(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】給電制御装置
(51)【国際特許分類】
H02H 6/00 20060101AFI20220830BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H02H6/00 150
B60R16/02 645A
(21)【出願番号】P 2018161491
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】澤野 峻一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】中口 真之介
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-283977(JP,A)
【文献】特開2015-105924(JP,A)
【文献】特開2012-182909(JP,A)
【文献】特開2008-027826(JP,A)
【文献】特開2016-163403(JP,A)
【文献】特開2014-204575(JP,A)
【文献】特表2016-513444(JP,A)
【文献】国際公開第2007/099712(WO,A1)
【文献】特開2004-328886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 6/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の中途に配置されたスイッチをオン又はオフに切替える切替え部を備える給電制御装置であって、
前記スイッチのオン又はオフを示す制御信号を出力する出力部と、
前記スイッチをオンに切替えるか否かを判定するオン判定部と、
前記スイッチをオフに切替えるか否かを判定するオフ判定部と、
前記電線を流れる電流の電流値に基づいて、前記電線の電線温度を算出する温度算出部と
、
前記電流値に基づいて、前記電線温度を算出する第2の温度算出部と
を備え、
前記切替え部は、
前記温度算出部が算出した電線温度が温度閾値未満である場合、前記出力部が出力した制御信号が示す内容に従って前記スイッチをオン又はオフに切替え、
前記温度算出部が算出した電線温度が前記温度閾値以上となった場合、前記出力部が出力した制御信号が示す内容に無関係に前記スイッチをオフに切替え
、
前記出力部は、
前記第2の温度算出部が算出した電線温度が第2の温度閾値未満である場合、前記オン判定部又はオフ判定部の判定結果に応じた内容を示す制御信号を出力し、
前記第2の温度算出部が算出した電線温度が前記第2の温度閾値以上となった場合、前記判定結果に無関係に前記スイッチのオフを示す制御信号を出力し、
前記温度算出部及び第2の温度算出部夫々は、車両内の環境温度と前記電線温度との温度差を繰り返し算出し、
前記温度算出部及び第2の温度算出部夫々は、先行して算出した先行温度差と、前記電流値とに基づいて温度差を算出し、算出した温度差に前記環境温度を加算することによって前記電線温度を算出しており、
前記温度算出部及び第2の温度算出部が算出した2つの温度差が互いに異なっているか否かを判定する温度差判定部を更に備え、
前記温度差判定部によって、前記2つの温度差が互いに異なっていると判定された場合、前記温度算出部及び第2の温度算出部夫々は、前記2つの温度差の中で大きい方の温度差を前記先行温度差として用いる
給電制御装置。
【請求項2】
電線の中途に配置されたスイッチをオン又はオフに切替える切替え部を備える給電制御装置であって、
前記スイッチのオン又はオフを示す制御信号を出力する出力部と、
前記スイッチをオンに切替えるか否かを判定するオン判定部と、
前記スイッチをオフに切替えるか否かを判定するオフ判定部と、
前記電線を流れる電流の電流値に基づいて、前記電線の電線温度を算出する温度算出部と、
前記電流値に基づいて、前記電線温度を算出する第2の温度算出部と、
前記温度算出部及び第2の温度算出部が算出した2つの電線温度
の差分値
が所定値以上であるか否かを判定する温度判定部
と
を備え
、
前記切替え部は、
前記温度算出部が算出した電線温度が温度閾値未満である場合、前記出力部が出力した制御信号が示す内容に従って前記スイッチをオン又はオフに切替え、
前記温度算出部が算出した電線温度が前記温度閾値以上となった場合、前記出力部が出力した制御信号が示す内容に無関係に前記スイッチをオフに切替え、
前記出力部は、
前記第2の温度算出部が算出した電線温度が第2の温度閾値未満である場合、前記オン判定部又はオフ判定部の判定結果に応じた内容を示す制御信号を出力し、
前記第2の温度算出部が算出した電線温度が前記第2の温度閾値以上となった場合、前記判定結果に無関係に前記スイッチのオフを示す制御信号を出力する
給電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は給電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、電源から負荷への給電を制御する給電制御装置(例えば、特許文献1を参照)が搭載されている。特許文献1に記載の給電制御装置では、電源及び負荷間にスイッチが設けられている。スイッチをオン又はオフに切替えることによって、負荷への給電を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような従来の給電制御装置では、負荷に接続される電線の中途にスイッチが設けられている。スイッチがオンに切替わった場合、電流が電線を流れる。電線は抵抗成分を有しているので、電流が電線を流れた場合、電線温度が上昇する。電線温度が異常な温度となった場合、電線の特性が劣化する。このため、電線温度が異常な温度となる前にスイッチをオフに切替え、電線を異常な温度から保護する必要がある。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電線を異常な温度から保護することができる給電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る給電制御装置は、電線の中途に配置されたスイッチをオン又はオフに切替える切替え部を備える給電制御装置であって、前記スイッチのオン又はオフを示す制御信号を出力する出力部と、前記スイッチをオンに切替えるか否かを判定するオン判定部と、前記スイッチをオフに切替えるか否かを判定するオフ判定部と、前記電線を流れる電流の電流値に基づいて、前記電線の電線温度を算出する温度算出部と、前記電流値に基づいて、前記電線温度を算出する第2の温度算出部とを備え、前記切替え部は、前記温度算出部が算出した電線温度が温度閾値未満である場合、前記出力部が出力した制御信号が示す内容に従って前記スイッチをオン又はオフに切替え、前記温度算出部が算出した電線温度が前記温度閾値以上となった場合、前記出力部が出力した制御信号が示す内容に無関係に前記スイッチをオフに切替え、前記出力部は、前記第2の温度算出部が算出した電線温度が第2の温度閾値未満である場合、前記オン判定部又はオフ判定部の判定結果に応じた内容を示す制御信号を出力し、前記第2の温度算出部が算出した電線温度が前記第2の温度閾値以上となった場合、前記判定結果に無関係に前記スイッチのオフを示す制御信号を出力し、前記温度算出部及び第2の温度算出部夫々は、車両内の環境温度と前記電線温度との温度差を繰り返し算出し、前記温度算出部及び第2の温度算出部夫々は、先行して算出した先行温度差と、前記電流値とに基づいて温度差を算出し、算出した温度差に前記環境温度を加算することによって前記電線温度を算出しており、前記温度算出部及び第2の温度算出部が算出した2つの温度差が互いに異なっているか否かを判定する温度差判定部を更に備え、前記温度差判定部によって、前記2つの温度差が互いに異なっていると判定された場合、前記温度算出部及び第2の温度算出部夫々は、前記2つの温度差の中で大きい方の温度差を前記先行温度差として用いる。
本開示の一態様に係る給電制御装置は、電線の中途に配置されたスイッチをオン又はオフに切替える切替え部を備える給電制御装置であって、前記スイッチのオン又はオフを示す制御信号を出力する出力部と、前記スイッチをオンに切替えるか否かを判定するオン判定部と、前記スイッチをオフに切替えるか否かを判定するオフ判定部と、前記電線を流れる電流の電流値に基づいて、前記電線の電線温度を算出する温度算出部と、前記電流値に基づいて、前記電線温度を算出する第2の温度算出部と、前記温度算出部及び第2の温度算出部が算出した2つの電線温度の差分値が所定値以上であるか否かを判定する温度判定部とを備え、前記切替え部は、前記温度算出部が算出した電線温度が温度閾値未満である場合、前記出力部が出力した制御信号が示す内容に従って前記スイッチをオン又はオフに切替え、前記温度算出部が算出した電線温度が前記温度閾値以上となった場合、前記出力部が出力した制御信号が示す内容に無関係に前記スイッチをオフに切替え、前記出力部は、前記第2の温度算出部が算出した電線温度が第2の温度閾値未満である場合、前記オン判定部又はオフ判定部の判定結果に応じた内容を示す制御信号を出力し、前記第2の温度算出部が算出した電線温度が前記第2の温度閾値以上となった場合、前記判定結果に無関係に前記スイッチのオフを示す制御信号を出力する。
【発明の効果】
【0007】
上記の態様によれば、電線を異常な温度から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1における電源システムの要部構成を示すブロック図である。
【
図4】マイコンの要部構成を示すブロック図である。
【
図6】給電制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】電線保護処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態2における制御機の要部構成を示すブロック図である。
【
図10】電線保護処理の手順を示すフローチャートである。
【
図11】電線保護処理の手順を示すフローチャートである。
【
図12】実施形態3における電線保護処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0010】
(1)本開示の一態様に係る給電制御装置は、電線の中途に配置されたスイッチをオン又はオフに切替える切替え部を備える給電制御装置であって、前記スイッチのオン又はオフを示す制御信号を出力する出力部と、前記電線を流れる電流の電流値に基づいて、前記電線の電線温度を算出する温度算出部とを備え、前記切替え部は、前記温度算出部が算出した電線温度が温度閾値未満である場合、前記出力部が出力した制御信号が示す内容に従って前記スイッチをオン又はオフに切替え、前記温度算出部が算出した電線温度が前記温度閾値以上となった場合、前記出力部が出力した制御信号が示す内容に無関係に前記スイッチをオフに切替える。
【0011】
上記の一態様にあっては、電線を流れる電流の電流値に基づいて算出した電線温度が温度閾値以上となった場合、制御信号に無関係にスイッチをオフに切替える。このため、電線温度が温度閾値を超えることはなく、電線は異常な温度から保護される。
【0012】
(2)本開示の一態様に係る給電制御装置は、前記スイッチをオンに切替えるか否かを判定するオン判定部と、前記スイッチをオフに切替えるか否かを判定するオフ判定部と、前記電流値に基づいて、前記電線温度を算出する第2の温度算出部とを備え、前記出力部は、前記第2の温度算出部が算出した電線温度が第2の温度閾値未満である場合、前記オン判定部又はオフ判定部の判定結果に応じた内容を示す制御信号を出力し、前記第2の温度算出部が算出した電線温度が前記第2の温度閾値以上となった場合、前記判定結果に無関係に前記スイッチのオフを示す制御信号を出力する。
【0013】
上記の一態様にあっては、電線を流れる電流の電流値に基づいて算出した電線温度が第2の温度閾値以上となった場合、スイッチのオフを示す制御信号を出力する。故障が発生したために、電線温度が温度閾値以上となったにも関わらず、制御信号に従ってスイッチをオン又はオフに切替える構成が維持されたと仮定する。この場合であっても、電線温度が第2の温度閾値以上となった場合、スイッチのオフを示す制御信号が出力される。
【0014】
また、故障が発生したために、制御信号が示す内容がスイッチのオンに固定されたと仮定する。この場合であっても、電線温度が温度閾値以上となった場合、制御信号に無関係にスイッチをオフに切替える。
以上のことから、故障が発生した場合であっても、電線は異常な温度から保護される。
【0015】
(3)本開示の一態様に係る給電制御装置では、前記温度算出部及び第2の温度算出部夫々は、車両内の環境温度と前記電線温度との温度差を繰り返し算出し、前記温度算出部及び第2の温度算出部夫々は、先行して算出した先行温度差と、前記電流値とに基づいて温度差を算出し、算出した温度差に前記環境温度を加算することによって前記電線温度を算出する。
【0016】
上記の一態様にあっては、電線温度に係る2つの算出では、先行して算出した先行温度差と、電線を流れる電流の電流値とに基づいて、電線温度と車両内の環境温度との温度差を算出する。算出した温度差に環境温度を加算することによって電線温度を算出する。
【0017】
(4)本開示の一態様に係る給電制御装置は、前記温度算出部及び第2の温度算出部が算出した2つの温度差が互いに異なっているか否かを判定する温度差判定部を備え、前記温度差判定部によって、前記2つの温度差が互いに異なっていると判定された場合、前記温度算出部及び第2の温度算出部夫々は、前記2つの温度差の中で大きい方の温度差を前記先行温度差として用いる。
【0018】
上記の一態様にあっては、電線温度に係る2つの算出において、算出した2つの温度差が互いに異なっている場合、先行温度差を、2つの温度差の中で大きい方の温度差に統一する。このため、算出される2つの温度差のずれが小さい。更に、先行温度差を大きい方の温度差に統一するので、算出した電線温度が実際の電線温度未満となる可能性は低い。
【0019】
(5)本開示の一態様に係る給電制御装置は、前記温度算出部及び第2の温度算出部が算出した2つの電線温度の差分値が所定値以上であるか否かを判定する温度判定部を備える。
【0020】
上記の一態様にあっては、算出した2つの電線温度である差分値が所定値以上であるか否かを判定することによって、電線温度の算出に異常が発生しているか否かを判定する。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る電源システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
(実施形態1)
図1は、実施形態1における電源システム1の要部構成を示すブロック図である。電源システム1は車両Cに搭載されている。電源システム1は、給電制御装置10、バッテリ11及び複数の負荷12,12,・・・を備える。給電制御装置10には、バッテリ11の正極が接続されている。バッテリ11の負極は接地されている。給電制御装置10には、複数の電線W,W,・・・の両端が接続されている。各電線Wの中途に負荷12が配置されている。給電制御装置10は、バッテリ11から複数の負荷12,12,・・・への給電を各別に制御する。負荷12は、車両Cに搭載される電気機器である。
【0023】
給電制御装置10は、メインボックス20、複数のサブボックス21,21,・・・及び通信バス22を有する。メインボックス20には、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)30が収容されている。複数のサブボックス21,21,・・・の構成は同様である。サブボックス21には、通信回路40及び複数の制御機41,41,・・・が収容されている。
【0024】
メインボックス20及び複数のサブボックス21,21,・・・は、通信バス22に接続されている。具体的には、メインボックス20のマイコン30と、各サブボックス21の通信回路40とが通信バス22に接続されている。
【0025】
サブボックス21内では、通信回路40に、複数の制御機41,41,・・・が接続されている。複数の電線W,W,・・・の一端がバッテリ11の正極に接続され、複数の電線W,W,・・・の他端は接地されている。各電線Wの中途に制御機41が配置されている。従って、各電線Wには、負荷12及び制御機41が配置されている。給電制御装置10に接続されている複数の負荷12,12,・・・は車両Cの種々の場所に配置されている。複数のサブボックス21,21,・・・も、複数の負荷12,12,・・・の配置場所に応じて、車両Cの種々の場所に配置されている。
【0026】
バッテリ11は、制御機41を介して負荷12に電力を供給する。制御機41は、後述するように、バッテリ11及び負荷12の間に接続されるスイッチ50(
図2参照)を有する。各サブボックス21内では、通信回路40は、複数の制御機41,41,・・・夫々に、スイッチ50のオン又はオフを示す制御信号を出力する。制御機41は、通信回路40から入力された制御信号が示す内容に従って、スイッチ50をオン又はオフに切替える。
【0027】
スイッチ50がオンに切替わった場合、バッテリ11から負荷12への給電が開始される。スイッチ50がオフに切替わった場合、バッテリ11から負荷12への給電が終了する。
【0028】
マイコン30は、通信バス22を介して、給電の開始を指示する給電開始信号と、給電の終了を指示する給電終了信号とを、複数のサブボックス21,21,・・・に収容されている複数の通信回路40,40,・・・に送信する。
【0029】
給電制御装置10に接続される複数の負荷12,12,・・・夫々には、負荷ID(Identification Data)が割り当てられている。給電開始信号及び給電終了信号夫々は、負荷IDを含む。給電開始信号及び給電終了信号夫々は、自身に含まれている負荷IDに対応する負荷12の給電の開始及び停止を指示する信号である。
【0030】
通信バス22を介した通信は、CAN(Controller Area Network)又はイーサネット(登録商標)等のプロトコルに従った通信である。各通信回路40は、自身が収容されているサブボックス21に接続されている複数の負荷12,12,・・・に対応する。各サブボックス21の通信回路40には、自身に対応する複数の負荷12,12,・・・夫々の負荷IDが記憶されている。
【0031】
通信回路40は、給電開始信号を受信した場合、給電開始信号に含まれている負荷IDに対応する負荷12に接続されている制御機41に、スイッチ50のオンを示す制御信号に出力する。これにより、制御機41はスイッチ50をオンに切替え、給電開始信号に含まれている負荷IDに対応する負荷12への給電が開始される。
【0032】
同様に、通信回路40は、給電終了信号を受信した場合、通信回路40は、給電終了信号に含まれている負荷IDに対応する負荷12に接続されている制御機41に、スイッチ50のオフを示す制御信号に出力する。これにより、制御機41はスイッチ50をオフに切替え、給電終了信号に含まれている負荷IDに対応する負荷12への給電が終了する。通信回路40は出力部として機能する。
【0033】
制御機41は、自身が配置されている電線Wを流れる電流の電流値に基づいて、電線Wの電線温度を繰り返し算出する。以下では、電線Wを流れる電流の電流値を電線電流値と記載する。制御機41は、算出した電線温度が第1温度閾値以上となった場合、通信回路40から入力される制御信号が示す電圧に無関係にスイッチ50をオフに切替え、電線Wを介した給電を強制的に終了する。第1温度閾値は、一定値であり、予め設定されている。
【0034】
通信回路40には、複数の制御機41,41,・・・夫々から、電線Wの電線電流値を示す電流情報と、車両C内の環境温度を示す温度情報とが入力される。通信回路40は、入力された電流情報及び温度情報を含む情報信号をマイコン30に送信する。マイコン30は、通信回路40から受信した情報信号に含まれる電流情報及び温度情報夫々が示す電線電流値及び環境温度に基づいて、電線Wの電線温度を算出する。マイコン30は、算出した電線温度が第2温度閾値以上となった場合、給電終了信号を送信し、電線温度が第2温度閾値以上となった負荷12への給電を終了させる。第2温度閾値は、一定値であり、予め設定されている。第1温度閾値及び第2温度閾値は一致していることが好ましい。
【0035】
図2は制御機41の要部構成を示すブロック図である。給電制御装置10に含まれる複数の制御機41,41,・・・の構成は同様である。制御機41は、スイッチ50の他に、電流出力部51、駆動部52、AND回路53、抵抗54、温度算出回路55及び温度センサ56を有する。スイッチ50は、Nチャネル型のFET(Field Effect Transistor)である。AND回路53は、2つの入力端と、1つの出力端とを有する。
【0036】
スイッチ50及び電流出力部51夫々は電線Wの中途に配置されている。電流出力部51は、スイッチ50及び負荷12の間に配置されている。スイッチ50のドレインは、バッテリ11の正極に接続されている。スイッチ50のソースは電流出力部51に接続されている。スイッチ50のゲートは駆動部52に接続されている。駆動部52は、更に、AND回路53の出力端に接続されている。
【0037】
電流出力部51は、更に、抵抗54の一端に接続されている。抵抗54の他端は接地されている。電流出力部51及び抵抗54間の接続ノードは、通信回路40と、温度算出回路55とに接続されている。温度センサ56の出力端も、通信回路40と、温度算出回路55とに接続されている。通信回路40及び温度算出回路55夫々は、AND回路53の2つの入力端に接続されている。
【0038】
通信回路40は、AND回路53の一方の入力端に制御信号を出力する。制御信号は、ハイレベル電圧及びローレベル電圧によって構成される。制御信号に関して、ハイレベル電圧はスイッチ50のオンに対応し、ローレベル電圧はスイッチ50のオフに対応する。温度算出回路55は、ハイレベル電圧及びローレベル電圧をAND回路53の他方の入力端に出力する。
【0039】
温度算出回路55がハイレベル電圧を出力している場合、AND回路53は、通信回路40から入力された制御信号が示す電圧を駆動部52に出力する。従って、制御信号がハイレベル電圧、即ち、スイッチ50のオンを示す場合、AND回路53はハイレベル電圧を駆動部52に出力する。制御信号がローレベル電圧、即ち、スイッチ50のオフを示す場合、AND回路53はローレベル電圧を駆動部52に出力する。
【0040】
温度算出回路55がローレベル電圧を出力した場合、AND回路53は、制御信号が示す電圧に無関係にローレベル電圧を駆動部52に出力する。
【0041】
スイッチ50について、ソースの電位を基準としたゲートの電圧が一定電圧以上となった場合、ドレイン及びソースを介して電流が流れることが可能となる。結果、スイッチ50はオンに切替わる。スイッチ50について、ソースの電位を基準としたゲートの電圧が一定電圧未満となった場合、ドレイン及びソースを介して電流が流れることはない。結果、スイッチ50はオフに切替わる。
【0042】
駆動部52は、AND回路53が出力している電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わった場合、接地電位を基準としたスイッチ50のゲートの電圧を上昇させる。これにより、スイッチ50において、ソースの電位を基準としたゲートの電圧が一定電圧以上となり、スイッチ50はオンに切替わる。スイッチ50がオンに切替わった場合、バッテリ11の正極から、電流がスイッチ50、電流出力部51及び負荷12の順に流れ、バッテリ11から負荷12への給電が開始される。
【0043】
駆動部52は、AND回路53が出力している電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わった場合、接地電位を基準としたスイッチ50のゲートの電圧を低下させる。これにより、スイッチ50において、ソースの電位を基準としたゲートの電圧が一定電圧未満となり、スイッチ50はオフに切替わる。スイッチ50がオフに切替わった場合、前述したように、バッテリ11から負荷12への給電が終了する。駆動部52は切替え部として機能する。
【0044】
電流出力部51は、電流値が電線電流値の所定数分の1である電流を抵抗54に出力する。電流出力部51は例えばカレントミラー回路を用いて構成される。所定数は例えば4000である。抵抗54の両端間の電圧値(以下、両端電圧値という)がアナログの電流情報として通信回路40及び温度算出回路55に入力される。通信回路40及び温度算出回路55夫々では、入力されたアナログの電流情報は、デジタルの電流情報に変換される。
【0045】
電線電流値、所定数、抵抗54の抵抗値、及び、抵抗54の両端電圧値夫々を、Iw、N、R及びVhと記載する。この場合、以下の式が成り立つ。
Vh=Iw・R/N
ここで、「・」は積を表す。
【0046】
従って、電線電流値Iwは、(N・Vh/R)で表される。抵抗値Rは定数である。このため、両端電圧値Vhを用いて電線電流値Iwを算出することができ、両端電圧値Vhは、電線電流値Iwを示す電流情報である。
【0047】
温度センサ56は、例えば、サーミスタを用いて構成され、車両C内の環境温度を検出する。車両C内の環境温度は、例えば、電線Wの周囲温度である。温度センサ56は、検出した環境温度を示すアナログの温度情報を通信回路40及び温度算出回路55に出力する。温度情報は、例えば、車両C内の環境温度に応じて変動する電圧値である。通信回路40及び温度算出回路55夫々では、温度センサ56から入力されたアナログの温度情報は、デジタルの温度情報に変換される。
【0048】
通信回路40及び温度算出回路55夫々は、デジタルの電流情報及び温度情報を周期的に取得する。通信回路40は、電流情報及び温度情報を取得する都度、電流情報及び温度情報を含む情報信号をマイコン30に送信する。
【0049】
温度算出回路55は、CPU(Central Processing Unit)等の処理素子を有さず、AND回路、OR回路又はフリップフロップ回路等の複数の回路素子を有する。温度算出回路55はハードウェアによって構成されている。温度算出回路55は、電流情報及び温度情報を取得する都度、取得した電流情報及び温度情報夫々が示す電線電流値及び環境温度に基づいて、環境温度と電線温度との温度差を算出する。温度算出回路55は、車両C内の環境温度に、算出した温度差を加算することによって電線温度を算出する。温度算出回路55は温度算出部として機能する。
【0050】
算出対象である温度差、先行して算出した先行温度差、及び、車両C内の環境温度夫々を、ΔTw、ΔTp及びTaと記載する。温度算出回路55は、前回算出した先行温度差ΔTpと、電線電流値Iwと、環境温度Taとを以下に示す[1]式及び[2]式に代入することによって、温度差ΔTwを算出する。
ΔTw=ΔTp・exp(-Δt/τr)+Rth・Rw
・Iw2 ・(1-exp(-Δt/τr))・・・[1]
Rw=Ro×(1+κ・(Ta+ΔTp-To))・・・[2]
【0051】
[1]式及び[2]式で用いられている変数及び定数を説明する。変数及び定数の説明では、変数又は定数の単位も併せて示している。ΔTw、ΔTp、Ta及びIw夫々は、前述したように、算出対象の温度差(℃)、先行温度差(℃)、車両C内の環境温度(℃)、電線電流値(A)である。Rwは電線Wの電線抵抗値(Ω)である。Rthは電線Wの電線熱抵抗値(℃/W)である。Δtは、温度算出回路55が電流情報及び温度情報を取得する周期(s)である。τrは電線Wの電線放熱時定数(s)である。Toは所定の温度(℃)である。Roは温度Toにおける電線抵抗(Ω)である。κは電線Wの電線抵抗温度係数(/℃)である。
【0052】
温度差ΔTw、先行温度差ΔTp、電線電流値Iw及び環境温度Taは変数であり、周期Δt、電線放熱時定数τr、電線熱抵抗Rth、電線抵抗Ro、電線抵抗温度係数κ及び温度Toは、予め設定されている定数である。
【0053】
[1]式の第1項の値は、周期Δtが長い程、低下するので、[1]式の第1項は電線Wの放熱を表す。また、[1]式の第2項の値は、周期Δtが長い程、上昇するので、[1]式の第2項は電線Wの発熱を表す。第2項の値は、電線電流値Iwが大きい程、大きい。
【0054】
温度算出回路55は、算出した温度差ΔTwに、温度センサ56が検出した環境温度Taを加算することによって、電線Wの電線温度を算出する。温度算出回路55への給電が開始された後において、温度算出回路55が最初に実行する温度差ΔTwの算出では、電線温度は環境温度Taと一致しているとして、ΔTpをゼロとみなす。温度算出回路55への給電は、例えば、車両Cのイグニッションスイッチがオンに切替わった場合に開始される。
【0055】
温度算出回路55は、算出した電線温度が第1温度閾値未満である場合、ハイレベル電圧をAND回路53に出力する。第1温度閾値は、一定値であり、予め設定されている。温度算出回路55は、算出した電線温度が第1温度閾値以上となった場合、ローレベル電圧をAND回路53に出力する。その後、温度算出回路55は、算出した電線温度に無関係にローレベル電圧をAND回路53に出力し続ける。
【0056】
図3は制御機41の動作の説明図である。
図3では、AND回路53の出力電圧、制御信号が示す電圧、温度算出回路55の出力電圧、及び、温度算出回路55が算出した電線温度の推移が示されている。これらの推移において、横軸には時間が示されている。
図3では、ハイレベル電圧及びローレベル電圧夫々を「H」及び「L」で示している。第1温度閾値をT1と記載する。
【0057】
温度算出回路55は、算出した電線温度が第1温度閾値T1未満である場合、AND回路53にハイレベル電圧を出力する。この場合、AND回路53は、制御信号が示す電圧を出力する。従って、温度算出回路55がハイレベル電圧を出力している間、AND回路53の出力電圧は、制御信号が示す電圧と一致している。従って、温度算出回路55がハイレベル電圧を出力している場合、駆動部52は、制御信号が示す電圧に従って、スイッチ50をオン又はオフに切替える。
【0058】
種々の原因によって、制御信号が示す電圧がハイレベル電圧に固定したと仮定する。この場合においては、温度算出回路55が算出した電線温度が第1温度閾値T1未満である限り、駆動部52はスイッチ50をオンに維持している。制御信号が示す電圧がハイレベル電圧に固定している状態で温度算出回路55が算出した電線温度が第1温度閾値T1以上となった場合、温度算出回路55は、AND回路53に出力している電圧をハイレベル電圧からローレベル電圧に切替える。
【0059】
これにより、AND回路53が出力している電圧は、制御信号が示す電圧に無関係にハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わり、駆動部52はスイッチ50をオンからオフに切替える。前述したように、温度算出回路55は、算出した電線温度が第1温度閾値T1以上となった後においては、算出した電線温度に無関係にローレベル電圧を出力し続ける。このため、駆動部52はスイッチ50をオフに維持する。スイッチ50がオフである場合、電線Wに電流が流れないため、電線温度は、時間の経過とともに低下する。
【0060】
前述したように、マイコン30も電線温度を算出する。後述するように、マイコン30が算出した電線温度が第2温度閾値以上となった場合、制御信号が示す電圧は、ローレベル電圧に切替わる。このため、制御信号が示す電圧がハイレベル電圧に固定されなかった場合、温度算出回路55の出力電圧がローレベル電圧に切替わるタイミングと略同じタイミングで制御信号が示す電圧もローレベル電圧に切替わる。
【0061】
以上のように、温度算出回路55が算出した電線温度が第1温度閾値T1以上となった場合、駆動部52は、制御信号に無関係に、スイッチ50をオフに切替える。このため、電線温度が第1温度閾値を超えることはなく、電線Wは異常な温度から保護される。
【0062】
図4は、マイコン30の要部構成を示すブロック図である。マイコン30は、通信部60、記憶部61及び制御部62を有する。これらは、内部バス63に接続されている。通信部60は、内部バス63の他に、通信バス22に接続されている。
【0063】
通信部60は、制御部62の指示に従って、給電開始信号及び給電終了信号を、複数の通信回路40,40,・・・に送信する。通信部60は、複数の通信回路40,40,・・・夫々から情報信号を受信する。通信部60が受信した情報信号が示す電流情報及び温度情報は、制御部62によって取得される。
【0064】
記憶部61は不揮発メモリである。記憶部61には、コンピュータプログラム70及び電線温度テーブル71が記憶されている。制御部62は、処理を実行する処理素子を有する。処理素子は、例えば、CPUである。制御部62が有する処理素子(コンピュータ)は、コンピュータプログラム70を実行することによって、負荷12の給電を制御する給電制御処理と、電線Wを異常な温度から保護する電線保護処理とを実行する。なお、制御部62が有する処理素子の数は2以上であってもよい。この場合、複数の処理素子が給電制御処理及び電線保護処理夫々を協同で実行してもよい。
【0065】
制御部62の処理素子は、給電制御装置10に接続されている複数の負荷12,12・・・夫々について給電制御処理を実行する。更に、制御部62の処理素子は、給電制御装置10に接続されている複数の負荷12,12・・・が配置されている複数の電線W,W,・・・夫々について電線保護処理を実行する。コンピュータプログラム70は、制御部62の処理素子に給電制御処理及び電線保護処理を実行させるために用いられる。
【0066】
なお、コンピュータプログラム70は、制御部62の処理素子が読み取り可能に、記憶媒体Aに記憶されていてもよい。この場合、図示しない読み出し装置によって記憶媒体Aから読み出されたコンピュータプログラム70が記憶部61に記憶される。記憶媒体Aは、光ディスク、フレキシブルディスク、磁気ディスク、磁気光ディスク又は半導体メモリ等である。光ディスクは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、又は、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)等である。磁気ディスクは、例えばハードディスクである。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部装置からコンピュータプログラム70をダウンロードし、ダウンロードしたコンピュータプログラム70を記憶部61に記憶してもよい。
【0067】
図5は、電線温度テーブル71を示す図表である。電線温度テーブル71は、負荷IDフィールド、先行温度差フィールド及び電線温度フィールドを含む。負荷IDフィールドには、複数の負荷IDが記憶されている。負荷IDフィールドでは、負荷IDとして、「E01」、「E02」及び「E03」等が記憶されている。
【0068】
先行温度差フィールドには、負荷IDフィールドに記憶されている複数の負荷ID夫々に対応する複数の電線W,W,・・・の先行温度差が記憶されている。負荷IDに対応する電線Wは、負荷IDに対応する負荷12が配置されている電線Wである。電線温度フィールドには、負荷IDフィールドに記憶されている複数の負荷ID夫々に対応する複数の電線W,W,・・・の電線温度が記憶されている。
【0069】
フラグフィールドには、負荷IDフィールドに記憶されている複数の負荷ID夫々に対応するフラグの値が記憶されている。フラグの値は、ゼロ又は1である。フラグの値がゼロであることは、電線温度が第2温度閾値未満であることを意味する。フラグの値が1であることは、電線温度が第2温度閾値以上となったことを意味する。各負荷IDの先行温度差、電線温度及びフラグの値は、制御部62によって更新される。
【0070】
図6は、給電制御処理の手順を示すフローチャートである。ここでは、負荷IDが「E01」である負荷12の給電制御処理を説明する。他の負荷IDに対応する負荷12の給電制御処理は、負荷IDが「E01」である負荷12の給電制御処理と同様に実行される。
【0071】
制御部62は給電制御処理を周期的に実行する。まず、制御部62は、電線温度テーブル71に基づいて、負荷ID、即ち、「E01」に対応するフラグの値がゼロであるか否かを判定する(ステップS1)。制御部62は、フラグの値がゼロであると判定した場合(S1:YES)、「E01」に対応する負荷12の給電を開始するか否かを判定する(ステップS2)。
【0072】
ステップS2では、制御部62は、例えば、「E01」に対応する負荷12の給電開始を指示する給電開始指示が図示しない入力部に入力された場合、給電を開始すると判定する。この場合、制御部62は、「E01」に対応する負荷12の給電開始指示が入力部に入力されていない場合、給電を開始しないと判定する。
前述したように、負荷12に接続されるスイッチ50をオンに切替えることによって負荷12への給電が開始される。従って、ステップS2の判定は、スイッチ50をオンに切替えるか否かの判定に相当する。制御部62はオン判定部として機能する。
【0073】
制御部62は、給電を開始すると判定した場合(S2:YES)、通信部60に指示して、負荷IDが「E01」である給電開始信号を、「E01」に対応する負荷12が接続されているサブボックス21の通信回路40に送信させる(ステップS3)。これにより、通信回路40は、「E01」に対応する負荷12への給電を制御する制御機41のAND回路53に、スイッチ50のオン、即ち、ハイレベル電圧を示す制御信号を出力する。ここで、温度算出回路55が算出した電線温度が第1温度閾値未満である場合、駆動部52はスイッチ50をオンに切替える。これにより、「E01」に対応する負荷12への給電が開始される。
【0074】
制御部62は、給電を開始しないと判定した場合(S2:NO)、「E01」に対応する負荷12の給電を終了するか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4では、制御部62は、例えば、「E01」に対応する負荷12の給電終了を指示する給電終了指示が図示しない入力部に入力された場合、給電を終了すると判定する。この場合、制御部62は、「E01」に対応する負荷12の給電終了指示が入力部に入力されていない場合、給電を終了しないと判定する。
前述したように、負荷12に接続されるスイッチ50をオフに切替えることによって負荷12への給電が終了される。従って、ステップS4の判定は、スイッチ50をオフに切替えるか否かの判定に相当する。制御部62はオフ判定部としても機能する。
【0075】
制御部62は、給電を終了すると判定した場合(S4:YES)、通信部60に指示して、負荷IDが「E01」である給電終了信号を、「E01」に対応する負荷12が接続されている通信回路40に送信させる(ステップS5)。これにより、通信回路40は、「E01」に対応する負荷12への給電を制御する制御機41のAND回路53に、スイッチ50のオフ、即ち、ローレベル電圧を示す制御信号を出力する。これにより、駆動部52はスイッチ50をオフに切替え、「E01」に対応する負荷12への給電が終了する。
【0076】
制御部62は、フラグの値がゼロではないと判定した場合(S1:NO)、給電を終了しないと判定した場合(S4:NO)、又は、ステップS3,S5の一方を実行した後、給電制御処理を終了する。
【0077】
給電制御処理では、フラグの値がゼロである場合、「E01」に対応する負荷12への給電を制御する。後述するように、フラグの値は、スイッチ50がオフである状態で1に設定される。このため、フラグの値が1である場合、「E01」に対応する負荷12への給電を制御せず、「E01」に対応する負荷12に接続されているスイッチ50はオフに維持される。
【0078】
図7は、電線保護処理の手順を示すフローチャートである。ここでは、負荷IDが「E01」である負荷12に接続されている電線Wの電線保護処理を説明する。他の負荷IDに対応する負荷12の電線保護処理は、負荷IDが「E01」である負荷12の電線保護処理と同様に実行される。
【0079】
制御部62は、負荷IDが「E01」である負荷12に接続されている電線Wの電流情報及び温度情報を含む情報信号を通信部60が受信する都度、電線保護処理を実行する。まず、制御部62は、電線温度テーブル71から、「E01」に対応する先行温度差を読み出す(ステップS11)。
【0080】
後述するように、電線保護処理では、制御部62は、電線温度と車両C内の環境温度との温度差を算出する。電線温度テーブル71において、「E01」に対応する先行温度差は、「E01」に対応する前回の電線保護処理で算出した温度差である。マイコン30への給電が開始された場合、制御部62は、全ての負荷IDに対応する電線温度は環境温度と一致しているとして、電線温度テーブル71の先行温度差をゼロに更新する。従って、マイコン30への給電が開始された後において、制御部62が最初に実行する「E01」の電線保護処理では、先行温度差はゼロである。
【0081】
次に、制御部62は、通信部60が受信した情報信号に含まれる電流情報及び温度情報が示す電線電流値及び環境温度と、ステップS11で読み出した先行温度差とに基づいて、電線温度と環境温度との温度差を算出する(ステップS12)。ステップS12では、制御部62は、温度算出回路55と同様に温度差を算出する。従って、制御部62は、電線電流値Iw、環境温度Ta及び先行温度差ΔTpを、前述した[1]式及び[2]式に代入することによって、温度差ΔTwを算出する。
【0082】
なお、ステップS12で用いられる[1]式のΔtは、温度算出回路55ではなく、通信回路40が電流情報及び温度情報を取得する周期である。
【0083】
次に、制御部62は、ステップS12で算出した温度差に、通信部60が受信した情報信号に含まれる温度情報が示す環境温度を加算することによって、電線温度を算出する(ステップS13)。制御部62は、第2の温度算出部としても機能する。次に、制御部62は、電線温度テーブル71において、「E01」に対応する電線温度を、ステップS13で算出した電線温度に更新する(ステップS14)。
【0084】
制御部62は、ステップS14を実行した後、電線温度テーブル71において、「E01」に対応する先行温度差を、ステップS12で算出した温度差に更新する(ステップS15)。次に、制御部62は、電線温度テーブル71において、「E01」に対応する電線温度が第2温度閾値以上であるか否かを判定する(ステップS16)。
【0085】
制御部62は、電線温度が第2温度閾値以上であると判定した場合(S16:YES)、給電制御処理のステップS5と同様に、通信部60に指示して、負荷IDが「E01」である給電終了信号を、「E01」に対応する負荷12が接続されているサブボックス21の通信回路40に送信させる(ステップS17)。これにより、駆動部52はスイッチ50をオフに切替え、「E01」に対応する負荷12への給電が終了する。
【0086】
次に、制御部62は、電線温度テーブル71において、「E01」に対応するフラグの値を1に設定する(ステップS18)。前述したように、フラグの値が1である場合、給電制御処理では、「E01」に対応する負荷12に接続されるスイッチ50をオンに切替えることはない。このため、フラグの値が1に設定された後、「E01」に対応する負荷12に接続されるスイッチ50はオフに維持される。
制御部62は、電線温度が第2温度閾値未満であると判定した場合(S16:NO)、又は、ステップS18を実行した後、電線保護処理を終了する。
【0087】
図8は、電線保護処理の効果の説明図である。
図8では、AND回路53の出力電圧、制御信号が示す電圧、温度算出回路55の出力電圧、及び、制御部62が算出した電線温度の推移が示されている。これらの推移において、横軸には時間が示されている。
図8でも、
図3と同様に、ハイレベル電圧及びローレベル電圧夫々を「H」及び「L」で示している。第2温度閾値をT2と記載する。
【0088】
制御部62は、算出した電線温度が第2温度閾値T2未満である場合、フラグの値をゼロに維持し、給電制御処理において、「E01」に対応する負荷12への給電を開始するか否かと、「E01」に対応する負荷12への給電を終了するか否かとを判定する。制御部62は、給電を開始すると判定した場合、通信部60に指示して、負荷IDが「E01」である給電開始信号を通信回路40に送信させる。制御部62は、給電を終了すると判定した場合、通信部60に指示して、負荷IDが「E01」である給電終了信号を通信回路40に送信させる。
【0089】
通信回路40は、通信部60から受信した信号に応じた電圧を示す制御信号をAND回路53に出力する。具体的には、通信回路40は、給電開始信号を受信した場合、制御信号が示す電圧をハイレベル電圧に切替え、給電終了信号を受信した場合、制御信号が示す電圧をローレベル電圧に切替える。前述したように、制御機41では、温度算出回路55がハイレベル電圧を出力している場合、AND回路53は、制御信号が示す電圧を出力し、駆動部52は、制御信号が示す電圧に従って、スイッチ50をオン又はオフに切替える。
【0090】
種々の原因によって、温度算出回路55が出力する電圧がハイレベル電圧に固定したと仮定する。この場合、温度算出回路55が算出した電線温度に無関係に、駆動部52は制御信号が示す電圧に従ってスイッチ50をオン又はオフに切替える。温度算出回路55が算出した電線温度に基づいて、電線Wが保護されることはない。
【0091】
しかしながら、制御部62は、算出した電線温度が第2温度閾値T2以上となった場合、フラグの値を1に設定し、通信部60に指示して、負荷IDが「E01」である給電終了信号を通信回路40に送信させる。これにより、通信回路40は、「E01」に対応する負荷12への給電に係る判定結果に無関係に、制御信号が示す電圧がローレベル電圧に切替え、駆動部52はスイッチ50を強制的にオフに切替える。
【0092】
前述したように、制御部62が算出した電線温度が第2温度閾値T2以上となった後においては、フラグの値が1であるため、負荷IDが「E01」である給電開始信号が送信されることはない。結果、駆動部52はスイッチ50をオフに維持する。スイッチ50がオフである場合、電線Wに電流が流れないため、電線温度は、時間の経過とともに低下する。
【0093】
前述したように、温度算出回路55が算出した電線温度が第1温度閾値以上となった場合、温度算出回路55の出力電圧は、ローレベル電圧に切替わる。このため、温度算出回路55の出力電圧がハイレベル電圧に固定されなかった場合、制御信号が示す電圧がローレベル電圧に切替わるタイミングと略同じタイミングで温度算出回路55が出力する電圧もローレベル電圧に切替わる。
【0094】
以上のように、故障が発生したために、温度算出回路55が出力する電圧がハイレベル電圧に固定した場合であっても、制御部62が算出した電線温度が第2温度閾値T2以上となったとき、駆動部52は、制御信号が示す電圧に無関係にスイッチ50をオフに切替える。また、前述したように、制御機41では、故障が発生したために、制御信号が示す電圧がハイレベル電圧に固定した場合であっても、温度算出回路55が算出した電線温度が第1温度閾値T1以上となったとき、駆動部52は、制御信号が示す電圧に無関係にスイッチ50をオフに切替える。従って、故障が発生した場合であっても、電線Wは異常な温度から保護される。
【0095】
(実施形態2)
図9は、実施形態2における制御機41の要部構成を示すブロック図である。
以下では、実施形態2について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態1と共通している。このため、実施形態1と共通する構成部には実施形態1と同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0096】
実施形態2においても、給電制御装置10に含まれる複数の制御機41,41,・・・の構成は同様である。実施形態2における制御機41では、温度算出回路55は、更に、通信回路40に接続されている。
【0097】
通信回路40は、温度算出回路55が算出したデジタルの温度差を温度算出回路55から取得する。また、通信回路40は、デジタルの温度差を温度算出回路55に通知する。温度算出回路55は、通信回路40から温度差が通知された場合、電線温度の算出に用いる先行温度差を、通信回路40から通知された温度差に更新する。
【0098】
通信回路40は、デジタルの電流情報、温度情報及び温度差を周期的に取得する。通信回路40は、電流情報、温度情報及び温度差を取得する都度、取得した電流情報、温度情報及び温度差を含む情報信号をマイコン30の通信部60に送信する。
【0099】
マイコン30では、通信部60は、制御部62の指示に従って、温度差を示す温度差信号を送信する。温度差信号には、負荷IDが含まれている。温度差信号に含まれている負荷IDが「E01」である場合、通信部60は、負荷IDが「E01」である負荷12に対応する通信回路40に温度差信号を送信する。通信回路40は、温度差信号を受信した場合、温度差信号が示す温度差を温度算出回路55に通知する。
【0100】
図10及び
図11は電線保護処理の手順を示すフローチャートである。ここでは、負荷IDが「E01」である負荷12に接続されている電線Wの電線保護処理を説明する。他の負荷IDに対応する負荷12の電線保護処理は、負荷IDが「E01」である負荷12の電線保護処理と同様に実行される。
【0101】
制御部62は、負荷IDが「E01」である負荷12に接続されている電線Wの電流情報、温度情報及び温度差を含む情報信号を通信部60が受信する都度、電線保護処理を実行する。実施形態2における電線保護処理のステップS21,S22,S32~S34夫々は、実施形態1における電線保護処理のステップS11,S12,S16~S18と同様である。このため、ステップS21,S22,S32~S34の詳細な説明を省略する。
【0102】
電線保護処理において、制御部62は、ステップS22を実行した後、ステップS22で算出した温度差と、通信部60が受信した情報信号に含まれる温度差とが互いに異なっているか否かを判定する(ステップS23)。差分値は絶対値である。制御部62は温度差判定部としても機能する。制御部62は、温度差が互いに異なっていると判定した場合(S23:YES)、ステップS22で算出された制御部62の温度差が、情報信号に含まれる温度算出回路55の温度差を超えているか否かを判定する(ステップS24)。
【0103】
制御部62は、制御部62の温度差が温度算出回路55の温度差を超えていると判定した場合(S24:YES)、通信部60に指示して、ステップS22で算出した温度差を示す温度差信号を、「E01」に対応する負荷12に接続されているサブボックス21の通信回路40に送信させる(ステップS25)。これにより、通信回路40は、温度差信号が示す温度差を、「E01」に対応する温度算出回路55に通知し、温度算出回路55は、電線温度の算出に用いる先行温度差を、通信回路40から通知された温度差に更新する。
【0104】
制御部62は、温度差が互いに異なっていない、即ち、温度差が一致していると判定した場合(S23:NO)、又は、ステップS25を実行した後、ステップS22で算出した温度差を用いて、実施形態1における電線保護処理のステップS13と同様に電線温度を算出する(ステップS26)。ステップS26で用いられる環境温度は、通信部60が受信した情報信号の温度情報が示す環境温度である。
【0105】
次に、制御部62は、電線温度テーブル71において、「E01」に対応する電線温度を、ステップS26で算出した電線温度に更新する(ステップS27)。次に、制御部62は、「E01」に対応する先行温度差を、ステップS22で算出した温度差に更新する(ステップS28)。
【0106】
制御部62は、制御部62の温度差が温度算出回路55の温度差を超えていないと判定した場合(S24:NO)、温度算出回路55の温度差を用いて、実施形態1における電線保護処理のステップS12と同様に温度差を算出する(ステップS29)。ステップS29で用いられる環境温度も、通信部60が受信した情報信号の温度情報が示す環境温度である。
【0107】
次に、制御部62は、電線温度テーブル71において、「E01」に対応する電線温度を、ステップS29で算出した電線温度に更新する(ステップS30)。次に、制御部62は、「E01」に対応する先行温度差を、情報信号に含まれる温度算出回路55の温度差に更新する(ステップS31)。制御部62は、ステップS28,S31の一方を実行した後、ステップS32を実行する。ステップS32以降の処理は実施形態1と同様である。
【0108】
実施形態2における給電制御装置10では、温度算出回路55及び制御部62が算出した温度差が互いに異なっている場合、温度算出回路55及び制御部62が用いる先行温度差を、温度算出回路55及び制御部62が算出した温度差の中で大きい方の温度差に統一する。このため、温度算出回路55及び制御部62が算出した温度差のずれが小さい。
【0109】
従って、制御信号が示す電圧の固定、又は、温度算出回路55が出力する電圧の固定等の故障が発生した場合であっても、適切なタイミングでスイッチ50がオフに切替わる。更に、先行温度差を、大きい方の温度差に統一するので、温度算出回路55及び制御部62が算出した電線温度が実際の電線温度未満となる可能性は低い。
実施形態2における給電制御装置10は、実施形態1における給電制御装置10が奏する効果も同様に奏する。
【0110】
なお、実施形態2において、ある程度の誤差を許容するため、温度算出回路55及び制御部62が算出した温度差が基準値以上である場合に、温度算出回路55及び制御部62が用いる先行温度差を、温度算出回路55及び制御部62が算出した温度差の中で大きい方の温度差に統一してもよい。基準値は、ゼロを超える一定値であり、予め設定されている。この場合、電線保護処理のステップS23では、制御部62は、ステップS22で算出した温度差と、通信部60が受信した情報信号に含まれる温度差との差分値が基準値以上であるか否かを判定する。制御部62は、差分値が基準値以上であると判定した場合、ステップS24を実行し、差分値が基準値未満であると判定した場合、ステップS26を実行する。
【0111】
また、2つの温度差が互いに異なると判定した場合に制御部62が行う処理、及び、2つの温度差の差分値が基準値以上であると判定した場合に制御部62が行う処理夫々は、温度算出回路55及び制御部62が用いる先行温度差を統一する処理に限定されない。例えば、電線保護処理において、制御部62は、2つの温度差が互いに異なると判定した場合にステップS33,S34を実行してもよく、2つの温度差の差分値が基準値以上であると判定した場合にステップS33,S34を実行してもよい。この場合、制御信号が示す電圧がローレベル電圧に固定され、スイッチ50がオフに維持される。
【0112】
(実施形態3)
実施形態2では、制御部62は、温度算出回路55及び制御部62が算出した2つの温度差に関する確認を行う。しかしながら、制御部62が行う確認は、2つの温度差に関する確認に限定されない。
以下では、実施形態3について、実施形態2と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態2と共通している。このため、実施形態2と共通する構成部には実施形態2と同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0113】
実施形態3では、通信回路40は、温度算出回路55が算出したデジタルの電線温度を温度算出回路55から取得する。通信回路40は、デジタルの電流情報、温度情報及び電線温度を周期的に取得する。通信回路40は、電流情報、温度情報及び電線温度を取得する都度、取得した電流情報、温度情報及び電線温度を含む情報信号をマイコン30の通信部60に送信する。
【0114】
図12は実施形態3における電線保護処理の手順を示すフローチャートである。ここでは、負荷IDが「E01」である負荷12に接続されている電線Wの電線保護処理を説明する。他の負荷IDに対応する負荷12の電線保護処理は、負荷IDが「E01」である負荷12の電線保護処理と同様に実行される。
【0115】
制御部62は、負荷IDが「E01」である負荷12に接続されている電線Wの電流情報、温度情報及び電線温度を含む情報信号を通信部60が受信する都度、電線保護処理を実行する。実施形態3における電線保護処理のステップS41~S46,S48,S49夫々は、実施形態1における電線保護処理のステップS11~S16,S17,S18と同様である。このため、ステップS41~S46,S48,S49の詳細な説明を省略する。
【0116】
制御部62は、「E01」に対応する電線温度が第2温度閾値未満であると判定した場合(S46:NO)、電線温度テーブル71において「E01」に対応する電線温度と、通信部60が受信した情報信号に含まれる電線温度の差分値が第2の基準値以上であるか否かを判定する(ステップS47)。差分値は絶対値である。第2の基準値は、ゼロを超える一定値であり、予め設定されている。制御部62は温度判定部としても機能する。
制御部62は、ステップS47を実行することによって、温度算出回路55及び制御部62が行っている電線温度の算出に異常が発生しているか否かを判定する。
【0117】
制御部62は、「E01」に対応する電線温度が第2温度閾値以上であると判定した場合(S46:YES)、又は、差分値が第2の基準値以上であると判定した場合(S47:YES)、ステップS48,S49を順次実行する。制御部62は、差分値が第2の基準値未満であると判定した場合(S47:NO)、電線保護処理を終了する。
【0118】
実施形態3における電線保護処理では、電線温度が第2温度閾値以上となった場合だけではなく、2つの電線温度の差分値が第2の基準値以上となった場合も、制御部62は、通信部60に指示して、負荷IDが「E01」である給電終了信号を送信させ、フラグの値を1に設定する。
【0119】
図13は、電線保護処理の効果の説明図である。
図13では、AND回路53の出力電圧、制御信号が示す電圧、並びに、温度算出回路55及び制御部62が算出した2つの電線温度の差分値の推移が示されている。これらの推移において、横軸には時間が示されている。
図13でも、
図3及び
図8と同様に、ハイレベル電圧及びローレベル電圧夫々を「H」及び「L」で示している。第2の基準値をTr2と記載する。
【0120】
図13に示すように、2つの電線温度の差分値が第2の基準値Tr2未満である場合においては、温度算出回路55がハイレベル電圧を出力している限り、AND回路53は、制御信号が示す電圧を駆動部52に出力する。駆動部52は、制御信号が示す電圧に従ってスイッチ50をオン又はオフに切替える。
【0121】
制御部62は、2つの電線温度の差分値が第2の基準値Tr2以上となった場合、フラグの値を1に設定し、通信部60に指示して、負荷IDが「E01」である給電終了信号を通信回路40に送信させる。これにより、通信回路40は、「E01」に対応する負荷12への給電に係る判定結果に無関係に、制御信号が示す電圧がローレベル電圧に切替え、駆動部52はスイッチ50をオフに切替える。
【0122】
2つの電線温度の差分値が第2の基準値Tr2以上となった後においては、フラグの値が1であるため、負荷IDが「E01」である給電開始信号が送信されることはない。結果、駆動部52はスイッチ50をオフに維持する。
【0123】
実施形態3における給電制御装置10では、温度算出回路55及び制御部62が行っている電線温度の算出に異常が発生した、即ち、温度算出回路55及び制御部62が算出した電線温度の差分値が第2の基準値Tr2以上となったと仮定する。この場合、電線温度に基づいてスイッチ50を適切にオフに切替えることができない可能性があるので、駆動部52は、スイッチ50を強制的にオフに切替える。
【0124】
なお、実施形態1~3において、温度算出回路55及び制御部62夫々が用いる先行温度差は、先行して算出した温度差であればよいので、前回算出した温度差に限定されず、例えば、前々回に算出した温度差であってもよい。実施形態1,3において、温度算出回路55が行う電線温度の算出方法は、制御部62が行う電線温度の算出方法と異なっていてもよい。実施形態1,3では、温度算出回路55及び制御部62夫々が行う電線温度の算出方法は、電線電流値に基づいて電線温度を算出する方法であればよいので、電線温度と、車両C内の環境温度との温度差を算出する方法に限定されない。また、実施形態1~3において、スイッチ50は、Nチャネル型のFETに限定されず、Pチャネル型のFET、バイポーラトランジスタ又はリレー接点等であってもよい。
【0125】
更に、実施形態1~3において、給電制御装置10が備えるサブボックス21の数は1であってもよい。また、サブボックス21に接続される負荷12の数は1であってもよい。更に、給電制御装置10は、メインボックス20を備えない構成であってもよい。この場合、給電制御装置10は、一又は複数のサブボックス21を備え、マイコン30の制御部62が行う電線温度の算出は省略される。サブボックス21の通信回路40は、通信バス22を介して給電開始信号及び給電終了信号を受信する。給電制御装置10は、1つのサブボックス21で構成されてもよい。
【0126】
開示された実施形態1~3はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0127】
1 電源システム
10 給電制御装置
11 バッテリ
12 負荷
20 メインボックス
21 サブボックス
22 通信バス
30 マイコン
40 通信回路(出力部)
41 制御機
50 スイッチ
51 電流出力部
52 駆動部(切替え部)
53 AND回路
54 抵抗
55 温度算出回路(温度算出部)
56 温度センサ
60 通信部
61 記憶部
62 制御部(オン判定部、オフ判定部、第2の温度算出部、温度差判定部、温度判定部)
63 内部バス
70 コンピュータプログラム
71 電線温度テーブル
A 記憶媒体
C 車両