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  • 特許-タイヤ用シートの製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】タイヤ用シートの製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/24 20060101AFI20220830BHJP
   B29C 43/52 20060101ALI20220830BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
B29C43/24
B29C43/52
B29L30:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018179749
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020049723
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 知之
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 浩二
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-079938(JP,A)
【文献】特開2002-273780(JP,A)
【文献】特開2001-353768(JP,A)
【文献】特開2005-085482(JP,A)
【文献】特開2008-137361(JP,A)
【文献】特開2000-154267(JP,A)
【文献】特開平05-042648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00-43/58
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの成形工程で用いられるシートの製造装置であって、
高温の未加硫ゴムから帯状の未冷却シートを形成する圧延器と、この未冷却シートを冷却してシートを得る冷却器とを備え、
上記冷却器が、その内部に冷却液が流れる複数の冷却ドラムと、これらの冷却ドラム間を接続する接続管とを備え、
上記冷却ドラムと接続管とにより一本の冷却液の流路が形成されており、
上記未冷却シートが、上記流路の下流側に位置する冷却ドラムから上流側に位置する冷却ドラムに向けて、これらの冷却ドラム上を順に移動される、シートの製造装置。
【請求項2】
上記流路を流れる冷却液の流量が、200L/分以上600L/分以下である請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
上記冷却液中の異物を除去する浄化器をさらに備える請求項1又は2に記載の製造装置。
【請求項4】
上記冷却液を殺菌する殺菌器をさらに備える請求項1から3のいずれかに記載の製造装置。
【請求項5】
上記冷却液の液質を監視するモニター器をさらに備える請求項1から4のいずれかに記載の製造装置。
【請求項6】
タイヤの成形工程で用いられるシートの製造方法であって、
高温の未加硫ゴムから未冷却シートを形成する工程
及び
内部に冷却液が流れる複数の冷却ドラムとこれらを接続する接続管とにより一本の冷却液の流路が形成されている冷却器において、上記未冷却シートを、この流路の下流側に位置する冷却ドラムから上流側に位置する冷却ドラムに向けて、これらの冷却ドラム上を順に移動させることで冷却する工程
を含む、シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造に使用されるシートの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造では、成形工程において、未加硫ゴム又はコードを埋没させた未加硫ゴムからなる帯状のシートが用意される。このシートが適切な大きさに切断されて、ドラム又は剛体コアの上に巻かれる。これにより、インナーライナーやカーカス等のタイヤの構成部材が形成される。
【0003】
典型的なシートの製造においては、高温の未加硫ゴムが圧延器で圧延され、シート状とされる。このシート状の未加硫ゴム(未冷却シート)が冷却器で冷却され、シートが得られる。この冷却時のゴムの収縮によるシート寸法のばらつきを抑制するため、未冷却シートは、冷却器において、例えば複数の冷却ドラム上を移動されることで、速やかに冷却される。このシートは、ローラーに巻き取られて保管されるか、又はそのまま次の工程に送られる。シートの製造方法についての検討が、特開2008-137361公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-137361公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイヤの生産性や品質の向上のために、シートの粘着力の向上や粘着力のばらつきの低減は重要である。シートの粘着力やそのばらつきは、冷却により得られたシートの温度やこの温度のばらつきに依存する。これは、シートが巻き取られて保存されている間にもシートが放熱し、未加硫ゴムに添加されている硫黄、ステアリン酸等がシートの表面に析出するからである。不十分な冷却は析出物の量を増やし、粘着力を低下させうる。冷却した際のシートの温度のばらつきは、シートの粘着力のばらつきの要因となりうる。一方で、必要以上の冷却や、複雑な温度制御機構の導入は、製造コストの増大を招来しうる。簡易な仕組みで精度よくシートの温度が制御でき、これにより良好な粘着力及び粘着力のばらつきの抑制が実現されたシートが低コストで得られうる、シートの製造装置が求められている。
【0006】
本発明の目的は、低コストで良好な粘着力と粘着力のばらつきの抑制とが実現されたシートが得られる、シートの製造装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タイヤの成形工程で用いられるシートの製造装置に関する。この装置は、高温の未加硫ゴムから帯状の未冷却シートを形成する圧延器と、この未冷却シートを冷却してシートを得る冷却器とを備える。上記冷却器は、その内部に冷却液が流れる複数の冷却ドラムと、これらの冷却ドラム間を接続する接続管とを備える。上記冷却ドラムと接続管とにより、一本の冷却液の流路が形成されている。上記未冷却シートは、上記流路の下流側に位置する冷却ドラムから上流側に位置する冷却ドラムに向けて、これらの冷却ドラム上を順に移動される。
【0008】
好ましくは、上記流路を流れる冷却液の流量は、200L/分以上600L/分以下である。
【0009】
好ましくは、この装置は、上記冷却液中の異物を除去する浄化器をさらに備える。
【0010】
好ましくは、この装置は、上記冷却液を殺菌する殺菌器をさらに備える。
【0011】
好ましくは、この装置は、上記冷却液の液質を監視するモニター器をさらに備える。
【0012】
本発明は、タイヤの成形工程で用いられるシートの製造方法に関する。この方法は、
高温の未加硫ゴムから未冷却シートを形成する工程
及び
内部に冷却液が流れる複数の冷却ドラムとこれらを接続する接続管とにより一本の冷却液の流路が形成されている冷却器において、上記未冷却シートを、この流路の下流側に位置する冷却ドラムから上流側に位置する冷却ドラムに向けて、これらの冷却ドラム上を順に移動させることで冷却する工程
を含む、
【発明の効果】
【0013】
この装置では、冷却器の複数の冷却ドラムが接続管により接続されており、これらにより一本の冷却液の流路が形成されている。この装置では、全ての冷却ドラムに常に同じ流量の冷却液が安定して流れる。これは、シートの温度のばらつきの低減に寄与する。この装置では、未冷却シートは、流路の下流側に位置する冷却ドラムから上流側に位置する冷却ドラムに向けて、これらの冷却ドラム上を順に移動される。この装置では、流路の最も上流側に位置する冷却ドラム中の冷却液は、未冷却シートの熱の影響をほとんど受けていない。未冷却シートは、この冷却ドラムで最後に冷却される。これは、所定の温度のシートを得ることを可能にする。この装置では、良好な粘着力を有し、粘着力のばらつきが抑えられたシートが得られる。この装置では、シートの温度制御の精度を上げるための、複雑な制御機構は有していない。この装置の仕組みは、簡易である。これは、コストの抑制に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係るシートの製造装置示された概念図である。
図2図2は、図1の製造装置の一部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1は、本発明に係るシートの製造装置2が示された概念図である。図1において、矢印Xが示す方向が前方であり、この反対が後方である。紙面と垂直な方向が上下方向である。図2は、図1で示された装置2の一部が示された断面図である。図2において、矢印Xが示す方向が前方であり、この反対が後方である。矢印Zが示す方向が上方であり、この反対が下方である。この装置2は、圧延器4、冷却器6、浄化器8、殺菌器10及びモニター器12を備える。
【0017】
この装置2は、高温の未加硫ゴムを材料として、シートを形成する。図1及び2には、この未加硫ゴム14及びシート16も示されている。未加硫ゴム14は、例えば押出器から本装置2に供給される。未加硫ゴム14の温度は、典型的には60℃から90℃である。この未加硫ゴム14は、5phrから10phrの硫黄を含有する。形成されたシート16の温度は、典型的には20℃から30℃である。
【0018】
圧延器4は、一対のカレンダーロール18を備える。これらのカレンダーロール18は、図2の矢印の方向に回転する。この回転により、供給された未加硫ゴム14は、これらのカレンダーロール18の間を通される。これにより未加硫ゴム14は、圧延され帯状に成形される。この実施形態では、これにより帯状の未冷却シート20が得られる。カレンダーロール18間の隙間は、所望の値に設定されうる。これにより、所望の厚さの未冷却シート20が得られる。
【0019】
冷却器6は、冷却ドラム22及び接続管24を備える。図1及び2に示されるように、複数の冷却ドラム22が並列されている。図2に示されるように、この実施形態では、10個の冷却ドラム22が、上段及び下段それぞれに5個ずつ互い違いに並べられている。図2で示されるように、上側からこの冷却器6を見たとき、上段に並べられた冷却ドラム22と下段に並べられた冷却ドラム22とは、前後方向に重なりを有する。図1では見やすくするために、冷却ドラム22同士は重ならないように描かれている。
【0020】
それぞれの冷却ドラム22は、筒状である。冷却ドラム22の内部は空洞である。冷却ドラム22の内部には、冷却液26が流されている。典型的な冷却液26は、水である。図2に示されるように、未冷却シート20は、冷却ドラム22の外周面に接触している。冷却ドラム22は、図2の矢印の方向に回転できる。この回転により、未冷却シート20は冷却ドラム22上を移動される。未冷却シート20は、冷却ドラム22の外周面に接触しながら移動される。
【0021】
接続管24は、冷却ドラム22間を接続する。接続管24の内部は空洞である。接続管24の内部には、冷却液26が流されている。
【0022】
図2の符号Iで示されるのが、この冷却器6の冷却液26の入り口である。冷却液26は、最も後方に位置する冷却ドラム22の一方の端から入れられる。この冷却ドラム22の他方の端は、接続管24により隣接する冷却ドラム22(後方から2番目の冷却ドラム22)の一方の端に接続される。この後方から2番目の冷却ドラム22の他方の端は、接続管24により後方から3番目の冷却ドラム22の一方の端に接続される。このようにして、全ての冷却ドラム22は、接続管24により直列に接続される。図2において符号Oで示されるのが、この冷却器6の冷却液26の出口である。冷却ドラム22と接続管24とにより、入り口Iから出口Oまで繋がる、一本の冷却液26の流路が形成されている。
【0023】
なお、図1では見易くするために、接続管24は冷却ドラム22に対して細く描かれている。実際には、接続管24は、必要な流量を確保するのに十分な太さを有する。例えば接続管24の内径は、冷却ドラム22の内径と同等とされる。
【0024】
浄化器8は、冷却器6の入り口Iの上流側に位置する。浄化器8は、冷却液26中の浮遊物を除去する。この実施形態では、浄化器8は、網状のストレーナーを備える。
【0025】
殺菌器10は、冷却器6の入り口Iの上流側に位置する。殺菌器10は、冷却液26を殺菌することで、冷却液26中にバイオフィルムが発生することを防止する。この実施形態では、殺菌器10は、紫外線照射器である。
【0026】
モニター器12は、冷却器6の出口Oの下流側に位置する。モニター器12は、冷却液26の液質を監視する。モニター器12は、冷却液26中の浮遊物の量を計測する。モニター器12の計測結果から、冷却器6の洗浄の時期が決められる。
【0027】
この実施形態では、浄化器8及び殺菌器10は冷却器6の入り口Iの上流側に位置し、モニター器12は、冷却器6の出口Oの下流側に位置している。浄化器8、殺菌器10及びモニター器12の位置は、この位置に限られない。浄化器8又は殺菌器10が出口Oの下流側に位置してもよく、モニター器12が入り口Iの上流側に位置していてもよい。
【0028】
この装置2を使用したシート16の製造方法は、圧延工程と冷却工程とを備える。
【0029】
圧延工程では、圧延器4に、高温の未加硫ゴム14が供給される。カレンダーロール18が回転し、未加硫ゴム14がこれらのカレンダーロール18の間を通される。未加硫ゴム14は、圧延され帯状に成形される。これにより帯状の未冷却シート20が得られる。未冷却シート20の厚みは、典型的には0.5mmから2.0mmである。未冷却シート20は、冷却器6に送られる。
【0030】
冷却工程では、図示されないポンプから、冷却液26がこの製造装置2に送られる。図1の矢印Aで示されるのが、ポンプからの冷却液26が流れる方向である。冷却液26は、浄化器8及び殺菌器10を通り、入り口Iから冷却器6に送られる。冷却液26は、最も後方に位置する冷却ドラム22に流れ込む。冷却液26は、冷却ドラム22及び接続管24で形成された流路を通り、出口Oから排出される。この冷却液26は、モニター器12を通り、ポンプに戻される。ポンプにより、冷却液26が循環される。この実施形態では、循環される冷却液26の流量は、200L/分から600L/分である。
【0031】
冷却工程では、上記の冷却液26が循環されるとともに、それぞれの冷却ドラム22が図2の矢印の方向に回転する。圧延器4から送られた未冷却シート20が、冷却ドラム22上を移動される。未冷却シート20は、図2の矢印Bの方向に移動する。未冷却シート20は、前方に位置する冷却ドラム22から後方に位置する冷却ドラム22に、順に送られる。上記のとおり、後方に位置する冷却ドラム22が、冷却液26の流路の上流側となっている。未冷却シート20は、流路の下流側に位置する冷却ドラム22から上流側に位置する冷却ドラム22に向けて、これらの冷却ドラム22上を順に移動される。未冷却シート20は、冷却ドラム22上を移動することで、冷却される。これにより、シート16が得られる。
【0032】
以下、本発明の作用効果が説明される。
【0033】
この装置2では、冷却器6の複数の冷却ドラム22が接続管24で接続されており、これらの冷却ドラム22と接続管24とにより一本の冷却液26の流路が形成されている。この装置2では、全ての冷却ドラム22に常に同じ流量の冷却液26が安定して流れる。これは、シート16の温度のばらつきの低減に寄与する。この装置2では、温度のばらつきが抑えられたシート16が得られる。この装置2では、粘着力のばらつきが抑えられたシート16が得られる。
【0034】
この装置2では、未冷却シート20は、流路の下流側に位置する冷却ドラム22から上流側に位置する冷却ドラム22に向けて、これらの冷却ドラム22上を順に移動される。この装置2では、冷却ドラム22内の冷却液26の温度は、流路の下流ほど未冷却シート20の熱を奪って高くなりうる。流路の最も上流側に位置する冷却ドラム22内の冷却液26は、未冷却シート20の熱の影響をほとんど受けていない。未冷却シート20は、この冷却ドラム22で最後に冷却される。これは、所定の温度のシート16を得ることを可能にする。この装置2では、良好な粘着力を有するシート16が得られる。
【0035】
この装置2では、上記のとおり、冷却ドラム22と接続管24とにより一本の冷却液26の流路を形成し、未冷却シート20を流路の下流側に位置する冷却ドラム22から上流側に位置する冷却ドラム22に向けて順に移動させることで、良好な粘着力を有し、粘着力のばらつきが抑えられたシート16を得ることを可能としている。この装置2では、シート16の温度制御の精度を上げるための、複雑な制御機構は有していない。この装置2の仕組みは、簡易である。これは、コストの抑制に寄与する。
【0036】
冷却液26の流量は、前述の通り200L/分以上が好ましい。この装置2では、一本の冷却液26の流路が形成されているため、流量を200L/分以上と多くしても、全ての冷却ドラム22には、同じ流量の冷却液26が安定して流れる。一本の流路に200L/分以上の冷却液26を流すことで、未冷却シート20は効果的に冷却される。これは、シート16の良好な粘着力及び粘着力のばらつきの低減に効果的に寄与する。この観点から、冷却液26の流量は、300L/分以上がより好ましい。冷却液26の流量は、600L/分以下が好ましい。冷却液26の流量を600L/分以下とすることで、装置2の規模が適切に抑えられる。これは、装置2のコストの増大を防止する。
【0037】
この装置2は、浄化器8を備える。この浄化器8により、冷却液26中の浮遊物が除去される。これは、冷却ドラム22及び接続管24の詰まりを防止する。これは、冷却液26の安定した流れに寄与する。この装置2では、未冷却シート20は安定して冷却される。この装置2では、温度のばらつきが少ないシート16が得られる。これは、シート16の粘着力のばらつきの低減に、効果的に寄与する。
【0038】
この装置2は、殺菌器10を備える。この殺菌器10で冷却液26を殺菌することにより、冷却液26中でのバイオフィルムの発生が防止される。これは、冷却ドラム22及び接続管24の詰まりを防止する。これは、冷却液26の安定した流れに寄与する。この装置2では、未冷却シート20は安定して冷却される。この装置2では、温度のばらつきが少ないシート16が得られる。これは、シート16の粘着力のばらつきの低減に、効果的に寄与する。
【0039】
この装置2は、冷却液26の液質を監視するモニター器12を備える。モニター器12の結果から、冷却器6の洗浄の時期が決められる。この装置2では、適切な時期に冷却液26の入れ替えや、冷却器6の洗浄ができる。この装置2では、温度のばらつきが少ないシート16が得られる。これは、シート16の粘着力のばらつきの低減に、効果的に寄与する。
【0040】
未冷却シート20の移動速度は、60m/分以下が好ましい。未冷却シート20の移動速度を60m/分以下とすることで、この未冷却シート20は冷却器6で十分に冷却できる。これは、所望の温度のシート16を得ることを可能にする。この装置2では、良好な粘着力を有するシート16が得られる。この観点から、移動速度は、55m/分以下がより好ましい。未冷却シート20の移動速度は、30m/分以上が好ましい。移動速度を30m/分以上とすることで、効率的に未冷却シート20を冷却することができる。これは、生産性の向上に寄与する。この観点から移動速度は、40m/分以上がより好ましい。
【0041】
冷却ドラム22の数は、8以上が好ましい。冷却ドラム22の数を8以上とすることで、未冷却シート20は冷却器6で十分に冷却できる。これは、所望の温度のシート16を得ることを可能にする。この装置2では、良好な粘着力を有するシート16が得られる。冷却ドラム22の数は、12以下が好ましい。冷却ドラム22の数を12以下とすることで、装置2の規模が適切に抑えられる。これは、装置2のコストの増大を防止する。
【0042】
冷却器6に送られる冷却液26の温度は、30℃以下が好ましい。冷却液26の温度を30℃以下とすることで、未冷却シート20は冷却器6で十分に冷却できる。これは、所望の温度のシート16を得ることを可能にする。この装置2では、良好な粘着力を有するシート16が得られる。冷却液26の温度は、20℃以上が好ましい。冷却液26の温度を20℃以上とすることで、シート16の十分な粘着力を実現したうえで、製造コストが抑えられる。
【0043】
以上説明された実施形態では、一種類の未加硫ゴム14を圧延器4で圧延して、未冷却シート20が得られた。圧延器が、2種類の未加硫ゴムをそれぞれ圧延し、これらを貼り合わせることで未冷却シートを形成してもよい。この場合、圧延器は、カレンダーロール18の他に、シート状の未加硫ゴムを貼り合わせる、貼り合わせ器をさらに備える。例えば二層のゴムからなるインナーライナー用の未冷却シートは、これにより得られる。圧延器が、未加硫ゴムを圧延し、これをコードからなるシートに両側から貼り合わせて、未冷却シートを形成してもよい。この場合、圧延器は、シート状の未加硫ゴムとコードからなるシートを貼り合わせる、貼り合わせ器をさらに備える。例えばカーカス用の未冷却シートは、これにより得られる。
【実施例
【0044】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0045】
[実施例1]
図1及び2で示された装置を使用して、シートを製造した。この製造におけるパラメータが表1に示されている。この製造装置では、未冷却シートは、冷却液の流路の下流側に位置する冷却ドラムから上流側に位置する冷却ドラムに向けて、これらの冷却ドラム上を順に移動される。このことが表1の「未冷却シート移動方向」の欄に、「下から上」として示されている。冷却ドラムの数は、10である。未冷却シートの移動速度は、50m/分とされた。得られたシートの厚みは、1.6mmであった。シートの目標の温度は、25℃である。
【0046】
[比較例1]
比較例1の装置では、未冷却シートは、冷却液の流路の上流側に位置する冷却ドラムから下流側に位置する冷却ドラムに向けて、これらの冷却ドラム上を順に移動される。このことが表1の「未冷却シート移動方向」の欄に、「上から下」として示されている。冷却液の流量は、表1の通りとされた。これらの他は実施例1と同様にして、シートを製造した。
【0047】
[実施例2-4]
冷却液の流量が表1の通りとされた他は実施例1と同様にしたのが、実施例2-4である。
【0048】
[シート温度]
製造された直後のシートの表面温度が計測された。計測位置は、シートの長さ10mの範囲内で無作為に選ばれた10箇所である。これらの平均温度が、「シート温度」として表1に示されている。これは、目標温度25℃に近いほど好ましい。
【0049】
[粘着力及び粘着力の標準偏差]
得られたシートを2時間放置した後、シートの粘着力が計測された。計測には、東洋精機(株)社製のPICMAタックテスタが使用された。計測位置は、シートの長さ10mの範囲内で無作為に選ばれた10箇所である。計測された粘着力の平均値が表1の「粘着力」の欄に、その標準偏差が「粘着力標準偏差」の欄に、それぞれ比較例1を100とした指数で示されている。「粘着力」は、大きいほど粘着力が大きい。「粘着力標準偏差」は、小さいほど粘着力のばらつきが小さい。これは、小さいほど好ましい。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示されるように、実施例の製造装置は、比較例の製造装置に比べて総合的に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明された装置は、種々のタイヤ用の種々のシートの製造にも適用されうる。
【符号の説明】
【0053】
2・・・製造装置
4・・・圧延器
6・・・冷却器
8・・・浄化器
10・・・殺菌器
12・・・モニター器
14・・・未加硫ゴム
16・・・シート
18・・・カレンダーロール
20・・・未冷却シート
22・・・冷却ドラム
24・・・接続管
26・・・冷却液
図1
図2