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特許7130902ボゾンピークの測定値に基づいて、物質の結晶化度及び/又は密度を測定する方法及び測定装置
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  • 特許-ボゾンピークの測定値に基づいて、物質の結晶化度及び/又は密度を測定する方法及び測定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ボゾンピークの測定値に基づいて、物質の結晶化度及び/又は密度を測定する方法及び測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3563 20140101AFI20220830BHJP
   G01N 21/3586 20140101ALI20220830BHJP
   G01N 9/24 20060101ALI20220830BHJP
   G11B 7/0045 20060101ALI20220830BHJP
   G11B 7/005 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G01N21/3563
G01N21/3586
G01N9/24 A
G11B7/0045 Z
G11B7/005 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017227977
(22)【出願日】2017-11-28
(65)【公開番号】P2019100707
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月15日に、みえ産学官技術連携研究会事業 基盤技術研究会「テラヘルツ波検討会」において発表
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197022
【弁理士】
【氏名又は名称】谷水 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100210619
【弁理士】
【氏名又は名称】井津 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】森 龍也
(72)【発明者】
【氏名】柏木 隆成
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-508104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0298984(US,A1)
【文献】特開2014-062818(JP,A)
【文献】特開2013-167591(JP,A)
【文献】特開昭54-017064(JP,A)
【文献】特開2009-210560(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0238523(US,A1)
【文献】水野英如,ガラスの熱振動と弾性不均一性,The Molecular Simulation Society of Japan,2014年04月30日,vol.16 No.2,94-102,JST資料番号 : L8101A ISSN : 1884-6750
【文献】NAFTALY M. ,Terahertz time-domain spectroscopy: A new tool for the study of glasses in the far infrared ,Journal of Non-Crystalline Solids,2005年10月15日,Vol.351 ,Page.3341-3346 ,JST資料番号 : D0642A ISSN : 0022-3093
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - 21/61
G01N 9/24
G11B 7/00 - 7/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質の結晶化度及び/又は密度を測定する方法であって、
前記物質の結晶化度は、ボゾンピークのピーク強度から決定し、
前記物質の密度は、ボゾンピークのシフト量から決定することを特徴とする、物質の結晶化度及び/又は密度測定方法。
【請求項2】
前記物質のボゾンピークは、テラヘルツ分光測定法を用いて測定することを特徴とする、請求項1に記載の結晶化度及び/又は密度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボゾンピークの測定値に基づいて結晶化度及び/又は密度を測定する方法及び測定装置に関する。さらに詳しくは、テラヘルツ分光測定法を用いたボゾンピーク測定により、物質の結晶化度及び/又は密度を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料や無機材料からなる成形品等は、原子や分子が規則的に配列した結晶状態や、原子や分子が不規則に配列したアモルファス(ガラス)状態が存在し、両者が適当な割合で存在している。
そして成形品等の結晶化度や密度は、機械強度、耐熱性、ガスの透過性及びバリア性等の物性と密接に関係しており、それらの物性を制御するための重要な指標であるといえ、正確に測定できることが上記物性等の改良に大きく寄与できることは明らかである。
【0003】
成形品等の結晶化度を測定する方法としては、NMR、X線結晶解析、DSC、密度法、赤外分光法(透過法)、赤外分光法(ATR法)、赤外分光法(拡散反射法)及びラマン分光法などを用いた方法が知られている。これらの中で、NMR、X線結晶解析、DSC、密度法、赤外分光法(ATR法)、及び赤外分光法(拡散反射法)は、測定に際し、測定対象の成形品を所定のサイズにカッティング又は粉砕したり、加熱したり、水中に投入したり、プリズムなどの別部材を接触させたりする。そのため、例えば、生産ラインにおける製品の結晶化度の測定など、非破壊・非接触での測定が要求される場合、上記方法は採用することができない。
【0004】
一方、X線結晶解析、DSC、赤外分光法(ATR法)、赤外分光法(拡散反射法)及びラマン分光法は、原理上、測定対象の樹脂成形品の表面近傍における結晶化度を測定するものである。そのため、得られる結晶化度は表層部分における結晶化度であり、肉厚方向全体の結晶化度(平均値)の測定をしたい場合、特に肉厚が厚い樹脂成形品の内部の結晶化度を非破壊にて測定したい場合には上記測定方法は採用することができない。
【0005】
赤外分光法(透過法)は、測定に際し樹脂成形品を破壊することも、別部材が接触することもなく、さらに樹脂成形品を透過した赤外光を測定することから、樹脂成形品の肉厚方向全体の結晶化度(平均値)を非破壊かつ非接触で測定し得ると考えられる。赤外分光法(透過法)により実際に樹脂の結晶化度を評価した例としては、フーリエ変換型赤外線分光光度計を用い、透過法により前記樹脂成形品の赤外吸収スペクトルを測定し、該赤外吸収スペクトルのうち、波数領域4500~2000cm-1の範囲における赤外吸収スペクトルの測定値に基づいて前記樹脂成形品の前記肉厚部位の結晶化度を算出することを特徴とする樹脂成形品の結晶化度測定方法が知られている(特許文献1)。
更に、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)を用いてポリエチレン樹脂の密度を測定する方法も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-4665号公報
【文献】特開2017-020800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
結晶化度測定方法として、上記特許文献1の方法は、原料樹脂特有の結晶部分の吸収ピークと、非晶部分の吸収ピークとを帰属し、両者の差スペクトルを計算にて求める等、結晶化度を求めるために煩雑な操作や計算、さらにある程度の厚さを有する試料を用意する必要があった。
更に、密度測定方法としても、上記特許文献2の方法は、煩雑な測定手法を用いる必要があった。
そして、物質の結晶化度又は密度を測定する方法において、直接結晶化度及び/又は密度を測定できる方法はあまり知られていない。
【0008】
そこで、本発明は、材料の結晶化度及び/又は密度の直接測定方法として、ボゾンピークの測定値に基づいて、前記結晶化度及び/又は密度を測定する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、鋭意検討した結果、ボゾンピークを測定することで、成型体等の材料において、結晶化度及び/又は密度を直接測定できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の結晶化度及び/又は密度の測定方法及び測定装置である。
【0010】
本発明の物質の結晶化度及び/又は密度の測定方法は、ボゾンピークの測定値に基づくことを特徴とする。
この特徴によれば、物質の結晶化度及び/又は密度を直接測定することができるため、測定値の変換等を行う必要がなく、簡易に結晶化度及び/又は密度を測定することができる。
【0011】
本発明の測定方法の一実施態によれば、前記ボゾンピークはテラヘルツ分光測定法を用いて測定することを特徴とする。
この特徴によれば、ボゾンピークを明瞭に測定できることとなり、物質の結晶化度及び/又は密度を明確に測定することができる。
【0012】
本発明の測定装置は、ボゾンピークの測定値に基づいて、物質の結晶化度及び/又は密度を測定することを特徴とする。
この特徴によれば、煩雑な操作や計算を行う必要なく、簡易に結晶化度又は密度の値を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、煩雑な操作や計算を行う必要がなく、物質の結晶化度及び/又は密度を簡易に測定することができる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の結晶化度測定装置の概略図である。
図2】本発明の測定装置で測定した、結晶化度の異なるグルコース成形体のボゾンピークを示すグラフである。
図3】本発明の測定装置で測定した、密度の異なるシリカ成形体のボゾンピークを示すグラフである。
図4】テラヘルツ光を用いた、物質への書き込み、消去ができるメモリへの応用例である。
図5】テラヘルツ光を用いたメモリの読み込み応用例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態を含めて説明する。
本発明の物質の結晶化度又は密度を測定する方法は、テラヘルツ分光測定法を用いてボゾンピークを測定し、前記測定値に基づいて、物質の結晶化度及び/又は密度を測定する方法である。なお、本明細書において、テラヘルツ分光測定法は、THz-TDSともいう。
【0016】
[結晶化度及び/又は密度測定方法]
本発明の結晶化度及び/又は密度を測定する対象物質としては、例えば有機材料、無機材料、高分子材料等の材料が挙げられ、圧縮成型、溶融成型等で成型した成形物や、天然物等が挙げられる。前記、成形材料や天然物としては、例えば、高分子樹脂成形品や無機ガラス等が挙げられる。
本発明では、上記物質に対して、テラヘルツ光を照射し、ボゾンピークを測定する。
【0017】
ボゾンピークとは、テラヘルツ領域で観測されるアモルファス(ガラス)に普遍的な励起(振動モード)である。ボゾンピークは、テラヘルツ分光、低波数ラマン散乱、中性子非弾性散乱、中性子X線散乱および低温比熱等で観測することが可能である。
特に、テラヘルツ分光測定法を用いることで、明瞭にボゾンピークを検出することが可能であるため、ボゾンピークの測定はテラヘルツ分光測定法を用いることが好ましい。ボゾンピークのピークは、周波数を横軸として、縦軸を吸収係数α(アルファ)を周波数ν(ニュー)の2乗で除したα/νとしたときのプロットで現れるピークである。
テラヘルツ分光測定法を用いることで、アモルファス状態であれば熱可塑性樹脂等の成形体に限らず、どのような構造の材料でもボゾンピークの検出が可能である。また、ラマン用レーザーによる発光や吸収に起因し測定が困難な試料に対しても、テラヘルツ光を用いることでボゾンピークが明確に検出できるため好ましい。
【0018】
テラヘルツ分光測定法に用いる測定装置について図1を用いて説明する。
測定対象の試料を測定位置1にセットし、フェムト秒レーザー4を用いて照射した光をテラヘルツエミッタ(発信器)2によりテラヘルツ光に変換し、前記テラヘルツ光を試料に照射し、透過したテラヘルツ光をテラヘルツ検出器3で検出することで、ボゾンピークを測定できる。
【0019】
本発明の測定方法を用いて測定を行う試料の形状、厚さについては特に限定されないが、テラヘルツ光は透過性が良く、1mm以上の試料であっても測定することが可能である。
更に、テラヘルツ光は可視光等に比べ波長が大きいことから、試料表面のキズ等に影響されず、試料表面について研磨処理等をする必要がない。
【0020】
テラヘルツ分光測定法による測定方法は、試料にあわせて選択すればよい。測定方法としては、例えば、透過法、反射法、ATR法等の測定方法を用いればよく、試料全体の結晶化度や密度を測定したければ、透過法を用い、試料表面や、厚み方向のある位置や範囲の結晶化度や密度を測定したければ、反射法、ATR法を用いればよい。
【0021】
テラヘルツ光とは、サブミリ波、遠赤外線とも呼ばれ、特に、周波数が、0.1THz以上100THz以下の電磁波をいう。例えば、1THz(周波数)=33.3cm―1(波数)=4.2meV=300μmとなる。
テラヘルツ分光とは、さまざまな波長が含まれている光を上記0.1THz以上100THz以下の波長成分に分けることである。
そして、テラヘルツ分光測定法とは、前記分光したテラヘルツ光を、対象試料に照射して、前記試料の吸収ピークや透過率等を測定する方法である。
【0022】
本発明の測定温度については、特に限定されず、例えば、絶対零度(-273℃)から100℃程度まで測定することが可能である。特に、ある温度での結晶化度の変化を測定したい場合は、測定温度を変化させつつ測定すればよい。
【0023】
さらに、本発明に測定方法は、製造ライン等において、製品を連続で測定することも可能である。製品製造時や出荷時において、コンベアに前記測定装置を設置しておき、オンラインで測定を行うことも可能である。
【0024】
次いで、本発明の物質の結晶化度及び/又は密度の測定方法における手順について説明する。
<結晶化度の決定手順>
本発明において結晶化度を決定する方法は、ボゾンピークのピーク強度から直接決定することが可能である。
ボゾンピークは吸収係数α(アルファ)を周波数ν(ニュー)の2乗で除したα/νのプロットで現れるピークである。吸収係数αは物質によって決定される絶対値であり、ボゾンピークのピーク強度は結晶におけるユニットセルのサイズに対応しているから、ボゾンピークのピーク強度から、結晶化度を直接決定することができる。例えば、ボゾンピークは、アモルファス(ガラス)に普遍的な励起(振動モード)であるから、そのピーク強度が半分になれば、結晶化度が50%であること、ピークが消失すれば結晶化度が100%であると推測できる。
また、予め結晶化度が既知の材料について、ボゾンピーク測定を行い、検量線を作成しておくことで、結晶化度を簡易に求めることもできる。
【0025】
<密度の決定手順>
更に、ボゾンピークは物質が密な状態(密度が大きい)の場合は高周波数側にシフトすること、疎な状態(密度が小さい)の場合には低周波数側にシフトすることから、基準となる密度を有する物質のボゾンピークにおけるピーク強度の周波数を決定しておけば、そのシフト量から密度を決定することも可能である。
そして、ボゾンピークの強度及びシフト量を同時に測定することで、物質の結晶化度と密度を同時に測定することが可能である。
【0026】
[その他の用途への応用]
本発明の結晶化度及び/又は密度の測定方法は、延伸された樹脂材料、多層構造からなる材料や有機無機複合材料の物性測定にも応用することができる。
例えば、延伸された樹脂材料であれば、延伸条件における結晶化度を直接観測することが可能となる。積層された樹脂積層体であれば、一層のみ測定することも可能であり、二層以上の層をまとめて測定し、それぞれ結晶化度等を測定することも可能である。
更に、有機無機複合材料であれば、これまで測定することができなかった、有機無機材料の平均の結晶化度を測定することも可能である。
また、高強度テラヘルツ光等の電磁波等を用いて、異なる結晶化度を有する材料を作成する等、情報の書き込みを行うことができる。これらを組み合わせることで、非晶質物質とテラヘルツ光を用いた多進数メモリ等の新規メモリ媒体および記録手法を実現することも可能である。
【0027】
次に、図4図5を参照にして、本発明の応用例である情報の書き込みや多進数メモリの一例について説明する。
例えば、結晶化度100%の物質に、テラヘルツ光等の電磁波を照射して、各部分の結晶化度を変化させ、結晶化度の異なる材料を作成することができる。これは、実質的にメモリの書き込みに相当する。また、結晶化度を変化させた物質に、テラヘルツ光等の電磁波を照射して、結晶化度100%の物質に戻すことも可能である。これは、実質的にメモリの消去に相当する。
【0028】
例えば、図4において、結晶化度がいずれも100%のセルa~cからなる3つのセルからなる物質に対して、セルb用書き込みテラヘルツ光、セルc用書き込みテラヘルツ光を照射する。テラヘルツ光照射後、結晶化度が100%のままのセルa、結晶化度が75%となったセルb、結晶化度が50%となったセルcからなる物質が得られることとなり、書き込みが成立したこととなる。
次いで、上記書き込みが成立した物質を元の状態に戻すためには、消去用テラヘルツ光を照射することで、元の結晶化度100%の物質に戻すことが可能である。
ここで、書き込みテラヘルツ光の強度、照射時間、照射周波数は、例えば物質の性質、結晶化度等に合わせて適宜設定すればよく、消去用テラヘルツ光についても、適宜設定すればよい。
【0029】
次に図5を用いて、読み込みや多進数メモリについて説明する。例えば、図4で説明したように、結晶化度が100%のセルa、結晶化度が75%のセルb、結晶化度が50%のセルcに対して、読み込みテラヘルツ光を照射し、各セル部分のボゾンピークを測定する。結晶化度はボゾンピークのピーク強度で明確に表すことが可能であるから、予め各結晶化度に対して三進法の0、1、2を割り当てておけば、三進数メモリとして応用することが可能である。
これは、ボゾンピークの測定値に基づき、物質の結晶化度を明確に測定することができるという本発明の効果を用いることで、初めて達成することができる。
また、図5はテラヘルツ光を物質に透過させることで読み込みをさせているが、物質の種類、厚さ等にあわせて反射法等を利用することも可能である。
【実施例
【0030】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。
実施例1
グルコース成形体のボゾンピーク測定及び結晶化度測定
まず、D-(+)-グルコース(シグマアルドリッチ社 融点423K ガラス転移温度310K)について溶融冷却法を用いて固体状成形物を作成した。次いで、得られた固体状成形物を図1に示す測定装置にセットし、ボゾンピークの測定を行った。測定条件として、温度を14K(-259℃)~320K(47℃)の範囲で測定した。結果を図2のグラフに示す。なお、グルコースのボゾンピークは14Kにおいて明瞭に観測されているが、温度が上がるにつれてGHz帯以下に存在する緩和モードの影響で、室温ではボゾンピークが見えにくくなっている。そこで、その緩和の裾のスペクトル構造が誘電率虚部において定数であるという理論を利用して、緩和の寄与を差し引くことで、室温のスペクトルからボゾンピークを明瞭に評価することができる。
そして、ボゾンピークはアモルファス(ガラス)に普遍的な励起(振動モード)であることから、ボゾンピークにピーク強度がゼロになれば結晶化度が100%であること、ピーク強度が半分になれば結晶化度が50%であると判断することが可能である。
【0031】
実施例2
シリカ成形体の密度測定
表1に示すように、ベルト型高圧装置を用いて、高温高圧下で異なる密度を有するシリカ成形体を作成した。作成したシリカ成形体を図1に示す測定装置にセットし、ボゾンピークの測定を行った。結果を図3のグラフに示す。
図3のグラフから、高密度化するにつれて、ボゾンピークが高周波側にシフトしていることが理解できる。例えば、ボゾンピークのシフト量と密度についての検量線等を作成しておけば、直接密度を測定することが可能である。
【0032】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の物質の結晶化度及び/又は密度の測定方法は、ボゾンピークの測定値を用いることを特徴とするため、物質の結晶化度及び/又は密度を直接測定することができる。
【0034】
また、本発明の測定装置は、物質の結晶化度及び/又は密度を直接測定することができる。
【0035】
更に、本発明の結晶化度及び/又は密度の測定方法は、今後、新規メモリ媒体及び記録手法を実現することができる。
【符号の説明】
【0036】
1・・・測定試料、2・・・テラヘルツ光発信器、3・・・テラヘルツ光検出器、4・・・フェムト秒レーザー
図1
図2
図3
図4
図5