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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】車両の運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/10 20120101AFI20220830BHJP
   B60W 30/14 20060101ALI20220830BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B60W50/10
B60W30/14
F02D29/02 301A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018130029
(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2020006819
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿式 俊和
(72)【発明者】
【氏名】吉谷 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】酒井 昌司
(72)【発明者】
【氏名】横沢 隆志
(72)【発明者】
【氏名】柴田 恵助
(72)【発明者】
【氏名】石黒 健一
(72)【発明者】
【氏名】田邉 俊哉
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-138768(JP,A)
【文献】特開平09-222922(JP,A)
【文献】特開2015-190389(JP,A)
【文献】特開2015-169115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00~10/30
B60W 30/00~60/00
B60K 31/00
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の最適速度および最適加速度をそれぞれ設定し、前記最適加速度で前記最適速度に加速して前記車両を走行させる制御部と、
前記車両を加速させる意思の有無を、前記車両の運転者による操作の有無によって検出する検出部と、を備え、
前記制御部は、
前記検出部の操作があった場合、前記最適加速度による加速から前記車両のアクセルペダルの操作による加速への切替を許容するとともに、前記検出部の操作が継続されている間、前記アクセルペダルの操作に応じて前記車両を加速させ、前記検出部の操作がない場合、前記切替を許容することなく前記最適加速度により前記車両を加速させ
前記アクセルペダルの操作が無効である状態で、前記最適加速度により前記車両を加速させ、前記切替を許容する際、前記アクセルペダルの操作の無効を解除する
ことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項2】
車両の最適速度および最適加速度をそれぞれ設定し、前記最適加速度で前記最適速度に加速して前記車両を走行させる制御部と、
前記車両を加速させる意思の有無を、前記車両の運転者による操作の有無によって検出する検出部と、を備え、
前記制御部は、前記検出部の操作があった場合、前記最適加速度による加速から前記車両のアクセルペダルの操作による加速への切替を許容するとともに、前記検出部の操作が継続されている間、前記アクセルペダルの操作に応じて前記車両を加速させ、前記検出部の操作がない場合、前記切替を許容することなく前記最適加速度により前記車両を加速させ
前記検出部は、前記運転者によって押下および押下解除されるボタンを含み、
前記ボタンは、押し下げられている間、前記切替を許容するためのトリガーを前記制御部に付与し、押下解除されると前記トリガーの前記制御部への付与を停止し、
前記制御部は、前記トリガーが付与されている間、前記アクセルペダルの操作に応じて前記車両を加速させ、前記トリガーの付与が停止されると、前記アクセルペダルの操作に応じた前記車両の加速を終了させる
ことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項3】
前記ボタンは、所定時間を超えて押し下げられた場合、前記トリガーの前記制御部への付与を停止する
ことを特徴とする請求項に記載の車両の運転支援装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記検出部の操作を制限する操作制限条件を判定し、前記操作制限条件を満たす場合、前記検出部の操作を制限する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の運転支援装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記操作制限条件の判定時、前記車両の車速およびシフトポジションの少なくともいずれかを所定の閾値と比較し、その比較結果に応じて前記検出部の操作を制限する
ことを特徴とする請求項に記載の車両の運転支援装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記検出部の操作を無効にする操作無効条件を判定し、前記操作無効条件を満たす場合、前記検出部の操作を無効にする
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の運転支援装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記車両の走行路の状況および視界の少なくともいずれかに基づいて前記操作無効条件を判定し、前記検出部の操作を無効にする
ことを特徴とする請求項に記載の車両の運転支援装置。
【請求項8】
前記検出部は、
前記車両の走行状況を検出する車両情報検出部と、
前記車両の周辺状況を検出する車両周辺状況検出部と、を含んで構成され、
前記制御部は、
前記車両情報検出部によって検出された前記走行状況、および前記車両周辺状況検出部によって検出された前記周辺状況の各検出結果に基づいて、前記車両が走行する走行シーンを判定する走行シーン判定部と、
前記走行シーン判定部によって判定された走行シーンに応じて前記最適速度および前記最適加速度をそれぞれ設定する最適速度・加速度設定部と、
前記最適速度・加速度設定部によって設定された前記最適加速度で前記車両を前記最適速度まで加速させる走行制御部と、を含んで構成される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転を支援するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の走行中や駐車時などに障害物との衝突や接触を回避するための運転支援を行う装置が知られている。かかる運転支援装置では、例えば車両(自車両)が所定距離よりも障害物に接近すると、ブレーキを自動制御し、運転者の意思によらずに車両を減速させる。その一方で、かかる減速中であっても、運転者がアクセルペダルを踏み込んだ場合には、ブレーキの自動制御を解除し、車両の再加速を可能としている。したがって、運転者がブレーキペダルと間違ってアクセルペダルを踏み込んだ場合であっても、ブレーキの自動制御が解除され、運転者の減速意思に反して車両が再加速されてしまうおそれがある。
【0003】
このため、このようなブレーキペダルとアクセルペダルの踏み間違いへの対処を図る運転支援装置も知られている。例えば、特許文献1には、低速時にはアクセルペダルの操作による加速を無効とし、手操作部材が操作されることで加速制御を可能とする運転支援装置が一例として開示されている。かかる運転支援装置によれば、低速時の踏み間違いによる加速(誤加速)を防止しつつ、低速時以外では通常のアクセルペダルの操作性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-190389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の運転支援装置では、低速時におけるブレーキペダルとアクセルペダルの踏み間違いは防止できるが、手操作部材の操作間違いによる加速(誤加速)の可能性を排除できない。また、手操作であるため、道路環境など車両の走行シーンに応じた柔軟な加速に対応できず、加速が過不足するおそれがある。加えて、アクセルペダルではなく手操作部材で加速させるため、通常とは異なる操作への習熟が必要であり、高齢者などの操作性は悪化しやすい。さらに、低速時以外は運転者がアクセルペダルを常に操作する必要があり、運転負荷の軽減には特段寄与しない。
【0006】
このため、ブレーキペダルとアクセルペダルの踏み間違いをなくすとともに、運転支援をより適正に行うことが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両の運転支援装置は、車両の最適速度および最適加速度をそれぞれ設定し、最適加速度で最適速度に加速して車両を走行させる制御部と、車両を加速させる意思の有無を、車両の運転者による操作の有無によって検出する検出部とを備える。制御部は、検出部の操作があった場合、最適加速度による加速から車両のアクセルペダルの操作による加速への切替を許容するとともに、検出部の操作が継続されている間、アクセルペダルの操作に応じて車両を加速させ、検出部の操作がない場合、切替を許容することなく最適加速度により車両を加速させる。
【0008】
制御部は、アクセルペダルの操作が無効である状態で、最適加速度により車両を加速させ、切替を許容する際、アクセルペダルの操作の無効を解除する。
検出部は、運転者によって押下および押下解除されるボタンを含む。ボタンは、押し下げられている間、切替を許容するためのトリガーを制御部に付与し、押下解除されるとトリガーの制御部への付与を停止する。制御部は、トリガーが付与されている間、アクセルペダルの操作に応じて車両を加速させ、トリガーの付与が停止されると、アクセルペダルの操作に応じた車両の加速を終了させる。
その際、ボタンは、所定時間を超えて押し下げられた場合、トリガーの制御部への付与を停止する。
【0009】
制御部は、検出部の操作を制限する操作制限条件を判定し、操作制限条件を満たす場合、検出部の操作を制限する。例えば、制御部は、操作制限条件の判定時、車両の車速およびシフトポジションの少なくともいずれかを所定の閾値と比較し、その比較結果に応じて検出部の操作を制限する。
【0010】
制御部は、検出部の操作を無効にする操作無効条件を判定し、操作無効条件を満たす場合、検出部の操作を無効にする。例えば、制御部は、車両の走行路の状況および視界の少なくともいずれかに基づいて操作無効条件を判定し、検出部の操作を無効にする。
【0011】
車両の運転支援装置において、検出部は、車両の走行状況を検出する車両情報検出部と、車両の周辺状況を検出する車両周辺状況検出部とを含んで構成される。制御部は、車両情報検出部によって検出された走行状況、および車両周辺状況検出部によって検出された周辺状況の各検出結果に基づいて、車両が走行する走行シーンを判定する走行シーン判定部と、走行シーン判定部によって判定された走行シーンに応じて最適速度および最適加速度をそれぞれ設定する最適速度・加速度設定部と、最適速度・加速度設定部によって設定された最適加速度で車両を最適速度まで加速させる走行制御部とを含んで構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両の運転支援装置によれば、ブレーキペダルとアクセルペダルの踏み間違いをなくすとともに、運転支援をより適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る車両の運転支援装置が搭載された車両の模式図。
図2】本発明の実施形態に係る車両の運転支援装置の概略構成を示すブロック図。
図3】本発明の実施形態に係る車両の運転支援装置の加速意思検出部の構成例を示す運転席まわりの模式図。
図4】本発明の実施形態に係る車両の運転支援装置の制御フローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る車両の運転支援装置(以下、単に運転支援装置という)について、図1から図4を参照して説明する。本実施形態の運転支援装置は、通常時には運転者のアクセルペダルの操作によらずに加速制御(以下適宜、自動加速制御という)を行い、運転者の加速意思がある場合にはアクセルペダルの操作による加速制御(以下適宜、ペダル加速制御という)に切り替えを行う装置である。自動加速制御は、車両の最適速度および最適加速度を設定し、最適加速度で最適速度に加速して車両を走行させるための制御として規定する。最適速度は、後述する走行シーンで車両が走行する際の最適な速度であり、最適加速度は、該最適速度とするために最適な加速度である。
【0015】
図1は、本実施形態に係る運転支援装置10が搭載された車両1の模式図である。運転支援装置10が搭載される車両1は、ブレーキ制御がブレーキペダル11の操作によって行われ、ペダル加速制御を行う運転者の意思がない限り、自動加速制御が行われる車両である。例えば、アクセルペダル12を装備していても、所定の条件下以外の通常の運転時には、アクセルペダル操作が無効となる車両などが該当する。すなわち、かかる車両1では、通常の運転時にはアクセルペダル12の踏込ではなく、ブレーキペダル11が開放されることで加速制御が開始される。このような車両1であれば、自家用の乗用自動車、あるいはトラックやバスなどの事業用自動車のいずれであってもよく、用途や車種は特に問わない。車両1の駆動装置(パワーユニット)13は、内燃機関(エンジン)であっても、電動モータであっても、これらの双方であってもよい。通知ユニット14は、加速制御が行われる際、運転者に対して所定の通知を行う(詳細は後述)。
【0016】
図2は、本実施形態に係る運転支援装置10のブロック図である。図2に示すように、運転支援装置10は、検出部20と、制御部30とを備えて構成されている。
検出部20は、加速制御に要する車両1の走行状況、周辺状況、および運転者の加速意思をそれぞれ検出する。車両1は、運転支援装置10が搭載された自車両である。以下の説明では、車両1は自車両を意味するものとし、それ以外の車両、例えば先行車両、後続車両、駐停車両、対向車両などは適宜他車両と称して区別する。検出部20は、制御部30と有線もしくは無線により接続され、制御部30によって動作が制御されるとともに、制御部30に対して検出結果を与える。
【0017】
検出部20は、車両1の加速制御に必要な各種の検出を行うため、車両情報検出部21と、車両周辺状況検出部22と、加速意思検出部23とを含んで構成されている。
車両情報検出部21は、車両1の走行状況を検出し、その情報(以下、走行状況情報という)を取得する。車両情報検出部21は、例えば速度、加速度、アクセルペダル12の踏込量、ブレーキペダル11の開放角および開放角速度、シフトレバーの位置、ステアリング15(図1)の舵角および舵角速度、ウインカー操作、車両1に設けられたボタンやスイッチなどの操作(ON/OFF、切換)などをそれぞれ検出する各種のセンサである。車両情報検出部21は、これら各種のセンサにより、走行状況情報を取得する。
【0018】
車両周辺状況検出部22は、車両1の周辺状況、具体的には道路状況や車両1の現在地付近の状況などを検出し、その情報(以下、周辺状況情報という)を取得する。車両周辺状況検出部22は、例えばカメラ、レーダー、ソナー、測位装置(ロケータ)、データ通信装置などの各種機器である。車両周辺状況検出部22は、これら機器により周辺状況情報を取得する。
【0019】
カメラは、CCDカメラやCMOSカメラなどであり、車両1の周辺状況、例えば走行路(道路幅、走行区画線、ガードレール、路面状態等)、道路標識や道路標示、信号機、歩行者、他車両などの画像(動画や静止画)をそれぞれ撮像する。カメラは、画角内に撮像対象を収めることができれば、車内および車外のいずれに配置されていてもよい。
【0020】
レーダーやソナーは、車両1の周辺に電磁波(赤外線、ミリ波)や超音波などを送出し、対象物で反射した反射波を受信する。これにより、レーダーやソナーは、対象物の存在と対象物までの距離を計測する。対象物は、車両1付近の歩行者、他車両、ガードレール、側壁などである。
【0021】
測位装置は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機、慣性センサ、地図データなどを備える。測位装置は、GNSS受信機が人工衛星から受信した測位信号と、慣性センサの計測結果とを組み合わせ、車両1を測位する。そして、測位装置は、測位したデータと、地図データとをマッチングし、車両1の現在位置を地図上で特定する。これにより、測位装置は、例えば車両1の現在位置の情報として、駐車場、市街路、幹線道路、高速道路などの情報を取得する。地図データは、所定の記憶装置(例えば、後述する演算処理部31の不揮発メモリ)に予め保持され、適宜読み出される。
【0022】
データ通信装置は、例えばインターネット接続、車車間通信、路車間通信などを行う無線通信機であり、天気、気温、湿度等の気象情報、渋滞、規制、工事等の道路情報(交通情報)など、各種の車外情報を取得する。
【0023】
加速意思検出部23は、車両1を加速させる運転者の意思の有無を、運転者による操作の有無によって検出する。換言すれば、加速意思検出部23は、アクセルペダル12の操作によらない加速制御(自動加速制御)から、アクセルペダル12の操作による加速制御(ペダル加速制御)に切り替えるための制御部30に対する入出力機構である。したがって、加速意思検出部23は、運転者のペダル加速制御への切り替え意思の有無を検出し、検出した切替意思の情報(以下、加速意思情報という)を取得して制御部30に与える。切り替えの意思があることを検出した場合、自動加速制御を中断させるべく、加速意思検出部23は、アクセルペダル操作の無効を解除してペダル加速制御を許諾する信号(以下、ペダル加速トリガーという)を制御部30に与える。
【0024】
図3には、加速意思検出部23として、ボタン(以下、ペダル加速開始ボタンという)23aを備えた運転席まわりの構成を一例として示す。ペダル加速開始ボタン23aは、運転者によって押下および押下解除されるボタンである。なお、図3には、ペダル加速開始ボタン23aがステアリング15のスポーク部151に配置された例を示すが、他の運転操作に支障がなく、運転者が操作し易い位置であれば、ペダル加速開始ボタン23aはどこに配置されていてもよい。例えば、ステアリング15のコラム部152などにペダル加速開始ボタンを配置してもよい。なお、加速意思検出部23は、ペダル加速開始ボタン23aのようなボタンではなく、レバーやつまみなどであってもよい。
【0025】
ペダル加速開始ボタン23aは、運転者に押されている間、アクセルペダル12の操作による加速制御(ペダル加速制御)を可能とする。すなわち、ペダル加速開始ボタン23aは、押されている間、ペダル加速トリガーを制御部30に与える。これにより、運転者は、アクセルペダル12の踏込量に応じて車両1を直ちに加速させることができる。このように車両1を加速させたい場合(走行シーン)としては、例えば赤信号で停止した後の発進時、車線変更時、追い越し時、側道から本線への合流時、登坂時などにおいて、加速が物足らず、車両1を直ちに加速させたい場合、減速や失速を防ぎたい場合などが該当する。
【0026】
押された状態が解除される(ボタンが離される)と、ペダル加速開始ボタン23aは、制御部30に対するペダル加速トリガーの付与を停止する。その際、ペダル加速トリガーの付与を停止するのではなく、アクセルペダル12による加速を無効とし、最適加速度での加速の再開を指示する信号をトリガーとして制御部30に送信してもよい。これにより、車両1は、ペダル加速制御を終了し、最適加速度での走行、つまり自動加速制御を再開する。なお、ペダル加速開始ボタン23aは、ペダル加速トリガーの付与と付与停止(ペダル加速制御の許諾信号の送信と送信停止)が押すたびに切り替わるような構成(トグルボタン)とされていてもよい。
【0027】
また、運転者に所定時間(後述する継続基準時間)を超えて押されると、ペダル加速開始ボタン23aは、制御部30に対するペダル加速トリガーの付与(ペダル加速制御の許諾信号の送信)を停止する。その際、ペダル加速トリガーの付与を停止するのではなく、ペダル加速開始ボタン23aは、トリガーとして以降のアクセルペダル12の操作を無効とする信号を制御部30に送信してもよい。これにより、ペダル加速制御は、直ちに中止される。
【0028】
なお、所定の条件(以下、操作制限条件という)の下で、ペダル加速開始ボタン23aの操作、端的にはその機能を制限してもよい。操作制限条件の判定は、走行状況情報や周辺状況情報に基づいて、制御部30が行う。
例えば、操作制限条件として車速を判定し、車速が所定の基準上限速度を超えた場合、ペダル加速開始ボタン23aから制御部30に対するペダル加速トリガーの付与を停止させることができる。基準上限速度は、車両1が基準上限速度を超えてさらに加速されることを抑制するために設定されており、例えば走行路における制限速度や巡航速度などである。
【0029】
また、例えば操作制限条件としてシフトレバー16の位置(シフトポジション)を判定し、シフトポジションに応じて機能を制限してもよい。一例として、ペダル加速開始ボタン23aは、車両1のシフトポジションが前進(D)である場合のみ機能し、後進(R)では機能しない構成とすることができる。これにより、シフトポジションが前進である場合、ペダル加速開始ボタン23aを押すことでペダル加速制御が可能となるが、シフトポジションが後進である場合、ペダル加速開始ボタン23aを押してもアクセルペダル12の操作によって車両1が加速されることはなく(ペダル加速制御はなされず)、最適加速度による自動加速制御が行われる。
【0030】
また、例えば操作制限条件として車両1の走行シーンの判定可否を判定し、走行シーンの判定ができない場合には、例外的にペダル加速制御が可能となるようにしてもよい。具体的には、車両情報検出部21のセンサ、車両周辺状況検出部22のカメラやレーダーなどの各故障時には、ペダル加速開始ボタン23aを押している間、常にペダル加速制御を可能とすればよい。これにより、走行シーンに応じた自動加速制御が困難な場合であっても、ペダル加速制御によって車両1を加速させることができる。加えて、雪道や凍結路などにおいて車両1がスタックした場合やスタックした他車両を救助する場合、副変速機が下段位置である場合、デフロックしている場合などにも、ペダル加速開始ボタン23aを押している間、常にペダル加速制御を可能とすればよい。これにより、例えばスタックからの脱出や救助などが容易となる。
【0031】
制御部30は、検出部20によって検出された検出結果に基づいて、アクセルペダル12の操作によらない加速制御(自動加速制御)から運転者のアクセルペダル12の操作による加速制御(ペダル加速制御)に適宜切り替えて、車両1の加速制御を行う。通常時において、制御部30は、車両1の最適速度および最適加速度をそれぞれ設定し、最適加速度で最適速度に加速して車両1を走行させる。その際、検出部20(ペダル加速開始ボタン23a)からペダル加速トリガーが付与されると、制御部30は、最適加速度による自動加速制御からペダル加速制御に切り替え、アクセルペダル12の踏込量に応じて車両1を加速させる。制御部30は、例えば車両ECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)として構成し、車両ECUが実行する制御の一つとして、加速制御を行えばよい。制御部30は、車両ECUとは独立して構成されていてもよい。
【0032】
制御部30は、CPU、メモリ、記憶装置(不揮発メモリ)、入出力回路、タイマなどを含む演算処理部31を備えている。演算処理部31は、各種データを入出力回路により読み込み、記憶装置からメモリに読み出したプログラムを用いてCPUで演算処理し、処理結果に基づいて車両1の運転支援制御を行う。
【0033】
また、制御部30は、具体的な加速制御を実行するため、検出部制御部32と、走行シーン判定部33と、最適速度・加速度設定部34と、ペダル加速判定部35と、走行制御部36とを含んで構成されている。
検出部制御部32、走行シーン判定部33、最適速度・加速度設定部34、および走行制御部36は、例えばプログラムとして演算処理部31の記憶装置(不揮発メモリ)に格納されている。なお、かかるプログラムをクラウド上に格納し、演算処理部31をクラウドと適宜通信させて所望のプログラムを利用可能とする構成であってもよい。この場合、演算処理部31は、クラウドとの通信モジュールやアンテナなどを備えた構成とする。
【0034】
検出部制御部32は、検出部20(車両情報検出部21、車両周辺状況検出部22および加速意思検出部23)の動作を制御する。本実施形態では、検出部制御部32に制御されることで、車両情報検出部21は走行状況情報を、車両周辺状況検出部22は周辺状況情報を、加速意思検出部23は加速意思情報をそれぞれ取得し、取得した各情報(データ)を検出部制御部32に与える。検出部制御部32は、与えられた各情報(データ)を走行シーン判定部33、最適速度・加速度設定部34、および走行制御部36に、演算処理部31を介して適宜与える。
【0035】
走行シーン判定部33は、車両1が走行する走行シーンを判定する。走行シーンは、車両1が走行し得るあらゆる場面(状況)の中の一つである。例えば、駐車場、市街路、幹線道路、高速道路などを走行する状況、あるいは交差点、カーブ、低μ路(ウエット路や凍結路等)、坂道、未舗装路を走行する状況など、様々な走行シーンが想定できる。走行シーン判定部33は、これら想定される様々な走行シーンのうち、車両1の現時点およびその先に想定される走行シーンを判定する。その際、走行シーン判定部33は、検出部20によって取得された検出結果(走行状況情報および周辺状況情報)に基づいて走行シーンを判定し、判定結果を最適速度・加速度設定部34に与える。
【0036】
最適速度・加速度設定部34は、走行シーン判定部33によって判定された走行シーンで車両1が走行する際の最適な速度(最適速度)を設定するとともに、設定した最適速度とするために最適な加速度(最適加速度)を設定する。
最適速度および最適加速度(以下適宜、最適速度等という)の設定にあたって、最適速度・加速度設定部34は、走行路の法定速度や巡航速度、駐車場の徐行速度などに、検出部20によって検出(取得)された走行状況情報および周辺状況情報を加味し、走行シーンに応じた最適速度等を演算する。したがって、例えば走行路が渋滞している場合などには、該走行路における先行車両や後続車両の車速などに応じて、法定速度よりも低速に最適速度が設定される。また、他車両を追い越す場合などには、一時的に法定速度以上に最適速度が設定される。
【0037】
そして、最適速度等を設定すると、最適速度・加速度設定部34は、これらの設定結果を走行制御部36に与える。また、最適速度・加速度設定部34は、走行シーンと最適速度等の関係を示すマップ(以下、マスタマップという)を更新する。具体的には、走行シーンに対応する最適速度等のデータを示すレコードをマスタマップに追加する。
【0038】
ペダル加速判定部35は、アクセルペダル12の操作無効の解除条件(以下、単に解除条件という)を判定する。解除条件は、アクセルペダル12の操作無効を解除して操作を有効とし、アクセルペダル12の操作による加速制御を許容するか否かの判定条件である。本実施形態において、ペダル加速判定部35は、加速意思検出部23が取得した加速意思情報に応じて、自動加速制御からペダル加速制御への切り替えの許否を判定する。ペダル加速開始ボタン23aが押され、ペダル加速トリガーが付与されている場合、ペダル加速判定部35は、自動加速制御からペダル加速制御への切り替えを許容する。一方、ペダル加速トリガーが付与されていない場合、ペダル加速判定部35は、自動加速制御からペダル加速制御への切り替えを許容しない。自動加速制御からペダル加速制御への切り替えを許容する場合、ペダル加速判定部35は、切替許容フラグをONにする。切替許容フラグは、自動加速制御からペダル加速制御への切替許否を示すフラグであり、初期値は切替を許容しないことを示すOFFとされている。切替許容フラグの値は、例えば演算処理部31のメモリに保持され、ペダル加速判定部35の引数(プログラムのパラメータ)として切替許否の判定時に読み出されて適宜更新される。
【0039】
走行制御部36は、最適速度・加速度設定部34によって設定された最適加速度に基づいて車両1を加速させ、最適速度とする。すなわち、走行制御部36は、最適加速度で車両1を最適速度まで加速させる。このとき、切替許容フラグの値は初期値(OFF)である。なお、本実施形態においては後述するように、車両1の加速制御を行う場合、前提状態としてアクセルペダル12の操作が無効とされている。したがって、走行制御部36は、アクセルペダル12の操作が無効である状態で、最適加速度により車両1を加速させる。ただし、走行制御部36は、最適加速度での走行制御(自動加速制御)を行う際にアクセルペダル12の操作を無効にしてもよい。
【0040】
その一方で、ペダル加速判定部35によって切替許容フラグがONにされた場合、走行制御部36は、最適加速度での走行制御(自動加速制御)から、アクセルペダル12の操作による加速制御に切り替え、車両1を加速させる。その際、走行制御部36は、アクセルペダル操作の無効を解除し、アクセルペダル操作による加速を許容する。そして、車両情報検出部21によって検出されたアクセルペダル12の踏込量に応じて、走行制御部36は、車両1を加速させる。その後、走行制御部36は、切替許容フラグがONである(つまり、ペダル加速トリガーが与えられている)間、アクセルペダル12の踏込量に応じた加速を継続させる。そして、走行制御部36は、切替許容フラグがOFFとなった(つまり、ペダル加速トリガーの付与が停止した)場合、アクセルペダル12の踏込量に応じた加速を終了させ、アクセルペダル操作を再び無効とする。
【0041】
車両1を加速させる際、走行制御部36は、車両1のパワーユニット13の動作を適宜制御する。パワーユニット13は、例えばエンジンや電動モータなどの駆動装置である。例えば、走行制御部36は、パワーユニット13の出力を上げて車両1を最適加速度で最適速度に達するまで加速させる。その際、運転者の加速意思があった(ペダル加速トリガーが付与され、切替許容フラグがONになった)場合、走行制御部36は、最適加速度ではなくアクセルペダル12の踏込量に応じて車両1を加速させる。すなわち、車両1は、直ちに加速され、最適速度もしくはそれ以上の速度に達する。その後、運転者の加速意思がなくなった(ペダル加速トリガーの付与が停止し、切替許容フラグがOFFになった)場合、走行制御部36は、最適速度を維持するようにパワーユニット13の出力を制御して車両1を走行させる。
【0042】
このような加速制御を行う際、走行制御部36は、通知ユニット14の動作を制御し、加速制御の開始や終了、速度や加速度の制御状況などを運転者に通知させる。また、走行制御部36は、通知ユニット14を通じて車両1の減速を運転者に促す。通知ユニット14は、走行制御部36の出力装置として機能するものであり、例えば通知灯の点灯(点滅)や通知メッセージの表示等を行うインパネやカーナビのモニタ(ディスプレイ)、通知音等を発するスピーカなどが該当する。なお、車両1の減速、例えば加速度を下げるような最適加速度の調整は、運転者のブレーキ操作(ブレーキペダル11の踏込)によってなされる。
【0043】
このような構成をなす運転支援装置10は、次のように車両1の加速制御を行う。図4には、本実施形態において運転支援装置10によって行われる加速制御時の制御フローを示す。以下、図4に示すフローに従って、運転支援装置10による制御とその作用について説明する。なお、運転支援装置10による加速制御が行われる前提状態として、アクセルペダル12の操作は無効とされており、アクセルペダル12の操作(踏込)によっては車両1が加速されない状態とされている。すなわち、車両1は、アクセルペダル操作の無効が解除されない限り、最適速度等での走行制御(アクセルペダル12の操作によらない自動加速制御)が行われる状態とされている。
【0044】
図4に示すように、運転支援装置10において車両1の加速制御を行うにあたって、検出部20は、所定の検出を行う。本実施形態では、検出部制御部32によって動作制御され、車両情報検出部21および車両周辺状況検出部22がそれぞれ所定の検出を行い、情報を取得する。
車両情報検出部21は、車両1の走行状況情報を取得する(S101)。例えば、車両情報検出部21は、車速、加速度、アクセルペダル12の操作態様、ブレーキペダル11の操作態様、シフト位置、ウインカー操作などを検出して、これらの情報を取得する。
車両周辺状況検出部22は、車両1の周辺状況情報を取得する(S102)。例えば、車両周辺状況検出部22は、走行路における他車両の流れ、信号機の有無、路面状態などの走行路の状況、渋滞や規制、天気や気温などの現在地付近の状況などを検出して、これらの情報を取得する。
【0045】
次いで、走行シーン判定部33は、走行状況情報および周辺状況情報に基づいて、現時点およびその先に想定される車両1の走行シーンを判定する(S103)。
例えば、走行状況情報として所定速度以上への加速(ブレーキペダル11の開放角の変化)、車線変更(ステアリング15の舵角の変化)、右左折を示すウインカー操作の情報などが取得され、周辺状況情報として複数の車線(走行車線、追越車線、合流車線等)や右左折レーンの画像などが取得されている場合、走行シーン判定部33は、走行シーンが高速道路や幹線道路などであると判定する。あるいは、周辺状況情報として車両1の現在位置が地図上で高速道路や幹線道路と特定されている場合、走行シーン判定部33は、走行シーンがこれらの道路であると判定する。
【0046】
走行シーン判定部33によって走行シーンが判定されると、最適速度・加速度設定部34は、該走行シーンで車両1が走行する際の最適速度を設定するとともに、設定した最適速度とするための最適加速度をそれぞれ設定する(S104)。なお、ここで設定された最適速度および最適加速度(以下適宜、設定最適速度等という)は、演算処理部31のメモリに保持され、以降の処理において適宜読み出される。
【0047】
例えば、走行シーン判定部33によって走行シーンが走行シーンA(一例として、高速道路)と判定されると、最適速度・加速度設定部34は、走行シーンAに応じた最適速度等をそれぞれ設定する。同様に、最適速度・加速度設定部34は、走行シーンが走行シーンB(一例として、幹線道路)と判定されると走行シーンBに、走行シーンC(一例として、市街路)と判定されると走行シーンCにそれぞれ応じた最適速度等を設定する。これらの走行シーンA,B,Cは、車両1が走行し得るあらゆる場面(状況)の一つであり、車両1が走行を重ねるに度に蓄積され、該走行シーンA,B,Cに応じた最適速度等は、適宜更新される。これにより、マスタマップは、常に最新の状態に維持されている。
【0048】
最適速度等が設定されると、走行制御部36は、運転者に加速意思があり、最適速度等での走行制御からアクセルペダル12の操作による加速制御に切り替える必要があるか否かに応じて、次のように加速制御切替処理を行う。
加速制御切替処理において、ペダル加速判定部35は、車両情報検出部21によって検出された車速に基づいて、速度条件を判定する(S105)。速度条件は、車速を所定の閾値(以下、速度閾値)と比較した場合における大小関係の判定条件である。本実施形態では一例として、速度閾値は時速25kmに設定され、車速が速度閾値以下であれば速度条件を満たすものとする。したがって、速度条件を満たす場合、車両1は時速25km以下の比較的低速状態である。一方、速度条件を満たさない場合、車両1は低速状態ではなく、時速25km超での走行状態である。速度閾値は、例えば演算処理部31のメモリに格納され、ペダル加速判定部35の引数(プログラムのパラメータ)として速度条件の判定時に読み出される。
【0049】
S105において速度条件が満たされないと判定された場合、走行制御部36は、最適速度・加速度設定部34から設定最適速度等を取得し、取得した設定最適速度等に基づいて車両1の走行を制御する(S106)。
【0050】
これに対し、S105において速度条件が満たされると判定した場合、ペダル加速判定部35は、車両情報検出部21によって検出されたアクセルペダル12の操作態様に基づいて、アクセルペダル12の踏込有無を判定する(S107)。その際、走行制御部36は、例えばアクセルペダル12の踏込量に変化が生じている場合、アクセルペダル12の踏込がなされているものと判定し、踏込量に変化が生じていない場合、アクセルペダル12の踏込がなされていないものと判定する。
【0051】
S107においてアクセルペダル12の踏込がなされていないと判定した場合、走行制御部36は、最適速度・加速度設定部34から設定最適速度等を取得し、取得した設定最適速度等に基づいて車両1の走行を制御する(S106)。この場合、運転者に加速意思がないため、走行制御部36は、最適加速度で車両1を加速させる。
【0052】
これに対し、S107においてアクセルペダル12の踏込がなされていると判定した場合、ペダル加速判定部35は、解除条件(アクセルペダル12の操作無効を解除する条件)を判定する。本実施形態において、ペダル加速判定部35は、ペダル加速開始ボタン23aが押されているか否かを解除条件として判定する(S108)。具体的には、ペダル加速判定部35は、加速意思検出部23からペダル加速トリガーが与えられているか否かを判定し、切替許容フラグの値を適宜更新する。
【0053】
S108において解除条件が満たされないと判定した場合、ペダル加速判定部35は、運転者にペダル加速開始ボタン23aの操作(押下げ)を促すための通知をさせる(S109)。この場合、切替許容フラグの値はOFFであるが、アクセルペダル12の踏込がなされているため、運転者に加速意思があるものとして、ペダル加速判定部35は、通知ユニット14の動作を制御し、ペダル加速開始ボタン23aの操作を運転者に促す。通知ユニット14は、例えば通知灯の点灯(点滅)、インパネやカーナビのモニタ(ディスプレイ)へのメッセージの表示、スピーカからの通知音等の鳴動などを行う。ペダル加速判定部35は、ペダル加速開始ボタン23aの操作がなされるまで、通知ユニット14に通知を継続させる。またその間、走行制御部36は、例えばパワーユニット13の出力低下やブレーキユニットの自動作動などにより車両1を減速させたり、あるいはコーストストップさせたりすることで安全性の向上を図ってもよい。
【0054】
これに対し、S108において解除条件が満たされると判定した場合、ペダル加速判定部35は、切替許容フラグの値をONにし、プログラムのパラメータとして走行制御部36に引き渡す。その際、ペダル加速判定部35は、通知ユニット14の動作を制御し、ペダル加速開始ボタン23aの操作を運転者に促す通知を終了させる。そして、走行制御部36は、アクセルペダル12の操作無効を解除して操作を有効とし、アクセルペダル12の操作による加速制御(ペダル加速制御)を許容する(S110)。これにより、走行制御部36は、最適速度等での走行制御(自動加速制御)から、ペダル加速制御に切り替える。その際、走行制御部36は、演算処理部31のメモリに保持された設定最適速度等をクリアする。
【0055】
そして、走行制御部36は、ペダル加速制御を行う(S111)。その際、車両情報検出部21によって検出されたアクセルペダル12の踏込量に応じて、走行制御部36は、パワーユニット13の出力を上げて車両1を加速させる。これにより、車両1を直ちに加速させ、自動加速制御よりも素早く、最適速度もしくはそれ以上の速度とすることができる。
【0056】
ペダル加速制御後、走行制御部36は、ペダル加速制御が継続されている時間(以下、加速継続時間という)を所定の基準時間(以下、継続基準時間という)と比較し、加速継続時間が継続基準時間を超えるか否かを判定する(S112)。本実施形態では、加速継続時間は、運転者によってペダル加速開始ボタン23aが押し続けられている時間、換言すれば切替許容フラグの値がONに維持されている時間に相当する。加速継続時間は、ペダル加速開始ボタン23aが押された際に演算処理部31のタイマを起動させ、そのタイマ値に基づいて走行制御部36が判定する。
【0057】
S112において加速継続時間が継続基準時間以内と判定した場合、走行制御部36は、ペダル加速開始ボタン23aの押下げが解除された(ペダル加速開始ボタン23aが離された)か否かを判定する(S113)。具体的には、走行制御部36は、加速意思検出部23からペダル加速トリガーの付与が継続されている否かを、切替許容フラグの値がONであるか否かによって判定する。走行制御部36は、ペダル加速開始ボタン23aの押下が解除されるまでの間(ペダル加速トリガーの付与が継続され、切替許容フラグの値がONである間)、ペダル加速制御(S111)を継続する。
【0058】
これに対し、S112において加速継続時間が継続基準時間を超えている、つまりペダル加速開始ボタン23aが継続基準時間を超えて押し続けられていると判定した場合、走行制御部36は、ペダル加速制御を中止(終了)する(S114)。この場合にかかる加速制御を終了するのは、車両1が継続基準時間を超えて加速され続けることを防ぐためである。この場合、走行制御部36は、通知ユニット14の動作を制御し、ペダル加速制御を終了する旨を運転者に通知させる。通知ユニット14は、例えば通知灯の点灯(点滅)、インパネやカーナビのモニタ(ディスプレイ)へのメッセージの表示、スピーカからの通知音等の鳴動などを行う。これにより、運転者にペダル加速開始ボタン23aの押下げ解除を促す。
【0059】
また、S113において、ペダル加速開始ボタン23aの押下げが解除されたと判定した場合、走行制御部36は、同様にペダル加速制御を終了する(S114)。この場合、運転者による加速意思がなくなったものとして、ペダル加速制御を終了させる。
【0060】
そして、ペダル加速制御を終了させた後、走行制御部36は、アクセルペダル12の操作を再び無効とする(S115)。これにより、アクセルペダル12の操作は無効となり、アクセルペダル12の操作による加速制御はできなくなる。この場合、走行制御部36は、切替許容フラグの値を初期値(OFF)に戻す。また、走行制御部36は、通知ユニット14の動作を制御し、ペダル加速制御を終了する旨を運転者に通知させる。通知ユニット14は、例えば通知灯の点灯(点滅)、インパネやカーナビのモニタ(ディスプレイ)へのメッセージの表示、スピーカからの通知音等の鳴動などを行う。
【0061】
このような加速制御を行うことで、運転支援装置10は、設定最適速度等を維持するようにパワーユニット13の出力を制御して車両1を走行させる。その際、運転者の加速意思(ペダル加速開始ボタン23aの操作)があった場合には、自動加速制御からペダル加速制御に切り替えて車両1を走行させる。そして、運転支援装置1は、加速制御を一旦終了し、次の加速制御に備える。具体的には、検出部20は所定の検出を継続する。制御部30は、検出部20が新たに取得した走行状況情報、周辺状況情報、および加速意思情報に基づいて解除条件の判定結果を判定し、判定結果に応じて自動加速制御とペダル加速制御とを適宜切り替え、車両1の加速制御を繰り返す。これにより、車両1は、走行路における最適速度での走行を、運転者の加速意思を反映させながら継続することができる。
【0062】
このように本実施形態の運転支援装置10によれば、加速制御を自動で行うことができるとともに、運転者の加速意思がある場合には、自動加速制御からペダル加速制御に随時切り替えることができる。すなわち、走行シーンに応じて設定された最適加速度による加速制御、もしくは運転者によるアクセルペダル12の操作による加速制御で車両1を加速させることができる。また、運転者は、通常の運転時にはブレーキペダル11の操作のみでブレーキ制御および加速制御のいずれも行うことが可能である。車両1の加速制御は、ブレーキペダル11が開放されることで、制御部30によって走行シーンに応じて自動で行われる。したがって、例えばペダル加速開始ボタン23aの押下がなされない限り、運転者の「踏む」操作は、車両1を減速させる操作にほぼ限定することができる。
【0063】
これにより、ブレーキペダルとアクセルペダルの踏み間違いをなくすとともに、運転支援、具体的には自動での加速制御をより適正に行うことが可能となる。加えて、通常の運転時にはブレーキペダル11とアクセルペダル12の踏み替え操作がなくなるため、運転者の運転負担の軽減を図ることも可能となる。また、ペダル加速制御時であっても、車両1の加速は、アクセルペダル12を踏むことで調整されるため、加速調整を手操作で行う必要はなく、高齢者などに対しても操作性を担保しやすい。
【0064】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。このような新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0065】
例えば、本実施形態では、ペダル加速開始ボタン23aが押されることで、アクセルペダル12の操作無効を解除させている(図4に示すS108,S110)。これに代えて、ペダル加速開始ボタン23aが押され、アクセルペダル12の操作無効を解除させる前に(図4に示すS108とS110の間で)、上述した操作制限条件の判定を行い、操作制限条件下でペダル加速開始ボタン23aの機能を制限してもよい。例えば、車速、シフトポジション、走行シーンの判定可否などを操作制限条件として判定し、その判定結果に応じてペダル加速開始ボタン23aの機能を制限させることが可能である。これにより、自動加速制御からペダル加速制御への切替を操作制限条件下に制限することができる。
【0066】
また、本実施形態では、アクセルペダル12の操作無効の解除条件として、ペダル加速開始ボタン23aが押されているか否かを判定している(図4に示すS108)。解除条件を判定する際、その前提条件として、ペダル加速開始ボタン23aの操作を無効とするか否かの条件(以下、操作無効条件という)を判定してもよい。操作無効条件は、走行状況情報および周辺状況情報に基づいて判定すればよい。例えば、運転者がアクセルペダル12を操作して加速制御することが困難な状況である場合には、操作無効条件を満たすものとして、ペダル加速開始ボタン23aの操作を無効としてもよい。かかる状況下では、ペダル加速制御を行うことで安全性を低下させるおそれがあり、これを回避するためにペダル加速開始ボタン23aの操作を無効とする。これにより、ペダル加速制御への切替を抑止して自動加速制御を行うことで、安全性の向上を図ることができる。このような状況としては、例えば車両1が未舗装道路を走行している場合、悪天候による視界不良時(カメラで撮像した進行方向前方の画像に何も映り込んでいない場合)などが挙げられる。
すなわち、操作無効条件を満たす場合、解除条件を判定することなく、自動加速制御を行えばよい。これに対し、操作無効条件を満たさない場合、解除条件を判定し、その判定結果に応じて以降の制御(処理)を行えばよい。
【0067】
また、本実施形態では、速度条件を満たす場合、一例として車速が速度閾値(時速25km)以下の低速状態である場合に、自動加速制御からペダル加速制御への切替を許容している。加速制御の切替をこのような低速状態に限ることで、例えば駐停車状態からの発進時のブレーキペダル11とアクセルペダル12の踏み間違いによる急発進の抑制を図ることができる。ただし、速度閾値は1つに限られず、複数であってもよい。かかる速度閾値(時速25km)を第1の速度閾値とし、例えば車速が第2の速度閾値以上の中速もしくは高速状態である場合にも、加速制御の切替を許容することは可能である。これにより、例えば側道から本線への合流時や駐停車両の追越時などに、車両1をスムーズに加速させることができる。
【符号の説明】
【0068】
1…車両、10…運転支援装置、11…ブレーキペダル、12…アクセルペダル、13…パワーユニット、14…通知ユニット、15…ステアリング、16…シフトレバー、20…検出部、30…制御部、21…車両情報検出部、22…車両周辺状況検出部、23…加速意思検出部、23a…ペダル加速開始ボタン、31…演算処理部、32…検出部制御部、33…走行シーン判定部、34…最適速度・加速度設定部、35…ペダル加速判定部、36…走行制御部、151…スポーク部、152…コラム部。
図1
図2
図3
図4