(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】建設機械用ワイパー装置
(51)【国際特許分類】
B60J 1/20 20060101AFI20220830BHJP
B60S 1/04 20060101ALI20220830BHJP
E02F 9/16 20060101ALI20220830BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B60J1/20 Z
B60S1/04 500
E02F9/16 E
B60Q1/04 A
(21)【出願番号】P 2018160516
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下井 卓三
(72)【発明者】
【氏名】大久保 秀樹
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03056414(EP,A2)
【文献】特開2007-331735(JP,A)
【文献】特開2003-325023(JP,A)
【文献】特開2016-140338(JP,A)
【文献】特開2001-279721(JP,A)
【文献】特開2018-053599(JP,A)
【文献】特開2004-114850(JP,A)
【文献】特開2003-170812(JP,A)
【文献】中国実用新案第203854787(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00-1/68
E02F 9/16
B60Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の運転室のフレームの上縁
に設けられ、
前記フレームに嵌め込まれたフロントガラスの上縁に沿って横方向に延びる取付面に固定されるブラケットと、
前記ブラケットに揺動自在に取り付けられ、前記運転室の前記フロントガラスの外面に付着した水滴を払拭可能なワイパー本体と、
を備え、
前記ブラケットの上縁には、前記運転室の前方に向かって延びる庇部が一体に設けられ、
前記庇部は、前記ブラケットの上縁から上方に向かって延びる起立部と、前記起立部の上縁から前方に向かって延びる庇本体部とを備えていることを特徴とする建設機械用ワイパー装置。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械用ワイパー装置であって、
前記ブラケットには左右一対の照明装置が設けられ、
前記建設機械は油圧ショベルであり、
前記油圧ショベルには、前記運転室の横に作業機が設けられ、
前記一対の照明装置のうち前記作業機側の照明装置及び前記庇部は、前記作業機との干渉を避けるべく前記作業機から遠ざかる方向にずれて配置されていることを特徴とする建設機械用ワイパー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械用ワイパー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械の運転室の外面に設けられたワイパー装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、運転室内への雨の侵入を防ぐべく運転室の外面上方に庇部材を設けた建設機械も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-170812号公報
【文献】特開2004-114850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設機械の運転室のフロントガラスには、運転室の天井に付着した雨水がフロントガラスに流れて前方が見え難くなることがある。運転室のフロントガラスの上方に庇部材を取り付けることにより、天井の雨水がフロントガラスに流れ込むことを防ぐこともできるが、運転室のフロントガラスの上部にワイパー装置を設けた場合、ワイパー装置と庇部材とがフロントガラスの上方に位置するために、フロントガラスの上方に部材が集中し、運転室からの上方視界が制限される虞がある。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、建設機械の運転室のフロントガラスの上方に設けられるワイパー装置であって、上方視界が制限されることを防止又は抑制して、且つ、運転室の天井の雨水がフロントガラスに流れ込むことを防止することができる建設機械用ワイパー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、
建設機械の運転室のフレームの上縁に設けられ、前記フレームに嵌め込まれたフロントガラスの上縁に沿って横方向に延びる取付面に固定されるブラケットと、
前記ブラケットに揺動自在に取り付けられ、前記運転室の前記フロントガラスの外面に付着した水滴を払拭可能なワイパー本体と、
を備え、
前記ブラケットの上縁には、前記運転室の前方に向かって延びる庇部が一体に設けられ、
前記庇部は、前記ブラケットの上縁から上方に向かって延びる起立部と、前記起立部の上縁から前方に向かって延びる庇本体部とを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、庇部がブラケットの上縁に一体に設けられているため、庇部付きのワイパー装置をコンパクトに構成することができる。従って、建設機械の運転室のフロントガラスの上方に設けられるワイパー装置であっても、上方視界が制限されることを防止又は抑制して、且つ、運転室の天井の雨水がフロントガラスに流れ込むことを防止することができる建設機械用ワイパー装置を提供することができる。
【0008】
また、庇部がブラケットの上縁から上方に向かって延びる起立部を備えているため、運転室の天井の上に溜まった雨水がフロントガラスに流れ込もうとしても起立部によって阻止され、運転室の良好な視界を維持することができる。
【0009】
[2]また、本発明においては、
前記ブラケットには左右一対の照明装置が設けられ、
前記建設機械は油圧ショベルであり、
前記油圧ショベルには、前記運転室の横に作業機が設けられ、
前記一対の照明装置のうち前記作業機側の照明装置及び前記庇部は、前記作業機との干渉を避けるべく前記作業機から遠ざかる方向にずれて配置されていることが好ましい。
【0010】
かかる構成によれば、照明装置を備えるワイパー装置が作業機と干渉することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のワイパー装置が取り付けられる建設機械の実施形態を示す説明図。
【
図2】本実施形態の運転室にワイパー装置が取り付けられた状態を示す斜視図。
【
図3】本実施形態のワイパー装置を分解して示す斜視図。
【
図4】本実施形態のワイパー装置を下方から示す斜視図。
【
図5】本実施形態の作業機と照明装置との干渉領域を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図を参照して、本発明の実施形態のワイパー装置を取り付けた建設機械を詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の建設機械1は、油圧ショベルであり、無限軌道2を有する走行体3と、走行体3の上に旋回自在に設けられた旋回体4と、を備える。
【0013】
旋回体4には、前方左側に設けられた運転室5と、運転室5の後方に隣接させて設けられた機械室6と、を備える。機械室6には、図示省略した電動機又は内燃機関などの動力源と当該動力源によって駆動されるオイルポンプとが設けられている。建設機械1は、このオイルポンプが出力する油圧を利用して油圧モータを駆動し、油圧モータから出力される動力を利用して走行体3の無限軌道2を駆動させる。動力源は、ディーゼルエンジンであってもよいし、ガソリンエンジンであってもよいし、内燃機関と電動機の両方を利用するものであってもよい。
【0014】
旋回体4の前方右側には、運転室5の横であって、機械室6の前方に位置させて作業機7の基端部が接続されている。
【0015】
作業機7は、基端が旋回体4に回動自在に連結されたブーム8と、ブーム8の先端に回動自在に基端部が連結されたアーム9と、アーム9の先端に回動自在に基端が連結されたバケット10とを備える。ブーム8の中間部分には、旋回体4から延びるブーム用油圧シリンダのロッド11aの先端が連結されており、ブーム用油圧シリンダのロッド11aを進退させることによって、ブーム8が回動する。アーム9の基端には、ブーム8から延びるアーム用油圧シリンダ12のロッド12aの先端が連結されており、アーム用油圧シリンダ12のロッド12aを進退させることによって、アーム9が回動する。バケット10の基端には、アーム9から延びるバケット用油圧シリンダ13のロッド13aの先端がリンク14を介して連結されており、バケット用油圧シリンダ13のロッド13aを進退させることによって、バケット10が回動する。
【0016】
運転室5には、操作者が作業機7の回動、旋回体4の旋回、走行体3の走行を操作するための操作部(図示省略)が設けられている。
【0017】
無限軌道2は、スプロケット21aを有し、油圧モータで駆動され、後端に位置する起動輪21と、前端に位置する遊動輪23と、転輪25と、起動輪21、遊動輪23、転輪25に巻き回された環状に連結されて構成された履板27とを備える。遊動輪23は、前後に移動可能に構成されて、環状に巻き回された履板27の張り具合を調整することができる。
【0018】
図2を参照して、運転室5は、立方体形状のフレーム51と、フレーム51の前面側に嵌め込まれたフロントガラス53と、フレーム51の両側面に夫々嵌め込まれた左右一対のサイドガラス55と、を備えている。フレーム51の前面上方には、矩形板状のフロントガラス53の上縁に沿うようにして、ワイパー装置61が設けられている。
【0019】
図3を参照して、ワイパー装置61は、フロントガラス53の外面に付着した雨水などの水滴を払拭できるように遥動するワイパー本体63と、リンクを介してワイパー本体63を揺動させる電動機65と、ワイパー本体63と電動機65とを支持すると共に、フレーム51の前面上方であってフロントガラス53の上縁に沿うように固定される金属製のブラケット67と、を備えている。ブラケット67は、フレーム1の上縁であって、フロントガラスの53上縁に沿って横方向に延びる取付面に固定されている。ブラケット67とフレーム1の上縁に位置する取付面との間には、弾性部材などからなるシール部材を設けて、液体が確実に漏れないように構成してもよい。庇部69は、ブラケット67の上縁から上方に向かって延びる起立部69aと、起立部69aの上縁から前方に向かって延びる庇本体部69bとを備えている。
【0020】
起立部69aは、運転室5の天窓57の前縁よりも高く起立しており、天窓57に付着した雨粒がフロントガラス53側に垂れることを阻止している。庇本体部69bは、電動機65を覆うカバー73の前縁よりも前方に張り出している。なお、庇本体部69bの先端縁は、カバー73の前縁よりも後方に位置していてもよいが、カバー73の前縁と同一かそれ以上の前方位置とすることにより、庇部69によって、ワイパー装置61を上方からの落石などの衝撃から保護し易くなる。
【0021】
図4を参照して、ブラケット67の上縁には、前方に向かって延びる庇部69が一体に設けられている。庇部69は、ブラケット67と一体に形成されており、ブラケット67と同一金属で形成されている。なお、本発明における「ブラケットに庇部が一体に設けられている」とは、本実施形態のように、ブラケットと庇部とが一体成形されているものに限らず、例えば、ブラケットと庇部とが溶接されていたり、ボルト固定されているものであってもよい。
【0022】
図5を参照して、ブラケット67には、ワイパー本体63の揺動支点としての基端部を左右から挟むように左右一対の照明装置71が設けられている。
図5の左側には作業機7が位置しており、作業機7のバケット10と照明装置71とが干渉しないように、作業機7側の照明装置71及び庇部69は、作業機7から離れる側に偏らせて(
図5では右側にずらされて)配置されている。これにより、作業機7のバケット10と干渉する虞のある干渉領域100の外に照明装置71及び庇部69を位置させることができ、作業機7と照明装置71との干渉を防止することができる。
【0023】
図3の分解図を参照して、ワイパー装置61は、電動機65及びワイパー本体63の揺動軸の基端部分を覆い隠し、照明装置71を露出させる開口を有するカバー73を備え、カバー73で、ワイパー装置61の外観の向上、及び電動機65の保護を図っている。なお、
図2、
図4、
図5では、説明の都合上、カバー73を省略している。
【0024】
本実施形態の建設機械用ワイパー装置61によれば、庇部69がブラケット67の上縁に一体に設けられているため、庇部69付きのワイパー装置61をコンパクトに構成することができる。従って、油圧ショベルからなる建設機械1の運転室5のフロントガラス53の上方に設けられるワイパー装置61であっても、上方視界が制限されることを防止又は抑制して、且つ、運転室5の天井の雨水がフロントガラス53に流れ込むことを庇部69で防止することができる。
【0025】
また、庇部69がブラケット67と一体に設けられているため、庇部69もブラケット67と同一の金属素材で構成される。従って、上方からの落下物に対してワイパー装置61の電動機65やワイパー本体63の遥動端部などを比較的強度の高い庇部69で保護することができる。
【0026】
また、庇部69がブラケット67の上縁から上方に向かって延びる起立部69aを備えているため、運転室5の天井の上に溜まった雨水がフロントガラス53に流れ込もうとしても起立部69aによって阻止され、運転室5の良好な視界を維持することができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、油圧ショベルの無限軌道2に適用したものを説明した。しかしながら、本発明のシール構造はこれに限らない。例えば、ブルドーザなどの他の建設機械や、トラクタ、コンバインなどの農業機械、雪上車、戦車、などに用いることもできる。これによっても、建設機械1の運転室5のフロントガラス53の上方に設けられるワイパー装置61であっても、上方視界が制限されることを防止又は抑制して、且つ、運転室5の天井の雨水がフロントガラス53に流れ込むことを庇部69で防止することができるという本発明の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 建設機械
2 無限軌道
3 走行体
4 旋回体
5 運転室
6 機械室
7 作業機
8 ブーム
9 アーム
10 バケット
11a ロッド
12 アーム用油圧シリンダ
12a ロッド
13 バケット用油圧シリンダ
13a ロッド
14 リンク
21 起動輪
21a スプロケット
23 遊動輪
25 転輪
27 履板
51 フレーム
53 フロントガラス
55 サイドガラス
57 天窓
61 ワイパー装置
63 ワイパー本体
65 電動機
67 ブラケット
69 庇部
69a 起立部
69b 庇本体部
71 照明装置
73 カバー
100 干渉領域