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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/275 20180101AFI20220830BHJP
   F21S 41/255 20180101ALI20220830BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20220830BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20220830BHJP
   F21W 102/135 20180101ALN20220830BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220830BHJP
【FI】
F21S41/275
F21S41/255
F21S41/148
F21S41/663
F21W102:135
F21Y115:10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018180269
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020053215
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】大森 洋介
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-078089(JP,A)
【文献】特開2016-213156(JP,A)
【文献】特開2017-139146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/275
F21S 41/255
F21S 41/148
F21S 41/663
F21W 102/135
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具であって、
前記車両用灯具は、
ロービーム配光用の光を出射する第1光源と、
前記第1光源の前方側に配置されたレンズと、
前記第1光源と前記レンズの間に配置され、ロービーム配光パターンのカットオフラインを形成するシェードと、
前記第1光源からの光を前記レンズ側に反射するリフレクタと、を備え、
前記レンズは、
光が入射する入射面と、
入射した光を前方側に照射する出射面と、を備え、
前記入射面は、
スクリーン上の鉛直基準線から水平方向の所定の範囲内に照射される光が入射する中央側領域内に設けられる第1の光拡散部と、
前記中央側領域内に設けられ、前記第1の光拡散部の下側に連なる第2の光拡散部と、を備え、
前記第1の光拡散部と前記第2の光拡散部の境界が、前記入射面のカットオフライン上に照射される光を入射させるための鉛直方向の第1範囲内に位置し、
前記第2の光拡散部は、前記第1の光拡散部よりも光の拡散幅が大きいことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1の光拡散部と前記第2の光拡散部の境界が、前記第1範囲の鉛直方向のほぼ中間位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記車両用灯具は、前記第1光源と前記レンズの間に配置され、ハイビーム付加配光用の光を出射する第2光源を備え、
前記入射面は、前記中央側領域に連なる水平方向外側の外側領域の少なくとも前記第1光源及び前記第2光源の光が入射する領域に設けられた第3の光拡散部を備え、
前記第3の光拡散部は、光の拡散幅が前記第1の光拡散部の光の前記拡散幅と同じであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第1の光拡散部は、前記入射面の鉛直方向上側の端まで設けられており、
前記第2の光拡散部は、前記入射面の鉛直方向下側の端まで設けられており、
前記第3の光拡散部は、前記入射面の前記外側領域全体に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記光拡散部は、前記入射面から突出するように形成され、隙間なく連なるように設けられた菱形プリズムを備え、
光の前記拡散幅が、前記菱形プリズムの突出高さによって設定されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記中央側領域が、前記スクリーン上の鉛直基準線から水平方向で10度以内の範囲に照射される光が入射する領域であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記第1の光拡散部と前記第2の光拡散部の境界が前記レンズのレンズ光軸よりも5mm以上鉛直方向下側に位置することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光照射方向前方に向かって略水平に延びる光軸を有する光源と、光照射方向前方に向かって開口する凹状の楕円系反射面と、光軸上で楕円系反射面よりも光照射方向前方に配設された投影レンズとを備え、楕円系反射面は、光源からの光を光照射方向前方に向かって反射するよう、第一の焦点位置が当該光源付近に位置し、かつ第二の焦点位置が光軸上に位置した状態で配置されており、投影レンズは、光照射方向前方の光学面が凸状、光照射方向後方の光学面が平坦に形成され、光照射方向後方の側の焦点位置が第二の焦点位置付近に位置するように配置されており、光照射方向後方の光学面のうち、上下方向における中央部の所定領域には、横方向に延在するとともに上下方向に並べられた複数の柱状の湾曲部が凹設又は凸設されていることを特徴とする車両用前照灯が開示されている。
【0003】
そして、特許文献1では、投影レンズは光照射方向前方の光学面が凸状、光照射方向後方の光学面が平坦に形成され、光照射方向後方の光学面のうち、上下方向における中央部の所定領域には、横方向に延在するとともに上下方向に並べられた複数の柱状の湾曲部が凹設又は凸設されているので、光源から出射されて光照射方向後方の光学面に入射する光のうち、中央部に入射する光は各湾曲部によって上下方向に屈折することとなり、遮光部材によって光の一部が遮蔽されることでカットオフが形成される場合であっても、湾曲部という簡易な構成によって明暗境界を暈すことができることが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-199156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるように、レンズの裏面(入射面)に水平方向に延在する断面半円状の柱状体を設ける構成とすると、カットオフラインが必要以上に暈されてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、カットオフラインを適切に暈すことができる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために以下の構成によって把握される。
(1)本発明の車両用灯具は、ロービーム配光用の光を出射する第1光源と、前記第1光源の前方側に配置されたレンズと、前記第1光源と前記レンズの間に配置され、ロービーム配光パターンのカットオフラインを形成するシェードと、前記第1光源からの光を前記レンズ側に反射するリフレクタと、を備え、前記レンズは、光が入射する入射面と、入射した光を前方側に照射する出射面と、を備え、前記入射面は、スクリーン上の鉛直基準線から水平方向の所定の範囲内に照射される光が入射する中央側領域内に設けられる第1の光拡散部と、前記中央側領域内に設けられ、前記第1の光拡散部の下側に連なる第2の光拡散部と、を備え、前記第1の光拡散部と前記第2の光拡散部の境界が、前記入射面のカットオフライン上に照射される光を入射させるための鉛直方向の第1範囲内に位置し、前記第2の光拡散部は、前記第1の光拡散部よりも光の拡散幅が大きい。
【0008】
(2)上記(1)の構成において、前記第1の光拡散部と前記第2の光拡散部の境界が、前記第1範囲の鉛直方向のほぼ中間位置に設けられている。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記車両用灯具は、前記第1光源と前記レンズの間に配置され、ハイビーム付加配光用の光を出射する第2光源を備え、前記入射面は、前記中央側領域に連なる水平方向外側の外側領域の少なくとも前記第1光源及び前記第2光源の光が入射する領域に設けられた第3の光拡散部を備え、前記第3の光拡散部は、光の拡散幅が前記第1の光拡散部の光の前記拡散幅と同じである。
【0010】
(4)上記(3)の構成において、前記第1の光拡散部は、前記入射面の鉛直方向上側の端まで設けられており、前記第2の光拡散部は、前記入射面の鉛直方向下側の端まで設けられており、前記第3の光拡散部は、前記入射面の前記外側領域全体に設けられている。
【0011】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つの構成において、前記光拡散部は、前記入射面から突出するように形成され、隙間なく連なるように設けられた菱形プリズムを備え、光の前記拡散幅が、前記菱形プリズムの突出高さによって設定されている。
【0012】
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つの構成において、前記中央側領域が、前記スクリーン上の鉛直基準線から水平方向で10度以内の範囲に照射される光が入射する領域である。
【0013】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つの構成において、前記第1の光拡散部と前記第2の光拡散部の境界が前記レンズのレンズ光軸よりも5mm以上鉛直方向下側に位置する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カットオフラインを適切に暈すことができる車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る実施形態の車両用灯具を備えた車両の平面図である。
図2】本発明に係る実施形態の灯具ユニットの側面図である。
図3】本発明に係る実施形態の灯具ユニットの断面図である。
図4】本発明に係る実施形態の灯具ユニットの一部分解斜視図である。
図5】本発明に係る実施形態の灯具ユニットのレンズ及びレンズホルダを除く部分の分解斜視図である。
図6】本発明に係る実施形態のスクリーン上に投影される配光パターンを模式的に示した図である。
図7】本発明に係る実施形態のレンズ(レンズ部)の入射面を示す図である。
図8】本発明に係る実施形態の第1の光拡散部と第2の光拡散部によってどのようにカットオフラインが暈されるのかを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する。)について詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。
【0017】
また、実施形態及び図中において、特に断りがない場合、「前」、「後」は、各々、車両の「前進方向」、「後進方向」を示し、「上」、「下」、「左」、「右」は、各々、車両に乗車する運転者から見た方向を示す。
なお、言うまでもないが「上」、「下」は鉛直方向での「上」、「下」でもあり、「左」、「右」は水平方向での「左」、「右」でもある。
【0018】
図1は、本発明に係る実施形態の車両用灯具を備えた車両102の平面図である。
図1に示すように、本発明に係る実施形態の車両用灯具は、車両102の前方の左右のそれぞれに設けられる車両用の前照灯(101L、101R)であり、以下では単に車両用灯具と記載する。
【0019】
本実施形態の車両用灯具は、車両前方側に開口したハウジング(図示せず)と開口を覆うようにハウジングに取り付けられるアウターレンズ(図示せず)を備え、ハウジングとアウターレンズとで形成される灯室内に灯具ユニット1(図2参照)等が配置されている。
【0020】
図2は灯具ユニット1の側面図であり、図3は灯具ユニット1の図2に示す灯具ユニット光軸(以下、灯具光軸Zともいう)に沿った断面図である。
また、図4は灯具ユニット1の一部分解斜視図であり、図5は灯具ユニット1のレンズ70及びレンズホルダ60を除く部分の分解斜視図である。
【0021】
さらに、図6は、スクリーン上に投影される配光パターンを模式的に示した図であり、具体的には、ロービーム配光パターンLPとハイビーム配光パターンHP(ハイビーム付加配光HAP)を説明するための図である。
なお、図6のVU-VL線はスクリーン上での鉛直基準線を示し、図6のHL-HR線はスクリーン上での水平基準線を示している。
【0022】
図3及び図5に示すように、灯具ユニット1は、主に、ヒートシンク10と、冷却ファン20と、第1光源Lと、リフレクタ30と、シェード40と、第2光源Hと、反射部材50と、レンズホルダ60と、レンズ70と、を備えている。
【0023】
(ヒートシンク10)
ヒートシンク10は、第1光源L及び第2光源Hの発生する熱を効率よく、放熱するために、熱伝導率のよい金属又は樹脂等によって形成され、本実施形態では、ヒートシンク10の後述する各部が一体成型されたアルミダイカスト製のヒートシンク10になっている。
ただし、本実施形態のように、一体成型品のヒートシンク10に限定される必要はなく、一部が別部品で作製されて組み付けた形態のヒートシンク10であってもよい。
【0024】
ヒートシンク10は、第1光源Lが配置される第1ベース部12と、第1ベース部12の前方側であって第1ベース部12の下側に位置するとともに前方斜め下側に傾斜する、第2光源Hが配置される第2ベース部13と、を有するベース部11を備えている。
【0025】
第1ベース部12は、図5に示すように、上面に一体に形成され、第1光源Lを配置する第1光源配置部12Aを備えている。
そして、第1光源配置部12Aに配置された第1光源Lは、第1ベース部12に一対のネジ12N1で固定される光源ホルダ80によって、第1光源配置部12Aに対して固定される。
【0026】
一方、第2ベース部13は、前方側を向く前面が第2光源Hを受けて、第2光源Hを配置する第2光源配置部13Aになっている。
なお、第2光源配置部13Aには、左右一対の位置決めピン13AAが前方側に突出するように形成されているとともに、その位置決めピン13AAの少し上側の位置に左右一対のネジ固定孔13ABが形成されている。
【0027】
そして、後述するように、第2光源H、シェード40、及び、反射部材50は、それぞれ位置決めピン13AAに対応する一対の位置決めピン挿入孔(位置決めピン挿入孔H11、位置決めピン挿入孔42A、位置決めピン挿入孔52A)と、ネジ固定孔13ABに対応する一対のネジ挿入孔(ネジ挿入孔H12、ネジ挿入孔42B、ネジ挿入孔52B)と、を備えており、図4に示すように、第2光源H、シェード40、及び、反射部材50が、ネジ13N1で第2ベース部13に対して、共止めされるようになっている。
【0028】
また、図3に示すように、ヒートシンク10は、ベース部11の下側にベース部11に一体に設けられた複数の放熱フィン11Fを備えている。
具体的には、放熱フィン11Fは、第1ベース部12から下側に延在し、第1ベース部12と一体に設けられた前後方向に並ぶ複数の第1放熱フィン12Fと、第2ベース部13から後方側に延在し、第2ベース部13と一体に設けられた水平方向に並ぶ複数の第2放熱フィン13Fと、を備えている。
【0029】
第1放熱フィン12Fは、薄板状であって、その薄板状の面が前後方向に向くように形成されており、冷却ファン20から第1放熱フィン12F同士の間に送られた風は、水平方向に流れるようになっている。
【0030】
近年は、車両用灯具の小型化のために、灯具ユニット1が配置される灯室内の後方側の内壁面が灯具ユニット1の後方近くに位置する傾向にある。
この場合、風の流れを後方側に向けるようにすると、灯具ユニット1の後方近くに位置する灯室内の後方側の内壁面の影響で風の流れが悪くなり、冷却効率が低下するおそれがあるが、本実施形態のように、水平方向に風を流すようにすれば、そのような冷却効率の低下を回避することができる。
【0031】
一方、第2放熱フィン13Fは、薄板状であって、その薄板状の面が左右方向(水平方向)に向くように形成されており、冷却ファン20から送られる風が第2ベース部13に沿って、上側に流れるようにしている。
そして、この風の流れを阻害しないように、第1ベース部12と第2ベース部13の間には、水平方向に横長の上下方向に開口する開口部11Aが形成されている。
【0032】
このため、図5に示すように、第2ベース部13の左右外側に設けられたレンズホルダ60を取り付ける一対のレンズホルダ取付部14等の影響を受けて冷却効率が低下することを回避することができる。
【0033】
また、風は、第2ベース部13に沿って流れるうちに熱を奪い、温度が上昇するため、左右方向ではなく、上側に流れるようにすることで、より一層流れがよくなるため、冷却効率を高めることが可能である。
【0034】
さらに、その風は開口部11Aを通じてリフレクタ30側に流入して、第1ベース部12とリフレクタ30の間の空間の冷却にも寄与するため、第1光源Lの冷却効率をより一層高めることができる。
【0035】
先にも、少し触れたとおり、ヒートシンク10は、図5に示すように、第2ベース部13の左右外側に設けられた一対のレンズホルダ取付部14を備えており、図4に示すように、レンズホルダ取付部14は、それぞれ位置決めピン14Aと、位置決めピン14Aを挟んで上下に設けられた一対のネジ固定孔14Bと、を備えている。
【0036】
そして、後述するように、レンズホルダ60は、位置決めピン14Aに対応する位置決めピン挿入孔(位置決めピン挿入孔61BA、位置決めピン挿入孔62BA)と、ネジ固定孔14Bに対応するネジ挿入孔(ネジ挿入孔61BB、ネジ挿入孔62BB)と、を備えており、図2に示すように、ネジ14N1でレンズホルダ取付部14に対して固定されるようになっている。
【0037】
なお、ヒートシンク10は、図2に示すように、下向きに開口するネジ固定孔が形成された冷却ファン取付脚部15を有しており、その冷却ファン取付脚部15にネジ15N1で冷却ファン20が取り付けられている。
【0038】
(冷却ファン20)
冷却ファン20は、図3に示すように、ヒートシンク10の放熱フィン11Fの下側に配置され、先に述べたように、ネジ15N1によって、ヒートシンク10の冷却ファン取付脚部15に固定されている。
【0039】
そして、冷却ファン20を駆動させることで、風が複数の放熱フィン11F同士の間に送り込まれ、ヒートシンク10による冷却効率が高められ、効率よく第1光源L及び第2光源Hを冷却することができる。
【0040】
(第1光源L)
第1光源Lは、ロービーム配光用の光を出射する光源であり、基板L1と、基板L1上に設けられた1つの第1発光チップL2と、を備えている。
なお、第1発光チップL2の数は1つに限定される必要はなく、複数の第1発光チップL2(例えば4チップ)が基板L1上に設けられたものであってもよい。
【0041】
そして、第1光源Lは、光を上側に出射するように第1ベース部12上に配置されており、出射した光は、第1光源L側を向くリフレクタ30の反射面31によってレンズ70側に反射される。
【0042】
なお、本実施形態では、第1光源Lは、第1発光チップL2がLEDチップであるLED光源を用いるようにしているが、第1発光チップL2がLDチップ(レーザダイオードチップ)であるレーザ光源等であってもよく、第1光源Lには、半導体型光源が好適に用いられる。
【0043】
(リフレクタ30)
リフレクタ30は、図5に示すように、第1光源Lからの光をレンズ70側に反射する反射面31(図3参照)を有する反射部30Aと、反射部30Aの下端外周に設けられたフランジ部30Bと、を備えている。
【0044】
そして、第1ベース部12上には、リフレクタ30の位置決め用の左右一対の位置決めピン12Bと、リフレクタ30をネジ固定するための一対のネジ12N2を固定する左右一対のネジ固定孔12Cが設けられており、リフレクタ30のフランジ部30Bは、位置決めピン12Bに対応する左右一対のピン挿入孔30BAと、ネジ固定孔12Cに対応する左右一対のネジ挿入孔30BBと、を備えている。
【0045】
このため、リフレクタ30を位置決めピン12Bで位置決めするように、第1ベース部12上に配置した後、ネジ12N2をネジ固定孔12Cに螺合させることで、リフレクタ30を第1ベース部12に対して固定することができる。
【0046】
このように固定されたリフレクタ30は、図3に示すように、前方側を開口した状態として、第1光源L上を半ドーム状に覆った状態となり、第1光源Lからの光が前方側の開口を通じてレンズ70側に照射されることになる。
【0047】
なお、本実施形態では、第1光源Lの前方側近傍を遮光する板部材90を備えており、板部材90は、リフレクタ30と共に第1ベース部12に共止めされるようになっている。
また、リフレクタ30は反射面31が2つの焦点を有する楕円面状に形成されており、リフレクタ30は、後方側の焦点となる反射面31の第1焦点(リフレクタ30の後方側の第1焦点ともいう。)がほぼ第1光源Lの第1発光チップL2の発光中心に一致するとともに、前方側の焦点となる反射面31の第2焦点BP(リフレクタ30の前方側の第2焦点BPともいう。)が前後方向で見てシェード40と重なる範囲内であってシェード40の下側に位置するように、第1ベース部12上に配置されている。
【0048】
(シェード40)
シェード40は、図3及び図4に示すように、前後方向で見て、第1光源Lとレンズ70の間に配置され、リフレクタ30でレンズ70側に反射された第1光源Lからの光のうち、レンズ70の下側に向かう光の一部を遮光し、ロービーム配光パターンLP(図6参照)のカットオフラインCL(図6参照)を形成するための部材である。
【0049】
このため、シェード40は、図5に示すように、カットオフラインCL(図6参照)の形状に合わせた形状を有し、後述する第2光源Hの第2発光チップH2の上側に位置し、カットオフラインCL(図6参照)を形成する遮光部41を備えている。
【0050】
具体的には、カットオフラインCLは、水平方向に延在する上側水平カットオフラインCL1と、クリーンの水平基準線(HL-HR線参照)より下側まで延在するように、上側水平カットオフラインCL1のスクリーンの鉛直基準線(VU-VL線参照)側の端部から鉛直基準線(VU-VL線参照)に向かって斜め下側に延びる斜めカットオフラインCL2と、斜めカットオフラインCL2から離れる方向に斜めカットオフラインCL2のスクリーンの鉛直基準線(VU-VL線参照)側の端部から水平方向に延在する下側水平カットオフラインCL3と、を備えており、シェード40は、図5に示すように、上側水平カットオフラインCL1、斜めカットオフラインCL2、及び、下側水平カットオフラインCL3を形成するのに合わせた形状の遮光部41を備えている。
【0051】
また、シェード40は、遮光部41の左右の端部(つまり、両端部)のそれぞれに一体に設けられ、ヒートシンク10(より詳細には、第2ベース部13)に固定するための一対のアーム部42を備えている。
【0052】
そして、左右一対のアーム部42のそれぞれには、第2ベース部13の第2光源配置部13Aの位置決めピン13AAに対応する位置決めピン挿入孔42Aと、第2ベース部13の第2光源配置部13Aのネジ固定孔13ABに対応するネジ挿入孔42Bと、が形成されており、先に説明したように、ネジ13N1で第2ベース部13に対して固定できるようになっている。
【0053】
(第2光源H)
第2光源Hは、ハイビーム付加配光用の光を出射する光源であり、図3に示すように、前後方向の位置で見て、第1光源Lとレンズ70の間に配置されている。
【0054】
そして、第2光源Hは、図5に示すように、基板H1と、基板H1上に設けられ、水平方向に並ぶ複数の第2発光チップH2と、を備えており、ハイビーム配光パターンHP(図6参照)とする場合には、第2光源Hからの光で形成されるハイビーム付加配光HAP(図6参照)がロービーム配光パターンLP(図6参照)の上側に付加されることで、ハイビーム配光パターンHP(図6参照)が形成される。
【0055】
このため、第2発光チップH2の一部又は全部を点消灯させることで、対向車や先行車に対するグレアを抑制するように、ハイビーム配光パターンHP(より詳細には、ハイビーム付加配光HAPの状態)を変化させる可変ハイビーム(Adaptive Driving Beam)制御を行うことができる。
【0056】
本実施形態では、第2光源Hも、第1光源Lと同様に第2発光チップH2にLEDチップを用いたLED光源である。
【0057】
ただし、第1光源Lで説明したのと同様に、第2発光チップH2がLDチップ(レーザダイオードチップ)であるレーザ光源等であってもよく、第2光源Hには、半導体型光源が好適に用いられる。
【0058】
そして、基板H1には、第2ベース部13の第2光源配置部13Aの位置決めピン13AAに対応する左右一対の位置決めピン挿入孔H11と、第2ベース部13の第2光源配置部13Aのネジ固定孔13ABに対応する左右一対のネジ挿入孔H12と、が形成されており、先に説明したように、ネジ13N1で第2ベース部13に対して固定できるようになっている。
【0059】
(反射部材50)
反射部材50は、第2発光チップH2よりも下側に配置され、第2発光チップH2からの光の一部をレンズ70の上側に向けて反射する部材であり、第2光源H(第2発光チップH2)からの光をレンズ70に向けて反射する反射部51と、反射部51の左右に一体に設けられ、第2ベース部13に固定するための固定部52と、を備えている。
【0060】
そして、反射部51でレンズ70の下側に入射する光をレンズ70の上側に反射させることで、第2光源H(第2発光チップH2)からの光で形成されるハイビーム付加配光HAPが上方に広がりを有する配光となる。
【0061】
また、左右一対の固定部52のそれぞれには、第2ベース部13の第2光源配置部13Aの位置決めピン13AAに対応する位置決めピン挿入孔52Aと、第2ベース部13の第2光源配置部13Aのネジ固定孔13ABに対応するネジ挿入孔52Bと、が形成されており、先に説明したように、ネジ13N1で第2ベース部13に対して固定できるようになっている。
【0062】
(レンズホルダ60)
レンズホルダ60は、図3及び図4に示すように、後述するレンズ70(より詳細にはフランジ部72)の後方側を受ける第1ホルダ61と、レンズ70(より詳細にはフランジ部72)の前方側からレンズ70(より詳細にはフランジ部72)を第1ホルダ61側に押圧する第2ホルダ62と、を備えている。
【0063】
第1ホルダ61は、レンズ70の光が入射する入射面71Aに対応する開口部の周縁部がレンズ70のフランジ部72の後方側を受ける受部61AAとされ、ヒートシンク10に取り付けられたときに、レンズ70が前方側の所定の位置に位置するように形成された第1ホルダ本体部61Aと、第1ホルダ本体部61Aの後方側に一体に設けられ、ヒートシンク10の一対のレンズホルダ取付部14への固定のための左右一対の第1取付部61Bと、を備えている。
【0064】
また、受部61AAには、レンズ70の左右一対の位置決め凹部72Aに係合する左右一対の位置決め突起61ABが設けられている。
【0065】
一方、第2ホルダ62は、レンズ70の光が出射する出射面71Bに対応する開口部の周縁部がレンズ70のフランジ部72を第1ホルダ61の受部61AA側に押圧する押圧部62AAとされ、第1ホルダ61の第1ホルダ本体部61Aに外装される第2ホルダ本体部62Aと、ヒートシンク10の一対のレンズホルダ取付部14への固定のための左右一対の第2取付部62Bと、を備えている。
【0066】
そして、左右一対の第1ホルダ61の第1取付部61B、及び、左右一対の第2ホルダ62の第2取付部62Bのそれぞれには、ヒートシンク10のレンズホルダ取付部14の位置決めピン14Aに対応する位置決めピン挿入孔(位置決めピン挿入孔61BA、位置決めピン挿入孔62BA)と、その位置決めピン挿入孔(位置決めピン挿入孔61BA、位置決めピン挿入孔62BA)を挟んで上下に一対設けられたヒートシンク10のレンズホルダ取付部14のネジ固定孔14Bに対応するネジ挿入孔(ネジ挿入孔61BB、ネジ挿入孔62BB)と、を備えている。
【0067】
したがって、レンズホルダ60は、第1ホルダ61と第2ホルダ62とでレンズ70のフランジ部72を狭持するようにして、ネジ14N1でヒートシンク10のレンズホルダ取付部14に取り付けられるようになっている。
【0068】
(レンズ70)
レンズ70は、図3及び図4に示すように、前後方向で見て、第1光源Lの前方側に配置されており、配光制御を行うレンズ部71と、レンズ部71の外周部に一体に設けられ、先に述べたように、レンズホルダ60(第1ホルダ61の受部61AAと第2ホルダ62の押圧部62AA)によって狭持されるフランジ部72と、を備えている。
【0069】
また、フランジ部72には、第1ホルダ61の受部61AAに設けられた左右一対の位置決め突起61ABを受け入れる左右一対の外側に開放された切欠状の位置決め凹部72Aが設けられている。
【0070】
そして、レンズ70(より詳細にはレンズ部71)は、光が入射する入射面71Aと、入射した光を前方側に照射する出射面71Bと、を備え、光が入射する入射面71Aから第1光源L及び第2光源Hからの光が入射し、その入射した光が出射する出射面71Bから前方側に照射される。
【0071】
ここで、図3に示すように、第2ベース部13の第2光源配置部13Aは、前方斜め上側を向くようになっており、第2光源Hもそれによって、前方斜め上側を向くようになっている。
【0072】
そして、この前方斜め上側への傾きが適切なものとされることで、第2光源H(第2発光チップH2)からの光が形成するハイビーム付加配光HAPは、第1光源L(第1発光チップL2)からの光が形成するロービーム配光パターンLPからほとんど分離しない状態になっている。
【0073】
このため、レンズ70は、主に、レンズ70(より詳細にはレンズ部71)のレンズ光軸Oよりも下側の出射面71Bの全体の曲率を僅かに修正して第1光源Lからの光で形成されるロービーム配光パターンLP(図6参照)を僅かに上側(例えば、コンマ数度程度)に位置するようにすれば、ロービーム配光パターンLP(図6参照)とハイビーム付加配光HAP(図6参照)と、が分離しないものとできる。
【0074】
したがって、本実施形態では、レンズ70の出射面71Bの僅かな修正だけでよいため、レンズ70の出射面71Bに歪みが現れることを抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態では、ロービーム配光パターンLPとハイビーム配光パターンHP(ハイビーム付加配光HAP)との間に光度の高い明るい筋が現れるのを抑制するために、図3に示すように、レンズ70(より詳細にはレンズ部71)の後方焦点Pがリフレクタ30の前方側の焦点である第2焦点BPよりも前方側に位置するようにしている。
【0076】
そして、レンズ70(より詳細にはレンズ部71)の後方焦点Pをリフレクタ30の前方側の焦点である第2焦点BPよりも前方側に位置させたことに伴って、カットオフラインCL(図6参照)が鉛直方向上側に移動するのに対応して、図3に示すように、レンズ70(レンズ部71)の後方焦点Pを回転軸として、レンズ70のレンズ光軸Oを下側に回転させて、レンズ光軸Oが後方焦点Pを回転軸とした傾斜を有するものとして、灯具光軸Zに対して前方斜め下側に傾斜した状態にし、レンズ70から前方側に照射される光が全体的に下側にシフトするようにして、カットオフラインCLがスクリーン上の適切な位置に現れるようにしている。
【0077】
具体的には、レンズホルダ60で狭持されることになるレンズ70のフランジ部72の設定によって、レンズ70(より詳細にはレンズ部71)の後方焦点Pがリフレクタ30の前方側の焦点である第2焦点BPよりも約0.7mm前方側に位置するとともに、レンズ光軸Oが灯具光軸Zに対して、約0.4度程度、前方斜め下側に傾斜させるようにしている。
【0078】
ただし、フランジ部72の設定に限定される必要はなく、例えば、レンズホルダ60側の設定によって、レンズ70(より詳細にはレンズ部71)の後方焦点Pをリフレクタ30の前方側の焦点である第2焦点BPよりも約0.7mm前方側に位置させるとともに、レンズ光軸Oが灯具光軸Zに対して、約0.4度程度、前方斜め下側に傾斜させるようにしてもよい。
【0079】
一方、本実施形態では、レンズ70(レンズ部71)の入射面71Aに、カットオフラインCLを適切に暈すことができる光拡散部を設けるようにしており、以下、詳細に説明する。
【0080】
図7は、レンズ70(レンズ部71)の入射面71Aを示す図である。
図7に示すように、入射面71Aは、水平方向(図左右方向)で見て、スクリーン上の鉛直基準線(図6のVU-VL線)から水平方向の所定の範囲内に照射される光が入射する中央側領域ZN1と、中央側領域ZN1に連なる水平方向外側の外側領域ZN2と、を備えている。
なお、本実施形態では、入射面71Aの直径が65mm程度になっている。
【0081】
具体的には、本実施形態では、スクリーン上の鉛直基準線(図6のVU-VL線)から水平方向の所定の範囲をスクリーン上の鉛直基準線(図6のVU-VL線)から水平方向で10度以内の範囲RN(図6参照)としているので、中央側領域ZN1は、スクリーン上の鉛直基準線(図6のVU-VL線)から水平方向で10度以内の範囲RNに照射される光が入射する領域になっている。
【0082】
そして、入射面71Aは、中央側領域ZN1内に設けられた第1の光拡散部OPD1と、中央側領域ZN1内に設けられ、第1の光拡散部OPD1の下側に連なる第2の光拡散部OPD2と、を備えている。
【0083】
本実施形態では、第1の光拡散部OPD1は、入射面71Aの鉛直方向上側の端まで設けられており、第2の光拡散部OPD2は、入射面71Aの鉛直方向下側の端まで設けられている。
【0084】
ただし、第1の光拡散部OPD1は、入射面71Aの鉛直方向上側の端まで設けられることに限定される必要はなく、第1光源Lからの光が入射する範囲より若干上側まで設けられていればよい。
例えば、第1の光拡散部OPD1の上端は、レンズ光軸Oよりも上側に3mm以上15mm以下の範囲内に位置するように設けられてもよい。
【0085】
しかし、本実施形態は、レンズ70がハイビーム付加配光HAPを形成する第2光源Hからの光の配光制御にも用いられているため、第1の光拡散部OPD1は、入射面71Aの鉛直方向上側の端まで設けられるようにしている。
【0086】
なお、第2光源Hからの光も入射面71Aの鉛直方向上側の端まで入射するわけではないため、第2光源Hからの光も入射面71Aの鉛直方向上側の位置を基準に3mm以上10mm以下の程度内の位置に第1の光拡散部OPD1の上端が位置するものであってもよい。
【0087】
そして、第1の光拡散部OPD1と第2の光拡散部OPD2は、第1の光拡散部OPD1と第2の光拡散部OPD2の境界BLが、入射面71AのカットオフラインCL上に照射される光を入射させるための鉛直方向の第1範囲W内に位置するように形成されており、本実施形態では、第1の光拡散部OPD1と第2の光拡散部OPD2の境界BLが、第1範囲Wの鉛直方向のほぼ中間位置に設けられている。
【0088】
具体的には、図6に示すように、スクリーン上の鉛直基準線(図6のVU-VL線)から左右に10度の範囲内には、カットオフラインCLの上側水平カットオフラインCL1の一部、斜めカットオフラインCL2、及び、下側水平カットオフラインCL3の一部が存在し、この上側水平カットオフラインCL1と下側水平カットオフラインCL3の間の鉛直方向で見た幅に対応する入射面71Aの部分が第1範囲Wになっている。
【0089】
ただし、第1範囲Wは、レンズ70の取付時の位置ズレ等を考慮して、上側水平カットオフラインCL1と下側水平カットオフラインCL3の間の鉛直方向で見た幅に対応する幅よりも若干大きめの幅(例えば、対応する幅を基準に上下に5mm程度広く取った幅)としている。
【0090】
なお、言うまでもないが、上側水平カットオフラインCL1と下側水平カットオフラインCL3の間の鉛直方向で見た幅に対応する幅とは、スクリーン上の実寸で上側水平カットオフラインCL1と下側水平カットオフラインCL3の間の鉛直方向で見た幅と同じ幅を意味するものではなく、レンズ70を介して前方側に照射される前の状態のときの幅である。
【0091】
また、本実施形態では、先に説明したように、レンズ70(より詳細にはレンズ部71)のレンズ光軸Oよりも下側の出射面71Bの全体の曲率を僅かに修正して第1光源Lからの光で形成されるロービーム配光パターンLPを僅かに上側(例えば、コンマ数度程度)に位置するようにしているため、第1範囲W(より正確には、第1範囲Wの上端)が、レンズ70のレンズ光軸Oよりも5mm以上鉛直方向下側に位置している。
【0092】
そして、本実施形態では、第1の光拡散部OPD1と第2の光拡散部OPD2が、どちらも入射面71Aから突出するように形成され、隙間なく連なるように設けられた複数の菱形プリズムを備え、その菱形プリズムの突出高さによって、第2の光拡散部OPD2が、第1の光拡散部OPD1よりも光の拡散幅が大きいものとされている。
【0093】
なお、第1の光拡散部OPD1と第2の光拡散部OPD2が備える菱形プリズムは、入射面71Aを正面に見たときの菱形プリズムの菱形の外形で見れば同じ外形のものになっており、突出高さだけが異なったものになっている。
【0094】
具体的には、本実施形態では、第1の光拡散部OPD1の菱形プリズムの突出高さを7~8μm程度とし、第2の光拡散部OPD2の菱形プリズムの突出高さを10μm程度とすることで、第2の光拡散部OPD2の方が、第1の光拡散部OPD1よりも光の拡散幅が大きいものとされている。
【0095】
図8は、第1の光拡散部OPD1と第2の光拡散部OPD2によってどのようにカットオフラインCLが暈されるのかを説明するための図である。
【0096】
図8の実線で示されているカットオフラインCLは、本来のカットオフラインCLである。
そして、図7に示した第1範囲Wの近くに入射する光は、本来、図8に示すカットオフラインCLより下側に照射されることになるが、そこに第1の光拡散部OPD1と第2の光拡散部OPD2が設けられているため、入射面71Aから光が入射するときに光が拡散されることで、カットオフラインCLよりも上側にも光が照射されることになる。
【0097】
具体的には、菱形プリズムの突出高さが低く、光の拡散幅が小さい第1の光拡散部OPD1で拡散された光は、図8に示す点線SLMのところまで広がるようにレンズ70から照射される。
【0098】
一方、菱形プリズムの突出高さが高く、光の拡散幅が大きい第2の光拡散部OPD2で拡散された光は、図8に示す一点鎖線SLのところまで広がるようにレンズ70から照射される。
【0099】
このため、カットオフラインCLから図8に示す点線SLMまでの範囲は、第1の光拡散部OPD1で拡散された光と第2の光拡散部OPD2で拡散された光が多重される領域になっており、一方、図8に示す点線SLMから図8に示す一点鎖線SLまでの範囲は、第2の光拡散部OPD2で拡散された光だけで形成される領域になっているため、カットオフラインCLから鉛直方向上側に離れるにしたがって緩やかに光度が低下する光度分布を実現することができるので、視認性の良いロービーム配光パターンLPになる。
【0100】
しかも、菱形プリズムの突出高さによって、光の拡散幅が変わるため、求められる適切な光の拡散幅に設定することが可能であり、カットオフラインCLが暈され過ぎることを回避する設計ができる。
【0101】
一方、配光パターン(ロービーム配光パターンLP、ハイビーム配光パターンHP)の暈しの不均一感を与えないために、入射面71Aは、例えば、外側領域ZN2(図7参照)の少なくとも第1光源L及び第2光源Hの光が入射する領域に設けられた第3の光拡散部OPD3を備えるのが好ましく、本実施形態では、入射面71Aが入射面71Aの外側領域ZN2全体に設けられた第3の光拡散部OPD3を備えるものとしている。
【0102】
具体的には、第3の光拡散部OPD3も入射面71Aから突出するように形成され、隙間なく連なるように設けられた複数の菱形プリズムを備え、入射面71Aを正面に見たときの菱形プリズムの菱形の外形で見れば、第1の光拡散部OPD1及び第2の光拡散部OPD2の菱形プリズムと同じ外形になっている。
【0103】
一方、第3の光拡散部OPD3は、大きく光を拡散させる必要はないため、第3の光拡散部OPD3の菱形プリズムの突出高さは、第1の光拡散部OPD1の菱形プリズムの突出高さとほぼ同じ(7~8μm程度)とされ、第3の光拡散部OPD3の光の拡散幅は、第1の光拡散部OPD1の光の拡散幅とほぼ同じにしている。
【0104】
このように、外側領域ZN2にも光拡散部を設けるようにすることで、部分的に光が拡散され、違和感のある配光パターン(ロービーム配光パターンLP、ハイビーム配光パターンHP)となることを抑制することができる。
【0105】
以上、具体的な実施形態を基に本発明の説明を行ってきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、技術的思想を逸脱することのない変更や改良を行ったものも発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0106】
1 灯具ユニット
10 ヒートシンク
11 ベース部
11A 開口部
11F 放熱フィン
12 第1ベース部
12A 第1光源配置部
12B 位置決めピン
12C ネジ固定孔
12F 第1放熱フィン
12N1、12N2 ネジ
13 第2ベース部
13A 第2光源配置部
13AA 位置決めピン
13AB ネジ固定孔
13F 第2放熱フィン
13N1 ネジ
14 レンズホルダ取付部
14A 位置決めピン
14B ネジ固定孔
14N1 ネジ
15 冷却ファン取付脚部
15N1 ネジ
20 冷却ファン
30 リフレクタ
30A 反射部
30B フランジ部
30BA ピン挿入孔
30BB ネジ挿入孔
31 反射面
40 シェード
41 遮光部
42 アーム部
42A 位置決めピン挿入孔
42B ネジ挿入孔
50 反射部材
51 反射部
52 固定部
52A 位置決めピン挿入孔
52B ネジ挿入孔
60 レンズホルダ
61 第1ホルダ
61A 第1ホルダ本体部
61AA 受部
61AB 位置決め突起
61B 第1取付部
61BA 位置決めピン挿入孔
61BB ネジ挿入孔
62 第2ホルダ
62A 第2ホルダ本体部
62AA 押圧部
62B 第2取付部
62BA 位置決めピン挿入孔
62BB ネジ挿入孔
70 レンズ
71 レンズ部
71A 入射面
71B 出射面
72 フランジ部
72A 位置決め凹部
80 光源ホルダ
90 板部材
BL 境界
BP 第2焦点
CL カットオフライン
CL1 上側水平カットオフライン
CL2 斜めカットオフライン
CL3 下側水平カットオフライン
H 第2光源
H1 基板
H11 位置決めピン挿入孔
H12 ネジ挿入孔
H2 第2発光チップ
HAP ハイビーム付加配光
HP ハイビーム配光パターン
L 第1光源
L1 基板
L2 第1発光チップ
LP ロービーム配光パターン
O レンズ光軸
OPD1 第1の光拡散部
OPD2 第2の光拡散部
OPD3 第3の光拡散部
P 後方焦点
RN 10度以内の範囲
W 第1範囲
Z 灯具光軸
ZN1 中央側領域
ZN2 外側領域
101L、101R 車両用の前照灯
102 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8