(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】鞍乗型車両の燃料タンク構造
(51)【国際特許分類】
B62J 35/00 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
B62J35/00 F
B62J35/00 Z
(21)【出願番号】P 2018230728
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】▲瀬▼崎 直幸
(72)【発明者】
【氏名】下村 紘志
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077805(JP,A)
【文献】特開2018-071371(JP,A)
【文献】国際公開第2006/008856(WO,A1)
【文献】特開2016-124422(JP,A)
【文献】特開平05-016855(JP,A)
【文献】特開2015-096754(JP,A)
【文献】特開2009-255911(JP,A)
【文献】特開2001-140718(JP,A)
【文献】特開2016-141457(JP,A)
【文献】特開2006-151154(JP,A)
【文献】特開昭61-089122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体がタンクカバーで覆われ、前記タンク本体の上面に設けられた給油口のインレット筒が、前記タンクカバーに形成された開口穴内に位置するように構成された鞍乗型車両の燃料タンク構造であって、
前記タンクカバーには前記開口穴の周縁に沿って下方に突出する円環状リブ部が設けられ、
前記インレット筒の外周に円環状クッションが配置され、
前記円環状クッションには、内側の上部に開放部が形成されており、前記開放部に前記円環状リブ部が位置して、前記円環状クッションと前記円環状リブ部とが接触することを特徴とする鞍乗型車両の燃料タンク構造。
【請求項2】
前記円環状リブ部には、前記円環状クッションに対向する位置で、前記開口穴の内方向に向かって下がるように傾斜するテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両の燃料タンク構造。
【請求項3】
前記円環状クッションの内側の上部に、内方向に向かって下がるように傾斜するテーパ面が形成されることにより前記開放部が形成され、
前記円環状クッションの前記テーパ面と、前記円環状リブ部の前記テーパ面とが面接触することを特徴とする請求項2に記載の鞍乗型車両の燃料タンク構造。
【請求項4】
前記円環状クッションには、内側の下部にも開放部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鞍乗型車両の燃料タンク構造。
【請求項5】
前記円環状クッションは、上下対称形状であることを特徴とする請求項4に記載の鞍乗型車両の燃料タンク構造。
【請求項6】
前記円環状クッションに水排出用の溝が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の鞍乗型車両の燃料タンク構造。
【請求項7】
前記円環状クッションの内周面は、前記インレット筒の外周面に当接することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の鞍乗型車両の燃料タンク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両の燃料タンク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両の燃料タンク構造に関連する技術として、例えば特許文献1には、燃料タンクのタンク本体上部に、給油口を形成する円筒体が配置され、燃料タンクの上面を覆うタンク上部カバーに、給油口を構成するカバー貫通孔が形成される構成が開示されている。特許文献1では、ダンパーを、円筒体の上縁、及びタンク上部カバーのカバー貫通孔の周縁に嵌合させる構成になっている(特許文献1の
図11を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の自動二輪車の燃料タンク構造では、ダンパーがタンク上部カバーの表面に露出するため、外観の見栄えが悪くなる。
また、ダンパーを、円筒体の上縁、及びタンク上部カバーのカバー貫通孔の縁部に嵌合させる必要があり、組み付け性に劣る。
【0005】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、外観の見栄え、組み付け性を向上させる鞍乗型車両の燃料タンク構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鞍乗型車両の燃料タンク構造は、タンク本体がタンクカバーで覆われ、前記タンク本体の上面に設けられた給油口のインレット筒が、前記タンクカバーに形成された開口穴内に位置するように構成された鞍乗型車両の燃料タンク構造であって、前記タンクカバーには前記開口穴の周縁に沿って下方に突出する円環状リブ部が設けられ、前記インレット筒の外周に円環状クッションが配置され、前記円環状クッションには、内側の上部に開放部が形成されており、前記開放部に前記円環状リブ部が位置して、前記円環状クッションと前記円環状リブ部とが接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外観の見栄え、組み付け性を向上させる鞍乗型車両の燃料タンク構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例に係る燃料タンク構造を含む自動二輪車の要部を示す分解斜視図である。
【
図2】実施例に係る燃料タンク構造を含む自動二輪車の要部を示す斜視図である。
【
図3】実施例に係る燃料タンク構造の構成を示す断面図である。
【
図4】円環状クッションまわりの構成を示す拡大断面図である。
【
図6】円環状クッションまわりの構成の変形例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両の燃料タンク構造は、タンク本体がタンクカバーで覆われ、前記タンク本体の上面に設けられた給油口のインレット筒が、前記タンクカバーに形成された開口穴内に位置するように構成された鞍乗型車両の燃料タンク構造であって、前記タンクカバーには前記開口穴の周縁に沿って下方に突出する円環状リブ部が設けられ、前記インレット筒の外周に円環状クッションが配置され、前記円環状クッションには、内側の上部に開放部が形成されており、前記開放部に前記円環状リブ部が位置して、前記円環状クッションと前記円環状リブ部とが接触する。このように、円環状クッションの内側の上部の開放部に円環状リブ部が位置して、円環状クッションと円環状リブ部とが接触する構成としたので、円環状クッションがタンクカバーの表面に露出せず、外観の見栄えが向上する。また、円環状クッションをタンク本体に装着した状態でタンクカバーを装着すればよいので、組み付けが容易で組み付け工数の削減が可能になり、組み付け性が向上する。また、タンクカバーの開口穴の周縁に円環状リブを設けたので、タンクカバーの剛性が高まり、タンクカバーの変形によるインレット筒との接触による摩耗や異音の発生を防ぐことができる。
【実施例】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例について説明する。
本実施例では、鞍乗型車両として自動二輪車1を例に説明する。
図1は、実施例に係る燃料タンク構造を含む自動二輪車1の要部を示す分解斜視図である。また、
図2は、実施例に係る燃料タンク構造を含む自動二輪車1の要部を示す斜視図である。なお、本願において上下、左右、前後といった方向は、自動二輪車1の走行方向を前、地面方向を下とした方向を指すものとし、必要に応じて方向を示す。
【0011】
ヘッドパイプ2には、後斜め下方に延びる左右のタンクチューブ3が接続する。ヘッドパイプ2には、図示は省略するが、前輪を支持するフロントフォークがハンドルバー等と共に左右回動自在に軸支される。
左右のタンクチューブ3間には、燃料を蓄えるためのタンク本体4が搭載される。タンク本体4は、後部に比べて前部が上方に突出した形状を有し、タンク本体4の前部がタンクカバー5で覆われる。タンク本体4の後方には、図示は省略するが、乗員が着座するシートが連設される。
【0012】
以下、実施例に係る燃料タンク構造を詳細に説明する。
図3は、実施例に係る燃料タンク構造の構成を示す断面図である。
図4は、円環状クッション19まわりの構成を示す拡大断面図である。
図5は、円環状クッション19を示す図であり、(a)が平面図、(b)が正面図である。
タンク本体4の前部の上面に、給油口のインレット筒6が設けられる。
図3、
図4に示すように、インレット筒6は、タンク本体4の上面に形成された穴7に挿入され、その外周面がタンク本体4に溶接固定される(
図4の溶接ビード26を参照)。インレット筒6は、タンク本体4の上面よりも上方に突出したかたちで取り付けられる。
インレット筒6は有底円筒形であり、底部に穴8が形成される。そして、穴8には、給油の際に給油ノズルを挿入するための円筒体9が挿設され、円筒体9がタンク本体4の内部に延出する。
【0013】
インレット筒6の上部開口を閉塞するようにタンクキャップ10が設けられる。タンクキャップ10は、円環状の基部11と、基部11の内側に配置された円形の蓋12と、蓋12の裏側に設けられた、キーロック機構を含む内蓋部13とをユニット化したものである。基部11は、インレット筒6の上部開口に合わせた外径を有し、複数本のボルト14を介してインレット筒6の底部に固定される。蓋12は、基部11の裏面で支持されるアーム15により開閉可能である。蓋12を閉じた状態で、内蓋部13が円筒体9の上部開口を閉塞する。
【0014】
タンクカバー5の上面には開口穴16が形成されており、タンクカバー5を装着すると、タンク本体4の上面に設けられたインレット筒6が開口穴16内に位置する。タンクカバー5の開口穴16の周辺部5aは、タンクカバー5の他の部分よりも一段高くなって、略フラットな面形状になっている。
図4に示すように、タンクカバー5の周辺部5aとタンクキャップ10との間に隙間が形成されるとともに、周辺部5aとタンクキャップ10とが略面一になり、外観を良くすることができる。
図1に示すように、タンクカバー5の前部及び後部は、タンク本体4の前部及び後部に設けられたブラケット17、18にネジ止めされる。
【0015】
ここで、インレット筒6の外周には、円環状クッション19が配置される。円環状クッション19は、ダンパーとして機能するものであり、例えばゴム製である。
図4、
図5に示すように、円環状クッション19は、ホームベース形状の断面を有し、上下対称形状になっている。具体的には、円環状クッション19の内側(中心側)の上部に、内方向に向かって下がるように傾斜するテーパ面20が形成され、また、内側の下部に、内方向に向かって上がるように傾斜するテーパ面21が形成される。これにより、円環状クッション19には、内側の上部及び内側の下部にそれぞれ空間(本願において開放部と呼ぶ)22、23が形成される。円環状クッション19の内径はインレット筒6の外径と略同径であり、円環状クッション19の内周面はインレット筒6の外周面に当接する。
【0016】
また、タンクカバー5には、開口穴16の周縁に沿って下方に突出する円環状リブ部24が一体成形される。円環状リブ部24は、開口穴16の周縁に連続して垂下する形状を有し、円環状クッション19のテーパ面20に対向する位置で、開口穴16の内方向に向かって下がるように傾斜するテーパ面25が形成される。
【0017】
インレット筒6の外周に円環状クッション19を装着した状態で、タンクカバー5を装着すると、円環状リブ部24が、円環状クッション19の内側の上部の開放部22に位置する。そして、円環状リブ部24のテーパ面25が円環状クッション19のテーパ面20に押し当てられて、これらテーパ面20、25が面接触する。
このように円環状クッション19の中心側に形成されたテーパ面20と、円環状リブ部24の外周側に形成されたテーパ面25とが面接触した状態では、
図4に示すように、タンクカバー5の円環状リブ部24とインレット筒6の外周面との間に隙間が形成され、円環状リブ部24はインレット筒6の外周面と非接触である。
【0018】
以上のようにした燃料タンク構造では、円環状クッション19のテーパ面20と、円環状リブ部24のテーパ面25とが面接触する構造により、円環状クッション19を介してタンクカバー5とインレット筒6との芯出し、平面出しが可能になる。これにより、給油口(インレット筒6)に対するタンクカバー5の位置合わせを容易に行うことが可能になる。また、径方向の寸法誤差を、円環状クッション19と円環状リブ部24(タンクカバー5)との上下高さで吸収することができる。
また、上述したように、タンクカバー5の前部及び後部は、タンク本体4の前部及び後部に設けられたブラケット17、18にネジ止めされており、前後2点の締付構造により、タンクカバー5の回転規制、浮き防止を行う。この場合に、ネジを挿通させる穴を長穴にし、前後方向の誤差を吸収できるようにするのがよい。
【0019】
また、円環状クッション19の内側の上部の開放部22に円環状リブ部24が位置して、円環状クッション19と円環状リブ部24とが接触する構成としたので、円環状クッション19がタンクカバー5の表面に露出せず、外観の見栄えが向上する。また、円環状リブ部24はタンク本体4及びインレット筒6の外周面と非接触であり、外観の見栄えが向上する。
また、円環状クッション19をタンク本体4に装着した状態でタンクカバー5を装着すればよいので、組み付けが容易で組み付け工数の削減が可能になり、組み付け性が向上する。
また、タンクカバー5の開口穴16の周縁に円環状リブ24を設けたので、タンクカバー5の剛性が高まり、タンクカバー5の変形によるインレット筒6との接触による摩耗や異音の発生を防ぐことができる。
【0020】
また、円環状クッション19の内側の下部に開放部23を形成することにより、円環状クッション19が、タンク本体4とインレット筒6とを接合する溶接ビード26に干渉することを避けることができる。
また、円環状クッション19を上下対称形状とすることにより、上下の方向性をなくし、誤組み付けを防ぐことができる。
【0021】
なお、上記実施例では、円環状クッション19にテーパ面20、21を形成するようにしたが、これに限定されるものではない。
図6に、円環状クッション19の変形例を示す。
図6に示すように、円環状クッション19の内側の上部及び内側の下部にそれぞれ段部27、28が形成されることにより、開放部22、23が形成されるようにしてもよい。この場合、円環状リブ部24のテーパ面25に対して、円環状クッション19の段部27の角部29が線接触することになる。
【0022】
また、円環状クッション19に、水排出用の溝が形成されるようにしてもよい。
図7は、円環状クッションの変形例を示す図であり、(a)が平面図、(b)が正面図、(c)がc-c線断面図、(d)がd-d線断面図、(e)がe-e線断面図である。実施例の円環状クッション19と同様、ホームベース形状の断面を有し、内側の上部及び内側の下部にテーパ面20、21が形成される。そして、円環状クッション19の内周面に、上下に延びる凹溝30が等間隔に形成される。そして、円環状クッション19の上面及び下面には、凹溝30につながり、放射状に延びる凹溝31が上面及び下面で交互に形成される。これら凹溝30、31により、インレット筒6のまわりに浸入した水を円環状クッション19の外側に排出することができる。
【0023】
以上、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明したが、各実施例は、本発明の実施にあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、各実施例に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0024】
1:自動二輪車、4:タンク本体、5:タンクカバー、6:インレット筒、16:開口穴、19:円環状クッション、20、21:テーパ面、22、23、開放部、24:円環状リブ部、25:テーパ面