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特許7131114車両用鏡面角度調整装置、車両用ミラー装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】車両用鏡面角度調整装置、車両用ミラー装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/072 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
B60R1/072
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018117766
(22)【出願日】2018-06-21
(65)【公開番号】P2019217950
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】川村 敦史
【審査官】岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178223(JP,A)
【文献】国際公開第2006/040800(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/06- 1/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の鏡面の角度を調整する車両用鏡面角度調整装置において、
ミラーハウジングに固定される固定部材と、
ミラーユニットが取り付けられる可動部材と、
前記可動部材を前記固定部材に、回転中心を中心として回転可能に保持する保持部材と、
前記可動部材を前記固定部材に対して、前記回転中心を中心として回転させる駆動部材と、
を備え、
前記固定部材は、前記回転中心を中心とする球面の一部からなる固定側球面を有し、
前記可動部材は、前記回転中心を中心とする球面の一部からなる可動側球面を有し、
前記固定側球面と前記可動側球面との間には、隙間が形成されていて、
前記固定側球面と前記可動側球面との間には、前記隙間をシールするシール剤が介在されていて、
前記固定側球面または前記可動側球面の少なくとも一方には、前記シール剤を溜めるシール剤溜部が設けられていて、
前記シール剤溜部は、前記鏡面に対して交差する方向に設けられた縦溝部からなり、
前記縦溝部は、幅が前記鏡面側に行くに従って狭くなる、形状をなす
ことを特徴とする車両用鏡面角度調整装置。
【請求項2】
車両の鏡面の角度を調整する車両用鏡面角度調整装置において、
ミラーハウジングに固定される固定部材と、
ミラーユニットが取り付けられる可動部材と、
前記可動部材を前記固定部材に、回転中心を中心として回転可能に保持する保持部材と、
前記可動部材を前記固定部材に対して、前記回転中心を中心として回転させる駆動部材と、
を備え、
前記固定部材は、前記回転中心を中心とする球面の一部からなる固定側球面を有し、
前記可動部材は、前記回転中心を中心とする球面の一部からなる可動側球面を有し、
前記固定側球面と前記可動側球面との間には、隙間が形成されていて、
前記固定側球面と前記可動側球面との間には、前記隙間をシールするシール剤が介在されていて、
前記固定側球面または前記可動側球面の少なくとも一方には、前記シール剤を溜めるシール剤溜部が設けられていて、
前記シール剤溜部は、
前記回転中心を通りかつ前記鏡面に対して交差する中心線を、中心とする周方向に設けられた周溝部と、
前記鏡面に対して交差する方向に設けられた縦溝部と、
からなり、
前記縦溝部は、幅が前記鏡面側に行くに従って狭くなる、形状をなす、
ことを特徴とする車両用鏡面角度調整装置。
【請求項3】
車両の鏡面の角度を調整する車両用鏡面角度調整装置において、
ミラーハウジングに固定される固定部材と、
ミラーユニットが取り付けられる可動部材と、
前記可動部材を前記固定部材に、回転中心を中心として回転可能に保持する保持部材と、
前記可動部材を前記固定部材に対して、前記回転中心を中心として回転させる駆動部材と、
を備え、
前記固定部材は、前記回転中心を中心とする球面の一部からなる固定側球面を有し、
前記可動部材は、前記回転中心を中心とする球面の一部からなる可動側球面を有し、
前記固定側球面と前記可動側球面との間には、隙間が形成されていて、
前記固定側球面と前記可動側球面との間には、前記隙間をシールするシール剤が介在されていて、
前記固定側球面または前記可動側球面の少なくとも一方には、前記シール剤を溜めるシール剤溜部が設けられていて、
前記シール剤溜部は、
前記回転中心を通りかつ前記鏡面に対して交差する中心線を、中心とする周方向に設けられた周溝部と、
前記鏡面に対して交差する方向に設けられた縦溝部と、
からなり、
前記周溝部と前記縦溝部とは、前記鏡面がニュートラル時あるいは初期設定時において、相互に交差しない状態にある、
ことを特徴とする車両用鏡面角度調整装置。
【請求項4】
前記の請求項1~のいずれか1項に記載の車両用鏡面角度調整装置と、
前記固定部材が固定されているミラーハウジングと、
前記可動部材に取り付けられているミラーユニットと、
を備える、
ことを特徴とする車両用ミラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミラーの鏡面の角度を調整する車両用鏡面角度調整装置に関するものである。また、この発明は、車両用鏡面角度調整装置を備える車両用ミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用鏡面角度調整装置を備える車両用ミラー装置としては、例えば、特許文献1に示すものがある。特許文献1の車両用ミラー装置は、鏡面角度調整装置において、ミラーホルダの摺動部がケースの突出部を摺動されつつ、ミラーホルダが回動されて、ミラーの鏡面角度が調整されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-163498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車両用ミラー装置は、ミラーホルダの摺動部の摺動部位とケースの突出部の接触面(摺動部分)とが相互に接触(圧接)されている状態にある。この結果、特許文献1の車両用ミラー装置は、低い温度の環境下において、摺動部位と接触面との接触力が大きくなることがある。特に、部品の寸法公差により、前記の接触力がさらに大きくなることがある。これにより、特許文献1の車両用ミラー装置は、ミラーホルダの摺動部の摺動部位がケースの突出部の接触面に対してスムーズに摺動することができない場合、すなわち、鏡面の角度をスムーズに調整することができない場合がある。
【0005】
そこで、特許文献1の車両用ミラー装置において、摺動部位と接触面との間に隙間を設けることが考えられる。しかしながら、摺動部位と接触面との間に隙間をただ単に設けただけでは、その隙間から水が鏡面角度調整装置の内部に浸入することがある。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、鏡面の角度をスムーズに調整することができ、しかも、水が内部に浸入するのを防ぐことができる車両用鏡面角度調整装置、車両用ミラー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の車両用鏡面角度調整装置は、車両の鏡面の角度を調整する車両用鏡面角度調整装置において、ミラーハウジングに固定される固定部材と、ミラーユニットが取り付けられる可動部材と、可動部材を固定部材に、回転中心を中心として回転可能に保持する保持部材と、可動部材を固定部材に対して、回転中心を中心として回転させる駆動部材と、を備え、固定部材が、回転中心を中心とする球面の一部からなる固定側球面を有し、可動部材が、回転中心を中心とする球面の一部からなる可動側球面を有し、固定側球面と可動側球面との間には、隙間が形成されていて、固定側球面と可動側球面との間には、隙間をシールするシール剤が介在されている、ことを特徴とする。
【0008】
この発明の車両用鏡面角度調整装置は、固定側球面または可動側球面の少なくとも一方には、シール剤を溜めるシール剤溜部が設けられている、ことが好ましい。
【0009】
この発明の車両用鏡面角度調整装置は、シール剤溜部が、回転中心を通りかつ鏡面に対して交差する中心線を、中心とする周方向に設けられた周溝部からなる、ことが好ましい。
【0010】
この発明の車両用鏡面角度調整装置は、シール剤溜部が、鏡面に対して交差する方向に設けられた縦溝部からなる、ことが好ましい。
【0011】
この発明の車両用鏡面角度調整装置は、シール剤溜部が、回転中心を通りかつ鏡面に対して交差する中心線を、中心とする周方向に設けられた周溝部と、鏡面に対して交差する方向に設けられた縦溝部と、からなる、ことが好ましい。
【0012】
この発明の車両用鏡面角度調整装置は、周溝部と縦溝部とが、鏡面の角度が0°の時において、相互に交差しない状態にある、ことが好ましい。
【0013】
この発明の車両用鏡面角度調整装置は、縦溝部が、幅が鏡面側に行くに従って狭くなる、形状をなす、ことが好ましい。
【0014】
この発明の車両用ミラー装置は、前記の各発明に係る車両用鏡面角度調整装置と、固定部材が固定されているミラーハウジングと、可動部材に取り付けられているミラーユニットと、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明の車両用鏡面角度調整装置、車両用ミラー装置は、鏡面の角度をスムーズに調整することができ、しかも、水が内部に浸入するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、この発明にかかる車両用鏡面角度調整装置、車両用ミラー装置の実施形態を示す要部の一部拡大縦断面図(図2におけるI部の一部拡大断面図)である。
図2図2は、使用状態を示す一部破断側面図である。
図3図3は、要部の一部拡大縦断面図である。(A)は、縦溝部の箇所における一部拡大縦断面図である。(B)は、縦溝部以外の箇所における一部拡大縦断面図である。
図4図4は、シール剤の状態を示す一部拡大縦断面図である。(A)は、周溝部にシール剤を塗布した時の状態を示す一部拡大縦断面図である。(B)は、鏡面の角度が0°の時(ニュートラル時)の状態を示す一部拡大縦断面図である。(C)は、鏡面の角度が調整されている時であって、可動部材が固定部材に対して下がっている時の状態を示す一部拡大縦断面図である。(D)は、鏡面の角度が調整されている時であって、可動部材が固定部材に対して上がっている時の状態を示す一部拡大縦断面図である。
図5図5は、固定部材を示す正面図(車両の後側から前側に向かって見た図)である。
図6図6は、可動部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明にかかる車両用鏡面角度調整装置、車両用ミラー装置の実施形態(実施例)の1例を図面に基づいて詳細に説明する。この明細書において、前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用ミラー装置を車両に装備した際の前、後、上、下、左、右である。
【0018】
図1図2において、符号「F」は「前」、「B」は「後」、「U」は上、「D」は「下」である。また、図面においては、概略図であるため、主要部品を図示し、主要部品以外の部品の図示を省略し、ハッチングの一部を省略する。さらに、図1図3においては、シール剤9の図示を省略してある。
【0019】
(実施形態の構成の説明)
以下、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置、車両用ミラー装置の構成について説明する。
【0020】
(車両用ミラー装置1の説明)
図中、符号1は、この実施形態にかかる車両用ミラー装置(自動車用後写鏡)である。車両用ミラー装置1は、この例では、車体(ドア)の外側に、ベース(図示せず)、シャフト(図示せず)および格納ユニット(図示せず)を介して傾倒可能に取り付けられる。車両用ミラー装置1は、図1図2に示すように、車両用鏡面角度調整装置(パワーユニット)2と、ミラーハウジング3と、ミラーユニット4と、角度検出記憶ユニット(図示せず)と、を備える。
【0021】
(車両用鏡面角度調整装置2の説明)
車両用鏡面角度調整装置2は、図1図2に示すように、固定部材5と、可動部材6と、保持部材7と、駆動部材8と、シール剤9と、を備える。
【0022】
(固定部材5の説明)
固定部材5は、この例では、樹脂部材から構成されている。固定部材5は、図1図2図5に示すように、ほぼ半球形状のケース(容器)からなる。すなわち、固定部材5は、すり鉢形状をなす。固定部材5の後側の部分には、円形の開口部50が形成されていて、かつ、固定部材5の前側の部分には、円形の閉塞部51が形成されている。
【0023】
閉塞部51の外側面には、複数個、この例では、4個のボス部52が設けられている。このボス部52にミラーハウジング3を介してスクリュウ(図示せず)をねじ込むことにより、固定部材5は、ミラーハウジング3に固定される。また、閉塞部51の中央には、1個の保持部材収納部53が設けられている。さらに、閉塞部51の内側面には、2個のモータ収納部54と、2個の動力伝達機構収納部55と、2個のアジャストロッド収納部56と、がそれぞれ設けられている。
【0024】
固定部材5の側壁部分の内側面には、回転中心Aを中心とする球面の一部からなる固定側球面57が形成されている。固定側球面57には、シール剤9を溜めるシール剤溜部58が設けられている。シール剤溜部58は、回転中心Aを通りかつ後述する鏡面40に対して交差(この例では、直交)する中心線Cを、中心とする周方向に設けられた周溝部からなる。この例の周溝部58は、周方向に連続して1本設けられている。
【0025】
(可動部材6の説明)
可動部材6は、この例では、樹脂部材から構成されている。可動部材6は、図1図2図6に示すように、ほぼ円板形状の取付部60と、固定部材5よりも一回り小さいほぼ半球形状の側壁部61と、からなる。側壁部61は、取付部60の全周縁に一体に設けられている。
【0026】
取付部60には、ミラーユニット取付部(図示せず)が設けられている。ミラーユニット取付部にミラーユニット4を取り付けることにより、可動部材6には、ミラーユニット4が取り付けられる。また、取付部60の中央には、1個の保持部材取付部62が設けられている。さらに、取付部60には、2個のアジャストロッド取付部(図示せず)が設けられている。
【0027】
可動部材6の側壁部61の外側面には、回転中心Aを中心とする球面の一部からなる可動側球面63が形成されている。この可動側球面63の半径R6は、固定側球面57の半径R5よりも一回り小さい。
【0028】
可動側球面63には、シール剤9を溜めるシール剤溜部64が設けられている。シール剤溜部64は、回転中心Aを通りかつ後述する鏡面40に対して交差(この例では、直交)する中心線Cと、平行に設けられた縦溝部からなる。この例の縦溝部64は、縦方向(垂直方向)に設けられていて、かつ、周方向に等間隔に間を空けて12本設けられている。また、縦溝部64は、幅が鏡面40側に行くに従って狭くなる、形状をなしている。
【0029】
(周溝部58、縦溝部64の説明)
周溝部58と縦溝部64とは、図3に示すように、鏡面40がニュートラル時あるいは初期設定時において、相互に交差しない状態にある。すなわち、周溝部58の鏡面40側の縁から縦溝部64の鏡面40に対して反対側の端までの間には、固定部材5の固定側球面57と可動部材6側の可動側球面63とが対向する部分(オーバーラップ部分、重なり部分)Eが存在する。
【0030】
(保持部材7の説明)
保持部材7は、ピボット機構(球継手)から構成されている。保持部材7は、固定部材5の保持部材収納部53に収納されていて、かつ、可動部材6の保持部材取付部62に取り付けられている。この保持部材7により、可動部材6が固定部材5に、回転中心Aを中心として回転可能に保持されている。回転中心Aは、保持部材7の回転中心である。
【0031】
また、図3に示しように、この保持部材7により、固定部材5の固定側球面57と可動部材6の可動側球面63との間には、隙間Gが形成されている。
【0032】
(駆動部材8の説明)
駆動部材8は、2台のモータ80と、2組の動力伝達機構(図示せず)と、2本のアジャストロッド(図示せず)と、を有する。2台のモータ80は、固定部材5の2個のモータ収納部54に収納されていて、カバー81により覆われている。2組の動力伝達機構は、固定部材5の2個の動力伝達機構収納部55に収納されている。2本のアジャストロッドは、固定部材5の2個のアジャストロッド収納部56に収納されていて、かつ、可動部材6の2個のアジャストロッド取付部に取り付けられている。
【0033】
2台のモータ80は、左右用のモータと、上下用のモータとからなる。なお、図1に示すモータ80は、左右用のモータまたは上下用のモータのいずれか一方である。2組の動力伝達機構は、左右用の動力伝達機構と、上下用の動力伝達機構とからなる。2本のアジャストロッドは、左右用のアジャストロッドと、上下用のアジャストロッドとからなる。左右用のモータには、左右用の動力伝達機構を介して左右用のアジャストロッドが連結されている。一方、上下用のモータには、上下用の動力伝達機構を介して上下用のアジャストロッドが連結されている。
【0034】
左右用のモータを駆動させると、左右用の動力伝達機構を介して、左右用のアジャストロッドが、回転し、かつ、ねじ送り作用により前後方向に移動する。これにより、可動部材6が固定部材5に対して、回転中心Aを通る垂直軸(図示せず)回りに左右に回転する。また、上下用のモータを駆動させると、上下用の動力伝達機構を介して、上下用のアジャストロッドが、回転し、かつ、ねじ送り作用により前後方向に移動する。これにより、可動部材6が固定部材5に対して、回転中心Aを通る水平軸(図示せず)回りに上下に回転する。
【0035】
(シール剤9の説明)
シール剤9は、固定部材5の固定側球面57と可動部材6の可動側球面63との間に介在されている。シール剤9は、固定部材5の固定側球面57と可動部材6の可動側球面63との間に形成されている隙間Gをシールするものである。シール剤9は、この例では、グリス(グリース)である。
【0036】
シール剤9は、図4(A)に示すように、可動部材6を組み付ける前の固定部材5の周溝部58に、途切れることなく周溝部58の1周に亘って塗布される。ここで、車両用鏡面角度調整装置2の組立工程において、シール剤9を塗布する時、固定部材5は、中心線Cを垂直にした状態で、組立作業台上にセットされている。このため、周溝部58は、組立作業台に対して平行(中心線Cに対して垂直)である。
【0037】
また、シール剤9は、図4(B)、(C)、(D)に示すように、固定部材5に可動部材6を組み付けることにより、固定部材5の固定側球面57と可動部材6の可動側球面63との間に形成されている隙間Gに介在され、その隙間Gをシールする。このシール剤9により、水(図示せず)が隙間Gを通って車両用鏡面角度調整装置2の内部に浸入するのを防ぐことができる。
【0038】
ここで、固定部材5の周溝部58は、固定部材5の開口部50の縁から所定の寸法で一定の高さの箇所に設けられている。この所定の寸法は、周溝部58に塗布されたシール剤9が固定部材5と可動部材6との組み付け時において固定部材5の開口部50から外側にはみ出ない程度の寸法である。
【0039】
(ミラーハウジング3の説明)
ミラーハウジング3は、この例では、樹脂部材から構成されている。ミラーハウジング3は、図2に示すように、収納部30と、カバー部31と、を備える。収納部30は、中空形状をなす。収納部30の正面(車両の後側の面)は、開口している。収納部30の背面(車両の前側の面)は、閉塞している。
【0040】
この背面閉塞部には、開口部32が設けられている。開口部32の縁には、4個の固定部33が、固定部材5の4個のボス部52に対応して設けられている。この固定部33に固定部材5のボス部52をスクリュウにより固定することにより、固定部材5がミラーハウジング3の収納部30に固定される。ミラーハウジング3の収納部30内には、車両用鏡面角度調整装置2、ミラーユニット4、および角度検出記憶ユニットがそれぞれ収容されている。
【0041】
カバー部31は、収納部30の背面側に取り付けられて、収納部30の背面側の上側の部分からやや下側の部分にかけての部分をカバーする。すなわち、カバー部31は、収納部30の開口部32および固定部33をカバーする。
【0042】
(ミラーユニット4の説明)
ミラーユニット4は、図2に示すように、反射面40を有するミラー41と、ミラー41を保持するミラーホルダ42と、を有する。このミラー41の反射面40が鏡面である。ミラーホルダ42は、可動部材6のミラーユニット取付部に取り付けられている。これにより、ミラーユニット4は、可動部材6に取り付けられる。この結果、ミラーユニット4の鏡面40の角度は、車両用鏡面角度調整装置2の作用により、調整される。
【0043】
(角度検出記憶ユニットの説明)
角度検出記憶ユニットは、ミラーユニット4の鏡面40の傾動角度を検出して記憶するものである。角度検出記憶ユニットは、角度を検出するセンサ(図示せず)や検出した角度を記憶するメモリ等(図示せず)を有する。
【0044】
(実施形態の作用の説明)
この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0045】
車両用鏡面角度調整装置2の左右用のモータを駆動させると、左右用の動力伝達機構を介して、左右用のアジャストロッドが、回転し、かつ、ねじ送り作用により前後方向に移動する。これにより、可動部材6が固定部材5に対して、回転中心Aを通る垂直軸回りに左右に回転する。この結果、可動部材6側のミラーユニット4が固定部材5側のミラーハウジング3に対して、回転中心Aを通る垂直軸回りに左右に回転する。
【0046】
また、車両用鏡面角度調整装置2の上下用のモータを駆動させると、上下用の動力伝達機構を介して、上下用のアジャストロッドが、回転し、かつ、ねじ送り作用により前後方向に移動する。これにより、可動部材6が固定部材5に対して、回転中心Aを通る水平軸回りに上下に回転する。この結果、可動部材6側のミラーユニット4が固定部材5側のミラーハウジング3に対して、回転中心Aを通る水平軸回りに上下に回転する。
【0047】
このようにして、鏡面40の角度がドライバーなどの目線に合わせて調整される。なお、可動部材6が固定部材5に対して左右上下に回転した状態においても、図4(B)、(C)、(D)に示すように、シール剤9が固定部材5の固定側球面57と可動部材6の可動側球面63との間の隙間Gに介在されていて隙間Gをシールしている。これにより、水が隙間Gを通って車両用鏡面角度調整装置2の内部に浸入するのを防ぐことができる。
【0048】
(実施形態の効果の説明)
この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0049】
この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、固定部材5の固定側球面57と可動部材6の可動側球面63との間に隙間Gを形成したものであるから、固定側球面57と可動側球面63とが相互に接触することが無い。この結果、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、低い温度の環境下において、固定側球面57と可動側球面63との接触力が大きくなるようなことが無い。特に、部品の寸法公差により、前記の接触力がさらに大きくなるようなことが無い。これにより、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、可動部材6の可動側球面63が固定部材5の固定側球面57に対してスムーズに摺動することができ、鏡面40の角度をスムーズに調整することができる。
【0050】
この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、固定部材5の固定側球面57と可動部材6の可動側球面63との間に、隙間Gをシールするシール剤9が介在されている。この結果、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、固定側球面57と可動側球面63との間に隙間Gを形成したとしても、隙間Gをシールするシール剤9により、水が隙間Gを通って車両用鏡面角度調整装置2の内部に浸入するのを防ぐことができる。
【0051】
この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、シール剤溜部としての周溝部58を固定部材5の固定側球面57に設け、同じく、シール剤溜部としての縦溝部64を可動部材6の可動側球面63に設けたものである。この結果、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、シール剤9をシール剤溜部としての周溝部58および縦溝部64に溜めることができるので、シール剤9が固定側球面57と可動側球面63との間の隙間Gから外部に流出するのを防ぐことができる。これにより、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、シール剤9の塗布量(使用量)を抑制することができ、その分、製造コストを安価にすることができ、かつ、重量を軽くすることができる。
【0052】
この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1において、周溝部58は、固定側球面57の中心(回転中心A)を通りかつ鏡面40に対して直交する中心線Cを中心として、周方向に設けられたものである。この結果、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、周溝部58を設けることにより、シール剤9を塗布する位置が明確になる。また、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、車両用鏡面角度調整装置2の組立工程において、固定部材5を組立作業台上に、中心線Cを垂直にした状態で、セットすることにより、周溝部58が組立作業台と平行となり、固定部材5に可動部材6を組み付ける前にシール剤9が周溝部58から落下(垂れ落ちる)することがない。
【0053】
特に、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、1本の周溝部58を周方向に連続して設けたものである。この結果、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、シール剤9が周方向に連続して設けられた1本の周溝部58に溜められるので、水の浸入を確実に防ぐことができ、かつ、シール剤9の外部流出を防ぐことができる。
【0054】
この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1において、縦溝部64は、可動側球面63の中心(回転中心A)を通りかつ鏡面40に対して直交する中心線Cを中心と平行に設けられたものである。この結果、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、異物(砂、塵埃など)がシール剤9に付着したとしても、縦溝部64に溜められているシール剤9のうち鏡面40側すなわち外側に近い部分に付着するものであるから、その異物が固定側球面57と可動側球面63との間の隙間Gを通って鏡面40と反対側すなわち内側に入り込むのを防ぐことができる。これにより、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、異物がシール剤9に付着したとしても、鏡面40のスムーズな角度調整および水の浸入の防止作用に対して影響を与えるものではない。なお、異物は、図示されていない。
【0055】
特に、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、12本の縦溝部64を、中心線Cと平行にすなわち縦方向(垂直方向)に、また、中心線Cを中心として周方向に等間隔に間を空けて、設けたものである。この結果、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、可動部材6が固定部材5に対して回転した時、12本の縦溝部64が可動部材6の回転に追従するので、異物による作用の影響が無い。
【0056】
この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、周溝部58を固定部材5の固定側球面57に設け、縦溝部64を可動部材6の可動側球面63に設けたものである。この結果、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、周溝部58と縦溝部64との相乗効果を得ることができる。
【0057】
この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、周溝部58と縦溝部64とが鏡面40の角度が0°の時(ニュートラル時あるいは初期設定時であって、鏡面40の角度が調整される前の時)において、相互に交差しない状態にある。すなわち、図3(A)、(B)に示すように、周溝部58の鏡面40側の縁から縦溝部64の鏡面40に対して反対側の端までの間には、固定部材5の固定側球面57と可動部材6側の可動側球面63とが対向する部分Eが存在する。この結果、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、可動部材6が固定部材5に対して回転して、可動部材6の一部分が図4(C)に示すように固定部材5に対して下がった状態で、周溝部58と縦溝部64とが連通している状態にあるので、周溝部58に溜められているシール剤9を縦溝部64に供給して溜めることができる。また、可動部材6の他の部分が図4(D)に示すように固定部材5に対して上がった状態で、周溝部58と縦溝部64とが離れている状態にあるので、周溝部58に溜められているシール剤9を縦溝部64に供給する量を制限することができ、シール剤9が縦溝部64を経て外部に流出するのを防ぐことができる。
【0058】
この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、縦溝部64の形状を、幅が鏡面40側に行くに従って狭くなる、形状とするものである。この結果、この実施形態にかかる車両用鏡面角度調整装置2、車両用ミラー装置1は、図4(C)に示すように、可動部材6が固定部材5に対して下がった時、可動部材6の縦溝部64が固定部材5の開口部50の縁に対して下がるので、縦溝部64の幅が開口部50の縁に対して徐々に狭まることとなる。これにより、縦溝部64に溜められているシール剤9が縦溝部64を上がる速度が速くなるので、縦溝部64に入り込んだ異物(図示せず)を、図4(C)中の実線矢印に示すように、縦溝部64から外部に排出することができる。
【0059】
(実施形態以外の例の説明)
なお、前記の実施形態においては、シール剤溜部としての周溝部58を固定部材5の固定側球面57に設け、同じく、シール剤溜部としての縦溝部64を可動部材6の可動側球面63に設けたものである。しかしながら、この発明においては、固定側球面57または可動側球面63の少なくとも一方に、シール剤溜部を設けるものであっても良い。例えば、固定側球面57のみに周溝部58を設け、または、可動側球面63のみに縦溝部64を設けても良い。
【0060】
前記の実施形態においては、1本の周溝部58を固定部材5の固定側球面57に周方向に連続して設けたものである。しかしながら、この発明においては、周溝部58を周方向に断続的に設けても良いし、複数本の周溝部58を周方向に設けても良い。さらに、周溝部58を、可動部材6の可動側球面63に設けても良いし、固定部材5の固定側球面57と可動部材6の可動側球面63とにそれぞれ設けても良い。ここで、周溝部58を周方向に断続的に設ける場合においては、周溝部58と周溝部58との間に縦溝部64を配置することが好ましい。
【0061】
前記の実施形態においては、12本の縦溝部64を可動部材6の可動側球面63に、縦方向(垂直方向)に、かつ、周方向に等間隔に間を空けて設けたものである。しかしながら、この発明においては、縦溝部64を、斜め方向(螺旋方向)に設けたものであっても良いし、周方向に等間隔に間を空けずに設けても良いし、本数は限定しない。例えば、1本でも、3本でも、4本でも良い。さらに、縦溝部64を固定部材5の固定側球面57に設けても良いし、固定部材5の固定側球面57と可動部材6の可動側球面63とにそれぞれ設けても良い。
【0062】
前記の実施形態においては、周溝部58と縦溝部64とが鏡面40の角度が0°の時において、相互に交差しない状態にある。しかしながら、この発明においては、周溝部58と縦溝部64とが鏡面40の角度が0°の時において、相互に交差する状態にあっても良い。
【0063】
前記の実施形態においては、縦溝部64の形状を、幅が鏡面40側に行くに従って狭くなる、形状とするものである。しかしながら、この発明においては、縦溝部64の形状を特に限定しない。たとえば、縦溝部64の幅が平行であっても良い。
【0064】
前記の実施形態においては、車両用ミラー装置1として、車体(ドア)の外側に装備されるものである。しかしながら、この発明においては、車両用ミラー装置1として、その他のもの、たとえば、車体のフェンダに装備されるもの(フェンダミラー装置)、バックドアの上部に装備されるもの(リヤアンダーミラー装置)、トラックに装備されるもの(トラックミラー装置)、車内に装備されるもの(室内用ミラー装置)などである。
【0065】
なお、この発明は、前記の実施形態により限定されるものではない。
【符号の説明】
【0066】
1 車両用ミラー装置
2 車両用鏡面角度調整装置
3 ミラーハウジング
30 収納部
31 カバー部
32 開口部
33 固定部
4 ミラーユニット
40 鏡面
41 ミラー
42 ミラーホルダ
5 固定部材
50 開口部
51 閉塞部
52 ボス部
53 保持部材収納部
54 モータ収納部
55 動力伝達機構収納部
56 アジャストロッド収納部
57 固定側球面
58 周溝部(シール剤溜部)
6 可動部材
60 取付部
61 側壁部
62 保持部材取付部
63 可動側球面
64 縦溝部(シール剤溜部)
7 保持部材
8 駆動部材
80 モータ
81 カバー
9 シール剤
A 回転中心
B 後
C 中心線
D 下
E 対向する部分
F 前
G 隙間
R5、R6 半径
U 上
図1
図2
図3
図4
図5
図6