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特許7130861エアフィルタおよびエアフィルタを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】エアフィルタおよびエアフィルタを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/10 20060101AFI20220829BHJP
   B01D 46/52 20060101ALI20220829BHJP
   B01D 39/14 20060101ALI20220829BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20220829BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B01D46/10 A
B01D46/52 A
B01D39/14 C
B01D39/16 Z
B01D39/20 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021517512
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2019063633
(87)【国際公開番号】W WO2019228970
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-12-25
(31)【優先権主張番号】18175102.5
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520467121
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ エスパーニャ,エセ.ア.
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Espana, S.A.
【住所又は居所原語表記】Parque Empresarial La Carpetania, C/ Miguel Faraday, 1, 28906 Getafe (Madrid), Spain
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100194858
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 久子
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンニ ヌルシア
(72)【発明者】
【氏名】リュスケ ダニエル カンバラ マルティン
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-089982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0159239(US,A1)
【文献】特開2013-063377(JP,A)
【文献】特開2006-218396(JP,A)
【文献】米国特許第06156089(US,A)
【文献】米国特許第05288298(US,A)
【文献】特表2002-506382(JP,A)
【文献】特開2004-051037(JP,A)
【文献】特開2000-061234(JP,A)
【文献】特開平09-206547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D39/00-39/20
B01D46/00-46/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の空気調和システム用のエアフィルタであって、
第1の濾過材表面を有する第1の濾過材の第1の層(12)と、
第2の濾過材表面を有する第2の濾過材の第2の層(13)と、
前記第1の層(12)と前記第2の層(13)とを互いに隣接させて保持するための外周フレーム(11)であって、前記第2の濾過材表面がフラットではなく、前記第1の層(12)よりも大きな濾過材表面積を提供する、外周フレーム(11)と、
を備え
前記外周フレームの前から後ろに空気が流れるように用いられ、
前記第1の層(12)は、前記第2の層(13)よりも上流側に配置され、前記第2の層(13)よりも低い充填密度を有しており、該充填密度は、濾過材の総体積に対する前記濾過材内の濾過材料の体積を規定し、
前記第2の層(13)がひだ付けされた層材を有し、前記第1の層(12)がフラットな表面を有し、前記ひだ付けされた第2の層(13)の片面に接着されて、前記第1の層(12)と前記第2の層(13)の間にエアキャビティを提供し、
前記外周フレーム(11)は、ひだ付けされて第1の層(12)に接着された2つの垂直フラップ(19)を含む、ことを特徴とする、エアフィルタ。
【請求項2】
前記第2の濾過材表面の面積が、前記第1の濾過材表面の面積の2倍よりも大きいことを特徴とする、請求項記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記第1の層(12)は、ガラス繊維、合成繊維、有機繊維と合成繊維との混合物のうちの少なくとも1つの材料を含んでいることを特徴とする、請求項1または2記載のエアフィルタ。
【請求項4】
前記第2の層(13)は、ガラス繊維、合成繊維、有機繊維と合成繊維との混合物、セルロース繊維のうちの少なくとも1つの材料を含んでいることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のエアフィルタ。
【請求項5】
前記第1の層(12)は、0.04未満または0.03未満の充填密度を有し、かつ/または
前記第2の層(13)は、0.05よりも大きな充填密度または前記第1の層(12)の前記充填密度と少なくとも同じ大きさの充填密度を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のエアフィルタ。
【請求項6】
濾過材の少なくとも1つの付加的な層であって、前記第1の層(12)および前記第2の層(13)とともに前記外周フレーム(11)によって互いに重ねられた状態で保持された複数の層を形成する、少なくとも1つの付加的な層を有し、前記空気調和システムを通る流れ方向に沿って、前記充填密度が、層ごとに段階的に増大することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のエアフィルタ。
【請求項7】
前記フレーム(11)は、空気流が、いかなる補強要素によっても分割されることなしに、前記第1の層(12)に流入することができるように構成されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のエアフィルタ。
【請求項8】
鉄道車両の空気調和システム用のエアフィルタを製造するための方法であって
第1の濾過材表面を有する第1の濾過材の第1の層(12)を提供することと、
第2の濾過材表面を有する第2の濾過材の第2の層(13)を提供することと、
前記第1の層(12)と前記第2の層(13)とを互いに隣接させて保持するための外周フレーム(11)を配置することであって、前記第2の濾過材表面がフラットではなく、前記第1の層(12)よりも大きな濾過材表面積を提供する、外周フレーム(11)を配置することと、
前記外周フレームの前から後ろに空気が流れるように用いられ、
前記第1の層(12)は、前記第2の層(13)よりも上流側に配置され、前記第2の層(13)よりも低い充填密度を有しており、該充填密度は、濾過材の総体積に対する前記濾過材内の濾過材料の体積を規定し、
前記第2の層(13)がひだ付けされた層材を有し、前記第1の層(12)がフラットな表面を有し、前記ひだ付けされた第2の層(13)の片面に接着されて、前記第1の層(12)と前記第2の層(13)の間にエアキャビティを提供し、
前記外周フレーム(11)は、2つの垂直フラップ(19)を含み、
前記フラップ(19)を、前記第1の層(12)にひだ付けしかつ接着することと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記第2の層(13)は、ひだ付けされた層であり、ひだ付けされた前記第2の層(13)を前記第1の層(12)に固定して、前記ひだ付けされた第2の層(13)による前記第1の層(12)の補強を可能にすることを特徴とする、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルタまたは濾過モジュールおよびエアフィルタまたは濾過モジュールを製造するための方法に関し、より詳細には、鉄道用途の高いダスト保持量の濾過モジュールに関する。
【0002】
車両用エアコンディショナは、特定のコンパートメント、例えば、列車または別の車両の客室の温度、湿度および空気の質の特定の状態を維持するために使用される。車両用エアコンディショナの機能を発揮するために、車両用エアコンディショナは、このコンパートメントから一定量(ゼロに等しい場合もある)の空気(以下では室内空気と称する)を取り入れ、車両の外部から一定量(ゼロに等しい場合もある)の空気(以下では室外空気と称する)を取り入れる。
【0003】
図4は、鉄道車両50のための例示的な空気調和(AC)システムを示している。空気調和システムは、室外空気流20用の入口と、混合ゾーン1と、室内空気流40用の入口と、コンパートメントに向けられた供給空気30用の出口3と、を備えている。室内空気40と室外空気20とは、通常、混合ゾーン1内で混合され、その後、供給空気の温度および湿度を変更することを可能にする空気調和機の熱交換器、電気抵抗器または他の手段を通過し、その後、コンパートメントに流入する。
【0004】
室内空気および室外空気に含まれる汚染物質、例えばダストを減少させるために、通常、フィルタ2,3,4が、空気流20,30,40内に挿入されている。フィルタ2,3,4の位置に応じて、複数の構成が実際に認められる。これら構成には、室外空気流20内の少なくとも1つのフィルタ2と、混合ゾーン1の後方の少なくとも1つのフィルタ3との構成、室外空気流20内の少なくとも1つのフィルタ2と、室内空気流40内の少なくとも1つのフィルタ4との構成、混合ゾーン1の後方の少なくとも1つのフィルタ3のみの構成、室内空気流40内の少なくとも1つのフィルタ4と、混合ゾーン1の後方の少なくとも1つのフィルタ3との構成が含まれる。
【0005】
フィルタ2,3,4は通気性であるが、ダストに対してはある程度不透過性である。これらのフィルタが汚染物質を保持していると、作動中にフィルタの通気性が低下し(以下では目詰まり現象と称する)、所与の空気流に関するフィルタ前後の圧力降下が増大する。空気流20,30,40内のフィルタ2,3,4の位置にかかわらず(すなわち、選択された構成にかかわらず)、圧力降下の増大は、システム内で循環する空気流量および/またはその空気流量を維持するために必要なファンの出力に影響を与える。このような主な理由から、フィルタ2,3,4を定期的に交換して、必要な量の室内空気および室外空気がコンパートメントに供給されることを確保している。
【0006】
頻繁なメンテナンスは費用を増大させる。このため、メンテナンス費用を低減させるために、フィルタの持続時間、すなわち、フィルタが目詰まりしてしまい、交換を必要とするまでの時間を増大させることが望ましい。このように持続時間を増大させることは、コンパートメントに供給される空気の全体的な品質に影響することなく達成されることが望ましい。換言すると、フィルタの持続時間をより長くすることだけのために、保持されるダスト粒子の量およびタイプが一定の値を下回らないことが望ましい。
【0007】
図5は、鉄道の分野で使用される最も単純なフィルタのタイプの1つを示している。このフィルタは、空気を十分に濾過するように適応させられた厚さを有するフラットな層として形成された空気濾過材5を備えたフラットパネル型のフィルタである。濾過材5は繊維で形成され、金属、厚紙または合成材料のフレーム6によって保持されている。濾過材5は、付加的な締結手段22(たとえば濾過材5とフレーム6との間に挿入された補強要素)によって支持されている。しかし、この種のフィルタは、圧力降下を許容可能なレベルに維持しつつ大量のダストを保持する能力に限界がある。
【0008】
図6は、フィルタの持続時間を向上させる別の従来のエアフィルタを示している。このエアフィルタでも同様に濾過材7がフレームによって保持され、さらに金属メッシュ8によっても保持されている。この金属メッシュ8は、濾過材7の形状を波状に賦形し、濾過材7の表面積を増大させている。増大させられた表面積は、濾過材7の体積での濾過に加えて、表面積が空気の付加的な濾過を提供するという効果を有する。
【0009】
両方のフィルタは、相当肉厚の濾過材を有しており、濾過メカニズムはフィルタの体積に主に左右され(以下では深層濾過と称する)、圧力降下を過度に増大させることなく、ダスト粒子を捕集する。目詰まりを防止し、フィルタの持続時間を増大させるためには、深層濾過は有効な方法である。フィルタが占めるスペースを拡張することなく、フィルタを向上させようとすると、波の数または深層濾過が増大してしまう。この解決策の欠点は、特にかなり肉厚の濾過材を扱う場合に、ひだの間隔が狭められると、ひだがともに押し合わされる可能性が高くなり、また、濾過材を圧縮するリスクが高まり、実際に利用可能な体積が低減されることである。
【0010】
したがって、これらの問題を回避する他のエアフィルタが必要とされている。
【0011】
従来のエアフィルタの問題の少なくともいくつかは、請求項1記載のエアフィルタまたは請求項11記載の、エアフィルタを製造するための方法によって克服される。従属請求項は、独立請求項の主題をさらに有利に実現することに関する。
【0012】
本発明は、特に鉄道車両のための空気調和システム用のエアフィルタ(または濾過モジュール)に関する。エアフィルタは、第1の濾過材表面を有する第1の濾過材の第1の層と、第2の濾過材表面を有する第2の濾過材の第2の層と、第1の層と第2の層とを互いに隣接させて(または互いに重ねた状態で)保持するための外周フレームであって、第2の濾過材表面がフラットではなく、第1の層よりも大きな濾過材表面積を提供する、外周フレームと、を含んでいる。
【0013】
第1の濾過材および第2の濾過材は、特定の充填密度を有する特定の材料であるものと理解されたい。各層の材料は様々な種類の繊維を含んでよいことから、層の特性は、特定の体積内に配置される繊維の密度によって規定されることになる。このことは、とりわけどの程度の汚染物質を濾過材内に蓄えることができるかを規定する。濾過材表面は、濾過材の幾何学形状(フラットである、湾曲している、波状である、ひだ付けされているなど)のみならず、濾過材表面積にも関係することをさらに理解されたい。
【0014】
したがって、第2の層は、ひだ付けされた層材料を含んでよい(または別様に湾曲した表面を有する)。一方、第1の層は、フラットな表面を有してよい。任意選択的には、第1の層は、ひだ付けされた第2の層の片面に接着/溶着されるかまたは別様に固定され、第1の層と第2の層との間にエアキャビティを提供する。このことは、安定性を与える利点を有する。ひだ付けされた第2の層が、エアフィルタの層構造をすでに十分に支持することができるので、補強要素も締結手段も不要である。
【0015】
「第1の層」という概念は、この層が、フィルタを通る空気の流れ方向に沿って最初に位置していることを必ずしも暗示するものではないことを理解されたい。「第1の層」という概念は、この第1の層を第2の層と区別するための名称に過ぎない。本発明は、両方の可能性、すなわち、空気調和システムを通る空気が、第1の層または第2の層を通ってエアフィルタに流入することを包含する。さらに、第1の層もフラットではない(たとえばひだ付けされている)ことが同様に可能である。さらに、「第1の層」および「第2の層」の概念は、そのような層が少なくとも1つ存在することを暗示していることを理解されたい。したがって、本発明は、フラットな2つの第1の層と、ひだ付けされた2つの層とを有するエアフィルタをも包含するものとする。
【0016】
両方の層の濾過は、互いに異なるメカニズムに左右されてよい。たとえば、第1の層はその内部に汚染物質を蓄えてよく(体積濾過または深層濾過)、一方、第2の層は基本的にその拡大された表面に汚染物質を蓄えてよい(表面濾過)。たとえば、第2の濾過材表面の面積は、第1の濾過材表面の面積の2倍よりも大きい。ただし、本発明は特定の表面積の比に限定されるものではない。しかし、両方の濾過メカニズムが組み合わせられると有利である。なぜならば、ある汚染物質は体積濾過によってより多く吸着され、一方、他の汚染物質は表面濾過によって効果的に濾過されるからである。
【0017】
任意選択的には、第1の層は、ガラス繊維、合成繊維、有機繊維と合成繊維との混合物のうちの少なくとも1つの材料を含んでいる。同様に、第2の層は、ガラス繊維、合成繊維、有機繊維と合成繊維との混合物、セルロース繊維のうちの少なくとも1つの材料を含んでいてよい。
【0018】
任意選択的には、第1の層は、フィルタを通る空気流の方向において第2の層よりも上流にあるように配置され、第2の層より低い充填密度を有する。たとえば、第1の層は、0.05未満、0.04未満または0.03未満の充填密度を有する。同様に、第2の層は、0.05よりも大きな充填密度または第1の層の充填密度と少なくとも同じ大きさの充填密度を有してよい。充填密度は、濾過材内の材料(たとえば繊維)が占める体積と、それぞれの層の濾過材が占める総体積との比によって規定されてよい。
【0019】
任意選択的には、エアフィルタは、濾過材の少なくとも1つの付加的な層であって、第1の層および第2の層とともに外周フレームによって互いに重ねられた状態で保持された複数の層を形成する、少なくとも1つの付加的な層を備える。そのようなエアフィルタを有する空気調和システムを通る流れ方向に沿って、充填密度は、層ごとに段階的に増大してよい。さらに、フィルタの層は、層ごとに体積濾過が低減され、一方、表面濾過が増大するように形成されている。
【0020】
任意選択的には、フレームは、抑制されていない空気流が、特にいかなる補強要素によっても分割されることなしに、第1の層に流入することができるように構成されている。したがって、更なる実施形態によれば、本エアフィルタは、従来のエアフィルタに設けられたような付加的な補強要素、例えば締結手段またはメッシュを有することなく、十分な安定性を提供する。
【0021】
本発明は、空気調和システム用のエアフィルタを製造するための方法にも同様に関する。本方法は、
第1の濾過材表面を有する第1の濾過材の第1の層を提供するステップと、
第2の濾過材表面を有する第2の濾過材の第2の層を提供するステップと、
第1の層と第2の層とを互いに隣接させて保持するための外周フレームを配置するステップであって、第2の濾過材表面がフラットではなく、第1の層よりも大きな濾過材表面積を提供する、外周フレームを配置するステップと、
を含む。
【0022】
任意選択的には、本方法は、ひだ付けされた第2の層を第1の層に固定して、ひだ付けされた第2の層による第1の層の補強を可能にすることをさらに含んでよい。この固定は、接着、溶接または任意の他の永続的な固定を含んでよい。
【0023】
要約すると、各実施形態は、コンパクトな濾過モジュール内で深層濾過が表面濾過と組み合わせられる構成により、上述の問題の少なくともいくつかを解決する。
【0024】
本システムおよび/または本方法のいくつかの実施例を例としてのみ添付図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態によるエアフィルタを示す図である。
図2】(付加的な)フレーム内に保持されたひだ付けされた空気濾過材に関する実施例を示す図である。
図3】本発明の実施形態によるエアフィルタを製造する方法の例示的なフローチャートを示す図である。
図4】鉄道車両用の例示的な空気調和(AC)システムを示す図である。
図5】従来のエアフィルタを示す図である。
図6】従来の別のエアフィルタを示す図である。
【0026】
図1は、本発明の実施形態によるエアフィルタを示す図である。このエアフィルタは、第1の濾過材表面を有する第1の濾過材の第1の層12と、第2の濾過材表面を有する第2の濾過材の第2の層13とを備えている。第1の層12と第2の層13とは両方とも互いに重ねられた状態でフレーム11によって保持されている。
【0027】
第2の層13は、フラットな第1の層12に比べて増大させられたフィルタ表面積を提供するフラットではない表面を有している。具体的には、第2の層13は、ひだ付けされた層として形成されている。有利な実施形態によれば、第2の層13はフレーム11に接着され、第1の層12は単に第2の層13上に設置されている。さらに、フレーム11は、側部に1つずつ2種類の垂直フラップ19を有している。これら垂直フラップ19は、ひだ付けされていて、第1の層12に接着されている。こうして、第1の層12は、垂直フラップ19と、フレーム11に接着された第2の層13との間に保持されている。任意選択的には、2つの層12,13間で、たとえば第2の層13のひだの先端部での接着などにより常時固定が行われてよい。したがって、第2の層13は、ひだによってエアフィルタの十分な安定性を提供するために、第1の層12に接着もしくは別様に固定されてもよいし、接着も固定もされていなくてもよい。その結果、本発明の実施形態によるエアフィルタには、図5および図6の従来のエアフィルタのような金属メッシュ8または締結手段22が不要となる。このことは、とりわけ、特にエアフィルタを通る空気流21が分割されず、妨害されることなくフレーム11内の濾過材を通って流れることを暗示している。
【0028】
エアフィルタを通る空気流の方向21に沿って、空気が最初に第1の層12を通り、次いで第2の層13を通る。第1の層12は、第2の層13よりも大きな厚さを有してよい。この第2の層13は、より薄い厚さ33であるものの、その代わりに、ひだ付けされた構造で形成されている。さらに、第1の層11の充填密度は、第2の層13の材料の充填密度以下とすることができる。
【0029】
フレーム11は、奥行き16、高さ15および幅14を有している。濾過モジュールの幅14および高さ15は、車両のエアコンディショナのダクトまたは空気路の幾何学形状によって変更してよい。たとえば、ある用途では、幅14は300mmから600mmまでの範囲であってよく、高さ15は200mmから400mmまでの範囲であってよい。濾過モジュールは、濾過モジュールが動作中に十分な剛性を維持する限り、任意の他の寸法で設計することができる。有利には、前部19は、図1に示すように、第1の層用の正面フレームを形成するためにひだ付けされている。実際、フレーム11の2つの垂直な側部は、奥行き16よりも長く形成されるが、その後、製造中にひだ付けされ、フレームの最終的な奥行きは、奥行き16に等しくなっている。必要であれば、フレーム11の頂部側および底部側もより長く形成され、ひだ付けされていてよい(それにより、第1の層12が小さな正面フレームを有する)。任意選択的には、濾過モジュールの奥行き16は、利用可能な空間に応じて変更することができる。奥行き16は、第1の層12と第2の層13との組み合わされた厚さよりも大きく、空気案内および付加的な支持のための前部19を提供してもよい。所与の流量では、より奥行きのあるモジュールが、より長い持続時間を達成することができる(なぜならば、モジュールがより多くの汚染物質を蓄えることができるからである)。
【0030】
第1の層12の奥行き17は、少なくとも5mmであってよく、十分な体積濾過を提供するために、必要に応じて調整することができる。第1の層12は、さらに、低い充填密度(たとえば、0.04未満または0.03未満)を有していてよい。この低い充填密度は、周囲の締結用フレーム11の内側での第1の層12の圧縮の所望の程度に応じて便利に変化させることができる。第1の層12の濾過材は様々な繊維を含んでいてよい。第1の層用の好ましい繊維材料は、ガラス繊維、合成繊維、または有機繊維と合成繊維との混合物である。
【0031】
第2の層13は、肉薄の濾過材から形成されている(厚さ33は、1mm未満から最大20mmまでの範囲であってよい)。第2の層13は、利用可能な濾過表面を増大させるようにひだ付けされ、表面濾過を可能にしている。ひだの数は、濾過材の厚さと、濾過モジュール全体の奥行き16とに左右される。ひだの数は、ひだの押し合わせならびに濾過材の望ましくない圧縮が生じない限り、最大化されてよい。たとえば、濾過材の厚さ33が約1mmである場合、第2の層13は、ひだが15mmから25mmの範囲内の間隔xだけ離間された先端部を有するように、ひだ付けすることができる。先端部同士の高さ18は、30mmから40mmであってよい。
【0032】
すでに述べたように、より奥行きのある濾過モジュールは、濾過のためのより長い持続時間を有してよい。この持続時間は同様に、汚染物除去のために多少なりとも体積を提供する充填密度にも左右される。第2の層13は、第1の層12よりも大きい(0.05よりも大きい)充填密度を有してよいか、または第1の層12の充填密度と少なくとも同じ(または少なくとも50%大きい)大きさの充填密度を有していてよい。
【0033】
第2の層13の濾過材は、同様に種々異なる繊維を含んでいてよい。第2の層の繊維用の好ましい材料は、ガラス繊維、合成繊維、有機繊維と合成繊維との混合物、またはセルロース繊維である。第2の層13は、好ましくは接着剤で外周フレーム11に結合され、ひだを所望の間隔を置いて維持し、フレームと層との間の接続部をシールし、外周フレームの剛性を増大させている。第1の層12は、ひだ付けされた第2の層13および外周フレーム11の前部19にともに固定されているので、空気流が第1の層12を第2の層13に押圧する際に確実に支持されている。従来のエアフィルタとは対照的に、締結要素22(図5)または金属メッシュ8(図6)は不要である。
【0034】
図示のエアフィルタは、他の濾過モジュールと組み合わせることができる濾過モジュールであってよい。たとえば、フレーム11は、空気路の寸法に応じて、相並んで配置された複数の濾過モジュールを整合させることを可能にするように、矩形(または三角形、六角形など)を有してよい。
【0035】
図2は、フレーム10内に保持されたひだ付けされた空気濾過材9の更なる詳細を示している。本発明によれば、このような層の少なくとも1つは、第2の層13としてエアフィルタに含まれる。互いに隣接するひだ間の間隔は、濾過要求に応じて変更することができる。
【0036】
第2の層13では、濾過材9が、ひだの数が十分に多くなるように第1の層12よりも肉薄であり、これにより、濾過メカニズムが主にフィルタの表面に左右される(表面濾過)。表面濾過の利点は、圧力降下を過度に増大させることなく、表面によってダスト粒子を捕集することに関する。さらに、より肉薄の濾過材(単に1mm、2mmまたは5mmであってよい)により、製造時にひだを形成することができ、ひだを別体のフレーム10に結合するか、または図1のフレーム11と一緒に接着剤で結合することにより、かつ/またはひだのスペーサを使用することにより、のちに位置保持することができる。
【0037】
図3は、本発明の実施形態による空気調和システム用のエアフィルタを製造するための方法のフロー図である。この方法は、
第1の濾過材表面を有する第1の濾過材の第1の層12を提供するステップS110と、
第2の濾過材表面を有する第2の濾過材の第2の層13を提供するステップS120と、
第1の層12と第2の層13とを互いに隣接させて保持するための外周フレーム11を配置するステップS130であって、第2の濾過材表面がフラットではなく、第1の層よりも大きな濾過材表面積を提供する、外周フレーム11を配置するステップS130と、
を含んでいる。
【0038】
各実施形態は、最小で2つの濾過材の層12,13を、周囲の締結用フレーム11内で組み合わせている。本発明はこの構成に限定されるものではないが、第1の層12は、図5に示す濾過材5のような平らな濾過材であってよい。第1の層12は、深層濾過または体積濾過により、流入するダストの一部を保持する。第2の層12は、図2に示す濾過材9のようなひだ付けされたタイプであってよい。ひだの数は、濾過材の厚さに応じて変更することができる。濾過モジュールの持続時間をさらに向上させるために、各層に使用される濾過材は、繊維が占める体積と濾過材全体が占める体積との間に特定の比を有している(以下では充填密度と称される)。充填密度は一定であるか、または空気流の方向に濾過材表面とともに層ごとに増大する。
【0039】
更なる実施形態によれば、更なる層を設けて、複数の層を有するエアフィルタが実現される。たとえば、第1の層12を、やはり図1に示すようなフラットな形態で形成することができ、次に、いくつかのひだを有する第2の層13を形成し、次いで、より多くのひだを有する第3の層を形成し、こうして、エアフィルタを通過する空気流21に対して、表面積が層ごとに増大するようになる。
【0040】
本発明の有利な実施形態は、以下のようにまとめることができる。
【0041】
本発明による空気濾過モジュールは、鉄道車両のエアコンディショナに使用することができ、最小で2つの濾過材の層12,13で構成される。これら層の各々は、空気流の方向21に沿って濾過材表面積が増大する異なる幾何学形状を有し、同じ充填密度または空気流の方向21に沿って層ごとに増大する充填密度を使用している。すべての濾過材の層は、締結用の外周フレーム11内に収容することができる。
【0042】
濾過モジュールのさらに別の実施形態によれば、濾過材の2つの層12,13による構成が存在し、第1の層の繊維は、ガラス繊維、合成繊維、または有機繊維と合成繊維との混合物から形成されており、第2の層の繊維は、ガラス繊維、合成繊維、有機繊維と合成繊維との混合物、またはセルロース繊維から形成されている。
【0043】
濾過モジュールのさらに別の実施形態によれば、第1の層12は低い充填密度(0.03未満)を有し、第2の層13はより高い充填密度(0.05超)を有する。
【0044】
濾過モジュールのさらに別の実施形態によれば、第2の層の表面積は第1の層の表面積の2倍よりも大きい。
【0045】
本明細書および図面は、単に本開示の原理を説明しているにすぎない。このため、当業者は、本明細書に明確に記載または図示されていない場合であっても、本開示の原理を実施しかつ本開示の範囲に含まれる様々な構成を構想することが可能であることを理解されたい。
【0046】
さらに、各実施形態が別々の実施例としてその実施形態自体で成り立っている場合であっても、他の実施形態では規定の特徴を別様に組み合わせることができることに留意されたい。すなわち、1つの実施形態に記載されている特定の特徴が、他の実施形態で実現されてもよい。そのような組合せは、特定の組合せが意図されていないことが述べられていない限り、本明細書に記載の本開示に包含される。
【符号の説明】
【0047】
1 空気調和システムの混合ゾーン
2,3,4 エアフィルタ
5,7 従来の濾過材
6 従来のフレーム
8 金属メッシュ
9 ひだ付けされた肉薄の濾過材
10,11 外周フレーム
12 第1の層
13 第2の層
14 エアフィルタの幅
15 エアフィルタの高さ
16 外周フレームの奥行き
17 第1の層の奥行き
18 第2の層の奥行き
19 フレームの前部
20 室外空気流
21 空気流の方向
22 締結要素
33 第2の層の濾過材の厚さ
40 室内空気流
50 鉄道車両
x ひだの先端部間の間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6