(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】エンジンのオイルパン
(51)【国際特許分類】
F01M 11/00 20060101AFI20220830BHJP
F01M 11/03 20060101ALI20220830BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
F01M11/00 E
F01M11/03 G
F02F7/00 302A
(21)【出願番号】P 2018109515
(22)【出願日】2018-06-07
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】森 正樹
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115614(JP,A)
【文献】特開平09-195852(JP,A)
【文献】実開昭62-171647(JP,U)
【文献】特開2012-172600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0179926(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102005013279(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンオイルを貯留するオイルパンであって、
上側が開口した略碗状または略箱状に形成されたオイルパン本体と、
前記オイルパン本体においてオイルストレーナのオイル吸入口が臨む底部から前記オイルパン本体内に突出した第1のリブと
、
前記底部から前記オイルパン本体内に突出した第2のリブと、
前記底部から前記オイルパン本体外に突出した第3のリブとを備え、
前記第1のリブは、前記底部において前記オイル吸入口の周辺の領域から前記オイル吸入口の直下の領域に向かって伸び、
前記第2のリブは、前記底部において、前記オイル吸入口の周辺の領域であって前記第1のリブが形成されている部分と反対側の部分から前記オイル吸入口の直下の領域に向かって伸び、
前記第3のリブは、前記底部において前記オイル吸入口の直下を前記第1のリブの一端側から前記第2のリブの一端側にかけて伸び、かつ前記第1のリブの一端側と前記第2のリブの一端側との間を接続していることを特徴とするオイルパン。
【請求項2】
前記オイルパン本体を上方から見たとき、前記第1のリブ、前記第2のリブおよび前記第3のリブは一直線状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のオイルパン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンのオイルパンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ウェットサンプ方式を採用した4ストロークエンジンの多くは、エンジンオイルを貯留するオイルパンを備えている(例えば下記の特許文献1を参照)。オイルパンは例えば鋼鉄またはアルミニウム合金等の材料により、上側が開口した略碗状または略箱状に形成されている。オイルパンは、エンジンケースの底部に設けられた穴を下方から塞ぐようにエンジンケースの底部に取り付けられる。オイルパン内に貯留されたエンジンオイルは、オイルポンプにより汲み上げられ、エンジンの内部を循環してエンジンの各部品を潤滑または冷却した後、オイルパンに戻る。オイルポンプの吸込口には、オイルポンプに異物が吸い込まれることを防止するためのオイルストレーナが接続され、オイルストレーナのオイル吸入口がオイルパンの底部に臨んでいる。また、オイルパンの底部にはドレン孔が設けられ、ドレン孔にはドレンボルトが締結されている。エンジンオイル交換時等には、ドレン孔からドレンボルトを外し、ドレン孔を介してオイルパンに貯留されたエンジンオイルを外部に排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オイルパンの底部の形状が平面に近い形状である場合、オイルポンプの駆動により、オイルパンに貯留されたエンジンオイルがオイルストレーナのオイル吸入口から吸入される際に、オイル吸入口の周囲にエンジンオイルの渦が発生することがある。この渦はエンジンオイルの吸入の妨げとなるため好ましくない。
【0005】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、エンジンオイル吸入時に生じるエンジンオイルの渦を抑制することができるオイルパンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、エンジンオイルを貯留するオイルパンであって、上側が開口した略碗状または略箱状に形成されたオイルパン本体と、前記オイルパン本体においてオイルストレーナのオイル吸入口が臨む底部から前記オイルパン本体内に突出した第1のリブと、前記底部から前記オイルパン本体内に突出した第2のリブと、前記底部から前記オイルパン本体外に突出した第3のリブとを備え、前記第1のリブは、前記底部において前記オイル吸入口の周辺の領域から前記オイル吸入口の直下の領域に向かって伸び、前記第2のリブは、前記底部において、前記オイル吸入口の周辺の領域であって前記第1のリブが形成されている部分と反対側の部分から前記オイル吸入口の直下の領域に向かって伸び、前記第3のリブは、前記底部において前記オイル吸入口の直下を前記第1のリブの一端側から前記第2のリブの一端側にかけて伸び、かつ前記第1のリブの一端側と前記第2のリブの一端側との間を接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エンジンオイル吸入時に生じるエンジンオイルの渦を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例のオイルパンが設けられたエンジンを示す外観図である。
【
図2】本発明の実施例のオイルパンを右上後方から見た外観図である。
【
図3】本発明の実施例のオイルパンを右下前方から見た外観図である。
【
図4】
図2中の矢示IVーIV方向から見たオイルパンの断面図である。
【
図5】本発明の実施例のオイルパンにおいて左右方向略中央部に設けられた各リブを上方から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態のオイルパンは、エンジンオイルを貯留するオイルパンであって、上側が開口した略碗状または略箱状に形成されたオイルパン本体と、オイルパン本体においてオイルストレーナのオイル吸入口が臨む底部からオイルパン本体内に突出した第1のリブとを備えている。
【0010】
本発明の実施形態のオイルパンによれば、オイルパンに貯留されたエンジンオイルがオイルポンプの駆動によりオイルストレーナのオイル吸入口から吸入されるとき、オイル吸入口の周辺からオイル吸入口へ向かうエンジンオイルの流れ方向を、第1のリブにより制限することができる。これにより、オイル吸入口の周囲にエンジンオイルの渦が発生することを抑制することができる。
【実施例】
【0011】
本発明のオイルパンの実施例について説明する。なお、実施例の説明において、説明の便宜上、オイルパンまたはその構成要素等の形状、配置、動作等に関して上(U)、下(D)、左(L)、右(R)、前(F)、後(B)の方向を述べる際には、各図中の右下に描いた矢印に従う。
【0012】
図1は、本発明の実施例のオイルパン6が設けられたエンジン1を示している。
図1において、エンジン1は、例えば自動二輪車等の鞍乗型車両用のエンジンである。エンジン1は、クランクシャフトおよびトランスミッション等を収容するエンジンケース2を備えている。エンジンケース2の上方にはシリンダ3が設けられ、シリンダ3の上方にはシリンダヘッド4が設けられ、シリンダヘッド4の上方にはシリンダヘッドカバー5が設けられている。
【0013】
また、エンジンケース2の底部にはオイルパン6が取り付けられている。エンジンケース2の底部には底穴が形成されており、オイルパン6はその底穴を下方から塞ぐように取り付けられている。オイルパン6内の空間は、エンジンケース2内の空間と連通しており、エンジンケース2内の空間の一部となっている。
【0014】
オイルパン6内にはエンジンオイルが貯留される。エンジンケース2内には、オイルパン6に貯留されたエンジンオイルを汲み上げてエンジン1の各部に供給するオイルポンプが設けられている。また、オイルポンプの吸込口には、オイルポンプに異物が吸い込まれることを防止するためのオイルストレーナ7が接続されている。オイルストレーナ7はオイルパン6内に配置されており、オイルストレーナ7のオイル吸入口8がオイルパン6の底壁部16に臨んでいる(
図4参照)。
【0015】
図2はオイルパン6を右上後方から見た状態を示し、
図3はオイルパン6を右下前方から見た状態を示している。
図4は、
図2中の矢示IVーIV方向から見たオイルパン6の断面を示している。
図5は、オイルパン6の左右方向略中央部に設けられた後側内リブ31、前側内リブ32および底側内リブ33等をそれらの上方から見た状態を示している。
【0016】
オイルパン6は、
図2および
図3に示すように、オイルパン本体11、後側内リブ31、前側内リブ32、底側内リブ33、底側外リブ34、後側外リブ35、前側外リブ36、左側リブ45、左後側リブ46および右側リブ47等を備えている。オイルパン6は鋳造により形成され、オイルパン6のこれらの構成要素は、例えば鋼鉄またはアルミニウム合金等により一体的に形成されている。
【0017】
オイルパン本体11は、
図2に示すように、上側が開口した略碗状または略箱状に形成されている。オイルパン本体11の上部は、前壁部12、左壁部13、後壁部14および右壁部15により、全体的に見て略環状の筒形に形成されている。前壁部12は若干後方に傾斜しつつ下方へ伸び、オイルパン本体11の最下部を形成している底壁部16(底部)の前部に接続されている。後壁部14は前方に傾斜しつつ下方へ伸び、底壁部16の後部に接続されている。また、左壁部13と底壁部16との間には左下壁部17が設けられている。左下壁部17は、左壁部13の下部から底壁部16の左部に向かって下方に傾斜しつつ右方に伸長している。また、右壁部15と底壁部16との間には右下壁部18が設けられている。右下壁部18は、右壁部15の下部から底壁部16の右部に向かって下方に傾斜しつつ左方に伸長している。左下壁部17の水平方向に対する傾斜の程度は、左壁部13に近い領域では緩やかであるが、底壁部16に接近するに連れて徐々に急になっている。同様に、右下壁部18の水平方向に対する傾斜の程度も、右壁部15に近い領域では緩やかであるが、底壁部16に接近するに連れて徐々に急になっている。これにより、オイルパン本体11を前方から見たとき、オイルパン本体11の形状は、左右方向略中央部に位置する底壁部16が下方に突き出た下窄まりの形状となっている。また、底壁部16は、前後左右方向に拡がる略平板状に形成されている。
図4に示すように、底壁部16は、オイルパン本体11の最下部を、オイルパン本体11の後部から前部に向かって若干下方に傾斜しつつ直線状に伸長している。
【0018】
また、
図2に示すように、オイルパン本体11の上端部には、エンジンケース2の底穴の周縁面と合わさる合わせ面20が形成されている。すなわち、前壁部12、左壁部13、後壁部14および右壁部15のそれぞれの上端面を繋いだ略環状の外形を有する平面が合わせ面20である。また、前壁部12、左壁部13、後壁部14および右壁部15には、複数のボス部21が設けられ、各ボス部21にはボルト挿通孔22が形成されている。ボルト挿通孔22には、オイルパン6をエンジンケース2に固定するためのボルトが挿通される。
【0019】
また、
図2に示すように、オイルパン本体11の底壁部16の前部にはドレン孔23およびドレンボルト締結部24が設けられている。ドレン孔23は、エンジンオイル交換時等に、オイルパン6に貯留されたエンジンオイルを外部に排出するための孔である。また、ドレンボルト締結部24は、ドレン孔23を塞ぐドレンボルト25(
図1参照)を締結するためのボスである。ドレンボルト締結部24は、オイルパン本体11の底壁部16においてドレン孔23の周縁部を肉厚にすることにより形成されている。また、
図3に示すように、底壁部16の外面において、ドレンボルト締結部24の前方には、下方に突出する保護壁26が設けられている。保護壁26は、ドレンボルト締結部24に締結されたドレンボルト25を飛び石等から保護するための壁である。ドレンボルト締結部24および保護壁26はオイルパン本体11と一体形成されている。
【0020】
後側内リブ31は、
図2に示すように、オイルパン本体11において後壁部14から底壁部16にかけての部分に設けられ、当該部分からオイルパン本体11内に向かって突出している。後側内リブ31の後端は後壁部14の上端部に達し、後側内リブ31の前端は底壁部16の前後方向略中央部に達し、後側内リブ31はこれらの間を後から前に向かって下方に傾斜しつつ伸びている。また、後側内リブ31の前端側は、
図4および
図5に示すように、オイルストレーナ7のオイル吸入口8の周辺においてオイル吸入口8の後方からオイル吸入口8の直下に向かって伸びている。後側内リブ31の前端は、オイル吸入口8の周縁部またはその直前には達しているものの、オイル吸入口8の中心部の直下には達していない。また、後側内リブ31の上端(後端)において上方を向いた端面31Aはオイルパン本体11の合わせ面20と同一平面内に位置している。なお、後側内リブ31は第1のリブの具体例である。
【0021】
前側内リブ32は、オイルパン本体11において前壁部12から底壁部16の前部にかけての部分に設けられ、当該部分からオイルパン本体11内に向かって突出している。前側内リブ32の上端は前壁部12の上端部に達し、前側内リブ32の下端は底壁部16の前部に達し、前側内リブ32はこれらの間を上から下に向かって若干後方に傾斜しつつ伸びている。また、前側内リブ32の上端において上方を向いた端面32Aはオイルパン本体11の合わせ面20と同一平面内に位置している。
【0022】
底側内リブ33は、底壁部16の前部からオイルパン本体11内に向かって上方に突出している。底側内リブ33は、底壁部16の前部を、前から後に向かって下方に傾斜しつつ伸びている。また、底側内リブ33は、オイルストレーナ7のオイル吸入口8の周辺においてオイル吸入口8の前方からオイル吸入口8の直下に向かって伸びている。底側内リブ33の後端は、オイル吸入口8の周縁部またはその直前には達しているものの、オイル吸入口8の中心部の直下には達していない。また、底側内リブ33の前端部はドレンボルト締結部24に接続されている。なお、前側内リブ32および底側内リブ33を合わせたものが第2のリブの具体例である。
【0023】
底側外リブ34は、底壁部16からオイルパン本体11外に向かって下方に突出している。底側外リブ34は、底壁部16の後部から前部にかけて前後方向に伸長している。また、
図4および
図5に示すように、底側外リブ34は、後側内リブ31の前端側と底側内リブ33の後端側とを接続するように伸長している。また、底側外リブ34は、オイルストレーナ7のオイル吸入口8の下方に位置している。底側外リブ34の前後方向略中央部はオイル吸入口8の直下に位置している。オイルパン本体11を上方から見たとき、オイル吸入口8と底側外リブ34の前後方向略中央部とは互いに重なり合っている。なお、底側外リブ34は第3のリブの具体例である。
【0024】
後側外リブ35は、後壁部14の一部からオイルパン本体11外に向かって突出している。後側外リブ35は、後壁部14に形成された段部19の下方を向いた面19Aから、当該段部19の後方を向いた面19Bまでの間を接続するように、下方に傾斜しつつ前後方向に伸びている。
【0025】
前側外リブ36は、オイルパン本体11の前壁部12の下部からオイルパン本体11外に向かって突出している。前側外リブ36は、前壁部12の下部の外面(前面)から保護壁26の前面までの間を接続するように、上から下に向かって後方に傾斜しつつ伸びている。
【0026】
図5に示すように、オイルパン本体11を上方から見たとき、後側内リブ31、前側内リブ32、底側内リブ33、底側外リブ34、後側外リブ35および前側外リブ36は、オイルパン本体11の左右方向略中央部に一直線状に配置されている。
【0027】
また、後側内リブ31、後側外リブ35、底側外リブ34および底側内リブ33により、オイルパン本体11の後部の上端部から、オイルパン本体11の底部においてドレンボルト締結部24が形成されている部分まで一筋に伸びる第1のリブ構造体が構成されている。この第1のリブ構造体の高さ寸法、幅寸法および横断面の面積は、その後端から前端にかけて略一定である。また、前側内リブ32および前側外リブ36により、オイルパン本体11の前部の上端部から、オイルパン本体11の底部においてドレンボルト締結部24が形成されている部分まで一筋に伸びる第2のリブ構造体が構成されている。この第2のリブ構造体の高さ寸法、幅寸法および横断面の面積は、その上端から下端にかけて略一定である。
【0028】
図2に示すように、左側リブ45は、オイルパン本体11の左部の前部において、左壁部13から左下壁部17の内面上を右方に伸長している。また、左後側リブ46は、オイルパン本体11の左部の後部において、左壁部13から左下壁部17の内面上を右方に伸長している。また、右側リブ47は、オイルパン本体11の右部の前部において、右壁部15から右下壁部18の内面上を左方に伸長している。
【0029】
以上説明した通り、オイルパン6において、後側内リブ31の前端側および底側内リブ33は、オイルパン本体11においてオイルストレーナ7のオイル吸入口8が臨む底壁部16からオイルパン本体11内に突出している。また、これら後側内リブ31の前端側および底側内リブ33は、オイル吸入口8の周辺からオイル吸入口8の直下に向かって伸びている。このような構成を有するオイルパン6によれば、オイルパン6に貯留されたエンジンオイルがオイルポンプの駆動によりオイルストレーナ7のオイル吸入口8から吸入されるとき、オイル吸入口8の周辺からオイル吸入口8へ向かうエンジンオイルの流れ方向を、後側内リブ31の前端側および底側内リブ33により制限することができる。これにより、オイル吸入口8の周囲にエンジンオイルの渦が発生することを抑制することができる。
【0030】
また、オイル吸入口8の周辺において、オイル吸入口8の後方に後側内リブ31を設け、オイル吸入口8の前方に底側内リブ33を設けたので、オイル吸入口8の前後両側においてエンジンオイルの流れ方向を制限することができる。これにより、オイル吸入口の周囲におけるエンジンオイルの渦を抑制する効果を高めることができる。
【0031】
また、後側内リブ31の後端側はオイルパン本体11の底部からオイルパン本体11の後部の上端部に向かって伸びている。また、オイルパン本体11の底部から前部の上端部にかけての部分には前側内リブ32が設けられている。このようにオイルパン本体11の底部から上端部にかけてそれぞれ伸びた後側内リブ31および前側内リブ32により、エンジンオイルの流れ方向を広範囲に亘って制限することができ、オイル吸入口8の周囲におけるエンジンオイルの渦を抑制する効果を高めることができる。また、後側内リブ31および前側内リブ32により、オイルパン本体11の前壁部12、後壁部14および底壁部16等の剛性を高めることができる。これにより、前壁部12、後壁部14または底壁部16等の振動を抑えることができ、この振動から発生する騒音を抑制することができる。
【0032】
また、底側外リブ34は、後側内リブ31と底側内リブ33との間を接続するように伸びている。これにより、オイルパン本体11の底壁部16の剛性を高めることができる。また、底側外リブ34の前後方向略中央部はオイル吸入口8の直下に位置している。これにより、オイル吸入口8の直下において底壁部16の剛性を高めることができ、オイル吸入口8の直下においてエンジンオイルが振動で攪拌されることを抑制することができる。
【0033】
また、底側外リブ34はオイルパン本体11の底壁部16からオイルパン本体11外に突出している。これにより、路面の凹凸や路面上の障害物からオイルパン本体11の底壁部16を保護することができる。また、底側外リブ34をドレンボルト25の突出端と同等程度、またはそれ以上に下方へ突出させることにより、底側外リブ34によって、路面上の障害物等からドレンボルト25を保護することができる。
【0034】
また、底側外リブ34は、オイルパン本体11外に突出しており、オイルパン本体11内には形成されていない。すなわち、オイル吸入口8の直下にはリブが存在しない。これにより、オイルパン本体11内において、オイル吸入口8をオイルパン本体11の底壁部16に接近させることができる。したがって、エンジンオイル面の揺動時にオイルポンプによりエアが吸い込まれてしまうこと(エア噛み)を抑制することができる。
【0035】
また、後側内リブ31、前側内リブ32、底側内リブ33、左側リブ45、左下側リブ46および右側リブ47等、オイルパン6が有する複数のリブのうちの大部分をオイルパン本体11内に設けたことにより、オイルパン6とその外部周辺の部品(例えば、
図4中の排気管52、排気チャンバ51等)との干渉を防止することができる。
【0036】
また、オイルパン本体11の後部の上端部から、オイルパン本体11の底部においてドレンボルト締結部24が形成されている部分まで一筋に伸びる第1のリブ構造体(後側内リブ31、後側外リブ35、底側外リブ34および底側内リブ33)、およびオイルパン本体11の前部の上端部から、オイルパン本体11の底部においてドレンボルト締結部24が形成されている部分まで一筋に伸びる第2のリブ構造体(前側内リブ32および前側外リブ36)は、オイルパン6の鋳造時に、オイルパン6の鋳型内に溶湯を流通させる湯道として機能する。これらのリブ構造体により、溶湯を鋳型内に円滑に流通させることができ、また、溶湯を鋳型内の全域に確実に充填することができる。よって、オイルパン6の壁部の厚さが薄い場合であっても、オイルパン6の鋳造をし易くすることができ、オイルパン6の生産性を高めることができる。さらに、これらリブ構造体はドレンボルト締結部24にそれぞれ接続されているので、ドレンボルト締結部24に溶湯を確実に供給することができ、ドレンボルト締結部24内に鋳巣等が形成されることを抑制することができる。また、各リブ構造体の横断面の面積が全長に亘って略一定であるので、各リブ構造体内における溶湯の流通の円滑性および安定性を高めることができる。また、後側内リブ31の後端において上方を向いた端面31A、および前側内リブ32の上端において上方を向いた端面32Aはそれぞれ、鋳型内に溶湯を流し込むための湯口として用いることができる。
【0037】
なお、上記実施例において、後側内リブ31、前側内リブ32および底側外リブ34のそれぞれの形状を、オイルパン本体11を上方から見たときに直線状に伸長する形状としたが、後側内リブ31、前側内リブ32または底側外リブ34の形状を、オイルパン本体11を上方から見たときに部分的にまたは全体的に湾曲した形状としてもよい。
【0038】
また、上記実施例では、オイルパン本体11を上方から見たときに、後側内リブ31、前側内リブ32および底側外リブ34を一直線状に配置することとしたが、例えば、オイルパン本体11を上方から見たときに、後側内リブ31または前側内リブ32を底側外リブ34に対して左または右に傾斜するように配置していてもよい。
【0039】
また、上記実施例では、後側内リブ31、前側内リブ32および底側外リブ34がオイルパン本体11の左右方向略中央を前後方向に伸長しているが、後側内リブ31、前側内リブ32および底側外リブ34をオイルパン本体11の前後方向略中央を左右方向に伸長するように設けてもよい。
【0040】
また、後側内リブ31および前側内リブ32のうちのいずれか一方のみをオイルパン本体11に設けてもよい。また、底側外リブ34を設けなくてもよい。
【0041】
また、本発明のオイルパンは、鞍乗型車両のエンジンに限らず、他のエンジンにも用いることができる。
【0042】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うオイルパンもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
6 オイルパン
7 オイルストレーナ
8 オイル吸入口
11 オイルパン本体
16 底壁部(底部)
31 後側内リブ(第1のリブ)
32 前側内リブ(第2のリブ)
33 底側内リブ(第2のリブ)
34 底側外リブ(第3のリブ)