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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】金属空気電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20220830BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20220830BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20220830BHJP
   H01M 50/54 20210101ALI20220830BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H01M12/08 K
H01M4/66 A
H01M50/105
H01M50/54
H01M4/86 M
H01M4/86 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018165812
(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公開番号】P2020038801
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】泉 博章
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-192313(JP,A)
【文献】特開2015-149191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/08
H01M 4/66
H01M 50/10
H01M 50/50
H01M 4/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の正極集電体、前記第1の正極集電体と他の正極集電体によって電気的に接続する第2の正極集電体、及び正極材料を備える正極と、
負極複合体と、
前記正極及び前記負極複合体を固定する外装体と、
前記外装体内に充填された電解液と、
を備える金属空気電池であって、
前記外装体が開口部を有し、
前記開口部が前記第1の正極集電体によって塞がれており、
前記第1の正極集電体、前記正極材料、及び前記第2の正極集電体が、前記負極複合体へ向かう方向にこの順で配置され、
前記正極材料が、1層であり、かつ、前記第1の正極集電体に隣接して配置されている、金属空気電池。
【請求項2】
前記正極が、前記正極材料と前記第2の正極集電体との間に、電解液含有層を更に備える、請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項3】
前記他の正極集電体として、前記正極が、前記第1の正極集電体の一方の端部と、前記第2の正極集電体の一方の端部とを連結する第3の正極集電体を更に備える、請求項1または請求項2に記載の金属空気電池。
【請求項4】
前記他の正極集電体として、前記正極が、前記第1の正極集電体と、前記第2の正極集電体の前記一方の端部とは対向する位置にある他方の端部とを連結する第4の正極集電体を更に備える、請求項3に記載の金属空気電池。
【請求項5】
前記他の正極集電体として、前記正極が、前記第1の正極集電体の端部から距離を置いた位置と、前記第2の正極集電体の端部から距離を置いた位置とを連結する第5の正極集電体を更に備える、請求項1または請求項2に記載の金属空気電池。
【請求項6】
前記負極複合体が、負極と、前記負極と前記電解液との間に、金属イオンのみを通す固体電解質層とを備え、前記電解液が、水溶液系電解液である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項7】
前記第1の正極集電体が、前記開口部よりも前記外装体の内側に配置されている、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項8】
前記第1の正極集電体及び前記第2の正極集電体が、チタンを含む、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
金属空気電池は、負極活物質として金属リチウム等を使用し、正極活物質として大気中の酸素を使用するものであり、エネルギー密度が高く、EV(電気自動車)の本格的な普及に必要とされる500Wh/kg級のエネルギーを得られる電池として期待されている。
【0003】
Li(リチウム)やZn(亜鉛)等の金属空気電池において、メッシュ状の正極集電体に、触媒、導電助剤、及びバインダー等を含む正極材料を圧着した構造を有する正極を用いることが知られている。上記の正極には、正極集電体に多くの触媒を圧着させることが可能であり、高い充放電性能が得られる利点がある。しかしながら、充放電サイクルを繰り返す過程で、内部抵抗の増加等が原因で充電電圧が高くなると、充放電電圧差が大きくなり、負極内部の有機電解液や正極材料が劣化する課題がある。
【0004】
また、金属空気電池において、正極と負極との間には電解液が含まれており、空気と接触する正極からの電解液の漏洩を防ぐことも必要となっている。
【0005】
例えば、特許文献1には、正極集電体の両面に正極材を備え、水溶液系電解液の漏洩を防止する正極を有するリチウム空気電池が開示されている。また、特許文献2には、酸素を金属空気電池の正極へと到達させることが可能であり、且つ、電解質の漏洩を防止することが可能な、撥水膜を正極集電体に備えた正極を有する金属空気電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-26207号公報
【文献】特開2015-79692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のリチウム空気電池の正極において、空気に接触する側の正極材が反応に使われず無駄になることや、正極の固定及び電解液漏洩防止のための熱溶着シートと正極材部分との接合強度が弱くなることが課題となる。また、特許文献2の金属空気電池の正極において、正極集電体が撥水膜に覆われることにより、効率良く酸素と接触することができず、放電電圧が低下し、充放電電圧が高くなる課題がある。
【0008】
そこで本発明は、充放電電圧差を小さく抑えることができ、かつ、電解液の漏洩を防止できる正極を有する金属空気電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る金属空気電池は、第1の正極集電体、前記第1の正極集電体と電気的に接続する第2の正極集電体、及び正極材料を備える正極と、負極複合体と、前記正極及び前記負極複合体を固定する外装体と、前記外装体内に充填された電解液と、を備えており、前記外装体が開口部を有し、前記開口部が前記第1の正極集電体によって塞がれており、前記第1の正極集電体、前記正極材料、及び前記第2の正極集電体が、前記負極複合体へ向かう方向にこの順で配置され、前記正極材料が、1層であり、かつ、前記第1の正極集電体に隣接して配置されている。なお、前記第1の正極集電体と前記第2の正極集電体とは、他の正極集電体によって、電気的に接続されていてもよい。
【0010】
本発明に係る金属空気電池において、前記正極は、前記正極材料と前記第2の正極集電体との間に、電解液含有層を更に備えてもよい。
【0011】
本発明に係る金属空気電池において、前記正極は、前記第1の正極集電体の一方の端部と、前記第2の正極集電体の一方の端部とを連結する第3の正極集電体を更に備えてもよい。この場合、前記正極は、前記第1の正極集電体と、前記第2の正極集電体の前記一方の端部とは対向する位置にある他方の端部とを連結する第4の正極集電体を更に備えてもよい。又は、本発明に係る金属空気電池において、前記正極は、前記第1の正極集電体の端部から距離を置いた位置と、前記第2の正極集電体の端部から距離を置いた位置とを連結する第5の正極集電体を更に備えてもよい。
【0012】
本発明に係る金属空気電池において、前記負極複合体は、負極と、前記負極と前記電解液との間に、金属イオンのみを通す固体電解質層とを備えてもよく、この場合、前記電解液は、水溶液系電解液であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る金属空気電池において、前記第1の正極集電体が、前記開口部よりも前記外装体の内側に配置されていることが好ましい。
【0014】
本発明に係る金属空気電池において、前記第1の正極集電体及び前記第2の正極集電体は、チタン、ニッケル等の強塩基に対して耐腐食性の高い金属を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る金属空気電池によれば、正極及び負極複合体を固定し、内部に電解液が充填された外装体の開口部が、正極の第1の正極集電体によって塞がれており、この第1の正極集電体、正極材料、及び第2の正極集電体が、負極複合体へ向かう方向にこの順で配置され、正極材料が、1層であり、かつ、第1の正極集電体に隣接して配置されている構成としたことで、正極材料が第1及び第2の正極集電体により囲まれるため、放電性能が向上し、過電圧が低減し、且つ正極材料が効率良く空気と接触して、電池における充電、放電反応が効率よく進行し、よって、充放電電圧差を小さく抑えることができ、充放電サイクル過程における電解液や正極材料の劣化を抑制することができる。また、第2の正極集電体と向かい合う第1の正極集電体の面(酸素に接触しない面)のみに正極材料が圧着されるため、第1の正極集電体の開口部に接する面は熱溶着シートによる接合が容易であり、外装体と正極とを高密閉性及び高強度で接合可能である。その結果、外装体の開口部と隣接する正極との間の接合部からの水溶液系電解液の漏洩を防止し、セル自体の耐久性を向上や、縦置き等セルの配置の自由度が高まる。
【0016】
正極が正極材料と第2の正極集電体との間に、電解液含有層を更に備える構成とすることで、放電性能を更に向上させ、過電圧を更に低減させることができる。
【0017】
正極が第1の正極集電体の一方の端部と第2の正極集電体の一方の端部とを連結する第3の正極集電体を更に備える構成とすることで、第1の正極集電体、第2の正極集電体及び第3の正極集電体で正極材料を3方向から囲うだけなので、比較的に容易に製造することができる。また、第3の正極集電体に加えて、正極が第1の正極集電体と、第2の正極集電体の一方の端部とは対向する位置にある他方の端部とを連結する第4の正極集電体を更に備える構成とすることで、第1の正極集電体、第2の正極集電体、第3の正極集電体及び第4の正極集電体で正極材料を4方向から囲うこととなり、より安定して正極材料(及び電解液含有層)を正極集電体に接続配置することができる。なお、第3の正極集電体及び第4の正極集電体に代えて、正極が第1の正極集電体の一方の端部から距離を置いた位置と第2の正極集電体の一方の端部から距離を置いた位置とを連結する第5の正極集電体を更に備える構成とすることで、第5の正極集電体を境界として、正極材料(及び電解液含有層)を分割して、作成、配置することができる。
【0018】
電解液が水溶液系電解液であり、負極複合体が、負極と水溶液系電解液との間に、金属イオンのみを通す固体電解質層とを備える構成とすることで、負極複合体の負極側に水溶液系電解液が侵入することを防ぐことができる。
【0019】
第1の正極集電体が、開口部よりも外装体の内側に配置されている構成とすることで、正極集電体の空気と接する面に、透気防水機能を有するフィルムの配置が不要となり、放電反応に必要な空気が効率良く供給される。
【0020】
第1から第5の正極集電体がチタンを含む構成とすることで、アルカリ水溶液に対する耐腐食性を向上でき、軽量化でき、且つ白金や金などの高い耐腐食性を示す貴金属よりも安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明に係る金属空気電池の一実施形態の断面図を示す。
図2図2(a)は、本発明に係る金属空気電池の上部分の一実施形態の断面図を示し、図2(b)及び図2(c)は、本発明に係る金属空気電池における正極の別の実施形態の断面図を示す。
図3図3は、本発明に係る金属空気電池の下部分の一実施形態の断面図を示す。
図4図4は、本発明に係る金属空気電池における正極集電体の実施例及び比較例1~3の正面図を示す。
図5図5は、実施例1及び比較例1~4の金属空気電池における充放電試験の結果を示す。
図6図6(a)~(d)は、比較例1~4の金属空気電池における正極の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る金属空気電池の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。本実施の形態の金属空気電池における各構成(正極、正極集電体、正極材料、電解液含有層、電解液、負極複合体、負極、金属ラミネートフィルム、負極複合体内に封入される電解液など)の説明は、図示する金属空気電池に限られず、本発明に係る金属空気電池に広く適用できるものである。
【0023】
[金属空気電池]
本発明に係る金属空気電池の一実施形態としては、例えば、図1を参照して説明することができる。図1において、金属空気電池100は、正極1と、負極複合体3と、これらを固定する外装体4とを備え、正極1及び外装体4に取り囲まれた空間2には、電解液が充填される。
【0024】
外装体4には、開口部4aが設けられており、開口部4aを塞ぐように、正極1が隣接して設置される。正極1は、開口部4aにおいて、外部の空気と接触する。また、正極1及び負極複合体3はそれぞれ、外装体4の外側に電気的に通電可能な正極端子1a及び負極端子3aを有する。
【0025】
[正極]
本実施の形態に係る金属空気電池100における正極1の一例としては、例えば、図2(a)を参照して説明することができる。なお、図2(a)は、図1における金属空気電池100の上部分100aを拡大して示している。
【0026】
図2(a)に示すように、金属空気電池100の上部分100aにおいて、外装体4の開口部4aを塞ぐように、正極1の第1の正極集電体11が隣接して設置される。第1の正極集電体11は、本体部11aとタブ部11bを有する。本体部11aは、外装体4の開口部4aを塞ぐ部分であり、開口部4aの開口の大きさよりも大きい。また、タブ部11bは、第1の正極集電体11の本体部11aの端部に位置し、本体部11aと正極端子1a(図示せず)とも接続する。第1の正極集電体11は、この開口部4aを塞ぐように外装体4に隣接する面とは反対側の面に、距離を置いて向かい合って配置される第2の正極集電体12と、第3の正極集電体13を介して電気的に連通する。すなわち、第3の正極集電体13は、第1の正極集電体11の一方の端部と第2の正極集電体12の一方の端部とを連結し、第1から第3の正極集電体11~13はU字型形状を形成している。正極1は正極材料15を1層のみ備え、正極材料15は、U字型形状の第1から第3の正極集電体11~13の中であって、第2の正極集電体12に向かい合う第1の正極集電体11の面に隣接して設けられる。また、正極1は、正極材料15と第2の正極集電体12との間に、電解液含有層16を備える。電解液含有層16は、例えば、シート状の吸収体に保持して用いることができる。第2の正極集電体12、正極材料15及び電解液含有層16の各表面の面積は、第1の正極集電体11の本体部11aの表面の面積と実質的に同様であることが好ましい。
【0027】
上記の図2(a)に示される正極1の構成とすることによって、正極材料15が、第1の正極集電体11と第2の正極集電体12とに、囲まれているため、金属空気電池の放電性能を向上し、過電圧を低減させることができる。特に、正極材料15に電解液含有層16が隣接することで、放電性能がより向上し、過電圧をより低減させることができる。更に、正極材料15が第1の正極集電体11を介して効率良く空気と接触して、電池における充電、放電反応を効率よく進行させることができるとともに、第1の正極集電体11に圧着する正極材料15によって、外装体4の開口部4aからの電解液の漏洩を防止することができる。
【0028】
また、本実施の形態に係る金属空気電池における正極の別の例としては、例えば、図2(b)を参照して説明することができる。なお、図2(b)は、正極1Aのみを示しており、図2(a)の正極1の変形例であるため、重複する説明を省略して、相違点について説明する。
【0029】
図2(b)の正極1Aは、上記と同様に、U字型形状に連結した第1の正極集電体11、第2の正極集電体12、及び第3の正極集電体13と、これらの取り囲む囲む空間に位置する1層の正極材料15と1層の電解液含有層16とを備えるが、図2(a)の正極1との相違点としては、さらに、第4の正極集電体14を備える点である。この第4の正極集電体14は、第3の正極集電体13が連結する第2の正極集電体12の一方の端部とは対向する位置にある他方の端部と、第1の正極集電体11の本体部11aとタブ部11bとの境界付近とを連結する。このように、第1から第4の正極集電体11~14はO字型形状を形成し、すなわち、第1の正極集電体11と第2の正極集電体12とは、第3の正極集電体13及び第4の正極集電体14の両方を介して電気的に接続されている。そして、正極1Aは、この第1から第4の正極集電体11~14に四方を囲まれた正極材料15および電解液含有層16を備える。
【0030】
このように第4の正極集電体によって正極集電体をO字型形状とした正極1Aの構成によれば、図2(a)に示される正極1と同様の効果を実現することができるとともに、第1の正極集電体11と第2の正極集電体12とが、第3の正極集電体13及び第4の正極集電体14の2箇所で連結するため、図2(a)に示される正極1よりも、正極材料及び電解液含有層を安定的に正極集電体に接続する正極構造を得ることができる。
【0031】
本実施の形態に係る金属空気電池における正極の更に別の例としては、例えば、図2(c)を参照して説明することができる。なお、図2(c)は、正極1Bのみを示しており、図2(a)の正極1の変形例であるため、重複する説明を省略して、相違点について詳細に説明する。
【0032】
図2(c)の正極1Bは、第1の正極集電体11、第2の正極集電体12及び第5の正極集電体17を備え、この第5の正極集電体17は、第1の正極集電体11の一方の端部から距離を置いた位置(好ましくは本体部11aの中央位置)と第2の正極集電体12の一方の端部から距離を置いた位置(好ましくは一方の端部及び他方の端部との間の中央位置)とを連結するものである。このように、第1、第2及び第5の正極集電体11、12、17はH字型形状を形成し、第1の正極集電体11と第2の正極集電体12は、第5の正極集電体17を介して電気的に接続されている。正極1Bは、この第5の正極集電体17を境界として、2つの領域にそれぞれ1層の正極材料15a及び正極材料15bを備える。電解質層16も同様に、第5の正極集電体17を境界として、2つの領域にそれぞれ、電解液含有層16a及び電解液含有層16bを備える。
【0033】
このように第5の正極集電体によって正極集電体をH字型形状とした正極1Bの構成によっても、図2(a)に示される正極1と同様の効果を実現することができる。また、第5の正極集電体17を境界として、正極材料15及び電解液含有層16を分割して作製及び配置することができるので、正極の面積が大きい金属空気電池を作製するときに、小さい面積の正極を、複数連結することによって作製できるメリットがある。また、電解液に対して、正極材料15a、15b及び電解液含有層16a、16bの端部の接触面積が増えるため、充放電の効率が向上する。
【0034】
[正極集電体]
第1から第5のいずれの正極集電体11~14、17の素材も、金属空気電池の正極の正極集電体に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布、多孔質ニッケル(ニッケルの金属発泡体)や多孔質アルミニウム(アルミの金属発泡体)、多孔質チタン(チタンの金属発泡体)の他、チタンメッシュ、ニッケルメッシュ、銅メッシュ、SUSメッシュ等の耐腐食性の高い金属を使用した金属メッシュ等を用いることができる。なお、ここでいうカーボンクロスとは、カーボンファイバー等で織られた布状のシートのことを指し、カーボン不織布は、カーボンファイバーをランダムに絡み合わせたシート状のものである。
【0035】
特に水溶液系金属空気電池の正極の正極集電体では、導電性、ガス拡散性、電解液に対する耐腐食性が求められる。金属メッシュは、正極材料を圧着させる上で適した材料であり特に好ましい。また、メッシュに用いる金属の中でも、チタンが好ましい。チタンは、アルカリ水溶液に対しても耐腐食性が高く、軽量であり、高い耐腐食性を示す白金や金などの貴金属よりも安価である。
【0036】
第1から第5の正極集電体11~14、17の厚さはいずれも、同じであっても異なっていてもよく、特に限定されず、例えば、下限は、0.04mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、上限は、0.4mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。
【0037】
[正極材料]
正極材料15、15a及び15bとしては、金属空気電池の正極の正極材料に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、白金、金、イリジウム、ルテニウムなどの触媒活性を示す貴金属や、それらの酸化物等、もしくは、触媒活性を示す二酸化マンガン等を、導電性の高いカーボン等を導電助剤、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム等を混合して用いることができる。
【0038】
正極材料15、15a及び15bの厚さは、特に限定されず、例えば、下限は、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、上限は、1.0mm以下が好ましく、0.7mm以下がより好ましい。
【0039】
[電解液含有層]
電解液含有層16、16a及び16bは、電解液を保持する層であれば特に限定されず、例えば、電解液を含浸させた多孔質体などを用いることができる。このような多孔質体としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリエチレン及びポリプロピレンなどの多孔膜の他、セルロース、樹脂不織布及びガラス繊維不織布等の不織布、その他のハイドロゲルなどの素材を用いることができる。このような素材を、例えば、シート状等の形状に形成することで、電解液含有層16、16a及び16bとすることができる。
【0040】
電解液含有層16、16a及び16bの厚さは、特に限定されず、例えば、下限は、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、上限は、1.0mm以下が好ましく、0.7mm以下がより好ましい。
【0041】
電解液含有層16、16a及び16bに保持される電解液としては、特に限定されず、例えば、水溶液系電解液を用いることができる。水溶液系電解液としては電気伝導性を有していればよく、水にリチウム塩を溶解させた水溶液系電解質が好ましい。水に溶解させるリチウム塩としては、例えば、LiCl(塩化リチウム)、LiOH(水酸化リチウム)、LiNO(硝酸リチウム)、CHCOOLi(酢酸リチウム)等が挙げられ、これらの1つ又は複数を水に溶解させた液体を用いることができる。
【0042】
[電解液]
正極1及び外装体4に取り囲まれた空間2に充填される電解液としては、金属空気電池の電解液に使用される物質であれば、特に限定されず、例えば、上述の電解液含有層16、16a及び16bに含有される電解液で説明した、水溶液系電解液などの各種電解液を用いることができる。特に、水溶液系電解液が好ましい。
【0043】
[負極複合体]
本実施の形態に係る金属空気電池における負極複合体としては、金属空気電池に使用される負極複合体であれば、特に限定されない。本発明に係る金属空気電池における負極複合体の一実施形態としては、例えば、図3に示される負極複合体3の構造を有することができる。なお、図3は、図1に示される金属空気電池100の下部分100bを拡大して示している。負極複合体3は、図3において上下に設けられた第1の金属箔ラミネートフィルム31aと第2の金属箔ラミネートフィルム31bとの間に、固体電解質層32と、負極30とが挟まれた積層構造となっている。金属空気電池100の正極(図示省略)側に位置する第1の金属箔ラミネートフィルム31aには、その平面においてほぼ中央の位置に、開口部33が設けられている。第2の金属箔ラミネートフィルム31bは、外装体4の下部分を構成する。第1の金属箔ラミネートフィルム31aの外側と外装体4の上部分との間には、正極1の正極端子1aが設けられている。
【0044】
開口部33を有する第1の金属箔ラミネートフィルム31aは、負極複合体3の内側から外側に向けて(図中、下から上へ向けて)、第1の樹脂層301、金属箔層302、第2の樹脂層303の順に3つの層が積層されたシートとなっている。第2の金属箔ラミネートフィルム31bも、同様に、負極複合体3の内側から外側に向けて(図中、上から下へ向けて)、第1の樹脂層301、金属箔層302、第2の樹脂層303の順に3つの層が積層されたシートとなっている。第1の金属箔ラミネートフィルム31a及び第2の金属箔ラミネートフィルム31bの周縁部は熱溶着によって接合されている。
【0045】
第1の金属箔ラミネートフィルム31aの内側に、開口部33を塞ぐように、固体電解質層32が配置されている。すなわち、固体電解質層32の平面における大きさは、第1の金属箔ラミネートフィルム31aの開口部33よりも大きく、固体電解質層32の周縁部が第1の金属箔ラミネートフィルム31aの開口部33の内側周縁部に接合され固定されている。
【0046】
開口部のない第2の金属箔ラミネートフィルム31bと固体電解質層32との間に、負極30が配置されている。負極30は、その4辺の端が、第1の金属箔ラミネートフィルム31a及び第2の金属箔ラミネートフィルム31bに挟まれ、接合されている。
【0047】
負極30は、第2の金属箔ラミネートフィルム31bの側から順に、フィルム34、負極集電体35、金属リチウムからなる負極層36、セパレータ37の順に4つの層が積層した構造となっている。セパレータ37の端は、負極集電体35に溶着され、固定されており、これによって負極集電体35とセパレータ37とにより負極層36を封止する構成となっている。なお、セパレータ37は負極層36に対しては固定されていない。
【0048】
負極集電体35は、図3に示すように、フィルム34と負極層36とに挟まれている集電部35aと、そこから外装体4の外方まで延伸している端子部35bとから構成される。負極集電体35の集電部35aは、平面において四角形の形状を有し、端子部35bは、それよりも幅の狭い線形の形状を有している。なお、端子部35bは、図1に示す負極端子3aと接続する。負極集電体35の集電部35aは、4辺の端部まで全てセパレータ37に覆われるように、セパレータ37と接合している。
【0049】
負極層36は、上述したようにセパレータ37と負極集電体35との間で封止されており、よって、負極層36の平面における大きさは、セパレータ37よりも小さいものとなっている。また、負極層36の負極複合体3における平面上の位置は、固体電解質層32の平面上の位置にほぼ対応する場所に配置されている。
【0050】
また、図3に示すように、固体電解質層32と負極30のセパレータ37とは、間隔をおいて設けられている。そして、固体電解質層32、第1の金属箔ラミネートフィルム31a及び第1の金属箔ラミネートフィルム31bの間の空間には、有機電解液等が封入されている。
【0051】
[負極]
本実施の形態に係る金属空気電池における負極複合体の負極30としては、金属空気電池の負極として使用されるものであれば、特に限定されない。負極30の一例としては、例えば、図3に示すように、負極30は、セパレータ37、負極層36、負極集電体35及びフィルム34を含むことができる。
【0052】
セパレータ37としては、例えば、リチウムイオン等の負極活物質である金属のイオンや有機電解液が通過可能な複数の空孔を有するものであることが好ましい。このようなセパレータ37として、例えば、リチウムイオン電池等のセパレータとして使用されている多孔質のポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、セルロース等のシートを用いることができる。これらの材料以外に、多孔質構造を持つアラミド、ポリテトラフルオロエチレン、毛細管状構造の酸化アルミニウム等の材質を用いることができる。また、これら材料のシートに有機電解液を含浸させたものを用いることができる。
【0053】
セパレータ37の材料としては、空孔率が約40%~90%、厚みが約10~300μm程度のものを用いることができ、約15~100μmのものが、より好適に用いることができる。空孔の大きさは、約20nm~500nm程度であればよく、より好ましくは約20~70nm程度であればよい。また、セパレータ自体にある程度の剛性、強度を有するものがより好ましい。
【0054】
負極層36の負極活物質としては、リチウム、亜鉛等の金属を用いることができ、開放電圧が高く、実用的な観点からリチウムがより好ましい。また、負極活物質は、金属リチウムに限定されず、リチウムを主成分とする合金もしくは化合物であってもよい。リチウムを主成分とする合金は、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、金、亜鉛等を含むことができる。
【0055】
負極集電体35の材料は、空気電池の動作範囲で安定して存在でき、所望する導電性を有していればよく、例えば、銅、ニッケルなどを挙げることができる。
【0056】
金属空気電池が、放電を行う際、負極層36が金属リチウムである場合には、リチウムイオン(Li)と電子(e)となる。そして、リチウムイオン(Li)は電解液に溶解し、電子(e)は負極集電体35の集電部35aを介して端子部35bに供給される。したがって、負極層36の厚さや面積を変えることで、電池容量の設計値をコントロールすることができる。
【0057】
フィルム34としては、集電部の裏側全面を接合してもよいし、周縁部のみを接合してもよい。また、フィルム34は、負極集電体の全面のみならず、側面(端部)まで覆ってもよい。フィルム34としては、有機電解液を通さず且つ有機電解液に対して耐性のある、例えば、ポリポロピレンやポリエチレン等の樹脂シート等を用いることができる。
【0058】
[固体電解質層]
本実施の形態に係る金属空気電池における負極複合体の固体電解質層32としては、金属空気電池の固体電解質層に用いられるものであれば、特に限定されない。例えば、固体電解質層32としては、電圧を印可することによりイオン(リチウムイオン)を透過することができる固体の物質であることが好ましい。固体電解質層32としては、例えば、リチウムイオン伝導性に優れ不燃性であるガラスセラミック等を用いることができる。また特に、電解液に水溶液系の電解液を用いた場合には、耐水性の高いLATP系ガラスセラミック電解質を用いることができる。
【0059】
[金属箔ラミネートフィルム]
第1の金属箔ラミネートフィルム31a及び第2の金属箔ラミネートフィルム31bとしては、例えば、図3に示すように、第1の樹脂層301、金属箔層302、第2の樹脂層303の順に3つの層が積層されたシートを用いることができる。なお、各層の間に、例えばナイロンフィルム等の1層又は複数の樹脂フィルムを積層し、4層以上の構造としてもよい。
【0060】
第1の樹脂層301には、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂を用いることができる。これらの樹脂は、融点が低く、熱加工性が良く、ヒートシール(熱溶着)に適しており、負極複合体の製造を容易とする。
【0061】
金属箔層302は、ガスバリア性及び強度向上のためのものであり、例えば、アルミ箔、SUS箔、銅箔等の金属箔を使用することができる。
【0062】
第2の樹脂層303には、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂や、ナイロン系樹脂を用いることができる。これらの樹脂材料は、耐熱性及び強度に優れている。そのため、負極複合体の強度等を向上することができる。
【0063】
[負極複合体内の電解液]
固体電解質層32、並びに第1及び第2の金属箔ラミネートフィルム31a、31bの間の空間に封入される電解液としては、非水溶液系電解液を用いることが好ましい。
【0064】
負極複合体内の非水溶液系電解液としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)等の炭酸エステル系の有機溶媒、及びエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられ、これらの単独又は混合溶液を用いることができ、導電性を持たせるために、LiPF(六フッ化リン酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiBF(テトラフルオロほう酸リチウム)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiN(SOCF(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)等を添加することができる。
【0065】
[外装体]
本実施の形態に係る金属空気電池における外装体4としては、金属空気電池に用いられる外装体であれば、特に限定されない。外装体4としては、例えば、前述の負極複合体で説明した金属箔ラミネートフィルムと同様の構成を用いることができる。
【実施例
【0066】
以下に、本発明の実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
[1.正極の作製]
正極を、以下の手順で作製した。
(1)正極触媒として触媒活性を持つMnO(比表面積300m/g)を0.4gと、導電助剤としてケッチェンブラック(比表面積800m/g)0.05gと、バインダー(結着剤)としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)0.05gを計り取り、メノウ乳鉢に移し、分散剤としてエタノールを2.5mL加えて混練し、正極材料とした。
(2)図4に示すような2.5×2.5cmの正極集電体の領域B、2.5×0.12cmの正極集電体の領域C、2.5×2.5cmの正極集電体の領域A及び1×5.5cmのタブ部が一体となった形状を有するTiメッシュにおいて、2.5cm×2.5cmの領域Aの一方の面に、3.5×3.5cmの大きさで中央に2cm×2cmの内孔を有する形状の熱溶着シートをヒートシーラーで溶着接合した。その後、Tiメッシュの領域Aの熱溶着シートを接合していない面に、(1)を配置して、領域Aの両側から20kNの力でプレスすることで圧着した。その後、Tiメッシュの領域Aからはみ出た正極材料を除去し、空気中で24時間自然乾燥させ、0.5mmの厚さの正極材料を得た。さらに、Tiメッシュの熱溶着シートが設けられた面が外側になるように、図4中に破線で示す折り曲げ箇所C1及びC2を90°の角度に折り曲げて、領域Aと領域Bが向かい合う構造を有する正極を作製した。さらに、正極の領域Aと領域Bとの間の空間には、水溶液系電解液(1.5M-LiOH+10M-LiCl)に浸漬して吸収させたシート状のポリアクリルアミド(2.5cm×2.5cm、厚さ約0.7mm)を配置した。なお、実施例1の正極の構造は、図2(a)に示される。
【0068】
[2.負極複合体の作製]
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、PP樹脂/Al箔/PET樹脂の金属箔ラミネートフィルムの中心部分を2×2cm角に打ち抜いた外装材、酸変性ポリプロピレンフィルム打ち抜き品(外周部3×3cm、内周2×2cm)、2.5×2.5cm角の固体電解質(LATP)、酸変性ポリプロピレンフィルム打ち抜き品(外周部3×3cm、内周2×2cm)の順に重ねて、ヒートシーラーで熱溶着接合して上側負極複合体外装材とした。
【0069】
固体電解質と金属Liが対向するように、上記の上側負極複合体外装材、リチウムイオン電池用セパレータ、銅箔(負極集電体)に金属Li箔(サイズ1.45×1.4cm、厚さ0.2mm)が接合されたものと、下側負極複合体外装材である金属箔ラミネートフィルムの順で重ね、端部3辺をヒートシーラーにより熱溶着接合した。接合していない端部より、非水溶液系電解液(4M-LiFSI/EGDME)1.5mLを負極複合体内に注入した。最後に残りの1辺の端部をヒートシーラーで接合させて密閉し、負極複合体を作製した。
【0070】
負極集電体と上側及び下側外装体は酸変性PP樹脂等の熱溶着シートを介して熱溶着されている。なお、固体電解質にはLATP(オハラ社製LICGC)を用いた。また、リチウムイオン電池用セパレ-タとしては、ポリプロピレン樹脂で、厚さ25μm、平均空孔径0.03μm以下、空孔率44%、透気度450sec/100ccのものを使用した。
【0071】
[3.金属空気電池の作製]
上記の1.で作製した正極の熱溶着シートの溶着部の内枠と、2×2cmの穴が中央に開いた外装材のアルミラミネートフィルム(PP樹脂/Al箔/PET樹脂)の穴とが一致するように配置し、正極集電体の端部とセル外装材のPP樹脂とを熱溶着で溶着接合した。さらに、この外装材の3辺を上記の2.で作製した負極複合体の上側負極複合体外装材と接合させ、接合していない残りの1辺から、水溶液系電解液(1.5M-LiOH+10M-LiCl)に浸漬して吸収させたシート状のポリアクリルアミド(2.5cm×2.5cm、厚さ約0.7mm)を正極と重なるように配置した後、この1辺も接合し、84mAh相当の金属空気電池を作製した。
【0072】
[4.充放電試験]
実施例1の理論容量84mAh相当の金属空気電池において、理論容量に対して電流密度2mA/cmで4時間の放電試験を行った後に、10分間の充電及び放電試験を行った際の電圧の推移を25℃の温度にて電池充放電装置(北斗電工社製HJ1001SD8)を用いて測定した。測定結果は、図5及び表1に示した。表1中のOCVは、金属空気電池に負荷をかけていないときの電圧である開回路電圧の略号である。
【0073】
(比較例1)
実施例1における図2(a)の正極1を、図6(a)に示された断面構造を有する正極110に替えた以外は、実施例1と同様の金属空気電池の作製方法を用いて、比較例1の金属空気電池を作製し、実施例1と同様の充電及び放電試験を行った。具体的には、図6(a)の正極110は、図2(a)の正極1との相違点として、正極材料15が、第2の正極集電体12と向かい合う第1の正極集電体11の面ではなく、外装体の開口部に接する第1の正極集電体11の面に設置される。比較例1の測定結果は、図5及び表1に示した。
【0074】
(比較例2)
実施例1における図2(a)の正極1を、図6(b)に示された断面構造を有する正極110Aに替えた以外は、実施例1と同様の金属空気電池の作製方法を用いて、比較例2の金属空気電池を作製し、実施例1と同様の充電及び放電試験を行った。具体的には、図6(b)の正極110Aは、図2(a)の正極1との相違点として、2層の正極材料15、15’を備える。もう1層の正極材料15’は、電解液含有層16と第2の正極集電体12との間に設置される。比較例2の測定結果は、図5及び表1に示した。
【0075】
(比較例3)
比較例1における図6(a)の正極110を、図6(c)に示された断面構造を有する正極110Bに替えた以外は、比較例1と同様の金属空気電池の作製方法を用いて、比較例3の金属空気電池を作製し、比較例1と同様の充電及び放電試験を行った。具体的には、図6(c)の正極110Bは、図6(a)の正極110との相違点として、比較例1の正極材料1の設置位置の他に、もう1層の正極材料15’を備え、この正極材料15’は、第2の正極集電体12の外側の面(第1の正極集電体と対向する面とは反対側の面)に設置される。第1の正極集電体11と第2の正極集電体12との間には、電解液含有層16のみが配置される。比較例3の測定結果は、図5及び表1に示した。
【0076】
(比較例4)
実施例1における図2(a)の正極1を、図6(d)に示された断面構造を有する正極110Cに替えた以外は、実施例1と同様の金属空気電池の作製方法を用いて、比較例4の金属空気電池を作製し、実施例1と同様の充電及び放電試験を行った。具体的には、図6(d)の正極110Cは、平面状の第1の正極集電体11のみで、その両面に1層ずつ正極材料15、15’を備えるものであり、従来の一般的な構成である。比較例4の測定結果は、図5及び表1に示した。
【0077】
【表1】
【0078】
図5及び表1に示すように、比較例1は、従来の比較例4と比べ、放電電圧が若干高くなったものの、充電電圧が顕著に高くなり、充放電電圧差が大きくなってしまった。比較例2、3は、従来の比較例4と比べ、放電電圧が大きく低下してしまった。そのため、充放電電圧差も大きくなってしまった。これに対し、実施例1は、従来の比較例4よりも、放電電圧が高く、かつ、充放電電圧差も小さいことが示された。
【符号の説明】
【0079】
1、1A、1B 正極
1a 正極端子
2 空間
3 負極複合体
3a 負極端子
4 外装体
4a 開口部
11 第1の正極集電体
11a 本体部
11b タブ部
12 第2の正極集電体
13 第3の正極集電体
14 第4の正極集電体
15、15a、15b 正極材料
16、16a、16b 電解液含有層
17 第5の正極集電体
30 負極
31a 第1の金属箔ラミネートフィルム
31b 第2の金属箔ラミネートフィルム
32 固体電解質層
33 開口部
34 フィルム
35 負極集電体
35a 集電部
35b 端子部
36 負極層
37 セパレータ
100 金属空気電池
100a 金属空気電池100の上部分
100b 金属空気電池100の下部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6