(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】軸封装置及び軸封システム
(51)【国際特許分類】
F16J 15/447 20060101AFI20220830BHJP
F16J 15/40 20060101ALI20220830BHJP
B65G 53/50 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
F16J15/447
F16J15/40 C
B65G53/50
(21)【出願番号】P 2018191697
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】大塚 美幸
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-315783(JP,A)
【文献】特開平08-128535(JP,A)
【文献】特開2000-335744(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02519674(GB,A)
【文献】実開昭62-013920(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0230905(US,A1)
【文献】実開昭53-158814(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 35/00-35/95
B65G 53/00-53/28
B65G 53/32-53/66
F16J 15/16-15/32
F16J 15/324-15/3296
F16J 15/40-15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送管と、前記輸送管の端壁から前記輸送管内に挿入される、前記輸送管内で粉体を輸送するための輸送手段の回転駆動軸との間をシールする軸封装置であって、
前記回転駆動軸が挿通するよう構成された円筒状のハウジング
を備え、
前記ハウジングは、前記回転駆動軸が前記ハウジング内に挿入されたときに前記回転駆動軸と前記ハウジングの内面との間に隙間が生じるように構成されており、
前記ハウジングには、前記ハウジング内に気体を供給するための気体供給口が形成され、
前記ハウジングの内面には、前記軸封装置から前記輸送管に向かって見たときの前記回転駆動軸の回転方向とは反対回りの螺旋溝が、前記気体供給口から前記輸送管側の端部に向けて形成され、且つ、前記回転方向と順回りまたは反対回りの螺旋溝が、前記輸送管と反対側の端部から前記気体供給口に向けて形成され
、
前記気体供給口から前記輸送管側の端部までの前記隙間は、前記気体供給口から前記輸送管と反対側の端部までの前記隙間よりも大きい、前記軸封装置。
【請求項2】
輸送管と、前記輸送管の端壁から前記輸送管内に挿入される、前記輸送管内で粉体を輸送するための輸送手段の回転駆動軸との間をシールする軸封装置であって、
前記回転駆動軸が挿通するよう構成された円筒状のハウジング
を備え、
前記ハウジングは、前記回転駆動軸が前記ハウジング内に挿入されたときに前記回転駆動軸と前記ハウジングの内面との間に隙間が生じるように構成されており、
前記ハウジングには、前記ハウジング内に気体を供給するための気体供給口が形成され、
前記ハウジングの内面には、前記軸封装置から前記輸送管に向かって見たときの前記回転駆動軸の回転方向とは反対回りの螺旋溝が、前記気体供給口から前記輸送管側の端部に向けて形成され、且つ、前記回転方向と順回りまたは反対回りの螺旋溝が、前記輸送管と反対側の端部から前記気体供給口に向けて形成され、
前記気体供給口は、前記輸送管側の端部から、前記ハウジングの軸方向の長さの30~70%、40~60%、又は45~55%の位置に形成されている、
前記軸封装置。
【請求項3】
輸送管と、前記輸送管の端壁から前記輸送管内に挿入される、前記輸送管内で粉体を輸送するための輸送手段の回転駆動軸との間をシールする軸封装置であって、
前記回転駆動軸が挿通するよう構成された円筒状のハウジングと、
前記ハウジングを覆うように構成されたカバー
と
を備え、
前記ハウジングは、前記回転駆動軸が前記ハウジング内に挿入されたときに前記回転駆動軸と前記ハウジングの内面との間に隙間が生じるように構成されており、
前記ハウジングには、前記ハウジング内に気体を供給するための気体供給口が形成され、
前記ハウジングの内面には、前記軸封装置から前記輸送管に向かって見たときの前記回転駆動軸の回転方向とは反対回りの螺旋溝が、前記気体供給口から前記輸送管側の端部に向けて形成され、且つ、前記回転方向と順回りまたは反対回りの螺旋溝が、前記輸送管と反対側の端部から前記気体供給口に向けて形成されている、前記軸封装置。
【請求項4】
輸送管と、前記輸送管の端壁から前記輸送管内に挿入される、前記輸送管内で粉体を輸送するための輸送手段の回転駆動軸との間をシールする軸封装置であって、
前記回転駆動軸が挿通するよう構成された円筒状のハウジング
を備え、
前記ハウジングは、前記回転駆動軸が前記ハウジング内に挿入されたときに前記回転駆動軸と前記ハウジングの内面との間に隙間が生じるように構成されており、
前記ハウジングには、前記ハウジング内に気体を供給するための気体供給口が形成され、
前記ハウジングの内面には、前記軸封装置から前記輸送管に向かって見たときの前記回転駆動軸の回転方向とは反対回りの螺旋溝が、前記気体供給口から前記輸送管側の端部に向けて形成され、且つ、前記回転方向と順回りまたは反対回りの螺旋溝が、前記輸送管と反対側の端部から前記気体供給口に向けて形成され、
前記粉体はポリカーボネートの粉体である、
前記軸封装置。
【請求項5】
輸送管内で粉体を輸送するための輸送手段、及び
前記輸送管と、前記輸送管の端壁から前記輸送管内に挿入される前記輸送手段の回転駆動軸との間をシールする軸封装置
を有する軸封システムであって、
前記軸封装置は、前記回転駆動軸が挿通するよう構成された円筒状のハウジングを備え、
前記ハウジングは、前記回転駆動軸が前記ハウジング内に挿入されたときに前記回転駆動軸と前記ハウジングの内面との間に隙間が生じるように構成されており、
前記ハウジングには、前記ハウジング内に気体を供給するための気体供給口が形成され、
前記回転駆動軸の表面には、前記軸封装置から前記輸送管に向かって見たときの前記回転駆動軸の回転方向とは反対回りの螺旋溝が、前記気体供給口に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置から前記輸送管側の端部に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置に向けて形成され、且つ、前記回転方向と順回りまたは反対回りの螺旋溝が、前記輸送管と反対側の端部に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置から前記気体供給口に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置に向けて形成され
、
前記気体供給口から前記輸送管側の端部までの前記隙間は、前記気体供給口から前記輸送管と反対側の端部までの前記隙間よりも大きい、前記軸封システム。
【請求項6】
輸送管内で粉体を輸送するための輸送手段、及び
前記輸送管と、前記輸送管の端壁から前記輸送管内に挿入される前記輸送手段の回転駆動軸との間をシールする軸封装置
を有する軸封システムであって、
前記軸封装置は、前記回転駆動軸が挿通するよう構成された円筒状のハウジングを備え、
前記ハウジングは、前記回転駆動軸が前記ハウジング内に挿入されたときに前記回転駆動軸と前記ハウジングの内面との間に隙間が生じるように構成されており、
前記ハウジングには、前記ハウジング内に気体を供給するための気体供給口が形成され、
前記回転駆動軸の表面には、前記軸封装置から前記輸送管に向かって見たときの前記回転駆動軸の回転方向とは反対回りの螺旋溝が、前記気体供給口に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置から前記輸送管側の端部に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置に向けて形成され、且つ、前記回転方向と順回りまたは反対回りの螺旋溝が、前記輸送管と反対側の端部に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置から前記気体供給口に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置に向けて形成され、
前記気体供給口は、前記輸送管側の端部から、前記ハウジングの軸方向の長さの30~70%、40~60%、又は45~55%の位置に形成されている、前記軸封システム。
【請求項7】
輸送管内で粉体を輸送するための輸送手段、及び
前記輸送管と、前記輸送管の端壁から前記輸送管内に挿入される前記輸送手段の回転駆動軸との間をシールする軸封装置
を有する軸封システムであって、
前記軸封装置は、
前記回転駆動軸が挿通するよう構成された円筒状のハウジングと、
前記ハウジングを覆うように構成されたカバーと
を備え、
前記ハウジングは、前記回転駆動軸が前記ハウジング内に挿入されたときに前記回転駆動軸と前記ハウジングの内面との間に隙間が生じるように構成されており、
前記ハウジングには、前記ハウジング内に気体を供給するための気体供給口が形成され、
前記回転駆動軸の表面には、前記軸封装置から前記輸送管に向かって見たときの前記回転駆動軸の回転方向とは反対回りの螺旋溝が、前記気体供給口に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置から前記輸送管側の端部に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置に向けて形成され、且つ、前記回転方向と順回りまたは反対回りの螺旋溝が、前記輸送管と反対側の端部に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置から前記気体供給口に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置に向けて形成されている、前記軸封システム。
【請求項8】
輸送管内で粉体を輸送するための輸送手段、及び
前記輸送管と、前記輸送管の端壁から前記輸送管内に挿入される前記輸送手段の回転駆動軸との間をシールする軸封装置
を有する軸封システムであって、
前記軸封装置は、前記回転駆動軸が挿通するよう構成された円筒状のハウジングを備え、
前記ハウジングは、前記回転駆動軸が前記ハウジング内に挿入されたときに前記回転駆動軸と前記ハウジングの内面との間に隙間が生じるように構成されており、
前記ハウジングには、前記ハウジング内に気体を供給するための気体供給口が形成され、
前記回転駆動軸の表面には、前記軸封装置から前記輸送管に向かって見たときの前記回転駆動軸の回転方向とは反対回りの螺旋溝が、前記気体供給口に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置から前記輸送管側の端部に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置に向けて形成され、且つ、前記回転方向と順回りまたは反対回りの螺旋溝が、前記輸送管と反対側の端部に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置から前記気体供給口に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置に向けて形成され、
前記粉体はポリカーボネートの粉体である、前記軸封システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送管と、該輸送管の端壁から該輸送管内に挿入される、該輸送管内で粉体を輸送するための輸送手段の回転駆動軸との間をシールする軸封装置及び軸封システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、容器内部に設けた回転部材を回転させて粉体を撹拌するための容器と、該回転部材を回転させる回転駆動軸との間から粉体が漏れ出ないようにシールする技術が知られている。
【0003】
特許文献1は、内部に撹拌手段を備えた粉体処理容器と、該撹拌手段を駆動するための該容器の端壁から挿通される回転駆動軸との間をシールする軸封装置であって、内部に空気室を有し、空気室内に回転駆動軸が挿通された状態で容器端壁の外壁面に気密的に配置されるハウジングと、空気室内に該容器の内部気圧よりも高い気圧の加圧空気を供給する加圧空気供給源と、空気室内の容器端壁面側で回転駆動軸に対して非接触で同軸的に配置され、回転駆動軸との間に加圧空気が通過可能な微細なシール間隙を形成する円筒状のシールカラーとを備えた軸封装置を開示する。
【0004】
特許文献2は、粉粒状材料供給口を上向き開口状に備えたハウジング内に、混練ロータが回転自在に嵌装され、該ロータの駆動軸部に軸封ハウジングが外嵌され、軸封ハウジング内に固定リングが固着されると共に給気用環状空間が形成され、前記環状空間に供給された気体が前記駆動軸部と固定リングとの気体導通間隙を経て前記ハウジングと混練ロータの間隙からハウジング内に放出されるようになっている混練機ロータの軸封装置において、前記環状空間の気体供給路より軸端側に位置して軸封ハウジングに周溝が形成され、該周溝には駆動軸部に設けた円板が遊嵌されると共にグリース等の粘弾性体が充填されている、混練機ロータの軸封装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-239933号公報
【文献】特開平06-055052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
輸送管内の粉体が、輸送手段の回転駆動軸と輸送管との間の隙間から外へ漏れ出る問題や、外気から輸送管内へのコンタミネーションの侵入の問題への対応が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、輸送管と、該輸送管の端壁から該輸送管内に挿入される、該輸送管内で粉体を輸送するための輸送手段の回転駆動軸との間をシールする軸封装置及び軸封システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明には以下の実施形態が含まれる。
〔1〕
輸送管と、前記輸送管の端壁から前記輸送管内に挿入される、前記輸送管内で粉体を輸送するための輸送手段の回転駆動軸との間をシールする軸封装置であって、
前記回転駆動軸が挿通するよう構成された円筒状のハウジング
を備え、
前記ハウジングは、前記回転駆動軸が前記ハウジング内に挿入されたときに前記回転駆動軸と前記ハウジングの内面との間に隙間が生じるように構成されており、
前記ハウジングには、前記ハウジング内に気体を供給するための気体供給口が形成され、
前記ハウジングの内面には、前記軸封装置から前記輸送管に向かって見たときの前記回転駆動軸の回転方向とは反対回りの螺旋溝が、前記気体供給口から前記輸送管側の端部に向けて形成され、且つ、前記回転方向と順回りまたは反対回りの螺旋溝が、前記輸送管と反対側の端部から前記気体供給口に向けて形成されている、
ことを特徴とする前記軸封装置。
〔2〕
前記気体供給口から前記輸送管側の端部までの前記隙間は、前記気体供給口から前記輸送管と反対側の端部までの前記隙間よりも大きい、〔1〕に記載の軸封装置。
〔3〕
前記気体供給口は、前記輸送管側の端部から、前記ハウジングの軸方向の長さの30~70%、40~60%、又は45~55%の位置に形成されている、〔1〕又は〔2〕に記載の軸封装置。
〔4〕
前記ハウジングを覆うように構成されたカバーをさらに備える〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の軸封装置。
〔5〕
前記粉体はポリカーボネートの粉体である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の軸封装置。
〔6〕
輸送管内で粉体を輸送するための輸送手段、及び
前記輸送管と、前記輸送管の端壁から前記輸送管内に挿入される前記輸送手段の回転駆動軸との間をシールする軸封装置
を有する軸封システムであって、
前記軸封装置は、前記回転駆動軸が挿通するよう構成された円筒状のハウジングを備え、
前記ハウジングは、前記回転駆動軸が前記ハウジング内に挿入されたときに前記回転駆動軸と前記ハウジングの内面との間に隙間が生じるように構成されており、
前記ハウジングには、前記ハウジング内に気体を供給するための気体供給口が形成され、
前記回転駆動軸の表面には、前記軸封装置から前記輸送管に向かって見たときの前記回転駆動軸の回転方向とは反対回りの螺旋溝が、前記気体供給口に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置から前記輸送管側の端部に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置に向けて形成され、且つ、前記回転方向と順回りまたは反対回りの螺旋溝が、前記輸送管と反対側の端部に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置から前記気体供給口に相当する前記回転駆動軸の表面上の位置に向けて形成されている、
ことを特徴とする前記軸封システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態に係る軸封装置では、「前記ハウジングの内面には、前記軸封装置から前記輸送管に向かって見たときの前記回転駆動軸の回転方向とは反対回りの螺旋溝が、前記気体供給口から前記輸送管側の端部に向けて形成され、且つ、前記回転方向と順回りまたは反対回りの螺旋溝が、前記輸送管と反対側の端部から前記気体供給口に向けて形成されている」との構成をとることで、軸封装置のハウジングと回転駆動軸との間の隙間気体供給口からの供給される気体は、軸封装置のハウジングと回転駆動軸との間の隙間を通る間に、ラビリンス効果と気体の流速の向上効果との相乗的な作用を受けることにより、輸送管内の粉末が輸送管から漏れ出ることを防止(影響の無い程度の所望の漏れ量に低減することを含む。以下同じ。)することができる。また、気体供給口から大気側へも当該隙間を通って気体が流れることから、大気中からの空気の侵入を防止(影響の無い程度の所望の侵入量に低減することを含む。以下同じ。)し、それにともなうコンタミネーションの侵入も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る軸封装置を備えた粉体輸送システムの模式図である。
【
図5】他の実施形態に係る軸封システムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る軸封装置10a、10b(総称して「軸封装置10」ともいう)を備えた粉体輸送システム1の模式図である。
【0013】
粉体輸送システム1は、輸送管3と、輸送管3内部に設けられ、回転することにより粉体を上流端壁3a側から下流端壁3b側に輸送するスクリューコンベア状の輸送手段20と、輸送手段20の回転駆動軸25(外径d)を回転駆動するための駆動装置5と、駆動装置5の反対側で回転駆動軸25を回転可能に支持する軸支持構造6と、輸送管3と回転駆動軸25との間の隙間をシールする軸封装置10a、10bとを備える。
【0014】
輸送手段20の回転駆動軸25は、封止装置10a、10b及び輸送管3に挿通され、駆動装置5とその反対側に設けられた軸支持構造6とにより回転可能に支持され、駆動装置5の駆動力により回転する。駆動装置5は、不図示のモーターやその駆動力を回転駆動軸25に伝えるための機構を備える。
【0015】
軸封装置10aは、輸送管3の上流端壁3aに固定具(不図示)により取り付けられ、上流端壁3aと回転駆動軸25との間の隙間から粉体が漏れ出ることを防止し、大気中から輸送管3内への空気及びコンタミネーションの侵入も防止する。同様に、軸封装置10bは、輸送管3の下流端壁3bに固定具(不図示)により取り付けられた、下流端壁3bと回転駆動軸25との間の隙間から粉体が漏れ出ることを防止し、大気中から輸送管3内への空気及びコンタミネーションの侵入も防止する。
【0016】
粉体輸送システム1において、投入菅から輸送管3に投入された粉体は、輸送手段20が回転することにより輸送管3の上流端壁3a側から下流端壁3b側に輸送された後、ロータリーバルブを通じて別の工程へ送られる。
【0017】
粉体は、合成樹脂の粉体であり、例えばポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、スチロール樹脂、又はこれらの組み合わせの粉体である。限定されるものではないが、粉体輸送システム1の一適用例としては、ウェットな状態のポリカーボネート樹脂の粉体が、投入菅から輸送管3に投入され、輸送管3内を上流端3aから下流端3bに向けて輸送され、ロータリーバルブを通じて粉体を乾燥させる工程へ送られるケースが考えられる。
【0018】
図2は、軸封装置10(10a、10b)の概略斜視図である。軸封装置10は、内部を回転駆動軸25が挿通するよう構成された円筒状のハウジング11を備える。ハウジング11の中心軸に沿った方向(軸方向)の所定の位置にはハウジング11内に気体を供給するための1つ又は複数の気体供給口12が形成されている。また、ハウジング11の内面には螺旋溝13が形成されている。
【0019】
図2に示すようにハウジング11の軸方向の長さをLとする。気体供給口12は、ハウジング11の軸方向において、ハウジング11の一方の端部11aから長さL1であって、他方の端部11bから長さL2の位置に形成されている(L=L1+L2)。気体供給口12は、当該位置におけるハウジング11の円周方向において、1つ又は所定の間隔ごとに複数個形成されている。
【0020】
L1(又はL2)の範囲は、通常0.3L≦L1(又はL2)≦0.7Lの範囲にあり、好ましくは0.4L≦L1(又はL2)≦0.6Lの範囲、さらに好ましくは0.45L≦L1(又はL2)≦0.55Lの範囲にある。L1=L2であってもよい。
【0021】
気体供給口12は、気体供給源(不図示)に接続され、気体供給源から供給された気体は、気体供給口12を介してハウジング11内に導入される。気体は、空気、窒素、二酸化炭素、又はアルゴンなどの気体であるが、輸送管3内に入ることになることから、好ましくは粉体と化学的に反応しない気体がよい。
【0022】
軸封装置10aを想定すると、軸封装置10aのハウジング11の端部11bが輸送管3の上流端壁3aに接触するように取り付けられる(
図3(a)参考)。軸封装置10aのハウジング11の内面には、ハウジング11の軸方向において、(i)気体供給口12から輸送管3側の端部11bに向けて、軸封装置10aから輸送管3に向かって見たときの回転駆動軸25の回転方向とは反対回りの螺旋溝13が形成され、(ii)他方の端部11aから気体供給口12に向けては、当該回転方向と順回り又は反対回りの螺旋溝13が形成されている。
【0023】
すなわち、ハウジング11の内面には、ハウジング11の軸方向において、気体供給口12を境に、(i)輸送管3側の領域には、軸封装置10aから輸送管3に向かって見たときの回転駆動軸25の回転方向とは反対回りの螺旋溝13が形成され、(ii)輸送管3と反対側の領域には、当該回転方向とは順回り又は反対回りの螺旋溝13が形成されている。なお、上記(ii)の輸送管3とは反対側の螺旋溝13は、好ましくは順回りに形成することで、外気の侵入の防止効果がよりいっそう期待できる。
【0024】
螺旋溝13は、ハウジング11の内面に螺旋状に溝を削ることにより形成してもよいし、ハウジング11の内面に螺旋状に突起を設けるようにして形成してもよい。
【0025】
ハウジング11の内径Dは、回転駆動軸25の外径dよりも大きい値であり(D>d)、回転駆動軸25の中心軸とハウジング11の中心軸とが一致するように回転駆動軸25をハウジング11内に挿通した際に、回転駆動軸25とハウジング11の内面との間に隙間が生じるように構成されている。当該隙間は、回転駆動軸25の軸振れの影響や、螺旋溝13によるラビリンス効果(シール効果)を考慮して設計しておくとよい。例えば、隙間は、回転駆動軸25の軸振れ(例えば数mm)の影響がある場合は、その振れ幅の数倍(例えば2~3倍)程度に予め設計しておくとよい。
【0026】
ラビリンス効果を高めるために、ハウジング11の螺旋溝13が形成された内面と、回転駆動軸25との間の隙間を小さくすること、螺旋溝13のピッチを増やして(隣接する溝と溝の間隔を小さくして)気体が通過する流路の長さを大きくすることが考えられる。また、軸封装置10側から輸送管3に向かって見た場合の回転駆動軸25の回転方向とは反対回りに、気体供給口12から輸送管3側の端部11bに向けて螺旋溝13を形成することで、順回りに形成した場合に比べて、螺旋溝13の流路を流れる気体の流速を向上させることができる。
【0027】
すなわち、本実施形態の軸封装置10は、螺旋溝13によるラビリンス効果と、上記(i)の輸送管3側の領域に、回転駆動軸25の回転方向と反対方向に螺旋溝13を形成したことによる気体の流速の向上との相乗効果により、従来技術に比べて、輸送管3から粉体が漏れ出ることをより効果的に防止することができる。
【0028】
なお、本実施形態の軸封装置10では、上記(ii)の輸送管3と反対側の領域の螺旋溝13の形成方向は、回転駆動軸25の回転方向と反対方向に限定するものではないが、駆動装置5(又は軸支持構造6)側から輸送管3に向かって見た場合の回転駆動軸25の回転方向とは順回りに、端部11aから気体供給口12に向けて螺旋溝13を形成することで、上記(i)の輸送管3側の領域の螺旋溝13による効果と同様に、気体の流速が向上し、外気からの空気の侵入をより効果的に防止することができる。
【0029】
ハウジング11の内径について、上記(i)の輸送管3側の領域の内径と、上記(ii)の輸送管3とは反対側の領域の内径とが異なるようにしてもよい(
図3のD1、D2)。すなわち、ハウジング11の軸方向において、(i)気体供給口12から輸送管3側の端部11bまでの内径をD2とし、(ii)気体供給口12から輸送管3とは反対側の端部11aまでの内径をD1とすると、D1>D2、又はD1<D2であってもよい。なお、D1=D2であってもよい。
【0030】
ハウジングの内径D1、D2の関係をD2>D1とすると、気体供給口12を通じて供給される気体は、上記(ii)の輸送管3とは反対側の領域に流れる量と比べて、上記(i)の輸送管3側の領域に流れる量を相対的に増やすことができる。また、駆動装置5又は軸支持構造6から離れている分、軸振れの影響が比較的大きくなる影響も回避することができる。もちろん、ラビリンス効果は隙間が小さいほど効果が期待できるが、軸振れの影響や隙間を大きくしたことによる気体の流量などを考慮しながら、ハウジング11の内径を設計するとよい。
【0031】
例えば、後述するように、空気の侵入の問題はハウジング11の外部を覆うカバーにより低減できるケースでは、空気の侵入は防止できるので、気体供給口12から流れる気体を上記(i)の輸送管3側の領域に多く流れるように、隙間を大きく(D2>D1)するとよい。
【0032】
図3(a)及び(b)はそれぞれ、輸送管3の上流端壁3a及び下流端壁3bに固定具により取り付けた軸封装置10a及び10bの中心軸を通る概略断面図である。
【0033】
図3に示す構成では、回転駆動軸25の軸振れの影響と気体の流量を増やす点を考慮して、軸封装置10a及び10bそれぞれの気体供給口12から端部11bまでのハウジング11の内径D2(及び回転駆動軸25との間の隙間s2)は、気体供給口12から他方の端部11aまでのハウジング11の内径D1(及び回転駆動軸25との間の隙間s1)よりも大きくなるように構成している。なお、回転駆動軸25の軸振れの影響が無いならば、隙間s2は隙間s1と同じにしてもよいし、ラビリンス効果をより得るために、隙間s2を隙間s1よりも小さくしてもよい。
【0034】
図4は、軸封装置10aを覆うように取り付けられたカバー30を備えた構成の概略斜視図である。カバー30の全体又は一部は、内部の軸封装置10aが見えるように透明な部材で形成されている。カバー30の材料は、例えばポリカーボネートで形成してもよい。軸封装置10aを覆うようにカバー30を設けることで、大気中から輸送管3への空気の侵入及びそれにともなうコンタミネーションの侵入を防ぐことができる。図示していないが同様に、カバー30は、軸封装置10bを覆うように取り付けるとよい。
【0035】
次に
図5は、本発明の他の実施形態に係る軸封システム100の断面図である。本実施形態では、軸封装置10a、10bの内面には螺旋溝13は形成されておらず、輸送手段20の回転駆動軸250の表面に螺旋溝130が形成されている点で、上記実施形態とは異なる。なお、螺旋溝130は、回転駆動軸250の表面に螺旋状に溝を削ることにより形成してもよいし、回転駆動軸250の表面に螺旋状に突起を設けるようにして形成してもよい。
【0036】
軸封装置10aの内部を挿通する回転駆動軸250の表面には、回転駆動軸250の軸方向において、(a)軸封装置10aのハウジング11の気体供給口12に相当する回転駆動軸250の表面上の位置120から、ハウジング11の輸送管3側の端部11bに相当する回転駆動軸250の表面上の位置110bに向けて、軸封装置10aから輸送管3に向かって見たときの回転駆動軸250の回転方向とは反対回りに螺旋溝130が形成されている。また、軸封装置10aの内部を挿通する回転駆動軸250の表面には、回転駆動軸250の軸方向において、(b)ハウジング11の輸送管3と反対側の端部11aに相当する回転駆動軸250の表面上の位置110aから軸封装置10aのハウジング11の気体供給口12に相当する回転駆動軸250の表面上の位置120に向けて、軸封装置10aから輸送管3に向かって見たときの回転駆動軸250の回転方向と順回り又は反対回りに螺旋溝130が形成されている。
【0037】
本実施形態の軸封システム100は、上記実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、螺旋溝130によるラビリンス効果と、上記(a)の輸送管3側の領域に、回転駆動軸250の回転方向と反対方向に螺旋溝130を形成したことによる気体の流速の向上との相乗効果により、従来技術に比べて、輸送管3から粉体が漏れ出ることをより効果的に防止することができる。その他の点についても、上記実施形態と同様であることから説明を省略する。
【0038】
上記実施形態で説明される寸法、材料、形状、構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構造又は様々な条件に応じて変更される。また、本発明は、具体的に記載された上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
1 粉体輸送システム
3 輸送管
5 駆動装置
6 軸支持構造
10 軸封装置
11 ハウジング
12 気体供給口
13、130 螺旋溝
20 輸送手段
25、250 回転駆動軸
30 カバー
100 軸封システム