(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20220830BHJP
A23D 9/007 20060101ALI20220830BHJP
A23C 11/02 20060101ALI20220830BHJP
A23L 29/206 20160101ALI20220830BHJP
【FI】
A23D9/00 514
A23D9/007
A23C11/02
A23L29/206
(21)【出願番号】P 2018032796
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(74)【代理人】
【識別番号】100197022
【氏名又は名称】谷水 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【氏名又は名称】浅見 保男
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 洋祐
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-000127(JP,A)
【文献】特開2005-204653(JP,A)
【文献】特開平02-000700(JP,A)
【文献】特開2009-153491(JP,A)
【文献】特開2014-226127(JP,A)
【文献】特開2004-107599(JP,A)
【文献】特開2016-054675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A23C
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(C)成分
(A)構成脂肪酸としてオレイン酸が72~90質量%、α-リノレン酸が2質量%以下である植物油脂
(B)
ヤシ油、パーム核油、あるいはそれらの分別油、エステル交換油
(C)ローズマリー抽出物
を含有し、植物油脂(A)93~97質量%とラウリン系油脂(B)3~7質量%の合計100質量部に対して、ローズマリー抽出物(C)が0.1~1.0質量部
であり、
構成する油脂の脂肪酸組成において、炭素数8~10の飽和脂肪酸の合計量が0.2~1.0質量%であり、炭素数12~14の飽和脂肪酸の合計量が1.5~4.5質量%である液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液状のコーヒーホワイトナーは水中油型乳化液であり、ポーションパックに充填されているポーションクリームと、瓶に充填されているボトルクリームに大別される。コーヒーホワイトナーは、コーヒーに添加した際にコーヒー本来の風味を生かしながらコク味、ボリューム感などを与えコーヒーの風味を高めるために使用される。また、実際の使用にあたっては、沸点に近い高温のコーヒー(ホットコーヒー)から氷温に近い低温のコーヒー抽出液(アイスコーヒー)など、種々の温度の飲料に添加されるため、乳液の凝集やオイルオフを起こさず、良好なコーヒーホワイトナー効果が得られることが必要である(非特許文献1)。
特にポーションタイプのコーヒーホワイトナーでは、製品としての流通を考えた場合、常温管理され、場合によっては高温の場所に長時間保管されるおそれもあるため、その保管時に風味が劣化しにくい性能、すなわち保管温度によらない風味安定性が求められる。また、流通時にはメーカーからの輸送温度、小売店頭での保管温度、家庭での保管温度など、消費者が口にするまでの流通段階において様々な温度(1℃~40℃)に置かれるため、低温から高温に対しての乳化安定性が必要である。
【0003】
これまで、液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物として、我が国においては植物油脂の部分硬化油が多く使用されてきた。しかしながら、部分硬化油に含まれるトランス脂肪酸の摂取が血中のLDLコレステロールを増加させ、HDLコレステロールを減少させるため、硬化油の摂取が健康上好ましくないとの報告が多くなされており、その結果として世界各国で法規制化や表示義務化がなされてきた。このような世界情勢を背景に、トランス脂肪酸を低減する、すなわち硬化油を用いない液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物が必要とされている。
【0004】
このような状況から、トランス脂肪酸を減少させた液状コーヒーホワイトナー用油脂が開発されてきた。例えば、油脂組成物の構成脂肪酸組成を細かく規定し、且つSFCを一定の範囲に設定することで、コーヒーへの良好な分散性や低温保存時の乳化安定性に優れるトランス酸を低減した液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を得る方法が開示されている(たとえば、特許文献1)。しかし、これらの開示技術を用いて調整されたコーヒーホワイトナーでは、低温にて長期間保管された際、コーヒーホワイトナーの粘度が上昇しやすいという傾向があった。
【0005】
さらに、トランス脂肪酸だけでなく、トランス脂肪酸と同様にLDLコレステロールを増加させると言われている飽和脂肪酸をも低減することが求められるようになり、この要求に応える液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物が提案されている(特許文献2)。
一方で、飽和脂肪酸を低減すると、酸化安定性が低下するという問題が新たに生じる。この問題に対して、特許文献3では、オレイン酸を中心とした油脂中に酸化防止剤として水溶性茶ポリフェノールを分散した状態で用いることで解決を図る技術が提案されており、電気伝導度の測定から、劣化による極性物質の低減について相当の効果が得られることが報告されている。しかしながら、この提案技術では、高温にて長期間保管された際には、風味が劣化するなどの酸化安定性や風味安定性がなおも充分ではないという現実があった。
このように、飽和脂肪酸をも低減しながらも、従来と同等以上に、低温で長期間保管された際にも乳化安定性に優れ、高温で長期保管された場合においても風味安定性に優れた液状コーヒーホワイトナー油脂組成物が求められているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-153491号公報
【文献】特表2014-510541号公報
【文献】国際公開第2017/065284号
【非特許文献】
【0007】
【文献】後藤洋一,「コーヒーホワイトナー」,日本食品工業学会誌,第32巻,第7号,第545頁,1985年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、低温での長期間保管に対して乳化安定性に優れ、高温での長期保管に対して風味安定性に優れた液状コーヒーホワイトナー油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ラウリン系油脂を特定量配合しながら特定の油溶性酸化防止剤を用いることに着目して上記の課題を解決しうることの知見を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の〔1〕である。
【0010】
〔1〕下記の(A)~(C)成分
(A)構成脂肪酸としてオレイン酸が72~90質量%、α-リノレン酸が2質量%以下である植物油脂
(B)ラウリン系油、
(C)ローズマリー抽出物
を含有し、植物油脂(A)93~97質量%とラウリン系油脂(B)3~7質量%の合計100質量部に対して、ローズマリー抽出物(C)が0.1~1.0質量部である液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明における液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を使用することにより、低温で長期間保管された際にも乳化安定性に優れ、高温で長期保管された場合においても風味安定性に優れた液状コーヒーホワイトナーを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施するための形態を説明する。
本発明の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物は、下記の(A)~(C)成分を含有する。
(A)構成脂肪酸としてオレイン酸が72~90質量%、α-リノレン酸が2質量%以下である植物油脂
(B)ラウリン系油脂
(C)ローズマリー抽出物
【0013】
(植物油脂(A))
本発明に用いる植物油脂(A)は、構成脂肪酸としてオレイン酸が72~90質量%であり、好ましくは75~85質量%含み、且つα-リノレン酸が2質量%以下であり、好ましくは1%質量以下である。オレイン酸が72質量%未満である植物油脂では、他の不飽和脂肪酸、特に多価不飽和脂肪酸が多く含まれる場合には高温における酸化安定性が悪化し、コーヒーホワイトナーの風味が劣化し易くなり、他の飽和脂肪酸が多く含まれる場合には、低温でのコーヒーホワイトナーの乳化安定性が悪化する。オレイン酸が90質量%を超えて含まれる植物油脂は実際にはほとんど存在せず、仮にそのような組成の油脂ではその原価が上昇するため、実製造を想定した際に経済的に非現実的となる。また、α-リノレン酸が2質量%を超えて含まれる場合、高温における酸化安定性が悪化し、コーヒーホワイトナーの風味が劣化し易い。
【0014】
本発明に用いる植物油脂(A)は、例えば、ハイオレイックヒマワリ油、ハイオレイックサフラワー油、オリーブ油、ハイオレイックカノーラ油、ハイオレイック大豆油、あるいはそれらの分別油、エステル交換油等が挙げられ、それらを1種または2種以上選択することができる。
【0015】
(ラウリン系油脂(B))
本発明に用いるラウリン系油脂(B)は、ヤシ油、パーム核油、あるいはそれらの分別油、エステル交換油である。なお、本発明のラウリン系油脂(B)は、それらを1種または2種以上選択することができる。
【0016】
本発明の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物は、植物油脂(A)とラウリン系油脂(B)との合計100質量部中、植物油脂(A)を93~97質量%、好ましくは95~96質量%、(B)ラウリン系油脂を3~7質量%、好ましくは4~5質量%含有する。植物油脂(A)が少な過ぎたり、ラウリン系油脂(B)が多過ぎたりする場合、低温におけるコーヒーホワイトナーの乳化安定性が悪化する。また、植物油脂(A)が多過ぎたり、ラウリン系油脂(B)が少な過ぎたりする場合、高温における酸化安定性が悪化し、コーヒーホワイトナーの風味が劣化し易く、ローズマリー抽出物の溶解性が悪化するため、充分な酸化安定性を有する液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を得ることができない。
【0017】
本発明において、植物油脂(A)とラウリン系油脂(B)の混合物は、含有する脂肪酸の組成が変わらない限り混合後にエステル交換を行ってもかまわない。このエステル交換はランダムエステル交換、あるいは位置特異的なエステル交換のどちらでも良く、触媒としてナトリウムメチラート等のアルカリ触媒を用いる方法、あるいはリパーゼ製剤等の酵素触媒を用いる方法のどちらを用いても構わない。
【0018】
(構成脂肪酸)
本発明における液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物は、その構成する油脂の脂肪酸組成において、炭素数8~10の飽和脂肪酸の合計量が0.2~1.0質量%、好ましくは0.4~0.7質量%および、炭素数12~14の飽和脂肪酸の合計量が1.5~4.5質量%、好ましくは2.5~3.5質量%である。炭素数8~10の飽和脂肪酸の合計量が0.2~1.0質量%および、炭素数12~14の飽和脂肪酸の合計量が1.5~4.5質量%であると、低温におけるコーヒーホワイトナーの乳化安定性が悪化することを抑制できる。さらに、ローズマリー抽出物の溶解性が悪化することを防ぐことで、油脂組成物の酸化安定性が悪化すること、コーヒーホワイトナーの風味が劣化することを抑制することができる。
更に、本発明における液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物は、その構成する油脂の脂肪酸組成において、オレイン酸を67~87質量%、好ましくは71~83質量%含有し、リノール酸を6.0~14.0質量%、好ましくは7.0~13.0質量%含有し、α-リノレン酸を2質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以下、飽和脂肪酸を20質量%以下、好ましくは10質量%以下含有する。
【0019】
(トランス脂肪酸)
本発明における液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物は、その原料油脂中のトランス脂肪酸含量が2質量%以下であることが望ましい。さらに、その原料油脂中における飽和脂肪酸含量は11質量%未満であることが望ましい。これらの範囲内であれば、その油脂組成物を使用したコーヒーホワイトナーにおいて、消費者庁の定める「トランス脂肪酸を含まない」旨の強調表示が可能となる。
【0020】
(ローズマリー抽出物(C))
本発明における液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物は、植物油脂(A)とラウリン系油脂(B)の合計100質量部に対し、ローズマリー抽出物を0.1~1.0質量部、好ましくは0.2~0.5質量部含有する。ローズマリー抽出物が0.1質量部未満の場合、液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物の酸化安定性が劣るためコーヒーホワイトナーの風味が劣化し、1.0質量部を超える場合、得られたコーヒーホワイトナーの色調が悪く、また、原料となるローズマリー特有の風味によりコーヒーホワイトナーの風味が不良となる。
【0021】
本発明におけるローズマリー抽出物は、非水溶性(油溶性)であることが好ましい。水溶性であった場合、原料油脂へ溶解することがなく分散状態となるため、充分な酸化防止効果が得られず、結果としてコーヒーホワイトナーの高温保管時の風味劣化につながる。
【0022】
ローズマリー抽出物とは、マンネンロウ(Rosmarinus officinalis LINNE)の葉または花より、二酸化炭素、温時~熱時含水エタノールもしくはエタノールで抽出して得られたもの、または温時~熱時ヘキサン、メタノールもしくは含水メタノールで抽出し、溶媒を除去して得られたものである。そして、有効成分として、フェノール性ジテルペノイドであるカルノシン酸やカルノソール、ロスマノール等を含有するものである。
非水溶性のローズマリー抽出物製剤としては、例えば、ハーバロックスタイプO、ハーバロックスタイプHT-O、ハーバロックスタイプXT-O、デュラロックスAN-110XT(以上、カルセック社製)、RMキーパーOS(三菱化学(株)製)等の市販品が挙げられる。また、これらローズマリー抽出物は1種または2種以上選択することができる。
【0023】
さらに、本発明には、ローズマリー抽出物以外に、油脂の酸化防止に通常用いられる酸化防止剤等を併用しても良い。油脂の酸化防止に通常用いられる酸化防止剤等として、例えば、各種トコフェロール類、各種トコトリエノール類、アスコルビン酸、そのエステル体、クエン酸、ヤマモモ抽出物等の各種ポリフェノール類、レシチン等酸化防止効果のある乳化剤等が挙げられ、これらを1種または2種以上選択することができる。しかしながら、ポリフェノール類の一種である茶ポリフェノールを使用した場合、製造時にコーヒーホワイトナーの褐変(褐色への変色)が起こったり、コーヒーホワイトナーの風味が不良となったりするため、色調の安定性の観点から、茶ポリフェノールは含まないことが好ましい。
【0024】
(コーヒーホワイトナー)
本発明の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を用いて、コーヒーホワイトナーは例えば以下のように調整することができる。
水相部に水と脱脂粉乳と乳化剤、油相部に油脂組成物と乳化剤を各々配合し、プロペラ攪拌にて予備乳化を行ったのち、ホモジナイザーにて均一化して調整することができる。
【実施例】
【0025】
以下に、実施例および比較例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。
表1に実施例および比較例に使用する原料油脂の構成脂肪酸組成の分析例を示す。各原料油脂の脂肪酸組成は基準油脂分析試験法2.4.2.2-2013に準じて分析した。
【0026】
【0027】
〔液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物の原料油脂の製造〕
本発明では液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物に用いる原料油脂として、本発明の範囲である原料油脂P-1~5、および本発明の範囲外である原料油脂Q-1~6を製造した。原料油脂P-5においては配合後にさらにエステル交換操作を加えランダムエステル交換油とし、Q-6においては配合後にさらには部分水素添加を行い部分硬化油とした。原料油脂の製造例については、表2に示す。
【0028】
【0029】
〔実施例1~5〕
上記の製造例1~5の各油脂に、下記各種酸化防止剤を配合し、実施例1~5の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を製造した。各実施例の油脂配合および酸化防止剤配合は表3に示した。これら油脂組成物を用いて以下に示す方法にて液状コーヒーホワイトナーを調整、評価し、結果を表3に示した。
【0030】
(酸化防止剤)
実施例および比較例には以下の酸化防止剤を使用した。
ローズマリー抽出物C-1:ローズマリーの乾燥原葉300gに対し、ヘキサンを2L添加し、45℃にて1時間攪拌後、濾過して濾液を回収した。濾液中の固形分量を求め、固形分35質量部に対して65質量部の菜種油を添加した。最後に溶媒を除去して、ローズマリー抽出物C-1を得た。
ローズマリー抽出物C-2:ローズマリーの乾燥原葉300gに対し、95%(v/v)含水エタノールを2L添加し、65℃にて1時間攪拌後、濾過して濾液を回収した。濾液中の固形分量を求め、固形分35質量部に対して65質量部の菜種油を添加した。最後に溶媒を除去して、ローズマリー抽出物C-2を得た。
その他酸化防止剤:Eオイルスーパー60(理研ビタミン製)75質量%および、EC-100V(理研ビタミン製)25質量%の混合物
茶ポリフェノール:サンフェノン90S(太陽化学製)を10質量%溶解した水溶液
【0031】
(コーヒーホワイトナーの製造方法)
コーヒーホワイトナーは以下のように調整した。
油脂組成物300gを70℃に加熱溶解しておき、これにエマルジーMS(理研ビタミン製)4gを溶解した。これに、脱脂粉乳20g、カゼインソーダ30g、SYグリスターMS5S(坂本薬品工業(株)製)5g、第2リン酸ナトリウム3gに水を加え、65℃に加熱した水相成分696gを徐々に加えてプロペラ攪拌により予備乳化を行った。これによって得られた予備乳化液を、ホモジナイザーを用いて11MPaの加圧によって均質化した。その後、加熱滅菌機によって、140℃、4秒間の直接滅菌を行った後、冷却後、24時間5℃でエージングして、液状コーヒーホワイトナーを得た。
【0032】
(コーヒーホワイトナーの風味評価)
製造後のコーヒーホワイトナーについて、以下の方法にて風味の評価を行った。
5%濃度のインスタントコーヒー(80℃)、150mLに、上記の調整方法にて得られた液状コーヒーホワイトナーを5g添加、スプーンにて攪拌後、10人のパネラーが試飲して風味評価を行った。風味評価は「油っぽさ、青臭さ、異臭」について評価し、以下の基準で採点した。
油っぽさ、青臭さ、異臭が感じられない:3点
油っぽさ、青臭さ、異臭がほとんど感じられない:2点
油っぽさ、青臭さ、異臭がやや感じられる:1点
油っぽさ、青臭さ、異臭が強く感じられる:0点
これら10人の採点結果の平均点が、2.5点以上を◎、2.5点未満から2.0点以上を○、2.0点未満から1.0点以上を△、1.0点未満を×とした。
【0033】
(コーヒーホワイトナーの状態評価)
製造後のコーヒーホワイトナーについて、以下の方法にて状態の評価を行った。
上記の調整方法にて得られた液状コーヒーホワイトナーについて、透明な瓶に30g計量、その色調について市販の液状コーヒーホワイトナーと比較し、10人のパネラーが目視にて評価した。評価は、以下の基準にて採点した。
市販の液状コーヒーホワイトナーと同等の白色:2点
市販の液状コーヒーホワイトナーと比較し、やや着色が認められる:1点
市販の液状コーヒーホワイトナーと比較し、明らかに着色が認められる:0点
これら10人の採点結果の平均点が、1.5点以上を○、1.5点未満から1.0点以上を△、1.0点未満を×とした。
【0034】
(コーヒーホワイトナーの粘度の評価)
製造後のコーヒーホワイトナーについて、以下の方法にて粘度を測定し評価した。
液状コーヒーホワイトナーの粘度はそのクリーム感を評価する基準となるため、その粘度を測定した。すなわち、上記の調整方法にて得られた液状コーヒーホワイトナーを200g瓶に150g計量し、20℃に調温した後、B型粘度計(BROOKFIELD社製)を用いて粘度を測定し、以下の指標にて評価した。
200mPa・s以下:○
200mPa・sを超え400mPa・s以下:△
400mPa・sを超える:×
【0035】
(コーヒーホワイトナーの高温保管時の風味変化に関する評価)
コーヒーホワイトナーの高温保管時の風味変化について、以下の方法にて評価した。
上記の調整方法にて得られた液状コーヒーホワイトナーを5gずつポーションパックに封入し、30℃にて保管試験を行った。150日後にその風味の確認を、前述と同様の基準にて採点し、評価した。
【0036】
(コーヒーホワイトナーの低温保管時の状態変化に関する評価)
コーヒーホワイトナーの低温保管時の状態変化について、以下の方法にて評価した。
上記の調整方法にて得られた液状コーヒーホワイトナーを5gずつポーションパックに封入し、5℃にて保管試験を行った。150日後、200g瓶に150g計量し、前述の方法と同様に測定、以下の指標にて評価した。
コーヒーホワイトナー調整直後の粘度と比較し1.5倍未満:○
コーヒーホワイトナー調整直後の粘度と比較し1.5倍以上2倍未満:△
コーヒーホワイトナー調整直後の粘度と比較し2倍以上:×
【0037】
【0038】
〔比較例1~9〕
前述の製造例1、比較製造例1~6の各油脂に、前述の各種酸化防止剤を配合し、比較例1~9の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を製造した。各比較例の油脂配合および酸化防止剤配合は表4に示した。これら油脂組成物を用いて前述の方法によりコーヒーホワイトナーを調整し、評価し、結果を表4に示した。
【0039】
【0040】
本発明の実施例1~4において、その液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物を用いることにより、低温で長期間保管された際にも乳化安定性に優れ、高温で長期保管された場合においても風味安定性に優れた液状コーヒーホワイトナーを得ることができた。なお、実施例5は、実施例2と同様の原料油脂および酸化防止剤を使用し、油脂部をランダムエステル交換した場合の例であるが、乳化安定性、風味安定性に優れることがわかった。
【0041】
一方、比較例1~3は原料油脂の脂肪酸組成が本発明とは異なる例、比較例4および比較例5は原料油脂の脂肪酸組成も異なり、さらに酸化防止剤としてローズマリー抽出物を使用せず茶ポリフェノールを原料油脂に分散させた例、比較例6~8は、原料油脂は本発明の範囲内であるものの、比較例6および比較例7はローズマリー抽出物の配合量が本発明とは異なる例、比較例8は酸化防止剤として茶ポリフェノールを油脂に分散させた例であるが、いずれも実施例と同等の液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物としての性能は得られなかった。なお、比較例9はトランス脂肪酸を大量に含む場合の例である。
【0042】
本発明において特筆すべき効果の得られる機序については、完全に証明されたわけではないが、ラウリン系油脂(B)の配合量を特定範囲とすることによって、油脂中の炭素数12~14の飽和脂肪酸セグメントと、ローズマリー抽出物(C)との親和性が良くなり、液状コーヒーホワイトナー用油脂組成物として酸化に対する安定化が劇的に高まっているとみることもできる。