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特許7130955三次元配線基板の製造方法および三次元配線基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】三次元配線基板の製造方法および三次元配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 N
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017248883
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019114736
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】岡田 貴行
(72)【発明者】
【氏名】松原 大悟
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-225611(JP,A)
【文献】特開平09-001728(JP,A)
【文献】特開2012-015405(JP,A)
【文献】特開平05-238827(JP,A)
【文献】特開平02-151753(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154692(WO,A1)
【文献】特開2008-048273(JP,A)
【文献】特開平06-160328(JP,A)
【文献】特開平04-320301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体と、前記絶縁体の内部に設けられた面内導体と、前記面内導体を支持する層間支持体とを備える三次元配線基板の製造方法であって、
焼成時に消失するシートに、前記面内導体を構成するための導体ペースト、および、前記層間支持体を構成するための層間支持体ペーストを塗工する工程と、
前記導体ペーストおよび前記層間支持体ペーストが塗工されたシートを含む複数のシートを積層して、未焼成積層体を形成する工程と、
前記未焼成積層体を焼成することによって、前記シートを消失させ、かつ、前記導体ペーストと前記層間支持体ペーストとを焼結させる工程と、
前記シートが消失した部分の少なくとも一部に絶縁材料を配置して硬化させる工程と、
を有し、前記未焼成積層体を構成する前記複数のシートには、金属導体ペーストを有するセラミックグリーンシートは含まれないことを特徴とする三次元配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記三次元配線基板は、前記面内導体および前記層間支持体をそれぞれ複数備えたものであって、
複数の前記面内導体はそれぞれ、複数の前記層間支持体のうちの少なくとも1つと接していることを特徴とする請求項1に記載の三次元配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記三次元配線基板の内部に位置する前記面内導体は、複数の前記層間支持体のうち少なくとも2つと接していることを特徴とする請求項2に記載の三次元配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記層間支持体は、ビア導体を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の三次元配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記層間支持体は、非導電性のセラミック体を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の三次元配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記未焼成積層体の焼成後であって、かつ、前記絶縁材料を配置する前に、前記面内導体および前記層間支持体にめっき処理を施す工程をさらに備えることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の三次元配線基板の製造方法。
【請求項7】
金属導体を含むセラミック層を備えていない三次元配線基板であって、
焼成体ではない絶縁体と、
前記絶縁体の内部に設けられた複数の面内導体と、
前記複数の面内導体を支持する層間支持体と、
を備え、
前記面内導体の表面全体に凹凸が形成されており、
前記絶縁体は、前記面内導体の凹凸の凹部内に入り込んでおり、
前記面内導体および前記層間支持体は、焼結体であることを特徴とする三次元配線基板。
【請求項8】
前記面内導体の上面および下面の表面には、めっき膜が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の三次元配線基板。
【請求項9】
前記複数の面内導体は、それぞれ平板状の形状を有し、
隣り合う前記面内導体同士の間には、前記絶縁体である感湿材が配置されていることを特徴とする請求項7または8に記載の三次元配線基板。
【請求項10】
前記複数の面内導体が配置されている方向の両外側には、前記金属導体を含まないセラミック層が配置されていることを特徴とする請求項7~9のいずれかに記載の三次元配線基板。
【請求項11】
前記層間支持体は、前記絶縁体の外側表面に配置された一対の外部電極であって、
隣り合う二つの前記面内導体のうちの一方は、前記一対の外部電極のうちの一方と接続され、前記隣り合う二つの面内導体のうちの他方は、前記一対の外部電極のうちの他方と接続されていることを特徴とする請求項7~10のいずれかに記載の三次元配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元配線基板の製造方法および三次元配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
基板内部の複数層に導体を設けた三次元配線基板が知られている。そのような三次元配線基板の一つである積層セラミック基板は、例えば、セラミックグリーンシート上に導体パターンを形成し、導体パターンを形成した複数のセラミックグリーンシートを積層して焼成することによって製造することができる。
【0003】
しかしながら、セラミックグリーンシートの焼成によって基板が変形し、導体の位置が変わる場合がある。
【0004】
特許文献1には、先行セラミック基板を作製することによって、先行セラミック基板と、基板表面の先行導体パターンの変形度を予め把握し、製造後の積層セラミック基板の導体の配置位置の精度を向上させる方法が記載されている。
【0005】
すなわち、特許文献1に記載されている積層セラミック基板の製造方法では、先行セラミック基板を作製することによって、先行セラミック基板と先行導体パターンの変形度を把握し、先行セラミック基板と先行導体パターンの変形度に基づいて、セラミックグリーンシートに導体パターンを形成する。そして、複数のセラミックグリーンシートを積層して焼成することによって、導体の配置位置の精度を向上させた積層セラミック基板を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-96821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した製造方法では、導体パターンによって焼成時の変形度合いが変化するため、様々な導体パターンに応じた、導体の位置精度の高い基板を製造することが困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、位置精度の高い導体を有する三次元配線基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の三次元配線基板の製造方法は、
絶縁体と、前記絶縁体の内部に設けられた面内導体と、前記面内導体を支持する層間支持体とを備える三次元配線基板の製造方法であって、
焼成時に消失するシートに、前記面内導体を構成するための導体ペースト、および、前記層間支持体を構成するための層間支持体ペーストを塗工する工程と、
前記導体ペーストおよび前記層間支持体ペーストが塗工されたシートを含む複数のシートを積層して、未焼成積層体を形成する工程と、
前記未焼成積層体を焼成することによって、前記シートを消失させ、かつ、前記導体ペーストと前記層間支持体ペーストとを焼結させる工程と、
前記シートが消失した部分の少なくとも一部に絶縁材料を配置して硬化させる工程と、
を有し、前記未焼成積層体を構成する前記複数のシートには、金属導体ペーストを有するセラミックグリーンシートは含まれないことを特徴とする。
【0010】
前記三次元配線基板は、前記面内導体および前記層間支持体をそれぞれ複数備えたものであって、
複数の前記面内導体はそれぞれ、複数の前記層間支持体のうちの少なくとも1つと接していてもよい。
【0011】
前記三次元配線基板の内部に位置する前記面内導体は、複数の前記層間支持体のうち少なくとも2つと接していてもよい。
【0012】
前記層間支持体は、ビア導体を含んでいてもよい。
【0013】
前記層間支持体は、非導電性のセラミック体を含んでいてもよい。
【0014】
前記未焼成積層体の焼成後であって、かつ、前記絶縁材料を配置する前に、前記面内導体および前記層間支持体にめっき処理を施す工程をさらに備えていてもよい。
【0015】
本発明による三次元配線基板は、金属導体を含むセラミック層を備えていない三次元配線基板であって、
焼成体ではない絶縁体と、
前記絶縁体の内部に設けられた複数の面内導体と、
前記複数の面内導体を支持する層間支持体と、
を備え、
前記面内導体の表面全体に凹凸が形成されており、
前記絶縁体は、前記面内導体の凹凸の凹部内に入り込んでおり、
前記面内導体および前記層間支持体は、焼結体であることを特徴とする。
【0016】
前記面内導体の上面および下面の表面には、めっき膜が形成されていてもよい。
【0017】
前記複数の面内導体は、それぞれ平板状の形状を有し、
隣り合う前記面内導体同士の間には、前記絶縁体である感湿材が配置されていてもよい。
【0018】
前記複数の面内導体が配置されている方向の両外側には、前記金属導体を含まないセラミック層が配置されていてもよい。
【0019】
前記層間支持体は、前記絶縁体の外側表面に配置された一対の外部電極であって、
隣り合う二つの前記面内導体のうちの一方は、前記一対の外部電極のうちの一方と接続され、前記隣り合う二つの面内導体のうちの他方は、前記一対の外部電極のうちの他方と接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の三次元配線基板の製造方法によれば、焼成時に消失するシートに、導体ペーストおよび層間支持体ペーストを塗工して積層してから焼成することによって、シートを消失させ、シートが消失した部分の少なくとも一部に絶縁材料を配置して硬化させるので、変形が抑制され、位置精度の高い面内導体を有する三次元配線基板を製造することができる。すなわち、セラミックグリーンシート上に電極パターンを形成してから焼成する従来の製造方法のような、セラミック基板の変形によって、基板内部の導体の配置位置が設計した位置から変動してしまうことを防ぐことができる。
【0021】
また、本発明の三次元配線基板は、例えば、焼成時に消失するシート上に導体ペーストを塗工してから焼成し、シートが消失した部分に絶縁材料を配置して硬化させるような方法によって製造することにより、面内導体の表面全体に凹凸が形成され、絶縁体が面内導体の凹凸の凹部内に入り込んだ構造となる。そのような構造を有する三次元配線基板の面内導体は、変形が抑制され、位置精度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施形態における三次元配線基板の斜視図である。
図2】第1の実施形態における三次元配線基板をII-II線で切断した場合の側面図である。
図3】面内導体と絶縁体との界面の拡大図である。
図4】第1の実施形態における三次元配線基板の製造方法を説明するための図である。
図5】第2の実施形態における三次元配線基板の部分拡大図であって、詳しくは、三次元配線基板内に設けられている面内導体および層間支持体の側面拡大図である。
図6】第3の実施形態における三次元配線基板としての湿度計の斜視図である。
図7図6に示す湿度計をVII-VII線で切断した場合の断面図である。
図8】湿度計の製造方法について説明するための図である。
図9】湿度計の製造工程において作製される未焼成マザー積層体の側面図である。
図10】隣り合う面内導体の間に、非導電性の層間支持体を設けた湿度計の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところを具体的に説明する。
【0024】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態における三次元配線基板100の斜視図である。また、図2は、第1の実施形態における三次元配線基板100をII-II線で切断した場合の側面図である。なお、図1では、図2に示す表面電極10を省略している。
【0025】
三次元配線基板100は、絶縁体1と、複数の面内導体2と、面内導体2を支持する複数の層間支持体3とを備える。
【0026】
絶縁体1は、例えば樹脂やガラスであって、互いに対向する一方主面1aおよび他方主面1bを有する。
【0027】
面内導体2は、絶縁体1の内部に、一方主面1aおよび他方主面1bと平行に設けられている。面内導体2は、高さの異なる位置、すなわち、Z軸方向における異なる位置に複数設けられており、例えばコイルやキャパシタを構成する。図1に示す構成例では、面内導体2として、絶縁体1の内部にコイルを形成する面内導体2a~2cとキャパシタを形成する面内導体2d~2eとを備える。
【0028】
面内導体2は全て、複数の層間支持体3のうちの少なくとも1つと接している。特に、絶縁体1の内部に位置する面内導体2は、複数の層間支持体3のうちの少なくとも2つと接している。絶縁体1の内部に位置する面内導体2a~2eは、その両端でそれぞれ層間支持体3と接続されていてもよい。その場合、例えば、コイルを構成する面内導体2a~2cであれば、面内導体の全長をコイルパターンとすることができる。
【0029】
なお、図2では、一部の面内導体2は、層間支持体3と接していない、すなわち、層間支持体3によって支持されず浮いているように見えるが、これは、図2図1のII-II線断面図であることから、一部の面内導体2が層間支持体3と接していない領域が図示されているものであり、実際には、全ての面内導体2はいずれかの位置で層間支持体3と接している。
【0030】
層間支持体3は、面内導体2を支持する。より詳しくは、層間支持体3は、後述する三次元配線基板100の製造時に、Z軸方向における異なる位置に設けられている面内導体2を支持する。
【0031】
本実施形態では、層間支持体3は、絶縁体1の内部に設けられている。層間支持体3には、異なる層に設けられている複数の面内導体2間、および、面内導体2と後述する表面電極との間を導通するためのビア導体が含まれている。例えば、層間支持体3は、面内導体2a~2cとともにコイルを構成する。
【0032】
層間支持体3には、導電性のビア導体の他に、非導電性の支持体が含まれていてもよい。非導電性の支持体とは、例えばセラミック材料からなるセラミック体である。層間支持体3を非導電性にすることで、例えば、図1の面内導体2dと面内導体2eの間のように層間支持体3同士で絶縁性を保ちながら、一方がもう一方を支持することができる。
【0033】
面内導体2および層間支持体3の表面全体には凹凸が形成されている。この凹凸は、後述するように、三次元配線基板100の製造時の焼成工程で形成される。面内導体2および層間支持体3の表面粗さRaは、例えば0.6μm以上である。
【0034】
なお、参考までに、従来のプリント基板上に配置されている、めっき膜が施された電極の表面粗さRaは、0.5μm以下である。
【0035】
図3は、面内導体2と絶縁体1との界面の拡大模式図である。上述したように、面内導体2の表面には凹凸が形成されている。図3に示すように、絶縁体1は、面内導体2の表面の凹凸を構成している凹部21内に入り込んでいる。
【0036】
同様に、絶縁体1は、層間支持体3の表面の凹凸を構成している凹部内にも入り込んでいる。
【0037】
本実施形態における三次元配線基板100は、絶縁体1の一方主面1aおよび他方主面1bに、導電性の層間支持体3と接続された表面電極10をさらに備える。表面電極10は、層間支持体3を介して、面内導体2と電気的に接続されている。表面電極10には、例えば、図示しない電子部品が実装される。
【0038】
(三次元配線基板の製造方法)
図4は、第1の実施形態における三次元配線基板100の製造方法を説明するための図である。
【0039】
まず、事前に用意したカーボンシート41に、面内導体2を構成するための導体ペースト42、および、層間支持体3を構成するための層間支持体ペースト43を塗工する(図4(a))。カーボンシート41は、焼成時に消失するシートである。
【0040】
導体ペースト42は、カーボンシート41上に配置する。また、層間支持体ペースト43は、カーボンシート41に貫通孔を設け、この貫通孔を充填するように配置する。導体ペースト42および層間支持体ペースト43として、例えば、Ag、CuまたはNiなどを含む導電性ペーストを用いる。
【0041】
なお、導電性の層間支持体3以外に、非導電性の層間支持体3、例えばセラミック体を配置する場合には、カーボンシート41に貫通孔を設け、貫通孔にセラミックスラリーを充填すればよい。
【0042】
導体ペースト42および層間支持体ペースト43を配置したカーボンシート41は、積層する各層に対応する分を作製する。三次元配線基板100の構造によっては、層間支持体ペースト43のみを配置したカーボンシート41や、導体ペースト42および層間支持体ペースト43を配置しないカーボンシート41を用意する。
【0043】
また、積層方向の最も外側に配置するカーボンシート41には、表面電極10を構成するための表面電極ペースト44を配置する。表面電極ペースト44として、導体ペースト42および層間支持体ペースト43と同じ導電性ペーストを用いることができる。
【0044】
上述した方法によって各層分用意したカーボンシート41を積層し、未焼成積層体45を作製する(図4(b))。
【0045】
なお、図4(b)では、カーボンシート41の輪郭線を省略している。
【0046】
続いて、未焼成積層体45を焼成する。焼成温度は、例えばAgを主成分とする導体ペーストを用いる場合は900℃、Cuを主成分とする導体ペーストを用いる場合は1000℃である。未焼成積層体45を焼成することによって、カーボンシート41は消失し、導体ペースト42、層間支持体ペースト43および表面電極ペースト44は焼結する。これにより、面内導体2、層間支持体3および表面電極10だけが形成される(図4(c))。この際、カーボンシートは、セラミックグリーンシートに比べて熱収縮が小さいため、焼成による変形を抑制することができ、位置および形状を高精度に保つことができる。
【0047】
また、カーボンシート41が消失し、かつ、導体ペースト42、層間支持体ペースト43および表面電極ペースト44が焼結するので、形成される面内導体2、層間支持体3および表面電極10の表面全体に凹凸が形成される。
【0048】
なお、図4(c)では、どこにも接続されていない面内導体2および表面電極10が存在するように見えるが、全ての面内導体2は、いずれかの層間支持体3と接続されている。また、全ての表面電極10もいずれかの層間支持体3と接続されている。すなわち、全ての面内導体2、層間支持体3および表面電極10は一体的につながっている。
【0049】
このように、焼成時にカーボンシート41が消失することによって、位置および形状が高精度に保たれた面内導体2、層間支持体3および表面電極10だけが残る。
【0050】
すなわち、導電性ペーストを塗工したセラミックグリーンシートを焼成する従来の製造方法では、焼成によってセラミックが形成される際の変形によって、導体の位置が変化する場合がある。しかしながら、本実施形態の製造方法では、上述したように、焼成によってカーボンシート41が消失するので、位置および形状が高精度に保たれた面内導体2、層間支持体3および表面電極10を形成することができる。
【0051】
最後に、カーボンシート41が消失した部分に、流動性を有する絶縁材料を流し込んで硬化させる。例えば、絶縁材料を流し込むための金型を用意して、金型内に、一体化している面内導体2、層間支持体3および表面電極10を配置する。そして、金型内に絶縁材料を流し込んで硬化させる。流動性を有する絶縁材料は、例えば熱硬化性樹脂や液体ガラスである。絶縁材料が硬化することによって、絶縁体1が形成される(図4(d))。
【0052】
絶縁材料は、カーボンシート41が消失した部分と全く同じ位置に配置する必要はない。例えば、カーボンシート41が消失した部分の一部にだけ絶縁材料を配置してもよいし、カーボンシート41が消失した部分を包含するように、より広い部分に絶縁材料を配置してもよい。
【0053】
すなわち、製造される三次元配線基板100が所望の形状となるように、カーボンシート41が消失した部分の少なくとも一部に絶縁材料を配置すればよい。ただし、製造された三次元配線基板100において、導電性の面内導体2および導電性の層間支持体3は、絶縁体1で覆われていることが好ましい。
【0054】
上記のように、カーボンシート41が消失した部分に、流動性を有する絶縁材料を流し込むので、面内導体2および層間支持体3の表面に形成されている凹凸の凹部内に絶縁材料が入り込む。これにより、製造された三次元配線基板100では、面内導体2の表面の凹凸を構成している凹部内に入り込むような態様で絶縁体1が形成され、面内導体2および層間支持体3が絶縁体1と密着する。
【0055】
なお、絶縁材料を流し込んだ際に、表面電極10の表面に絶縁材料が付着した場合には、表面に付着した絶縁材料を取り除くようにすればよい。
【0056】
また、表面電極ペースト44を塗工していない未焼成積層体45を作製して焼成し、絶縁体1を形成した後に、表面電極10を配置するようにしてもよい。
【0057】
<第2の実施形態>
第2の実施形態における三次元配線基板100Aが第1の実施形態における三次元配線基板100と異なるのは、面内導体2および層間支持体3の表面に、めっき膜が形成されている点であり、その他の構成は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0058】
図5は、第2の実施形態における三次元配線基板100Aの部分拡大図であって、詳しくは、三次元配線基板100A内に設けられている面内導体2および層間支持体3の側面拡大図である。図5に示すように、面内導体2の上面および下面の表面には、めっき膜50が形成されている。また、面内導体2の側面の表面にも、めっき膜50が形成されている。さらに、層間支持体3の表面にもめっき膜が形成されている。図示は省略するが、表面電極10の表面にもめっき膜が形成されている。
【0059】
めっき膜50が形成された面内導体2および層間支持体3の表面粗さRaは、めっき膜50が形成されていない面内導体2および層間支持体3の表面粗さRaと略同程度である。
【0060】
めっき膜50の形成は、第1の実施形態で説明した三次元配線基板の製造工程のうち、未焼成積層体45の焼成後であって、かつ、絶縁材料を流し込む前に行う。めっき膜50の形成方法は、電解めっきでも無電解めっきでもよい。
【0061】
上述したように、未焼成積層体45の焼成後、すなわち、カーボンシート41の消失後に、面内導体2、層間支持体3および表面電極10にめっき膜を形成することにより、面内導体2、層間支持体3および表面電極10の表面全体にめっき膜を形成することができる。
【0062】
<第3の実施形態>
上述した第1の実施形態における三次元配線基板100および第2の実施形態における三次元配線基板100Aは、例えば、コイルやキャパシタを備える基板であるものとして説明した。
【0063】
第3の実施形態では、三次元配線基板が、感湿材を備えた湿度計であるものとして説明する。
【0064】
図6は、第3の実施形態における三次元配線基板としての湿度計200の斜視図である。また、図7は、図6に示す湿度計200をVII-VII線で切断した場合の断面図である。
【0065】
湿度計200は、感湿材61と、複数の面内導体62a、62bと、一対の外部電極63a、63bと、セラミック層64とを備える。
【0066】
面内導体62a、62bは、それぞれ平板状の形状を有し、例えばCuを含む材料により構成されている。面内導体62aは、外部電極63a側に引き出され、外部電極63aと接続されている。また、面内導体62bは、外部電極63b側に引き出され、外部電極63bと接続されている。
【0067】
面内導体62aと面内導体62bは、Z軸方向において、感湿材61を介して交互に配置されている。Z軸方向において隣り合う面内導体62aと面内導体62bとの間隔は全て同一、または、略同一である。
【0068】
なお、第2の実施形態における三次元配線基板100Aの面内導体2と同様に、面内導体62aおよび面内導体62bの表面にめっき膜を形成してもよい。
【0069】
感湿材61は、Z軸方向において隣り合う面内導体62aと面内導体62bとの間に配置されている。感湿材61として、例えば、親水性高分子であるセルロース化合物やポリビニール化合物を用いることができる。
【0070】
一対の外部電極63a、63bは、例えばCuを含む材料により構成されており、湿度計200の外側表面に、向かい合うように配置されている。本実施形態では、一対の外部電極63a、63bは、湿度を検出するための電極であって、後述する湿度計200の製造時に、Z軸方向における異なる位置に設けられている面内導体62a、62bを支持する層間支持体でもある。
【0071】
湿度計200の側面のうち、外部電極63a、63bが形成されていない面には、上述した面内導体62a、62bおよび感湿材61が露出している。
【0072】
セラミック層64は、面内導体62a、感湿材61および面内導体62bの積層方向であるZ軸方向の両外側に配置されている。
【0073】
上述した構成を有する湿度計200では、静電容量の変化を検出することによって、湿度を検出する。すなわち、湿度が変化すると、面内導体62aと面内導体62bとの間に配置されている感湿材61の誘電率が変化して、静電容量が変化するので、その静電容量の変化を検出することによって、湿度を検出する。
【0074】
本実施形態における湿度計200は、上述したように、Z軸方向に面内導体62aと面内導体62bが交互に配置され、面内導体62aと面内導体62bとの間に感湿材61を配置した構造を有する。本実施形態における湿度計200は、上述したような積層構造を有していることから、静電容量が大きくなり、その変化の幅も大きくなるので、湿度を高精度に検出することができる。
【0075】
また、Z軸方向に、面内導体62a、感湿材61および面内導体62bを積層した立体的な構造であるので、平面的に広がった形状を有する従来の湿度計と比べて、投影面積の小さい小型の湿度計とすることができる。
【0076】
さらに、Z軸方向において隣り合う面内導体62aと面内導体62bとの間隔は全て同一、または、略同一であるので、湿度を高精度に検出することができる。
【0077】
(湿度計の製造方法)
図8は、湿度計200の製造方法について説明するための図である。
【0078】
事前に用意したセラミックグリーンシート71の上に、導体ペースト73を塗工したカーボンシート72を複数積層し、一番上にセラミックグリーンシート71を配置して、未焼成マザー積層体75を得る(図8(a))。導体ペースト73は、後述するように、カーボンシート72上の所定の領域に塗工する。第1の実施形態と同様に、カーボンシート72は、焼成時に消失するシートである。
【0079】
図9は、未焼成マザー積層体75の側面図である。図9に示すように、導体ペースト73は、カーボンシート72上の全ての領域には塗工せずに、所定の領域に塗工する。具体的には、後述するように、分割線80の位置で未焼成マザー積層体75を分割したときに、端面に導体ペースト73が交互に引き出されるように、導体ペースト73を塗工する。
【0080】
続いて、未焼成マザー積層体75を、ダイシング等により所定の大きさに分割して、未焼成積層体76を得る(図8(b))。
【0081】
続いて、未焼成積層体76の側面76aに、外部電極を構成するための外部電極ペースト77を塗工する(図8(c))。外部電極ペースト77は、例えばAgまたはCuを含む。
【0082】
続いて、外部電極ペースト77を塗工した未焼成積層体76を焼成する。焼成温度は、例えばAgを主成分とする導体ペーストであれば900℃、Cuを主成分とする導体ペーストであれば1000℃である。未焼成積層体76を焼成することによって、カーボンシート72は消失し、導体ペースト73および外部電極ペースト77は焼結する。これにより、面内導体62a、62bおよび外部電極63a、63bが形成される。また、積層方向の両外側には、セラミック層64が形成される(図8(d))。
【0083】
面内導体62aは外部電極63aと接続されており、面内導体62bは外部電極63bと接続されている。また、セラミック層64は、外部電極63aおよび63bと接続されている。これにより、面内導体62a、62b、外部電極63a、63bおよびセラミック層64が一体的に結合した構造体が得られる。
【0084】
続いて、カーボンシート72が消失した部分、すなわち、内部の空洞の部分に感湿材61を流し込んで硬化させる(図8(e))。例えば、第1の実施形態で説明したように、金型を用意し、金型内に感湿材61を流し込んで硬化させる。
【0085】
以上の工程により、湿度計200が製造される。上述したように、焼成時にカーボンシート72が消失することによって、位置および形状が高精度に保たれた面内導体62a、62bが形成される。これにより、隣り合う面内導体62aと面内導体62bとの間隔を同一または略同一とすることができるので、計測精度の高い湿度計を製造することができる。
【0086】
ここで、上述した湿度計200において、Z軸方向に隣り合う面内導体62aと面内導体62bとの間に、非導電性の層間支持体を設けるようにしてもよい。
【0087】
図10は、隣り合う面内導体62aと面内導体62bとの間に、非導電性の層間支持体90を設けた湿度計200Aの断面図である。非導電性の層間支持体90は、例えば、セラミック材料からなるセラミック体である。
【0088】
図10に示すような非導電性の層間支持体90、例えばセラミック体を配置する場合には、上述した湿度計の製造工程において、積層するカーボンシート72に貫通孔を設け、貫通孔にセラミックスラリーを充填すればよい。
【0089】
隣り合う面内導体62aと面内導体62bとの間に非導電性の層間支持体90を設けることにより、上述した未焼成積層体76の焼成後に残る面内導体62aおよび面内導体62bの位置および形状をより確実に保つことができる。また、製造された湿度計200Aにおいて、隣り合う面内導体62aと面内導体62bとの間隔を維持することができるので、湿度の計測精度を保つことができる。
【0090】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0091】
例えば、焼成時に消失するシートがカーボンシートに限定されることはない。ただし、樹脂シートのように、消失温度が低いシートを用いると、三次元配線基板の製造工程において、導体ペーストおよび層間支持体ペーストが焼結する前に、シートが消失してしまい、位置精度の高い面内導体および層間支持体を形成することが困難になる。このため、カーボンシートのように、消失温度が高いシートを用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0092】
1 絶縁体
2 面内導体
3 層間支持体
10 表面電極
21 面内導体の表面の凹凸成している凹部
41 カーボンシート
42 導体ペースト
43 層間支持体ペースト
44 表面電極ペースト
45 未焼成積層体
50 めっき膜
61 感湿材
62a、62b 面内導体
63a、63b 外部電極
64 セラミック層
71 セラミックグリーンシート
72 カーボンシート
73 導体ペースト
75 未焼成マザー積層体
76 未焼成積層体
77 外部電極ペースト
90 非導電性の層間支持体
100 第1の実施形態における三次元配線基板
100A 第2の実施形態における三次元配線基板
200、200A 湿度計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10