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特許7130862オフライン機器のためのサポートを伴うブロックチェーンベースの消耗品管理
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】オフライン機器のためのサポートを伴うブロックチェーンベースの消耗品管理
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/08 20120101AFI20220829BHJP
   G16H 20/10 20180101ALI20220829BHJP
【FI】
G06Q10/08 330
G16H20/10
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021517995
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 IB2019060145
(87)【国際公開番号】W WO2020109980
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】62/772,932
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504466373
【氏名又は名称】ライカ・バイオシステムズ・メルボルン・プロプライエタリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LEICA BIOSYSTEMS MELBOURNE PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オーランド スキーテ
(72)【発明者】
【氏名】ズビッジニュー ミオドゥスツェフスキー
【審査官】岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0096347(US,A1)
【文献】特表2012-520445(JP,A)
【文献】特開2012-211804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0332283(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を処理または染色するための装置であって、前記装置は、
前記組織を処理または染色する処理システムと、
少なくとも1つのハードウェアプロセッサと、
を含み、前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサは、
消耗品に関連する消耗品コードと前記処理システムを識別する機器コードとに基づいて生成された使用コードを、ブロックチェーンネットワークから取得し、
前記処理システムによる前記消耗品の使用を示す使用情報を前記ブロックチェーンネットワークに送信する、
ように構成されている、
装置。
【請求項2】
前記消耗品コードは、前記消耗品を一義的に識別し、前記消耗品の実行、試験または使用の回数に対応する、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記使用コードは、1つ以上の制限を示し、
前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサは、前記1つ以上の制限にしたがって前記消耗品の使用を制限するように構成されている、
請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記使用コードは、実行の回数を示し、
前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサは、前記実行の回数を超えないように前記消耗品の使用を制限するように構成されている、
請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記使用コードは、1種以上の実行についてのリコールを示し、
前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサは、前記消耗品の使用中、前記1種以上の実行を禁止するように構成されている、
請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記処理システムは、前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサに通信可能に接続された通信インタフェースを含み、前記通信インタフェースは、有線通信および/または無線通信を使用して、ブロックチェーンネットワークの少なくとも1つのノードから前記使用コードを取得し、前記少なくとも1つのノードに使用情報を送信する、
請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記使用コードを前記ブロックチェーンネットワークから取得することは、
前記ブロックチェーンネットワークから前記使用コードを受信するように構成されたユーザデバイスにより表示される、前記使用コードに基づく機械可読コードを、スキャンすることと、
前記機械可読コードから前記使用コードを復号することと、
を含む、
請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記使用情報を前記ブロックチェーンネットワークに送信することは、
前記消耗品の使用中、使用情報を記憶することと、
前記使用情報に基づいて機械可読コードを生成することと、
ユーザデバイスを介して前記ブロックチェーンネットワークに前記使用情報を通信するために、ディスプレイに前記機械可読コードを表示することと、
を含む、
請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサは、前記消耗品の使用前に、
秘密鍵を使用して前記使用コードからデータを復号することと、
復号されたデータの一貫性を検査することと、
により、前記使用コードを検証するようにさらに構成されている、
請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記消耗品は、試薬を含む、
請求項1記載の装置。
【請求項11】
組織を処理または染色するための方法であって、前記方法は、
消耗品に関連する消耗品コードと前記組織を処理または染色するように構成された処理システムを識別する機器コードとに基づいて生成された使用コードを、ブロックチェーンネットワークから取得することと、
前記処理システムによる前記消耗品の使用を示す使用情報を前記ブロックチェーンネットワークに送信することと、
を含む方法。
【請求項12】
前記使用コードを前記ブロックチェーンネットワークから取得することは、
前記ブロックチェーンネットワークから前記使用コードを受信するように構成されたユーザデバイスにより表示される、前記使用コードに基づく機械可読コードを、スキャンすることと、
前記機械可読コードから前記使用コードを復号することと、
を含む、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記使用情報を前記ブロックチェーンネットワークに送信することは、
前記消耗品の使用中、使用情報を記憶することと、
前記使用情報に基づいて機械可読コードを生成することと、
ユーザデバイスを介して前記ブロックチェーンネットワークに前記使用情報を通信するために、ディスプレイに前記機械可読コードを表示することと、
を含む、
請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、
秘密鍵を使用して前記使用コードからデータを復号することと、
復号されたデータの一貫性を検査することと、
前記復号されたデータの一貫性に基づいて、前記使用コードを検証することと、
をさらに含む、
請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、前記使用コードによって示される実行の回数にしたがって前記消耗品の使用を制限することをさらに含み、
前記消耗品コードは、前記消耗品が評価される実行の回数に関連付けられている、
請求項11記載の方法。
【請求項16】
命令を内部に記憶している非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記命令は、少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行される際に、前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサに、
消耗品に関連する消耗品コードと組織を処理または染色するように構成された処理システムを識別する機器コードとに基づいて生成された使用コードを、ブロックチェーンネットワークから取得することと、
前記処理システムによる前記消耗品の使用を示す使用情報を前記ブロックチェーンネットワークに送信することと、
を含む方法を実行させる、
非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記使用コードを前記ブロックチェーンネットワークから取得することは、
前記ブロックチェーンネットワークから前記使用コードを受信するように構成されたユーザデバイスにより表示される、前記使用コードに基づく機械可読コードを、スキャンすることと、
前記機械可読コードから前記使用コードを復号することと、
を含む、
請求項16記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記使用情報を前記ブロックチェーンネットワークに送信することは、
前記消耗品の使用中、使用情報を記憶することと、
前記使用情報に基づいて機械可読コードを生成することと、
ユーザデバイスを介して前記ブロックチェーンネットワークに前記使用情報を通信するために、ディスプレイに前記機械可読コードを表示することと、
を含む、
請求項16記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記方法は、
秘密鍵を使用して前記使用コードからデータを復号することと、
復号されたデータの一貫性を検査することと、
前記復号されたデータの一貫性に基づいて、前記使用コードを検証することと、
をさらに含む、
請求項16記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記方法は、前記使用コードによって示される実行の回数にしたがって前記消耗品の使用を制限することをさらに含み、
前記消耗品コードは、前記消耗品が評価される実行の回数に関連付けられている、
請求項16記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術の相互参照
本願は、2018年11月29日に出願された米国仮特許出願第62/772932号の優先権を主張する。この出願は、参照により、完全に記載されているのと同様に本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
発明の分野
本明細書に記載する各実施形態は、一般的には消耗品管理に関し、より具体的には、オフライン機器における消耗品の使用をサポートするブロックチェーンベースの消耗品管理に関する。
【背景技術】
【0003】
ブロックチェーン技術は、資産管理の面において有望なツールである。具体的には、修正抵抗性を有する(すなわち、ブロックチェーンとして実現されている)台帳の使用により、実際に、資産の正確かつ不変の追跡が保証される。
【0004】
このような追跡は、Leica Biosystems(商標)により提供される試薬等の消耗品の追跡に特に有用である。典型的には、製造メーカは、高価な機器(例えば、組織処理システム、染色機等)を低コストでまたはコストなしに顧客(例えば、医療専門家)に販売またはリースし、機器での使用のために、消耗品、例えば、個々の試薬、試薬キット(例えば、固定された数および/または比率で個々の試薬のセットを利用する)、バルク試薬等を顧客に販売することにより、機器のコストを回収する。このため、このような製造メーカにとって、自社の機器とともに自社の消耗品のみが使用されることを保証できれば有益なはずである。
【0005】
加えて、特定の消耗品は、政府により規制される場合がある。例えば、米国では、特定の消耗品が食品医薬品局(FDA)により規制されている。例えば、がん診断に利用される試薬は、クラスIII試薬として分類されており、FDAにより厳しく規制されている。このような厳しい規制の理由は、人間の生命が、文字通り、診断に使用される試薬の品質に依存しているためである。このため、安全上の理由で、製造メーカが、欠陥消耗品のリコールをより良好に管理し、偽造消耗品の使用を防止することができれば、これも有益なはずである。
【0006】
しかしながら、医療環境は、資産追跡に対する固有のプライバシー問題を提示する。具体的には、このような消耗品を利用する機器の多くは、例えば、医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(HIPAA)により管理される、個人識別可能な健康情報を処理している。この理由で、こうした機器は、ネットワークベースのサイバー攻撃または他の悪用からこのような情報を保護するために、オフラインで維持されることが多い。この場合、「オフライン」とは、必ずしも機器がネットワークに全く接続されていないことを意味するのではなく、ブロックチェーンベースの資産管理に必要なトランザクションを処理するブロックチェーンネットワークに(一時的にまたは持続的に)接続されていないことを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、オフライン機器のためのサポートを伴うブロックチェーンベースの消耗品管理のためのシステム、方法、および非一時的なコンピュータ可読媒体を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、ユーザデバイスの少なくとも1つのハードウェアプロセッサを使用して、消耗品上の第1の機械可読コードをスキャンし、ブロックチェーンネットワークに通信可能に接続されていない機器のディスプレイに表示されている第2の機械可読コードをスキャンし、消耗品コードを、第1の機械可読コードから復号し、機器コードを、第2の機械可読コードから復号し、消耗品コードおよび機器コードを含むトランザクションメッセージを、ブロックチェーンネットワークに一斉送信し、使用コードを、ブロックチェーンネットワークから受信し、使用コードを、第3の機械可読コードに暗号化し、第3の機械可読コードを、機器によるスキャンのために、ユーザデバイスのディスプレイに表示することを含む、方法が開示される。
【0009】
一実施形態では、この方法は、機器の少なくとも1つのハードウェアプロセッサを使用して、ユーザデバイスのディスプレイに表示されている第3の機械可読コードをスキャンし、使用コードを第3の機械可読コードから復号し、使用コードを検証し、1回以上の実行のために消耗品を利用し、1回以上の実行についての使用情報を、機器のメモリに記憶し、その後、機器コードおよび記憶された使用情報を暗号化する第4の機械可読コードを生成し、第4の機械可読コードを、ユーザデバイスによるスキャンのために、機器のディスプレイに表示することをさらに含む。この方法は、ユーザデバイスの少なくとも1つのハードウェアプロセッサを使用して、機器のディスプレイに表示されている第4の機械可読コードをスキャンし、使用情報を、第4の機械可読コードから復号し、消耗品コードおよび使用情報を含む1つ以上のトランザクションメッセージを、ブロックチェーンネットワークに一斉送信することをさらに含むことができる。この方法は、ブロックチェーンネットワークの複数のノードのそれぞれで実行されるソフトウェアを提供することをさらに含むことができ、ソフトウェアは、ノードの少なくとも1つのハードウェアプロセッサにより実行される際に、1つ以上のトランザクションメッセージを、ユーザデバイスから受信し、消耗品コードを使用情報に関連付ける使用トランザクションを、ブロックチェーンネットワークにより管理されるブロックチェーン内のブロックに追加する。使用コードは、1つ以上の制限を示す場合がある、この場合、この方法は、機器の少なくとも1つのハードウェアプロセッサを使用して、1つ以上の制限にしたがって、消耗品の利用を制限することをさらに含む。1つ以上の制限は、実行の回数を含む場合がある。この場合、消耗品の利用を制限することは、1つ以上の制限における実行の回数を超えないように、1回以上の実行を制限することを含む。1つ以上の制限は、1種以上の実行についてのリコールを含む場合がある。消耗品の利用を制限することは、1種以上の実行を禁止することを含む。1種以上の実行は、ある種の試験を含む。
【0010】
一実施形態では、この方法は、ブロックチェーンネットワークの複数のノードのそれぞれで実行されるソフトウェアを提供することをさらに含み、ソフトウェアは、ノードの少なくとも1つのハードウェアプロセッサにより実行される際に、トランザクションメッセージを、ユーザデバイスから受信し、トランザクションメッセージを検証し、トランザクションメッセージが検証されると、トランザクションを、ブロックチェーンネットワークにより管理されるブロックチェーン内のブロックに追加し、トランザクションに基づいて、使用コードを生成し、使用コードを、ユーザデバイスに送信する。トランザクションは、消耗品コードを機器コードに関連付けることができる。トランザクションメッセージを検証することは、消耗品コードが有効であるか否かを検証することを含むことができる。消耗品コードが有効であることを検証することは、消耗品コードが有効な製造メーカにより作成されたことを示す発信トランザクションについて、ブロックチェーンを検索することと、発信トランザクションが特定されると、消耗品コードが有効であることを検証することとを含むことができる。トランザクションメッセージを検証することは、消耗品コードが所定量の暗号通貨に関連付けられていることを検証することを含むことができる。トランザクションメッセージを検証することは、ユーザデバイスのオペレータに関連付けられた電子ウォレットが所定量の暗号通貨を含むことを検証することを含むことができる。
【0011】
一実施形態では、消耗品は、試薬を含む。消耗品は、試薬キットを含むことができる。機器は、組織処理システムを含むことができる。
【0012】
一実施形態では、この方法は、機器の少なくとも1つのハードウェアプロセッサを使用して、機器がブロックチェーンネットワークに通信可能に接続されているか否かを検出し、機器が前記ブロックチェーンネットワークに通信可能に接続されていることが検出されると、消耗品上の機械可読コードをスキャンすることと、消耗品コードを、その機械可読コードから復号することと、消耗品コードおよび機器コードを含むトランザクションメッセージを、ブロックチェーンネットワークに一斉送信することと、使用コードを受信することと、使用コードを検証することと、消耗品を1回以上の実行のために利用することと、1回以上の実行についての使用情報を含むトランザクションメッセージを、ブロックチェーンネットワークに一斉送信することとを含むオンライン処理を実行し、機器がブロックチェーンネットワークに通信可能に接続されていないことが検出されると、ユーザデバイスのディスプレイに表示されている機械可読コードをスキャンすることと、使用コードをその機械可読コードから復号することと、使用コードを検証することと、消耗品を1回以上の実行のために利用することと、1回以上の実行についての使用情報を、ブロックチェーンネットワークによる将来の記録のために、機器のメモリに記憶することと、を含むオフライン処理を実行することをさらに含む。
【0013】
一実施形態では、この方法は、ブロックチェーンネットワークの複数のノードのそれぞれで実行されるソフトウェアを提供することをさらに含み、ソフトウェアは、ノードの少なくとも1つのハードウェアプロセッサにより実行される際に、それぞれがサプライチェーン内のウェイポイントでの第1の機械可読コードのスキャンを表す複数のトランザクションメッセージを受信し、複数のトランザクションメッセージのそれぞれについて、それぞれ消耗品コードを時間および位置に関連付けるトランザクションを、ブロックチェーンネットワークにより管理されるブロックチェーン内のブロックに追加する。各トランザクションは、さらに、消耗品コードを温度に関連付けることができる。
【0014】
これらの方法はいずれも、プロセッサベースのシステム、例えば、サーバの実行可能なソフトウェアモジュールおよび/または非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶された実行可能命令において実施可能である。
【0015】
本発明の詳細は、その構造および動作の両方に関して、添付の図面を検討することにより部分的に収集することができ、添付の図面では、同じ参照符号は同じ部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係る本明細書に記載された1つ以上の方法が実装されうる、例示的なインフラストラクチャを示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る本明細書に記載された1つ以上の方法が実行されうる、例示的な処理システムを示すブロック図である。
図3】一実施形態に係るブロックチェーンベースの消耗品追跡のための方法を示すフローチャートである。
図4】一実施形態に係るオフライン機器上の消耗品追跡のための方法を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一実施形態では、オフライン機器のためのサポートを伴うブロックチェーンベースの消耗品管理のためのシステム、方法および非一時的なコンピュータ可読媒体を開示する。開示する実施形態は、主に試薬(例えば、試薬キットまたは容器)に関連して本明細書において説明するが、任意の種類の消耗品について使用することができる。
【0018】
この説明を読んだ後、当業者には、種々の代替的な実施形態および代替用途において、本発明をどのように実施するかが明らかになるであろう。なお、本発明の種々の実施形態を本明細書において説明するが、これらの実施形態は、限定ではなく、単に例示および例証として提示されると理解される。したがって、種々の実施形態の詳細な説明は、添付の特許請求の範囲に記載する本発明の範囲または幅を限定するものと解釈されるべきではない。
【0019】
1.システム概要
1.1.インフラストラクチャ
図1に、実施形態に係るオフライン機器のためのサポートを伴うブロックチェーンベースの消耗品管理のための例示的なシステムを示す。消耗品管理の基幹は、ブロックチェーンネットワーク100である。ブロックチェーンネットワーク100は、ピア-ツー-ピアネットワーク内のノードとして接続されている複数のシステム110を備えることができる。システム110は、インターネットを含む任意の有線または無線、パブリックまたはプライベートの1つ以上のネットワークを介して接続することができ、任意の標準または専有の通信プロトコルを介して通信することができる。システム110は、消耗品の製造メーカ、その顧客(すなわち、消耗品の購入者)および/または第三者のネットワーク化されたコンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ、サーバなど)を備えることができる。一実施形態では、ブロックチェーンネットワーク100は、オープンソース技術、例えば、IBM(商標)によるHyperledger Fabric(商標)を使用して実装することができる。
【0020】
ブロックチェーンネットワーク100内の各ノード(すなわち、システム110)は、ブロックチェーン120の完全なコピーを含む。ブロックチェーン120は、ブロックチェーンネットワーク100により管理されている消耗品を含む全てのトランザクションの公開元帳を表す。これらのトランザクションは、消耗品の購入、出荷された消耗品の出荷ウェイポイント(例えば、発送、中間、宛先スキャン等)、各消耗品の部分的または完全な消費、消耗品のリコール、当事者および/または機器に対する消耗品の登録および登録解除等を含むことができる。各トランザクションは、1つ以上の当事者、位置(例えば、スキャンの位置またはトランザクションが生成された他のイベント)および時間(例えば、スキャンの日時を表すタイムスタンプまたはトランザクションが生成される他のイベント)を識別することができる。
【0021】
当技術分野において周知であるように、ブロックチェーン120は、修正抵抗性を有するオープンな分散型台帳である。具体的には、ブロックチェーン120は、暗号を使用してともに連鎖され、時間順に配置された複数のブロックを含む。トランザクションが作成されると、有効なトランザクションのバッチが、ブロックチェーン120に追加された最新のブロックの暗号ハッシュとともに新しいブロックにパッケージされる。ついで、新しいブロックの暗号ハッシュが生成され、その暗号ハッシュを有する新しいブロックが、ブロックチェーン120に追加される。理論的には、ブロックチェーン120を変更することができる。ただし、ブロックは、その暗号ハッシュを介してともに連鎖されているため、ブロックチェーン120を変更するには、ブロックチェーン120全体を再計算する必要があるため、このような取り組みは計算の点で非現実的である。
【0022】
ブロックチェーンネットワーク100内では、各ノード(すなわち、システム110)は、トランザクションを検証し、新しいブロックを生成し、生成されたブロックを他のノードに一斉送信することができる。複数のノードが、新しいブロックを生成し、一斉送信することができるため、ブロックチェーン120に追加されるべき次のブロックを選択するために、コンセンサス法が使用される。例えば、プルーフ-オブ-ワーク法を使用するブロックチェーンでは、異なるバージョンのブロックチェーン120を有する異なるノードで一時的なフォークが生じる場合があるが、最終的には、最も累積的なプルーフ-オブ-ワークを有するチェーンが勝つことになる。一実施形態では、ブロックチェーンネットワーク100は、プルーフ-オブ-ステーク法を利用する。この方法では、ブロックチェーン120内のノードのステーク(例えば、資産および/または年齢)に基づいて、ブロックチェーン120内の次の有効なブロックを生成するために、ノードが選択される。プルーフ-オブ-ステーク法は、ブロックチェーン120の完全性におけるステークを有することを保証することにより、悪意のある行為者を防止する。
【0023】
一般的には、ブロックチェーン120はオープンであり、ブロックチェーン120のコピーを記憶しているシステム110にアクセスする者は誰でも見ることができる。ただし、各トランザクションの当事者は匿名であることができる。一実施形態では、特定のユーザがブロックチェーン120上の当該ユーザに関連する全てのトランザクション(例えば、当該ユーザの電子「ウォレット」アドレスまたは他の識別子を含む全てのトランザクション)を、簡便な許可ベースのグラフィカルユーザインタフェースにおいて、閲覧、検索および何らかの方法での編成または管理が可能となるソフトウェアを(例えば、クライアントアプリ132内に)提供することができる。このため、顧客の消耗品についての全ての製造および物流情報が顧客に可視となり、顧客は、(例えば、ブロックチェーン120に記録された登録トランザクションにより顧客に登録された)顧客の在庫内の全ての消耗品の状態を検査することができる。また、ブロックチェーン120は、規制のもとで有効なシステムを提供するために、(例えば、米国食品医薬品局(FDA)に提供される)顧客による試薬の有効な使用の証拠としても使用することができる。
【0024】
ユーザデバイス130は、有線または無線、パブリックまたはプライベートの1つ以上のネットワーク(インターネットを含む)を介して、ブロックチェーンネットワーク100と通信する。ユーザデバイス130は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォンまたは他の携帯電話、サーバ、ゲームコンソール、TV、セットトップボックス、電子キオスク、POS端末等を含む(がこれらに限定されない)、有線および/または無線通信が可能な任意の1種以上のコンピュータデバイスを含むことができる。ただし、好ましい実施形態では、ユーザデバイス130は、無線ネットワーク(例えば、携帯電話および/またはWi-Fi(商標)ネットワーク)を介して通信する無線デバイス(例えば、スマートフォンまたはタブレット)を含み、カメラまたは機械可読コードを読み取り可能な他のデバイス(例えば、ワンドに収容されたレーザスキャナ)を備える。各ユーザデバイス130は、本明細書に説明された機能のうちの1つ以上を実装するクライアントアプリ132を記憶し、実行することができる。
【0025】
機器140は、本明細書に記載された消耗品(例えば、バルク試薬を含む試薬)を消費する。例えば、機器140は、Leica Biosystems(商標)により提供される組織処理システムおよび/または染色システムを含むことができる。例として、機器140は、Leica Biosystems(商標)製のBOND-III完全自動化IHCおよびISH染色機を含むことができ、消耗品は、DS9800 Bond Polymer Refine Detection Kit、DS9390 Bond Polymer Refine Red Detection Kit、DS9477 ChromoPlex 1 Dual Detection for BOND Kit、AR0833 3.75mL Bond Anti-Fluorescein Ab Bond ready-to-use Reagent、AR9222 Bond Dewax Solution Bond ready-to-use Reagent、AR9432 Bond DAB Enhancer 30mL Bond ready-to-use Reagent、AR0222 15mL Bond Anti-Fluorescein Ab Bond ready-to-use Reagent、AR0633 3.75mL Stringency Wash Solution Bond ready-to-use Reagent、AR9013 100mL Hybridization Solution Bond ready-to-use Reagent、AR0584 7.5mL Anti-Biotin Antibody Bond ready-to-use Reagent、AR9551 Bond Enzyme Pretreatment Kit、AR9590 Bond TM Wash Solution 10× Concentrate 1L Reagent、AR9352 Bond TM Primary Antibody Diluent 0.5L Reagent、AR9640 Bond TM Epitope Retrieval 2-1L Reagent、および/またはAR9961 Bond TM Epitope Retrieval 1-1L Reagentを含むことができる。プライバシーまたは他の理由のために、一部の機器、例えば、機器140Aおよび140Cは、ブロックチェーンネットワーク100と通信することができないようにオフラインとすることができる。他の機器、例えば、機器140Bおよび140Dは、有線または無線、パブリックまたはプライベートの1つ以上のネットワーク(インターネットを含む)を介して、ブロックチェーンネットワーク100と通信することができるようにオンラインとすることができる。いずれの場合も、各機器140は、オンラインであるかまたはオフラインであるかに応じて、別個のプロセスを含む、本明細書に記載された機能のうちの1つ以上を実装するソフトウェア142を記憶し、実行することができる。
【0026】
一実施形態では、ブロックチェーン120は、本明細書において、「kitcoin」と呼ばれる、ビットコインと同様の暗号通貨を利用する。kitcoinは、当事者の電子ウォレット間で転送することができる。一実施形態では、ブロックチェーンネットワーク100に計算リソースを貸すインセンティブを当事者に提供するために、kitcoinをマイニングすることもできる。加えて、kitcoinは、消耗品が消費されるのにつれて消費されうる(例えば、顧客から製造メーカに転送される)。例えば、特定量のkitcoinを、消耗品の各使用(例えば、試薬または試薬キットの各試験または他の実行)に関連付けることができる。顧客が消耗品を使用すると、適切な量のkitcoin(すなわち、使用量を表す)を、顧客の電子ウォレットから製造メーカの電子ウォレットに転送することができる。本明細書で使用する場合、「kitcoinの量」、「kitcoinの数」または1つ以上のkitcoinへの任意の他の言及は、単数であるかまたは複数であるかに関わらず、複数のkitcoinまたは1kitcoinの端数を指すことができる。
【0027】
一実施形態では、各消耗品コードを、最初に、ある量のkitcoinに関連付けることができる。消耗品コードに関連付けられたkitcoinは、関連付けられた消耗品が評価される使用の回数(例えば、実行、投与、試験等)に対応させることができる。例えば、1kitcoinが1000回の使用に関連付けられ、特定の消耗品(例えば、試薬キット)が1000回の試験で評価される場合、当該消耗品は1kitcoinに関連付けられるであろう。同様に、3000回の試験で評価される特定の消耗品は3kitcoinに関連付けられ、500回の試験で評価される特定の消耗品は0.5kitcoinに関連付けられるであろう。消耗品コードに関連付けられた全てのkitcoinが使い尽くされると(すなわち、関連付けられたkitcoinの量がゼロになると)、ブロックチェーンネットワーク100は、当該消耗品コードに関連するあらゆる新しいトランザクションを防止することができる。一実施形態では、使い尽くされた消耗品コードについて新しいトランザクションを作成することができないため、消耗品はもはや登録することができず、いずれの機器140によっても使用することができない。これにより、顧客または第三者が空の消耗品容器に偽造消耗品を再充填してこれらの偽造消耗品を使用しまたは再販売することが防止される。
【0028】
1.2.例示的な処理デバイス
図2は、本明細書に記載された種々の実施形態に関連して使用することができる例示的な有線または無線システム200を示すブロック図である。例えば、システム200は、(例えば、クライアントアプリ132および/もしくはソフトウェア142またはクライアントアプリ132および/もしくはソフトウェア142の1つ以上のモジュールを記憶しかつ/または実行するために)本明細書に記載された機能、プロセスまたは方法のうちの1つ以上としてまたはこれと併せて使用することができ、プラットフォーム110、ユーザデバイス130、機器140および/または本明細書に記載された他の処理デバイスのコンポーネントを表すことができる。システム200は、サーバもしくは従来のパーソナルコンピュータ、または有線もしくは無線データ通信を可能な任意の他のプロセッサ対応デバイスであることができる。当業者に明らかであろうように、他のコンピュータシステムおよび/またはアーキテクチャも使用することができる。
【0029】
システム200は、好ましくは、1つ以上のプロセッサ、例えばプロセッサ210を備える。さらなるプロセッサ、例えば、入力/出力を管理するための補助プロセッサ、浮動小数点数学演算を実行するための補助プロセッサ、信号処理アルゴリズムの高速実行に適したアーキテクチャを有する専用マイクロプロセッサ(例えば、デジタル信号プロセッサ)、メイン処理システムに従属するスレーブプロセッサ(例えば、バックエンドプロセッサ)、デュアルもしくはマルチプロセッサシステムのための追加のマイクロプロセッサまたはコントローラおよび/またはコプロセッサを設けることができる。このような補助プロセッサは、個別のプロセッサであってもよいし、またはプロセッサ210と統合されていてもよい。システム200に使用することができるプロセッサの例は、Pentium(登録商標)プロセッサ、Core i7(登録商標)プロセッサおよびXeon(登録商標)プロセッサを含み、これらは全て、カリフォルニア州サンタクララ在のIntel Corporationから入手可能であるが、これらに限定されない。
【0030】
プロセッサ210は、好ましくは、通信バス205に接続されている。通信バス205は、システム200の記憶装置と他の周辺コンポーネントとの間の情報転送を容易にするためのデータチャネルを備えることができる。さらに、通信バス205は、データバス、アドレスバスおよび/または制御バス(図示せず)を含む、プロセッサ210との通信に使用される信号のセットを提供することができる。通信バス205は、例えば、任意の標準または非標準のバスアーキテクチャ、例えば、工業規格アーキテクチャ(ISA)、拡張工業規格アーキテクチャ(EISA)、マイクロチャネルアーキテクチャ(MCA)、周辺コンポーネント相互接続(PCI)ローカルバス、IEEE 488汎用インタフェースバス(GPIB)、IEEE 696/S-100等を含むアメリカ電気電子工学会(IEEE)により公表された規格等に準拠したバスアーキテクチャを備えることができる。
【0031】
システム200は、好ましくは、メインメモリ215を含み、2次メモリ220も含むことができる。メインメモリ215は、本明細書で検討された1つ以上の機能および/またはモジュール等のプロセッサ210上で実行するプログラムのための命令およびデータの記憶を提供する。メモリに記憶され、プロセッサ210により実行されるプログラムは、C/C++、Java、JavaScript、Perl、Visual Basic、NET等を含むがこれらに限定されない、任意の適切な言語にしたがって記述しかつ/またはコンパイルすることができると理解されたい。メインメモリ215は、典型的には、半導体系メモリ、例えばダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)および/またはスタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)である。他の種類の半導体系メモリは、例えば、同期ダイナミックランダムアクセスメモリ(SDRAM)、ラムバスダイナミックランダムアクセスメモリ(RDRAM)、強誘電体ランダムアクセスメモリ(FRAM)等を含み、読み出し専用メモリ(ROM)を含む。
【0032】
2次メモリ220は、場合により、内部媒体225および/またはリムーバブル媒体230を含むことができる。リムーバブル媒体230は、任意の周知の方法で読み出されかつ/または書き込まれる。リムーバブル記憶媒体230は、例えば、磁気テープドライブ、コンパクトディスク(CD)ドライブ、デジタル多用途ディスク(DVD)ドライブ、他の光学ドライブ、フラッシュメモリドライブ等であってよい。
【0033】
2次メモリ220は、コンピュータ実行可能コード(例えば、開示しているソフトウェアモジュール)および/またはこれに記憶された他のデータを有する、非一時的なコンピュータ可読媒体である。2次メモリ220に記憶されたコンピュータソフトウェアまたはデータは、プロセッサ210による実行のためにメインメモリ215に読み込まれる。
【0034】
代替的な実施形態では、2次メモリ220は、コンピュータプログラムまたは他のデータもしくは命令がシステム200にロードされることを可能にするための他の同様の手段を含むことができる。このような手段は、例えば、通信インタフェース240を含むことができる。通信インタフェース240により、ソフトウェアおよびデータを外部記憶媒体245からシステム200へ転送することができる。外部記憶媒体245の例は、外部ハードディスクドライブ、外部光学ドライブ、外部光磁気ドライブ等を含むことができる。2次メモリ220の他の例は、半導体系メモリ、例えば、プログラマブル読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能な読み出し専用メモリ(EEPROM)およびフラッシュメモリ(EEPROMと同様のブロック指向メモリ)を含むことができる。
【0035】
上で言及したように、システム200は、通信インタフェース240を含むことができる。通信インタフェース240により、システム200と外部装置(例えば、プリンタ)、ネットワークまたは他の情報ソースとの間で、ソフトウェアおよびデータの転送が可能となる。例えば、コンピュータソフトウェアまたは実行可能コードを、通信インタフェース240を介して、ネットワークサーバ(例えば、プラットフォーム110)からシステム200へ転送することができる。通信インタフェース240の例は、内蔵ネットワークアダプタ、ネットワークインタフェースカード(NIC)、パーソナルコンピュータメモリカードインターナショナルアソシエーション(PCMCIA)ネットワークカード、カードバスネットワークアダプタ、無線ネットワークアダプタ、ユニバーサルシリアルバス(USB)ネットワークアダプタ、モデム、無線データカード、通信ポート、赤外線インタフェース、IEEE 1394 fire-wireおよびネットワーク(例えば、ネットワーク120)または別のコンピュータデバイスとシステム200をインタフェース可能な他の任意のデバイスを含む。通信インタフェース240は、好ましくは、業界標準のプロトコル規格、例えば、イーサネットIEEE 802規格、ファイバチャネル、デジタル加入者線(DSL)、非同期デジタル加入者線(ADSL)、フレームリレー、非同期転送モード(ATM)、統合デジタルサービスネットワーク(ISDN)、パーソナル通信サービス(PCS)、伝送制御プロトコル/インターネットプロトコル(TCP/IP)、シリアル回線インターネットプロトコル/ポイントツーポイントプロトコル(SLIP/PPP)等を実装するが、専用または非標準のインタフェースプロトコルも実装することができる。
【0036】
通信インタフェース240を介して転送されるソフトウェアおよびデータは、一般的には、電気通信信号255の形態にある。これらの信号255を、通信チャネル250を介して通信インタフェース240に提供することができる。一実施形態では、通信チャネル250は、有線もしくは無線ネットワーク(例えば、ネットワーク120)または任意の各種の他の通信リンクであることができる。通信チャネル250は、信号255を搬送し、各種の有線または無線通信手段を使用して実装することができる。この手段は、幾つか例を挙げると、ワイヤもしくはケーブル、光ファイバ、従来の電話回線、携帯電話リンク、無線データ通信リンク、無線周波数(「RF」)リンクまたは赤外線リンクを含む。
【0037】
コンピュータ実行可能コード(例えば、コンピュータプログラム、例えば、開示しているアプリケーションまたはソフトウェアモジュール)は、メインメモリ215および/または2次メモリ220に記憶されている。コンピュータプログラムを、通信インタフェース240を介して受信し、メインメモリ215および/または2次メモリ220に記憶することもできる。このようなコンピュータプログラムは、実行される際に、システム200が本明細書の他の箇所で説明する本開示の実施形態の種々の機能を実行することを可能にする。
【0038】
ここでの説明では、「コンピュータ可読媒体」という用語は、コンピュータ実行可能コードおよび/または他のデータをシステム200またはその内部に提供するのに使用される任意の非一時的コンピュータ可読記憶媒体を指すのに使用される。このような媒体の例は、メインメモリ215、2次メモリ220(内部メモリ225、リムーバブル媒体230および外部記憶媒体245を含む)および通信インタフェース240と通信可能に結合された任意の周辺デバイス(ネットワーク情報サーバまたは他のネットワークデバイスを含む)を含む。これらの非一時的なコンピュータ可読媒体は、実行可能コード、プログラミング命令、ソフトウェアおよび/または他のデータをシステム200に提供するための手段である。
【0039】
ソフトウェアを使用して実現される実施形態では、ソフトウェアは、コンピュータ可読媒体に記憶可能であり、リムーバブル媒体230、I/Oインタフェース235または通信インタフェース240を介してシステム200にロード可能である。このような実施形態では、ソフトウェアは、電気通信信号255の形態でシステム200にロードされる。ソフトウェアは、プロセッサ210により実行される際に、好ましくは、プロセッサ210に、本明細書の他の箇所に記載された1つ以上のプロセスおよび機能を実行させる。
【0040】
一実施形態では、I/Oインタフェース235は、システム200の1つ以上のコンポーネントと1つ以上の入力デバイスおよび/または出力デバイスとの間のインタフェースを提供する。例示的な入力デバイスは、センサ、キーボード、タッチスクリーンまたは他のタッチ感応デバイス、バイオメトリック感応デバイス、コンピュータマウス、トラックボール、ペンベースのポインティングデバイス等を含むが、これらに限定されない。出力デバイスの例は、他の処理デバイス、陰極線管(CRT)、プラズマディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、プリンタ、真空蛍光ディスプレイ(VFD)、表面伝導電子エミッタディスプレイ(SED)、電界放出ディスプレイ(FED)等を含むが、これらに限定されない。場合によっては、(例えば、スマートフォン、タブレットまたは他のモバイルデバイスにおける)タッチパネルディスプレイの場合のように、入出力デバイスを組み合わせることができる。
【0041】
システム200は、音声ネットワークおよび/またはデータネットワーク(例えば、ユーザシステム130の場合)を介した無線通信を容易にする任意の無線通信コンポーネントも含むことができる。無線通信コンポーネントは、アンテナシステム270、無線システム265およびベースバンドシステム260を備える。システム200では、無線周波数(RF)信号が、無線システム265の管理のもとでアンテナシステム270により空中で送受信される。
【0042】
一実施形態では、アンテナシステム270は、1つ以上のアンテナと、アンテナシステム270に送信信号経路および受信信号経路を提供するスイッチング機能を実行する1つ以上のマルチプレクサ(図示せず)と、を備えることができる。受信経路では、受信したRF信号は、マルチプレクサから低ノイズ増幅器(図示せず)に結合可能である。当該増幅器は、受信したRF信号を増幅し、増幅された信号を無線システム265に送信する。
【0043】
代替的な実施形態では、無線システム265は、種々の周波数で通信するように構成されている1つ以上の無線装置を備えることができる。一実施形態では、無線システム265は、復調器(図示せず)と変調器(図示せず)とを1つの集積回路(IC)に組み合わせることができる。また、復調器と変調器とは別個のコンポーネントであってもよい。着信経路では、復調器は、ベースバンド受信音声信号を残してRF搬送波信号をストリップする。ベースバンド受信音声信号は、無線システム265からベースバンドシステム260に送信される。
【0044】
受信した信号が音声情報を含む場合、ベースバンドシステム260は、信号を復号し、これをアナログ信号に変換する。ついで、信号が増幅され、スピーカに送信される。また、ベースバンドシステム260は、アナログ音声信号をマイクロホンからも受信する。これらのアナログ音声信号は、デジタル信号に変換され、ベースバンドシステム260により暗号化される。また、ベースバンドシステム260は、送信のためにデジタル信号を暗号化し、無線システム265の変調器部分にルーティングされるベースバンド送信音声信号を生成する。変調器は、ベースバンド送信音声信号をRF搬送波信号と混合して、RF送信信号を生成する。この信号は、アンテナシステム270にルーティングされ、出力増幅器(図示せず)を通過することができる。出力増幅器は、RF送信信号を増幅してアンテナシステム270にルーティングし、そこで、信号は、送信のためにアンテナポートにスイッチングされる。
【0045】
また、ベースバンドシステム260は、中央処理装置(CPU)であってよいプロセッサ210とも通信可能に結合されている。プロセッサ210は、データ記憶領域215および220へのアクセスを有する。プロセッサ210は、好ましくは、メインメモリ215または2次メモリ220に記憶可能な命令(すなわち、コンピュータプログラム、例えば、開示されたアプリケーションまたはソフトウェアモジュール)を実行するように構成されている。また、コンピュータプログラムを、ベースバンドプロセッサ260から受信し、メインメモリ215もしくは2次メモリ220に記憶しまたは受信時に実行することもできる。このようなコンピュータプログラムは、実行される際に、システム200が開示している実施形態の種々の機能を実行することを可能にする。
【0046】
2.方法の概要
ここから、オフライン機器のためのサポートを伴うブロックチェーンベースの消耗品管理のための方法の実施形態を詳細に説明する。説明する方法は、例えば、本明細書で検討されたソフトウェアアプリケーション(例えば、クライアントアプリ132および/またはソフトウェア142)として、1つ以上のハードウェアプロセッサ(例えば、プロセッサ210)により実行される1つ以上のソフトウェアモジュールで実施することができると理解されたい。説明する方法は、ソースコード、オブジェクトコードおよび/またはマシンコードで表される命令として実装することができる。これらの命令は、ハードウェアプロセッサにより直接に実行することができ、または代替的にオブジェクトコードとハードウェアプロセッサとの間で動作する仮想マシンにより実行することができる。加えて、開示しているアプリケーションは、1つ以上の既存のシステム上に構築することができ、または当該システムとのインタフェースを形成することができる。
【0047】
代替的に、説明する方法は、ハードウェアコンポーネント(例えば、汎用プロセッサ、集積回路(IC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他のプログラマブル論理デバイス、ディスクリートゲートまたはトランジスタロジック等)、ハードウェアコンポーネントの組み合わせまたはハードウェアコンポーネントとソフトウェアコンポーネントとの組み合わせとして実装することができる。ハードウェアとソフトウェアとの互換性を明確に示すために、種々の例示的なコンポーネント、ブロック、モジュール、回路およびステップが、その機能に関して、本明細書において一般的に記載される。このような機能をハードウェアまたはソフトウェアとして実装するか否かは、特定の適用およびシステム全体に課される設計上の制約により決まる。当業者であれば、それぞれの特定の用途について、種々の方法で記載された機能を実装することができるが、このような実装の決定は、本発明の範囲からの逸脱とは解釈されるべきではない。加えて、コンポーネント、ブロック、モジュール、回路またはステップ内の機能のグループ化は、説明を容易にするためのものである。特定の機能またはステップは、本発明から逸脱することなく、1つのコンポーネント、ブロック、モジュール、回路またはステップから別のこれらへ移行させることができる。
【0048】
2.1.消耗品追跡
図3は、実施形態に係るブロックチェーンベースの消耗品追跡のための方法300を示すフローチャートである。方法300は、ステップの特定の配置および順序で示されているが、より少ない、より多いまたは異なるステップおよびステップの異なる配置および/もしくは順序で実施することができる。
【0049】
ステップ310において、消耗品(例えば、試薬または試薬キット)が製造された後、固有の消耗品コードが、製造された消耗品に適用される。偽造および不適切な使用を防止するクローズドシステムを保証するために、2つの異なる消耗品は、同じ消耗品コードをけっして有してはならない。各消耗品コードは、関連付けられた消耗品の容器に表示される機械可読コード、例えばバーコードまたはクイックレスポンス(QR)コードとして暗号化することができる。基礎となる消耗品コードが固有であるため、各消耗品についての機械可読コードも固有となり、これにより、同じ機械可読コードに関連付けられる消耗品が存在しなくなることを理解されたい。
【0050】
試薬に関して、その固有の消耗品コードを暗号化する機械可読コードは、試薬容器に貼付されるラベルに印刷することができ、または試薬容器に直接に印刷することができる。試薬のための機械可読コードは、ロット番号、試薬の種類、容量等を暗号化することができ、使用中に機器140により読み取り可能とすることができる(または容器は、2つの機械可読コードを含むことができ、そのうちの一方は、ユーザデバイス130によりスキャンすることができ、そのうちの他方は、使用中に機器140によりスキャンすることができる)。
【0051】
複数の試薬容器を含む試薬キットに関して、キットの固有の消耗品コードを暗号化する機械可読コードは、キットキャリアに貼付されたラベル上に印刷することができまたはキットキャリア上に直接に印刷することができる。試薬キットのための機械可読コードは、試薬キット内の試薬容器のそれぞれのための機械可読コードに基づくことができる。例えば、試薬キットのための機械可読コードは、試薬キット内の試薬容器の機械可読コードのそれぞれにおいて暗号化された情報の暗号化された組み合わせを含むことができる。
【0052】
ステップ320において、消耗品に適用された消耗品コードは、サプライチェーン全体の各ウェイポイントでスキャンされる。ウェイポイントは、出荷の出発地点(例えば、製造メーカの施設)、流通チェーン内の中間転輸送(例えば、1か所以上の流通施設への到着および出発)および出荷の目的地点(例えば、顧客の施設)を含むことができる。各スキャンは、手動スキャン(例えば、ユーザデバイス130のカメラ、レーザスキャニングワンド等を使用する)または自動スキャン(例えば、配布施設の機械による)を含むことができる。各スキャンは、ブロックチェーン120上の新しいブロックに組み込まれるべきトランザクションとして、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで、ブロックチェーンネットワーク100に通信することができる。
【0053】
一実施形態では、消耗品コードを含むトランザクションがブロックチェーン120に追加される前に、ブロックチェーンネットワーク100は、まず、消耗品コードが有効な消耗品コードであることを確認することができる。有効な消耗品コードは、承認を受けた製造メーカにより発行されたもの、これに関連付けられた正のゼロでない数のkitcoinを有するもの等である。具体的には、ブロックチェーンネットワーク100内のノード(すなわち、システム110)は、ブロックチェーン120のコピーを参照して、消耗品コードが製造メーカからの発信トランザクションに現れることを保証し、消耗品コードに関連付けられたkitcoinの数が依然として存在することを保証するために、全ての使用トランザクションにわたる使用済みkitcoinの数をカウントすることにより、消耗品コードに関連付けられたkitcoinの数を計算する等を行うことができる。
【0054】
ステップ330において、消耗品に適用された消耗品コードは、消耗品を受け取る顧客により(例えば、出荷の目的地点で)スキャンされる。スキャンは手動または自動スキャンを含むことができ、ブロックチェーン120上の新しいブロックに組み込まれるトランザクションとして、リアルタイムまたはほぼリアルタイムでブロックチェーンネットワーク100に通信される。一実施形態では、トランザクションは、消耗品コードにより表される消耗品の、製造メーカから顧客への(例えば、製造メーカの電子ウォレットから顧客の電子ウォレットへの)輸送を含むことができる。すなわち、消耗品は、ブロックチェーンにおいて顧客とともに登録される。
【0055】
ステップ340において、消耗品コードは、特定の機器とともに使用される際にスキャンされる。スキャンは、手動または自動スキャンを含むことができる。オンライン機器(例えば、図1における機器140Bおよび140D)では、機器140により、消耗品コードをスキャンすることができる。このスキャンは、機器140に取り付けられているかもしくは機器140と一体化されているワンドまたは他のスキャン装置を使用して手動で、または消耗品が機器140に装填された後に機器140によって自動的に、行うことができる。オフライン機器(例えば、図1における機器140Aおよび140C)では、消耗品コードおよび機器コードは、図4に関する実施形態において説明するように、使用コードを取得するために、ユーザデバイス130によりスキャンすることができる。いずれの場合でも、各スキャンは、ブロックチェーン120上の新しいブロックに組み込まれるトランザクションとして、ブロックチェーンネットワーク100に通信される。トランザクションは、消耗品コードと、消耗品が使用される機器140を固有に識別する機器コードと、を含む登録トランザクションの形態をとることができる。
【0056】
一実施形態では、ブロックチェーンネットワーク100は、消耗品コードおよび登録された機器コードを識別する登録解除トランザクションがブロックチェーンに記録されるまで、当該消耗品コードについての任意のさらなる登録トランザクション(例えば、消耗品コードを異なる機器コードに登録すること)を防止することができる。登録解除トランザクションのためのこの要件は、オフライン機器140において特に有用でありうる。オフライン使用情報(すなわち、登録トランザクションと登録解除トランザクションとの間の消耗品の使用を表す)をブロックチェーンネットワーク100に(すなわち、登録解除トランザクションとともに)提供する機会が保証されているためである。具体的には、顧客は、トランザクションとしてブロックチェーン120に追加されるオフライン使用情報の、ブロックチェーンネットワーク100への送信を回避することができない。なぜなら、このようにすることにより、顧客が消耗品を再使用することが防止されるからである。オフライン使用情報がブロックチェーンネットワーク100に定期的に送信されることを保証するために、各機器140は、消耗品が新しい機器140に登録される最初の時点だけでなく、同じ機器140上でのその後の使用についても、新しい登録トランザクションを要求することができる。例えば、本明細書の他の箇所で説明するように、使用の回数を使用コードとして暗号化することができ、機器140上のソフトウェア142は、カウンタを使用して、使い尽くしにいたるまで暗号化された使用の回数をカウントダウンし、使用の回数が使い尽くされると、登録解除および/または新しい登録トランザクションを要求することができる。
【0057】
一実施形態では、ステップ340で消耗品を使用するたびに、消耗品コードに関連付けられた、使用の回数を表すkitcoinの量を、ブロックチェーン120に追加されたトランザクションにおいて差し引くことができる。消耗品コードに関連付けられた全てのkitcoinが使い尽くされている場合(すなわち、関連付けられたkitcoinの量がゼロになっている場合)、当該消耗品コードを使用して試みられたいかなるトランザクションも適正でないと推測することができる。例えば、このように試みられたトランザクションは、顧客または他の何らかの当事者が空の試薬容器またはキットを再充填したことを暗示しうる。ただし、場合によっては、製造メーカが顧客に特定の消耗品の再充填を許可する場合があることに留意されたい。これらの例では、使用は、ブロックチェーン120上に記録され続けてもよいし、またはブロックチェーン120上に記録されなくてもよい。前者の場合、顧客は、再充填を行い、再充填した消耗品を使用することが許可されている場合があるが、各使用のためにkitcoinを消費することが要求される場合がある。
【0058】
一般的には、患者情報は、本明細書において説明する機械可読コードのいずれにもけっして含まれるべきではない。より一般的には、患者情報は、ブロックチェーンネットワーク100にけっして送信されるべきでない。これにより、患者のプライバシーが維持され、開示している実施形態が患者情報のセキュリティに脅威を与えないことが保証される。
【0059】
有利には、ブロックチェーン120の使用により、製造メーカおよび顧客が消耗品の在庫を管理することが可能となる。非ブロックチェーン技術でも同様の機能を実行することができるが、ブロックチェーン120は設計上、極めて高いレベルのセキュリティ、追跡性および不正防止保護を提供する。例えば、ブロックチェーン120は、実行可能な方式での変更ができないため、破損、改ざんまたは何らかの方法での変更がなされうる記録データベースが存在しない。全てのトランザクションは、ブロックチェーン120上に持続的かつ無期限に記録され、将来の分析、データマイニング等のための豊富なデータを提供するであろう。ただし、ブロックチェーン120の代わりに、例えば、有向非循環グラフ(例えばTangle(商標)、ここでは、kitcoinが暗号通貨IOTAに類似している)の不変台帳を提供する他の技術を使用することができると理解されたい。
【0060】
例として、試薬キットが、製造メーカ(例えば、Leica Biosystems(商標))から顧客へ、顧客による使い尽くしへと進むにつれて、途中の全てのアクション(例えば、試薬キットの完全な履歴)を、ブロックチェーンネットワーク100に一斉送信し、ブロックチェーン120上で検証することができる。特定の消耗品の使用を含むあらゆるトランザクションがブロックチェーン120に記録されるという事実により、製造メーカは、消耗品の認可されていない再充填および/または他の使用を防止し、注文および在庫の量および場所を追跡する等が可能となる。また、ブロックチェーン120は、各使用の場所を追跡することができる。使用が追跡されるため、機器140上のソフトウェア142は、顧客が事前に割り当てられた使用の回数を超えて消耗品を使用するのを防止することができる。具体的には、機器140は、ブロックチェーン120からの全ての情報が正しい場合(例えば、試薬キットが異なる顧客および/または機器に登録されていない場合、試薬キットが例えば当該試薬キットに関連付けられたもしくは顧客の電子ウォレット内の正のkitcoin量により証明される残りの試験を有する場合、試薬キットが期限切れになっていない場合、試薬キットがリコールされていない場合等)にのみ、(例えば、ソフトウェア142を介して)試薬キットを使用して試験を実行するように構成可能である。
【0061】
また、ブロックチェーン120により、顧客が消耗品の注文および在庫を追跡し、在庫が少ない場合に新たな消耗品を注文すること等が可能となる。例えば、顧客のシステムは、特定の消耗品について残っている使用の回数(例えば、kitcoin)が少ない(例えば、関連付けられたkitcoinの量が特定の使用の回数を表す所定の閾値を下回る)かまたは使い尽くしている(例えば、関連付けられたkitcoinの量がゼロに達する)場合、新たな注文を自動的にトリガすることができる。
【0062】
2.2.オフライン機器のためのエアギャップ
図4は、実施形態に係るオフライン機器上で消耗品を追跡するための方法400を示すタイミング図である。具体的には、方法400は、方法300におけるステップ340の一部を表すことができる。方法400は、ステップの特定の配置および順序で示されているが、より少ない、より多いまたは異なるステップならびにステップの異なる配置および/もしくは順序で実施することができる。ユーザデバイス130の1つ以上のプロセッサは、(例えばクライアントアプリ132の実行により)ステップ410,420,425,450および455を実行することができ、機器140の1つ以上のプロセッサは、(例えばソフトウェア142の実行により)ステップ405,415,460および465を実行することができ、1つ以上のノード(例えばシステム110)における1つ以上のプロセッサは、ステップ430,435,440および445を実行することができる。
【0063】
方法400において、機器140はオフラインであり(すなわち、ブロックチェーンネットワーク100と通信することができないかまたはブロックチェーンネットワーク100への断続的な接続のみを有し)、一方、ユーザデバイス130はオンラインである(すなわち、ブロックチェーンネットワーク100と通信することができる)ものとする。例えば、機器140は非ネットワークデバイスであってよく、一方、ユーザデバイス130は、ワイヤレスネットワーク接続(例えば、携帯電話またはWi-Fi(商標)接続)を有するスマートフォンまたはタブレット、有線またはワイヤレスネットワーク接続を有するパーソナルコンピュータ(PC)、(例えば、Leica Biosystems(商標)により提供されるCerebro(商標)Sample Tracking Systemの既存のインフラストラクチャ内の)ワークフローによりサンプルを追跡するためのバーコードリーダ(例えば、レーザスキャニングワンド)を有する端末等であってよい。
【0064】
ステップ410において、ユーザデバイス130は、使用される消耗品上の消耗品コードのスキャンに利用される。例えば、ユーザデバイス130がカメラを備える場合、ユーザは、ユーザデバイス130のカメラを使用して、試薬キットキャリア上の機械可読コード(例えば、バーコード)の画像をキャプチャすることができる。一実施形態では、ユーザデバイス130上のクライアントアプリ132は、カメラを制御して、機械可読コードの画像をキャプチャすることができる。ついで、クライアントアプリ132は、画像内の機械可読コードを識別および復号するための周知の技術を使用して、画像内の機械可読コードを復号することができる。代替的に、ユーザデバイス130がバーコードリーダ(例えば、レーザスキャナ)を備える場合、クライアントアプリ132またはユーザが、バーコードリーダを制御して機械可読コードをスキャンし、機械可読コード内のデータを復号することができる。消耗品コード(例えば、数字または英数字列)を人間が読み取り可能である代替的な実施形態では、消耗品コードを、ユーザが(例えば、グラフィカルユーザインタフェース内の1つ以上の入力を介して)クライアントアプリ132に直接に入力することができる。
【0065】
ステップ415において、機器140は機器コードを表示する。例えば、機器140はディスプレイスクリーンを備えることができ、機器140の1つ以上のプロセッサは、ディスプレイスクリーンを制御して、機械可読コード(例えば、バーコード、QRコード等)を表示することができる。代替的に、機器コードは、機器140に貼り付けられているかもしくは何らかの方法で関連付けられているラベル上に提供することができ、または機器140のハウジング上に直接に印刷することができる。いずれの場合も、機器コードは、機器を識別する情報(例えば、固有の数字または英数字の識別子)を暗号化することができる。
【0066】
機器コードは、追加情報を暗号化することもできる。例えば、機器コードが機器140のディスプレイスクリーン上に表示される実施形態では、機器140は、ステップ405において、先の使用情報を機器コードにおいて暗号化することができる。具体的には、機器140が消耗品を利用すると、当該消耗品の使用情報(例えば、試験の回数、用量または他の実行)を機器140のメモリに記憶させることができる。その後、機器140が(例えば、機器140でのユーザ操作に応答して)機器コードを表示するように要求されると、機器140は、機器識別子および任意の新しい使用情報(例えば、機器コードが最後に使用された時点以降の全ての使用情報)を暗号化する新しい機器コードを生成することができる。特に、患者のプライバシーを保護するために、使用情報および機器コードは、いかなる患者情報も含むべきではない。
【0067】
ステップ420において、ユーザデバイス130は、機器140についての機器コードのスキャンに使用される。例えば、ユーザデバイス130がカメラを備える場合、ユーザは、ユーザデバイス130のカメラを使用して、機器140のディスプレイスクリーン上の機械可読コード、機器140に貼り付けられているかもしくは印刷されているかもしくは何らかの方法で機器140に関連付けられている機械可読コード(例えば、バーコード)の画像をキャプチャすることができる。一実施形態では、ユーザデバイス130上のクライアントアプリ132は、カメラを制御して、機械可読コードの画像をキャプチャすることができる。ついで、クライアントアプリ132は、画像内の機械可読コードを識別および復号するための周知の技術を使用して、画像内の機械可読コードを復号することができる。代替的に、ユーザデバイス130がバーコードリーダ(例えばレーザスキャナ)を備える場合、クライアントアプリ132またはユーザは、バーコードリーダを制御して、機械可読コードをスキャンし、機械可読コード内のデータを復号することができる。機器コードを人間が読み取り可能である代替的な実施形態では、機器コードを、ユーザが(例えば、グラフィカルユーザインタフェース内の1つ以上の入力を介して)クライアントアプリ132に直接に入力することができる。
【0068】
ステップ425において、ユーザデバイス130は、ステップ410でスキャンされた消耗品コードにより識別される消耗品を機器コードで識別される機器140に登録する潜在的なトランザクションとして、消耗品コードから復号されたデータおよび機器コードから復号されたデータを、ブロックチェーンネットワーク100に送信する。ステップ430において、ブロックチェーンネットワーク100(例えば、ブロックチェーンネットワーク100内のノードとしての1つ以上のシステム110)が、当該潜在的なトランザクションを受信する。
【0069】
一実施形態では、ブロックチェーン120への追加前に、潜在的なトランザクションを検証しなければならない。当該検証により、消耗品コードおよび/または機器コードが有効であることを保証することができる。例えば、トランザクションを処理するブロックチェーンネットワーク100のノード(例えば、システム110)は、例えば、製造メーカを表す特定の当事者による消耗品の作製を表すトランザクション(例えば、製造メーカの識別子および消耗品コードを含む発送または出荷トランザクション)についてブロックチェーン120を検査することにより、消耗品コードが消耗品の製造メーカにより発行されまたは承認されたことを検証することができる。加えて、ノードは(例えば、消耗品コードまたは顧客に関連付けられた十分なkitcoinがあることを検査することにより)消耗品について残りの使用があることを検証できる。ステップ440において、トランザクションが検証されていた場合、当該トランザクションはブロックチェーン120に組み込まれ、消耗品コードにより識別される消耗品の使用が機器コードにおいて識別される機器140に登録される。トランザクションが(例えば、無効な消耗品コードであること、消耗品コードまたは顧客に関連付けられた使用またはkitcoinが残っていないこと等により)検証されなかった場合、当該トランザクションはブロックチェーン120に組み込まれない。
【0070】
ステップ435において、機器コードから復号されたデータが先の使用情報を含んでいた場合、先の使用情報により表される先の使用を1つ以上のトランザクションとしてブロックチェーン120に追加することができる。本明細書の他の箇所で検討するように、これらのトランザクションは、先の使用情報で識別された消耗品コードまたは顧客の電子ウォレットに関連付けられたkitcoinの量を、先の使用情報での指定の通りに、対応する消耗品のうちどれだけが使用されたかにしたがって差し引くことができる。
【0071】
ステップ445において、ブロックチェーンネットワーク100は、使用コードをユーザデバイス130に送信する。ブロックチェーンネットワーク100(例えば、ブロックチェーンネットワーク100内のノードとしての1つ以上のシステム110)は、ステップ440において記録されたトランザクションに基づいて、使用コードを生成することができる。使用コードは、消耗品コード、機器コードおよび/またはトランザクションに記録された任意の他の情報に基づいて生成することができる。トランザクションがステップ440において検証されず記録されなかった場合、ブロックチェーンネットワーク100は、使用コードを返さないか、またはトランザクションが検証されなかったことを示す使用コードを返す。一実施形態では、使用コードが別の使用コード(例えば消耗品コードを機器140に対して登録解除した後に再登録する、方法400の別の反復により得られる)を要求する前に、機器140が消費することができる使用の回数を指定することができる。
【0072】
ステップ450において、ユーザデバイス130は、使用コードをブロックチェーンネットワーク100から受信する。ついで、ユーザデバイス130は、使用コードおよび場合により追加情報を機械可読コード(例えば、バーコード、QRコード等)として暗号化し、ステップ455において、ユーザデバイス130のディスプレイスクリーン上に機械可読コードを表示することができる。
【0073】
ステップ460において、機器140は、ユーザデバイス130のディスプレイスクリーン上に表示された、暗号化された使用コードを含む機械可読コードをスキャンする。機器140がカメラを備える実施形態では、機器140上のソフトウェア142が、カメラを制御して、ユーザデバイス130のディスプレイスクリーン上の機械可読コードの画像をキャプチャすることができる。ついで、ソフトウェア142は、画像内の機械可読コードを識別および復号するための周知の技術を使用して、画像内の機械可読コードを復号することができる。代替的に、機器140がバーコードリーダ(例えば、レーザスキャナ)を備える場合、ソフトウェア142またはユーザは、バーコードリーダを制御して機械可読コードをスキャンし、機械可読コード内のデータを復号することができる。使用コードを人間が読み取り可能である代替的な実施形態では、使用コードを、ユーザが(例えば、グラフィカルユーザインタフェース内の1つ以上の入力を介して)機器140に直接に入力することができる。
【0074】
いずれの場合でも、機器140は、使用コードを検証することができる。一実施形態では、使用コードは、秘密鍵システム(例えば、Pretty Good Privacy(PGP)、Signal Protocol等)を使用して暗号化され、復号される。例えば、機器140上のソフトウェア142は、秘密鍵(例えば、機器140のメモリまたは機器140にアクセス可能なメモリに記憶されている)を使用して、使用コードを復号することができる。ついで、ソフトウェア142は、ロット番号、製造日、使用コードの生成日、使用される機器140の実験室割り当てシリアル番号、使用されるユーザデバイス130の実験室割り当てシリアル番号等を含む(がこれらに限定されない)、復号されたデータの一貫性を検査することができる。代替的にまたは追加的に、非技術的な実施において、消耗品(例えば、試薬)の詳細は、消耗品が使用される実験室により生成されたログにおいて公開することができる。ほとんどの実験室では、厳格な品質基準にしたがい、各ステップを文書化することが求められている。この場合、後に手動で変更される機械生成ログとの不一致を、監査者のための赤フラグを立てるための基礎として使用することができる。
【0075】
機器140が使用コードを検証すると、機器140は、ステップ410においてスキャンされた消耗品コードに関連付けられた消耗品の使用を許可する。機器140はオフラインであるため、使用トランザクション(例えば、消耗品または顧客に関連付けられたkitcoinを差し引くこと)をブロックチェーンネットワーク100にリアルタイムで一斉送信することができない。このため、消耗品が使用されると、機器140は、代わりに、ステップ465において、消耗品についての使用情報を記憶することができる。この使用情報は、使用の回数と関連付けられた、消耗品コード、または消耗品に関連付けられた他の識別子を含むことができる。ついで、当該使用情報は、将来の時点でブロックチェーン120内に1つ以上のトランザクションとして組み込まれるように、(例えばステップ405において)後続の機器コードに組み込むことができる。このため、機器140がオフラインであっても、機器140での消耗品の使用をさらにブロックチェーン120により管理することができる。
【0076】
オフライン機器140は、使用コードなしには消耗品を使用することができないと理解されたい。同様に、機器140が使用コードを検証することができなかった場合、またはトランザクションが検証されず、ステップ440において記録されなかったことを使用コードが示す場合、機器140は消耗品を使用することができない。すなわち、機器140は、消耗品の使用を許可する有効な使用コードなしには、消耗品を使用することができない。これにより、機器140が適正でない(例えば、リコールされた、再充填された、偽造された等の)消耗品を使用することが防止される。
【0077】
一実施形態では、使用コードにより、ステップ410においてスキャンされた特定の消耗品の使用に関する制限を暗号化することができる。例えば、特定の試験に使用するための特定の試薬のリコールの場合、使用コードにより、特定の試薬を特定の試験に使用できないことを指定することができる。このため、機器140内のソフトウェア142は、リコール情報を使用コードから復号し、これに応答して、特定の試薬を使用した特定の試験の実行を禁止し、一方で、特定の試薬を使用した他の試験の実行を依然として可能とすることができる。特定の試薬についての完全なリコールの場合、機器140内のソフトウェア142は、試薬のあらゆる使用を防止することができる。代替的にまたは追加的に、ソフトウェア142は、これに応答して、リコールについて機器140のユーザに(例えば、機器140のディスプレイスクリーン上に)通知することができる。例えば、ソフトウェア142は、リコール通知が確認されるまで(例えば、ユーザが機器140のディスプレイスクリーン上に表示されたグラフィカルユーザインタフェースでリコール通知を読み、1つ以上の入力を介して了解を確認することにより)、ワークフロー全体を一時停止することができる。
【0078】
実質的に、特定の消耗品(例えば、試薬または試薬キット)または消耗品のセット(例えば、ロット、種類等)を、完全にまたは選択的に、遠隔で無効にすることができる。具体的には、機器140がトランザクションの対象である消耗品を利用することができないよう、無効化トランザクションをブロックチェーン120に追加することができる。例えば、オフライン機器140の場合、新たな登録トランザクションが検証されず、ステップ440において記録されなくなり、ステップ445~455において、使用コードが提供されなくなる。あるいは、ステップ460において機器140に提供される使用コードは、消耗品を使用できないことを示す制限を含むことができる。前者の場合には、使用コードの代わりに、ユーザデバイス130のディスプレイスクリーン上に(例えば、クライアントアプリ132のグラフィカルユーザインタフェース内に)通知を表示することができる。後者の場合、機器140のディスプレイスクリーン上に通知を表示することができる。両方の場合において、通知は、消耗品が廃棄されるべきであること、製造メーカに戻されるべきであること、保管されてよいが使用されるべきでないこと等をユーザに通知することができる。
【0079】
特に、方法400をオンライン機器140について実施することができるが、典型的には、オンライン機器である必要はない。一実施形態では、機器140は、オンラインであるかまたはオフラインであるかに関わらず、同じソフトウェア142を含むことができる。ソフトウェア142が、機器140がオフラインであることを検出した場合(例えば、ユーザ指定の設定に基づいて、システムフラグに基づいて、既知のユニフォームリソースロケータ(URL)等へのping打ちの試行の失敗により)、機器140は、方法400に示されるオフライン処理を実行することができる。一方、ソフトウェア142が、機器140がオンラインであることを検出した場合、機器140は、オンライン処理を実行することができる。オンライン処理において、機器140は、消耗品コードを消耗品から直接にスキャンして復号し、復号されたデータをその機器識別子および/または追加情報とともにブロックチェーンネットワーク100に送信し、ユーザデバイス130がエアギャップを満たすことを必要とせずに、使用コードをブロックチェーンネットワーク100から受信することができる。加えて、オンライン処理では、機器140は、消耗品が使用されると、使用情報をブロックチェーンネットワーク100に、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで(すなわち、ブロックチェーン120内のトランザクションとして記録されるように)送信することができる。
【0080】
一実施形態では、消耗品は、方法400と同様の方法を使用して、機器140から登録解除することができる。例えば、消耗品が機器140から取り出されると、機器140は、ステップ465で記録された先の使用情報のいずれかを、ステップ405において機器コードとして暗号化し、当該機器コードをステップ415において表示することができる。ユーザは、ユーザデバイス130を利用して、ステップ410において消耗品コードをスキャンし、ステップ420において、機器コードをスキャンし、消耗品コードおよび機器コードから復号されたデータをブロックチェーンネットワーク100に送信することができる。ついで、この情報を、消耗品が将来異なる機器140または同じ機器140に登録することができるように、特定の機器140から消耗品を登録解除するトランザクションを記録するために、ブロックチェーンネットワーク100により使用することができる。
【0081】
2.3.消耗品固有情報
一実施形態では、追加情報を、経時的に消耗品コードに関連付けることができる。もちろん、消耗品(例えば、試薬容器、試薬キット等)に適用される機械可読コードは、消耗品への再印刷および再適用がなされない限り、新たな情報を組み込むことはできない。ただし、追加情報を、機械可読コードに基づいて取り出せるように、機械可読コードとして暗号化された消耗品コードに関連付けることができる。このように、消耗品に適用される機械可読コードに関連付けられた情報は、機械可読コードの変更および消耗品への再適用の必要なく、経時的に拡張しまたは何らかの方法で変更することができる。
【0082】
当該追加情報は、機械可読コードがスキャンされた各位置、1つ以上の位置における温度等を含むことができるが、これらに限定されない。追加情報は、(例えば、スキャン、例えば、出荷中のウェイポイントスキャンを表すトランザクションに加えてまたはその中で)トランザクション中にブロックチェーン120に追加することができる。
【0083】
こうした情報をどのように使用することができるかの例として、試薬キットは、一般的には特定の温度範囲について評価され、特定の期間(例えば3日間)を超えてその温度範囲外に保管されるべきではない。ただし、コストを節約するために、製造メーカは、冷蔵なしに試薬キットを出荷することがある。試薬キットの出荷が顧客に達すると、追加情報を、当該試薬キットの消耗品コードに関連付けられたブロックチェーン120内のトランザクションから得ることができる。この場合、当該情報は、複数のウェイポイントについての位置、時間および温度を含むことができ、試薬キットが指定された期間よりも長く評価温度範囲外で保存されたか否かを決定するのに使用することができる。この場合、顧客は、試薬キットを廃棄するように、または出荷中に不備により引き起こされる劣化を考慮してその有効期限を短縮するように通知される場合がある。
【0084】
2.4.Kitcoin
一実施形態では、kitcoinは、消耗品からは独立して存在することができる。例えば、特定の消耗品は電子「ウォレット」として扱うことができ、固有の消耗品コードは電子ウォレットのアドレスとして機能する。最初に、消耗品は、無料で顧客に提供される場合があるが、その電子ウォレット内にkitcoinは全く存在しない。ついで、顧客は、消耗品を使用するために、使用(例えば、実行)を表すkitcoinを(例えば、消耗品を表す電子ウォレットにkitcoinを転送するトランザクションを一斉送信することにより)購入することができる。このような実現形態により、消耗品の価値が名目上のものとなる場合がある一方、kitcoinが利益を生み出すので、在庫コストが低減される。加えて、消耗品のバッファストックは、在庫または廃棄コストを懸念することなく、顧客の施設または地方の配送地点に保管することができる。
【0085】
2.5.ロイヤリティプログラム
一実施形態では、ブロックチェーンネットワーク100内のノード(すなわち、システム110)を提供する顧客は、その計算能力と引き換えに、kitcoinで報酬を受けることができる。例えば、kitcoinを、ビットコインがマイニングされる方式と同様に、顧客によりマイニングすることができる。ブロックチェーン120に追加されるべき有効なトランザクションブロックを生成するのと引き換えに、顧客は、一定量のkitcoinで報酬を受けることができる。kitcoinマイニングは顧客に限定されないが、ブロックチェーン120の対象である消耗品を利用しない第三者がkitcoinに実質的な価値を割り当てることはできない(ただし、kitcoinの交換により価値を得ることはできる)と理解されたい。
【0086】
一実施形態では、顧客は、他の活動に対してkitcoinで報酬を受けることができる。このような活動は、展示会に出席すること、製造メーカ(例えば、Leica Biosystems(商標))から製品を購入すること、保守メンテナンスのための予約、機器140の適切な保守等を含むことができる。
【0087】
顧客は、どのようにしてkitcoinを稼ぐかに関わらず、消耗品を利用するために自身のkitcoinを使用することができる。例えば、顧客は、消耗品の各使用(例えば、各試験または他の実行)に対して、一定量のkitcoinを消費することができる。
【0088】
2.6.分析
ブロックチェーン120に記録された消耗品の使用を含むトランザクションは、消耗品自体の貴重な洞察を提供することができる。このため、一実施形態では、トランザクションは、例えば、顧客関係管理の目的で(例えば、製造メーカにより)分析することができる。
【0089】
例えば、試薬は、多くの場合、最小限の使用の回数について評価される。顧客が、試薬から最小限の使用の回数が得られなかったと不満を述べた場合、製造メーカは、ブロックチェーン120に記録された特定の試薬についての使用トランザクションに基づいて、顧客の不満を確認しまたは否定することができる。具体的には、製造メーカは、試薬についての消耗品コードを含むブロックチェーン上の任意の使用トランザクションを検索し、実際の使用の回数をカウントすることができる。実際の使用の回数が評価された最小限の使用の回数を下回る場合、製造メーカは、顧客の不満を確認し、是正することができる。そうでなく、実際の使用の回数が評価された最小限の使用の回数以上である場合、製造メーカは、不満に根拠がないという信頼性のある証拠を有する。
【0090】
加えて、製造メーカは、過剰充填を減らすために、複数の消耗品にわたってこの使用情報を使用することができる。例えば、ブロックチェーン120上のトランザクションが、試薬がその試薬についての評価された最小限の使用の回数をはるかに超える実際の使用の回数を一貫して提供していることを示す場合、製造メーカは、その試薬の体積を適切に減らすことができる。これにより、過剰充填に関連する不必要なコストを節約することができる。
【0091】
2.7.機器履歴
一実施形態では、特定の機器140による消耗品の全ての使用がブロックチェーン120上に記録されるため、機器140もブロックチェーン120により追跡することができる。例えば、各機器140の使用履歴は、その機器140に関連付けられた使用トランザクション(例えば、機器140の識別子を含むトランザクション)から推定することができる。当該使用履歴は、点検および/または修理情報(例えば、点検または修理のスケジュール)の作成に使用することができる。例えば、製造メーカが、1000回の使用ごとに、機器140の点検(例えば、定期点検、特定の部品の交換等)を推奨するものとする。製造メーカおよび/または顧客のソフトウェア点検は、ブロックチェーン120を継続的に検査し、各機器140について、ブロックチェーン120上のトランザクションに記録された使用量を計算することができる。特定の機器140についての使用量が1000に達するかまたは1000の所定の範囲内にある場合、ソフトウェア点検は、製造メーカのユーザおよび/または顧客に通知し、機器140の点検を自動的にスケジューリングし、点検が済むまで機器140による消耗品のそれ以上の使用を防止する等を行うことができる。加えて、機器140の任意の点検は、トランザクション(例えば、機器140を識別する点検トランザクション)としてブロックチェーン120に記録することができ、これにより、ブロックチェーン120内の各機器140についての点検記録が得られる。
【0092】
開示した実施形態の上記説明は、当業者が本発明を製造しまたは使用することを可能にするために提供したものである。これらの実施形態に対する種々の修正は、当業者には容易に明らかであろうし、本明細書に記載された一般的な基本方式を、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、他の実施形態に適用することができる。このため、本明細書で提示した説明および図面は、本発明の現在の好ましい実施形態を表し、したがって、本発明が広く企図する主題を表すことを理解されたい。さらに、本発明の範囲は、当業者に明らかな他の実施形態を完全に包含し、したがって、本発明の範囲は限定されないと理解される。
【0093】
本明細書に記載した組み合わせ、例えば、「A、BまたはCのうちの少なくとも1つ」、「A、BまたはCのうちの1つ以上」、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」、「A、BおよびCのうちの1つ以上」および「A、B、Cまたはこれらの任意の組み合わせ」は、A、Bおよび/またはCの任意の組み合わせを含み、複数のA、複数のBまたは複数のCを含むことができる。具体的には、組み合わせ、例えば「A、BまたはCのうちの少なくとも1つ」、「A、BまたはCのうちの1つ以上」、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」、「A、BおよびCのうちの1つ以上」および「A、B、Cまたはこれらの任意の組み合わせ」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、またはAおよびBおよびCであることができ、このような組み合わせは、その構成要素であるA、Bおよび/またはCのうちの1つ以上のメンバを含むことができる。例えば、AとBとの組み合わせは、1つのAおよび複数のB、複数のAおよび1つのB、または複数のAおよび複数のBを含むことができる。
図1
図2
図3
図4