(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】バスバーを製造するための方法およびバスバー
(51)【国際特許分類】
H01R 43/00 20060101AFI20220829BHJP
H01R 33/76 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
H01R43/00 B
H01R33/76 Z
(21)【出願番号】P 2021521366
(86)(22)【出願日】2019-04-29
(86)【国際出願番号】 EP2019060851
(87)【国際公開番号】W WO2020098979
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-04-19
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518370666
【氏名又は名称】ロジャーズ ベーフェー
【氏名又は名称原語表記】Rogers BV
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】シー、ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】タン、リャン
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05579217(US,A)
【文献】特開2017-168267(JP,A)
【文献】特表2017-530267(JP,A)
【文献】特開2014-186803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/00
H01R 33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品、特に、コンデンサなどの受動電子部品を搭載するように構成されたバスバー(1)、特に、積層バスバー(1)を製造するための方法であって、
アルミニウム製の第1の導電層(11)を提供するステップと、
前記第1の導電層(11)と前記電子部品とを接続するための第1のコネクタ要素(15)を提供するステップと、前記第1のコネクタ要素(15)は、ニッケルおよび/またはスズで少なくとも部分的に被覆されており、
レーザー溶接により、前記第1の導電層(11)と前記第1のコネクタ要素(15)との間に接合、特に、レーザー溶接シーム(10)を形成するステップと、を含
み、
前記第1の導電層(11)は、ニッケルおよび/またはスズからなる被覆を少なくとも部分的に含まないアルミニウム板である、方法。
【請求項2】
アルミニウム製の第2の導電層(21)を提供するステップと、
前記第2の導電層(21)と前記電子部品とを接続するための第2のコネクタ要素(25)を提供するステップと、前記第2のコネクタ要素(25)は、ニッケルおよび/またはセレンで少なくとも部分的に被覆されており、
レーザー溶接により、前記第2の導電層(21)と前記第
2のコネクタ要素(25)との間に接合を形成するステップと、
前記第2のコネクタ要素(25)が前記第1の導電層(11)を貫通して、特に、前記第1の導電層(11)内の対応する凹部(30)を貫通して伸びるように前記第1の導電層(11)および前記第2の導電層(21)を配置するステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のコネクタ要素(15)および/または第2のコネクタ要素(25)は、電気部品のピンを受け入れるためのブッシングである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のコネクタ要素(15)および/または第2のコネクタ要素(25)は、アルミニウム製である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のコネクタ要素(15)を前記第1の導電層(11)に接合するために、前記第1のコネクタ要素(15)が前記第1の導電層(11)の開口部(3)内に配置され、接合は、前記開口部(3)の内側において前記第1のコネクタ要素(15)と第1の導電要素(11)との間で実行される、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のコネクタ要素(15)は、前記開口部(3)と形状が嵌合するように配置され、かつ/または前記開口部(3)の内側に配置された前記第1のコネクタ要素(15)の一部が、前記開口部(3)を貫通して伸びる、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のコネクタ要素(15)は、前記第1の導電層(11)の上表面(19)上に配置され、かつ前記第1の導電層(11)の前記上表面(19)に少なくとも部分的に接触する、請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ニッケルメッキおよび/またはスズメッキは、前記第1のコネクタ要素(15)および/または第2のコネクタ要素(25)を被覆するように施されており、ニッケルメッキおよび/またはスズメッキの厚さは、1pmと50pmとの間、好ましくは、2pmと25pmとの間、より好ましくは、5pmと15pmとの間である、請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザー溶接シーム(10)は第1のレーザー溶接シーム(10)であり、レーザー溶接により、前記第1の導電層(11)と前記第1のコネクタ要素(15)との間に、もう1つの
第2のレーザー溶接シーム
(10’)が生成される、請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
レーザー溶接シーム(10)、特に、単一のレーザー溶接シーム(10)は、前記第1の導電層(15)の上表面(19)上にレーザービームを向け、別のレーザービームを前記第1の導電層(15)の底表面に向けることによって生成され
る、請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザー溶接シーム(10
)の長さを規定するためにレーザー出力が調整される、請求項1乃至
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のコネクタ要素(15)および/または第2のコネクタ要素(25)が円錐形の形状を有する、請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
電子部品、特に、コンデンサなどの受動電子部品を搭載するように構成されたバスバー
(1)、特に、積層バスバー(1)であって、
アルミニウム製の第1の導電層(11)と、
前記第1の導電層(11)と電子部品とを接続するための第1のコネクタ要素(15)と、を備え、前記第1のコネクタ要素(15)は、ニッケルおよび/またはスズで少なくとも部分的に被覆されており、
前記第1の導電層(11)と前記第1のコネクタ要素(15)との間に接合、特に、レーザー溶接シーム(10)がレーザー溶接した状態で形成されており、
前記第1の導電層(11)は、ニッケルおよび/またはスズからなる被覆を少なくとも部分的に含まない
アルミニウム板である、バスバー
(1)。
【請求項14】
前記第1のレーザー溶接シーム(10)は、前記第1の導電層(15)の底表面にレーザービームを向けることによって生成され、前記第2のレーザー溶接シーム(10’)は、前記第1の導電層(15)の上表面(19)に別のレーザービームを向けることによって生成される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、特に、コンデンサなどの受動電子部品を搭載するように構成されたバスバーを製造するための方法、およびそのようなバスバーに関する。
【背景技術】
【0002】
積層バスバーは、典型的に、薄い誘電体材料で分離された銅製の導電層で構成され、一体構造に積層されたものである。積層バスバーの例は、特許文献1、特許文献2、または特許文献3に記載されている。通常、コンデンサなど、電子部品の電気的な極を異なる導電層に直接接続するために、「プラグイン」領域がバスバーに含まれており、導電層の各々は、各コンデンサに設けられる極の種類に割り当てられる。通常、コンデンサは、プラグイン領域の穴にピンを挿入することによって、プラグイン領域に接続される。続いて、ピンは、例えば、はんだ付け、ろう付け、および/または溶接によって、バスバーに接着接続される。
【0003】
さらに、例えば、特許文献4から、アルミニウムから作製された導電層を使用することが知られている。従って、同等の軽量バスバーを提供することができる。これらのバスバーの腐食または酸化を回避するために、バスバーは、通常、ニッケルのクラッディングおよび/またはスズのクラッディング(特に、ニッケルメッキおよび/またはスズメッキ)で被覆されている。しかしながら、バスバー全体をニッケルメッキおよび/またはスズメッキで被覆することは、同等のコストの負担になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国実用新案第203504394号明細書
【文献】中国特許出願公開第104022414号明細書
【文献】中国実用新案第202474475号明細書
【文献】米国特許第5579217号明細書
【発明の概要】
【0005】
上記を考慮して、本発明の目的は、特に製造プロセスの費用効率および/または製造されたバスバーの耐久性に関して、先行技術で既知のものと比較して改善されたバスバーを製造するための方法を提供し、かつバスバーを提供することである。
【0006】
この目的は、請求項1に記載のバスバーを製造するための方法および請求項15に記載のバスバーによって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項、詳細な説明、および図に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の好ましい第1の実施形態によるバスバーの斜視図を概略的に示す図。
【
図3】本発明の第2の好ましい実施形態によるバスバーの第1の導電層を概略的に示す図。
【
図4a】本発明の第3の好ましい実施形態によるバスバーの第1の導電層を概略的に示す図。
【
図4b】本発明の第4の好ましい実施形態によるバスバーの第1の導電層を概略的に示す図。
【
図4c】本発明の第5の好ましい実施形態によるバスバーの第1の導電層を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、電子部品、特に、コンデンサなどの受動電子部品を搭載するように構成されたバスバー、特に、積層バスバーを製造するための方法が提供され、方法は、
アルミニウム製の第1の導電層を提供するステップと、
第1の導電層と電子部品とを接続するための第1のコネクタ要素を提供するステップと、第1のコネクタ要素は、ニッケルおよび/またはスズで少なくとも部分的に被覆されており、
レーザー溶接により、第1の導電層と第1のコネクタ要素との間に接合、特に、接着接合を形成するステップと、を含む。
【0009】
先行技術とは対照的に、本発明によれば、ニッケルおよび/またはスズで被覆された第1のコネクタ要素と第1の導電層とをレーザー溶接プロセスによって接続することが提供される。特に、第1の導電層がアルミニウム素板で形成されており、ニッケルおよび/またはスズで被覆された第1のコネクタ要素がアルミニウム素板に直接接続される場合、レーザー溶接によって接続を実行することにより、第1のコネクタ要素と第1の導電層との間に耐久性および耐性のある接続が確立されることが分かった。その結果、コネクタ要素に対してのみニッケルおよび/またはスズの被覆が実行され、第1の導電層がニッケルおよび/またはスズで被覆されることを回避することが可能であるという利点がある。換言すれば、レーザー溶接によって実行される耐久性および耐性のある接続により、被覆を第1のコネクタ要素のみに制限することが可能となり、バスバー全体を被覆する必要がなくなる。従って、材料、即ち、ニッケルおよび/またはスズを節約することができ、その結果、製造されたバスバーの耐久性に影響を与えることなく、コストを削減することができる。
【0010】
好ましくは、バスバーは、主拡張面(main extension plane)内に延在する平坦な製品である。第1の導電層は、好ましくは、アルミニウム板、特に、主拡張面を主に形成するアルミニウム素板である。さらに、第1のコネクタ要素は、第1のコネクタ要素が主拡張面に垂直な方向に沿って第1の導電層から突出するように、第1の導電層に接続されるようになっている。特に、第1のコネクタ要素は、第1の導電層とは離れて対向し、かつ電子部品が接続される接続面の少なくとも一部を形成する前面を有する。好ましくは、第1の導電層と第1の導電層と離れて対向する前記前面との間の距離は、第1の導電層の厚さよりも大きく、第1の導電層の厚さよりも好ましくは、1.2倍~5倍、より好ましくは、1.5倍および4倍、最も好ましくは、2倍および3.5倍大きい。前記距離および前記厚さは、主拡張面に垂直な方向に沿って測定される。好ましくは、第1の導電層は、絶縁層により被覆されている。
【0011】
好ましい実施形態によれば、方法は、
アルミニウム製の第2の導電層を提供するステップと、
第2の導電層と電子部品とを接続するための第2のコネクタ要素を提供するステップと、第2のコネクタ要素は、ニッケルおよび/またはスズで少なくとも部分的に被覆されており、
レーザー溶接により、第2の導電層と第2のコネクタ要素の間に接合、特に、接着接合を形成するステップと
第2のコネクタ要素が第1の導電層を貫通して、特に、第1の導電層内の対応する凹部を貫通して伸びるように、第1の導電層および第2の導電層を配置するステップと、を含むようになっている。バスバーを形成するために、第1の導電層および第2の導電層を互いに積層方向に沿って上方に積層するようになっており、積層方向は、主拡張面に対して垂直に主に延びる。好ましくはアルミニウム板である第2の導電層と、第1の導電層とは、互いに平行に配置され、特に、別の絶縁層によって互いに間隔をおいて配置され、特に、別の絶縁層のみによって間隔をおいて配置されている。第1の導電層を貫通して伸びることにより、第1のコネクタ要素および第2のコネクタ要素の両方を同じ側、特に、バスバーの上面に配置することが可能となるという利点があり、上面は、搭載状態において電気部品と対向する。従って、バスバーの上面上に配置されたコンデンサの両極は、第1の導電層および第2の導電層にそれぞれ接続することができる。
【0012】
さらに、第1の導電層および第2の導電層は、特に、積層方向に沿って測定される、例えば、0.5mmと5mmとの間、好ましくは、0.75mmと2mmとの間、より好ましくは、1mmと1.5mmとの間の厚さを有する金属板となっている。特に、第1のコネクタ要素および/または第2のコネクタ要素の高さは、特に、積層方向に沿って測定される第1の導電層の厚さよりも少なくとも2倍~5倍、より好ましくは、1.5倍および4倍、最も好ましくは、2倍および3.5倍大きい。特に、第1のコネクタ要素および/または第2のコネクタ要素にニッケルおよび/またはスズの被覆を実行することにより、第1のコネクタ要素、特に、第1のコネクタ要素のコネクタ表面上に低い接触抵抗を実現することがさらに可能となる。同じことが第2のコネクタ要素にも同様に当てはまる。
【0013】
特に、コネクタ要素は、電気部品のピンを受け入れるためのブッシングとなっている。好ましくは、ブッシングは、電子部品のピンを受け入れるための穴を有する。従って、電子部品を搭載するために、ピンをブッシングに挿入、特に、穴に挿入することができる。
【0014】
好ましくは、コネクタ要素は、アルミニウムから作製されるようになっている。従って、バスバーの重量をさらに低減することができる。特に、第1のコネクタ要素および第2のコネクタ要素を実現し、かつバスバーの上面から突出するブッシングを有するバスバーに関して、重量の減少が特に顕著である。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1の導電層および/または第2の導電層は、ニッケルおよび/またはスズから作成された被覆を少なくとも部分的に含まず、好ましくはニッケルおよび/またはスズからなる被覆を完全に含まないアルミニウム板となっている。従って、バスバー全体がニッケルおよび/またはスズで被覆されているわけではないため、製造プロセスにおいてニッケルおよび/またはスズを節約することができる。特に、ニッケルおよび/またはスズで被覆されている第1のコネクタ要素は、アルミニウム素板と直接接着接合されるか、またはアルミニウム素板として形成された第1の導電層および/または第2の導電層の少なくとも一部と直接接着接合されるようになっている。第1の導電層に相当するアルミニウム素板が、ニッケルおよび/またはスズなしで、別の材料(例えば、絶縁層)によって被覆され得ることは、当業者には明らかである。特に、他の材料による被覆は、第1のコネクタ要素に接着接合されている領域までは及ばない。第1の導電層および/または第2の導電層がニッケルおよび/またはスズで部分的に被覆されていることも企図される。
【0016】
本発明の別の実施形態では、第1のコネクタ要素を第1の導電層に接合するために、コネクタ要素が第1の導電層の開口部内に配置され、接着接合が開口部の内側において第1のコネクタ要素と第1の導電要素との間で実行されるようになっている。コネクタ要素を開口部の内側に配置することにより、コネクタ要素と第1の導電層との間の接触面を増加させることが可能であるという利点がある。好ましくは、レーザー溶接シームは、コネクタ要素と第1の導電層との間の接触面全体に沿って延在しないようになっている。特に、バスバーの完成状態において、レーザー溶接シームを有する接触面の一部の接触面全体に対する比率が、0.2と0.8との間、より好ましくは、0.4と0.7との間、最も好ましくは、0.5と0.6との間となっている。例えば、レーザー溶接シームは、開口部の内側においてのみ延在する。さらに、開口部の内側の対向する部分のレーザー溶接シームが積層方向に平行な方向において測定される高さと同じ高さであるか、または異なる高さとなるように、レーザー溶接シームが開口部の内側で実現されることが企図される。
【0017】
さらに、第1のコネクタ要素は、開口部と形状が嵌合するように配置され、かつ/または開口部の内側に配置された第1のコネクタ要素の一部が開口部を貫通して伸びるようになっている。形状が嵌合するように配置することにより、第1のコネクタ要素と第1の導電層との間の接着接続をさらに支持することができる。特に、コネクタ要素の一部が開口部を貫通して伸びる場合、レーザーによる底面へのアクセスを容易に行うことが可能であるという利点がある。従って、レーザー溶接シームは、第1の導電層の底面にレーザービームを向けることによって容易に実現することができる。
【0018】
好ましくは、コネクタ要素は、第1の導電層の上表面上に配置され、かつ第1の導電層の上表面に少なくとも部分的に接触するようになっている。従って、第1のコネクタ要素は、第1の導電層によって担持することができるという利点がある。さらに、この構成により、第1のコネクタ要素と第1の導電層との間の接触面を増加することが可能となり、前記接触面は、第1の導電層と第1のコネクタ要素との間の電気的接触を確立する。
【0019】
特に、ニッケルメッキおよび/またはスズメッキは、第1のコネクタ要素および/または第2のコネクタ要素を被覆するように施されており、ニッケルメッキおよび/またはスズメッキの厚さは、1pmと50pmとの間、好ましくは、2pmと25pmとの間、より好ましくは、5pmと15pmとの間となっている。前記厚さであれば、効果的な腐食保護および酸化保護を実現することができ、前記保護を実現するためにニッケルおよび/またはスズを過剰に使用する必要がないことが分かった。
【0020】
本発明の別の実施形態では、もう1つのレーザー溶接シームが生成されるようになっている。別のレーザー溶接シームを追加することにより、特に、バスバーの予定された用途に応じて、第1のコネクタ要素と第1の導電層との間の接合(特に、接着接合)を強化することが可能である。第1のコネクタ要素と第1の導電層との間の接続を強化するために、別の種類の溶接が実行されることも企図される。
【0021】
特に、レーザー溶接シーム(特に、信号レーザー溶接シーム)が、第1の導電層の上表面および第1の導電層の底表面にレーザービームを向けることによって生成され、または、いくつかのレーザー溶接シームが、第1の導電層の上表面および第1の導電層の底表面にレーザービームを向けることによって生成されるようになっている。従って、レーザー溶接シームが両側(即ち、上面および下面)から同時に生成されるため、接合プロセスを早めることが可能であるという利点がある。
【0022】
好ましくは、レーザー出力は、レーザー溶接シームおよび/またはもう1つのレーザー溶接シームの長さを規定するために調整される。従って、生成されるレーザー溶接シームまたはもう1つのレーザー溶接シームの強度および寸法を制御することが可能であるという利点がある。代替的または追加的に、生成されるレーザー溶接シームの寸法および/または形状を調整するために、レーザー溶接シームが生成される処理期間を調整することが企図される。
【0023】
特に、第1のコネクタ要素および/または第2のコネクタ要素は、円錐形の形状を有する。従って、第1の導電層の凹部内に第2のコネクタ要素を挿入することが簡単になる。さらに、バスバーの重量をさらに減少させることが可能である。
【0024】
本発明の別の態様は、バスバーであり、特に、特許請求の範囲の1つに記載の方法によって実現され、バスバーは、
アルミニウム製の第1の導電層と、
第1の導電層と電子部品を接続するための第1のコネクタ要素とを備え、第1のコネクタ要素は、ニッケルおよび/またはスズで少なくとも部分的に被覆され、第1の導電層は、ニッケルおよび/またはスズからなる被覆を少なくとも部分的に含んでいない。
【0025】
明示的に説明されていない場合であっても、記載された発明の範囲を制限または拡張することなく、個々の実施形態またはそれらの個々の態様および特徴は、そのような組み合わせまたは交換が本発明に関して意味を有する場合には、互いに組み合わせるか、または交換することができる。本発明の一実施形態に関して記載される利点は、適用可能な場合には、本発明の他の実施形態の利点でもある。
【0026】
図1および
図2において、本発明の第1の好ましい実施形態によるバスバー1が、概略的に、即ち、斜視図(
図1)および断面側面図(
図2)で示されている。このようなバスバー1は、バスバー1の上面TS上に配置される電気部品(特に、複数のコンデンサ)の配列の電力を収集および分配するためのものである。主拡張面HSE内に延在するバスバー1は、好ましくは、バスバー1上に直接配置される電気部品のためのキャリアを形成する。特に、バスバー1は、主拡張面HSE内に延在する第1の導電層11を含み、かつ特に、第1の導電層11の外周OPから主拡張面HSEに平行な方向に延在する第1の接触要素12を有し、第1の接触要素12は、いくつかのコンデンサのうちの1つのコンデンサにそれぞれ割り当てられるいくつかの第1種類の極の寄与を集めたバスバー1の共通の極に相当する。好ましくは、第1の導電層11は、第1の導電層11上にコンデンサを直接配置することを可能にする絶縁層(図示せず)によって被覆されている。第1の導電層11に加えて、第2の導電層21が設けられており、第2の導電層21は、第1の導電層11と平行に延在し、好ましくは、第1の導電層11および第2の導電層21は、積層方向Sに沿って互いに積層されている。バスバー1(特に、第1の導電層11および第2の導電層21)は、積層されるか、または平坦な製品を形成しており、即ち、主拡張面HSEにおけるバスバー1の伸長は、主拡張面HSEに垂直な方向で測定されるバスバー1の厚さよりも数倍大きい。特に、第1の導電層11および第2の導電層21は、例えば、0.5mmと5mmとの間、好ましくは、0.75mmと2mmとの間、より好ましくは、1mmと1.5mmとの間の厚さを有する金属板である。特に、第1の導電層11および第2の導電層21の材料および/または構造は、第1の導電層11および第2の導電層21の機能に影響を与えることなく、バスバー1、少なくともバスバー1の一部を変形させることができるように構成されている。従って、例えば、バスバー1の一部を屈曲させることによって、バスバー1またはバスバー1を含むアセンブリが組み込まれるべき空間にバスバー1を容易に適合させることができる。さらに、第2の導電層21は、外周OPにある第2の接触要素22を含み、第2の接触要素22は、いくつかのコンデンサの1つの細孔(pore)に割り当てられる第2種類の極の寄与を集めたバスバー1の共通の極に相当する。
【0027】
コンデンサの第1種類の極(例えば、いくつかの正極)を第1の導電層11に接続し、コンデンサの第2種類の極(例えば、いくつかの負極)を第2の導電層21に接続するために、第1の導電層11用の少なくとも1つの第1のコネクタ要素15が設けられ、第2の導電層21用の少なくとも1つの第2のコネクタ要素25が設けられている。好ましくは、第1のコネクタ要素15は、第1の導電層11から、特に、主拡張面HSEに垂直な方向に突出し、かつ/または第2のコネクタ要素25は、第2の導電層21から、特に、主拡張面HSEに垂直な方向に突出する。さらに、第1のコネクタ要素15および/または第2のコネクタ要素25は、第1の導電層11および/または第2の導電層21の外周OPから間隔をおいて配置されており、好ましくは、第1の導電層11および/または第2の導電層21の内部領域IR内に(即ち、外周OPから間隔をおいて)主拡張面HSEに平行な方向に配置されている。特に、第1のコネクタ要素15および第2のコネクタ要素25は、バスバー1から同じ方向に突出している。特に、第1の導電層11および第2の導電層21は、互いに積層方向Sに沿って上方に配置されており、かつ別の絶縁層(図示せず)によって互いに間隔をおいて配置されるようになっている。
【0028】
好ましくは、第1のコネクタ要素15および第2のコネクタ要素25は、コンデンサをバスバー1に接触させるためのブッシング(即ち、コンデンサのピンを受け入れるための穴35を有する円筒体)である。従って、第1のコネクタ要素15および/または第2のコネクタ要素25は、コンデンサのピンのためのプラグインを形成し、かつプラグインとなるように構成される。さらに、積層方向Sに平行に測定される第1のコネクタ要素15および/または第2のコネクタ要素25の高さが、バスバー1の厚さよりも5倍~15倍大きくなるようになっている。平坦なバスバー1と、第1の導電層11および第2の導電層21の隣接する配置を実現するために、第1の導電層11は、凹部(recesses)30を備えるようになっている。従って、第2のコネクタ要素25は、第1の導電層11を貫通して(特に、第1の導電層11の対応する凹部30を貫通して)延在することができる。特に、第1のコネクタ要素15の高さは、第2のコネクタ要素25の高さよりも小さい。特に、第1のコネクタ要素15および第2のコネクタ要素25の高さは、第1の導電層11および第2の導電層21から離れて対向する第1のコネクタ要素15および第2のコネクタ要素25の前部部位(好ましくは、ブッシングの前部部位)が、第1の導電層11から同じ距離で終了するように選択される。その結果、これらの前面が電気部品(例えば、コンデンサ)に接続されるため、コンデンサをブッシングに接続するための平坦な接続面28が実現される。
図2は、第1の導電層11および第2の導電層21を有するバスバー1を示す。当業者であれば、本発明のアイデアを他の導電層および他のコネクタ要素に拡張することは明らかである。
図1および
図2には示されていないが、第1の導電層11と第2の導電層21との間に配置される別の絶縁層があり、別の絶縁層は、第1の導電層11と第2の導電層21との間の電気的絶縁を保証する。
【0029】
軽量のバスバー1を実現するために、第1の導電層11および/または第2の導電層21はアルミニウムから作製されている。特に、第1のコネクタ要素15および/または第2のコネクタ要素25もまた、アルミニウムから作製されている。腐食または酸化を回避するために、バスバー1はニッケルメッキおよび/またはセレンメッキで被覆される。しかしながら、バスバー1全体をニッケルメッキまたはクラッディングおよび/またはセレンメッキまたはクラッディングで被覆することは、高価であり、製造するのが複雑である。従って、第1の導電層11および/または第2の導電層21がアルミニウム素板から作製され、第1のコネクタ要素11および/または第2のコネクタ要素21(特に第1のコネクタ要素15および/または第2のコネクタ要素25を形成するブッシング)のみが、ニッケルメッキ/クラッディングおよび/またはセレンメッキ/クラッディングによって被覆されるバスバー1が提供される。好ましくは、第1のコネクタ要素15および/または第2のコネクタ要素25の全体が、ニッケルメッキ/クラッディングおよび/またはセレンメッキ/クラッディングにより被覆されている。さらに、ニッケルメッキ/クラッディングおよび/またはセレンメッキ/クラッディングは、第1のコネクタ要素15および/または第2のコネクタ要素25を保護して、特に、電子部品(例えば、コンデンサ)と接触する際に、低い接触抵抗を得ることができる。
【0030】
第1のコネクタ要素15および/または第2のコネクタ要素25のみをセレンメッキ/クラッディングおよび/またはニッケルメッキ/クラッディングで被覆するには、第1の導電層11(特に、アルミニウム素板)と第1のコネクタ要素15との間、および/または第2の導電層21(特に、アルミニウム素板)と第2のコネクタ要素25との間の耐久性および耐性のある接続を実行するための特別な方法が必要である。レーザー溶接技術は、材料を直接溶融して第1のコネクタ要素15と第1の導電層11を接続することができるため、そのような耐久性および耐性のある接続をレーザー溶接によって実現することができることが分かった。
図2に示される実施形態では、ブッシングの一部が第1の導電層11の開口部3内に延在するようにブッシングが構成されるようになっている。特に、開口部3内に延在する一部は、接続面28を形成する前面とは反対側に位置しており、好ましくは、その一部は、開口部3の内側と、特に、主拡張面HSEに平行な方向に沿って、形状が嵌合して接触するように構成されている。さらに、開口部3の内側のブッシングの一部は、積層方向Sに沿って開口部3全体を貫通して延在するようになっている。好ましくは、第1の導電層11と第1のコネクタ要素15との間の接着接続は、開口部3の内側におけるレーザー溶接によって実行されるようになっている。これにより、好ましくは、レーザー溶接シーム10の深さは、第1の導電層11の厚さに依存して適合され、かつそれに応じてレーザー出力を調整することによって実現することができるようになっている。開口部3の内側でレーザー溶接シーム10を実現することの利点は、レーザー溶接シーム10を実現するためのレーザーのアクセスが、特に、第1の導電層11の底面BSから容易に行うことができることである。
【0031】
さらに、ニッケルメッキを使用すると、第1の導電層11と第1のコネクタ要素15との間の接続がより安定し、また、レーザー溶接シーム10は、現在入手可能なレーザーを使用すると、特に、セレンで被覆された第1のコネクタ要素15と比較して、より滑らかとなることが分かった。
【0032】
図3は、本発明の第2の好ましい実施形態によるバスバー1の第1の導電層11を概略的に示す。
図3の第1の導電層11は、電子部品と対向する第1の導電層11の上表面(即ち、上面TS)において実現される、第1のコネクタ要素15と第1の導電層11との間のもう1つのレーザー溶接シーム10’のみが、
図2の第1の導電層11と主に異なる。もう1つのレーザー溶接シーム10’を追加することにより、特に、バスバー1の設計された用途の要件に従って、機械的性能および電気的性能を向上させることが可能であるという利点がある。
【0033】
図4aは、本発明の第3の好ましい実施形態によるバスバー1の第1の導電層11を示す。
図2および
図3に示される実施形態とは対照的に、第1のコネクタ要素15は、第1の導電層11の開口部3内に延在していない。従って、第1の導電層11の上表面19においてもう1つのレーザービームを介してのみ、第1のコネクタ要素15と第1の導電要素11とを接着接続するようになっている。好ましくは、ブッシングが円錐形の形状を有するようになっている。
【0034】
図4bは、本発明の第4の好ましい実施形態によるバスバー1の第1の導電層11を示す。この実施形態では、ブッシングは、電気部品とは反対側の前面にあるカラー16を有し、第1の導電層11の開口部3に挿入されたブッシングは、上表面19ではなく、第1の導電層11の内側にのみ接触する。特に、レーザー溶接シーム10は、カラー16の外周で実現されるようになっている。従って、レーザービームが上表面19に直接向けられるだけでなく、第1の導電層11の底表面(即ち、底面BS)に向けられることによって、レーザー溶接シーム10を実現することが可能であるという利点がある。その結果、レーザー溶接シーム10の製造を早めることができる。
【0035】
図4cは、本発明の第5の好ましい実施形態によるバスバー1の第1の導電層11を示す。この実施形態では、ブッシングは、第1の導電層11上(特に、上表面19上)に配置され、かつ第1の導電層11に対向するブッシングの底部にカラー16を有する。従って、カラー16のところでのブッシングの厚さが減少する。カラー16にレーザー光を照射することにより、第1の導電層11とブッシングとの間(特に、第1の導電層11とカラー16との間)のレーザー溶接シーム10を実現することが可能である。好ましくは、主拡張面に平行な方向におけるカラー16の範囲は、カラー16の領域において実現されるレーザー溶接シーム10が特定の用途に対して十分な強度を有するようにHSE適合されている。
【0036】
第1のコネクタ要素15と第1の導電層11との接続は、同様に、第2のコネクタ要素25と第2の導電層21に適用することができることは当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0037】
1…バスバー
3…開口部
6…クラッディング
10…レーザー溶接シーム
10’…もう1つのレーザー溶接シーム
11…第1の導電層
12…第1の接触要素
15…第1のコネクタ要素
16…カラー
19…上表面
21…第2の導電層
22…第2の接触要素
25…第2のコネクタ要素
28…接続面
30…凹部
35…穴
HSE…主拡張面
S…積層方向
OP…外周
IR…内部領域
TS…上面
BS…底面