(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ワークの搬送装置、ワークの搬送方法、転がり軸受の搬送方法、及び転がり軸受、機械、車両の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23P 19/00 20060101AFI20220830BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20220830BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B23P19/00 302R
B23P21/00 306A
B23P21/00 303A
B25J13/08 Z
(21)【出願番号】P 2018196686
(22)【出願日】2018-10-18
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 俊介
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-065658(JP,A)
【文献】特開2010-253609(JP,A)
【文献】特開平07-196159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00-21/00
B25J 1/00-21/02
B65G 57/00-57/32;60/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークからなる配列体を支持する搬送用ロボットと、
前記搬送用ロボットを駆動して前記配列体を搬送するロボット駆動部と、
箱床と側壁を有する収容箱と、
前記搬送用ロボットに設けられ、前記搬送用ロボットに支持された前記ワークに作用する外力を検出する外力センサと、
前記ロボット駆動部に、前記配列体を前記収容箱の上方の初期準備位置に搬送させ、前記初期準備位置から前記配列体を少なくとも上下方向を含む複数方向へ移動させて、前記外力センサにより前記ワークと前記箱床及び前記側壁との干渉を検知した位置に前記配列体を位置決めし、前記配列体を前記収容箱に載置させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記搬送用ロボットに支持された前記配列体を、前記搬送用ロボットの駆動により前記初期準備位置に搬送する工程と、
前記初期準備位置から前記配列体を下降させて、前記ワークと前記箱床との干渉を検知した場合に、前記配列体の下降を停止して前記配列体を上下方向に関して位置決めする上下方向位置決め工程と、
上下方向に位置決めされた前記配列体を、前記箱床の面内のいずれか一方向に移動させ、前記ワークと前記収容箱の前記側壁との干渉を検知した場合に、前記配列体の前記一方向への移動を停止して前記配列体を前記一方向に関して位置決めする一方向位置決め工程と、
前記一方向に位置決めされた前記配列体を、前記上下方向と前記一方向とに直交する他方向に移動させ、前記ワークと前記収容箱の前記側壁との干渉を検知した場合に、前記配列体の前記他方向への移動を停止して前記配列体を前記他方向に関して位置決めする他方向位置決め工程と、
前記上下方向、前記一方向、及び前記他方向に位置決めされた前記配列体の前記搬送用ロボットによる支持を解除して、前記配列体を前記収容箱内に載置する載置工程と、
を実施し、
更に、前記制御部は、
前記位置決めされた前記配列体の位置を基準位置として記憶し、前記基準位置の情報を用いて、次の配列体を前記収容箱の上方に搬送するための次準備位置を設定し、前記搬送用ロボットに前記次の配列体を支持させ、当該次の配列体を前記次準備位置に搬送し、前記次準備位置から前記上下方向位置決め工程、前記一方向位置決め工程、及び前記他方向位置決め工程を実施して、前記次の配列体をワーク設置位置に位置決めし、前記載置工程により前記次の配列体を前記収容箱内に載置する、
ことを繰り返すワークの搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記次準備位置から前記ワーク設置位置までの距離を、前記初期準備位置から前記基準位置までの距離よりも短く設定する請求項
1に記載のワークの搬送装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記配列体を支持して前記初期準備位置及び前記次準備位置へ搬送するワーク移動速度よりも、前記配列体の前記初期準備位置から前記基準位置への移動時、及び前記次準備位置から前記ワーク設置位置へ
の移動
時におけるワーク移動速度を遅く設定する請求項
2に記載のワークの搬送装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記次準備位置を、前記基準位置から前記ワーク
の寸法に応じて補正した位置に設定する請求項
1~
3のいずれか一項に記載のワークの搬送装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記次準備位置を、前回の搬送で前記配列体が載置された前記ワーク設置位置から、前記ワーク
の寸法に応じて補正した位置に設定する請求項
1~3のいずれか一項に記載のワークの搬送装置。
【請求項6】
前記ワークは中心孔を有するリング状であり、
前記搬送用ロボットのロボットアーム先端軸に棒体の基端部が固定され、
前記ワークの前記中心孔に前記棒体を先端部から挿入して、前記棒体に複数の前記ワークを支持させる請求項1~5のいずれか一項に記載のワークの搬送装置。
【請求項7】
前記ワークは、転動輪と、該転動輪に転がり接触する複数の転動体とを有する転がり軸受である請求項1~
6のいずれか一項に記載のワークの搬送装置。
【請求項8】
搬送用ロボットに支持させた複数のワークからなる配列体を、前記搬送用ロボットの駆動により、箱床と側壁を有する収容箱の上方の初期準備位置に搬送し、前記初期準備位置から前記配列体を少なくとも上下方向を含む複数方向へ移動させて、前記ワークと箱床及び前記側壁との干渉を検知した位置に前記配列体を位置決めし、位置決めされた前記配列体を前記収容箱内に載置するワークの搬送方法
であって、
前記搬送用ロボットに支持された前記配列体を、前記搬送用ロボットの駆動により前記初期準備位置に搬送する工程と、
前記初期準備位置から前記配列体を下降させて、前記ワークと前記箱床との干渉を検知した場合に、前記配列体の下降を停止して前記配列体を上下方向に関して位置決めする上下方向位置決め工程と、
上下方向に位置決めされた前記配列体を、前記箱床の面内のいずれか一方向に移動させ、前記ワークと前記収容箱の前記側壁との干渉を検知した場合に、前記配列体の前記一方向への移動を停止して前記配列体を前記一方向に関して位置決めする一方向位置決め工程と、
前記一方向に位置決めされた前記配列体を、前記上下方向と前記一方向とに直交する他方向に移動させ、前記ワークと前記収容箱の前記側壁との干渉を検知した場合に、前記配列体の前記他方向への移動を停止して前記配列体を前記他方向に関して位置決めする他方向位置決め工程と、
前記上下方向、前記一方向、及び前記他方向に位置決めされた前記配列体の前記搬送用ロボットによる支持を解除して、前記配列体を前記収容箱内に載置する載置工程と、
を実施し、
更に、前記位置決めされた前記配列体の位置を基準位置として記憶し、前記基準位置の情報を用いて、次の配列体を前記収容箱の上方に搬送するための次準備位置を設定し、前記搬送用ロボットに前記次の配列体を支持させ、当該次の配列体を前記次準備位置に搬送し、前記次準備位置から前記上下方向位置決め工程、前記一方向位置決め工程、及び前記他方向位置決め工程を実施して、前記次の配列体をワーク設置位置に位置決めし、前記載置工程により前記次の配列体を前記収容箱内に載置する、
ことを繰り返すワークの搬送方法。
【請求項9】
前記ワークは、転動輪と、該転動輪に転がり接触する複数の転動体とを有する転がり軸受であり、
前記転がり軸受を、請求項
8に記載のワークの搬送方法により搬送する転がり軸受の搬送方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の転がり軸受の搬送方法を用いる転がり軸受の製造方法。
【請求項11】
請求項
9に記載の転がり軸受の搬送方法を用いる機械の製造方法。
【請求項12】
請求項
9に記載の転がり軸受の搬送方法を用いる車両の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの搬送装置、ワークの搬送方法、転がり軸受の搬送方法、及び転がり軸受、機械、車両の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、転がり軸受が搭載される機械や車両等の製造現場や作業現場においては、多数の転がり軸受を搬送台車等に纏めて載置して、所望の位置へ搬送する作業等が行われる。その際、作業者は、軸受外周面を作業台上に載置して、つまり、転がり軸受を立てた姿勢にして作業台上に一列に並べて配置しておき、連通された各軸受の中心孔に、棒体を作業台と平行な方向に挿入する。そして、棒体が中心孔に挿入された各軸受を、棒体に支持させながら搬送台車に纏めて移載する。転がり軸受を搬送台車の収容箱に移載する際、作業者は、搬送台車の位置を目視で確認し、収容箱の壁面や底面と軸受との接触状態を手の感触により調整しながら各軸受を配置させている。このようなワークの搬送台車への移載は、作業者の視覚や触覚を多用するために作業負担が大きく、タクトタイムの増加の要因となるため、自動化が要望されている。
【0003】
この種のワーク搬送作業をロボットにより自動化するためには、ワークを個々に又は一定数単位で収容箱に搬送し、所定数のワークを収容箱に配置する一連の動作を、ロボットに教示する必要がある。
しかし、搬送台車には、使用による経年劣化等によって歪みが生じている場合があり、その寸法には個体差がある。また、搬送台車は、所定の定位置に正確に配置されているとは限らない。したがって、ワークと収容箱との位置関係は、それぞれの形状、寸法、配置位置が、搬送の度に異なってしまう。そのため、ロボットの駆動のためには、正確な位置情報を逐一求める必要があり、一連の動作をロボットに教示する作業は容易ではない。
【0004】
このような事情から、ロボットの教示作業を簡単化するための技術が提案されている。例えば、特許文献1には、ワークを対象物に押し当てて、対象物に対するワークの位置を自動探索するようにした作業ロボットの教示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の技術は、対象物の穴に対しワークを正確に挿入するための技術であり、3次元的な広がりを持った収容箱に、その収容箱に対して、空間的な広がりがはるかに小さいワークを位置決めするために適用することは難しい。このように、ワークの自動搬送を行うには依然として課題が多いのが実情であった。
【0007】
そこで本発明は、複数のワークを収容箱の中に配置する作業を、高い位置決め精度で行え、これによりワークの搬送を容易に自動化できるワークの搬送装置、ワークの搬送方法、転がり軸受の搬送方法、及び転がり軸受、機械、車両の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は下記の構成からなる。
(1) 複数のワークからなる配列体を支持する搬送用ロボットと、
前記搬送用ロボットを駆動して前記配列体を搬送するロボット駆動部と、
箱床と側壁を有する収容箱と、
前記搬送用ロボットに設けられ、前記搬送用ロボットに支持された前記ワークに作用する外力を検出する外力センサと、
前記ロボット駆動部に、前記配列体を前記収容箱の上方の初期準備位置に搬送させ、前記初期準備位置から前記配列体を少なくとも上下方向を含む複数方向へ移動させて、前記外力センサにより前記ワークと前記箱床及び前記側壁との干渉を検知した位置に前記配列体を位置決めし、前記配列体を前記収容箱に載置させる制御部と、
を備えるワークの搬送装置。
このワークの搬送装置によれば、搬送用ロボットに正確な移動目標位置を教示させなくても、複数回のワークの移動時における干渉を検知することで、ワークを正確に位置決めできる。よって、複数のワークを収容箱に簡単に自動搬送させることができる。
【0009】
(2) 前記制御部は、
前記搬送用ロボットに支持された前記配列体を、前記搬送用ロボットの駆動により前記初期準備位置に搬送する工程と、
前記初期準備位置から前記配列体を下降させて、前記ワークと前記箱床との干渉を検知した場合に、前記配列体の下降を停止して前記配列体を上下方向に関して位置決めする上下方向位置決め工程と、
上下方向に位置決めされた前記配列体を、前記箱床の面内のいずれか一方向に移動させ、前記ワークと前記収容箱の前記側壁との干渉を検知した場合に、前記配列体の前記一方向への移動を停止して前記配列体を前記一方向に関して位置決めする一方向位置決め工程と、
前記一方向に位置決めされた前記配列体を、前記上下方向と前記一方向とに直交する他方向に移動させ、前記ワークと前記収容箱の前記側壁との干渉を検知した場合に、前記配列体の前記他方向への移動を停止して前記配列体を前記他方向に関して位置決めする他方向位置決め工程と、
前記上下方向、前記一方向、及び前記他方向に位置決めされた前記配列体の前記搬送用ロボットによる支持を解除して、前記配列体を前記収容箱内に載置する載置工程と、
を実施する(1)に記載のワークの搬送装置。
このワークの搬送装置によれば、配列体を収容箱上方の初期準備位置に搬送し、配列体を箱床まで下降させて上下方向に位置決めし、次に、配列体を側壁に突き当たるまで一方向と他方向に移動させて一方向と他方向に位置決めすることで、収容箱のサイズや位置に誤差が生じていても、これを許容してワークを収容箱内に搬送することができる。
【0010】
(3) 前記制御部は、
前記位置決めされた前記配列体の位置を基準位置として記憶し、前記基準位置の情報を用いて、次の配列体を前記収容箱の上方に搬送するための次準備位置を設定し、前記搬送用ロボットに前記次の配列体を支持させ、当該次の配列体を前記次準備位置に搬送し、前記次準備位置から前記上下方向位置決め工程、前記一方向位置決め工程、及び前記他方向位置決め工程を実施して、前記次の配列体をワーク設置位置に位置決めし、前記載置工程により前記次の配列体を前記収容箱内に載置する、
ことを繰り返す(2)に記載のワークの搬送装置。
このワークの搬送装置によれば、最初に搬送された配列体の位置決め位置(基準位置)に応じて、次の配列体のワーク配置位置を決定することで、効率よく複数のワークを収容箱に搬送でき、タクトタイムを短縮できる。
【0011】
(4) 前記制御部は、前記次準備位置から前記ワーク設置位置までの距離を、前記初期準備位置から前記基準位置までの距離よりも短く設定する(3)に記載のワークの搬送装置。
このワークの搬送装置によれば、ワーク設置位置までの距離が短縮されることで、2回目以降のワークの搬送に要するタクトタイムを短縮できる。
【0012】
(5) 前記制御部は、前記配列体を支持して前記初期準備位置及び前記次準備位置へ搬送するワーク移動速度よりも、前記配列体の前記初期準備位置から前記基準位置への移動時、及び前記次準備位置から前記ワーク設置位置へ移動させるワーク移動速度を遅く設定する(4)に記載のワークの搬送装置。
このワークの搬送装置によれば、ワークの移動速度を遅くしても、短い距離の移動に留められるため、タクトタイムの影響を小さくできる。また、移動速度を低下させるため、ワークと接触対象との干渉発生位置を、初期準備位置や次準備位置への移動速度で行う場合よりも正確に検知でき、ワークの位置決め精度を向上できる。
【0013】
(6) 前記制御部は、前記次準備位置を、前記基準位置から前記ワークと前記収容箱の寸法に応じて補正した位置に設定する(3)~(5)のいずれか一つに記載のワークの搬送装置。
このワークの搬送装置によれば、1回目の搬送でワークが位置決めされた基準位置を基準として、次準備位置が設定される。そのため、逐一目標位置を搬送用ロボットに教示する場合と比較して、ロボット駆動が簡単になり、効率のよい搬送が可能となる。
【0014】
(7) 前記制御部は、前記次準備位置を、前回の搬送で前記配列体が載置された前記ワーク設置位置から、前記ワークと前記収容箱の寸法に応じて補正した位置に設定する(3)~(5)のいずれか一つに記載のワークの搬送装置。
このワークの搬送装置によれば、前回の搬送でワークが位置決めされた位置を基準として、次準備位置が設定される。そのため、1回目の搬送時の移動先である基準位置から補正する方式と比較して、基準位置からの累積誤差が大きくならず、常に正確な位置への搬送が可能となる。
【0015】
(8) 前記ワークは中心孔を有するリング状であり、
前記搬送用ロボットのロボットアーム先端軸に棒体の基端部が固定され、
前記ワークの前記中心孔に前記棒体を先端部から挿入して、前記棒体に複数の前記ワークを支持させる(1)~(7)のいずれか一つに記載のワークの搬送装置。
このワークの搬送装置によれば、複数のワークを棒体に一度に支持させるため、効率よくワークの搬送が行える。
【0016】
(9) 前記ワークは、転動輪と、該転動輪に転がり接触する複数の転動体とを有する転がり軸受である(1)~(8)のいずれか一つに記載のワークの搬送装置。
このワークの搬送装置によれば、転がり軸受を収容箱の中に並べて積み重ねる作業を、簡単に自動化できる。
【0017】
(10) 搬送用ロボットに支持させた複数のワークからなる配列体を、前記搬送用ロボットの駆動により、箱床と側壁を有する収容箱の上方の初期準備位置に搬送し、前記初期準備位置から前記配列体を少なくとも上下方向を含む複数方向へ移動させて、前記ワークと箱床及び前記側壁との干渉を検知した位置に前記配列体を位置決めし、位置決めされた前記配列体を前記収容箱内に載置するワークの搬送方法。
このワークの搬送方法によれば、搬送用ロボットに正確な移動目標位置を教示させなくても、複数回のワークの移動時における干渉を検知することで、ワークを正確に位置決めできる。よって、複数のワークを収容箱に簡単に自動搬送させることができる。
【0018】
(11) 前記ワークは、転動輪と、該転動輪に転がり接触する複数の転動体とを有する転がり軸受であり、
前記転がり軸受を、(10)に記載のワークの搬送方法により搬送する転がり軸受の搬送方法。
この転がり軸受の搬送方法によれば、転がり軸受を収容箱の中に並べて積み重ねる作業を、簡単に自動化できる。
【0019】
(12) (11)に記載の転がり軸受の搬送方法を用いる転がり軸受の製造方法。
この転がり軸受の製造方法によれば、複数の転がり軸受を纏めて搬送でき、生産性を向上できる。
【0020】
(13) (11)に記載の転がり軸受の搬送方法を用いる機械の製造方法。
この機械の製造方法によれば、転がり軸受を備えた機械の生産効率を向上でき、低コスト化が図れる。
【0021】
(14) (11)に記載の転がり軸受の搬送方法を用いる車両の製造方法。
この車両の製造方法によれば、転がり軸受を備えた車両の生産効率を向上でき、低コスト化が図れる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数のワークを収容箱の中に配置する作業を、高い位置決め精度で行える。これにより、ワークの搬送を容易に自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係るワーク搬送装置の概略構成図である。
【
図3】(A)~(C)は、搬送用ロボットによる軸受の支持動作を段階的に示す工程説明図である。
【
図4】棒体に支持された軸受を収容箱に載置させる1回目の搬送工程を示すフローチャートである。
【
図5】(A)~(C)は配列体の上下方向(Z方向)の位置決め動作を段階的に示す動作説明図である。
【
図6】(A)~(C)は配列体のX方向の位置決め動作を段階的に示す動作説明図である。
【
図7】(A)~(C)は配列体の側壁側への(Y方向)位置決め動作を段階的に示す動作説明図である。
【
図8】収容箱内の基準位置に位置決めされた配列体を示す断面図である。
【
図9】配列体を収容箱へ載置させる2回目以降の搬送工程を示すフローチャートである。
【
図10】配列体の収容箱への移載位置と移載順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
ここでは、ワークとして、転動輪と、転動輪に転がり接触する複数の転動体とを有し、中心孔を有するリング状の転がり軸受(以下、単に「軸受」と記す。)を例示して説明するが、これに限らない。
【0025】
図1は本発明に係るワーク搬送装置の概略構成図である。
ワーク搬送装置100(以下、単に「搬送装置」と記す。)は、複数の軸受11を棒体13に支持させて搬送する搬送用ロボット15と、搬送用ロボット15を駆動するロボット駆動部17と、外力センサ19と、制御部21と、記憶部23とを備える。搬送装置100は、制御部21からの指令に基づいて、搬送用ロボット15に支持された複数の軸受11を、搬送台車25に搭載された収容箱27に搬送する。
【0026】
搬送用ロボット15は、棒体13の一端部が固定され、棒体13に支持された軸受11を押さえるストッパ30を有するスライダ31と、スライダ31を支持する多軸ロボット33と、を備える。なお、以下の説明では、上下方向をZ方向、収容箱27に軸受11を搬送する際の棒体13の軸方向をX方向、Z方向及びX方向に直交する方向をY方向とする。
【0027】
スライダ31は、詳細は省略するが、例えばモータ駆動されるボールねじ軸と、ボールねじ軸に螺合するボールねじナットとを有し、一軸方向に進退移動可能な直動案内ユニットが用いられる。スライダ31は、スライドレール35と、スライドレール35に沿ったWx方向に相対移動するスライド部37とを有する。スライド部37には、上下動する一軸シリンダ(不図示)を介してストッパ30が取り付けられる。つまり、このスライダ31は、スライダ全体が多軸ロボット33のロボットアーム先端軸に支持され、Wx方向にストッパ30を移動自在に支持する。
【0028】
スライドレール35の一端部には、L字形のホルダ41が下方に向けて固定される。ホルダ41の先端部には、棒体13の基端部13aが支持される。棒体13は、スライドレール35から下方に離間させて、スライドレール35と平行に配置される。よって、スライド部37を駆動すると、ストッパ30が棒体13に沿って移動する。
【0029】
多軸ロボット33は、先端軸39を6軸方向(X,Y,Z軸方向、及びX軸、Y軸、Z軸回りの各回転方向Tx,Ty,Tz)に制御可能な多関節ロボットである。多軸ロボット33は、先端軸39の位置や向きを変更することで、スライダ31と共に棒体13の位置や姿勢が6軸方向に変更自在となる。
【0030】
多軸ロボット33の先端軸39とスライダ31との間には、外力センサ19が配置される。外力センサ19は、棒体13(棒体13に支持される軸受11)に付加される外力を検出する。この外力センサ19は、任意の一軸方向の力と、一軸方向に直交し且つ互いに交差する少なくとも2方向の力とを検出できるセンサであればよい。外力センサ19の外力検出方向は、上記一軸方向を棒体13の軸方向と一致させることが好ましい。
【0031】
このような外力センサ19として、例えば、歪みセンサを有する多軸荷重センサや6軸力覚センサを利用できる。特に、6軸力覚センサを用いる場合には、X,Y,Z軸方向の力と、X軸、Y軸、Z軸回りのトルクとを、それぞれ独立して同時に検出できる。
【0032】
記憶部23は、軸受11を収容箱27に搬送するために必要となる各種情報が記憶される。つまり、記憶部23には、収容箱27の位置関連情報、即ち、収容箱27の規定の配置位置を示す情報、空の収容箱27に軸受11を搬送する際の初期準備位置の情報(詳細は後述)等が記憶される。
【0033】
制御部21は、外力センサ19からの検出信号及び記憶部23に記憶された情報に応じて制御信号を生成し、この制御信号をロボット駆動部17に出力する。ロボット駆動部17は、制御部21からの制御信号に応じて、搬送用ロボット15を駆動する。
【0034】
図2は搬送台車25の斜視図である。
搬送台車25は、収容箱27がフレーム45の上部に搭載され、フレーム45の下部に車輪47が設けられる。収容箱27は、長方形の箱床51と、箱床51の3辺に立設され、対面し合う一対の側壁53,55、及び奥側の側壁57と、側壁57と対面する手前側の位置に設けられヒンジ59により開閉自在に接続された開閉壁61と、を有する。開閉壁61は、チェーン63等の適宜な開き止めによって、開状態の内側面61aが箱床51と面一にされる。
【0035】
収容箱27には、側壁53,55,57、及び開閉壁61によって、直方体の収容空間が画成される。箱床51は、開閉壁61から側壁57に向けて下方へ傾斜していると、軸受11の開閉壁61側からの落下を防止できるため好ましい。なお、
図1においては傾斜を誇張して表しているが、実際の傾斜は僅かである。また、仮に箱床51に傾斜があったとしても、多軸ロボット33を制御して、この傾斜に合わせた角度を棒体13に持たせたることができる。さらに、収容箱27が規定位置から斜めに配置されていても、多軸ロボット33を制御して、その位置ずれの位相に合わせて棒体13を配置させることができる。
【0036】
図1に示す棒体13には、複数の軸受11が支持される。棒体13に軸受11を支持させる工程は、搬送用ロボット15の駆動により行ってもよく、手作業で行ってもよい。
【0037】
図3(A)~
図3(C)は、搬送用ロボット15による軸受11の支持動作を段階的に示す工程説明図である。
まず、不図示の軸受製造装置によって製造された軸受11を、
図3(A)に示すように、所定数をそれぞれの中心孔11aを連通させて並べた配列体65として、ワーク載置台67に載置する。ワーク載置台67から複数の軸受11からなる配列体65を搬送する際には、多軸ロボット33の駆動により、
図3(B)に示すように、スライダ31に基端部13aが固定された棒体13を、その反対側の先端部13bから軸受11の中心孔11aに挿入する。そして、
図3(C)に示すように、配列体65の全ての軸受11に棒体13が挿入された時点で棒体13の挿入動作を停止する。
【0038】
軸受11を手動で棒体13に支持させる場合は、上記同様の棒体13の挿入動作を行ってもよく、個々の軸受11を、順次に棒体13を挿通させる作業を繰り返し行ってもよい。
【0039】
棒体13に支持させる軸受11の個数は、搬送台車25の収容箱27における箱床51のX方向長さに応じて最大個数が設定される。
【0040】
次に、上記した構成の搬送装置100により、棒体13に支持された軸受11(ワーク)を、搬送台車25の収容箱27に移載するワークの搬送方法を説明する。
図4は棒体13に支持された軸受11を収容箱27に載置させる1回目の搬送工程を示すフローチャートである。以下に示す各工程は、
図1に示す制御部21からの指令に応じてロボット駆動部17が搬送用ロボット15を駆動することで行われる。
【0041】
(初期準備位置へのワーク搬送工程)
まず、
図1に示す多軸ロボット33を駆動して、棒体13に支持された複数の軸受11からなる配列体65を、搬送台車25の収容箱27の上方における初期準備位置(後述する
図10のP
a0)に移動させる(S11)。搬送台車25は、配列体65の移動に先立って、規定の待機位置に配置させ、収容箱27の開閉壁61を、
図1及び
図3に示すように開けておく。
【0042】
ここで、初期準備位置とは、規定位置に配置された搬送台車25の収容箱27の直上であって、長方形の箱床51の長辺と平行に棒体13が配置され、且つ、棒体13を下降させた際に、配列体65が収容箱27の側壁53,55,57に干渉することなく、対面する一対の側壁53,55の一方(ここでは側壁53)の近くに配置される位置である。
【0043】
(上下方向位置決め工程)
次に、多軸ロボット33を駆動して、棒体13を下降させる(S12)。
図5(A)~
図5(C)は配列体65の上下方向(Z方向)の位置決め動作を段階的に示す動作説明図である。
図5(A)に示すように、棒体13の下降動作によって配列体65が箱床51に向けて移動する。ここでの棒体13の下降動作は、S11の初期準備位置へのワーク移動速度V
0よりも遅いワーク移動速度Va(Va<V
0)に設定される。これは、
図1に示す外力センサ19による外力検出を行いながら移動させるためである。
図5(B)に示すように、配列体65の外周面が箱床51に突き当たると、外力センサ19が棒体13に作用する箱床51からの反力を検出する。このように、配列体65と干渉相手である箱床51との干渉を検知した場合には(S13)、
図5(C)に示すように、棒体13の下降動作を停止するとともに、棒体13を僅かに逆方向(上方)に移動させる(S14)。この上昇動作により、配列体65と箱床51との接触抵抗を軽減させる。
【0044】
上記の棒体13の下降、停止、上昇動作によって、配列体65が上下方向(Z方向)に位置決めされる。
【0045】
(一方向位置決め工程)
そして、多軸ロボット33を駆動して、棒体13を、収容箱27の箱床51の面内における一方向である奥行き方向(X方向)に移動させる(S15)。
図6(A)~
図6(C)は配列体65のX方向の位置決め動作を段階的に示す動作説明図である。
【0046】
図6(A)に示すように、棒体13の奥行き方向への移動動作によって配列体65が側壁57に向けて移動する。
図6(B)に示すように、配列体65の移動方向先端の軸受11が側壁57に突き当たると、
図1に示す外力センサ19が棒体13に作用する側壁57からの反力を検出する。このように、配列体65と側壁57との干渉を検知した場合には(S16)、
図6(C)に示すように、棒体13の奥行き方向への移動動作を停止するとともに、棒体13を僅かに逆方向(手前方向)に移動させる(S17)。この逆移動動作により、配列体65と側壁57との接触抵抗を軽減させる。
【0047】
上記の棒体13の移動、停止、逆移動動作によって、配列体65が奥行き方向(X方向)に位置決めされる。
【0048】
(他方向位置決め工程)
さらに、多軸ロボット33を駆動して、棒体13を収容箱27の一方の側壁53に向けた、上記した上下方向及び一方向と直交する他方向へ移動させる(S18)。
図7(A)~
図7(C)は配列体65の側壁53側への(Y方向)位置決め動作を段階的に示す動作説明図である。
【0049】
図7(A)に示すように、棒体13の側壁53側への移動動作によって配列体65が側壁53に向けて移動する。
図7(B)に示すように、配列体65の移動方向先端側の軸受11外周面が側壁53に突き当たると、
図1に示す外力センサ19が棒体13に作用する側壁53からの反力を検出する。このように、配列体65と側壁53との干渉を検知した場合には(S19)、
図7(C)に示すように、棒体13の側壁53側への移動動作を停止するとともに、棒体13を僅かに逆方向(反側壁53側)に移動させる(S20)。
【0050】
(基準位置の記憶工程)
上記の棒体13の移動、停止、逆移動動作によって、配列体65が側壁53に向かう方向(Y方向)に位置決めされる。その結果、配列体65は、
図8に示すように、収容箱27内の箱床51上で、一方の側壁53に沿って配列され、奥側の側壁57に突き当たる位置に位置決めされる。
図1に示す制御部21は、
図8における配列体65の配置位置を基準位置P
0(X
0,Y
0,Z
0)として、記憶部23に登録する(S21)。
【0051】
(載置工程)
配列体65を基準位置P0に位置決めした後、棒体13を、配列体65の各軸受11の中心孔11aに浮かした状態にして、配列体65から引き抜き(S22)、配列体65を基準位置P0に載置する(S23)。これにより、搬送用ロボット15による配列体65の支持が解除される。
【0052】
具体的には、多軸ロボット33による棒体13の引き抜き動作に同期させて、ストッパ30を、スライダ31の駆動によって棒体13の引き抜き方向とは逆方向に移動させる。このストッパ30の逆方向移動によって、配列体65が基準位置P
0に位置決めされたまま、棒体13だけを引き抜くことができる。以上より、
図8に示すように配列体65の1回目の搬送による収容箱27への載置が完了する。ストッパ30は、棒体13の引き抜きを完了した後、スライダ31の駆動によって初期状態のホルダ41側に移動させておく。
【0053】
次に、棒体13に次の配列体65を支持させて、配列体65を収容箱27へ移載する。
2回目以降の配列体65の収容箱27への搬送は、前回(ここでは1回目)の搬送時における基準位置P0の位置情報を用いて搬送用ロボット15を駆動する。
【0054】
(2回目以降の搬送工程)
図9は配列体65を収容箱27へ載置させる2回目以降の搬送工程を示すフローチャートである。
まず、前述の
図3に示すように、棒体13に複数の軸受11からなる配列体65を支持させる。そして、次の配列体65が支持された棒体13の移動先となる、基準位置P
0に応じた次準備位置を設定する(S31)。
【0055】
図10は配列体65の収容箱27への移載位置と移載順を示す説明図である。
配列体65の1回目の載置先である基準位置P
0は、箱床51上の側壁53に沿った片隅部であり、基準位置P
0の上方の所定距離L
H2を離間した点が前述した初期準備位置P
a0である。
【0056】
また、配列体65の2回目の載置先は、箱床51上で基準位置P
0に隣接する位置であり、基準位置P
0から反側壁53側にΔW(軸受11の直径寸法に相当)だけ離れた位置である。このΔWだけ補正した位置を、次ワークのワーク設置位置P
1とする。このワーク設置位置P
1の上方に予め定めた所定距離L
H1を離間させ、X方向及びY方向に関しても基準位置P
0から僅かに離間させた空間位置を次準備位置P
a1に設定する。そして、多軸ロボット33を駆動して、この次準備位置P
a1に、
図1に示す棒体13に支持された2回目の搬送用の配列体65を配置させる(S32)。
【0057】
次準備位置P
a1に配置された配列体65は、前述した
図4に示すS12~S23の各手順と同様に移動動作させて、ワーク設置位置P
1に載置させる(S33)。このワーク設置位置P
1を基準位置に設定し、記憶部23に記憶された基準位置の情報を更新する(S34)。
【0058】
上記のS31~S34を、用意される全ての配列体65(軸受11)に繰り返し実施して、複数の配列体65を順次に収容箱27に載置する(S35)。
【0059】
ここで、収容箱27は、Y方向の幅Lwが限られているため、配列体65の載置位置が側壁53側から、側壁55側に最も近い最大のn列目に至った後は、載置位置を再び側壁53側に戻し、1回目に載置した基準位置P0よりも例えばΔHだけ上をワーク設置位置Pn+1として配列体65を積層する。このようにワーク設置位置P1~Pn、Pn+1,Pn+2、・・・は、軸受11や収容箱27の形状等に応じて、適宜に調整される。
【0060】
配列体65の収容箱27内への載置形態は、載置済みの隣接する配列体同士の間の上に積み重ね、層毎に軸受の中心をずらして配置してもよい(
図2参照)。その場合、特に軸受11のような断面円形のワークを、高い収容効率で、安定性を高めて配置できる。また、配列体65の載置順は、一方の側壁53から他方の側壁55まで載置した後、次の配列体65を他方の側壁55側の載置済みの配列体上に積み重ねる順であってもよい。
【0061】
また、収容箱27の高さ方向(Z方向)に関しても同様に、高さLHが限られているため、配列体65の積層高さは、高さLHを超えない範囲に留める。
【0062】
このように、配列体65を順次に収容箱27に載置する手順によれば、
図10に示す1回目の配列体65を載置する際に、
図1に示す棒体13を初期準備位置P
a0へ移動させるときよりも、2回目以降の配列体65を載置する際に、棒体13を次準備位置P
a1に移動させるときの方が、棒体13を載置位置(基準位置P
0,ワーク設置位置P
1,P
2,・・・に近づけられる。
【0063】
つまり、LH1<LH0とすることで、Pa0からP0までの高さよりもPa1からP1までの高さを低くでき、棒体13の下降移動量を短縮できる。棒体13を基準位置P0やワーク設置位置P1へ下降させる際のロボット移動速度は、外力センサ19による検出を同時に行うため、棒体13の待機位置から収容箱27への移動時のロボット移動速度よりも遅く設定される。そのため、棒体13の下降移動量の短縮は、Z方向に位置決めするタクトタイムの短縮に大きく寄与でき、より高速な軸受11の搬送作業が行える。
【0064】
また、棒体13のY方向の移動についても同様に、基準位置P0と初期準備位置Pa0とのY方向差ΔY0を、ワーク設置位置P1と次準備位置Pa1とのY方向差ΔY1より短縮する(ΔY0>ΔY1)。さらに、図示はしないがX方向に関しても、基準位置P0と初期準備位置Pa0とのX方向差ΔX0を、ワーク設置位置P1と次準備位置Pa1とのX方向差ΔX1より短縮する(ΔX0>ΔX1)。これにより、X方向、Y方向の位置決め時においても、タクトタイムの短縮が図れる。
【0065】
上記のように構成された搬送装置100及びワーク搬送方法によれば、所定数の軸受11からなる配列体65を、X、Y、Z方向の干渉の有無を検出しながら収容箱27の中に配列させることで、軸受11の高精度な位置決めが可能となる。よって、載置済みの軸受11の上に新たに軸受11を積み重ねる作業も可能となる。また、搬送台車25の設置位置や、収容箱27の寸法等の精度が低くても、安定して軸受11の位置決めと搬送が行える。これにより、軸受11の搬送の自動化、つまり無人搬送が可能となり、視覚や触覚を多用する労力の大きい搬送作業から作業者を解放できる。
【0066】
また、配列体65の収容箱27内へ載置する際の移動方向は、上下方向を含む複数方向であればよい。移動順は、ここではZ方向、X方向、Y方向の順で説明したが、Z方向、Y方向、X方向の順であってもよい。また、X方向、Y方向に代えて、互いに交差する方向としてもよい。そして、配列体65の移動順は、搬送台車25の収容箱27の形態等、環境条件に応じて適宜変更することが可能である。
【0067】
3回目以降の搬送においては、上記したように、次ワークのワーク設置位置を、直前の搬送における基準位置をもとにして補正してもよいが、1回目の搬送時における基準位置P0をもとにして補正してもよい。その場合、搬送処理の制御がより簡単になり、より高速な搬送が行える。また、直前の搬送における基準位置をもとに補正する場合には、基準位置P0からの累積誤差の影響を受けにくくなり、より高精度な搬送が可能となる。
【0068】
外力センサ19として、6軸力覚センサを用いた場合、X,Y,Z軸方向の力と、X軸、Y軸、Z軸回りのトルクとを、それぞれ独立して同時に検出できる。このため、各検出値を組み合わせることで、箱床51や側壁53,55等との干渉によって棒体13に作用する反力をより高感度に検出でき、より精密な棒体13の移動動作が可能となる。
【0069】
そして、複数の軸受11の搬送が完了すると、
図1、
図2に示す搬送台車25の開閉壁61を閉じ、所望の移動先へ搬送台車25を移動させる。
【0070】
上記した軸受11(ワーク)の搬送装置、製造装置及び製造方法は、転がり軸受の製造の他、転がり軸受を備える各種の機械(器械等の動力が手動のものも含む)の製造にも適用可能である。例えば、レール、スライダ等の直動案内装置、ねじ軸、ナット等のボールねじ装置やねじ装置、直動案内軸受とボールねじとを組み合わせた装置やXYテーブル等のアクチュエータ、等の直動装置への適用も可能である。
また、ステアリングコラム、自在継手、中間ギア、ラックアンドピニオン、電動パワーステアリング装置、ウォーム減速機、トルクセンサ等の操舵装置への適用も可能である。
そして、上記機械、操舵装置等を含む車両、工作機械、住宅機器等に、上記搬送装置及び製造装置並びに製造方法を広く適用することができる。
これにより得られた機械、車両等によれば、効率よく搬送が行えるため、生産性を高めて、しかも低コストな構成にできる。
【0071】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
上記説明では、リング状のワークとして転がり軸受を例示しているが、これに限らず、軸断面が逆U字形等の、断面の一部に開放部を有する形状の部材であってもよい。また、ワークを支持する棒体は、軸断面が矩形状、多角形状等の棒体、又は板材であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
11 転がり軸受(ワーク)
11a 中心孔
13 棒体
15 搬送用ロボット
17 ロボット駆動部
19 外力センサ
21 制御部
23 記憶部
25 搬送台車
27 収容箱
33 多軸ロボット
51 箱床
53,55,57 側壁
65 配列体
100 ワーク搬送装置