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特許7131062車両検知装置、車両検知方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】車両検知装置、車両検知方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/14 20060101AFI20220830BHJP
   G08G 1/042 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G08G1/14 A
G08G1/042 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018090946
(22)【出願日】2018-05-09
(65)【公開番号】P2019197377
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 慎
(72)【発明者】
【氏名】吉野 広太郎
(72)【発明者】
【氏名】神田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】土屋 謙治郎
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-113706(JP,A)
【文献】特開平09-237399(JP,A)
【文献】特開2011-013165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出空間における車両の有無を判定する車両検知装置であって、
前記検出空間における磁気を検出可能な磁気センサの検出値と、前記検出空間及び前記検出空間に隣接する隣接空間が車両の無い空状態であるときの前記磁気センサの検出値を示す基準値との差分である変化量を算出する変化量算出部と、
前記変化量算出部によって算出された前記変化量の経過時間を示す時間軸上に定められた複数の計測区間毎に前記変化量に関する変化率を算出する変化率算出部と、
前記変化率算出部によって算出された算出値が予め定められた第1閾値を超えたか否かの閾値判定処理を行い、前記算出値が前記第1閾値を超えた場合に、前記検出空間における車両の有無を示すステータス情報を変更する車両判定部と、を備え、
前記第1閾値は、
前記検出空間に車両が進入して停止する過程で前記変化率算出部によって算出された前記変化率の第1ピーク値よりも小さく、前記検出空間が車両の無い空状態であるときに前記隣接空間に車両が進入して停止する過程で前記変化率算出部によって算出された前記変化率の第2ピーク値よりも大きい、車両検知装置。
【請求項2】
前記変化率は、
前記計測区間における前記変化量の平均変化率、前記計測区間における前記変化量の分散、或いは前記計測区間における前記変化量の標準偏差のいずれかである請求項1に記載の車両検知装置。
【請求項3】
前記変化量が空車判定に用いられる第2閾値未満の場合に前記検出空間に車両が無いと判定する空車判定部を更に備える請求項1又は2に記載の車両検知装置。
【請求項4】
前記車両判定部は、
前記閾値判定処理において前記算出値が前記第1閾値を超えたと判定されてから、前記算出値が前記第1閾値未満になるまで前記閾値判定処理を中断し、前記算出値が前記第1閾値未満になった後に再び前記閾値判定処理を行う、請求項1から3のいずれかに記載の車両検知装置。
【請求項5】
前記車両判定部は、
前記算出値が前記第1閾値を超える第1時点から前記第1閾値未満になるまでに要する第1時間よりも所定時間長い第2時間を経過する第2時点までの間に、前記算出値が前記第1閾値を超えた場合に前記ステータス情報を変更せず、前記算出値が前記第1閾値以下を維持した場合に前記ステータス情報を変更する、請求項1から4のいずれかに記載の車両検知装置。
【請求項6】
前記車両判定部は、
前記算出値が前記第1閾値を超える第1時点から前記第1閾値未満になるまでに要する第1時間よりも所定時間長い第2時間を経過した後の前記変化量が、満車判定に用いられる第3閾値を超えている場合に前記ステータス情報を満状態に変更し、前記変化量が前記第3閾値未満の場合に前記ステータス情報を空状態に変更する、請求項1から4のいずれかに記載の車両検知装置。
【請求項7】
前記磁気センサは、前記検出空間の中央部に対して前記検出空間への車両の出入口側に設置されている、請求項1から6のいずれかに記載の車両検知装置。
【請求項8】
検出空間における車両の有無を判定する車両検知方法であって、
コンピュータが、
前記検出空間における磁気を検出可能な磁気センサの検出値と、前記検出空間及び前記検出空間に隣接する隣接空間が車両の無い空状態であるときの前記磁気センサの検出値を示す基準値との差分である変化量を算出する変化量算出ステップと、
前記変化量の経過時間を示す時間軸上に定められた複数の計測区間毎の前記変化量に関する変化率を算出する変化率算出ステップと、
前記変化率が予め定められた第1閾値を超えたか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップによって前記変化率が前記第1閾値を超えたと判定された場合に、前記検出空間における車両の有無を示すステータス情報を変更する変更ステップと、を実行し、
前記第1閾値は、
前記検出空間に車両が進入して停止する過程で前記変化率算出ステップによって算出された前記変化率の第1ピーク値よりも小さく、前記検出空間が車両の無い空状態であるときに前記隣接空間に車両が進入して停止する過程で前記変化率算出ステップによって算出された前記変化率の第2ピーク値よりも大きい、車両検知方法。
【請求項9】
請求項8に記載の車両検知方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサを用いて駐車場等の駐車スペースなどの検出空間における車両の有無を判定する車両検知の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車場の駐車スペース内の駐車面に磁気センサを設置し、車両の有無に起因する地磁気の変化を検出して駐車スペースが満車であるか空車であるかの判定を行う車両検知装置が知られている(特許文献1参照)。前記車両検知装置は、駐車スペース内の車幅方向等に複数の磁気センサを設置し、それらの磁気センサ間の各軸方向の検出レベルの差分合成値を車両有り無しの判定に使用する。これにより、磁気センサの近くをトラックやバス等の重量車両が通ったことにより地磁気が大きく変動したとしても、或いは、磁気センサの近隣に電車の架線や高圧線が架設されて地磁気が大きく変動したとしても、誤検知が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-164145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両検知装置は、複数の磁気センサを利用して重量物の通過
に起因する外乱の影響を抑止するものであり、複数の磁気センサを利用するため構成が大掛りとなり、またコスト高となる。
【0005】
また、車両には種々の車種があり、車種によっては、地磁気への影響度の高低があるため、それぞれの車種の車両に対して精度良く、満空状態を判定することは容易ではない。さらに、隣接する駐車スペースに地磁気への影響度の高い(すなわち、地磁気の変化が大きい)車種の車両が停車した場合に、自己の駐車スペースに対する誤検知の可能性が高まる。
【0006】
以下、図13及び図14を参照して、駐車後の地磁気の変化量が予め定められた満空判定閾値Lo以上である場合に満車と判定する従来の車両検知装置における誤検知の例について説明する。図13及び図14は、駐車場の駐車スペースZ1において、地磁気への影響度の大小に起因する誤検知を説明するための図である。図13の上図は、地磁気への影響度の低い車両21が駐車スペースZ1に入車するときの車両状態P1,P2,P3を示し、下図は、磁気センサ11の検出値の変化量(地磁気の変化量)の経時変化を表す波形W1を示す。図14の上図は、地磁気への影響度の高い車両22が駐車スペースZ1に隣接する駐車スペースZ2に入車するときの車両状態P11,P12,P13を示し、下図は、駐車スペースZ1の磁気センサ11の検出値の変化量の経時変化を表す波形W2を示す。なお、図13では、駐車スペースZ1に隣接するスペースに車両は駐車されないものとし、図14では、駐車スペースZ1に車両は駐車されないものとする。車両21は駐車スペースZ1に入るものであり、車両22は隣接の駐車スペースZ2に入るものである。磁気センサ11は、駐車スペースZ1に設置されている。
【0007】
図13において、車両状態P1は、車両21が駐車スペースZ1に近づいてきている状態である。この場合、波形W1に示すように、磁気センサ11の検出値の変化量(地磁気の変化量)が漸次上昇する。次いで、車両状態P2のように車両21のエンジン部分が磁気センサ11の上方まで進入してくると、前記変化量がピークを迎える。そして、さらに車両21が進入してエンジン部分が磁気センサ11の位置を通り過ぎると、前記変化量は漸次低下する。そして、車両状態P3のように、車両21が駐車スペースZ1の奥まで進入して停車すると、前記変化量は前記満空判定閾値Lo未満の所定値に安定する。この例では、駐車スペースZ1に車両21が駐車された状態、つまり、駐車スペースZ1が満車状態であるにもかかわらず、前記変化量は満空判定閾値Lo未満であるため、駐車スペースZ1は空車状態と誤検知される。
【0008】
また、図14において、車両状態P11は、車両22が駐車スペースZ2に近づいてきている状態である。この場合、波形W2に示すように、磁気センサ11の検出値の変化量が緩やかに上昇する。次いで、車両状態P12のように車両22が駐車スペースZ2に進入し始めると、前記変化量が前記満空判定閾値Loを超える場合がある。そして、さらに車両22が進入すると、前記変化量は、前記満空判定閾値Lo以上の値を維持したまま横合いで推移し、車両状態P13のように車両22が駐車スペースZ1の奥まで進入して停車しても、前記変化量は前記満空判定閾値Lo以上の値を維持する。この例では、駐車スペースZ1に車両21が駐車されておらず駐車スペースZ1が空車状態であるにもかかわらず、前記変化量は満空判定閾値Lo以上であるため、駐車スペースZ1は満車状態と誤検知される。
【0009】
本発明の目的は、駐車場の駐車スペースなどの検出空間における車両の有無の誤検知を防止することが可能な車両検知装置、車両検知方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の局面に係る車両検知装置は、検出空間における車両の有無を判定するものであり、変化率算出部と、車両判定部と、を備える。前記変化率算出部は、前記検出空間における磁気を磁気センサから取得し、前記磁気センサの検出値の変化量の経過時間を示す時間軸上に定められた複数の計測区間毎に前記変化量に関する変化率を算出する。前記車両判定部は、前記変化率算出部によって算出された算出値が予め定められた第1閾値を超えたか否かの閾値判定処理を行い、前記算出値が前記第1閾値を超えた場合に、前記検出空間における車両の有無を示すステータス情報を変更する。
【0011】
本発明の他の局面に係る車両検知方法は、検出空間における車両の有無を判定する方法であって、判定ステップと、変更ステップとを含む。前記判定ステップは、前記検出空間における磁気を磁気センサから取得し、前記磁気センサの検出値の変化量の経過時間を示す時間軸上に定められた複数の計測区間毎の前記変化量に関する変化率が予め定められた第1閾値を超えたか否かを判定する。前記変更ステップは、前記判定ステップによって前記変化率が前記第1閾値を超えたと判定された場合に、前記検出空間における車両の有無を示すステータス情報を変更する。
【0012】
本発明は、前記車両検知方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム、又は、このようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駐車場の駐車スペースなどの検出空間における車両の有無の誤検知を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両検知装置と磁気センサとの接続構成を示す模式図である。
図2図2は、車両検知装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、車両の走行方向の部位に対する地表面での地磁気への影響度の一例を示す図であり、(A)は影響度の低い車両の各部位における地磁気の変化量を示す図であり、(B)は影響度の高い車両の各部位における地磁気の変化量を示す図である。
図4図4(A)は、車両の駐車状態を示し、図4(B)は、各駐車状態に応じた磁気センサの検出値の変化量を示し、図4(C)は、前記変化量の分散を示す図である。
図5図5は、駐車スペースZ1に車両が前進で入車し後進で出車した場合の車両状態と、車両の入出車中に駐車スペースZ1の磁気センサが検出した検出値の変化量及び当該変化量の分散それぞれの経時変化を表す波形とを示す図である。
図6図6は、駐車スペースZ1に車両が後進で入車し前進で出車した場合の車両状態と、車両の入出車中に駐車スペースZ1の磁気センサが検出した検出値の変化量及び当該変化量の分散それぞれの経時変化を表す波形とを示す図である。
図7図7は、隣接する駐車スペースZ2に車両が駐車している状態で、駐車スペースZ1に車両が前進で入車し後進で出車した場合の車両状態と、車両の入出車中に駐車スペースZ1の磁気センサが検出した検出値の変化量及び当該変化量の分散それぞれの経時変化を表す波形とを示す図である。
図8図8は、隣接する駐車スペースZ2に車両が駐車している状態で、駐車スペースZ1に車両が前進で入車し、その後に駐車スペースZ2から車両が後進で出車し、その後に駐車スペースZ1から車両が後進で出車した場合の車両状態と、各車両の入出車中に駐車スペースZ1の磁気センサが検知した検出値の変化量及び当該変化量の分散それぞれの経時変化を表す波形とを示す図である。
図9図9は、車両検知装置の制御部によって実行される車両検知処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、駐車スペースZ1に車両が前進入車の途中に後進で出車したときの車両状態と、車両の入出車中に駐車スペースZ1の磁気センサが検出した検出値及び当該変化量の分散それぞれの経時変化を表す波形とを示す図である。
図11図11は、車両検知装置の制御部によって実行される車両検知処理の手順の他の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、車両検知装置の制御部によって実行される車両検知処理の手順のその他の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、駐車スペースZ1において、地磁気への影響度の大小に起因する誤検知を説明するための図であり、上図は、地磁気への影響度の低い車両が駐車スペースZ1に入車するときの車両状態P1,P2,P3を示し、下図は、駐車スペースZ1への入車中に駐車スペースZ1の磁気センサで検知された地磁気の変化量の経時変化を表す波形W1を示す。
図14図14は、駐車スペースZ1において、地磁気への影響度の大小に起因する誤検知を説明するための図であり、上図は、地磁気への影響度の高い車両が駐車スペースZ2に入車するときの車両状態P11,P12,P13を示し、下図は、駐車スペースZ2への入車中に駐車スペースZ1の磁気センサで検知された地磁気の変化量の経時変化を表す波形W2を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0016】
[車両検知装置10]
図1は、本発明の実施形態に係る車両検知装置10と磁気センサ11との接続構成を示す模式図である。
【0017】
車両検知装置10は、駐車場20に区画された複数の駐車スペースZそれぞれにおける車両の有無を判定するものである。図1に示すように、各駐車スペースZそれぞれには磁気センサ11が設置されている。磁気センサ11は、その設置位置における地磁気を含む磁界の強度(磁束密度)を検出可能な周知のセンサである。本実施形態では、車両検知装置10は、駐車スペースZの駐車面に設置された磁気センサ11の検出値の変化量Gに基づいて駐車スペースZにおける車両の有無を判定する。なお、駐車スペースZにおいて地磁気以外の磁界を形成するものが存在しない限り、磁気センサ11は、設置位置における地磁気の強度を検出する。
【0018】
磁気センサ11は、駐車スペースZ内に設置されており、図1に示すように、駐車スペースZの中央部よりも車両の出入口17寄りの位置に設置されている。本実施形態では、磁気センサ11は駐車スペースZにおける駐車面に埋設されている。磁気センサ11の設置位置は、例えば、フロント側にエンジンを搭載しているFR車やFF車などの車両(フロントエンジン車)が前進で駐車スペースZに駐車した場合に、荷室などを有するリア部分が配置される位置であり、後進で駐車スペースZに駐車した場合に、エンジンが搭載されたエンジン部分が配置される位置である。また、磁気センサ11の設置位置は、リア側にエンジンを搭載しているRR車などの車両(リアエンジン車)が前進で駐車スペースZに駐車した場合にエンジン部分が配置される位置であり、後進で駐車スペースZに駐車した場合に荷室などを有するフロント部分が配置される位置である。また、磁気センサ11の設置位置は、前後の車軸間にエンジンを搭載しているMR車などの車両(ミッドシップ車)が前進又は後進で駐車スペースZに駐車した場合にエンジン部分以外の部分が配置される位置である。
【0019】
磁気センサ11は、三軸タイプのものであり、その設置位置における磁界のベクトル量、つまり、磁界の大きさ(スカラー量)、及び磁界の方向(向き)を検出する。なお、磁気センサ11は、二軸タイプのものであって、X軸及びY軸を含むXY平面の磁界の大きさ及び方向を検出するものであってもよい。
【0020】
図2は、車両検知装置10の構成を示すブロック図である。
【0021】
車両検知装置10に磁気センサ11が接続されている。磁気センサ11は、例えば、コイル、ホール素子、磁気抵抗素子(MR素子)、磁気インピーダンス素子(MI素子)などの磁気センサ素子を用いて、設置位置付近の地磁気を含む磁界の強度(磁束密度)を検出するものである。より詳細には、磁気センサ11は、検出した磁界のベクトル(磁界ベクトル)の大きさ成分であるスカラー量を検出し、そのスカラー量を検出値として後述の制御部12に送る。磁気センサ11は、車両検知装置10と有線又は無線によって電気的に接続されている。磁気センサ11は、前記磁気センサ素子の他に、増幅回路、AD変換回路などを備えている。なお、磁気センサ11が二軸タイプのものである場合、磁気センサ11は、検出した磁界ベクトルのうち、X軸及びY軸を含むXY平面の分力のスカラー量を検出値として制御部12に送る。
【0022】
図2に示すように、車両検知装置10は、制御部12と、記憶部13と、通信部14とを備えている。
【0023】
通信部14は通信インターフェースであり、車両検知装置10を有線又は無線でネットワークN1に接続し、ネットワークN1を介して管理サーバ15との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行する。通信部14は、車両検知装置10における車両の有無の判定結果(満状態又は空状態)をネットワークN1を介して管理サーバ15に送信する。管理サーバ15は、駐車場20における車両の有無を管理するサーバ装置である。ここで、前記空状態は、判定対象の駐車スペースZ(検出空間)に車両21が無い状態であり、前記満状態は、駐車スペースZに車両21が有る状態である。本実施形態では、車両検知装置10が管理サーバ15と通信可能に接続された構成について例示するが、車両検知装置10が管理サーバ15によって実現された構成であってもよい。
【0024】
記憶部13は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などを含む不揮発性の記憶媒体である。記憶部13には、制御部12に各種処理を実行させるための制御プログラムや、車両検知装置10において実行される後述の車両検知処理に用いられる各閾値、車両検知処理による各判定結果、駐車スペースZ1の満空状態を示すスターテス情報、後述の変化量Gを算出するための基準値などが記憶される。
【0025】
制御部12は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記ROMは、前記CPUに各種の処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶された不揮発性の記憶媒体である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶媒体であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリ(作業領域)として使用される。制御部12は、前記ROM又は記憶部13に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより車両検知装置10を制御する。
【0026】
図2に示すように、制御部12は、変化量算出部121、変化率算出部122、車両判定部123、空車判定部124などの各種の処理部を含む。制御部12は、前記CPUで前記制御プログラムに従って車両検知処理などの各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。なお、制御部12に含まれる一部又は全部の処理部が電子回路で構成されていてもよい。また、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記各種の処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0027】
変化量算出部121は、磁気センサ11から送られてきた検出値(磁界の強度を示す磁束密度の値)に基づいて変化量Gを算出する。前記変化量Gは、磁気センサ11の検出値と、予め定められた基準値との差分の絶対値である。前記基準値は、磁気センサ11が設置されている駐車スペースZ1(本発明の検出空間の一例)とこれに隣接する駐車スペースZ2(本発明の隣接空間の一例)のいずれにも車両が駐車されていないときに検出された磁気センサ11の検出値であり、予め記憶部13に記憶されている。駐車場20における複数の駐車スペースZそれぞれにおける地磁気を含む磁界は、周辺の電線が形成する磁界の影響や、周辺の建物に用いられている鉄筋或いは立体駐車場に用いられている鉄筋などの強磁性体の影響を受ける。そのため、駐車スペースZごとに前記基準値が異なる。このため、駐車スペースZごとの前記基準値が予め取得されて、記憶部13に記憶されている。
【0028】
一般に、自動車などの車両には、地磁気に対して影響を及ぼす強磁性体の素材が多く使用されている。したがって、自動車などの車両が駐車スペースZに駐車されると、その駐車過程において磁気センサ11の検出値が変動する。このため、駐車スペースZにおける車両の有無は、車両の存在によって変動した磁気センサ11の検出値と前記基準値との差分である前記変化量Gを算出し、この変化量Gに関する変化率の一例である分散Vを所定の閾値と比較することによって判定することが可能である。
【0029】
ところで、車両には種々の車種があり、車種によって地磁気への影響度の度合いが異なる。図3は、車両の走行方向の部位に対する地表面での地磁気への影響度の一例を示す図であり、(A)は地磁気への影響度の低い車両21の各部位における地磁気の変化量の分布を示す図であり、(B)は地磁気への影響度の高い車両22の各部位における地磁気の変化量の分布を示す図である。車両21は、例えば、フロントエンジン車であり、軽量化のために外装が鉄鋼などの板金ではなくアルミ合金や樹脂などで構成されたものである。この車両21においては、エンジン部分に強磁性体が多く使用されており、そのため、図3(A)に示すように、エンジン部分の下では地磁気に対して比較的大きな歪みを与え、当該部分に対応する地上面の地磁気の変化量は大きい。これに対して、エンジン部分以外の部分は強磁性体の使用量が少ないため、当該部分に対応する地表面の地磁気の変化量はエンジン部分に比べて相対的に小さい。一方、車両22は、例えば、フロント側にエンジンを搭載し、前後の車軸間にモーターやバッテリーを搭載したハイブリッド車である。この車両22は、エンジン部分だけでなく、他の部位においても強磁性体が多く使用されており、そのため、図3(B)に示すように、車両22の全域に対応する地表面の地磁気の変化量は、車両21の変化量よりも大きい。なお、前記走行方向の全域において強磁性体を多く使用しているトラックやバス等の車両も地磁気への影響度の高いものであり、車両22と同様に、当該車両の全域において地磁気の変化量が大きくなる。
【0030】
以下、図4を参照して、互いに隣接する駐車スペースZ1,Z2における車両21,22の駐車状態に応じた磁気センサ11Aの検出値の変化量G、及び変化量Gの変化率である分散Vについて説明し、更に、後述の車両検知処理に用いられる各閾値について説明する。ここで、磁気センサ11Aは、駐車スペースZ1に設置されたものであり、以下の説明においても同様である。また、駐車スペースZ2は駐車スペースZ1に隣接する駐車スペースである。なお、図4では、駐車スペースZ2の磁気センサ11の図示を省略している。
【0031】
駐車スペースZ1だけに車両21が前進で入車した駐車状態P21(図4(A)参照)では、磁気センサ11Aの検出値の変化量Gは、波形W11(図4(B)中の実線波形を参照)のように、車両21が進入するにしたがって前記変化量Gが徐々に大きくなる。そして、車両21のエンジン部分が磁気センサ11Aの上方を通過するときに、前記変化量Gはピーク値SP1に達し、その後徐々に低下して、安定値AV1に収束し、駐車スペースZ1に完全に車両21が駐車された状態では、前記変化量Gは安定値AV1を維持する。
【0032】
また、駐車スペースZ2だけに車両22が前進で入車した駐車状態P22(図4(A)参照)では、駐車スペースZ1の磁気センサ11Aの検出値の変化量Gは、波形W12(図4(B)中の破線波形を参照)のように、車両22が進入するにしたがって前記変化量Gが緩やかに大きくなる。これは、車両22が地磁気への影響度の大きい車両であるため、隣接する駐車スペースZ2に車両22が駐車された場合に、駐車スペースZ1における地磁気にも影響を与えるためである。この場合、前記変化量Gは前記ピーク値SP1まで上がらないが、前記安定値AV1より大きい安定値AV2まで上昇する場合があり、駐車スペースZ2に完全に車両22が駐車された状態では、前記変化量Gは安定値AV2を維持する。
【0033】
また、駐車スペースZ2に車両22が既に駐車されており、駐車スペースZ1に車両21が前進で入車する駐車状態P23(図4(A)参照)では、前記変化量Gは、車両21が駐車スペースZ1に入車する前から既に前記安定値AV2となっている。つまり、駐車スペースZ1が空状態であり、且つ、駐車スペースZ2が満状態であるときの前記変化量Gは、前記安定値AV2である。そして、波形W13(図4(B)中の点線波形を参照)のように、車両21が進入するにしたがって前記変化量Gが徐々に大きくなり、エンジン部分が磁気センサ11Aの上方を通過するときにピーク値SP1よりも大きいピーク値SP2に達する。その後、前記変化量Gは徐々に低下して、安定値AV1よりも大きい安定値AV3に収束し、駐車スペースZ1に完全に車両21が駐車された状態では、前記変化量Gは安定値AV3を維持する。
【0034】
図4(C)は、図4(B)の各波形W11,W12,W13が示す変化量Gの分散Vを表す波形W111,W121を示す。波形W111は、変化量Gの波形W11,W13において、複数の計測区間Dk(D1,D2,D3,・・・)毎に算出された分散V(本発明の変化率の一例)の経時変化を表す。また、波形W121は、変化量Gの波形W12において、複数の計測区間Dk毎に算出された分散Vの経時変化を表す。ここで、前記複数の計測区間Dkは、磁気センサ11の検出値の変化量Gの経過時間を示す時間軸(図4(B)の横軸)上に定められた一定の時間間隔である。各計測区間Dkは、前記時間軸上において、微小間隔ずつ時間軸の正方向(図4(B)の右方向)へずらされて区分された時間間隔である。
【0035】
前記変化量Gの分散Vは、計測区間Dkにおける複数の前記変化量Gの散らばり具合を示す数値である。例えば、計測区間Dkにおける分散Vは、計測区間Dkが複数の微小区間からなる場合に、各微小区間の変化量それぞれの偏差(平均値との差)を二乗した値の平均値である。本実施形態では、制御部12が実行する後述の車両検知処理は、前記分散Vと所定の閾値(後述の切替用閾値H11)と比較することによって、判定対象の駐車スペースZ(検出空間)における車両の有無を判定する。
【0036】
本実施形態では、駐車スペースZ1,Z2に対する車両21,22の複数の駐車状態と、その駐車状態に応じた前記変化量Gの複数の波形W11~W13のパターンとに鑑みて、車両検知処理に用いられる前記変化量Gに関する空閾値L1(本発明の第2閾値の一例)及び満閾値H1(本発明の第3閾値の一例)が定められている。また、前記変化量Gの分散Vの複数の波形W111,W121のパターンに鑑みて、車両検知処理に用いられる前記分散Vに関する切替用閾値H11(本発明の第1閾値の一例)が定められている。
【0037】
具体的には、後述の車両検知処理において用いられる前記切替用閾値H11は、波形W111のピーク値SP11(本発明の第1ピーク値の一例)と波形W121のピーク値SP12(本発明の第2ピーク値の一例)との間の数値、つまり、ピーク値SP11よりも小さく、ピーク値SP12よりも大きい数値に設定されている。ここで、前記切替用閾値H11は、駐車スペースZ1における車両の有無を示すステータス情報を満状態又は空状態との間で変更するための閾値である。
【0038】
また、後述の車両検知処理において駐車スペースZ1が空状態か否かを判定するための前記空閾値L1が定められている。前記空閾値L1は、隣接する駐車スペースZ2に車両22が駐車されている場合でも駐車スペースZ1における空状態を確実に判定できるように、前記安定値AV2よりも大きい値に定められている。例えば、前記空閾値L1は、実験などから得られた信頼係数(例えば1.2)を前記安定値AV2に乗じた数値に設定される。
【0039】
また、車両検知処理において駐車スペースZ1が満状態か否かを判定するための前記満閾値H1は、前記空閾値L1と前記ピーク値SP1との間の数値、つまり、前記空閾値L1よりも大きく、前記ピーク値SP1よりも小さい数値に設定されている。
【0040】
図2に示す変化率算出部122は、変化量算出部121によって算出された変化量Gに基づいて、変化量Gの分散Vを算出する。前記分散Vは、前記変化量Gに関する変化率の一例である。変化率算出部122は、前記変化量Gの経過時間を示す時間軸上に定められた複数の前記計測区間Dk毎に前記変化量Gの分散Vを算出する。本実施形態では、例えば、1つの計測区間Dkにおいてn個の変化量Gが求められた場合に、変化率算出部122は、そのn個の変化量Gそれぞれの偏差(平均値との差)を算出し、これらの偏差を二乗して得られた値の平均値を算出する。算出された平均値が分散Vである。算出された分散Vは、記憶部13或いは前記RAMに記憶される。
【0041】
車両判定部123は、変化率算出部122によって算出された算出値が予め定められた前記切替用閾値H11を超えたか否かの閾値判定処理を行う。ここで、変化率算出部122による前記算出値が前記切替用閾値H11を超えた場合に、判定対象の駐車スペースZ(検出空間)における車両の有無を示すステータス情報を変更する。具体的には、車両判定部123は、前記算出値が前記切替用閾値H11を超えた場合に、判定対象の駐車スペースZにおける車両の前記ステータス情報を満状態又は空状態との間で変更する。言い換えると、車両判定部123は、前記算出値が前記切替用閾値H11を超えた場合に、前記ステータス情報を、現状の駐車状態(例えば満状態)とは異なる駐車状態(例えば空状態)に変更する。
【0042】
空車判定部124は、前記変化量G及び前記空閾値L1に基づいて、判定対象の駐車スペースZ(検出空間)が空状態か否かを判定する空判定処理を行う。具体的には、空車判定部124は、前記変化量Gが前記空閾値L1未満の場合に、判定対象の駐車スペースZ1を空状態と判定する。
【0043】
ところで、地磁気への影響度の異なる車両21,22が駐車スペースZに駐車される場合、磁気センサ11の設置位置や、車両21,22の進入方向、エンジン部分の位置などによっては、前記変化量Gと閾値とを単純に比較判定する処理では、駐車スペースZに対する車両の誤検知が生じるおそれがある。また、隣接する駐車スペースZ2に車両22が駐車されている場合、車両22は、駐車スペースZ1の地磁気に対して歪みを与え、駐車スペースZ1の地磁気が変動して、駐車スペースZ1に対する車両の誤検知が生じるおそれがある。したがって、本実施形態の車両検知装置10においては、前記変化量Gの分散Vと上述した切替用閾値H11とを用いて閾値判定を行うことにより、地磁気への影響度が異なる車両21,22に対しても正確にその有無を判定するようにしている。
【0044】
[車両検知処理]
以下、図5乃至図8を参照しつつ、図9のフローチャートを用いて、制御部12によって実行される車両検知処理の手順とともに、本発明の車両検知方法の一例について説明する。図10において、S11,S12,・・・は処理手順の番号(ステップ番号)を示す。
【0045】
まず、図5に示すように、駐車スペースZ1だけに車両21が前進で入車し後進で出車した場合の車両検知処理について説明する。ここで、図5は、入出車における車両状態P31~P35と、入出車中における磁気センサ11Aの検出値の変化量Gの経時変化を表す波形W31と、前記変化量Gの分散Vの経時変化を表す波形W41とを示す。
【0046】
〈ステップS11,S12〉
図10に示すように、ステップS11(空車判定ステップ)では、制御部12は、磁気センサ11Aの検出値の変化量Gが前記空閾値L1よりも小さいか否かを判定する。図5に示す車両状態P31は、駐車スペースZ1に車両21のフロント側が近づいた状態を示しており、この車両状態P31では、車両21が磁気センサ11Aの設置位置における地磁気に与える影響は小さい。このため、車両状態P31における前記変化量Gは前記空閾値L1よりも小さい。したがって、車両21が車両状態P31である場合は、制御部12は、前記変化量Gが前記空閾値L1よりも小さいと判定する(S11のYes)。この場合、次のステップS12において、制御部12は、駐車スペースZ1が空状態であると判定して、駐車スペースZ1が空状態であることを示すステータス情報を記憶部13に記憶し、当該ステータス情報を管理サーバ15に出力する。その後、処理はステップS11に戻る。なお、ステップS11において、前記変化量Gが前記空閾値L1以上であると判定されると、処理は、次のステップS13に進む。
【0047】
〈ステップS13〉
ステップS13では、制御部12は、前記分散Vが切替用閾値H11を超えたか否かを判定する。ステップS13で行われる処理は、本発明の閾値判定処理の一例である。また、ステップS13は、本発明の判定ステップの一例である。車両21が駐車スペースZ1内に進入して、車両21のエンジン部分が磁気センサ11Aの上方に配置された車両状態P32になると、車両21が磁気センサ11Aの設置位置における地磁気に与える影響は急激に大きくなる。このため、車両状態P32では、前記変化量Gが急激に大きくなる。これに伴い、前記変化量Gの分散Vもゼロ値から上昇し、前記切替用閾値H11よりも大きくなる(図5の時点41参照)。したがって、車両21が車両状態P31から車両状態P32に移る過程で、制御部12は、前記分散Vが前記切替用閾値H11よりも大きいと判定する(S13のYes)。この場合、処理は、次のステップS14に進む。なお、ステップS13において、前記分散Vが前記切替用閾値H11以下であると判定された場合(S13のNo)、処理はステップS11に戻る。
【0048】
なお、車両21が駐車スペースZ1内に更に進入して、車両21が車両状態P33に移るにつれて、車両21が磁気センサ11Aの設置位置における地磁気に与える影響は徐々に小さくなり、車両21が車両状態P33になると前記変化量Gは、一定値に収束する。ここで、車両状態P33は、車両21のエンジン部分が磁気センサ11Aの上方を通過し、車両21のリア部分が磁気センサ11Aの上方に配置された状態であって、車両21が駐車スペースZ1に駐車された状態である。したがって、車両21が車両状態P33である場合は、前記変化量Gに変化は無いため、前記分散Vはゼロ値となる。
【0049】
〈ステップS14,S15〉
ステップS13において前記分散Vが切替用閾値H11を超えたと判定されると、制御部12は、駐車スペースZ1の駐車状態が変更したと判定する。つまり、制御部12は、駐車スペースZ1が満状態から空状態、或いは空状態から満状態に変化したと判定する。この場合、制御部12は、ステップS14において、記憶部13に記憶されているステータス情報を満状態又は空状態のいずれかに変更する。例えば、記憶部13に判定前のステータス情報として空状態が記憶されていた場合は、その記憶内容を満状態に変更する。一方、記憶部13に判定前のステータス情報として満状態が記憶されていた場合は、その記憶内容を空状態に変更する。制御部12は、前記ステータス情報を変更すると、その後、変更後のステータス情報を管理サーバ15に出力する(S15)。なお、ステップS14は、本発明の変更ステップの一例である。
【0050】
〈ステップS16〉
次のステップS16では、制御部12は、ステップS13において前記分散Vが前記切替用閾値H11を越えたと判定された後に、前記分散Vが前記切替用閾値H11以下になったか否かを判定する。ここで、前記分散Vが前記切替用閾値H11を超えた状態を維持していると判定された場合は、ステップS16の判定処理が繰り返し行われる。一方、ステップS16において、前記分散Vが前記切替用閾値H11以下になったと判定されると、処理はステップS11に戻り、ステップS11以降の処理が繰り返される。つまり、制御部12は、前記分散Vが前記切替用閾値H11以下になるまでステップS13の閾値判定処理を中断し、前記分散Vが前記切替用閾値H11以下になった後に再び前記閾値判定処理を行う。これにより、前記分散Vが前記切替用閾値H11を越えたと判定された後に前記分散Vが前記切替用閾値H11以上を維持している場合に、再び前記分散Vが前記切替用閾値H11を越えたと判定されることによる誤検知が防止される。
【0051】
なお、車両21が駐車スペースZ1から出車し始めて、車両21のエンジン部分が磁気センサ11Aの上方に配置された車両状態P34になると、前記変化量Gは再び急激に大きくなる。これに伴い、前記変化量Gの分散Vもゼロ値から上昇し、再び前記切替用閾値H11よりも大きくなると、制御部12は、前記分散Vが前記切替用閾値H11を超えたと判定する(S13のYes)。その後、車両21が車両状態P35に移ると、前記変化量Gの変化が無くなり、前記分散Vは再びゼロ値となる。
【0052】
次に、図6に示すように、駐車スペースZ1だけに車両21が後進で入車し前進で出車した場合の車両検知処理について説明する。なお、以下においては、上述した処理検知処理の各手順と共通する手順についての説明は省略する。ここで、図6は、入出車における車両状態P41~P45と、入出車中における磁気センサ11Aの検出値の変化量Gの経時変化を表す波形W32と、前記変化量Gの分散Vの経時変化を表す波形W42とを示す。なお、車両状態P41~P45は、上述の車両状態P31~P35に対して、駐車スペースZ1への車両21の進入方向が異なるだけであり、その他の動作状態は同じである。
【0053】
図6に示す車両状態P41は、駐車スペースZ1に車両21のリア側が近づいた状態を示しており、この車両状態P41では、車両21が磁気センサ11Aの設置位置における地磁気に与える影響はほとんど無い。このため、車両状態P41における前記変化量Gは小さく、その分散Vはゼロ値である。したがって、車両21が車両状態P41である場合は、制御部12は、前記変化量Gが前記空閾値L1よりも小さいと判定し(S11のYes)、駐車スペースZ1が空状態であると判定する(S12)。
【0054】
車両21が駐車スペースZ1内に更に進入して、車両21のリア部分が磁気センサ11Aの上方に配置された車両状態P42になると、車両21が磁気センサ11Aの設置位置における地磁気に与える影響は若干大きくなる。このため、車両状態P42における前記変化量Gも若干上昇し、分散Vもゼロ値から若干上昇する。このとき、前記変化量Gは前記空閾値L1を超えるが、前記分散Vは前記切替用閾値H11を超えない。したがって、車両21が車両状態P42に移る過程では、制御部12は、前記分散Vは前記切替用閾値H11以下と判定する(S13のNo)。
【0055】
車両21が駐車スペースZ1内に更に進入して、車両21のエンジン部分が磁気センサ11Aの上方に配置された車両状態P43になると、車両21が磁気センサ11Aの設置位置における地磁気に与える影響は急激に大きくなる。ここで、車両状態P43は、車両21のエンジン部分が磁気センサ11Aの上方に配置され、且つ、車両21が駐車スペースZ1に駐車された状態である。この車両状態P43では、前記変化量Gは急激に大きくなり、前記変化量Gの分散Vも前記切替用閾値H11よりも大きくなる(図6の時点41参照)。したがって、車両21が車両状態P43に移る過程では、制御部12は、前記分散Vが前記切替用閾値H11よりも大きいと判定し(S13のYes)、ステップS14以降の処理を行う。
【0056】
また、車両21が、図6に示す車両状態P43からP44に移った場合も、前記変化量Gは急激に大きくなり、前記変化量Gの分散Vが再び前記切替用閾値H11よりも大きくなる(図6の時点43参照)。したがって、車両21が車両状態P44に移る過程でも、制御部12は、前記分散Vが前記切替用閾値H11よりも大きいと判定する(S13のYes)。
【0057】
次に、図7に示すように、駐車スペースZ2に車両22が駐車している状態で、駐車スペースZ1に車両21が前進で入車し後進で出車した場合の車両検知処理について説明する。ここで、図7は、入出車における車両状態P51~P56と、入出車中における磁気センサ11Aの検出値の変化量Gの経時変化を表す波形W33と、前記変化量Gの分散Vの経時変化を表す波形W43とを示す。
【0058】
図7に示す車両状態P51は、駐車スペースZ2に車両22のフロント側が近づいた状態を示しており、この車両状態P51では、車両22が磁気センサ11Aの設置位置における地磁気に与える影響は小さい。このため、車両状態P51における前記変化量Gは前記空閾値L1よりも小さく、その分散Vも小さく、前記切替用閾値H11を超えない。また、車両状態P52は、車両22が駐車スペースZ2に駐車した状態であり、車両22が車両状態P52であっても前記変化量Gは前記空閾値L1よりも小さい。また、前記変化量Gは一定値に収束しており、前記変化量Gに変化は無いため、前記分散Vはゼロ値となる。したがって、車両21が駐車スペースZ1に進入していない状態においては、駐車スペースZ2における車両22の有無に関係なく、制御部12は、前記変化量Gが前記空閾値L1よりも小さいと判定し(S11のYes)、駐車スペースZ1が空状態であると判定する(S12)。
【0059】
また、車両21が、図7の車両状態P53に示すように駐車スペースZ1に進入する場合、及び、車両状態P55に示すように駐車スペースZ1から出車する場合のいずれにおいても、前記変化量Gの急激な増加にともない、前記分散Vがゼロ値から上昇して、前記切替用閾値H11を超える。そのため、いずれの場合にも、制御部12は、前記分散Vが前記切替用閾値H11よりも大きいと判定する(S13のYes)。
【0060】
次に、図8に示すように、駐車スペースZ2に車両22が駐車している状態で、駐車スペースZ1に車両21が前進で入車し、その後に駐車スペースZ2から車両22が後進で出車し、その後に駐車スペースZ1から車両21が後進で出車した場合の車両検知処理について説明する。ここで、図8は、入出車における車両状態P51~P55,P57,P58と、入出車中における磁気センサ11Aの検出値の変化量Gの経時変化を表す波形W34と、前記変化量Gの分散Vの経時変化を表す波形W44とを示す。
【0061】
図8に示す車両状態P57は、駐車スペースZ1に車両21が駐車しており、駐車スペースZ2から車両22が後進で出車した状態を示す。車両21が車両状態P57であるときに、磁気センサ11Aの設置位置における地磁気への車両22の影響が無くなるが、このとき、前記変化量Gが変化するため、前記分散Vが若干上昇する。しかし、前記分散Vは前記切替用閾値H11を超えない。したがって、車両状態P57に示すように車両22が駐車スペースZ2を出車しても、制御部12は、前記分散Vは前記切替用閾値H11以下と判定する(S13のNo)。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る車両検知装置10では、前記分散Vが切替用閾値H11を超えたと判定されると、前記ステータス情報が、現状の駐車状態とは逆の駐車状態に変更される。つまり、判定前の前記ステータス情報が満状態を示すものであった場合は、前記ステータス情報は、空状態に変更される。このため、地磁気への影響の低い車両21が駐車スペースZ1に駐車された場合でも、駐車スペースZ1における満状態を正確に判定することができる。
【0063】
また、隣接する駐車スペースZ2に駐車されている車両22の影響を受けて駐車スペースZ1における地磁気が変動しても、駐車スペースZ1の駐車状態に変更があったことを正確に判定することが可能である。
【0064】
なお、上述の実施形態では、前記変化量Gに関連する変化率として前記分散Vを用いた例について説明したが、本発明はこの例に限られない。例えば、前記分散Vに替えて、前記分散Vの正の平方根である標準偏差を前記変化率として用いることも可能である。この場合、変化率算出部122は、前記変化量Gに関連する変化率として前記標準偏差を算出する。また、前記分散Vに替えて、前記分散Vの計測区間Dkにおける前記変化量Gの平均変化率を前記変化率として用いてもよい。この場合、変化率算出部122は、前記変化量Gに関連する変化率として前記平均変化率を算出する。ここで、前記平均変化率は、例えば、計測区間Dkにおける変化量Gを計測区間Dkの時間間隔(時間の変化量)で除した値である。
【0065】
以下、図10を参照しつつ、図11のフローチャートを用いて、上述の車両検知処理の他の処理例について説明する。なお、以下の説明では、上述の実施形態と同じ処理手順については、同符号を付し示すことにより詳細な説明を省略する。
【0066】
図10は、入出車における車両状態P61~P63と、入出車中における磁気センサ11Aの検出値の変化量Gの経時変化を表す波形W35と、前記変化量Gの分散Vの経時変化を表す波形W45とを示す。図10に示すように、駐車スペースZ1だけに車両21が前進で入車する途中に後進して出車した場合、時点T51において変化量Gの分散Vが前記切替用閾値H11を超えた後に、時点T53において前記分散Vが前記切替用閾値H11を再び超えることになる。この場合、上述の車両検知処理では、車両21の駐車状態に変化がないにもかかわらず、駐車状態が変化したと誤判定をする。
【0067】
したがって、この場合は、図11に示すように、ステップS13以降において、制御部12は、前記分散Vが前記切替用閾値H11を超える時点T51(本発明の第1時点の一例)から、予め定められた設定時間Tb(本発明の第2時間の一例)を経過する時点T54(本発明の第2時点の一例)までの間に、前記分散Vが前記切替用閾値H11を再び超えた場合は前記ステータス情報を変更せず、前記分散Vが前記切替用閾値H11以下を維持した場合に前記ステータス情報を変更する。
【0068】
具体的には、ステップS13の次のステップS21において、まず、制御部12は、上述のステップS16と同様の処理、つまり、前記分散Vが前記切替用閾値H11以下になったか否かを判定する(S21)。ステップS21において、前記分散Vが前記切替用閾値H11以下と判定されると、制御部12は、上述のステップS13と同様に、前記分散Vが前記切替用閾値H11を越えたか否かの判定を行う(S22)。そして、ステップS22において前記分散Vが前記切替用閾値H11を越えたと判定されると、この場合は、駐車スペースZ1において駐車をやり直しがあったか、駐車スペースZ1を車両21が通り過ぎたことを意味するため、この場合は、前記ステータス情報を変更せずに、処理はステップS11に戻る。
【0069】
一方、ステップS22において、前記分散Vが前記切替用閾値H11以下と判定されると、その後、制御部12は、時点T51からの経過時間が前記設定時間Tbを超えたか否かを判定する(S23)。ここで、前記設定時間Tbは、前記分散Vが前記切替用閾値H11を超える時点T51から前記切替用閾値H11以下になるまでに要する設定時間Ta(本発明の第1時間の一例)に所定時間ΔTを加算した時間である。所定時間ΔTは、駐車スペースZ1に対する駐車のやり直しに要する時間であり、例えば、実験等によって得ることができる。ステップS23において前記設定時間Tbが経過したと判定されるまで、ステップS21の判定処理が繰り返される。そして、ステップS22において前記分散Vが前記切替用閾値H11以下と判定され、ステップS23において前記設定時間Tbが経過したと判定されると、次のステップS14以降の処理が行われる。
【0070】
このような処理が行われることにより、駐車スペースZ1に対する駐車のやり直しなどが行われた場合であっても、駐車スペースZ1における車両21の駐車状態を正確に判定することができる。
【0071】
また、図12のフローチャートに示す車両検知処理の処理例であっても、駐車スペースZ1に対して、図10に示す駐車のやり直しや、駐車スペースZ1に進入した車両21がそのまま通過した場合の誤判定を防止することができる。
【0072】
図12に示すように、ステップS13以降において、制御部12は、前記分散Vが前記切替用閾値H11を超える時点T51から前記設定時間Tbを経過した後の前記変化量Gが満車判定に用いられる満閾値H1(図4参照)を超えている場合に前記ステータス情報を前記満状態に変更し、前記変化量Gが前記満閾値H1以下の場合に前記ステータス情報を前記空状態に変更する。
【0073】
具体的には、ステップS13の次のステップS21において、まず、制御部12は、時点T51からの経過時間が前記設定時間Tbを超えたか否かを判定する(S24)。ステップS24において前記設定時間Tbが経過したと判定されると、次のステップS25において、制御部12は、前記設定時間Tbが経過した時点T54における前記変化量Gが、前記満閾値H1よりも大きいか否かを判定する(S25)。ステップS25において、前記変化量Gが前記満閾値H1よりも大きいと判定されると、制御部12は、駐車スペースZ1が満状態であることを示すステータス情報を記憶部13に記憶し、当該ステータス情報を管理サーバ15に出力する(S26)。また、ステップS25において、前記変化量Gが前記満閾値H1以下と判定されると、制御部12は、駐車スペースZ1が空状態であることを示すステータス情報を記憶部13に記憶し、当該ステータス情報を管理サーバ15に出力する(S27)。ステップS26,S27の処理後は、ステップS11に戻り、以降の処理が繰り返される。
【0074】
このような処理が行われることにより、駐車スペースZ1に対する駐車のやり直しや駐車スペースZ1の通り抜けなどが行われた場合であっても、駐車スペースZ1における車両21の駐車状態を正確に判定することができる。
【0075】
なお、上述の実施形態では、検出空間の一例である駐車スペースZに駐車された車両21の有無を判定する構成について説明したが、本発明はこのような構成に限られない。例えば、駐車場20や建物の入口付近に定められた停車スペース、道路の路側帯に定められた停車スペース、家屋の敷地内に定められた一つ又は複数の駐車スペース、車両検査場などに定められた停車スペース(いずれも検出空間の他の例)などに駐車又は停車した車両の有無の判別にも車両検知装置10は適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
10 :車両検知装置
11,11A:磁気センサ
12 :制御部
13 :記憶部
14 :通信部
15 :管理サーバ
17 :出入口
20 :駐車場
21,22:車両
121 :変化量算出部
122 :変化率算出部
123 :車両判定部
124 :空車判定部
AV1 :安定値
AV2 :安定値
AV3 :安定値
Dk :計測区間
G :変化量
H1 :満閾値
H11 :切替用閾値
L1 :空閾値
Lo :満空判定閾値
Ta :設定時間
Tb :設定時間
V :分散
Z,Z1,Z2:駐車スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14