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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】セグメント
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20220830BHJP
   E21D 11/15 20060101ALI20220830BHJP
   E21D 11/04 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
E21D11/08
E21D11/15
E21D11/04 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018111093
(22)【出願日】2018-06-11
(65)【公開番号】P2019214828
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】石田 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】中島 正整
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸夫
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】実公昭45-029076(JP,Y1)
【文献】特開平03-212600(JP,A)
【文献】特開平11-270290(JP,A)
【文献】特開平11-270292(JP,A)
【文献】特開2001-055893(JP,A)
【文献】実開昭61-002598(JP,U)
【文献】特開2004-225373(JP,A)
【文献】特表2014-529020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-19/06
E21D 23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの周方向及び軸方向に対して相互に連結することで前記トンネルを構築するためのセグメントであって、
トンネル周方向の一対の端面と、トンネル軸方向の一対の側面と、トンネル法線方向における地山側の外表面と、前記トンネル法線方向における内空側の内表面とで構成される6面を備える本体部と、前記外表面を覆う膜部とを備え、
前記膜部は、アスファルト、ゴム、及びゴムアスファルトの何れかを含む厚膜を有し、
前記側面と接する主桁板を更に備え、
前記厚膜は、前記主桁板が前記側面と接する面に対向する面よりも前記本体部側に設けられること
を特徴とするセグメント。
【請求項2】
一対の前記端面に形成されたシール溝をさらに備え、
前記厚膜は、前記シール溝の地山側上縁まで延長して設けられること
を特徴とする請求項1記載のセグメント。
【請求項3】
前記厚膜は、前記シール溝内にも設けられること
を特徴とする請求項2記載のセグメント。
【請求項4】
前記膜部は、前記外表面と前記厚膜との間に設けられる重防食膜及び水反応膨張膜の少なくとも何れかを含む保護膜を有すること
を特徴とする請求項1~3の何れか1項記載のセグメント。
【請求項5】
前記保護膜は、前記外表面及び前記厚膜と接すること
を特徴とする請求項4記載のセグメント。
【請求項6】
前記外表面と、前記膜部との間に設けられ、前記膜部に覆われるスキンプレートをさらに備えること
を特徴とする請求項1~4の何れか1項記載のセグメント。
【請求項7】
前記スキンプレートは凹凸部を有し、
前記膜部は、前記凹凸部に接すること
を特徴とする請求項6記載のセグメント。
【請求項8】
前記厚膜は、前記アスファルト、前記ゴム、及び前記ゴムアスファルトの何れかを、吹き付け、塗り付け、及び刷毛塗りの何れかによって形成されたものであること
を特徴とする請求項1~7の何れか1項記載のセグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの周方向及び軸方向に対して相互に連結することで前記トンネルを構築するためのセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールドトンネルの水密性向上を目的として、例えば特許文献1のシールドトンネル用外面樹脂被覆セグメントが提案されている。
【0003】
特許文献1のシールドトンネル用外面樹脂被覆セグメントは、隣接するセグメントを接合する各接合面にシール材を装着するシール溝を有するセグメントと、セグメントの外表面とシール溝を含む各接合面を覆うように塗装された硬化性樹脂塗膜層と、からなることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-270290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、トンネルを構築する際のシールド工事において、テールブラシが用いられる。テールブラシは、セグメントの外表面に当接した状態を保つことで、シールド機内への地下水等の流入を抑制する。このとき、セグメントの外表面にテールブラシ反力が作用するため、セグメントの外表面の早期劣化を引き起こし、止水性の低下が課題として挙げられている。
【0006】
この点、特許文献1の開示技術では、セグメントの外表面に硬化性樹脂塗膜層が設けられる。硬化性樹脂塗膜層は、一般的に固い特性を有する反面、固い特性が災いしてテールブラシの押し付けの反力を受けやすく、そのためテールブラシ等に対する耐摩耗性が弱く、傷が発生し易い傾向を示す。このため、例えば硬化性樹脂塗膜層に傷が発生した場合、テールブラシ反力等に伴う傷の拡大や、剥がれ等の発生を引き起こし易くなる恐れがある。これにより、硬化性樹脂塗膜層における傷の拡大部分等が、水みちを形成することになり、止水性の低下を引き起こす恐れがある。従って、特許文献1の開示技術では、上述した問題点を解決することが難しい。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであって、その目的とするところは、止水性の向上を可能とするセグメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係るセグメントは、トンネルの周方向及び軸方向に対して相互に連結することで前記トンネルを構築するためのセグメントであって、トンネル周方向の一対の端面と、トンネル軸方向の一対の側面と、トンネル法線方向における地山側の外表面と、前記トンネル法線方向における内空側の内表面とで構成される6 面を備える本体部と、前記外表面を覆う膜部とを備え、前記膜部は、アスファルト、ゴム、及びゴムアスファルトの何れかを含む厚膜を有し、前記側面と接する主桁板を更に備え、前記厚膜は、前記主桁板が前記側面と接する面に対向する面よりも前記本体部側に設けられることを特徴とする。
【0009】
第2発明に係るセグメントは、第1発明において、一対の前記端面に形成されたシール溝をさらに備え、前記厚膜は、前記シール溝の地山側上縁まで延長して設けられることを特徴とする。
【0010】
第3発明に係るセグメントは、第2発明において、前記厚膜は、前記シール溝内にも設けられることを特徴とする。
【0011】
第4発明に係るセグメントは、第1発明~第3発明の何れかにおいて、前記膜部は、前記外表面と、前記厚膜との間に設けられる重防食膜及び水反応膨張膜の少なくとも何れかを含む保護膜を有することを特徴とする。
【0012】
第5発明に係るセグメントは、第4発明において、前記保護膜は、前記外表面及び前記厚膜と接することを特徴とする。
【0013】
第6発明に係るセグメントは、第1発明~第4発明の何れかにおいて、前記外表面と、前記膜部との間に設けられ、前記膜部に覆われるスキンプレートをさらに備えることを特徴とする。
【0014】
第7発明に係るセグメントは、第6発明において、前記スキンプレートは凹凸部を有し、前記膜部は、前記凹凸部に接することを特徴とする。
【0015】
第8発明に係るセグメントは、第1発明~第7発明の何れかにおいて、前記厚膜は、前記アスファルト、前記ゴム、及び前記ゴムアスファルトの何れかを、吹き付け、塗り付け、及び刷毛塗りの何れかによって形成されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1発明~第8発明によれば、膜部は、アスファルト、ゴム、及びゴムアスファルトの何れかを含む厚膜を有する。このため、厚膜の表面に傷が発生した場合においても、テールブラシ反力等に伴う傷の拡大を抑制することができる。これにより、止水性を向上させることが可能となる。
【0017】
特に、第2発明によれば、厚膜は、シール溝の地山側上縁まで設けられる。このため、シール溝に設置されるシール材と相まって、膜層の止水効果を向上させることが可能になる。
【0018】
特に、第3発明によれば、厚膜は、シール溝内に設けられる。このため、一対のセグメント間における連結部分の隙間を、厚膜により埋めることができる。これにより、止水性をさらに向上させることが可能となる。
【0019】
特に、第4発明によれば、膜部は、保護膜を有する。このため、厚膜の劣化に伴う水みちが発生した場合においても、保護膜によって外表面を保護することができる。これにより、止水性の向上を容易に実現することが可能となる。
【0020】
特に、第5発明によれば、保護膜は、外表面及び厚膜と接する。このため、厚膜が外表面に接する場合に比べ、膜部全体と外表面との間の密着性を高めることができる。これにより、長期的な外表面の保護を実現することが可能となる。
【0021】
特に、第6発明によれば、スキンプレートをさらに備える。このため、厚膜の劣化に伴う水みちが発生した場合においても、スキンプレートによって外表面を保護することができる。これにより、止水性の向上を容易に実現することが可能となる。また、スキンプレートの表面が膜部に覆われることで、スキンプレートの劣化を抑制することができる。これにより、長期的なスキンプレートの保護を実現することが可能となる。
【0022】
特に、第7発明によれば、膜部は、凹凸部に接する。このため、膜部全体とスキンプレートとの間の密着性を高めることができる。これにより、長期的な外表面の保護を容易に実現することが可能となる。
【0023】
特に、第8発明によれば、厚膜は、吹き付け、塗り付け、及び刷毛塗りの少なくとも何れかによって形成される。これによって、外表面に強固に付着させられるので、厚膜の耐久性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明を適用したセグメントを複数組み合わせて構築されるトンネルの一例を示す斜視図である。
図2】本発明を適用したセグメントの第1実施形態における一例を示す斜視図である。
図3】(a)~(b)は、膜部の一例を示す断面図である。
図4】保護膜の一例を示す断面図である。
図5】(a)は、外表面から側面上まで延在して設けられた厚膜の一例を示す断面図であり、(b)は、(a)に示すセグメントを連結した時の一例を示す断面図である。
図6】(a)は、外表面からシール溝内まで延在して設けられた厚膜の一例を示す断面図であり、(b)は、(a)に示すセグメントを連結した時の一例を示す断面図である。
図7】本発明を適用したセグメントの第2実施形態における一例を示す斜視図である。
図8】(a)は、スキンプレートに接合された拘束材の一例を示す断面図であり、(b)は、(a)に示す8B枠の拡大図である。
図9】スキンプレートに接合された拘束材の他の例を示す断面図である。
図10】(a)は、スキンプレートに接合された主桁板の例を示す断面図であり、(b)は、(a)に示す10B枠の拡大図である。
図11】(a)は、一対のセグメントを連結した時の一例を示す断面図であり、(b)は、各セグメントの変形を示す断面図であり、(c)は、(b)に示す11C枠の拡大図である。
図12】(a)~(c)は、トンネル及びセグメントリングの変形を示す図である。
図13】(a)は、本発明を適用したセグメントの第3実施形態における一例を示す上面図であり、(b)は、(a)における13B-13Bの断面図であり、(c)は、(a)における13C-13Cの断面図である。
図14】(a)は、凹凸部の一例を示す上面図であり、(b)は、(a)における14B-14Bの断面図であり、(c)は、(a)における14C-14Cの断面図である。
図15】(a)は、凹凸部の他の例を示す上面図であり、(b)は、(a)における15B-15Bの断面図であり、(c)は、(a)における15C-15Cの断面図である。
図16図15(a)に示す16A枠の拡大図、及び各凹凸部の高さを示す図である。
図17】(a)及び(b)は、外表面と凹凸部との係合状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(セグメント1:第1実施形態)
以下、本発明を適用したセグメント1の第1実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
本発明を適用したセグメント1は、図1に示すように、トンネルの周方向W(トンネル周方向)に対して相互に連結し、トンネルの軸方向X(トンネル軸方向)に対して千鳥配列状等に連結箇所を配置して連結することで、主にシールドトンネル7を地中9に構築するためのものである。
【0027】
シールドトンネル7は、周方向Wに沿って複数のセグメント1をリング状に相互に連結させて形成されたセグメントリング71を、軸方向Xに沿って複数連結させることで構築される。このため、シールドトンネル7には、軸方向Xに沿って連結された複数のセグメントリング71によって、トンネルの地山側Aと内空側Iとが形成される。これにより、シールドトンネル7は、トンネルの地山側Aからの土圧や水圧に対して、複数のセグメントリング71を抵抗させるものとすることができ、トンネルの内空側Iに内側空間Sを確保することが可能となる。
【0028】
セグメントリング71は、シールドマシン70を用いて地中9を軸方向Xに沿って掘削し、シールドマシン70の後方(坑口側D)において複数のセグメント1を周方向Wに沿って連結することで形成される。上述したシールドマシン70を用いた掘削と、セグメントリング71の形成とを繰り返すことで、坑口側Dから切羽側Cに沿ったシールドトンネル7が構築される。
【0029】
本発明を適用したセグメント1は、図2に示すように、本体部2と、膜部6とを備え、例えばシール溝30と、セグメント継手45と、リング継手36とを備えてもよい。
【0030】
本体部2は、周方向Wに延在する。本体部2は、周方向Wと交わり軸方向Xに延在する一対の端面21と、軸方向Xと交わり周方向Wに延在する一対の側面22と、法線方向Y(トンネル法線方向)と交わり軸方向X及び周方向Wと平行な面を有する一対の面20とで構成される6面を備える。一対の面20は、法線方向Yにおける地山側Aの外表面20aと、及び内空側Iの内表面20bとで表される。本体部2は、例えば軸方向Xの幅が200mm~2,500mm程度であり、トンネルの法線方向Yの厚さが150mm~700mm程度である。
【0031】
膜部6は、外表面20a上全体に延在し、外表面20aを覆う。膜部6は、アスファルト、ゴム、及びゴムアスファルトの何れかを含む厚膜61を有する。
【0032】
アスファルトとして、例えばJIS K 2207に対応するブローンアスファルト、又は上記規格に相当する性能を有するアスファルト材料が用いられる。ゴムとして、例えばJIS A 6021に対応するウレタンゴム系、アクリルゴム系、クロロブレンゴム系、シリコーンゴム系、又は上記規格に相当する性能を有するゴム材料が用いられる。ゴムアスファルトとして、例えばJIS A 6021に対応するゴムアスファルト系、又は上記規格に相当する性能を有するゴムアスファルト材料が用いられる。厚膜61は、例えば水酸基末端ポリブタジエンを主剤として含む。
【0033】
厚膜61は、例えば上述したアスファルト、ゴム、及びゴムアスファルトの何れかを、外表面20a等に対して吹き付け、塗り付け、及び刷毛塗りの何れかによって形成されたものである。
【0034】
膜部6における法線方向Yの厚さは、シールド工事におけるテールクリアランス以下であり、例えば1mm以上10mm以下、より好ましくは2mm以上4mm以下である。
【0035】
例えば図3(a)に示すように、テールブラシ反力等の作用によって厚膜61に傷6bが発生する場合がある。このとき、厚膜61がアスファルト、ゴム、及びゴムアスファルトの何れかを含むことで、例えば図3(b)に示すように、厚膜61の自己修復性能により傷6b幅、長さなどの拡大を抑制することができる。このため、例えば図3の矢印に沿って地下水等が流れる際、傷6bを介して外表面20a上に地下水等が到達することを防ぐことができる。
【0036】
膜部6は、例えば図4に示すように、外表面20aと、厚膜61との間に設けられる保護膜62を有する。保護膜62は、重防食膜及び水反応膨張膜の少なくとも何れかを含む。このため、厚膜61の劣化に伴う水みちが発生した場合においても、保護膜62によって外表面20aを保護することができる。
【0037】
保護膜62は、例えば外表面20a及び厚膜61と接する。このとき、保護膜62は、プライマーとしての役割を担う。このため、厚膜61が外表面20aに接する場合に比べ、膜部6全体と外表面20aとの間の密着性を高めることができる。
【0038】
重防食膜として、例えばJIS K 5552に対応するジンクリッチプライマー、JIS K 5553に対応する厚膜形ジンクリッチペイント、又は上記規格に相当する性能を有する重防食塗料が用いられる。水反応膨張膜として、例えばポリウレタン等を主成分として、吸水膨張して止水性能を発揮する吸水膨潤性材料や、クロロプレンゴム系材料、スチレンブタジエンゴム(SBR)系材料、天然ゴム系材料等の弾性を有する水膨張性シール材等が用いられる。
【0039】
なお、保護膜62は、例えば外表面20a上に設けられるほか、例えば端面21、側面22、及び内表面20bの少なくとも何れかに設けられてもよい。この場合、例えば一対のセグメント1の間等に水みちが発生した場合においても、保護膜62によって本体部2を保護することができる。これにより、止水性の向上を容易に実現することが可能となる。
【0040】
本発明を適用したセグメント1は、例えば図2に示すように、シール溝30を備える。シール溝30は、一対の端面21及び一対の側面22に形成される。シール溝30は、例えば端面21に形成されて軸方向Xに延在する一対の端面側シール溝31a、31bと、側面22に形成されて周方向Wに延在する一対の側面側シール溝32a、32bとを有する。
【0041】
シール溝30は、例えば図5(b)に示すように、一対のセグメント1a、1bを連結するとき、シール材33を充填させるためのものである。これにより、一対のセグメント1a、1bの連結強度を向上させることができる。
【0042】
例えば図5(a)に示すように、厚膜61は、外表面20a上から側面22上まで延在して設けられてもよい。すなわち、厚膜61は、外表面20a上からシール溝30の地山側A上縁まで延長して設けられる。この場合、例えば図5(b)に示すように、一対のセグメント1a、1bを連結するとき、各セグメント1a、1bの側面22上に設けられた厚膜61が、密着した状態を維持する。そのため、従来の硬化性樹脂塗膜層のように、塗膜層を設ける範囲のセグメント1を切欠いておかなくても良く、セグメント1の製造コストが向上する。このため、一対のセグメント1a、1b間における連結部分の隙間を、厚膜61により埋めることができる。これにより、一対のセグメント1a、1bの連結箇所(側面22)における止水性を飛躍的に向上させることが可能となる。なお、厚膜61は、例えば外表面20a上から端面21上まで延在して設けられてもよいほか、外表面20a上から端面21上及び側面22上まで延在して設けられてもよい。
【0043】
例えば図6(a)に示すように、厚膜61は、外表面20a上からシール溝30内まで延在して設けられてもよい。この場合、例えば図6(b)に示すように、一対のセグメント1a、1bを連結するとき、各セグメント1a、1bのシール溝30(図6(b)では側面側シール溝32a)内に設けられた厚膜61が、シール材33と密着した状態を維持する。このため、一対のセグメント1a、1b間における連結部分の隙間を、シール材33と厚膜61とにより埋めることができる。これにより、一対のセグメント1a、1bの連結箇所における止水性をさらに向上させることが可能となる。
【0044】
本発明を適用したセグメント1は、例えば図2に示すように、側面22に配置されたリング継手36を備える。リング継手36は、一対のセグメント1を軸方向Xに沿って連結するために用いられる。リング継手36の配置される数及び位置は、任意である。
【0045】
各リング継手36は、雄側リング継手又は雌側リング継手の何れかを有する。雄側リング継手及び雌側リング継手は、互いに嵌合する形状を有する。例えば、軸方向Xに沿って隣接する一対のセグメント1において、一方のセグメント1には雄側リング継手が配置され、他方のセグメント1には雌側リング継手が配置される。これにより、一対のセグメント1を連結することができる。各リング継手36は、例えば少なくとも一部を本体部2に埋設される。
【0046】
本発明を適用したセグメント1は、例えば端面21又は側面22に配置されたセグメント継手45を備える。セグメント継手45は、一対のセグメント1を周方向Wに沿って連結するために用いられる。セグメント継手45の配置される数及び位置は、任意である。
【0047】
各セグメント継手45は、例えば雄側セグメント継手又は雌側セグメント継手の何れかを有する。雄側セグメント継手及び雌側セグメント継手は、互いに嵌合する形状を有する。例えば、周方向Wに沿って隣接する一対のセグメント1において、一方のセグメント1には雄側セグメント継手が配置され、他方のセグメント1には雌側セグメント継手が配置される。これにより、一対のセグメント1を連結することができる。各セグメント継手45は、例えば少なくとも一部を本体部2に埋設される。なお、一対のセグメント1がボルトとナットで連結される場合は、ボルトが雄側セグメント継手、ナットが雌側セグメント継手となる。
【0048】
本発明を適用したセグメント1によれば、膜部6は、アスファルト、ゴム、及びゴムアスファルトの何れかを含む厚膜61を有する。このため、厚膜61の表面に傷が発生した場合においても、テールブラシ反力等に伴う傷の拡大を抑制することができる。これにより、止水性を向上させることが可能となる。
【0049】
また、本発明を適用したセグメント1によれば、厚膜61は、シール溝30の地山側A上縁まで設けられる。このため、シール溝30に設置されるシール材33と相まって、膜層の止水効果を向上させることが可能になる。
【0050】
また、本発明を適用したセグメント1によれば、厚膜61は、シール溝30内に設けられる。このため、一対のセグメント1間における連結部分の隙間を、厚膜61により埋めることができる。これにより、止水性をさらに向上させることが可能となる。
【0051】
また、本発明を適用したセグメント1によれば、膜部6は、保護膜62を有する。このため、厚膜61の劣化に伴う水みちが発生した場合においても、保護膜62によって外表面20aを保護することができる。これにより、止水性の向上を容易に実現することが可能となる。
【0052】
また、本発明を適用したセグメント1によれば、保護膜62は、外表面20a及び厚膜61と接する。このため、厚膜61が外表面20aに接する場合に比べ、膜部6全体と外表面20aとの間の密着性を高めることができる。これにより、長期的な外表面20aの保護を実現することが可能となる。
【0053】
また、本発明を適用したセグメント1によれば、厚膜61は、吹き付け、塗り付け、及び刷毛塗りの少なくとも何れかによって形成される。これによって、外表面20aに強固に付着させられるので、厚膜61の耐久性を高めることが可能となる。
【0054】
(セグメント1:第2実施形態)
次に、本発明を適用したセグメント1の第2実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0055】
第2実施形態と第1実施形態との違いは、スキンプレート5を備える点である。なお、上述した内容と同様の構成については、説明を省略する。
【0056】
スキンプレート5は、例えば図7に示すように、外表面20aと膜部6との間に設けられる。スキンプレート5は、外表面20a上全体に延在し、外表面20aを覆う。このため、膜部6は、スキンプレート5を介して外表面20aと離間する。スキンプレート5は、外表面20aと接して設けられる。なお、本発明を適用したセグメント1は、例えば内表面20bと接して設けられるスキンプレート5をさらに備えてもよい。
【0057】
スキンプレート5は、例えば一対の拘束材35に接合される。拘束材35は、周方向Wに沿って円弧状に延在し、溶接接合等によりスキンプレート5と接合される。この場合、スキンプレート5を外表面20a上に強固に固定することができる。これにより、長期的な外表面20aの保護を容易に実現することが可能となる。
【0058】
拘束材35は、例えば図8に示すように、法線方向Yに沿って本体部2に埋設される。この場合、拘束材35は、例えば複数の開孔部35hを有してもよい。開孔部35hを有する場合、開孔部35h内に本体部2(コンクリート)が充填されるため、拘束材35と本体部2との間の固結強度を向上させることが可能となる。なお、拘束材35が埋設される法線方向Yの長さは任意である。
【0059】
拘束材35は、例えば図9に示すように、側面22に接して設けられてもよい。この場合、本体部2を形成したあとに、拘束材35を設けることができる。なお、拘束材35における法線方向Yに延在する長さは、任意である。
【0060】
本発明を適用したセグメント1は、例えば一対の端面21と接して設けられる一対の継手板4と、一対の側面22と接して設けられる一対の主桁板3とを備えてもよい。継手板4は、軸方向Xに沿って延在する。主桁板3は、周方向Wに沿って円弧状に延在する。
【0061】
継手板4及び主桁板3として、例えば鋼板やセグメント形鋼が用いられる。一対の継手板4の各端部と、一対の主桁板3の各端部とを接合することで、本体部2を囲む鋼殻が形成される。本発明を適用したセグメント1は、例えば鋼殻の内部に中詰めコンクリートを充填することで、本体部2を形成することができる。
【0062】
主桁板3は、例えば図10に示すように、拘束材35として用いられてもよい。即ち、スキンプレート5は、溶接接合等により一対の主桁板3と接合されてもよい。
【0063】
軸方向Xに沿って、厚膜61は、例えば主桁板3における側面22と接する面に対抗する面よりも本体部2側に設けられる。図10(b)に示すように、厚膜61は、主桁板3における側面22と接する面に対向する面と離間して設けられる。なお、厚膜61は、例えば継手板4における端面21と接する面に対向する面と離間して設けられてもよい。
【0064】
この場合、例えば図11(a)に示すように、一対のセグメント1a、1bを連結したとき、各セグメント1a、1bのスキンプレート5上に設けられた各厚膜61は、密着せずに離間する。このため、例えば図11(b)に示すように、地震等に伴う変形(図11(b)の矢印)が発生した場合、厚膜61の変形はセグメント1a、1bの変形よりも大きいため、厚膜61同士が衝突し、亀裂や剥がれが発生する場合がある。それに対して本発明を適用したセグメント1は、例えば図11(c)に示すように、厚膜の位置を主桁板3よりも控えることで、各厚膜61自体が変形するため、各厚膜61の衝突を防ぐことができる。これにより、地震等に伴う変形に起因する厚膜61の亀裂や剥がれ、それに伴う劣化を抑制することが可能となる。
【0065】
上記に加え、例えば図12(a)及び図12(b)の矢印に示すように、各方向への複合的な力がシールドトンネル7に作用した場合、各セグメントリング71は、例えば軸方向Xから見て、図12(b)の破線に示すように変形する。このとき、各セグメント1に設けられた厚膜61がそれぞれ離間しているため、各セグメントリング71の間における追従を抑制することができる。これにより、例えば図12(c)に示すように、各セグメントリング71の変形を容易に可能とし、各セグメントリング71に作用する負荷を最小限に抑えられ、シールドトンネル7全体の崩壊を抑制することができる。なお、図12(c)における破線は、変形前のシールドトンネル7の位置を示す。
【0066】
本発明を適用したセグメント1によれば、上述した実施形態と同様に、膜部6は、アスファルト、ゴム、及びゴムアスファルトの何れかを含む厚膜61を有する。このため、厚膜61の表面に傷が発生した場合においても、テールブラシ反力等に伴う傷の拡大を抑制することができる。これにより、止水性を向上させることが可能となる。
【0067】
また、本実施形態によれば、本発明を適用したセグメント1は、スキンプレート5をさらに備える。このため、厚膜61の劣化に伴う水みちが発生した場合においても、スキンプレート5によって外表面20aを保護することができる。これにより、止水性の向上を容易に実現することが可能となる。また、スキンプレート5の表面が膜部6に覆われることで、スキンプレート5の劣化を抑制することができる。これにより、長期的なスキンプレート5の保護を実現することが可能となる。
【0068】
なお、本実施形態によれば、上述した実施形態と同様に、例えば厚膜61がシール溝30内に設けられてもよい。このため、一対のセグメント1間における連結部分の隙間を、厚膜61により埋めることができる。これにより、止水性をさらに向上させることが可能となる。
【0069】
また、本実施形態によれば、上述した実施形態と同様に、例えば膜部6が保護膜62を有してもよい。このため、厚膜61の劣化に伴う水みちが発生した場合においても、保護膜62によってスキンプレート5を保護することができる。これにより、止水性の向上を容易に実現することが可能となる。
【0070】
上記に加え、本実施形態によれば、保護膜62は、スキンプレート5及び厚膜61と接してもよい。このため、厚膜61がスキンプレート5に接する場合に比べ、膜部6全体とスキンプレート5との間の密着性を高めることができる。これにより、長期的なスキンプレート5及び外表面20aの保護を実現することが可能となる。
【0071】
(セグメント1:第3実施形態)
次に、本発明を適用したセグメント1の第3実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0072】
第3実施形態と第2実施形態との違いは、スキンプレート5が凹凸部51を有する点である。なお、上述した内容と同様の構成については、説明を省略する。
【0073】
スキンプレート5は、例えば図13に示すように、エンボス加工された凹凸部51を有する。凹凸部51は、スキンプレート5の表面全体に形成されるほか、例えばスキンプレート5の表面の一部に形成されてもよい。凹凸部51は、湾曲した波状に形成されるほか、例えば平坦面を有する矩形状に形成されてもよい。
【0074】
凹凸部51として、例えば周方向Wに沿って複数の凹凸を含む第1凹凸部51aが形成される。第1凹凸部51aのピッチは、周方向Wに沿って一定に形成されるほか、例えば周方向Wに沿ってピッチを変化させてもよい。第1凹凸部51aを形成することで、軸方向Xに沿ってのみ凹凸部が形成された場合に比べて、スキンプレート5の強度を高めることができる。これにより、スキンプレート5の劣化を抑制することが可能となる。
【0075】
凹凸部51として、例えば図14及び図15に示すように、第1凹凸部51aと、軸方向Xに沿って複数の凹凸を含む第2凹凸部51bとが形成されてもよい。第1凹凸部51a及び第2凹凸部51bは、例えば法線方向Yから見て、図14に示す矩形状に形成されるほか、例えば図15に示すハニカム形状に形成されてもよい。第1凹凸部51aに加えて第2凹凸部51bを形成することで、スキンプレート5の強度をさらに高めることができる。これにより、スキンプレート5の劣化をさらに抑制することが可能となる。また、周方向W及び軸方向Xに各凹凸部51a、51bが形成されることで、外表面20aからのずれを抑制することができる。これにより、長期的な外表面20aの保護を実現することが可能となる。
【0076】
なお、凹凸部51は、例えばスキンプレート5の端部周辺に形成されなくてもよい。すなわち、スキンプレート5には、例えば周方向Wの両端側に位置する一対の端面の近傍、及び軸方向Xの両端側に位置する一対の側面の近傍の少なくとも何れかにおいて、平滑面が形成されてもよい。この場合、本体部2との接合面が密着するため、スキンプレート5を外表面上に強固に固定することができる。また、接合面の耐久性が向上する。
【0077】
例えば図16に示すように、第1凹凸部51aにおける法線方向Yの高さH1は、第2凹凸部51bにおける法線方向Yの高さH2よりも高い。この場合、スキンプレート5の強度向上を優先した上で、外表面20aからのずれを抑制することができる。これにより、スキンプレート5の劣化の抑制と、長期的な外表面20aの保護とを容易に実現することが可能となる。さらにスキンプレート5の周方向W及び軸方向Xに対する縦横寸法に応じて、高さH1と高さH2の高さを調節することで、スキンプレート5の縦横強度を適切に設定することができるため、スキンプレート5の製造コストを抑制できる。
【0078】
外表面20aは、例えば図17に示すように、スキンプレート5の凹凸部51と係合する形状を有してもよい。外表面20a及び凹凸部51は、上述した矩形状等を有するほか、例えば図17(a)に示す波形状や、図17(b)に示す折板構造状に形成されてもよい。外表面20a及び凹凸部51の形状が波形状の場合、例えば法線方向Yの高さは5mm以上30mm以下である。外表面20a及び凹凸部51の形状が折板構造状の場合、例えば法線方向Yの高さは10mm以上50mm以下である。
【0079】
例えば地震等に伴う変形(図17の矢印)が発生した場合、スキンプレート5から本体部2に向けて、変形に伴う力が作用する(図17の白抜き矢印)。このとき、外表面20aが凹凸部51と係合する形状を有することで、スキンプレート5と外表面20aとのずれを容易に抑制することができる。これにより、長期的な外表面20aの保護を実現することが可能となる。
【0080】
本発明を適用したセグメント1によれば、上述した実施形態と同様に、膜部6は、アスファルト、ゴム、及びゴムアスファルトの何れかを含む厚膜61を有する。このため、厚膜61の表面に傷が発生した場合においても、テールブラシ反力等に伴う傷の拡大を抑制することができる。これにより、止水性を向上させることが可能となる。
【0081】
また、本実施形態によれば、スキンプレート5は、凹凸部51を有する。このため、従来のスキンプレート5に比べて、スキンプレート5の強度を飛躍的に高めることができる。これにより、テールブラシ反力等が作用した場合においても、スキンプレート5の劣化を抑制することができる。また、膜部6全体とスキンプレート5との間の密着性を高めることができる。これにより、長期的な外表面20aの保護を容易に実現することが可能となる。
【0082】
本発明を適用したセグメント1によれば、厚膜61は、吹き付け、塗り付け、及び刷毛塗りの少なくとも何れかによって形成される。吹き付けによる施工は、例えばアスファルトをエマルジョン状にしてノズルから噴射しセグメント1の外表面20aに貼着させる。塗り付けによる施工は、例えばアフファルトに細粒成分の増粘剤を混合し、粘性を高めることで、例えば所謂左官のようにコテを使用してセグメント1の外表面20aに塗り付ける。刷毛塗りは、所謂改質アスファルトを採用することで、常温において液状としたものを塗料等の施工のように刷毛塗りでセグメント1の外表面20aに塗布する。いずれの施工方法も事前に定型に成形した厚膜版を糊で接着する施工のものとは異なり、セグメント1の表面に含浸して固化するため、セグメント1の外表面20aに強固に付着させられることから、厚膜61の剥がれに対する耐性が極めて高く、厚膜61の耐久性を大幅に向上させることが可能となる。
【0083】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならない。
【符号の説明】
【0084】
1 :セグメント
2 :本体部
20 :面
20a :外表面
20b :内表面
21 :端面
22 :側面
3 :主桁板
30 :シール溝
33 :シール材
35 :拘束材
35h :開孔部
36 :リング継手
4 :継手板
45 :セグメント継手
5 :スキンプレート
51 :凹凸部
51a :第1凹凸部
51b :第2凹凸部
6 :膜部
6b :傷
61 :厚膜
62 :保護膜
7 :シールドトンネル
70 :シールドマシン
71 :セグメントリング
9 :地中
A :地山側
C :切羽側
D :坑口側
I :内空側
S :内側空間
W :周方向
X :軸方向
Y :法線方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17