(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】画像生成装置、画像生成方法、及び画像生成プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 15/50 20110101AFI20220830BHJP
【FI】
G06T15/50
(21)【出願番号】P 2018105823
(22)【出願日】2018-06-01
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000192
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 慶
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲司
【審査官】村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-325605(JP,A)
【文献】特開2006-323514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 15/00 - 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレア源を含む仮想空間を当該仮想空間内の視点位置からみた視認画像に、前記グレア源の大きさに応じた強さで眩しさを表現するエフェクトオブジェクト画像を合成した仮想空間画像を生成する仮想空間画像生成部を有した画像生成装置であって、
前記グレア源の発光面を、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて拡大又は縮小するグレア源スケーリング部
を備え、
前記グレア源スケーリング部は、
前記グレア源の発光面の拡大又は縮小によって、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて前記グレア源の発光面の面積を対数関数的に変化させる
ことを特徴とする画像生成装置。
【請求項2】
グレア源を含む仮想空間を当該仮想空間内の視点位置からみた視認画像に、前記グレア源の大きさに応じた強さで眩しさを表現するエフェクトオブジェクト画像を合成した仮想空間画像を生成する仮想空間画像生成部を有した画像生成装置であって、
前記グレア源の発光面を、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて拡大又は縮小するグレア源スケーリング部
を備え、
前記グレア源の基準軸方向における発光面の輝度値が、前記仮想空間に対する前記発光面の大きさに応じて設定されている
ことを特徴とする画像生成装置。
【請求項3】
グレア源を含む仮想空間を当該仮想空間内の視点位置からみた視認画像に、前記グレア源の大きさに応じた強さで眩しさを表現するエフェクトオブジェクト画像を合成した仮想空間画像を生成する画像生成方法において、
前記グレア源の発光面を、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて拡大又は縮小し
、前記グレア源の発光面の拡大又は縮小によって、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて前記グレア源の発光面の面積を対数関数的に変化させる
ことを特徴とする画像生成方法。
【請求項4】
グレア源を含む仮想空間を当該仮想空間内の視点位置からみた視認画像に、前記グレア源の大きさに応じた強さで眩しさを表現するエフェクトオブジェクト画像を合成した仮想空間画像を生成する画像生成方法において、
前記グレア源の発光面を、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて拡大又は縮小する
ステップを備え、
前記グレア源の基準軸方向における発光面の輝度値が、前記仮想空間に対する前記発光面の大きさに応じて設定されている
ことを特徴とする画像生成方法。
【請求項5】
コンピュータを、
グレア源を含む仮想空間を当該仮想空間内の視点位置からみた視認画像に、前記グレア源の大きさに応じた強さで眩しさを表現するエフェクトオブジェクト画像を合成した仮想空間画像を生成する仮想空間画像生成部として機能させる画像生成プログラムであって、
前記グレア源の発光面を、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて拡大又は縮小するグレア源スケーリング部として前記コンピュータを機能させ
、
前記グレア源スケーリング部は、
前記グレア源の発光面の拡大又は縮小によって、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて前記グレア源の発光面の面積を対数関数的に変化させる
ことを特徴とする画像生成プログラム。
【請求項6】
コンピュータを、
グレア源を含む仮想空間を当該仮想空間内の視点位置からみた視認画像に、前記グレア源の大きさに応じた強さで眩しさを表現するエフェクトオブジェクト画像を合成した仮想空間画像を生成する仮想空間画像生成部として機能させる画像生成プログラムであって、
前記グレア源の発光面を、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて拡大又は縮小するグレア源スケーリング部として前記コンピュータを機能させ
、
前記グレア源の基準軸方向における発光面の輝度値が、前記仮想空間に対する前記発光面の大きさに応じて設定されている
ことを特徴とする画像生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像生成装置、画像生成方法、及び画像生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明器具を仮想空間に配置し、当該仮想空間での照明器具による照明効果をシミュレーションし、擬似的に表示する技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3参照)。
【0003】
一方、現実空間をシミュレーションによってリアルに再現した仮想空間の画像を表示し、ユーザの目の前に、現実空間が実在しているかような感覚(実在感)を与える、いわゆる仮想現実(VR:Virtual Reality)技術も知られている(例えば、特許文献4参照)。近年では、仮想現実技術は、アミューズメントやエンターテインメントの分野だけではなく、建築設計や照明設計の分野などの幅広い分野で活用されるようになっている。
この種の仮想現実技術では、強い光を発する光源等のグレア源が仮想空間に存在する場合、当該グレア源が眩しく見える、いわゆるグレア効果(グロー効果とも呼ばれる)をリアルに再現したグレアエフェクトオブジェクトを当該光源に重ねて表示している。こうすることで、ユーザの仮想現実感が高められている(例えば、特許文献5、及び特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/171005号
【文献】特開2014-71692号公報
【文献】特開2010-97423号公報
【文献】特開2017-138907号公報
【文献】特開2006-4363号公報
【文献】特開2002-42156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、発光に指向性を有する照明器具等の指向性光源が配置された現実空間においては、ユーザと指向性光源の位置関係によって、指向性光源がユーザに与えるグレア感は異なる。しかしながら、従来の仮想現実技術では、かかるグレア感の再現性に乏しく現実感が損なわれていた。
【0006】
本発明は、仮想空間でのグレア感の再現性を高めることができる画像生成装置、画像生成方法、及び画像生成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、グレア源を含む仮想空間を当該仮想空間内の視点位置からみた視認画像に、前記グレア源の大きさに応じた強さで眩しさを表現するエフェクトオブジェクト画像を合成した仮想空間画像を生成する仮想空間画像生成部を有した画像生成装置であって、前記グレア源の発光面を、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて拡大又は縮小するグレア源スケーリング部を備え、前記グレア源スケーリング部は、前記グレア源の発光面の拡大又は縮小によって、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて前記グレア源の発光面の面積を対数関数的に変化させることを特徴とする。
本発明は、グレア源を含む仮想空間を当該仮想空間内の視点位置からみた視認画像に、前記グレア源の大きさに応じた強さで眩しさを表現するエフェクトオブジェクト画像を合成した仮想空間画像を生成する仮想空間画像生成部を有した画像生成装置であって、前記グレア源の発光面を、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて拡大又は縮小するグレア源スケーリング部を備え、前記グレア源の基準軸方向における発光面の輝度値が、前記仮想空間に対する前記発光面の大きさに応じて設定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明は、グレア源を含む仮想空間を当該仮想空間内の視点位置からみた視認画像に、前記グレア源の大きさに応じた強さで眩しさを表現するエフェクトオブジェクト画像を合成した仮想空間画像を生成する画像生成方法において、前記グレア源の発光面を、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて拡大又は縮小し、前記グレア源の発光面の拡大又は縮小によって、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて前記グレア源の発光面の面積を対数関数的に変化させることを特徴とする。
本発明は、グレア源を含む仮想空間を当該仮想空間内の視点位置からみた視認画像に、前記グレア源の大きさに応じた強さで眩しさを表現するエフェクトオブジェクト画像を合成した仮想空間画像を生成する画像生成方法において、前記グレア源の発光面を、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて拡大又は縮小するステップを備え、前記グレア源の基準軸方向における発光面の輝度値が、前記仮想空間に対する前記発光面の大きさに応じて設定されていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、コンピュータを、グレア源を含む仮想空間を当該仮想空間内の視点位置からみた視認画像に、前記グレア源の大きさに応じた強さで眩しさを表現するエフェクトオブジェクト画像を合成した仮想空間画像を生成する仮想空間画像生成部として機能させる画像生成プログラムであって、前記グレア源の発光面を、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて拡大又は縮小するグレア源スケーリング部として前記コンピュータを機能させ、前記グレア源スケーリング部は、前記グレア源の発光面の拡大又は縮小によって、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて前記グレア源の発光面の面積を対数関数的に変化させることを特徴とする。
本発明は、コンピュータを、グレア源を含む仮想空間を当該仮想空間内の視点位置からみた視認画像に、前記グレア源の大きさに応じた強さで眩しさを表現するエフェクトオブジェクト画像を合成した仮想空間画像を生成する仮想空間画像生成部として機能させる画像生成プログラムであって、前記グレア源の発光面を、前記視点位置での前記グレア源の光度に応じて拡大又は縮小するグレア源スケーリング部として前記コンピュータを機能させ、前記グレア源の基準軸方向における発光面の輝度値が、前記仮想空間に対する前記発光面の大きさに応じて設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、仮想空間でのグレア感の再現性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る仮想空間提供システムの概略構成を示す図である。
【
図4】仮想空間における照明器具と観測者との位置関係を示した模式図である。
【
図5】仮想空間画像生成装置による仮想空間画像の生成処理を示すフローチャートである。
【
図6】仮想空間画像におけるグレア感の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る仮想空間提供システム1の概略構成を示す図である。
図2は仮想空間4の一例を示す図であり、
図3は仮想空間画像5の一例を示す図である。
仮想空間提供システム1は、仮想空間4(
図2)において、仮想的な観測者6vが視認する仮想空間画像5(
図3)を生成して表示することで、現実空間のユーザ6が視覚を通じて仮想空間4を実感できるようにするシステムである。また、この仮想空間提供システム1では、現実空間のユーザ6の視線方向の変化、及び移動に追従して、仮想空間4における観測者6vの視線方向(以下、「仮想視線方向」と言う)Dv、及び視点の位置(以下、「仮想視点位置」と言う)Pvを変化させて仮想空間画像5を生成する。かかる仮想空間画像5がユーザ6の動きに追従して表示されることで、ユーザ6は、あたかも仮想空間4の中に居るかのような体験ができるようになっている。
かかる仮想空間提供システム1は、ゲームや映画などのアミューズメントやエンターテインメントでの用途に加え、スタジアム等の建築物の設計や、当該建築物における照明設計を確認する用途等の幅広い用途に利用できる。
【0015】
本実施形態の仮想空間提供システム1は、
図1に示すように、ヘッドマウントディスプレイ8と、仮想空間画像生成装置10と、を備え、これらが有線通信または無線通信により互いにデータを送受する。
ヘッドマウントディスプレイ8は、仮想空間画像5を表示する表示装置の一態様であり、ユーザ6の頭部に装着して使用される、いわゆるウェアラブルデバイスである。ヘッドマウントディスプレイ8は、ユーザ6の眼前に配置されるディスプレイ12を備え、このディスプレイ12に仮想空間画像5が表示される。
【0016】
またヘッドマウントディスプレイ8は、現実空間におけるユーザ6の視線方向の変化を検出するための姿勢センサ14と、当該ユーザ6の移動を検出するための位置センサ15と、を備える。
姿勢センサ14は、ユーザ6の視線方向の変化として、ヘッドマウントディスプレイ8の向きや傾きなどの姿勢の変化を検出し、位置センサ15は、ユーザ6の移動としてヘッドマウントディスプレイ8の位置の変化を検出する。ヘッドマウントディスプレイ8の姿勢の変化、及び位置の変化は、それぞれ姿勢情報16、及び位置情報17として仮想空間画像生成装置10に逐次に送信される。
姿勢センサ14には、例えばジャイロセンサや、加速度センサ、角加速度センサ等を用いることができ、また位置センサ15にはGPSセンサ等を用いることができる。
【0017】
仮想空間画像生成装置10は、仮想空間4における仮想空間画像5を生成し、ヘッドマウントディスプレイ8に送信する装置であり、受信部20と、視点位置算出部22と、視線方向算出部24と、仮想空間情報記憶部25と、3次元レンダリング部26と、送信部30と、グレア源スケーリング部32と、を備える。
【0018】
仮想空間画像生成装置10は、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスと、HDDやSSDなどのストレージ装置と、周辺機器などを接続するためのインターフェース回路と、外部と通信する通信装置と、を備えたコンピュータを備え、プロセッサがメモリデバイス又はストレージ装置に記憶されているプログラムを実行することで、
図1に示す各部の機能が実現される。
【0019】
なお、仮想空間画像生成装置10の各部を実現するコンピュータは、インターネットを介してヘッドマウントディスプレイ8と通信するサーバーコンピュータであってもよい。この場合において、サーバーコンピュータが仮想空間画像生成装置10の機能を提供する方式には、いわゆるクラウドコンピューティング技術を用いることができる。
【0020】
図1において、受信部20は、ヘッドマウントディスプレイ8から位置情報17、及び姿勢情報16を通信によって受信し、位置情報17を視点位置算出部22に出力し、姿勢情報16を視線方向算出部24に出力する。
【0021】
視点位置算出部22は、仮想空間4における観測者6vの仮想視点位置Pvを、位置情報17に基づいて求め、3次元レンダリング部26に出力する。具体的には、視点位置算出部22は、仮想空間画像5の生成当初、仮想視点位置Pvに初期値を設定する。その後、視点位置算出部22は、現実空間でのユーザ6の移動を位置情報17に基づいて特定し、当該移動に応じて仮想空間4における観測者6vの仮想視点位置Pvを変更する。
【0022】
視線方向算出部24は、仮想空間4における観測者6vの仮想視線方向Dvを、姿勢情報16に基づいて求め、3次元レンダリング部26に出力する。具体的には、視線方向算出部24は、仮想空間画像5の生成当初、仮想視線方向Dvに初期値を設定する。その後、視線方向算出部24は、姿勢情報16によってヘッドマウントディスプレイ8の姿勢の変化が検出されるごとに、当該姿勢の変化に応じて仮想空間4における観測者6vの仮想視線方向Dvを変更する。
【0023】
仮想空間情報記憶部25は、仮想空間4のレンダリングによる描画に要する各種のデータを記憶するものであり、建築3Dモデル33、照明器具データ34、及び照明設計データ35を記憶する。
【0024】
建築3Dモデル33は、仮想空間4において建物の3次元形状、及び構造を再現するためのデータである。
照明器具データ34は、仮想空間4に配置され、当該仮想空間4を照明する照明器具Iv(
図4)のデータであり、配光情報34Aと、形状情報34Bとを含む。配光情報34Aは、照明器具Ivの配光特性(指向性)を示す情報、すなわち照明器具Ivから仮想空間4の各方向への光度分布を示す情報である。形状情報34Bと、照明器具Ivの発光面Ev(
図4)の正面視における形状及び寸法を示す情報であり、これら形状、及び寸法に基づいて発光面Evの面積S(
図5)が算出される。
照明設計データ35は、仮想空間4における照明器具Ivの配置位置、及び取付角度(すなわち、仮想空間4において、照明器具Ivの基準軸方向Ds(
図4)が指向する方向)を示すデータである。
【0025】
仮想空間提供システム1を照明設計に利用する際、ユーザ6は、照明器具データ34、及び照明設計データ35を変更することで、仮想空間4における光環境を任意に変更し、当該光環境を仮想空間画像5によって擬似的に確認できる。
【0026】
3次元レンダリング部26は、仮想空間情報記憶部28に格納されている各データと、仮想視点位置Pv、及び仮想視線方向Dvとに基づいて、仮想空間4において観測者6vが仮想視点位置Pvから仮想視線方向Dvを見たときの視認画像5A(
図3)を3次元のレンダリングによって生成する。3次元レンダリング部26は、この視認画像5Aに後述のグレアエフェクトオブジェクト画像5Gを合成して仮想空間画像5を生成し、当該仮想空間画像5を送信部30に出力する。なお、視認画像5Aを生成するためのレンダリング手法には、周知又は公知の任意の手法を用いることができる。
【0027】
送信部30は、当該仮想空間画像5をヘッドマウントディスプレイ8に送信する。
【0028】
3次元レンダリング部26は、仮想空間4におけるグレア源に対してグレアエフェクトを付与した仮想空間画像を生成するために、グレアエフェクト付与部37を備える。グレア源は、眩しさを感じさせる程の強い光を発する任意の物体であり、本実施形態では、仮想空間4に配置された照明器具Ivがグレア源となっている。
【0029】
グレアエフェクト付与部37は、グレア源の眩しさを当該グレア源の強さに応じて擬似的に表現したグレアエフェクトオブジェクト画像5Gを生成し、前掲
図3に示すように、当該グレアエフェクトオブジェクト画像5Gを視認画像5Aにおけるグレア源(本実施形態では照明器具Ivの発光面Ev)の上に重ねて合成する。
グレアエフェクトオブジェクト画像5Gは、グレア源の周辺での明るい光(グロー)や、グレア源の周りに円状に見える光の暈(ハロー)を擬似的に表現する画像オブジェクトである。かかるグレアエフェクトオブジェクト画像5Gの合成によって、グレアエフェクトが付与された仮想空間画像5が得られる。
【0030】
グレアエフェクト付与部37は、グレアエフェクトオブジェクト画像5Gを生成する際、上述したグレア源の強さ(発光面Evの輝度、及び面積S(すなわち発光面の光度))に加え、グレア源から仮想視点位置Pvまでの距離L(
図4)に応じて、グレアエフェクトオブジェクト画像5Gにおけるエフェクトの強さ(ハローやグローの輝度、光量、大きさ)を変更する。これにより、グレア源の強さ、及び観測者6vからグレア源までの距離L応じた強さで、グレアエフェクト付与部37によってグレアエフェクトが仮想空間画像5に与えられる。
【0031】
なお、グレアエフェクトオブジェクト画像5Gの生成手法、及び、グレア源の眩しさを擬似的に表現する手法については、グレア源の強さ(少なくともグレア源の発光面Evの大きさ(面積S))に応じた強さで眩しさが表現される手法であれば、任意の手法を用いることができる。
【0032】
図4は、仮想空間4における照明器具Ivと観測者6vとの位置関係を示した模式図である。
同図に示すように、仮想空間4において、観測者6vが照明器具Ivを見た場合、照明器具Ivが配光特性(すなわち放射光の指向性)を有するため、観測者6vによって観測される光度I
θは、観測者6vと照明器具Ivとの位置関係によって変化する。
具体的には、照明器具Ivの基準軸方向Dsと仮想視線方向Dvとが成す角度を角度θとした場合、観測者6vの仮想視点位置Pvで観測される発光面Evの光度I
θは、照明器具Ivの配光情報34Aにおける角度θの方向の光度となる。また、照明器具Ivの発光面Evは、観測者6vから見ると、角度θに応じて変形して視認される。この変形してみえる発光面Evの面積Sa(すなわち、発光面Evのみかけの面積Sa)は、発光面Evの面積Sにcosθを乗じて求められる。
【0033】
グレアエフェクト付与部37がグレアエフェクトオブジェクト画像5Gを生成する際には、グレア源の発光面Evの寸法形状には、観測者6vが観測する、見かけの発光面Evを用いる。この結果、観測者6vとグレア源との位置関係に応じて、グレアエフェクトオブジェクト画像5Gのグレアエフェクトの強さが調整される。
【0034】
しかしながら、かかるグレアエフェクトの強さ調整だけでは、観測者6vが照明器具Ivを見ながら仮想空間4の中を移動したときのグレア感を再現するには不十分である。
具体的には、現実空間では照明器具の正面位置に比べてグレア感が体感できる程に低くなるような仮想視点位置Pvで観測者6vが照明器具Ivを視認した場合、グレアエフェクトが現実空間ほどには弱くなっておらず、現実に反して強いグレア感が与えられたままとなっている。このため、観測者6vが照明器具Ivの発光面Evを見ながら移動し(仮想視点位置Pvを変えても)ても、移動に伴うグレア感の変化が現実に則しておらず、リアルに再現されていないものとなっている。
【0035】
そこで、本実施形態では、前掲
図1に示すように、仮想空間画像生成装置10に、グレア源スケーリング部32を設けることで、仮想視点位置Pvに応じたグレア感の再現性を高めた仮想空間画像5が得られるようにしている。
グレア源スケーリング部32は、3次元レンダリング部26に出力される発光面Evの寸法を、その面積S、Saが次式(1)に基づいて求められる面積Sbとなるようにスケーリング(拡大又は縮小)して当該3次元レンダリング部26に出力する。
なお、この(1)式において、仮想視点位置Pvが発光面Evの正面でない場合、すなわち角度θ=0°ではない場合、発光面Evの寸法形状、及び面積Sには、観測者6vから見たみかけの寸法形状、及び、みかけの面積Saが用いられる。
【0036】
スケーリング後の発光面Evの面積Sb
=[log10(Iθ×α)]/S ・・・(1)
ただし、αは光度Iθに乗じる所定の係数
【0037】
上記(1)に示されるように、スケーリング後の面積Sbは、仮想視点位置Pvでの光度Iθに応じて対数関数的に変化する。一方、グレアエフェクト付与部37は、グレア源の強さ(輝度、及び面積S(すなわち光度))に応じた強さのグレアエフェクトオブジェクト画像5Gを生成している。したがって、発光面Evがスケーリングされることで、このグレアエフェクトオブジェクト画像5Gのグレアエフェクトの強さも対数関数的にダイナミックに変化する。この結果、現実空間ではグレア感が十分に低減される仮想視点位置Pvにおいて、現実空間と同様に、グレアエフェクトが十分に弱められ、現実に即したグレア感が再現される。
【0038】
図5は、仮想空間画像生成装置10による仮想空間画像5の生成処理を示すフローチャートである。
仮想空間画像生成装置10は、仮想空間画像5の生成開始の指示を、例えばヘッドマウントディスプレイ8等から受け付けると(ステップS1:Yes)、仮想空間画像5を生成するために次の処理を開始する。
すなわち、仮想空間画像生成装置10は、ヘッドマウントディスプレイ8の位置情報17、及び姿勢情報16に基づいて、仮想視点位置Pv、及び仮想視線方向Dvのそれぞれを算出する(ステップS2)。なお、このステップS2において、仮想空間画像5の生成開始時には、仮想視点位置Pv、及び仮想視線方向Dvに所定の初期値が設定される。
【0039】
次いで仮想空間画像生成装置10は、照明器具Ivの配光情報34Aと、照明設計データ35と仮想視線方向Dvとに基づいて、仮想空間4に設置された状態での照明器具Ivの基準軸方向Dsと仮想視線方向Dvとが成す角度θを求め、当該角度θにおける光度Iθを仮想視点位置Pvで観測される光度Iθとして配光情報34Aから求める(ステップS3)。次に、仮想空間画像生成装置10は、照明器具データ34の形状情報34Bとして、3次元レンダリング部26に出力する発光面Ev、Evaの寸法を、その面積S、Saが上記(1)によって求められる面積Sbになるようにスケーリング(拡大又は縮小)する(ステップS4)。このスケーリングによって、発光面Ev、Evaの寸法(面積S、Sa)が、仮想視点位置Pvでの光度Iθに応じて対数関数的に増減されることとなる。
【0040】
そして、3次元レンダリング部26が仮想空間情報記憶部25のデータに基づいて3Dレンダリング処理を行い、視認画像5Aを生成する(ステップS5)。この3Dレンダリングにおいては、グレア源である照明器具Ivに、スケーリング後の発光面Ev、Evaが用いられる。またステップS5では、グレアエフェクト付与部37がスケーリング後の発光面Ev、Evaに応じた強さのグレアエフェクトオブジェクト画像5Gを生成し、当該グレアエフェクトオブジェクト画像5Gを視認画像5Aに合成することで、仮想空間画像5を生成する。
かかる仮想空間画像5がヘッドマウントディスプレイ8に送信され、ディスプレイ12に表示される。
【0041】
仮想空間画像生成装置10は、仮想空間画像5の生成終了の指示を、例えばヘッドマウントディスプレイ8等から受け付けるまで(ステップS6:Yes)、ステップS2からステップS5の処理を繰り返し実行する。これにより、ユーザ6の動きに合わせて動的に変化する仮想空間画像5が順次に生成されてディスプレイ12に表示される。
【0042】
図6は、仮想空間画像5におけるグレア感の変化の一例を示す図である。
同図に示すように、仮想視点位置Pvにおける光度I
θの変化に応じて、発光面Ev、Evaの寸法をスケーリング(拡大又は縮小)しない場合、仮想視点位置Pvが発光面Evの正面(θ=0°)に位置するときと、斜め方向(θ>0°)に位置するときとで、グレアエフェクトの強さの変化が小さく、ユーザ6に与えるグレア感の変化も乏しいものとなっている。
これに対して、発光面Ev、Evaの寸法をスケーリングした場合には、仮想視点位置Pvが発光面Evの正面(θ=0°)に位置するときに比べ、斜め方向(θ>0°)に位置するときには、グレアエフェクトの強さが大きく減少し、仮想視点位置Pvごとのグレア感の変化が現実に即してリアルに再現されていることが分かる。
【0043】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0044】
本実施形態の仮想空間画像生成装置10では、仮想空間4においてグレア源となる照明器具Ivの発光面Evを、仮想視点位置Pvでの光度Iθに応じて拡大又は縮小する構成とした。
これにより、グレアエフェクトオブジェクト画像5Gによるグレアエフェクト(眩しさの表現)の強さも発光面Evの大きさに応じたものとなり、仮想視点位置Pvでのグレア感の再現性が、従前に比べて高められる。
また、グレア感を再現するに際し、発光面Evをスケーリング(拡大又は縮小)して、発光面Evの大きさ(面積S)を変えるので、発光面Evの形状は現実に則したものに維持され、現実感が損なわれることがない。
【0045】
本実施形態の仮想空間画像生成装置10では、グレア源である照明器具Ivの発光面Evのスケーリングによって、仮想視点位置Pvでの光度Iθに応じて発光面Evの面積Sを対数関数的に変化させている。
これにより、仮想視点位置Pvごとのグレア感の変化を現実に即してリアルに再現することができる。
【0046】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に変形及び応用が可能である。
【0047】
上述した実施形態において、基準軸方向Dsにおける発光面Evの輝度値、すなわち正面から発光面Evをみたときの輝度値には、照明器具Ivの仕様に基づく値が設定される。しかしながら、仮想空間4において発光面Evが占める大きさに応じて輝度値を調整した値に設定してもよい。
具体的には、仮想空間4において発光面Evが占める大きさが小さくなるほど輝度値を低める。これにより、同じ輝度値の照明器具Ivを仮想空間4内の同じ位置に配置した場合でも、それぞれの発光面Evが仮想空間4の中で占める大きさを反映した輝度値に調整されることで、それぞれの発光面Evに対するグレアエフェクトの強さも変わり、より現実に即したグレア感が再現される。
【0048】
上述した実施形態において、ヘッドマウントディスプレイ8に仮想空間画像5を表示する構成としたが、これに限らず、任意の表示装置に仮想空間画像5を表示することができる。
また、ユーザ6の頭の動きに合わせて仮想視点位置Pv、及び仮想視線方向Dvのそれぞれを変更したが、これに限らず、任意の操作デバイスを用いて、仮想視点位置Pv、及び仮想視線方向Dvのそれぞれの変更をユーザ6が指示してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 仮想空間提供システム
4 仮想空間
5 仮想空間画像
5A 視認画像
5G グレアエフェクトオブジェクト画像(エフェクトオブジェクト画像)
8 ヘッドマウントディスプレイ
10 仮想空間画像生成装置(画像生成装置)
22 視点位置算出部
24 視線方向算出部
25 仮想空間情報記憶部
26 3次元レンダリング部(仮想空間画像生成部)
28 仮想空間情報記憶部
32 グレア源スケーリング部
34 照明器具データ
34A 配光情報
34B 形状情報
35 照明設計データ
37 グレアエフェクト付与部
Ds 基準軸方向
Dv 仮想視線方向
Ev 発光面
Iv 照明器具
Iθ 光度
Pv 仮想視点位置
S 面積
Sb スケーリング後の面積