(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/01 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
B60C11/01 A
(21)【出願番号】P 2018146077
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】高野 宏和
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-149181(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102007047496(DE,A1)
【文献】特開2000-255207(JP,A)
【文献】米国特許第06530405(US,B1)
【文献】特開平11-291718(JP,A)
【文献】米国意匠特許発明第761722(US,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する空気入りタイヤであって、
前記トレッド部は、トレッド端を含むショルダー陸部を含み、
前記ショルダー陸部は、前記トレッド端からタイヤ軸方向内側に延びる複数のショルダー横溝と、前記ショルダー横溝で区分された複数のショルダーブロック要素と、前記ショルダー陸部のタイヤ軸方向の外面からタイヤ軸方向外側に隆起した凸部とを含み、
前記凸部は、前記複数のショルダーブロック要素それぞれに対応して設けられかつタイヤ半径方向に延びる第1凸部と、前記ショルダー横溝のタイヤ半径方向内方でタイヤ周方向に延びかつ少なくとも2つの前記第1凸部のタイヤ半径方向内側部を互いに連結する第2凸部とを含
み、
前記第1凸部は、一定のタイヤ周方向の幅でタイヤ半径方向にのびる等幅第1凸部と、タイヤ周方向の幅を変化させてタイヤ半径方向にのびる非等幅第1凸部とを含む、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記凸部は、二つの前記第1凸部と、これらを繋ぐ一つの前記第2凸部とから構成される正面視U字状である、請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ショルダー横溝は、そのタイヤ半径方向内方に、前記第2凸部が形成される第1ショルダー横溝と、そのタイヤ半径方向内方に、前記第2凸部が形成されていない第2ショルダー横溝とを含む、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1ショルダー横溝と前記第2ショルダー横溝とがタイヤ周方向に交互に配置されている、請求項3記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1凸部のタイヤ周方向の幅は、前記ショルダーブロック要素のタイヤ周方向長さよりも小さい、請求項1ないし4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1凸部のタイヤ周方向の幅は、前記ショルダーブロック要素のタイヤ周方向長さの20%~60%である、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記凸部の隆起高さは2.5~6.0mmである、請求項1ないし6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
タイヤ周方向に沿った断面視において、前記第1凸部の側面は、前記外面
の法線方向に対して45°以下の角度でテーパ状に隆起する、請求項1ないし7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ショルダー横溝は、そのタイヤ半径方向内方に、前記第2凸部が形成される第1ショルダー横溝と、そのタイヤ半径方向内方に、前記第2凸部が形成されていない第2ショルダー横溝とを含み、
前記第2凸部で互いに連結された前記第1凸部は、前記
第1ショルダー横溝側をタイヤ半径方向に延びる内縁を有し、
前記内縁は、タイヤ半径方向に対する角度が10°以下である、請求項1ないし8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記少なくとも2つの第1凸部及び前記第2凸部は、それぞれ、最もタイヤ半径方向内方に配された内向縁を有し、
前記各内向縁は、タイヤ周方向に沿って延びている、請求項1ないし9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記少なくとも2つの第1凸部の前記内向縁及び前記第2凸部の前記内向縁は、1本の円弧状の曲線を形成している、請求項10記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪上走行に適した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド踏面の幅方向端部から、サイドウォール部に到るまでの外表面領域に、溝によって多角形ブロックが区画形成された空気入りタイヤが提案されている。このような多角形ブロックが設けられた空気入りタイヤは、多方向のエッジ効果を発揮して雪上路面での雪上コーナリング性能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記空気入りタイヤでは、雪上での直進走行時のトラクションの向上については、さらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題に鑑み案出されたもので、雪上走行時のトラクションを高めることができる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有する空気入りタイヤであって、前記トレッド部は、トレッド端を含むショルダー陸部を含み、前記ショルダー陸部は、前記トレッド端からタイヤ軸方向内側に延びる複数のショルダー横溝と、前記ショルダー横溝で区分された複数のショルダーブロック要素と、前記ショルダー陸部のタイヤ軸方向の外面からタイヤ軸方向外側に隆起した凸部とを含み、前記凸部は、前記複数のショルダーブロック要素それぞれに対応して設けられかつタイヤ半径方向に延びる第1凸部と、前記ショルダー横溝のタイヤ半径方向内方でタイヤ周方向に延びかつ少なくとも2つの前記第1凸部のタイヤ半径方向内側部を互いに連結する第2凸部とを含むのが望ましい。
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記凸部が、二つの前記第1凸部と、これらを繋ぐ一つの前記第2凸部とから構成される正面視U字状であるのが望ましい。
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ショルダー横溝が、そのタイヤ半径方向内方に、前記第2凸部が形成される第1ショルダー横溝と、そのタイヤ半径方向内方に、前記第2凸部が形成されていない第2ショルダー横溝とを含む、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤである。
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記第1ショルダー横溝と前記第2ショルダー横溝とがタイヤ周方向に交互に配置されているのが望ましい。
【0010】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記第1凸部のタイヤ周方向の幅が、前記ショルダーブロック要素のタイヤ周方向長さよりも小さいのが望ましい。
【0011】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記第1凸部のタイヤ周方向の幅が、前記ショルダーブロック要素のタイヤ周方向長さの20%~60%であるのが望ましい。
【0012】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記凸部の隆起高さは2.5~6.0mmであるのが望ましい。
【0013】
本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ周方向に沿った断面視において、前記第1凸部の側面が、前記外面の法線方向又は法線方向に対して45°以下の角度でテーパ状に隆起するのが望ましい。
【0014】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記第2凸部で互いに連結された前記第1凸部が、前記ショルダー横溝側をタイヤ半径方向に延びる内縁を有し、前記内縁は、タイヤ半径方向に対する角度が10°以下であるのが望ましい。
【0015】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記第1凸部が、一定のタイヤ周方向の幅でタイヤ半径方向にのびる等幅第1凸部と、タイヤ周方向の幅を変化させてタイヤ半径方向にのびる非等幅第1凸部とを含むのが望ましい。
【0016】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記少なくとも2つの第1凸部及び前記第2凸部が、それぞれ、最もタイヤ半径方向内方に配された内向縁を有し、前記各内向縁は、タイヤ周方向に沿って延びているのが望ましい。
【0017】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記少なくとも2つの第1凸部の前記内向縁及び前記第2凸部の前記内向縁は、1本の円弧状の曲線を形成しているのが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の空気入りタイヤは、ショルダー陸部のタイヤ軸方向の外面からタイヤ軸方向外側に隆起した凸部を含んでいる。前記凸部は、タイヤ半径方向に延びる第1凸部と、少なくとも2つの前記第1凸部のタイヤ半径方向内側部を互いに連結する第2凸部とを含んでいる。このような空気入りタイヤは、雪上走行時、トレッド部が雪上路面に沈み込むため、第1凸部と第2凸部とが雪中へと進入する。この少なくとも2つの第1凸部とそれらを連結する第2凸部とが路面の雪を押し固める。この押し固められた雪の塊は、前記第1凸部でせん断されることで、タイヤは大きなトラクションを発生する。また、前記第2凸部は、ショルダー横溝のタイヤ半径方向内方でタイヤ周方向に延びている。これにより、ショルダー横溝が形成する雪柱と前記凸部で押し固められた雪塊とがタイヤ軸方向に連なって一塊の大きな雪柱を形成することができ、さらに大きなトラクションを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の空気入りタイヤの一実施形態を示す部分断面図である。
【
図5】他の実施形態のショルダー陸部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1の正規状態におけるタイヤ回転軸(図示省略)を含む右側半分のタイヤ子午線断面図である。本実施形態では、好ましい態様として、乗用車用タイヤが示される。但し、本発明は、ライトトラック用、重荷重用を含め、他のカテゴリーのタイヤ1にも適用しうる。
【0021】
前記「正規状態」は、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書では、特に言及されない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0022】
「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0023】
「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITSAT VARIOUSCOLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0024】
本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2と、トレッド部2の両端部からタイヤ半径方向内側に延びる一対のサイドウォール部3とを有している。タイヤ1は、例えば、トロイド状に延びるカーカス4と、カーカス4のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されるベルト層5とによって補強されている。
【0025】
トレッド部2は、本実施形態では、ショルダー陸部6を含んでいる。本実施形態のショルダー陸部6は、トレッド端Teを含み、トレッド端Teと隣接するショルダー主溝Gのタイヤ軸方向外側に形成されている。ショルダー陸部6は、本実施形態では、トレッド部2の両側に設けられている。ショルダー陸部6は、例えば、路面と接する踏面6aと、タイヤ軸方向の外面6sとを含んでいる。本実施形態の外面6sは、踏面6aに連なりトレッド端Teからタイヤ半径方向内側に延びている。
【0026】
前記「トレッド端Te」は、正規状態のタイヤ1に正規荷重を負荷してキャンバー角を0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向両外側の接地位置として定められる。
【0027】
前記「正規荷重」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"である。
【0028】
図2は、ショルダー陸部6の斜視図である。
図2に示されるように、ショルダー陸部6は、複数のショルダー横溝8と、ショルダー横溝8で区分された複数のショルダーブロック要素9と、ショルダー陸部6の外面6sからタイヤ軸方向外側に隆起した凸部10とを含んでいる。本実施形態では、両側のショルダー陸部6、6に、それぞれ複数のショルダー横溝8とショルダーブロック要素9と凸部10とが設けられている。
【0029】
本実施形態の凸部10は、タイヤ半径方向に延びる複数の第1凸部12と、少なくとも2つの第1凸部12のタイヤ半径方向内側部を互いに連結する第2凸部13とを含んでいる。タイヤ1は、雪上走行時、トレッド部2が雪上路面に沈み込む。このため、第1凸部12と第2凸部13とが雪中へと進入し、これら2つの第1凸部12とそれらを連結する第2凸部13とが路面の雪を押し固める。とりわけ、第2凸部13は、図中に符号Fで示されるように、雪に対して垂直方向の荷重を負荷するので、雪を強く押し固めることができる。この押し固められた雪塊は、タイヤ半径方向に延びる第1凸部12でせん断されるので、タイヤ1は大きなトラクッションを発生する。
【0030】
第1凸部12は、複数のショルダーブロック要素9それぞれに対応して設けられている。具体的には、第1凸部12は、各ショルダーブロック要素9に少なくとも1つ、本実施形態では1つ設けられている。これにより、本実施形態では、タイヤ全周に亘って、凸部10が設けられるので、効果的に雪上走行時のトラクッションを高めることができる。
【0031】
第2凸部13は、ショルダー横溝8のタイヤ半径方向内方でタイヤ周方向に延びている。これにより、ショルダー横溝8が形成する雪柱と凸部10で押し固められた雪塊とがタイヤ軸方向に連なって一塊の大きな雪柱を形成することができる。このため、さらに大きなトラクッションを発生させることができる。
【0032】
凸部10は、本実施形態では、二つの第1凸部12とこれらを繋ぐ一つの第2凸部13とから構成された正面視U字状である。このような凸部10は、タイヤ回転方向に依存することなく、いずれかの第1凸部12によって雪塊をせん断することができる。また、このような凸部10は、凸部10によるタイヤ1の質量の過度の増加を抑制して、ひいては、走行性能を高めうる。なお、凸部10は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、三つの第1凸部12とこれらを繋ぐ二つの第2凸部13とから構成される正面視横向きE字状のもの(図示省略)で構成されても良い。
【0033】
凸部10は、本実施形態では、外面6sから隆起する壁面15と、壁面15に囲まれてタイヤ軸方向外側を向く外向面16とを含んでいる。壁面15は、本実施形態では、タイヤ半径方向に延びる側面17と、タイヤ周方向に延びる周方向面18とを含んでいる。
【0034】
図3は、凸部10を正面から見た概略図である。
図3は、便宜上、タイヤ周方向に湾曲するトレッド端Teを直線状で表している。
図3に示されるように、第1凸部12の側面17は、第2凸部13と連結される第1側面19と、凸部10の最もタイヤ周方向外側に配された第2側面20とを含んでいる。第1凸部12の周方向面18は、トレッド端Te側の第1周方向面21と、第1周方向面21よりもタイヤ半径方向内側に配された第2周方向面22とを含んでいる。第2凸部13の周方向面18は、第2周方向面22、22間をつなぐ第3周方向面23と、第1側面間19、19を繋ぐ第4周方向面24とを含んでいる。
【0035】
第1周方向面21は、雪塊をスムーズにせん断するために、例えば、タイヤ周方向に沿って延びているのが望ましい。また、第4周方向面24は、雪塊を効果的に押し固めるために、例えば、タイヤ周方向に沿って延びているのが望ましい。第1周方向面21及び第4周方向面24は、本実施形態では、トレッド端Teに沿ってタイヤ周方向に延びている。
【0036】
第1凸部12は、本実施形態では、そのタイヤ周方向の幅W1が、ショルダーブロック要素9のタイヤ周方向長さL1よりも小さく形成されている。これにより、第1凸部12と第2凸部13とで形成される雪塊の体積を大きく確保できるので、大きなトラクッションを発生させることができる。また、凸部10による、タイヤ1の質量の過度の増加が抑制される。
【0037】
第1凸部12の幅W1が過度に小さくなると、第1凸部12の剛性が小さくなり、雪に対するせん断力が低下するおそれがある。このため、第1凸部12の幅W1は、ショルダーブロック要素9の長さL1の20%~60%であるのが望ましい。
【0038】
図2に示されるように、第1凸部12及び第2凸部13は、それぞれ、最もタイヤ半径方向内方に配された内向縁12e、13eを有している。これら各内向縁12e、13eは、タイヤ周方向に沿って延びている。このような内向縁12e、13eは、タイヤ1の質量の過度の増加を抑制する。本明細書では、内向縁12eは、外面6sと第2周方向面22との間のエッジであり、内向縁13eは、外面6sと第3周方向面23との間のエッジである。各内向縁12e、13eは、本実施形態では、トレッド端Teと平行に延びている。
【0039】
本実施形態では、凸部10を形成する2本の第1凸部12の内向縁12e、12eと、第2凸部13の内向縁13eとが1本の円弧状の曲線を形成している。これにより、上述の作用がより効果的に発揮される。なお、各内向縁12e、13eは、このような態様限定されるものではなく、例えば、これらがタイヤ半径方向に位置ずれする態様でも良い(図示省略)。
【0040】
図4は、
図2のA-A線断面図である。A-A線は、タイヤ周方向に沿っている。
図4に示されるように、凸部10は、その隆起高さhが2.5~6.0mmであるのが望ましい。凸部10の隆起高さhが2.5mm未満の場合、雪塊の体積が小さくなり、トラクッションが小さくなるおそれがある。隆起高さhが6.0mmを超える場合、タイヤ1の質量が大きくなり、ひいては、走行性能が悪化するおそれがある。
【0041】
第1側面19は、外面6sの法線方向n又は法線方向nに対して45°以下の角度α1でテーパ状に隆起するのが望ましい。これにより、第1凸部12と第2凸部13とで押し固められた雪塊をスムーズにせん断することができ、大きなトラクションを発生させることができる。なお、雪上走行時、タイヤ周方向に隣接する凸部10、10のタイヤ周方向に向き合う第2側面20、20間にも、雪が進入して雪塊が形成される。この雪塊をスムーズにせん断するために、第2側面20も、外面6sの法線方向nに対して45°以下の角度α2でテーパ状に隆起するのが望ましい。
【0042】
図3に示されるように、第2凸部13で互いに連結された第1凸部12は、ショルダー横溝8側をタイヤ半径方向に延びる内縁25を有している。内縁25は、タイヤ半径方向に対する角度θ1が10°以下であるのが望ましい。内縁25の角度θ1が10°を超える場合、第1凸部12と第2凸部13とで押し固められた雪塊へのせん断力が小さくなり、大きなトラクションを発生できなくなるおそれがある。内縁25は、第1側面19と外面6sとが接するエッジである。
【0043】
同様の観点より、第1凸部12のタイヤ半径方向に延びる外縁26は、タイヤ半径方向に対する角度θ2が10°以下であるのが望ましい。外縁26は、第2側面20と外面6sとが接するエッジである。
【0044】
凸部10のタイヤ半径方向長さLmは、タイヤ断面高さ(図示省略)の28%~35%が望ましい。また、前記長さLmは、両側のショルダー陸部6の凸部10で同じであるのが望ましい。これにより、両側のショルダー陸部6の凸部10に作用する荷重が均等化されるので、車両流れが抑制される。前記「タイヤ断面高さ」は、タイヤサイズ表示に示される「断面幅の呼び」と「偏平比の呼び/100」との積から計算される値が用いられる。
【0045】
第1側面19のタイヤ半径方向長さL2は、第2凸部13のタイヤ半径方向長さL3の0.5倍以上が望ましく、1.5倍以上がさらに望ましく、2.0倍以上が一層望ましい。また、第1側面19のタイヤ半径方向長さL2は、第2凸部13のタイヤ半径方向長さL3の5.0倍以下が望ましく、4.5倍以下がさらに望ましく、4.0倍以下が一層望ましい。これにより、第1凸部12と第2凸部13とで雪塊を効果的に押し固め、さらに、第1凸部12でその雪塊をスムーズにせん断することができる。
【0046】
タイヤ周方向に隣接する凸部10、10間のタイヤ周方向長さ(最短長さ)L5が小さい場合、例えば、その凸部10、10間に形成される雪塊の容積が小さくなり、大きなトラクションが発生できなくなるおそれがある。前記長さL5が大きい場合、例えば、第1凸部12の幅W1が小さくなり、雪塊に対するせん断力が小さくなるおそれがある。このため、前記長さL5は、第1凸部12の幅W1の70%以上が望ましく、80%以上がさらに望ましく、また、130%以下が望ましく、120%以下がさらに望ましい。
【0047】
凸部10は、本実施形態では、トレッド端Teよりもタイヤ半径方向内側に控えた位置に形成されている。これにより、例えば、アスファルト路面の走行時には、凸部10と路面との接触が防がれるので、凸部10の摩耗が抑えられる。凸部10のタイヤ半径方向の外端(第1周方向面21)10eとトレッド端Teとの間のタイヤ半径方向の距離Laは、例えば、5mm以下程度が望ましい。なお、凸部10は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、トレッド端Teからタイヤ半径方向内側に延びる態様でも構わない。
【0048】
本実施形態のショルダー横溝8は、トレッド端Teからタイヤ軸方向内側に延びている。ショルダー横溝8は、本実施形態では、そのタイヤ半径方向内方に、第2凸部13が形成される第1ショルダー横溝8Aと、そのタイヤ半径方向内方に、第2凸部13が形成されていない第2ショルダー横溝8Bとを含んでいる。このようなタイヤ1は、その質量の増加が抑制されるので、走行性能が高く維持される。
【0049】
ショルダー横溝8は、本実施形態では、第1ショルダー横溝8Aと第2ショルダー横溝8Bとがタイヤ周方向に交互に配置されて形成されている。これにより、上述の作用がより効果的に発揮される。
【0050】
図2に示されるように、ショルダー横溝8は、本実施形態では、ショルダー主溝Gに連なっている。このようなショルダー横溝8は、その溝内で大きな雪柱を形成できるので、雪上走行時のトラクッションを高めることができる。この場合、ショルダーブロック要素9は、ショルダーブロック9Aとして形成される。なお、ショルダー横溝8は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、ショルダー主溝Gに連なることなく、ショルダー陸部6内で終端する態様でも良い。
【0051】
ショルダー横溝8は、本実施形態では、タイヤ軸方向の両側に配される一対の第1横溝部8a、8aと、一対の第1横溝部8a、8aに挟まれ、かつ、第1横溝部8aよりもタイヤ軸方向に対して大きな角度で傾斜する第2横溝部8bとを含んでいる。このようなショルダー横溝8は、例えば、ショルダー主溝Gから伝わる気柱共鳴を第2横溝部8bの溝壁で打ち消すことができるので、ノイズ性能を高めることができる。なお、ショルダー横溝8は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、1本の直線状に延びる態様でも良い。
【0052】
図3に示されるように、ショルダー横溝8は、本実施形態では、その溝底8sが第1周方向面21よりもタイヤ半径方向内側に位置している。これにより、第1凸部12のせん断力が、第1凸部12及び第2凸部13で押し固められた雪塊の他、これに連なるショルダー横溝8による雪柱にも作用して、より効果的にこれらの雪塊をせん断することができる。
【0053】
ショルダー横溝8は、特に限定されるものではないが、その溝幅Wgは4.5~9.0mm程度が望ましく、その溝深さHgは7.5~9.5mm程度が望ましい。
【0054】
図5は、本発明の他の実施形態のタイヤ1のショルダー陸部6の展開図である。本実施形態のタイヤ1と同じ構成要素は、同じ符号が付されてその説明が省略される。
図5に示されるように、この実施形態では、凸部10は、その第1凸部12が、一定のタイヤ周方向の幅でタイヤ半径方向にのびる等幅第1凸部30と、タイヤ周方向の幅を変化させてタイヤ半径方向にのびる非等幅第1凸部31とを含んでいる。等幅第1凸部30は、凸部10のタイヤ周方向の一方側(図では右側)の第1凸部12を構成し、非等幅第1凸部31は、等幅第1凸部30とは逆側(図では左側)の第1凸部12を構成している。なお、等幅第1凸部30及び非等幅第1凸部31は、このような配置に限定されるものではない。
【0055】
等幅第1凸部30は、この実施形態では、タイヤ半径方向外側に向かって非等幅第1凸部31から遠ざかる向きに傾斜している。このような等幅第1凸部30は、第1凸部12と第2凸部13とで押し固められた雪塊の路面側への排出を容易にする。等幅第1凸部30の第1側面19及び第2側面20は、この実施形態では、タイヤ半径方向外側に向かって直線状に傾斜している。
【0056】
非等幅第1凸部31は、この実施形態では、タイヤ半径方向外側に向かってタイヤ周方向の幅W1が大きくなっている。このような非等幅第1凸部31は、路面に近いタイヤ半径方向外側の部分の剛性が大きくなり、せん断力が高められるので、第1凸部12と第2凸部13とで押し固められた雪塊を効果的にせん断して排出することができる。非等幅第1凸部31の第1側面19は、例えば、タイヤ半径方向に沿って直線状に延びている。また、非等幅第1凸部31の第2側面20は、例えば、タイヤ半径方向外側に向かって等幅第1凸部30と遠ざかる向きに傾斜してクランク状に延びている。非等幅第1凸部31の第2側面20は、この実施形態では、クランク部31aが第2凸部13の第4周方向面24よりもタイヤ半径方向外側に配されている。
【0057】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0058】
図1に示す基本構造をなし、
図2に示すショルダー陸部を有するタイヤが製造され、それらの雪上性能及びタイヤ質量が評価された。なお、共通仕様は以下のとおりである。また、表1の「A」は、ショルダー横溝が第1凸部とタイヤ周方向に同じ位置に形成され、第2凸部が形成されない態様であり、「B」は、
図2に示される態様である。さらに、表1に記載された仕様を除き、トレッド部及び凸部の形状は同一である。
タイヤサイズ:275/55R20
リム:20×9.0J
内圧:250kPa
テスト方法は、次のとおりである。
【0059】
<雪上性能>
各試供タイヤが、排気量3600ccの四輪駆動車の全輪に装着された。そして、テストドライバーが、上記車両を雪路面のテストコースを走行させ、このときのトラクションに関する走行特性が、テストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点で示されている。数値が大きいほどトラクションが大きく雪上性能に優れている。
車両速度:40~70Km/h
【0060】
<タイヤ質量>
各試供タイヤ1本当りの質量が測定された。結果は、比較例1の質量を100とする指数で示されている。数値が小さいほど質量が小さく、良好である。
テストの結果が表1に示される。
【0061】
【0062】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比して、雪上性能が向上していることが確認された。また、実施例のタイヤは、タイヤ質量の増加が抑制されている。
【符号の説明】
【0063】
1 空気入りタイヤ
6 ショルダー陸部
6s 外面
8 ショルダー横溝
9 ショルダーブロック要素
10 凸部
12 第1凸部
13 第2凸部
Te トレッド端