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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】作業機械の油圧駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/17 20060101AFI20220830BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20220830BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20220830BHJP
   F15B 11/042 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
F15B11/17
E02F9/22 E
F15B11/02 C
F15B11/042
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018127604
(22)【出願日】2018-07-04
(65)【公開番号】P2020008043
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】柚本 夏輝
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩司
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-084910(JP,A)
【文献】特開平10-103306(JP,A)
【文献】特開2008-133842(JP,A)
【文献】特開平03-293433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/17
E02F 9/22
F15B 11/02
F15B 11/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起伏可能なブームと、当該ブームの先端に回動可能に連結されるアームと、前記アームの先端部に装着される先端アタッチメントと、を有する作業装置を備えた作業機械に設けられて前記作業装置を油圧により駆動する油圧駆動装置であって、
作動油の供給を受けて前記ブームを起伏させるように作動するブームアクチュエータと、
作動油の供給を受けて前記アームを回動させるように作動するアームアクチュエータと、
作動油の供給を受けて前記先端アタッチメントを動かすように作動するアタッチメントアクチュエータと、
動力を生成するポンプ動力源と、
前記ブームアクチュエータ及び前記アームアクチュエータの中から選ばれる第1メインアクチュエータに接続され、前記ポンプ駆動源から与えられる動力により作動油を吐出するように作動して作動油を吐出して前記第1メインアクチュエータに供給することが可能な可変容量型の第1油圧ポンプと、
前記ブームアクチュエータ及び前記アームアクチュエータのうち前記第1メインアクチュエータと異なる第2メインアクチュエータと前記アタッチメントアクチュエータとに接続され、前記ポンプ駆動源から与えられる動力により作動油を吐出するように作動して当該作動油を前記第2メインアクチュエータと前記アタッチメントアクチュエータとに供給することが可能な可変容量型の第2油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプと前記第1メインアクチュエータとの間に介在し、当該第1油圧ポンプから当該第1メインアクチュエータに供給される作動油の流量を変化させるように作動することが可能な第1メインコントロールバルブと、
前記第2油圧ポンプと前記第2メインアクチュエータとの間に介在し、当該第2油圧ポンプから当該第2メインアクチュエータに供給される作動油の流量を変化させるように作動することが可能な第2メインコントロールバルブと、
前記第2油圧ポンプと前記アタッチメントアクチュエータとの間に介在し、当該第2油圧ポンプから当該アタッチメントアクチュエータに供給される作動油の流量を変化させるように作動することが可能なアタッチメントコントロールバルブと、
前記第1メインアクチュエータを動かすための第1メイン操作を受け、当該第1メイン操作に応じて前記第1メインコントロールバルブを作動させる第1メイン操作装置と、
前記第2メインアクチュエータを動かすための第2メイン操作を受け、当該第2メイン操作に応じて前記第2メインコントロールバルブを作動させる第2メイン操作装置と、
前記アタッチメントアクチュエータを動かすためのアタッチメント操作を受け、当該アタッチメント操作に応じて前記アタッチメントコントロールバルブを作動させるアタッチメント操作装置と、
前記第1油圧ポンプと前記第2メインアクチュエータとの間に設けられ、前記第2メイン操作装置に少なくとも前記第2メインアクチュエータを上げ方向に作動させるための前記第2メイン操作が与えられることを条件に開弁して前記第1油圧ポンプから吐出される作動油が前記第2油圧ポンプから吐出される作動油と合流して前記第2メインアクチュエータに供給されることを許容する第1合流切換弁と、
前記第1油圧ポンプの容量である第1ポンプ容量及び前記第2油圧ポンプの容量である第2ポンプ容量を操作することにより前記ポンプ動力源から前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプに与えられる動力の配分を制御する動力分配制御装置と、を備え、
前記動力分配制御装置は、前記第2メイン操作装置に前記第2メインアクチュエータを上げ方向に作動させるための前記第2メイン操作が与えられて前記第1合流切換弁が開弁すると同時に前記アタッチメント操作装置に前記アタッチメント操作が与えられる複合操作時には前記第2メイン操作装置に前記第2メイン操作が与えられているが前記アタッチメント操作装置に前記アタッチメント操作が与えられていない時に比べて前記ポンプ駆動
源から前記第2油圧ポンプへの動力の分配を小さくして前記ポンプ駆動源から前記第1油圧ポンプへの動力の分配を大きくするように前記第1ポンプ容量及び前記第2ポンプ容量を操作するように構成されている、油圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の油圧駆動装置であって、前記動力分配制御装置は、前記第1メイン操作、前記第2メイン操作及び前記アタッチメント操作に基づいて、前記第1油圧ポンプから前記第1メインアクチュエータに供給されるべき第1メイン流量、前記第2油圧ポンプから前記第2メインアクチュエータに供給されるべき第2メイン流量、前記第2油圧ポンプから前記アタッチメントアクチュエータに供給されるべきアタッチメント流量、及び前記第1油圧ポンプから前記第1合流切換弁を通じて前記第2メインアクチュエータに供給されるべき第1合流流量の比率である流量比率を演算する流量比率演算部と、当該流量比率演算部により演算される流量比率に基づいて前記第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプの動力配分を演算する動力配分演算部と、演算された動力配分が得られるように前記第1ポンプ容量及び前記第2ポンプ容量を操作するポンプ容量操作部と、を含み、前記流量比率演算部は、前記複合操作時に前記第2メイン操作装置に与えられている前記第2メイン操作に応じて前記アタッチメント流量の比率を減算するように構成されている、油圧駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の油圧駆動装置であって、前記流量比率演算部は、前記複合操作時に前記アタッチメント操作装置に与えられている前記アタッチメント操作に応じて前記第2メイン流量の比率を減算する、油圧駆動装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の油圧駆動装置であって、前記第2油圧ポンプと前記第1メインアクチュエータとの間に設けられ、前記第1メイン操作装置に少なくとも上げ方向について前記第1メイン操作が与えられることを条件に開弁して前記第2油圧ポンプから吐出される作動油が前記第1油圧ポンプから吐出される作動油と合流して前記第1メインアクチュエータに供給されることを許容する第2合流切換弁をさらに備え、前記流量比率演算部は、前記第1メイン流量、前記第2メイン流量、前記アタッチメント流量、前記第1合流流量、及び前記第2油圧ポンプから前記第2合流切換弁を通じて前記第1メインアクチュエータに供給されるべき第2合流流量の比率である流量比率を演算するとともに、前記複合操作時に前記アタッチメント操作装置に与えられている前記アタッチメント操作に応じて前記第2合流流量の比率を減算する、油圧駆動装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれかに記載の油圧駆動装置であって、前記アタッチメント流量の比率の減算度合いである流量比率減算度を格納して前記流量比率演算部に指定する減算度格納部と、前記流量比率減算度の変更についての指令を前記減算度格納部に入力する変更指令入力部と、をさらに備え、前記減算度格納部は前記変更指令入力部から入力された前記変更指令に基づいて前記流量比率減算度を変更するように構成されている、油圧駆動装置。
【請求項6】
請求項5記載の油圧駆動装置であって、前記変更指令入力部は、前記流量比率減算度を変更するための減算度変更操作を受け、当該減算度変更操作に対応する直接変更指令を前記減算度格納部に入力する、油圧駆動装置。
【請求項7】
請求項5記載の油圧駆動装置であって、前記減算度格納部は前記流量比率減算度として複数の作業モードにそれぞれ対応した複数の流量比率減算度を格納し、前記変更指令入力部は前記複数の作業モードの中から所定の作業モードを特定するモード特定指令を前記変更指令として前記減算度格納部に入力し、前記減算度格納部は前記複数の作業モードのうち前記モード特定指令によって特定された作業モードに対応する流量比率減算度を選定してこれを前記流量比率演算部に指定するように構成されている、油圧駆動装置。
【請求項8】
請求項7記載の油圧駆動装置であって、前記変更指令入力部は、前記減算度変更操作を受けて当該減算度変更操作に対応する前記直接変更指令を前記減算度格納部に入力するものであり、前記減算度格納部は、前記複数の作業モードにそれぞれ対応した複数の変更許容範囲を記憶し、指定された作業モードに対応した前記変更許容範囲内でのみ前記流量比率減算度の変更を許容するように構成されている、油圧駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブーム、アーム及び先端アタッチメントを有する作業装置を備えた作業機械に設けられ、当該作業装置を油圧によって駆動するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械に搭載される作業装置として、起伏可能なブームと、その先端に回動可能に連結されるアームと、このアームの先端に装着される先端アタッチメントと、とを有するものが知られている。前記先端アタッチメントは、例えば、圧砕機やフォーク、ブレーカ、である。
【0003】
従来、前記のような作業装置を油圧で駆動するための装置として、特許文献1の図2に記載されたものが知られている。この装置は、可変容量型の第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプと、第1油圧ポンプに接続される複数のアクチュエータと、第2油圧ポンプに接続される複数のアクチュエータと、を備える。前記第2油圧ポンプに接続される複数のアクチュエータには、アーム駆動用のアームアクチュエータ(特許文献1ではアームシリンダ)及び先端アタッチメント駆動用のアタッチメントアクチュエータ(特許文献1では「予備アクチュエータ」)が含まれる。
【0004】
この装置では、前記第1油圧ポンプから吐出される作動油が、前記アームアクチュエータと前記アタッチメントアクチュエータとに分配されるが、アーム押し動作(つまり先端アタッチメントを上昇させる動作)と先端アタッチメントの動作とが同時に行われる複合動作時には、特に前記先端アタッチメントの重量が大きい場合、前記アタッチメントアクチュエータの負荷圧に比べて前記アームアクチュエータの負荷圧が著しく大きくなるため、何らの対策を講じなければ、第1油圧ポンプから吐出される作動油の流量配分がアタッチメントアクチュエータに大きく偏ってしまう。このことは、先端アタッチメントの動作に対してアーム押し動作を著しく遅らせてしまい、作業効率の低下を招く。かかる不都合は、アームアクチュエータではなくブーム駆動用のブームアクチュエータが前記アタッチメントアクチュエータとともに共通の油圧ポンプに接続される場合にも同様に生じ得る。
【0005】
前記対策として、前記特許文献1は、前記第2油圧ポンプと前記アタッチメントアクチュエータとの間にパイロット操作式の可変絞り弁を介在させ、当該可変絞り弁にアーム操作用のパイロット圧を入力するとともに、当該パイロット圧をアームアクチュエータの負荷圧に応じて減圧弁により減圧することにより、前記アタッチメントアクチュエータに供給される作動油の流量をアームシリンダの負荷圧に応じた度合いで制限することが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-217385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載される装置は、アタッチメントアクチュエータへの作動油供給流量を制限するために専用の可変絞り弁を要する。このことは、装置の複雑化及びコストアップにつながる。また、可変絞り弁での作動油流量の制限は、著しい圧力損失を伴い、これによりエネルギーロスが発生する。
【0008】
本発明は、作業機械の作業装置を油圧により駆動するための装置であって、アームアクチュエータまたはブームアクチュエータと先端アタッチメントを駆動するためのアタッチメントアクチュエータとを共通の油圧ポンプに接続しながら、各アクチュエータを好適な速度で作動させることが可能な油圧駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための手段として、本発明者らは、従来の一般的な油圧駆動装置では前記ブームアクチュエータ及び前記アームアクチュエータが互いに異なる2つの油圧ポンプにそれぞれ接続されることから、これらの油圧ポンプのうち先端アタッチメントに接続されていない油圧ポンプを有効に活用することに着目した。具体的には、前記2つの油圧ポンプのうち前記アタッチメントアクチュエータに接続されていない第1油圧ポンプが吐出する作動油の一部を他方の第2油圧ポンプからブームアクチュエータまたはアームアクチュエータのうちの一方のアクチュエータに供給される作動油に合流させるとともに、前記第1及び第2油圧ポンプのトルク分配を前記第1油圧ポンプに偏らせる(つまり第2油圧ポンプへの分配トルクを抑える)ことにより、前記第1油圧ポンプに高いトルクを与えてブームアクチュエータ及びアームアクチュエータの双方に十分な流量で作動油を供給して駆動する一方、前記第2油圧ポンプのトルクを制限して当該第2油圧ポンプからアタッチメントアクチュエータに供給される作動油の流量を(可変絞り弁を用いずに)制限することが可能である。
【0010】
本発明はこのような観点からなされたものである。提供されるのは、起伏可能なブームと、当該ブームの先端に回動可能に連結されるアームと、前記アームの先端部に装着される先端アタッチメントと、を有する作業装置を備えた作業機械に設けられて前記作業装置を油圧により駆動する油圧駆動装置であって、作動油の供給を受けて前記ブームを起伏させるように作動するブームアクチュエータと、作動油の供給を受けて前記アームを回動させるように作動するアームアクチュエータと、作動油の供給を受けて前記先端アタッチメントを動かすように作動するアタッチメントアクチュエータと、動力を生成するポンプ動力源と、前記ブームアクチュエータ及び前記アームアクチュエータの中から選ばれる第1メインアクチュエータに接続され、前記ポンプ駆動源から与えられる動力により作動油を吐出するように作動して作動油を吐出して前記第1メインアクチュエータに供給することが可能な可変容量型の第1油圧ポンプと、前記ブームアクチュエータ及び前記アームアクチュエータのうち前記第1メインアクチュエータと異なる第2メインアクチュエータと前記アタッチメントアクチュエータとに接続され、前記ポンプ駆動源から与えられる動力により作動油を吐出するように作動して当該作動油を前記第2メインアクチュエータと前記アタッチメントアクチュエータとに供給することが可能な可変容量型の第2油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプと前記第1メインアクチュエータとの間に介在し、当該第1油圧ポンプから当該第1メインアクチュエータに供給される作動油の流量を変化させるように作動することが可能な第1メインコントロールバルブと、前記第2油圧ポンプと前記第2メインアクチュエータとの間に介在し、当該第2油圧ポンプから当該第2メインアクチュエータに供給される作動油の流量を変化させるように作動することが可能な第2メインコントロールバルブと、前記第2油圧ポンプと前記アタッチメントアクチュエータとの間に介在し、当該第2油圧ポンプから当該アタッチメントアクチュエータに供給される作動油の流量を変化させるように作動することが可能なアタッチメントコントロールバルブと、前記第1メインアクチュエータを動かすための第1メイン操作を受け、当該第1メイン操作に応じて前記第1メインコントロールバルブを作動させる第1メイン操作装置と、前記第2メインアクチュエータを動かすための第2メイン操作を受け、当該第2メイン操作に応じて前記第2メインコントロールバルブを作動させる第2メイン操作装置と、前記アタッチメントアクチュエータを動かすためのアタッチメント操作を受け、当該アタッチメント操作に応じて前記アタッチメントコントロールバルブを作動させるアタッチメント操作装置と、前記第1油圧ポンプと前記第2メインアクチュエータとの間に設けられ、前記第2メイン操作装置に少なくとも前記第2メインアクチュエータを上げ方向に作動させるための前記第2メイン操作が与えられることを条件に開弁して前記第1油圧ポンプから吐出される作動油が前記第2油圧ポンプから吐出される作動油と合流して前記第2メインアクチュエータに供給されることを許容する第1合流切換弁と、前記第1油圧ポンプの容量である第1ポンプ容量及び前記第2油圧ポンプの容量である第2ポンプ容量を操作することにより前記ポンプ動力源から前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプに与えられる動力の配分を制御する動力分配制御装置と、を備える。前記動力分配制御装置は、前記第2メイン操作装置に前記第2メインアクチュエータを前記上げ方向に作動させるための前記第2メイン操作が与えられて前記第1合流切換弁が開弁すると同時に前記アタッチメント操作装置に前記アタッチメント操作が与えられる複合操作時には前記第2メイン操作装置に前記第2メイン操作が与えられているが前記アタッチメント操作装置に前記アタッチメント操作が与えられていない時に比べて前記ポンプ駆動源から前記第2油圧ポンプへの動力の分配を小さくして前記ポンプ駆動源から前記第1油圧ポンプへの動力の分配を大きくするように前記第1ポンプ容量及び前記第2ポンプ容量を操作するように構成されている。
【0011】
この装置によれば、前記第2メイン操作装置及び前記アタッチメント操作装置にそれぞれ第2メイン操作及びアタッチメント操作が同時に与えられる複合操作時には、前記第1及び第2油圧ポンプへの動力の分配について前記第2油圧ポンプの優先度を下げることにより当該第2油圧ポンプからアタッチメントアクチュエータに供給される作動油の流量を抑えながら、前記第1油圧ポンプの優先度を上げることにより当該第1油圧ポンプから第1合流切換弁を通じて第2メインアクチュエータに供給される作動油の流量を確保することができる。このことは、前記複合操作時において前記第2メインアクチュエータの負荷が前記アタッチメントアクチュエータの負荷に比べて著しく大きい場合にも、専用の可変絞り弁を要することなく、前記アタッチメントアクチュエータの作動速度を抑えながら前記第2メインアクチュエータの作動速度を十分に確保することを可能にする。
【0012】
具体的に、前記動力分配制御装置は、前記第1メイン操作、前記第2メイン操作及び前記アタッチメント操作に基づいて、前記第1油圧ポンプから前記第1メインアクチュエータに供給されるべき第1メイン流量、前記第2油圧ポンプから前記第2メインアクチュエータに供給されるべき第2メイン流量、前記第2油圧ポンプから前記アタッチメントアクチュエータに供給されるべきアタッチメント流量、及び前記第1油圧ポンプから前記第1合流切換弁を通じて前記第2メインアクチュエータに供給されるべき第1合流流量の比率である流量比率を演算する流量比率演算部と、当該流量比率演算部により演算される流量比率に基づいて前記第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプの動力配分を演算する動力配分演算部と、演算された動力配分が得られるように前記第1ポンプ容量及び前記第2ポンプ容量を操作するポンプ容量操作部と、を含み、前記流量比率演算部は、前記複合操作時に前記第2メイン操作装置に与えられている前記第2メイン操作に応じて(好ましくは当該第2メイン操作が大きいほど大きな減算度合いで)前記アタッチメント流量の比率を減算するように構成されたものが、好適である。この構成は、前記各操作装置に与えられる第1メイン操作、第2メイン操作及びアタッチメント操作を加味しながら、第2メイン操作が大きい場合つまり第2メインアクチュエータの負荷が大きい場合にはアタッチメントアクチュエータの流量比率を下げることにより動力分配について第2油圧ポンプの優先度を下げる(第1油圧ポンプの優先度を上げる)ことを可能にする。
【0013】
前記流量比率演算部は、前記複合操作時に前記アタッチメント操作装置に与えられている前記アタッチメント操作に応じて(好ましくは当該アタッチメント操作が大きいほど大きな減算度合いで)前記第2メイン流量の比率も減算することが、より好ましい。このことは、動力分配についての第1油圧ポンプの優先度をさらに高めて第2メインアクチュエータが(第2油圧ポンプではなく)第1油圧ポンプから供給される作動油によって駆動される割合をさらに高めることを可能にする。
【0014】
前記油圧駆動装置は、前記第1合流切換弁に加え、前記第2油圧ポンプと前記第1メインアクチュエータとの間に設けられ、前記第1メイン操作装置に少なくとも上げ方向について前記第1メイン操作が与えられることを条件に開弁して前記第2油圧ポンプから吐出される作動油が前記第1油圧ポンプから吐出される作動油と合流して前記第1メインアクチュエータに供給されることを許容する第2合流切換弁をさらに備えてもよい。この場合において、前記流量比率演算部は、前記第1メイン流量、前記第2メイン流量、前記アタッチメント流量、前記第1合流流量、及び前記第2油圧ポンプから前記第2合流切換弁を通じて前記第1メインアクチュエータに供給されるべき第2合流流量の比率である流量比率を演算するとともに、前記複合操作時に前記アタッチメント操作装置に与えられている前記アタッチメント操作に応じて(好ましくは当該アタッチメント操作が大きいほど大きな減算度合いで)前記第2合流流量の比率も減算することが、より好ましい。このことは、前記複合操作時には前記第2合流切換弁の開弁にかかわらず第2合流流量すなわち第2油圧ポンプから第1メインアクチュエータに供給されるべき流量の比率を抑えることにより、動力分配について第1油圧ポンプの高い優先度(第2油圧ポンプの低い優先度)を保つことを可能にする。
【0015】
前記アタッチメント流量の比率の減算度合いである流量比率減算度は予め設定された度合いに固定されてもよいが、オペレータの好み等によって変更されてもよい。具体的には、前記油圧駆動装置が、前記流量比率減算度を格納して前記流量比率演算部に指定する減算度格納部と、前記流量比率減算度の変更についての指令を前記減算度格納部に入力する変更指令入力部と、をさらに備え、前記減算度格納部は前記変更指令入力部から入力された前記変更指令に基づいて前記流量比率減算度を変更するように構成されているものが、よい。
【0016】
例えば、前記変更指令入力部は、前記流量比率減算度を変更するための減算度変更操作を受け、当該減算度変更操作に対応する直接変更指令を前記減算度格納部に入力するものが、好適である。
【0017】
あるいは、前記流量比率減算度は複数の作業モード(例えば前記アームの先端部に装着される前記先端アタッチメントの種類に対応するアタッチメントモード)に応じて変更されてもよい。具体的には、前記減算度格納部が前記流量比率減算度として複数の作業モードにそれぞれ対応した複数の流量比率減算度を格納し、前記変更指令入力部は前記複数の作業モードの中から所定の作業モードを特定するモード特定指令を前記変更指令として前記減算度格納部に入力し、前記減算度格納部は前記複数の作業モードのうち前記モード特定指令によって特定された作業モードに対応する流量比率減算度を選定してこれを前記流量比率演算部に指定するように構成されているものが、好適である。
【0018】
この態様においても、前記変更指令入力部は、前記減算度変更操作を受けて当該減算度変更操作に対応する前記直接変更指令を前記減算度格納部に入力することが、好ましい。この場合、前記減算度格納部は、前記複数の作業モードにそれぞれ対応した複数の変更許容範囲を記憶し、指定された作業モードに対応した前記変更許容範囲内でのみ前記流量比率減算度の変更を許容するように構成されることが、より好ましい。前記複数の変更許容範囲の設定は、それぞれの作業モードにおける前記流量比率減算度の変更を当該作業モードに適した度合いで規制することを可能にする。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、アームアクチュエータまたはブームアクチュエータとアタッチメントアクチュエータとを共通の油圧ポンプに接続しながら、各アクチュエータの負荷の大小にかかわらず各アクチュエータを好適な速度で作動させることが可能な作業機械の油圧駆動装置が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の好ましい実施の形態に係る油圧駆動装置を示す回路図である。
図2】前記油圧駆動装置が搭載される作業機械の例を示す正面図である。
図3】前記油圧駆動装置のコントローラの機能構成及びその入出力信号を示すブロック図である。
図4】前記コントローラの動力分配制御装置としての演算制御動作を示すフローチャートである。
図5】前記油圧駆動装置におけるブーム上げパイロット圧Pbaと前記コントローラにおいて設定されるアタッチメント目標流量Qatの最大値との関係を示すグラフである。
図6】前記油圧駆動装置におけるアタッチメントパイロット圧Patと前記コントローラにおいて前記ブーム上げパイロット圧Pbaに基づき設定されるアタッチメント目標流量Qatとの関係を示すグラフである。
図7】前記油圧駆動装置におけるアーム押しパイロット圧Pabと前記コントローラにおいて設定されるアタッチメント目標流量Qatの最大値との関係を示すグラフである。
図8】前記油圧駆動装置におけるアタッチメントパイロット圧Patと前記コントローラにおいて前記アーム押しパイロット圧Pabに基づき設定されるアタッチメント目標流量Qatとの関係を示すグラフである。
図9】前記油圧駆動装置における前記アタッチメントパイロット圧Patと前記コントローラにおいて設定されるブーム上げ2速目標流量Qba2との関係を示すグラフである。
図10】前記油圧駆動装置における前記アタッチメントパイロット圧Patと前記コントローラにおいて設定されるアーム押し1速目標流量Qab1との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態に係る油圧駆動装置が搭載される作業機械の例を示す。この作業機械は、既存の油圧ショベルを母体として利用することにより構成されたもので、ベースマシン1と、このベースマシン1に搭載される作業装置2と、を備える。前記作業装置2は、ベースマシン1に起伏可能に取付けられるブーム4と、このブーム4の先端に回動可能に連結される基端部とその反対側の先端部とを有するアーム5と、当該アーム5の先端部に着脱可能に装着される先端アタッチメント3と、を有する。図2に示される先端アタッチメント3は、開閉可能な一対の破砕刃をもつ開閉式破砕機であり、当該一対の破砕刃の開閉方向の動きによって対象物の破砕処理を行う。
【0023】
前記作業機械は、さらにブームシリンダ6及びアームシリンダ7を備える。前記ブームシリンダ6は、前記ベースマシン1と前記ブーム4との間に介在する油圧シリンダであって、油圧の供給を受けて伸縮することにより前記ブームを起立方向すなわちブーム上げ方向及びその逆の倒伏方向すなわちブーム下げ方向にそれぞれ回動させるブームアクチュエータである。前記アームシリンダ7は、前記ブーム4と前記アーム5との間に介在する油圧シリンダであり、油圧の供給を受けて伸縮することにより前記アーム5を引き方向(アーム5がブーム4に近づく方向、主としてアーム5を下げる方向)及び押し方向(アーム5がブーム4から離れる方向、主としてアーム5を上げる方向)にそれぞれ回動させるように前記アーム5に連結されるアームアクチュエータである。
【0024】
図1は、前記作業装置2を油圧により駆動するための油圧駆動装置を示す。この油圧駆動装置は、複数の油圧アクチュエータを備え、当該複数の油圧アクチュエータには、前記ブームシリンダ6及び前記アームシリンダ7に加え、図略の走行モータや、前記先端アタッチメント3を動かすためのアタッチメントアクチュエータであるアタッチメントシリンダ8を含む。アタッチメントシリンダ8は、この実施の形態では、前記先端アタッチメント3に相当する開閉式破砕機の両破砕刃を開閉させるようにこれらの破砕刃に連結される開閉用油圧シリンダであり、当該先端アタッチメント3が前記アーム5の先端部に装着される際に図1に示す回路に接続される。
【0025】
図1に示す油圧駆動装置は、エンジン10と、第1油圧ポンプ11と、第2油圧ポンプ12と、複数のコントロールバルブであってブームコントロールバルブ16、アームコントロールバルブ17及びアタッチメントコントロールバルブ18を含むものと、ブーム操作装置20と、アーム操作装置30と、アタッチメント操作装置40と、第1合流切換弁13と、第2合流切換弁14と、を備える。
【0026】
前記エンジン10は、動力を生成して前記第1及び第2油圧ポンプ11,12のそれぞれに供給するポンプ駆動源である。前記第1及び第2油圧ポンプ11,12は、前記エンジン10からの動力の供給を受けることにより作動油を吐出するように作動して当該作動油を前記複数の油圧アクチュエータのうち当該第1及び第2油圧ポンプ11,12のそれぞれに接続される油圧アクチュエータに供給する。
【0027】
前記第1及び第2油圧ポンプ11,12は、可変容量型油圧ポンプにより構成される。前記第1及び第2油圧ポンプ11,12はそれぞれレギュレータ11a,12aを含み、当該レギュレータ11a,12aに容量指令信号が入力されることにより前記第1及び第2油圧ポンプ11,12のそれぞれの容量である第1ポンプ容量及び第2ポンプ容量が操作(調節)される。当該第1及び第2ポンプ容量の操作は、前記エンジン10から前記第1及び第2油圧ポンプ11,12への動力の分配の制御を行うことを可能にする。
【0028】
前記第1油圧ポンプ11の吐出口は、第1センターバイパスラインCL1に接続され、前記第2油圧ポンプ12の吐出口は、第2センターバイパスラインCL2に接続されている。前記第1及び第2センターバイパスラインCL1,CL2の下流端はタンクラインTLを通じてタンクに連通されている。
【0029】
この実施の形態では、前記第1センターバイパスラインCL1に沿ってその上流側から順に前記ブームコントロールバルブ16及び前記第1合流切換弁13が配置され、当該ブームコントロールバルブ16を介して前記ブームシリンダ6が前記第1油圧ポンプに接続されることが可能である。また、前記第2センターバイパスラインCL2に沿ってその上流側から順に前記第2合流切換弁14、アームコントロールバルブ17及びアタッチメントコントロールバルブ18が配置され、当該アームコントロールバルブ17及び当該アタッチメントコントロールバルブ18をそれぞれ介して前記アームシリンダ7及び前記アタッチメントシリンダ8が前記第2油圧ポンプ12に接続されることが可能である。
【0030】
従って、この実施の形態では前記ブームシリンダ6が本発明に係る「第1メインアクチュエータ」に相当し、前記ブームコントロールバルブ16が当該「第1メインアクチュエータ」と前記第1油圧ポンプ11との間に介在する「第1メインコントロールバルブ」に相当する。同様に、前記アームシリンダ7が本発明に係る「第2メインアクチュエータ」に相当し、前記アームコントロールバルブ17が当該「第2メインアクチュエータ」と前記油圧ポンプ12との間に介在する「第2メインコントロールバルブ」に相当する。しかし、本発明では、「第1メインアクチュエータ」が前記アームシリンダ7であって「第2メインアクチュエータ」が前記ブームシリンダ6であってもよい。すなわち、前記第1油圧ポンプ11に前記アームシリンダ7が接続されて前記第2油圧ポンプ12に前記ブームシリンダ6が接続されてもよい。
【0031】
図1に示される回路は、前記第1油圧ポンプ11が吐出する作動油を前記ブームコントロールバルブ16及び前記第1合流切換弁13にパラレルに供給するための第1パラレルラインPL1と、前記第2油圧ポンプ12が吐出する作動油を前記第2合流切換弁14、前記アームコントロールバルブ17及び前記アタッチメントコントロールバルブ18にパラレルに供給するための第2パラレルラインPL2と、を有する。前記第1パラレルラインPL1は前記第1センターバイパスラインCL1からその上流側位置で分岐し、さらにその下流側で分岐して前記ブームコントロールバルブ16及び前記第1合流切換弁13にそれぞれ至る。同様に、前記第2パラレルラインPL2は前記第2センターバイパスラインCL2からその上流側位置で分岐し、さらにその下流側で分岐して前記第2合流切換弁14、前記アームコントロールバルブ17及び前記アタッチメントコントロールバルブ18にそれぞれ至る。
【0032】
前記ブームコントロールバルブ16、前記アームコントロールバルブ17及び前記アタッチメントコントロールバルブ18は、いずれも流量制御機能を有するパイロット操作式の3位置方向切換弁からなり、パイロット圧の入力を受けることにより開弁する。
【0033】
具体的に、前記ブームコントロールバルブ16は、ブーム上げパイロットポート16a及びその反対側のブーム下げパイロットポート16bを有する。当該ブームコントロールバルブ16は、両パイロットポート16a,16bにパイロット圧が入力されないときは中立位置に保持されて(すなわち閉弁して)前記ブームシリンダ6と第1油圧ポンプ11及びタンクとの間を遮断する。当該ブームコントロールバルブ16は、前記ブーム上げパイロットポート16aにブーム上げパイロット圧Pbaが入力されたときは当該ブーム上げパイロット圧Pbaの大きさに対応したストロークで前記中立位置からブーム上げ位置に切換えられ(開弁し)、前記第1油圧ポンプ11から吐出される作動油が前記第1パラレルラインPL1を通じて前記ストロークに対応した流量で前記ブームシリンダ6のへッド側室6aに供給されることを許容するとともに当該ブームシリンダ6のロッド側室6bから排出される作動油が前記タンクラインTLを通じてタンクに戻されることを許容する油路を形成する。つまり、前記ブームシリンダ6が前記ブーム上げパイロット圧Pbaに対応した速度で伸長して当該速度で前記ブームを上げ方向に動かすことを許容する。逆に、当該ブームコントロールバルブ16は、前記ブーム下げパイロットポート16bにブーム下げパイロット圧Pbbが入力されたときは当該ブーム下げパイロット圧Pbbの大きさに対応したストロークで前記中立位置からブーム下げ位置に切換えられ(開弁し)、前記第1油圧ポンプ11から吐出される作動油が前記第1パラレルラインPL1を通じて前記ストロークに対応した流量で前記ブームシリンダ6のロッド側室6bに供給されることを許容するとともに当該ブームシリンダ6のへッド側室6aから排出される作動油が前記タンクラインTLを通じてタンクに戻されることを許容する油路を形成する。つまり、前記ブームシリンダ6が前記ブーム下げパイロット圧Pbbに対応した速度で収縮して当該速度で前記ブームを下げ方向に動かすことを許容する。
【0034】
前記アームコントロールバルブ17は、アーム引きパイロットポート17a及びその反対側のアーム押しパイロットポート17bを有する。当該アームコントロールバルブ17は、両パイロットポート17a,17bにパイロット圧が入力されないときは中立位置に保持されて(すなわち閉弁して)前記アームシリンダ7と第2油圧ポンプ12及びタンクとの間を遮断する。当該アームコントロールバルブ17は、前記アーム引きパイロットポート17aにアーム引きパイロット圧Paaが入力されたときは当該アーム引きパイロット圧Paaの大きさに対応したストロークで前記中立位置からアーム引き位置に切換えられ(開弁し)、前記第2油圧ポンプ12から吐出される作動油が前記第2パラレルラインPL2を通じて前記ストロークに対応した流量で前記アームシリンダ7のへッド側室7aに供給されることを許容するとともに当該アームシリンダ7のロッド側室7bから排出される作動油が前記タンクラインTLを通じてタンクに戻されることを許容する油路を形成する。つまり、前記アームシリンダ7が前記アーム引きパイロット圧Paaに対応した速度で伸長して当該速度で前記アーム5を引き方向(一般には下げ方向)に動かすことを許容する。逆に、当該アームコントロールバルブ17は、前記アーム押しパイロットポート17bにアーム押しパイロット圧Pabが入力されたときは当該アーム押しパイロット圧Pabの大きさに対応したストロークで前記中立位置からアーム押し位置に切換えられ(開弁し)、前記第2油圧ポンプ12から吐出される作動油が前記第2パラレルラインPL2を通じて前記ストロークに対応した流量で前記アームシリンダ7のロッド側室7bに供給されることを許容するとともに当該アームシリンダ7のへッド側室7aから排出される作動油が前記タンクラインTLを通じてタンクに戻されることを許容する油路を形成する。つまり、前記アームシリンダ7が前記アーム押しパイロット圧Pabに対応した速度で伸長して当該速度で前記アーム5を押し方向(一般には上げ方向)に動かすことを許容する。
【0035】
前記アタッチメントコントロールバルブ18は、伸長パイロットポート18a及びその反対側の収縮パイロットポート18bを有する。当該アタッチメントコントロールバルブ18は、両パイロットポート18a,18bにパイロット圧が入力されないときは中立位置に保持されて(すなわち閉弁して)前記アタッチメントシリンダ8と第2油圧ポンプ12及びタンクとの間を遮断する。当該アタッチメントコントロールバルブ18は、前記伸長パイロットポート18aにパイロット圧が入力されたときは当該パイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置から伸長駆動位置に切換えられ(開弁し)、前記第2油圧ポンプ12から吐出される作動油が前記第2パラレルラインPL2を通じて前記ストロークに対応した流量で前記アタッチメントシリンダ8のへッド側室8aに供給されることを許容するとともに当該アタッチメントシリンダ8のロッド側室8bから排出される作動油が前記タンクラインTLを通じてタンクに戻されることを許容する油路を形成する。つまり、前記アタッチメントシリンダ8が前記パイロット圧に対応した速度で伸長することを許容する。逆に、当該アタッチメントコントロールバルブ18は、前記収縮パイロットポート18bにパイロット圧が入力されたときは当該パイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置から収縮駆動位置に切換えられ(開弁し)、前記第2油圧ポンプ12から吐出される作動油が前記第2パラレルラインPL2を通じて前記ストロークに対応した流量で前記アタッチメントシリンダ8のロッド側室8bに供給されることを許容するとともに当該アタッチメントシリンダ8のへッド側室8aから排出される作動油が前記タンクラインTLを通じてタンクに戻されることを許容する油路を形成する。つまり、前記アタッチメントシリンダ8が前記収縮パイロット圧に対応した速度で収縮することを許容する。
【0036】
前記第1合流切換弁13は、アーム引き合流パイロットポート13a及びその反対側のアーム押し合流パイロットポート13bを有するパイロット操作式の3位置方向切換弁からなり、前記第1油圧ポンプ11と前記アームシリンダ7との間に介在する。当該第1合流切換弁13は、両パイロットポート13a,13bにパイロット圧が入力されないときは中立位置に保持されて(すなわち閉弁して)前記第1センターバイパスラインCL1を開通するとともに前記第1油圧ポンプ11から前記アームシリンダ7への作動油の供給を遮断する。当該第1合流切換弁13は、前記アーム引き合流パイロットポート13aに一定以上の大きさのパイロット圧が供給されると前記中立位置からアーム引き合流位置に切換えられ(開弁し)、前記第1油圧ポンプ11から前記第1パラレルラインPL1に吐出される作動油が第2油圧ポンプ12からアームシリンダ7のへッド側室7aに供給される作動油に合流するのを許容する。つまり、前記アームシリンダ7が前記第2油圧ポンプ12から吐出される作動油に加えて前記第1油圧ポンプ11から吐出される作動油の供給も受けて伸長方向に増速されることを許容する。逆に、当該第1合流切換弁13は、前記アーム押し合流パイロットポート13bに一定以上の大きさのパイロット圧が入力されたときは、前記中立位置からアーム押し合流位置に切換えられ(開弁し)、前記第1油圧ポンプ11から前記第1パラレルラインPL1に吐出される作動油が第2油圧ポンプ12からアームシリンダ7のロッド側室7bに供給される作動油に合流するのを許容する。つまり、前記アームシリンダ7が前記第2油圧ポンプ12から吐出される作動油に加えて前記第1油圧ポンプ11から吐出される作動油の供給も受けて収縮方向に増速されることを許容する。
【0037】
前記第2合流切換弁14は、ブーム上げ合流パイロットポート14aを有するパイロット操作式の2位置方向切換弁からなり、前記第2油圧ポンプ12と前記ブームシリンダ6との間に介在する。当該第合流切換弁14は、前記ブーム上げ合流パイロットポート14aにパイロット圧が入力されないときは中立位置に保持されて(すなわち閉弁して)前記第2センターバイパスラインCL2を開通するとともに前記第2油圧ポンプ12から前記ブームシリンダ6への作動油の供給を遮断する。当該第合流切換弁14は、前記ブーム上げ合流パイロットポート14aに一定以上の大きさのパイロット圧が供給されると前記中立位置からブーム上げ合流位置に切換えられ(開弁し)、前記第2油圧ポンプ12から前記第2パラレルラインPL2に吐出される作動油が第1油圧ポンプ11から前記ブームシリンダ6のへッド側室6aに供給される作動油に合流するのを許容する。つまり、前記ブームシリンダ6が前記第1油圧ポンプ11から吐出される作動油に加えて前記第2油圧ポンプ12から吐出される作動油の供給も受けて伸長方向に増速されることを許容する。
【0038】
前記ブーム操作装置20は、オペレータによるブーム操作を受け、当該ブーム操作に対応して前記ブームコントロールバルブ16さらには前記第2合流切換弁14を開弁作動させるものであり、本発明に係る「第1メイン操作装置」に該当する。当該ブーム操作装置20は、ブーム操作レバー21と、ブームパイロット弁22と、ブーム上げパイロットライン24Aと、ブーム下げパイロットライン24Bと、ブーム上げ合流パイロットライン26と、を有する。
【0039】
前記ブーム操作レバー21は、前記ブーム操作であってオペレータから前記ブームシリンダ6を動かすための回動操作、つまり第1メインアクチュエータを動かすための第1メイン操作、を受ける操作部材である。具体的に、当該ブーム操作レバー21は、前記ブームパイロット弁22に回動可能に連結され、オペレータによって中立位置を挟んでその両側に操作されること、すなわち、ブーム上げ操作とブーム下げ操作とを受けること、が可能である。これらのブーム上げ操作及びブーム下げ操作はいずれも「第1メイン操作」に対応する前記ブーム操作であり、そのうちブーム上げ操作は、前記先端アタッチメント3に作用する重力に抗して当該先端アタッチメント3を上向き成分を含む上げ方向に変位させるようにブームシリンダ6を伸長させるための操作に相当する。
【0040】
前記ブームパイロット弁22は、前記ブーム操作レバー21に与えられる前記ブーム操作に応じて前記パイロット油圧源から前記ブームコントロールバルブ16及び前記第2合流切換弁14にパイロット圧が供給されるのを許容するように開弁する。具体的に、前記ブームパイロット弁22は、前記ブーム上げパイロットライン24A及び前記ブーム下げパイロットライン24Bを介して前記ブームコントロールバルブ16のブーム上げパイロットポート16a及びブーム下げパイロットポート16bにそれぞれ接続され、さらに、前記ブーム上げパイロットライン24Aから分岐する前記ブーム上げ合流パイロットライン26を介して前記第2合流切換弁14の前記ブーム上げ合流パイロットポート14aに接続されている。
【0041】
前記ブームパイロット弁22は、前記ブーム操作レバー21が中立位置にあるときはパイロット圧の供給を遮断し、前記ブーム操作レバー21に前記ブーム上げ操作が与えられるとのその操作量に対応する大きさのブーム上げパイロット圧Pbaが前記ブーム上げパイロットライン24Aさらには前記ブーム上げ合流パイロットライン26を通じて前記ブームコントロールバルブ16のブーム上げパイロットポート16aさらには第2合流切換弁14のブーム上げ合流パイロットポート14aに供給されることを許容するように開弁し、前記ブーム操作レバー21に前記ブーム下げ操作が与えられるとのその操作量に対応する大きさのブーム下げパイロット圧Pbbが前記ブーム下げパイロットライン34Bを通じて前記ブームコントロールバルブ16のブーム下げパイロットポート16bに供給されることを許容するように開弁する。従って、前記第2合流切換弁14は、前記ブーム操作レバー21に一定以上の大きさのブーム上げ操作が与えられることを条件に開弁する。
【0042】
前記アーム操作装置30は、オペレータによるアーム操作を受け、当該アーム操作に対応して前記アームコントロールバルブ17さらには前記第1合流切換弁13を開弁作動させるものであり、本発明に係る「第2メイン操作装置」に該当する。アーム操作レバー31と、アームパイロット弁32と、アーム引きパイロットライン34Aと、アーム押しパイロットライン34Bと、図略のアーム引き合流パイロットライン及びアーム押し合流パイロットラインと、を有する。
【0043】
前記アーム操作レバー31は、前記アーム操作であってオペレータから前記アームシリンダ7を動かすための回動操作、つまり第2メインアクチュエータを動かすための第2メイン操作、を受ける操作部材である。具体的に、当該アーム操作レバー31は、前記アームパイロット弁32に回動可能に連結され、オペレータによって中立位置を挟んでその両側に操作されること、すなわち、アーム引き操作とアーム押し操作とを受けること、が可能である。これらのアーム引き操作及びアーム押し操作はいずれも「第2メイン操作」に対応するアーム操作であり、そのうちアーム押し操作は、前記先端アタッチメント3に作用する重力に抗して当該先端アタッチメント3を上向き成分を含む上げ方向に変位させるようにアームシリンダ7を収縮させるための操作に相当する。
【0044】
前記アームパイロット弁32は、前記アーム操作レバー31に与えられる前記アーム操作に応じて前記パイロット油圧源から前記アームコントロールバルブ17及び前記第2合流切換弁14にパイロット圧が供給されるのを許容するように開弁する。具体的に、前記アームパイロット弁32は、前記アーム引きパイロットライン34A及び前記アーム押しパイロットライン34Bを介して前記アームコントロールバルブ17のアーム引きパイロットポート17a及びアーム押しパイロットポート17bにそれぞれ接続され、さらに、前記アーム押しパイロットライン34からそれぞれ分岐する前記アーム引き合流パイロットライン及び前記アーム押し合流パイロットラインを介して前記第1合流切換弁13の前記アーム引き合流パイロットポート13a及び前記アーム押し合流パイロットポート13bに接続されている。
【0045】
前記アームパイロット弁32は、前記アーム操作レバー31が中立位置にあるときはパイロット圧の供給を遮断し、前記アーム操作レバー31に前記アーム引き操作が与えられるとのその操作量に対応する大きさのアーム引きパイロット圧Paaが前記アーム引きパイロットライン34Aさらには前記アーム引き合流パイロットラインを通じて前記アームコントロールバルブ17のアーム引きパイロットポート17aさらには第1合流切換弁13のアーム引き合流パイロットポート13aに供給されることを許容するように開弁し、前記アーム操作レバー31に前記アーム押し操作が与えられるとのその操作量に対応する大きさのアーム押しパイロット圧Pabが前記アーム押しパイロットライン34Bさらには前記アーム押し合流パイロットラインを通じて前記アームコントロールバルブ17のアーム押しパイロットポート17bさらには第1合流切換弁13のアーム押し合流パイロットポート13bに供給されることを許容するように開弁する。従って、前記第1合流切換弁13は、前記アーム操作レバー31に一定以上の大きさのアーム操作(アーム引き操作及びアーム押し操作)が与えられることを条件に開弁する。
【0046】
前記アタッチメント操作装置40は、オペレータによるアタッチメント操作を受け、当該アタッチメント操作に対応して前記アタッチメントコントロールバルブ18を開弁作動させるものであり、アタッチメント操作レバー41と、アタッチメントパイロット弁42と、伸長パイロットライン44Aと、収縮パイロットライン44Bと、を有する。
【0047】
前記アタッチメント操作レバー41は、オペレータから前記アタッチメント操作であって前記アタッチメントシリンダ8を動かすための回動操作を受ける操作部材である。具体的に、当該アタッチメント操作レバー41は、前記アタッチメントパイロット弁42に回動可能に連結され、オペレータによって中立位置を挟んでその両側に操作されること、すなわち、伸縮操作と収縮操作とを受けること、が可能である。これらの操作はいずれもアタッチメント操作であり、前記先端アタッチメント3を動かすように前記アタッチメントシリンダ8を伸縮させるための操作に相当する。
【0048】
前記アタッチメントパイロット弁42は、前記アタッチメント操作レバー41に与えられる前記アタッチメント操作に応じて前記パイロット油圧源から前記アタッチメントコントロールバルブ18にパイロット圧(アタッチメントパイロット圧Pat)が供給されるのを許容するように開弁する。具体的に、前記アタッチメントパイロット弁42は、前記伸長パイロットライン44A及び前記収縮パイロットライン44Bを介して前記アタッチメントコントロールバルブ18の伸長パイロットポート18a及び収縮パイロットポート18bにそれぞれ接続されている。
【0049】
前記アタッチメントパイロット弁42は、前記アタッチメント操作レバー41が中立位置にあるときは前記アタッチメントパイロット圧Patの供給を遮断し、前記アタッチメント操作レバー41に前記伸長操作が与えられるとのその操作量に対応する大きさのアタッチメントパイロット圧Patが前記伸長パイロットライン4Aを通じて前記アタッチメントコントロールバルブ18の伸長パイロットポート18aに供給されることを許容するように開弁し、前記アタッチメント操作レバー41に前記収縮操作が与えられるとのその操作量に対応する大きさのアタッチメントパイロット圧Patが前記収縮パイロットライン44Bを通じて前記アタッチメントコントロールバルブ18の収縮パイロットポート18bに供給されることを許容するように開弁する。
【0050】
図1に示す装置は、前記の構成要素に加え、複数のパイロット圧センサと、入力装置51と、本発明に係る動力分配制御装置として機能するコントローラ60と、を備える。
【0051】
前記複数のパイロット圧センサは、前記ブーム上げパイロットポート16a及び前記ブーム下げパイロットポート16bにそれぞれ入力される前記ブーム上げパイロット圧Pba及び前記ブーム下げパイロット圧Pbbをそれぞれ検出するブームパイロット圧センサ52A,52Bと、前記アーム引きパイロットポート17a及び前記アーム押しパイロットポート17bにそれぞれ入力される前記アーム引きパイロット圧Paa及び前記アーム押しパイロット圧Pabをそれぞれ検出するアームパイロット圧センサ53A,53Bと、前記アタッチメントパイロットポート18a,18bにそれぞれ入力されるアタッチメントパイロット圧Pat,Patをそれぞれ検出するアタッチメントパイロット圧センサ54A,54Bと、を含む。それぞれのパイロット圧センサは、対応するパイロット圧に相当する電気信号であるパイロット圧検出信号を生成して前記コントローラ60に入力する。
【0052】
前記入力装置51は、オペレータによる入力操作を受け、かつ、その入力操作に対応した変更指令をコントローラ60に入力する。前記入力操作には、減算度変更操作と、モード特定操作と、が含まれる。
【0053】
前記減算度変更操作は、後述のように前記コントローラ60に格納される減算度を変更するために行われる操作である。前記入力装置51は、当該減算度変更操作を受けるとこれに対応する直接変更指令を生成し、当該直接変更指令を前記変更指令として前記コントローラ60に入力する。
【0054】
前記モード特定操作は、複数の作業モードの中から一つの作業モードを特定するための操作である。前記複数の作業モードは、この実施の形態では前記先端アタッチメント3として使用されるアタッチメントの種類に対応して用意されている。当該複数の作業モードには、例えば、前記先端アタッチメント3として大型圧砕機を使用する作業モード、小型圧砕機を使用する作業モード、フォークを使用する作業モード、ブレーカを使用する作業モード、及びグラップルを使用する作業モードが含まれる。入力装置51は、前記モード特定操作、すなわち、前記先端アタッチメント3として前記アーム5の先端に装着されるアタッチメントの種類に対応した作業モードを指定するためのオペレータによる入力操作、を受けることが可能であり、当該入力操作によって指定された作業モードを特定するためのモード特定指令を前記変更指令として前記コントローラ60に入力する。
【0055】
前記コントローラ60は、コンピュータ等からなり、本発明に係る動力分配制御装置として機能する。当該動力分配制御装置は、前記第1油圧ポンプ11の容量である第1ポンプ容量q1及び前記第2油圧ポンプの容量である第2ポンプ容量q2を操作することにより、ポンプ動力源である前記エンジン10から前記第1油圧ポンプ11及び前記第2油圧ポンプ12に与えられる動力(ポンプトルク)の配分を制御する装置である。さらに、この動力分配制御装置は、第2メイン操作装置である前記アーム操作装置30に第2メインアクチュエータであるアームシリンダ7を上げ方向に作動させるためのアーム押し操作(第2メイン操作)が与えられて前記第1合流切換弁13が開弁すると同時に前記アタッチメント操作装置40に前記アタッチメント操作が与えられる複合操作時には、前記アーム操作装置30に前記アーム押し操作が与えられているが前記アタッチメント操作装置40に前記アタッチメント操作が与えられていない時に比べて前記エンジン10から前記第2油圧ポンプ12への動力の分配を小さくして前記エンジン10から前記第1油圧ポンプ11への動力の分配を大きくするように構成されていることを特徴とする。
【0056】
具体的に、前記コントローラ60は、前記動力分配制御装置に係る機能として、図3に示すような減算率格納部61、流量比率演算部62、動力配分演算部63、及びポンプ容量操作部64を有する。
【0057】
前記減算率格納部61は、流量比率演算部62において用いられるべき減算度を格納し、これを当該流量比率演算部62に指定する。さらに、当該減算率格納部61は、後に詳述するように、前記入力装置51から前記変更指令(直接変更指令及びモード特定指令のうちの少なくとも一方の指令)が入力された場合、当該変更指令に基づいて前記減算度の変更を行う。また、減算率格納部61は、前記複数の作業モードにそれぞれ対応する変更許容範囲も格納しており、前記直接変更指令による減算度の変更が前記変更許容範囲を超える場合にはその変更を拒絶する。
【0058】
前記流量比率演算部62は、前記ブーム操作、前記アーム操作、及び前記アタッチメント操作に基づいて流量比率を演算する。前記流量比率は、前記第1油圧ポンプ11から第1メインアクチュエータであるブームシリンダ6に供給されるべき作動油の流量であるブーム1速流量(第1メイン流量)、前記第2油圧ポンプ12から第2メインアクチュエータであるアームシリンダ7に供給されるべき作動油の流量であるアーム1速流量(第2メイン流量)、前記第2油圧ポンプ12からアタッチメントアクチュエータであるアタッチメントシリンダ8に供給されるべき作動油の流量であるアタッチメント流量、前記第1油圧ポンプ11から前記第1合流切換弁13を通じて前記アームシリンダ7に供給されるべき作動油の流量であるアーム2速流量(第1合流流量)及び前記第2油圧ポンプ12から前記第2合流切換弁14を通じて前記ブームシリンダ6に供給されるべき作動油の流量であるブーム上げ2速流量(第2合流流量)の比率である。
【0059】
この実施の形態に係る流量比率演算部62は、前記流量比率を特定するために前記ブーム1速流量、前記アーム1速流量、前記アタッチメント流量、前記アーム2速流量及び前記ブーム2速流量のそれぞれの目標値であるブーム1速目標流量Qb1、アーム1速目標流量Qa1、アタッチメント目標流量Qat、アーム2速目標流量Qa2及びブーム2速目標流量Qb2を算定する。これらの目標流量Qb1,Qa1,Qat,Qa2,Qb2はあくまでも前記流量同士の比率である流量比率を特定するために仮算定されるものであって、当該目標流量の大きさと実際に各アクチュエータに流される作動油の流量の大きさとは必ずしも対応しない。換言すれば、前記流量比率は前記目標流量Qb1,Qa1,Qat,Qa2,Qb2の比として特定される一方、当該目標流量Qb1,Qa1,Qat,Qa2,Qb2の総和はエンジン10の馬力によって制限される。
【0060】
前記減算率格納部61は、前記減算度として、前記アーム操作装置30に与えられるアーム操作のうち前記アームシリンダ7を上げ方向に動かすための操作であるアーム押し操作に対応するアーム押し減算率Ra(≦100%)と、前記ブーム操作装置20に与えられるブーム操作のうち前記ブームシリンダ6を上げ方向に動かすための操作であるブーム上げ操作に対応するブーム上げ減算率Rb(≦100%)を格納する。前記流量比率演算部62は、後に詳述するように、前記複合操作時に前記アーム押し減算率Ra及び前記ブーム上げ減算率Rbを用いて前記アタッチメント目標流量Qatの減算を行う。
【0061】
前記動力配分演算部63は、前記流量比率演算部62により演算される目標流量に基づいて前記エンジン10から前記第1油圧ポンプ11及び第2油圧ポンプ12への動力配分を演算する。
【0062】
前記ポンプ容量操作部64は、前記動力配分演算部63により演算された前記動力配分が得られるように前記第1ポンプ容量q1及び前記第2ポンプ容量q2を操作する。具体的には、前記第1及び第2油圧ポンプ11,12のそれぞれの前記レギュレータ11a,12aに容量指令信号を入力して前記第1及び第2ポンプ容量q1,q2を調節する。
【0063】
次に、このコントローラ60が行う演算制御動作を図4にフローチャートを参照しながら説明する。
【0064】
まず、入力装置51にオペレータによる入力操作が与えられ、入力装置51は当該入力操作に基づいてコントローラ60の減算率格納部61に変更指令を入力する(ステップS1)。前記入力操作は、少なくともモード指定操作、すなわち複数の作業モードの中からアーム5に装着されている先端アタッチメント3に対応する作業モードを指定するための操作、を含み、必要に応じてさらに減算率変更操作、つまり流量比率演算部62において用いられるアーム押し減算率Ra及びブーム上げ減算率Rbを直接変更するための操作、を含む。前記入力装置51は前記モード指定操作及び前記減算率変更操作に基づいてモード特定指令及び直接変更指令をそれぞれ生成し、前記減算率格納部61に入力する。
【0065】
前記減算率格納部61は、前記モード特定指令により特定された作業モードに基づいて、各目標流量の演算に使用されるべき減算率Ra,Rb及びその変更許容範囲を決定する(ステップS2)。例えば、圧砕機のように重量が大きくてこれを上昇させるためのブーム上げやアーム押しのための負荷を大きくしやすいアタッチメントが前記先端アタッチメント3として用いられる作業モードでは前記減算率Ra,Rbとして1よりもかなり小さい減算率(例えば80%)が採用される。これに対して例えばフォークやブレーカのように比較的軽量でこれを上昇させるためのブーム上げやアーム押しのための負荷を大きくしにくいアタッチメントが前記先端アタッチメント3として用いられる作業モードでは前記減算率Ra,Rbとして比較的1に近い減算率(100%つまり減算しないものも含む)が採用される。
【0066】
前記減算率格納部61は、前記直接変更指令が入力されていない場合、つまり前記入力操作に減算率変更操作が含まれていない場合(ステップS3でNO)、前記作業モードに基づいて決定した減算率Ra,Rbを維持する(ステップS4)。これに対し、減算率変更操作が含まれている場合(ステップS3でYES)、減算率格納部61は当該減算率変更操作に係る減算率Ra,Rbの変更が前記作業モードに基づいて決定した変更許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS4)。変更許容範囲内である場合(ステップS5でYES)、当該減算率変更操作に基づいて減算率を変更する(ステップS6)。変更許容範囲を超える場合(ステップS5でNO)、減算率格納部は減算率Ra,Rbの変更を拒絶し、変更が不可である旨の表示を入力装置51に行わせる(ステップS7)。当該表示により減算度変更操作が改めて行われた場合、その変更の可否について減算率格納部61は前記と同様に判定を行う(ステップS4)。
【0067】
次に、前記コントローラ60の流量比率演算部62は、流量比率を特定するための各目標流量の演算を行う(ステップS8~S10)。具体的に、流量比率演算部62は、複合操作が行われている複合操作時には(ステップS8でYES)前記減算率格納部61により指定された減算率Ra,Rbを用いた目標流量の演算を行い(ステップS9)、それ以外の時には(ステップS8でNO)当該減算率Ra,Rbを用いない通常の目標流量の演算を行う(ステップS10)。
【0068】
この実施の形態において、前記複合操作には、ブーム上げ操作及びアタッチメント操作がそれぞれブーム操作装置20及びアタッチメント操作装置40に同時に与えられる第1複合操作と、アーム押し操作及びアタッチメント操作がそれぞれアーム操作装置30及びアタッチメント操作装置40に同時に与えられる第2複合操作と、ブーム上げ操作、アーム押し操作及びアタッチメント操作がそれぞれブーム操作装置20、アーム操作装置30及びアタッチメント操作装置40に同時に与えられる第3複合操作と、がある。従って、この実施の形態では前記第1~第3複合操作のうちのいずれかが行われる時に前記減算率Ra,Rbを用いた目標流量の演算が行われる。一方、本発明に係る「複合操作時」に該当するのは少なくとも上げ方向の第2メイン操作(この実施の形態ではアーム押し操作)とアタッチメント操作とが同時に行われている時すなわち前記第2複合操作または前記第3複合操作が行われている時である。従って、本発明において第1複合操作が行われている時に前記減算率Ra,Rbを用いたアタッチメント目標流量Qatの減算を行うか否かは特に限定されない。
【0069】
前記通常の目標流量の演算では、いわゆるポジティブコントロールを行うために、前記パイロット圧センサ52A,52B,53A,53B,54A,54Bにより検出されるパイロット圧に基づいて各目標流量が算定される。具体的に、前記ブーム1速目標流量Qb1及び前記ブーム2速目標流量Qb2はそれぞれブームパイロット圧センサ52Aまたは52Bにより検出されるブーム上げパイロット圧Pbaまたはブーム下げパイロット圧Pbbの大きさに対応した流量Qpbに設定され、前記アーム1速目標流量Qa1及び前記アーム2速目標流量Qa2はそれぞれアームパイロット圧センサ53Aまたは53Bにより検出されるアーム引きパイロット圧Paaまたはアーム押しパイロット圧Pabの大きさに対応した流量Qpaに設定され、前記アタッチメント目標流量Qatはアタッチメントパイロット圧センサ54Aまたは54Bにより検出されるアタッチメントパイロット圧Patの大きさに対応した流量Qptに設定される。つまり、当該通常の目標流量の演算では、各目標流量が次のように設定される。
【0070】
Qb1=Qb2=Qpb
Qa1=Qa2=Qpa
Qat=Qpa
【0071】
このうち、例として、前記アタッチメントパイロット圧Patに対する前記アタッチメント目標流量Qatの特性を図6及び図8に実線で示す。
【0072】
一方、複合操作時では、前記流量比率演算部62は、前記アタッチメント目標流量Qatの上限値Qatuに前記ブーム上げ減算率Rb及び前記アーム押し減算率Raをそれぞれ乗じることでブーム上げ操作に対応した上限値Qatuの減算及びアーム押し操作に対応した上限値Qatuの減算をそれぞれ行う。この実施の形態では、図5及び図7に一点鎖線で示されるように、ブーム上げパイロット圧Pba及びアーム押しパイロット圧Pabが大きいほどこれに対応する減算率Rb,Raとして小さな値(上限値Patuの減算度合いを大きくする値)が設定される。その結果、前記アタッチメントパイロット圧Patに対応するアタッチメント目標流量Qatは図6及び図8に一点鎖線で示されるように減算される。
【0073】
ここで、前記第3複合操作が行われているとき、アタッチメント目標流量Qatには、アーム押し減算率Raを用いて算定された流量とブーム上げ減算率Rbを用いて算定された流量との平均値が採用されてもよいし、前者の流量と後者の流量のうち低い方の流量が採用されてもよい。あるいは、前者の流量と後者の流量を合算した流量を採用することにより、後述のようなブーム上げ1速目標流量Qb1とアーム押し2速目標流量Qa2との合算による第1目標ポンプ流量Q1の増加分だけ第2目標ポンプ流量Q2も増やして各アクチュエータの作動速度のバランスを保つような制御が行われてもよい。
【0074】
さらに、この実施の形態における前記流量比率演算部62は、図9図10に示すようにアタッチメントパイロット圧Patが大きいほど大きな度合いで第2油圧ポンプ12に関係するブーム2速目標流量(ブーム上げ2速目標流量)Qb2及びアーム1速目標流量(アーム押し1速目標流量)Qa1を減算する。具体的に、アタッチメントパイロット圧Patが十分に大きい場合(例えばアタッチメント操作レバー41がフル操作されている場合)、前記目標流量Qb2,Qa1はそれぞれ0に近い最小値Qbmin,Qaminまでそれぞれ抑えられる。
【0075】
従って、ブーム上げパイロット圧Pba及びアーム押しパイロット圧Pabが十分大きい場合、各目標流量が次のように設定される。
【0076】
Qb1=Qpb
Qb2=Qbmin(最小値)
Qa1=Qamin(最小値)
Qa2=Qpa
Qat=Ra(またはRb)・Qpa
【0077】
ここで、減算がされていない前記目標流量Qb1,Qa2は第1油圧ポンプ11から供給される作動油の流量であり、減算された目標流量Qb2,Qa1,Qatは第2油圧ポンプ12から供給される作動油の流量である。従って、前記減算は、エンジン10からの動力配分について第1油圧ポンプ11の優先度を大きくして第2油圧ポンプ12の優先度を小さくするものである。
【0078】
なお、前記第1及び第2油圧ポンプ11,12に前記シリンダ6~8以外の他の油圧アクチュエータが接続されている場合、前記流量比率演算部62は当該他の油圧アクチュエータの目標流量も同様にして演算する。この場合も、前記第1油圧ポンプ11の優先度が前記第2油圧ポンプ12の優先度より高いことに変わりはない。
【0079】
次に、前記コントローラ60の動力配分演算部63は、前記流量比率演算部62により演算された目標流量(流量比率)に基づいて第1及び第2油圧ポンプ11,12への動力配分を演算する。具体的には、前記目標流量に基づいて第1及び第2油圧ポンプ11,12から吐出される作動油の流量の目標値である第1目標ポンプ流量Q1及び第2目標ポンプ流量Q2を演算し(ステップS11)、当該目標ポンプ流量Q1,Q2に基づいて第1及び第2油圧ポンプ11,12の駆動トルクである第1ポンプトルクT1及び第2ポンプトルクT2を設定する(ステップS12)。
【0080】
前記第1目標ポンプ流量Q1及び前記第2目標ポンプ流量Q2は次式で表される。
【0081】
Q1=Qb1+Qa2+Qc1
Q2=Qa1+Qat+Qb2+Qc2
【0082】
ここで、Qc1は第1油圧ポンプ11にシリンダ6~8以外の他の油圧アクチュエータが接続されている場合の当該他の油圧アクチュエータの目標流量の総和であり、Qc2は第2油圧ポンプ12にシリンダ6~8以外の他の油圧アクチュエータが接続されている場合の当該他の油圧アクチュエータの目標流量の総和である。前記第1複合操作では、前記Qa1,Qa2は0であり、前記第2複合操作では、前記Qb1,Qb2は0である。また、複合操作時には前記目標流量Qat,Qb2,Qa1がいずれも減算されるので、これらを含む第2目標ポンプ流量Q2が第1目標ポンプ流量Q1に比べて大きく減算されることになる。
【0083】
前記第1ポンプトルクT1及び前記第2ポンプトルクT2は、エンジン10の馬力により規定される総トルクの上限値である全体制限トルクをTtとすると、次式により算定される。
【0084】
T1=Tt×Q1/(Q1+Q2)
T2=Tt×Q2/(Q1+Q2)
【0085】
前記コントローラ60のポンプ容量指令部は、前記第1ポンプトルクT1及び第2ポンプトルクT2にそれぞれに対応する最終の第1ポンプ流量(第1油圧ポンプ11の吐出流量)及び第2ポンプ流量(第2油圧ポンプ12の吐出流量)を算定し、当該第1ポンプ流量及び第2ポンプ流量を得るための第1ポンプ容量q1及び第2ポンプ容量q2を決定してそれぞれに対応する容量指令信号を第1及び第2油圧ポンプ11,12のレギュレータ11a,12aに入力する(ステップS13)。なお、前記第1及び第2ポンプ流量の算定は、前記第1及び第2ポンプトルクT1,T2をそれぞれ第1及び第2油圧ポンプ11,12の吐出圧で除することを含むが、第1油圧ポンプ11から吐出される作動油と第2油圧ポンプ12から吐出される作動油との合流により両油圧ポンプ11,12の吐出圧は実質上同等であるとみなすことができるので、前記第1及び第2油圧ポンプ11,12の吐出圧による除算にかかわらず、最終的に算定される前記第1及び第2ポンプ流量同士の比率は前記第1及び第2ポンプトルクT1,T2同士の比率に対応する。
【0086】
以上説明した装置によれば、少なくともアーム操作装置30及び前記アタッチメント操作装置40にそれぞれアーム押し操作及びアタッチメント操作が同時に与えられる複合操作時には、前記第1及び第2油圧ポンプ11,12への動力の分配について前記第2油圧ポンプ12の優先度を下げることにより当該第2油圧ポンプ12からアタッチメントシリンダ8に供給される作動油の流量を抑えながら、前記第1油圧ポンプ11の優先度を上げることにより当該第1油圧ポンプ11から第1合流切換弁13を通じてアームシリンダ7に供給される(第3複合操作では第1油圧ポンプ11からブームシリンダ6及びアームシリンダに供給される)作動油の流量を確保することができる。このことは、前記複合操作時においてアーム押し(第3複合操作ではアーム押し及びブーム上げ)のための負荷が先端アタッチメント3の駆動のための負荷に比べて著しく大きい場合にも、専用の可変絞り弁を要することなく、前記アタッチメントシリンダ8の作動速度を抑えながらアームシリンダ7(第3複合操作ではアームシリンダ7及びブームシリンダ6)の作動速度を十分に確保することを可能にする。この効果は、第1メインアクチュエータがアームシリンダ7であり、第2メインアクチュエータがブームシリンダ6である場合にも同様に得られる。
【0087】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような形態も包含する。
【0088】
(A)流量比率減算度について
本発明においてアタッチメント目標流量を減算するための流量比率減算度は、前記実施の形態で規定された減算率Rb,Raに限定されない。当該流量比率減算度は、例えば、アタッチメント目標流量から差し引くべき減算値として設定されてもよい。あるいは、アーム押し操作やブーム上げ操作の大きさとアタッチメント目標流量との間に非線形な関係が関係式またはマップにより与えられて流量比率演算部が当該関係式またはマップに基づいてアタッチメント目標流量を演算してもよい。
【0089】
(B)第2メイン流量及び第2合流流量の減算について
本発明において、複合操作時における第2メイン流量(前記実施の形態ではアーム押し1速目標流量Qa1)または第2合流流量(前記実施の形態ではブーム上げ2速目標流量Qb2)の減算は必須ではない。しかし、当該減算は、動力分配についての第1油圧ポンプの優先度をさらに高めて第1メインアクチュエータや第2メインアクチュエータが(第2油圧ポンプではなく)第1油圧ポンプから供給される作動油によって駆動される割合をさらに高めることを可能にする。
【符号の説明】
【0090】
1 ベースマシン
2 作業装置
3 先端アタッチメント
4 ブーム
5 アーム
6 ブームシリンダ(ブームアクチュエータ)
7 アームシリンダ(アームアクチュエータ)
8 アタッチメントシリンダ(アタッチメントアクチュエータ)
10 エンジン(ポンプ駆動源)
11 第1油圧ポンプ
12 第2油圧ポンプ
13 第1合流切換弁
14 第2合流切換弁
16 ブームコントロールバルブ(第1メインコントロールバルブ)
17 アームコントロールバルブ(第2メインコントロールバルブ)
18 アタッチメントコントロールバルブ
20 ブーム操作装置
30 アーム操作装置
40 アタッチメント操作装置
51 入力装置(変更指令入力部)
60 コントローラ
61 減算率格納部(減算度格納部)
62 流量比率演算部
63 動力配分演算部
64 ポンプ容量操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10