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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20220830BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20220830BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220830BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
C08L63/00 A
C08L79/08 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018523936
(86)(22)【出願日】2017-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2017021836
(87)【国際公開番号】W WO2017217413
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2016118282
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(72)【発明者】
【氏名】宮本 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】松本 欣也
(72)【発明者】
【氏名】萬代 淳彦
(72)【発明者】
【氏名】杉山 暁子
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-139949(JP,A)
【文献】特開2007-241249(JP,A)
【文献】特開2015-228034(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0062513(US,A1)
【文献】特開2007-047762(JP,A)
【文献】特開2007-140465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分、(B)成分及び有機溶媒を含有することを特徴とする液晶配向剤。
(A)成分:下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドから選ばれる少なくとも1種の重合体。
【化1】
(式(1)中、Xは、4価の有機基であり、Yは2価の有機基である。Rは、水素原子、又は炭素数1~5のアルキル基であり、A1、は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、又は炭素数2~10のアルキニル基である。)
(B)成分:下記式から選ばれる少なくとも1種からなる、脂肪族骨格を有し、かつエポキシ基を3つ以上有する化合物。
【化2】
(式中、mは1~10の整数であり、nは1~10の整数であり、Rは炭素数1~7のアルキル基であり、p、qは、それぞれ独立して、1~8の整数である。)
【請求項2】
前記(B)成分が、下記式から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【化3】
(式中、nは1~10の整数である。)
【請求項3】
前記(B)成分が下記から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
【化4】
【請求項4】
式(1)におけるXが下記式(X-1)~(X-14)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【化5】
(式中、R、R、R10、及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、アルケニル基、又はフェニル基である。)
【請求項5】
が、下記式(X1-1)及び(X1-2)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種類である請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【化6】
【請求項6】
式(1)において、Yが下記式(2)及び(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【化7】
(式(2)中、R12は単結合、又は炭素数1~30の2価の有機基であり、R13は水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~30の1価の有機基であり、aは1~4の整数であり、aが2以上の場合は、R12、R13は互いに同一でも異なっていてもよい。式(3)中のR14は単結合、-O-、-S-、-NR15-、アミド結合、エステル結合、ウレア結合、又は炭素数1~40の2価の有機基であり、R15は、水素原子、又はメチル基である。)
【請求項7】
前記有機溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、及び4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
前記有機溶媒が、更に、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールジメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種の貧溶媒を含む、請求項7に記載の液晶配向剤。
【請求項9】
前記(A)成分を2~8重量%含み、前記(B)成分を液晶配向剤に含まれる前記(A)成分の100重量部に対して1~30重量部含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の製造に用いられる液晶配向剤、この液晶配向剤から得られる液晶配向膜及びこの液晶配向膜を使用した液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、軽量、薄型かつ低消費電力の表示デバイスとして知られている。近年では、急速にシェアを拡大してきたスマートフォンやタブレット型端末向けの高精細液晶表示素子においても、高い表示品位が求められるほどの目覚ましい発展を遂げている。
【0003】
液晶表示素子は、電極を備えた透明な一対の基板により液晶層を挟持して構成されるが、液晶が基板間で所望の配向状態となるように有機材料からなる有機膜が液晶配向膜として使用されている。すなわち、液晶配向膜は、液晶表示素子において、液晶を挟持する基板の液晶と接する面に形成され、その基板間で液晶を一定の方向に配向させるという役割を担っている。更には、液晶配向膜によって、液晶のプレチルト角を制御することができ、また、主にポリイミドの構造を選択することでプレチルト角を高くする方法(特許文献1参照)及び低くする方法(特許文献2参照)などが知られている。
【0004】
また基板に対して垂直に配向している液晶分子を電界によって応答させる方式(VA方式)の液晶表示素子には、その製造過程において液晶分子に電圧を印加しながら紫外線を照射する工程を含むものがある。
このようなVA方式の液晶表示素子では、予め液晶組成物中に光重合性化合物を添加し、かつポリイミド系などの垂直配向膜を用い、液晶セルに電圧を印加しながら紫外線を照射することで、液晶の応答速度を速くするPSA(Polymer Sustained Alignment)方式素子が知られている(特許文献3、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本特開平09-278724号公報
【文献】日本特開平10-123532号公報
【文献】日本特開2003-307720号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】K.Hanaoka,SID 04 DIGEST、P.1200-1202
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、スマートフォンや携帯電話などのモバイル機器では、できるだけ大きい表示面を確保するため、液晶表示素子の基板間を接着させるために用いるシール剤の幅を従来に比べて狭くする、所謂狭額縁化が要求されている。かかるパネルの狭額縁化に伴って、液晶表示素子を作製する際に用いるシール剤の塗布位置が、液晶配向膜の端部に接した位置、あるいは液晶配向膜の上部に塗布されるようになるが、ポリイミドには極性基がない、もしくは少ないため、シール剤と液晶配向膜表面で共有結合が形成されず、基板同士の接着が不十分となる問題点があった。
【0008】
上記のような場合、特に高温高湿条件下での使用において、シール剤と液晶配向膜との間から水が混入しやすくなり、液晶表示素子の額縁付近に表示ムラが発生してしまうという問題が生じる。従って、ポリイミド系液晶配向膜とシール剤や基板との接着性(密着性)を向上させることが課題となる。上述のごとき液晶配向膜のシール剤や基板との接着性の改善は、液晶配向膜の有する、液晶配向性や電気特性を低下させずに達成されることが必要であり、さらにはこれらの特性を向上させることが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、下記の(A)成分、(B)成分、及び有機溶剤を含有することを特徴とする液晶配向剤が上記の課題を達成し得ることを見出し、本発明に到達した。
(A)成分:高分子膜を形成し、配向処理により液晶を配向させる能力を有する重合体
(B)成分:脂肪族骨格を有し、エポキシ基を3つ以上有する化合物
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶配向剤を用いることにより、液晶配向性や電気特性を低下させることなく上述する課題を達成できる。すなわち、本発明の液晶配向剤を用いることで、シール剤と液晶配向膜との接着性を高め、高温高湿条件下において液晶表示素子の額縁付近の表示ムラの発生を抑制することができる液晶配向膜が得られる。このため、この液晶配向膜を有する液晶表示素子はシール剤と液晶配向膜との接着性を高めることで額縁付近の表示ムラが解決でき、大画面で高精細であり、特にモバイル機器用の液晶ディスプレイに好適に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<(A)成分>
本発明の液晶配向剤に含まれる(A)成分である重合体は、高分子膜を形成し、配向処理により液晶を配向させる能力を持つものであれば、その構造は特に限定されない。例えば、ポリアミック酸及びポリアミック酸エステル(以下、2つを併せてポリイミド前駆体とも称する)、前記ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミド、ポリウレア、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリアミドイミド、(メタ)アクリレート等が挙げられる。その中でも、ポリイミド前駆体及び/又はポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドが好ましい。
【0012】
本発明の液晶配向剤に好ましく用いられる重合体であるポリイミド前駆体は、下記の式(1)で表される構造単位を有する。
【化1】
【0013】
式(1)において、Xは、4価の有機基であり、Yは、2価の有機基である。Rは、水素原子、又は炭素数1~5のアルキル基であり、A、Aは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、又は炭素数2~10のアルキニル基である。
における上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基などが挙げられる。加熱によるイミド化のしやすさの観点から、Rは、水素原子、又はメチル基が好ましい。
【0014】
式(1)において、Xはテトラカルボン酸誘導体由来の4価の有機基であり、その構造は特に限定されるものではない。ポリイミド前駆体中、Xは2種類以上が混在していてもよい。Xの具体例を示すならば、下記式(X-1)~(X-44)の構造が挙げられる。
【0015】
【化2】
【0016】
【化3】
【0017】
【化4】
【0018】
【化5】
【0019】
上記式(X-1)におけるR~R11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、アルキニル基、若しくは、フェニル基である。R~R11が嵩高い構造である場合、液晶配向性を低下させる可能性があるため、水素原子、メチル基、エチル基がより好ましく、水素原子、又はメチル基が特に好ましい。
【0020】
式(1)において、Xはモノマーの入手性の観点から、(X-1)~(X-14)から選ばれる構造を含有することが好ましい。
得られる液晶配向膜の信頼性をさらに高められることから、Xの構造は、(X-1)~(X-7)及び(X-10)のような、脂環式構造が好ましく、(X-1)で表される構造がより好ましい。更に、良好な液晶配向性を示すため、Xの構造としては、下記式(X1-1)又は(X1-2)がさらに好ましい。
【0021】
【化6】
【0022】
上記(X-1)~(X-44)から選ばれる構造の好ましい割合としては、X全体の20モル%以上であり、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。
式(1)において、A及びAはそれぞれ独立して水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルキニル基である。
【0023】
上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロヘキシル基などが挙げられる。アルケニル基としては、上記のアルキル基に存在する1つ以上のCH-CH構造を、C=C構造に置き換えたものが挙げられ、より具体的には、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、2-ペンテニル基、2-ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。アルキニル基としては、前記のアルキル基に存在する1つ以上のCH-CH構造をC≡C構造に置き換えたものが挙げられ、より具体的には、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基などが挙げられる。
【0024】
上記のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は置換基を有していてもよく、更には置換基によって環構造を形成してもよい。なお、置換基によって環構造を形成するとは、置換基同士又は置換基と母骨格の一部とが結合して環構造となることを意味する。
この置換基の例としてはハロゲン基、水酸基、チオール基、ニトロ基、アリール基、オルガノオキシ基、オルガノチオ基、オルガノシリル基、アシル基、エステル基、チオエステル基、リン酸エステル基、アミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を挙げることができる。
【0025】
置換基であるハロゲン基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
置換基であるアリール基としては、フェニル基が挙げられる。このアリール基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
置換基であるオルガノオキシ基としては、O-Rで表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。オルガノオキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。
【0026】
置換基であるオルガノチオ基としては、-S-Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。オルガノチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基などが挙げられる。
【0027】
置換基であるオルガノシリル基としては、-Si-(R)で表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。オルガノシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリペンチルシリル基、トリヘキシルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基などが挙げられる。
【0028】
置換基であるアシル基としては、-C(O)-Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。アシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
置換基であるエステル基としては、-C(O)O-R、又は-OC(O)-Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。
【0029】
置換基であるチオエステル基としては、-C(S)O-R、又は-OC(S)-Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。
置換基であるリン酸エステル基としては、-OP(O)-(OR)2で表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。
【0030】
置換基であるアミド基としては、-C(O)NH、又は、-C(O)NHR、-NHC(O)R、-C(O)N(R)、-NRC(O)Rで表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。
【0031】
置換基であるアリール基としては、前述したアリール基と同じものを挙げることができる。このアリール基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
置換基であるアルキル基としては、前述したアルキル基と同じものを挙げることができる。このアルキル基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
置換基であるアルケニル基としては、前述したアルケニル基と同じものを挙げることができる。このアルケニル基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
置換基であるアルキニル基としては、前述したアルキニル基と同じものを挙げることができる。このアルキニル基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
【0032】
一般に、嵩高い構造を導入すると、アミノ基の反応性や液晶配向性を低下させる可能性があるため、A及びAとしては、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
式(1)において、Yはジアミン由来の2価の有機基であり、その構造は特に限定されない。ジアミンは下記の式で表され、Yの構造の具体例を示すならば、下記のY-1~Y-194が挙げられる。
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
【化10】
【0037】
【化11】
【0038】
【化12】
【0039】
【化13】
【0040】
【化14】
【0041】
【化15】
【0042】
【化16】
【0043】
【化17】
【0044】
【化18】
【0045】
【化19】
【0046】
【化20】
【0047】
【化21】
【0048】
【化22】
【0049】
【化23】
【0050】
【化24】
【0051】
【化25】
【0052】
【化26】
式中nは、1~6の整数である。
【0053】
【化27】
上記式中のBocは、tert-ブトキシカルボニル基を表す。
【0054】
【化28】
【0055】
【化29】
【0056】
【化30】
【0057】
【化31】
【0058】
【化32】
(式(Y-192)中、m、nは、それぞれ独立して、1~11の整数であり、m+nは2から12の整数であり、式(Y-193)及び(Y-194)中、jは0から3の整数である。)
【0059】
は、得られる液晶配向膜の液晶配向性やプレチルト角の観点から、下記式(5)及び(6)で表される構造から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【化33】
【0060】
式(5)中、R12は単結合、又は炭素数1~30の2価の有機基であり、R13は水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~30の1価の有機基、aは1~4の整数であり、aが2以上の場合は、R12、R13は互いに同一でも異なっていてもよい。式(6)中のR14は単結合、-O-、-S-、-NR15-、アミド結合、エステル結合、ウレア結合、又は炭素数1~40の2価の有機基であり、R15は、水素原子又はメチル基である。
【0061】
式(5)及び式(6)の具体例としては、以下の構造が挙げられる。
直線性の高い構造は、液晶配向膜としたときに液晶の配向性を高めることができるため、Yとしては、Y-7、Y-21、Y-22、Y-23、Y-25、Y-43、Y-44、Y-45、Y-46、Y-48、Y-54、Y-62、Y-63、Y-64、Y-65、Y-66、Y-67、又はY-160がさらに好ましい。液晶配向性を高めることができる上記構造の割合としては、Y全体の20モル%以上が好ましく、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。
【0062】
液晶配向膜としたときに液晶のプレチルト角を高くしたい場合には、Y1としては、側鎖に長鎖アルキル基、芳香族環、脂肪族環、ステロイド骨格、又はこれらを組み合わせた構造を有すると好ましい。そのようなY1はY-170~Y-191が好ましい。
また、式(5)において、側鎖部分が下記式[III-1]または[III-2]で置き換えられた構造も好ましい。
【0063】
【化34】
上記(III―1)において、Xは、単結合、-(CH-(aは1~15の整数である)、-O-、-CHO-、-COO-又は-OCO-を表す。Xは、単結合又は(CH-(bは1~15の整数である)を表す。Xは、単結合、-(CH-(cは1~15の整数である)、-O-、-CHO-、-COO-又は-OCO-を表す。Xはベンゼン環、シクロヘキサン環、及び複素環から選ばれる2価の環状基で表し、これらの環状基の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシル基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていてもよく、さらに、Xは、ステロイド骨格を有する炭素数17~51の有機基から選ばれる2価の有機基であってもよい。Xはベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる2価の環状基を表し、これらの環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシル基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていてもよい。nは0~4の整数を表す。Xは炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のフッ素含有アルキル基、炭素数1~18のアルコキシル基、又は炭素数1~18のフッ素含有アルコキシル基を表す。
【0064】
なかでも、Xは、原料の入手性や合成の容易さの点から、単結合、-(CH-(aは1~15の整数である)、-O-、-CHO-又は-COO-が好ましく、より好ましいのは、単結合、-(CH-(aは1~10の整数である)、-O-、-CHO-又は-COO-である。なかでも、Xは、単結合又は(CH-(bは1~10の整数である)が好ましい。Xは、なかでも、合成の容易さの点から、単結合、-(CH-(cは1~15の整数である)、-O-、-CHO-又は-COO-が好ましく、より好ましいのは、単結合、-(CH-(cは1~10の整数である)、-O-、-CHO-又は-COO-である。
【0065】
なかでも、Xは、合成の容易さの点から、ベンゼン環、シクロへキサン環又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の有機基が好ましい。Xは、なかでも、ベンゼン環又はシクロへキサン環が好ましい。nは、なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、0~3が好ましく、より好ましいのは、0~2である。
【0066】
は、なかでも、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~10のフッ素含有アルキル基、炭素数1~18のアルコキシル基又は炭素数1~10のフッ素含有アルコキシル基が好ましい。より好ましくは、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~12のアルコキシル基である。特に好ましくは、炭素数1~9のアルキル基又は炭素数1~9のアルコキシル基である。
【0067】
式[III-1]におけるX、X、X、X、X、X及びnの好ましい組み合わせとしては、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の13頁~34頁の表6~47に掲載される(2-1)~(2-629)と同じ組み合わせが挙げられる。なお、上記国際公開公報の各表では、本発明におけるX~Xが、Y1~Y6として示されているが、Y1~Y6は、X~Xと読み替えるものとする。
【0068】
また、上記国際公開公報の各表に掲載される(2-605)~(2-629)では、本発明におけるステロイド骨格を有する炭素数17~51の有機基が、ステロイド骨格を有する炭素数12~25の有機基と示されているが、ステロイド骨格を有する炭素数12~25の有機基は、ステロイド骨格を有する炭素数17~51の有機基と読み替えるものとする。なかでも、(2-25)~(2-96)、(2-145)~(2-168)、(2-217)~(2-240)、(2-268)~(2-315)、(2-364)~(2-387)、(2-436)~(2-483)又は(2-603)~(2-615)の組み合わせが好ましい。特に好ましい組み合わせは、(2-49)~(2-96)、(2-145)~(2-168)、(2-217)~(2-240)、(2-603)~(2-606)、(2-607)~(2-609)、(2-611)、(2-612)又は(2-624)である。
【0069】
【化35】
【0070】
上記(III―2)において、Xは、単結合、-O-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-又は-OCO-を表す。Xは、炭素数8~22のアルキル基又は炭素数6~18のフッ素含有アルキル基を表す。なかでも、Xは、単結合、-O-、-CHO-、-CONH-、-CON(CH)-又は-COO-が好ましく、より好ましくは、単結合、-O-、-CONH-又は-COO-である。Xは、なかでも、炭素数8~18のアルキル基が好ましい。
【0071】
液晶を垂直に配向させる側鎖としては、高くて安定な液晶の垂直配向性を得ることができる点から、式[III-1]で示される構造を用いることが好ましい。
なお、液晶を垂直に配向させる側鎖を有する重合体が液晶を垂直に配向させる能力は、液晶を垂直に配向させる側鎖の構造によって異なるが、一般的に、液晶を垂直に配向させる側鎖の量が多くなると液晶を垂直に配向させる能力は上がり、少なくなると下がる。また、環状構造を有すると、環状構造を有さないものと比較して、液晶を垂直に配向させる能力が高い傾向がある。
プレチルト角を高くしたい場合の上記構造の割合としては、Y全体の1~30モル%が好ましく、1~20モル%がより好ましい。
【0072】
<光反応性の側鎖>
また、式(5)において、側鎖部分が下記式[VIII]または[IX]で置き換えられた構造も好ましい。
本発明の液晶配向剤に含有される重合体は、光反応性の側鎖を有していてもよい。
該光反応性の側鎖は、特定重合体が有していても、特定重合体以外の重合体である「ポリイミド前駆体及び/又はそのイミド化物であるポリイミド」が有していてもよい。
<光反応性側鎖を含有するジアミン>
光反応性を有する側鎖を特定重合体及び/又は特定重合体以外の重合体に導入するには、光反応性の側鎖を有するジアミンをジアミン成分の一部に用いるのがよい。光反応性の側鎖を有するジアミンとしては、式[VIII]、又は式[IX]で表される側鎖を有するジアミンを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0073】
【化36】
【0074】
式[VIII]中のR、R及びR10の定義は、次のとおりである。
すなわち、Rは、単結合、-CH-、-O-、-COO-、-OCO-、-NHCO-、-CONH-、-NH-、-CHO-、-N(CH)-、-CON(CH)-、又は-N(CH)CO-を表す。特に、Rは、単結合、-O-、-COO-、-NHCO-、又は-CONH-であるのが好ましい。
は、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキレン基を表し、アルキレン基の-CH-は-CF-又は-CH=CH-で任意に置換されていてもよく、次のいずれかの基が互いに隣り合わない場合、これらの基に置換されていてもよい;-O-、-COO-、-OCO-、-NHCO-、-CONH-、-NH-、二価の炭素環若しくは複素環。
なお、上記二価の炭素環若しくは複素環は、具体的には以下のものを例示することができるが、これらに限定されない。
【0075】
【化37】
【0076】
は、通常の有機合成的手法で形成させることができるが、合成の容易性の観点から、単結合又は炭素数1~12のアルキレン基が好ましい。
10は、下記式から選択される光反応性基を表す。
【0077】
【化38】
【0078】
10は、光反応性の点から、メタクリル基、アクリル基又はビニル基であることが好ましい。
【0079】
また、式[IX]において、Y1、Y、Y、Y、Y、及びYの定義は、次のとおりである。
即ち、Yは-CH-、-O-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、-OCO-、-NH-、又は-CO-を表す。
は、炭素数1~30のアルキレン基、二価の炭素環若しくは複素環であり、このアルキレン基、二価の炭素環若しくは複素環の1つ又は複数の水素原子は、フッ素原子若しくは有機基で置換されていてもよい。Yは、次の基が互いに隣り合わない場合、-CH-がこれらの基に置換されていてもよい;-O-、-NHCO-、-CONH-、-COO-、-OCO-、-NH-、-NHCONH-、-CO-。
は、-CH-、-O-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-CO-、又は単結合を表す。
はシンナモイル基を表す。Yは単結合、炭素数1~30のアルキレン基、二価の炭素環若しくは複素環であり、このアルキレン基、二価の炭素環若しくは複素環の1つ又は複数の水素原子は、フッ素原子若しくは有機基で置換されていてもよい。
は、次の基が互いに隣り合わない場合、-CH-がこれらの基に置換されていてもよい;-O-、-NHCO-、-CONH-、-COO-、-OCO-、-NH-、-NHCONH-、-CO-。
はアクリル基又はメタクリル基である光重合性基を示す。
【0080】
光反応性の側鎖は、具体的には以下のものが挙げられるが、これに限定される訳ではない。下記式中、X、X10は、それぞれ独立に、単結合、-O-、-COO-、-NHCO-、又は-NH-である結合基、Yはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキレン基を表す。
【0081】
【化39】
【0082】
また、光反応性の側鎖としては、下記式で表わされる光二量化反応を起こす基及び光重合反応を起こす基も挙げられる。
【0083】
【化40】
【0084】
上記式中、Y~Yは、上記定義と同じである。
上記光反応性の側鎖を有するジアミンは、液晶配向膜とした際の液晶配向性、プレチルト角、電圧保持特性、蓄積電荷などの特性、液晶表示素子とした際の液晶の応答速度などに応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用できる。
【0085】
また、光反応性の側鎖を有するジアミンは、ポリアミック酸の合成に用いるジアミン成分の10~70モル%を用いることが好ましく、より好ましくは20~60モル%、特に好ましくは30~50モル%である。
また、光反応性の側鎖を有するジアミンとしては、紫外線照射により分解しラジカルが発生するラジカル発生構造を有する部位を側鎖に有するジアミンも挙げられる。
【0086】
【化41】
【0087】
上記式(1)中、Ar、R、R、T、T、S及びQは、以下の定義を有する。
即ち、Arはフェニレン、ナフチレン、及びビフェニレンから選ばれる芳香族炭化水素基を示し、それらには有機基が置換していても良く、水素原子はハロゲン原子に置換していても良い。
1、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~10のアルキル基もしくはアルコキシ基である。
、Tはそれぞれ独立して、単結合又は-O-、-COO-、-OCO-、-NHCO-、-CONH-、-NH-、-CHO-、-N(CH)-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-の結合基である。
Sは単結合もしくは非置換もしくはフッ素原子によって置換されている炭素原子数1~20のアルキレン基。ただしアルキレン基の-CH-または-CF-は-CH=CH-で任意に置き換えられていてもよく、次に挙げるいずれかの基が互いに隣り合わない場合において、これらの基に置き換えられていてもよい;-O-、-COO-、-OCO-、-NHCO-、-CONH-、-NH-、二価の炭素環、二価の複素環。
Qは下記から選ばれる構造(構造式中、Rは水、素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、Rは-CH-、-NR-、-O-、又は-S-を表す。)を表す。
【0088】
【化42】
上記式(I)において、カルボニルが結合しているArは紫外線の吸収波長に関与するため、長波長化する場合、ナフチレンやビフェニレンのような共役長の長い構造が好ましい。また、Arには置換基が置換していても良く、かかる置換基は、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基などのような電子供与性の有機基が好ましい。
【0089】
式(I)において、Arがナフチレンやビフェニレンのような構造になると溶解性が悪くなり、合成の難易度も高くなる。紫外線の波長が250nm~380nmの範囲であればフェニル基でも十分な特性が得られるため、フェニル基が最も好ましい。
また、R、Rは、それぞれ独立して炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基、ベンジル基、又はフェネチル基であり、アルキル基やアルコキシ基の場合、R、Rで環を形成していてもよい。
【0090】
式(I)中、Qは、電子供与性の有機基が好ましく、上記の基が好ましい。
Qがアミノ誘導体の場合、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸の重合の際に、発生するカルボン酸基とアミノ基が塩を形成するなどの不具合が生じる可能性があるため、より好ましくはヒドロキシル基又はアルコキシル基である。
式(1)におけるジアミノベンゼンは、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、又はp-フェニレンジアミンのいずれの構造でもよいが、酸二無水物との反応性の点では、m-フェニレンジアミン、又はp-フェニレンジアミンが好ましい。
【0091】
具体的には、合成の容易さ、汎用性の高さ、特性などの点から、下記式で表される構造が最も好ましい。なお、式中nは2~8の整数である。
【化43】
【0092】
本発明に用いられるポリイミド前駆体は、ジアミン成分とテトラカルボン酸二水物成分との反応から得られる、ポリアミック酸や、ポリアミック酸エステル等が挙げられる。
【0093】
<(B)成分>
本発明の液晶配向剤に含有される(B)成分は、脂肪族骨格を有し、かつエポキシ基を3つ以上有する化合物である。かかる化合物としては、脂肪族骨格を有し、かつエポキシ基を3つ以上有していれば、その他の構造は特に限定されないが、入手性等の観点から、下記式で表される化合物が好ましい。
【0094】
【化44】
【0095】
上記式において、mは、それぞれ独立して、1~10の整数であり、nは1~10、好ましくは1~5の整数であり、Rは炭素数1~7、好ましくは2~6のアルキル基であり、p、q、rは、それぞれ独立して、1~8、好ましくは1~6の整数である。
好ましい具体例として、以下に例示するような化合物が挙げられる。
【化45】
【0096】
【化46】
【0097】
【化47】
【0098】
<ポリイミド前駆体-ポリアミック酸の製造>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、以下の方法により製造される。具体的には、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを有機溶媒の存在下で-20℃~150℃、好ましくは0℃~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~12時間反応させることによって合成できる。
【0099】
ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分との反応は、通常、有機溶媒中で行う。その際に用いる有機溶媒としては、生成したポリイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されない。下記に、反応に用いる有機溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン又はγ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又は1,3-ジメチル-イミダゾリジノンが挙げられる。
【0100】
また、ポリイミド前駆体の溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン又は下記の式[D-1]~式[D-3]で示される有機溶媒を用いることができる。
【化48】
【0101】
式[D-1]中、Dは炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-2]中、Dは炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-3]中、Dは炭素数1~4のアルキル基を示す。
これら溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、前記溶媒に混合して使用してもよい。また、溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0102】
反応系中におけるポリアミック酸ポリマーの濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
上記のようにして得られたポリアミック酸は、反応溶液をよく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させて回収することができる。また、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで精製されたポリアミック酸の粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0103】
<ポリイミド前駆体-ポリアミック酸エステルの製造>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸エステルは、以下に示す(1)、(2)又は(3)の製法で製造することができる。
【0104】
(1)ポリアミック酸から製造する場合
ポリアミック酸エステルは、前記のように製造されたポリアミック酸をエステル化することによって製造できる。具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤を有機溶剤の存在下で-20℃~150℃、好ましくは0℃~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~4時間反応させることによって製造することができる。
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジ-t-ブチルアセタール、1-メチル-3-p-トリルトリアゼン、1-エチル-3-p-トリルトリアゼン、1-プロピル-3-p-トリルトリアゼン、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジンー2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドなどが挙げられる。エステル化剤の添加量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2~6モル当量が好ましい。
【0105】
有機溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン又はγ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又は1,3-ジメチル-イミダゾリジノンが挙げられる。また、ポリイミド前駆体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、又は前記式[D-1]~式[D-3]で示される溶媒を用いることができる。
【0106】
これら溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、前記溶媒に混合して使用してもよい。また、溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
上記の反応に用いる溶媒は、ポリマーの溶解性からN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。製造時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
【0107】
(2)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応により製造する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンから製造することができる。
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを塩基と有機溶剤の存在下で-20℃~150℃、好ましくは0℃~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~4時間反応させることによって製造することができる。
【0108】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジンなどが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2~4倍モルであることが好ましい。
【0109】
上記の反応に用いる溶媒は、モノマー及びポリマーの溶解性からN-メチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。製造時のポリマー濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの製造に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることが好ましく、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0110】
(3)テトラカルボン酸ジエステルとジアミンから製造する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを重縮合することにより製造することができる。
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを縮合剤、塩基、及び有機溶剤の存在下で0℃~150℃、好ましくは0℃~100℃において、30分~24時間、好ましくは3~15時間反応させることによって製造することができる。
【0111】
前記縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’-カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ-1,3,5-トリアジニルメチルモルホリニウム、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-3-ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニルなどが使用できる。縮合剤の添加量は、テトラカルボン酸ジエステルに対して2~3倍モルが好ましい。
【0112】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが使用できる。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという点から、ジアミン成分に対して2~4倍モルが好ましい。
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量はジアミン成分に対して0~1.0倍モルが好ましい。
上記3つのポリアミック酸エステルの製造方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、上記(1)又は上記(2)の製法が特に好ましい。
【0113】
上記のようにして得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0114】
<ポリイミド>
本発明に用いられるポリイミドは、前記したポリアミック酸エステル又はポリアミック酸をイミド化することにより製造することができる。ポリアミック酸エステルからポリイミドを製造する場合、前記ポリアミック酸エステル溶液、又はポリアミック酸エステル樹脂粉末を有機溶媒に溶解させて得られるポリアミック酸溶液に塩基性触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の課程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
【0115】
化学的イミド化は、イミド化させたいポリアミック酸エステルを、有機溶媒中において塩基性触媒存在下で撹拌することにより行うことができる。有機溶媒としては前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもトリエチルアミンは反応を進行させるのに充分な塩基性を持つので好ましい。
【0116】
イミド化反応を行うときの温度は、-20℃~140℃、好ましくは0℃~100℃であり、反応時間は1~100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸エステル基の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御することができる。イミド化反応後の溶液には、添加した触媒等が残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
【0117】
ポリアミック酸からポリイミドを製造する場合、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応で得られた前記ポリアミック酸の溶液に触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の過程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
化学的イミド化は、イミド化させたいポリアミック酸を、有機溶媒中において塩基性触媒と酸無水物の存在下で攪拌することにより行うことができる。有機溶媒としては前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
【0118】
イミド化反応を行うときの温度は、-20℃~140℃、好ましくは0℃~100℃であり、反応時間は1~100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸基の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍であり、酸無水物の量はアミック酸基の1~50モル倍、好ましくは3~30モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御することができる。
【0119】
ポリアミック酸エステル又はポリアミック酸のイミド化反応後の溶液には、添加した触媒等が残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
上記のようにして得られるポリイミドの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、重合体を析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。
前記貧溶媒は、特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。
【0120】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、前記(A)成分、及び(B)成分が有機溶媒中に溶解された溶液の形態を有する。(A)成分の重合体の分子量は、重量平均分子量で2,000~500,000が好ましく、より好ましくは5,000~300,000であり、さらに好ましくは、10,000~100,000である。また、数平均分子量は、好ましくは、1,000~250,000であり、より好ましくは、2,500~150,000であり、さらに好ましくは、5,000~50,000である。
【0121】
本発明の液晶配向剤における前記(A)成分の含有量は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から1重量%以上が好ましく、溶液の保存安定性の点からは10重量%以下が好ましい。なかでも、2~8重量%が好ましく、3~7重量%が特に好ましい。
また、本発明の液晶配向剤における前記(B)成分の含有量は、液晶配向性や保存安定性などとの両立の理由から、液晶配向剤に含まれる前記(A)成分の100重量部(PHR)に対して、1~30重量部が好ましく、3~15重量部が特に好ましい。
【0122】
本発明の液晶配向剤に含有される有機溶媒は、前記(A)成分及び(B)成分が均一に溶解するものであれば特に限定されない。なかでも、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどを挙げることができる。なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトンを用いることが好ましい。
本発明の液晶配向剤に含有される有機溶媒の含有量は、保存安定性や塗布性などの観点から、50~99重量%が好ましく、80~99重量%が特に好ましい。
【0123】
本発明の液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない限り、液晶配向剤を塗布した際の液晶配向膜の塗膜性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒ともいう)を用いることができる。下記に、貧溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
【0124】
例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、3-エトキシブチルアセタート、1-メチルペンチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、2-(メトキシメトキシ)エタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2-(ヘキシルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1-(ブトキシエトキシ)プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n-プロピルエステル、乳酸n-ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル又は前記式[D-1]~式[D-3]で示される溶媒などを挙げることができる。
【0125】
なかでも、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル又はジプロピレングリコールジメチルエーテルを用いることが好ましい。
これら貧溶媒は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の1~80質量%であることが好ましい。なかでも、10~80質量%が好ましい。より好ましいのは20~70質量%である。
【0126】
本発明の液晶配向剤には、上記の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、前記(A)成分以外の重合体、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体若しくは導電物質、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる目的のシランカップリング剤、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物、さらには、塗膜を焼成する際にポリイミド前駆体の加熱によるイミド化を効率よく進行させる目的のイミド化促進剤等を添加しても良い。
【0127】
また、本発明の液晶配向剤には、液晶配向膜の機械的強度を上げるために以下のような添加物を添加してもよい。
【0128】
【化49】
【0129】
上記の添加剤は、液晶配向剤に含有される重合体成分の100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると効果が期待できず、30質量部を超えると液晶の配向性を低下させるため、より好ましくは0.5~20質量部である。
【0130】
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向膜は、上記液晶配向剤を基板に塗布し、乾燥、焼成して得られる膜である。本発明の液晶配向剤を塗布する基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板、アクリル基板、ポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることができ、液晶駆動のためのITO電極等が形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミニウム等の光を反射する材料も使用できる。
【0131】
本発明の液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などが挙げられる。本発明の液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができる。通常は、含有される有機溶媒を十分に除去するために50~120℃で1分~10分間乾燥させ、その後150~300℃で5分~120分間焼成される。焼成後の塗膜の厚みは、特に限定されないが、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5~300nm、好ましくは10~200nmである。
得られた液晶配向膜を配向処理する方法としては、ラビング法、光配向処理法などが挙げられる。
【0132】
ラビング処理は既存のラビング装置を利用して行うことができる。この際のラビング布の材質としては、コットン、ナイロン、レーヨンなどが挙げられる。ラビング処理の条件としては一般に、回転速度300~2000rpm、送り速度5~100mm/s、押し込み量0.1~1.0mmという条件が用いられる。その後、純水やアルコールなどを用いて超音波洗浄によりラビングにより生じた残渣が除去される。
【0133】
光配向処理法の具体例としては、前記塗膜表面に、一定方向に偏向した放射線を照射し、場合によってはさらに150~250℃の温度で加熱処理を行い、液晶配向能を付与する方法が挙げられる。放射線としては、100~800nmの波長を有する紫外線及び可視光線を用いることができる。このうち、100~400nmの波長を有する紫外線が好ましく、200~400nmの波長を有するものが特に好ましい。また、液晶配向性を改善するために、塗膜基板を50~250℃で加熱しつつ、放射線を照射してもよい。前記放射線の照射量は、1~10,000mJ/cmが好ましく、100~5,000mJ/cmが特に好ましい。上記のようにして作製した液晶配向膜は、液晶分子を一定の方向に安定して配向させることができる。
【0134】
偏光された紫外線の消光比が高いほど、より高い異方性が付与できるため、好ましい。具体的には、直線に偏光された紫外線の消光比は、10:1以上が好ましく、20:1以上がより好ましい。
上記で、偏光された放射線を照射した膜は、次いで水及び有機溶媒から選ばれる少なくとも1種を含む溶媒で接触処理してもよい。
【0135】
接触処理に使用する溶媒としては、光照射によって生成した分解物を溶解する溶媒であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、及び酢酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これらの溶媒は2種以上を併用してもよい。
【0136】
汎用性や安全性の点から、水、2-プロパンール、1-メトキシ-2-プロパノール及び乳酸エチルからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。水、2-プロパンール、及び水と2-プロパノールの混合溶媒が特に好ましい。
本発明において、偏光された放射線を照射した膜と有機溶媒を含む溶液との接触処理は、浸漬処理、噴霧(スプレー)処理などの、膜と液とが好ましくは十分に接触するような処理で行なわれる。なかでも、有機溶媒を含む溶液中に膜を、好ましくは10秒~1時間、より好ましくは1~30分浸漬処理する方法が好ましい。接触処理は常温でも加温してもよいが、好ましくは10~80℃、より好ましくは20~50℃で実施される。また、必要に応じて超音波などの接触を高める手段を施すことができる。
【0137】
上記接触処理の後に、使用した溶液中の有機溶媒を除去する目的で、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトンなどの低沸点溶媒によるすすぎ(リンス)や乾燥のいずれか、又は両方を行ってよい。
さらに、上記で溶媒による接触処理をした膜は、溶媒の乾燥及び膜中の分子鎖の再配向を目的に150℃以上で加熱してもよい。
【0138】
加熱の温度としては、150~300℃が好ましい。温度が高いほど、分子鎖の再配向が促進されるが、温度が高すぎると分子鎖の分解を伴う恐れがある。そのため、加熱温度としては、180~250℃がより好ましく、200~230℃が特に好ましい。
加熱する時間は、短すぎると分子鎖の再配向の効果が得られない可能性があり、長すぎると分子鎖が分解してしまう可能性があるため、10秒~30分が好ましく、1分~10分がより好ましい。
【0139】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、前記液晶配向膜の製造方法によって得られた液晶配向膜を具備する。本発明の液晶表示素子は、本発明の液晶配向剤から前記液晶配向膜の製造方法によって液晶配向膜付きの基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製し、それを使用して液晶表示素子としたものである。
液晶セル作製方法の一例として、パッシブマトリクス構造の液晶表示素子を例にとり説明する。尚、画像表示を構成する各画素部分にTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング素子が設けられたアクティブマトリクス構造の液晶表示素子であってもよい。
【0140】
まず、透明なガラス製の基板を準備し、一方の基板の上にコモン電極を、他方の基板の上にセグメント電極を設ける。これらの電極は、例えばITO電極とすることができ、所望の画像表示ができるようパターニングされる。次いで、各基板の上に、コモン電極とセグメント電極を被覆するようにして絶縁膜を設ける。絶縁膜は、例えば、ゾル-ゲル法によって形成されたSiO-TiOからなる膜とすることができる。
次に、各基板の上に、本発明の液晶配向膜を形成する。次に、一方の基板に他方の基板を互いの配向膜面が対向するようにして重ね合わせ、周辺をシール材で接着する。シール材には、基板間隙を制御するために、通常、スペーサーを混入しておく。また、シール材を設けない面内部分にも、基板間隙制御用のスペーサーを散布しておくことが好ましい。シール材の一部には、外部から液晶を充填可能な開口部を設けておく。
【0141】
次に、シール材に設けた開口部を通じて、2枚の基板とシール材で包囲された空間内に液晶材料を注入する。その後、この開口部を接着剤で封止する。注入には、真空注入法を用いてもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法を用いてもよい。次に、偏光板の設置を行う。具体的には、2枚の基板の液晶層とは反対側の面に一対の偏光板を貼り付ける。以上の工程を経ることにより、本発明の液晶表示素子が得られる。
本発明において、シール剤としては、例えば、エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、ヒドロキシル基、アリル基、アセチル基などの反応性基を有する紫外線照射や加熱によって硬化する樹脂が用いられる。特に、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基の両方の反応性基を有する硬化樹脂系を用いるのが好ましい。
【0142】
本発明のシール剤には接着性、耐湿性の向上を目的として無機充填剤を配合してもよい。使用しうる無機充填剤としては特に限定されないが、具体的には球状シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、酸化チタン、チタンブラック、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは球状シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、酸化チタン、チタンブラック、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムである。前記の無機充填剤は2種以上を混合して用いても良い。
【0143】
PSA方式の液晶表示組成を製造する場合は、下記のような手順で液晶表示素子を製造することができる。
液晶配向剤を2枚の基板上に塗布して焼成することにより液晶配向膜を形成し、この液晶配向膜が対向するように2枚の基板を配置し、この2枚の基板の間に液晶で構成された液晶層を挟持し、すなわち、液晶配向膜に接触させて液晶層を設け、液晶配向膜及び液晶層に電圧を印加しながら紫外線を照射し、液晶層中の重合性化合物を光重合させることで、所望のチルト角を発現したPSA方式の液晶表示素子とすることができる。
【0144】
このようなPSA方式の液晶表示素子を製造する場合、本明細書中に記載の光反応性の側鎖構造を有する液晶配向剤を用いると、より効率的に液晶の配向が固定化され、応答速度が顕著に優れた液晶表示素子となる。
【0145】
PSA方式の液晶表示素子で使用する基板としては、片側基板に例えば1から10μmのライン/スリット電極パターンを形成し、対向基板にはスリットパターンや特記パターンを形成していない構造でも動作可能であり、この構造の液晶表示素子によって、製造時のプロセスを簡略でき、高い透過率を得ることができる。
【0146】
垂直配向方式の液晶層を構成する液晶材料は特に限定されず例えばメルク社製のMLC-6608やMLC-6609などの主にネガ型の液晶を使用することができる。またPSA方式に於いては、例えば下記式で表されるような重合性化合物含有の液晶(例えばメルク社製のMLC-3023など)を使用することができる。
【0147】
【化50】
【0148】
液晶配向膜及び液晶層に電圧を印加しながら紫外線を照射することにより液晶セルを作製する工程は、例えば基板上に設置されている電極間に電圧をかけることで液晶配向膜及び液晶層に電界を印加し、この電界を保持したまま紫外線を照射する方法が挙げられる。ここで、電極間にかける電圧としては、例えば5~30Vp-p、好ましくは5~20Vp-pである。紫外線の照射量は、例えば、1~60J、好ましくは40J以下であり、紫外線照射量が少ないほうが、液晶表示素子を構成する部材の破壊により生じる信頼性低下を抑制でき、かつ紫外線照射時間を減らせることで製造効率が上がるので好適である。
【実施例
【0149】
以下に実施例を挙げて、さらに、本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定して解釈されるものではない。以下における、化合物の略号、及び各特性の測定方法は以下のとおりである。
NMP:N-メチル-2-ピロリドン、BCS:ブチルセロソルブ
DC-1:1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
DC-2:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
DC-3:ビシクロ[3,3,0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物、
DC-4:ピロメリット酸無水物、
DA-1:p-フェニレンジアミン、
DA-2:1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン
DA-3:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン
【0150】
DA-4:1-tert-ブトキシカルボニル-1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレア、DA-5:4-(2-メチルアミノエチル)アニリン
DA-6:1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレア
DA-7:4,4’-ジアミノジフェニルアミン
DA-8:3,5-ジアミノ安息香酸
DA-9:3,5-ジアミノ-N-(ピリジン-3-イルメチル)ベンズアミド
DA-10:下記式DA-10の化合物
DA-11:下記式DA-11n化合物
なお、以下の化学式において、Bocはt-ブトキシカルボニル基を表す。
【0151】
【化51】
【0152】
【化52】
【0153】
【化53】
【0154】
【化54】
【0155】
以下における各特性の測定方法、及びそのための測定サンプルなどの作製方法は、次に記載するとおりである。
<粘度>
ポリアミック酸溶液などの粘度は、E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL(ミリリットル)、コーンロータTE-1(1°34’、R24)、温度25℃において測定した。
【0156】
<密着性評価>
[サンプル作製]
縦30mm×横40mmのITO基板に、スピンコート塗布にて後記する実施例及び比較例の各液晶配向剤を塗布した。次いで、80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。この塗膜面に偏光板を介して254nmの紫外線を150mJ/cm照射した後、230℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、液晶配向膜付き基板を得た。
【0157】
得られた2枚の基板を用意し、一方の基板の液晶配向膜面上に4μmビーズスペーサーを塗布した後、シール剤(協立化学製XN-1500T)を滴下した。次いで、他方の基板の液晶配向膜面を内側にし、基板の重なり幅が1cmになるように、貼り合わせを行った。その際、貼り合わせ後のシール剤の直径が3mmとなるようにシール剤の滴下量を調整した。貼り合わせた2枚の基板をクリップにて固定した後、150℃1時間熱硬化させて、密着性評価用の実施例及び比較例の各サンプルを作製した。
【0158】
[密着性の測定]
上記実施例及び比較例の各サンプル基板を島津製作所社製の卓上形精密万能試験機AGS-X 500Nにて、上下基板の端の部分を固定した後、基板中央部の上部から押し込みを行い、剥離する際の力(N)を測定した。実施例及び比較例の結果を表3及び表4にまとめて示す。
【0159】
<合成例1>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコに、DA-1を0.908g(8.40mmol)、DA-2を1.37g(5.60mmol)、DA-3を2.17g(8.40mmol)、及びDA-4を2.23g(5.60mmol)量り取り、NMPを76.8g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらDC-1を5.99g(26.7mmol)添加し、さらにNMPを16.1g加え、室温で24時間撹拌してポリアミック酸の溶液(PAA-1、粘度:397mPa・s)を得た。
【0160】
<合成例2>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの1000mL四つ口フラスコに、DA-1を9.77g(90mmol)、DA-2を21.99g(90mmol)、DA-3を15.50g(60mmol)、及びDA-4を23.91g(60mmol)量り取り、NMPを891.10g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらDC-1を64.56g(288mmol)添加し、さらにNMPを99.0g加え、室温で24時間撹拌してポリアミック酸の溶液(PAA-2、粘度:435mPa・s)を得た。
【0161】
<合成例3>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの500mL四つ口フラスコに、DA-5を9.01g(60.0mmol)、及びDA-6を26.8g(89.8mmol)量り取り、NMPを290g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を水冷下で撹拌しながらDC-2を27.9g(142mmol)添加し、NMPを71.4g加えて23℃で2時間撹拌してポリアミック酸の溶液(PAA-3)を得た。このポリアミック酸の溶液の温度25℃における粘度は750mPa・sであった。
【0162】
<合成例4>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの15L四つ口フラスコに、DA-6を238.7g(800mmol)、及びDA―7を637.6g(3200mmol)量り取り、NMPを8175.5g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を水冷下で撹拌しながらDC-2を176.5g(900mmol)、DC-3を750.6g(3000mmol)添加し、NMPを2043.9g加えて23℃で2時間撹拌してポリアミック酸の溶液(PAA-4、粘度:1499mPa・s)を得た。
【0163】
上記合成例1~4におけるポリイミド系重合体の原料組成を表1に示す。
【表1】
【0164】
[液晶配向剤の調製]
上記合成例1~4で得られたポリイミド系重合体を使用し、それぞれ、次のようにして実施例1~6及び比較例1~7の液晶配向剤を調製した。
これらの実施例1~6及び比較例1~7の液晶配向剤の概要、密着性評価の結果を、後記する表2、表3、及び表4にまとめて示す。
【0165】
(実施例1)
撹拌子の入った20mlサンプル管に、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA-1)を3.66g、及び合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-3)を2.79g量り取り、NMPを3.00g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.85g、AD-1を10質量%含むNMP溶液を0.24g、及びBCSを4.57g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-1)を得た。
【0166】
(実施例2)
撹拌子の入った20mlサンプル管に、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA-1)を3.66g、及び合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-3)を2.77g量り取り、NMPを2.83g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.81g、AD-1を10質量%含むNMP溶液を0.42g、及びBCSを4.55g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-2)を得た。
【0167】
(実施例3)
撹拌子の入った50mlサンプル管に、合成例2で得られたポリアミック酸溶液(PAA-2)を4.54g、及び合成例4で得られたポリアミック酸溶液(PAA-4)を5.40g量り取り、NMPを5.80g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を1.35g、AD-1を10質量%含むNMP溶液を0.41g、及びBCSを7.50g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-3)を得た。
【0168】
(実施例4)
撹拌子の入った50mlサンプル管に、合成例2で得られたポリアミック酸溶液(PAA-2)を4.54g、及び合成例4で得られたポリアミック酸溶液(PAA-4)を5.40g量り取り、NMPを5.54g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を1.35g、AD-1を10質量%含むNMP溶液を0.68g、及びBCSを7.50g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-4)を得た。
【0169】
(実施例5)
撹拌子の入った20mlサンプル管に、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA-1)を3.68g、及び合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-3)を2.78g量り取り、NMPを2.95g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.87g、AD-3を10質量%含むNMP溶液を0.24g、及びBCSを4.52g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-5)を得た。
【0170】
(実施例6)
撹拌子の入った20mlサンプル管に、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA-1)を3.68g、及び合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-3)を2.80g量り取り、NMPを2.84g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.81g、AD-3を10質量%含むNMP溶液を0.41g、及びBCSを4.48g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-6)を得た。
【0171】
(比較例1)
撹拌子の入った20mlサンプル管に、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA-1)を3.69g、及び合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-3)を2.78g量り取り、NMPを3.22g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.81g、及びBCSを4.50g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B-1)を得た。
【0172】
(比較例2)
撹拌子の入った20mlサンプル管に、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA-1)を3.67g、及び合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-3)を2.79g量り取り、NMPを2.99g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.83g、AD-2を10質量%含むNMP溶液を0.23g、及びBCSを4.49g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B-2)を得た。
【0173】
(比較例3)
撹拌子の入った20mlサンプル管に、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA-1)を3.66g、及び合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-3)を2.79g量り取り、NMPを2.86g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.80g、AD-2を10質量%含むNMP溶液を0.40g、及びBCSを4.53g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B-3)を得た。
【0174】
(比較例4)
撹拌子の入った20mlサンプル管に、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA-1)を3.68g、及び合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-3)を2.78g量り取り、NMPを2.98g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.84g、AD-4を10質量%含むNMP溶液を0.26g、及びBCSを4.49g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B-4)を得た。
【0175】
(比較例5)
撹拌子の入った20mlサンプル管に、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA-1)を3.69g、及び合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-3)を2.79g量り取り、NMPを2.82g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.81g、AD-4を10質量%含むNMP溶液を0.42g、及びBCSを4.48g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B-5)を得た。
【0176】
(比較例6)
撹拌子の入った50mlサンプル管に、合成例2で得られたポリアミック酸溶液(PAA-2)を4.54g、及び合成例4で得られたポリアミック酸溶液(PAA-4)を5.40g量り取り、NMPを5.80g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を1.35g、AD-4を10質量%含むNMP溶液を0.405g、及びBCSを7.50g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B-6)を得た。
【0177】
(比較例7)
撹拌子の入った50mlサンプル管に、合成例2で得られたポリアミック酸溶液(PAA-2)を4.54g、及び合成例4で得られたポリアミック酸溶液(PAA-4)を5.40g量り取り、NMPを5.54g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を1.35g、AD-4を10質量%含むNMP溶液を0.675g、及びBCSを7.50g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B-7)を得た。
【0178】
【表2】
【0179】
【表3】
【0180】
【表4】
【0181】
<合成例5>
DC-3(5.00g、20mmol)、DA-8(3.04g、20mmol)、DA-10(6.95g、16mmol)、DA-11(1.32g、4mmol)をNMP(65.3g)中で溶解し、60℃で3時間反応させたのち、DC-2(3.77g、19.2mmol)とNMP(15.1g)を加え、40℃で4時間反応させポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液(20g)にNMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.03g)、およびピリジン(1.25g)を加え、80℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(234g)に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末Aを得た。このポリイミドのイミド化率は74%であり、数平均分子量は16000、重量平均分子量は48000であった。
得られたポリイミド粉末A(2.0g)にNMP(18.0g)を加え、70℃にて12時間攪拌して溶解させた。この溶液にBCS(13.3g)を加え、室温で2時間攪拌することによりSPI-1を得た。
【0182】
<合成例6>
DC-3(5.00g、20mmol)、DA-9(7.75g、32mmol)、DA-10(4.48g、8mmol)をNMP(64.9g)中で溶解し、60℃で3時間反応させたのち、DC-2(2.31g、11.8mmol)とNMP(9.3g)を加え、23℃で1時間反応させ、その後DC-4(1.74g、8mmol)とNMP(7.0g)を加え、23℃で6時間反応させ、ポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液(20g)にNMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.02g)、およびピリジン(1.25g)を加え、80℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(234g)に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末Bを得た。このポリイミドのイミド化率は74%であり、数平均分子量は16000、重量平均分子量は48000であった。
得られたポリイミド粉末B(2.0g)にNMP(18.0g)を加え、70℃にて12時間攪拌して溶解させた。この溶液にBCS(13.3g)を加え、室温で2時間攪拌することによりSPI-2を得た。
本発明のポリイミド系重合体の概要を表5に示す。
【0183】
【表5】
【0184】
(実施例7)
撹拌子の入った20mlサンプル管に、合成例5で得られたポリイミド溶液(SPI-1)を5.00g、合成例6で得られたポリイミド溶液(SPI-2)を5.00g、AD-3を0.06g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-7)を得た。
【0185】
(比較例8)
撹拌子の入った20mlサンプル管に、合成例5で得られたポリイミド溶液(SPI-1)を5.00g、合成例6で得られたポリイミド溶液(SPI-2)を5.00g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B-8)を得た。
【0186】
(比較例9)
撹拌子の入った20mlサンプル管に、合成例5で得られたポリイミド溶液(SPI-1)を5.00g、合成例6で得られたポリイミド溶液(SPI-2)を5.00g、AD-4を0.06g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B-9)を得た。
【0187】
上記の実施例7及び比較例8、9の液晶配向剤の概要を下記の表7に、また、これらの実施例7及び比較例8、9の各液晶配向剤をについての密着性評価の結果を、下記の表7にまとめて示す。
なお、これらの密着性評価の手順は、密着性評価のサンプル作製中、各液晶配向剤を塗布し後のホットプレート上の乾燥は、70℃の代わりに80℃にしたほかは、上記したとおりである。
【0188】
【表6】
【0189】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明の液晶配向剤を用いることにより、優れた液晶配向性、さらには高いシール密着性を有する液晶配向膜を得ることができるため、高い表示品位が求められる各種の液晶表示素子、特にモバイル機器用に好適に使用が可能である。
【0191】
なお、2016年6月14日に出願された日本特許出願2016-118282号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。