
押出しケーシング51の内部のピストン・シリンダユニットは別個に制御可能であり、互いに独立して圧力源(詳しくは図示せず)に接続され得る。ピストン・シリンダユニットの作動により、押出しピン52は鉛直方向に押出しケーシング51から移動させられるかまたは押出しケーシング51内へ戻される。押出しピン52の横断面は最大で、ワーク台27(
図3参照)に設けられた貫通開口29の横断面に等しくなっていてよい。図示の例の場合には、押出しピン52の横断面は、貫通開口29の横断面よりも小さくなっている。
【0070】
以下に、残留ワーク2aからのワーク部分20の取出し過程を説明する。この場合、
図4a~
図4eに示すように、ワーク部分20、押出し装置32および保持装置34は、XY平面内の取出しに適した取出し位置に位置決めされている、ということを前提とする。
【0071】
取出し過程に際して、最初は保持装置34用の負圧発生器が遮断されており、保持装置34に設けられた吸着グリッパ49a~49dは、ワーク部分20からかつ残留ワーク2aからも離間されている。したがって吸着グリッパ49は非作用状態にあり、よって保持装置34は解放状態にある。この作用状態で、保持装置34は保持・移動ユニット41の相応の鉛直方向移動により降下させられ、これにより被加工ワーク2もしくはワーク部分20および残留ワーク2aに載置される。このとき吸着グリッパ49a~49dの吸盤スリーブ50が圧縮され、その結果、より強力に折り畳まれ、最終的に保持装置34の当接板47がワーク部分20もしくは残留ワーク2aの上面に載置されるまで、保持装置34の当接板47に設けられた孔48の内部に押し戻される。
【0072】
次いで、押出し装置32において、ワーク部分20の下に位置し、ワーク台27の貫通開口29を介してワーク部分20にアプローチ可能な押出しピン52が作動させられる。押出し装置32の残りの押出しピン52は、その初期状態を保っている。押出しケーシング51から進出した押出しピン52を備えて、押出し装置32は押出し・移動ユニット36の相応の行程運動により、
図4aに示す位置に持ち上げられる。このとき、進出した押出しピン52は、ワーク部分20の下面に当接している。ワーク部分20は、その下面では押出し装置32により取出し方向Zに押圧され、その上面では保持装置34により、より正確に言うと保持部材として働く当接板47により、取出し方向Zにおいて大面積を支持される。保持装置34の、依然として非作用状態にある吸着グリッパ49は、ワーク平面Eに対して平行に向けられたワーク部分20の上面に、吸着グリッパ49の弾性変形の結果として生じた予荷重を加えるように当接している。
【0073】
制御信号により、押出し装置32および保持装置34が押出し・移動ユニット36および保持装置・移動ユニット41を介して同時に取出し移動で取出し方向Zに移動させられる。この場合、最初に残留ワーク2aの支持平面E内に配置されたワーク部分20が残留ワーク2aから持ち上げられ、このときワーク部分20は、押出しピン52と、保持装置34の保持部材として働く吸着グリッパ49a~49dもしくはやはり保持部材として働く当接板47との間に挟まれている。残留ワーク2aも、ワーク部分20の取出し移動中は別の2つの吸着グリッパ49a,49dにより、上方からワーク台27に押し付けられる。補足的に、第2の保持装置35が押さえとして保持装置34に隣接してXY平面内に位置決めされ、残留ワーク2a上に降下させられてよく、これにより、残留ワーク2aはワーク台27と、第2の保持装置35の、別の保持部材として働く当接板との間に挟まれる。
【0074】
装置26はセンサ装置53を有しており、センサ装置53は、ワーク部分20が残留ワーク2aから完全に切断されたか否かまたはワーク部分20が上述した行程運動により残留ワーク2aから持ち上げられた後もまだ、ワーク部分20と残留ワーク2aとの間に導電接続が生じているか否かを点検することを可能にする。センサ装置53はこのために、例えば上で引用した独国特許発明第102017205095号明細書に記載されているように形成されていてよい。ワーク20が残留ワーク2aから完全に切断されたことをセンサ装置53が検出すると、保持装置34の負圧発生器が作動させられ、これにより保持装置34を解放状態から位置固定状態に移行させることができ、位置固定状態においてワーク部分20は保持装置34、より正確に言うと2つの吸着式の吸着グリッパ49b,49cおよび当接板47に固定もしくは位置固定されている。センサ装置53は同様に、ワーク部分20が位置固定状態にある保持装置34に実際に位置固定されているか否かを点検することも可能にする。
【0075】
図4eに示すように、ワーク部分20が保持装置34に位置固定された状態で、先にワーク部分20を押圧した押出しピン52は押出し装置32の押出しケーシング51内に引っ込められ、押出し装置32は押出し・移動ユニット36の相応の降下運動により降下させられる。次いで保持装置34は、保持装置34に位置固定されたワーク部分20と共に保持・移動ユニット41により、ワーク台27の近傍領域から移動させられる。ワーク部分20を所定の置場で保持装置34から外すために、ワーク部分20を保持している吸着グリッパ49b,49cは無圧状態に切り換えられる。
【0076】
ただし
図4bに示す例では、最初の取出し試行は失敗した、すなわち、ワーク部分20が残留ワーク2aに引っかかり、依然として残留ワーク2aと結合している状態にあることがセンサ装置53により検出される。よって、ワーク部分20を残留ワーク2aから取り出すためには、以下に説明する反復ストラテジ(リトライストラテジ)のステップが実施される。この場合、典型的には、各個別の方法ステップの後に、ワーク部分20と残留ワーク2aとの間に依然として接触が生じているか否かもしくはワーク部分20が実際に2つの吸着グリッパ49a,49bに位置固定されているか否かを点検する、ということが必要とされている。
【0077】
リトライストラテジの第1のステップでは、
図4cに基づき、残留ワーク2aを押さえている吸着グリッパ49a,49dが残留ワーク2aから外されて上方に向かって移動させられ、これにより、残留ワーク2aの応力を低下させることができる。択一的または補足的に、押さえとして働く第2の保持装置35が残留ワーク2aから上方に向かって移動させられ、これにより、ワーク台27と第2の保持装置35の当接板との間における残留ワーク2aの緊締が軽減または解消されることになる。1つの別の択一的なステップでは、第2の保持装置35のZ方向への移動運動が空圧式に制御されている場合には、第2の保持装置35により残留グリッドに作用する力が、例えば比例弁を介した圧力制御により段階的にまたは連続的に減少され得る。次いでセンサ装置53により、ワーク部分20が残留ワーク2aから外れたか否かが点検される。
【0078】
ワーク部分20が残留ワーク2aから外れなかった場合には、押さえている2つの吸着グリッパ49a,49dおよび/または保持装置35が再び残留ワーク2a上に位置決めされるもしくは応力を再び形成するために圧着圧力が再び高められる。次いで再びセンサ装置53により、ワーク部分20が残留ワーク2aから外れたか否かのセンサ点検が行われる。
【0079】
ワーク部分20が残留ワーク2aから外れなかった場合には、押さえている吸着グリッパ49a,49dおよび/または保持装置35が再び残留ワーク2aから外され、次いで保持装置34の吸着機能が作動させられ、保持装置34を解放状態から位置固定状態に移行させる。
図4dに示すように、ワーク部分20の緊締を完全に解消するために、押出しピン52は降下させられる。択一的に、空圧式に作動させられる押出しピン52の圧着圧力が低下されてもよい。次いで再び、これによりワーク部分20が残留ワーク2aから外れたか否かが点検される。
【0080】
ワーク部分20が残留ワーク2aから外れなかったが吸着グリッパ49b,49cに接触している場合には、押出しピン52が再度、ワーク部分20と、押さえとして働く2つの別の吸着グリッパ49a,49dとに応力を加えるかもしくは第2の保持装置35の当接板が残留ワーク2aに応力を加え、次いで緊締が再び軽減または解除される。この応力の形成および減少によりワーク部分20が残留グリッド2aから外れたか否かが再び点検される。
【0081】
このことが失敗した場合、例えば薄いフレキシブルなワーク部分20(3mm未満の材料厚さ)を残留ワークから外すことができなかったが真空により吸着グリッパ49b,49cに保持している場合には、
図4dに水平方向の二重矢印により示唆されているように、保持装置34の小さな水平方向移動によりワーク部分20を残留ワーク2aに対して相対的に移動させて、歪みまたは引っかかりを取る。この往復運動に際して押出しピン52がワーク下面に接触してはならない。
【0082】
薄いフレキシブルなワーク部分20を前記往復運動によっても残留ワーク2aから外すことができず、依然として吸着グリッパ49b,49cに接触している場合には、吸着グリッパ49a,49bもしくは保持装置34の、取出し方向Zに沿った揺動運動がワーク部分20の水平方向移動に重畳される。
【0083】
先行方法ステップが全て失敗した場合には、ワーク部分20は保持装置34ひいては吸着グリッパ49b,49cの降下により再び支持平面E内のワーク台27上に位置決めされ、真空が遮断される。次いで、押さえとして働く吸着グリッパ49a,49dもしくは第2の保持装置35の当接板および押出しピン52に再び、残留ワーク2aもしくはワーク部分20に向かって予荷重が加えられる。保持装置47および押出しピン52は共に、最初の取出し試行時の速度v1に比べて低下された速度v2で取出し方向Zに移動させられる。真空接続の前、場合によっては後に、センサ装置53により、ワーク部分20を残留グリッド2aから外すことができたか否かが再び点検される。
【0084】
この取出し試行にもやはり失敗した場合には、ワーク部分20が再び降下させられ、取出しコンポーネント47,49a~49d,52がワーク部分20もしくは残留ワーク2aから外されるかもしくは圧着圧力が低下させられて、緊締が軽減されるかまたは完全に解消される。次いで応力もしくは緊締が再び形成され、緊締されたワーク部分20、保持装置34ならびに押出しピン52が、最初の取出し試行に比べて高められた速度v2で急速に上方に向かって移動させられる。
【0085】
上述したリトライ手順の最終的な方法ステップも失敗した場合には、加工が停止され、エラーメッセージが送出される。さらに、個々のまたは全ての方法ステップは、それぞれ設定された反復数に達するまで複数回繰り返されてよい。
【0086】
取出し結果がポジティブな場合、すなわち各取出し試行が成功した場合にも、成功しなかった場合にも、各取出し試行に際して用いられた少なくとも1つの押出し部材18,52および/または少なくとも1つの保持部材14a,14b,49b,49c,47の動作パラメータは、動作パラメータセットの形態で、取り出そうとするワーク部分20の幾何学形状パラメータ(縁部輪郭、長さ、幅、厚さ等の幾何学形状)と共に、結果メモリ54に記憶され得る(
図1参照)。結果メモリ54は、図示の例ではクラウドに基づくものであるが、機械1が位置する工場の中央コンピュータ/サーバ、または機械1、例えば制御装置16に設けられていてもよい。
【0087】
適切なリトライストラテジを確定するために、制御装置16は結果メモリ54を読み出し、取り出そうとするワーク部分20の幾何学形状パラメータに基づき、適切な各動作パラメータもしくは対応する各動作パラメータセットでもって最適化された取出し試行順序を確定することができる。結果メモリ54にネガティブな結果もしくは取出し結果を有する取出し試行も記憶されている場合には、取り出そうとする各ワーク部分20の幾何学形状パラメータに基づき、取出し時の成功確率を求めることができかつ必要に応じて、レーザ加工機1の制御プログラム作成時に相応のワーク部分20の取出しの成功を期待することができない場合には、オペレータもしくはプログラマに警告を発することができる。