(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】液圧装置および液圧装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
F15B 11/00 20060101AFI20220830BHJP
H02P 6/18 20160101ALI20220830BHJP
【FI】
F15B11/00 H
H02P6/18
(21)【出願番号】P 2019031629
(22)【出願日】2019-02-25
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】飯泉 仁美
(72)【発明者】
【氏名】金谷 顕一
(72)【発明者】
【氏名】西田 宏幸
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123833(JP,A)
【文献】米国特許第06029448(US,A)
【文献】特開昭60-252579(JP,A)
【文献】特開平05-126102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00
H02P 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を貯留する流体貯留部と、
作動流体による動力を出力する動力出力部と、
前記流体貯留部に貯留された作動流体を前記動力出力部に供給する流体供給部と、
前記流体供給部を駆動するブラシレスモータと、
前記流体供給部から前記流体貯留部に作動流体を供給する第1の状態と、前記流体供給部と前記流体貯留部とを遮断する第2の状態とに切り替え可能なバイパス流路部と、
前記ブラシレスモータの起動後に前記バイパス流路部を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替える制御と、前記ブラシレスモータの停止時に前記バイパス流路部を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替える制御との少なくとも一方を行う制御部と、
前記動力出力部から前記バイパス流路部への作動流体の逆流を防止する逆流防止弁とを備え
、
前記制御部は、
前記動力出力部の起動指令を受け付ける起動受付部と、
前記起動受付部により起動指令が受け付けられたことに応答して、所定の方向に回転させるための第1の回転信号を前記ブラシレスモータに与える第1の回転制御部と、
前記ブラシレスモータの回転速度が所定の低回転速度に到達したとき、前記バイパス流路部を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替える遮断制御部とを含み、
前記遮断制御部が前記バイパス流路部を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えた後、前記第1の回転制御部は、前記ブラシレスモータの回転速度を前記所定の低回転速度から増加させる、液圧装置。
【請求項2】
前記ブラシレスモータは、位置センサを有さないセンサレス型ブラシレスモータである、請求項
1記載の液圧装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記動力出力部の停止指令を受け付ける停止受付部と、
前記停止受付部により停止指令が受け付けられたことに応答して、前記バイパス流路部を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替える開通制御部とを含む、請求項1
または2記載の液圧装置。
【請求項4】
作動流体を貯留する流体貯留部と、
作動流体による動力を出力する動力出力部と、
前記流体貯留部に貯留された作動流体を前記動力出力部に供給する流体供給部と、
前記流体供給部を駆動するブラシレスモータと、
前記流体供給部から前記流体貯留部に作動流体を供給する第1の状態と、前記流体供給部と前記流体貯留部とを遮断する第2の状態とに切り替え可能なバイパス流路部と、
前記ブラシレスモータの起動後に前記バイパス流路部を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替える制御と、前記ブラシレスモータの停止時に前記バイパス流路部を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替える制御との少なくとも一方を行う制御部と、
前記動力出力部から前記バイパス流路部への作動流体の逆流を防止する逆流防止弁とを備え、
前記制御部は、
前記動力出力部の停止指令を受け付ける停止受付部と、
前記停止受付部により停止指令が受け付けられたことに応答して、前記バイパス流路部を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替える開通制御部と、
前記停止受付部により停止指令が受け付けられたことに応答して、前記ブラシレスモータの回転が停止するように当該回転方向とは逆の回転方向に対応する第2の回転信号を前記ブラシレスモータに与える第2の回転制御部
とを含む
、液圧装置。
【請求項5】
作動流体による動力を出力する動力出力部へ流体貯留部に貯留された作動流体を流体供給部により供給するステップと、
ブラシレスモータにより前記流体供給部を駆動するステップと、
前記流体供給部から前記流体貯留部に作動流体を供給する第1の状態と、前記流体供給部と前記流体貯留部とを遮断する第2の状態とにバイパス流路部を切り替えるステップと、
前記動力出力部から前記バイパス流路部への作動流体の逆流を逆流防止弁により防止するステップとを含み、
前記バイパス流路部を切り替えるステップは、前記ブラシレスモータの起動後に前記第1の状態から前記第2の状態に前記バイパス流路部を切り替えることと、前記ブラシレスモータの停止時に前記第2の状態から前記第1の状態に前記バイパス流路部を切り替えることとの少なくとも一方を含
み、
前記ブラシレスモータの起動後に前記第1の状態から前記第2の状態に前記バイパス流路部を切り替えることは、
前記動力出力部の起動指令が受け付けられたことに応答して、所定の方向に回転させるための第1の回転信号を前記ブラシレスモータに与えるステップと、
前記ブラシレスモータの回転速度が所定の低回転速度に到達したとき、前記バイパス流路部を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えることと、
前記バイパス流路部が前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えられた後、前記ブラシレスモータの回転速度を前記所定の低回転速度から増加させることとを含む、液圧装置の制御方法。
【請求項6】
作動流体による動力を出力する動力出力部へ流体貯留部に貯留された作動流体を流体供給部により供給するステップと、
ブラシレスモータにより前記流体供給部を駆動するステップと、
前記流体供給部から前記流体貯留部に作動流体を供給する第1の状態と、前記流体供給部と前記流体貯留部とを遮断する第2の状態とにバイパス流路部を切り替えるステップと、
前記動力出力部から前記バイパス流路部への作動流体の逆流を逆流防止弁により防止するステップとを含み、
前記バイパス流路部を切り替えるステップは、前記ブラシレスモータの起動後に前記第1の状態から前記第2の状態に前記バイパス流路部を切り替えることと、前記ブラシレスモータの停止時に前記第2の状態から前記第1の状態に前記バイパス流路部を切り替えることとの少なくとも一方を含み、
前記ブラシレスモータの停止時に前記第2の状態から前記第1の状態に前記バイパス流路部を切り替えることは、前記動力出力部の停止指令が受け付けられたことに応答して、前記ブラシレスモータの回転が停止するように当該回転方向とは逆の回転方向に対応する第2の回転信号を前記ブラシレスモータに与えることを含む、液圧装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧装置および液圧装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の作業機械には、液圧により支持アームを駆動するための液圧装置が設けられる。例えば特許文献1には、液圧シリンダ、ポンプおよび電動機を含む液圧装置が記載されている。この液圧装置においては、作業機械の使用者がリモートコントローラを操作することに応答して、電動機がポンプを駆動する。これにより、ポンプは、荷受台の支持アームを作動させる液圧シリンダに作動液を供給する。
【0003】
液圧装置においては、電動機として一般にDC(直流)ブラシモータが用いられる。しかしながら、ブラシモータの耐用期間はブラシの寿命により制限されるので、ブラシモータを用いた液圧装置の耐久性は高くない。そのため、近年、液圧装置の耐久性を向上させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動機として、ブラシモータに代えてブラシレスモータを用いることにより、液圧装置の耐久性を向上させることが可能であると考えられる。しかしながら、ブラシレスモータを用いて液圧装置を構成すると、トルク不足による起動の失敗または配管における圧籠り(pressurization)等の問題が発生する可能性がある。そのため、液圧装置を高い信頼性で動作させることができないことがある。ここで、圧籠りとは、ブラシレスモータの停止時に配管内の圧力が増加する状態をいう。
【0006】
本発明の目的は、耐久性を向上しつつ高い信頼性で動作させることが可能な液圧装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に従う態様は、作動流体を貯留する流体貯留部と、作動流体による動力を出力する動力出力部と、前記流体貯留部に貯留された作動流体を前記動力出力部に供給する流体供給部と、前記流体供給部を駆動するブラシレスモータと、前記流体供給部から前記流体貯留部に作動流体を供給する第1の状態と、前記流体供給部と前記流体貯留部とを遮断する第2の状態とに切り替え可能なバイパス流路部と、前記ブラシレスモータの起動後に前記バイパス流路部を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替える制御と、前記ブラシレスモータの停止時に前記バイパス流路部を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替える制御との少なくとも一方を行う制御部と、前記動力出力部から前記バイパス流路部への作動流体の逆流を防止する逆流防止弁とを備え、前記制御部は、前記動力出力部の起動指令を受け付ける起動受付部と、前記起動受付部により起動指令が受け付けられたことに応答して、所定の方向に回転させるための第1の回転信号を前記ブラシレスモータに与える第1の回転制御部と、前記ブラシレスモータの回転速度が所定の低回転速度に到達したとき、前記バイパス流路部を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替える遮断制御部とを含み、前記遮断制御部が前記バイパス流路部を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えた後、前記第1の回転制御部は、前記ブラシレスモータの回転速度を前記所定の低回転速度から増加させる、液圧装置に関する。
本発明の他の局面に従う態様は、作動流体を貯留する流体貯留部と、作動流体による動力を出力する動力出力部と、前記流体貯留部に貯留された作動流体を前記動力出力部に供給する流体供給部と、前記流体供給部を駆動するブラシレスモータと、前記流体供給部から前記流体貯留部に作動流体を供給する第1の状態と、前記流体供給部と前記流体貯留部とを遮断する第2の状態とに切り替え可能なバイパス流路部と、前記ブラシレスモータの起動後に前記バイパス流路部を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替える制御と、前記ブラシレスモータの停止時に前記バイパス流路部を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替える制御との少なくとも一方を行う制御部と、前記動力出力部から前記バイパス流路部への作動流体の逆流を防止する逆流防止弁とを備え、前記制御部は、前記動力出力部の停止指令を受け付ける停止受付部と、前記停止受付部により停止指令が受け付けられたことに応答して、前記バイパス流路部を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替える開通制御部と、前記停止受付部により停止指令が受け付けられたことに応答して、前記ブラシレスモータの回転が停止するように当該回転方向とは逆の回転方向に対応する第2の回転信号を前記ブラシレスモータに与える第2の回転制御部とを含む、液圧装置に関する。
【0008】
本発明のさらに他の局面に従う態様は、作動流体による動力を出力する動力出力部へ流体貯留部に貯留された作動流体を前記流体供給部により供給するステップと、ブラシレスモータにより流体供給部を駆動するステップと、前記流体供給部から前記流体貯留部に作動流体を供給する第1の状態と、前記流体供給部と前記流体貯留部とを遮断する第2の状態とに前記バイパス流路部を切り替えるステップと、前記動力出力部からバイパス流路部への作動流体の逆流を逆流防止弁により防止するステップとを含み、前記バイパス流路部を切り替えるステップは、前記ブラシレスモータの起動後に前記第1の状態から前記第2の状態に前記バイパス流路部を切り替えることと、前記ブラシレスモータの停止時に前記第2の状態から前記第1の状態に前記バイパス流路部を切り替えることとの少なくとも一方を含み、前記ブラシレスモータの起動後に前記第1の状態から前記第2の状態に前記バイパス流路部を切り替えることは、前記動力出力部の起動指令が受け付けられたことに応答して、所定の方向に回転させるための第1の回転信号を前記ブラシレスモータに与えるステップと、前記ブラシレスモータの回転速度が所定の低回転速度に到達したとき、前記バイパス流路部を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えることと、前記バイパス流路部が前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えられた後、前記ブラシレスモータの回転速度を前記所定の低回転速度から増加させることとを含む、液圧装置の制御方法に関する。
本発明のさらに他の局面に従う態様は、作動流体による動力を出力する動力出力部へ流体貯留部に貯留された作動流体を流体供給部により供給するステップと、ブラシレスモータにより前記流体供給部を駆動するステップと、前記流体供給部から前記流体貯留部に作動流体を供給する第1の状態と、前記流体供給部と前記流体貯留部とを遮断する第2の状態とにバイパス流路部を切り替えるステップと、前記動力出力部から前記バイパス流路部への作動流体の逆流を逆流防止弁により防止するステップとを含み、前記バイパス流路部を切り替えるステップは、前記ブラシレスモータの起動後に前記第1の状態から前記第2の状態に前記バイパス流路部を切り替えることと、前記ブラシレスモータの停止時に前記第2の状態から前記第1の状態に前記バイパス流路部を切り替えることとの少なくとも一方を含み、前記ブラシレスモータの停止時に前記第2の状態から前記第1の状態に前記バイパス流路部を切り替えることは、前記動力出力部の停止指令が受け付けられたことに応答して、前記ブラシレスモータの回転が停止するように当該回転方向とは逆の回転方向に対応する第2の回転信号を前記ブラシレスモータに与えることを含む、液圧装置の制御方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液圧装置の耐久性を向上しつつ液圧装置を高い信頼性で動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る液圧装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1の制御部の構成を示すブロック図である。
【
図3】制御部の動作の一例を説明するためのタイムチャートである。
【
図4】液圧装置制御プログラムにより行われる液圧装置制御処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)液圧装置の構成
本発明の一実施の形態に係る液圧装置および液圧装置の制御方法について、図面を参照しつつ説明する。本実施の形態においては、液圧装置は、トラック等の作業機械に設けられるが、実施の形態はこれに限定されず、他の機械に設けられてもよい。
図1は、本発明の一実施の形態に係る液圧装置の構成を示す図である。
図1に示すように、液圧装置100は、流体貯留部10、流体供給部20、ブラシレスモータ30、バイパス流路部40、逆流防止弁50、動力出力部60および制御部70を備える。
【0012】
流体貯留部10は、例えばタンクであり、油等の作動流体(以下、単に流体と略記する。)を貯留する。流体供給部20は、例えばポンプであり、流体貯留部10に貯留された流体を動力出力部60に向けて圧送する。ブラシレスモータ30は、流体供給部20を駆動する。本実施の形態においては、ブラシレスモータ30は、センサレス型ブラシレスモータであり、ホール(Hall)センサ等の位置センサを有さない。実施の形態はこれに限定されず、ブラシレスモータ30は、センサ付ブラシレスモータであってもよい。
【0013】
バイパス流路部40は、バイパス管41およびバイパス弁42を含む。バイパス管41は、流体供給部20により圧送される流体を流体貯留部10に戻すように、流体貯留部10と流体供給部20との間に接続される。バイパス弁42は、バイパス管41に介挿され、バイパス管41を開通させる開通状態とバイパス管41を遮断する遮断状態とに切り替え可能である。逆流防止弁50は、流体供給部20およびバイパス流路部40と動力出力部60との間に介挿され、動力出力部60からの流体がバイパス流路部40に逆流することを防止する。
【0014】
動力出力部60は、流体による動力を例えば荷受台の支持アームに出力する。具体的には、動力出力部60は、流体圧アクチュエータ61,62および方向制御弁63,64を含む。本例では、流体圧アクチュエータ61は、流体圧により動作する複動式のチルトシリンダであり、荷受台の支持アームを傾斜させるために用いられる。方向制御弁63は、流体圧アクチュエータ61と流体貯留部10および逆流防止弁50との間に設けられ、流体圧アクチュエータ61の動作を制御する。
【0015】
本例では、流体圧アクチュエータ62は、流体圧により動作する単動式のリフトシリンダであり、荷受台の支持アームを昇降させるために用いられる。方向制御弁64は、流体圧アクチュエータ62と流体貯留部10および逆流防止弁50との間に設けられ、流体圧アクチュエータ62の動作を制御する。使用者は、リモートコントローラ等の操作部101を操作することにより、流体圧アクチュエータ61,62の動作を指令することができる。
【0016】
制御部70は、例えばECU(電子制御ユニット)であり、CPU(中央演算処理装置)71およびメモリ72を含む。CPU71は、操作部101からの指令に基づいてブラシレスモータ30、バイパス弁42および方向制御弁63,64の動作を制御する。メモリ72には、CPU71の動作を制御するための液圧装置制御プログラムが記憶される。以下、制御部70の詳細な構成について説明する。
【0017】
(2)制御部
図2は、
図1の制御部70の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御部70は、機能部として、起動受付部1、停止受付部2、順回転制御部3、逆回転制御部4、遮断制御部5、開通制御部6および出力制御部7を含む。
図1のCPU71がメモリ72に記憶された液圧装置制御プログラムを実行することにより、制御部70の機能部が実現される。制御部70の機能部の一部または全部が電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0018】
起動受付部1は、操作部101から
図1の流体圧アクチュエータ61,62のいずれかを起動させる指令(以下、起動指令と呼ぶ。)を受け付ける。停止受付部2は、操作部101から上記の流体圧アクチュエータ61,62の起動を停止させる指令(以下、停止指令と呼ぶ。)を受け付ける。
【0019】
順回転制御部3は、起動受付部1が起動指令を受け付けることに応答して、順方向に回転させるための順回転信号をブラシレスモータ30に与える。逆回転制御部4は、停止受付部2が停止指令を受け付けることに応答して、逆方向に対応する逆回転信号をブラシレスモータ30に与える。順回転制御部3および逆回転制御部4は、それぞれ第1および第2の回転制御部の例である。
【0020】
遮断制御部5は、起動受付部1が起動指令を受け付けることに応答して、遮断状態となるようにバイパス弁42を制御する。開通制御部6は、停止受付部2が停止指令を受け付けることに応答して、開通状態となるようにバイパス弁42を制御する。出力制御部7は、操作部101から与えられる指令に基づいて流体圧アクチュエータ61,62の動作を特定し、特定された動作が実行されるように方向制御弁63,64を制御する。
【0021】
図3は、制御部70の動作の一例を説明するためのタイムチャートである。
図3に示すように、初期時点t0では、流体圧アクチュエータ61,62の起動は停止し、ブラシレスモータ30の回転は停止し、バイパス弁42は開通状態にある。
【0022】
時点t1で、使用者が操作部101を操作して所望の流体圧アクチュエータ61,62の起動を指示することにより、起動指令が起動受付部1に与えられる。この場合、順回転制御部3は、所定の低回転速度(例えば、500rpm以下の一定の速度)で回転するようにブラシレスモータ30に順回転信号を与える。ブラシレスモータ30の速度が低回転速度に到達した後、時点t2まで低回転速度が維持される。
【0023】
時点t2で、遮断制御部5は、遮断状態となるようにバイパス弁42を制御する。時点t1から時点t2までの時間は、例えば0.1秒以上0.3秒以下である。また、時点t2で、順回転制御部3は、ブラシレスモータ30に順回転信号をさらに与える。ブラシレスモータ30の回転速度が最大速度に到達した後、上記の流体圧アクチュエータ61,62の起動の停止が指示されるまで最大速度が維持される。
【0024】
時点t3で、使用者が操作部101を操作して所望の流体圧アクチュエータ61,62の起動の停止を指示することにより、停止指令が停止受付部2に与えられる。この場合、開通制御部6は、開通状態となるようにバイパス弁42を制御する。また、時点t3で、逆回転制御部4は、逆回転信号をブラシレスモータ30に与える。これにより、ブラシレスモータ30の順方向の回転速度が低下し、時点t4で回転速度が0になる。時点t4で、逆回転制御部4は、ブラシレスモータ30の制御を停止する。
【0025】
(3)液圧装置制御処理
図4は、液圧装置制御プログラムにより行われる液圧装置制御処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。以下、
図2の制御部70および
図4のフローチャートを用いて液圧装置制御処理を説明する。なお、初期状態においては、流体圧アクチュエータ61,62の起動は停止し、ブラシレスモータ30の回転は停止し、バイパス弁42は開通状態にある。
【0026】
まず、起動受付部1は、操作部101から起動指令が受け付けられたか否かを判定する(ステップS1)。起動指令が受け付けられない場合、起動受付部1は起動指令が受け付けられるまで待機する。起動指令が受け付けられた場合、出力制御部7は、受け付けられた起動指令に対応する動作を実行可能に方向制御弁63,64を制御する(ステップS2)。また、順回転制御部3は、ブラシレスモータ30に順回転信号を与える(ステップS3)。
【0027】
次に、遮断制御部5は、ブラシレスモータ30の回転速度が所定の低回転速度に到達したか否かを判定する(ステップS4)。ブラシレスモータ30の回転速度が低回転速度に到達していない場合、遮断制御部5は、ステップS3に戻る。ブラシレスモータ30の回転速度が低回転速度に到達するまで、ステップS3,S4が繰り返される。なお、ブラシレスモータ30の回転速度が低回転速度に到達した場合には、順回転制御部3はステップS3でブラシレスモータ30の回転速度を低回転速度に維持する。
【0028】
本例では、遮断制御部5は、ステップS1で起動指令が受け付けられてから所定の時間(例えば0.1秒以上0.3秒以下)が経過することによりブラシレスモータ30の回転速度が低回転速度に到達すると判定する。そのため、ステップS4においては、遮断制御部5は、ステップS1で起動指令が受け付けられてから所定の時間が経過したか否かを判定し、当該時間が経過していない場合、当該時間が経過するまで待機することとなる。
【0029】
ステップS4でブラシレスモータ30の回転速度が所定の低回転速度に到達した場合(所定の時間が経過した場合)、遮断制御部5は、バイパス弁42を遮断状態に切り替える(ステップS5)。また、順回転制御部3は、ブラシレスモータ30の順回転信号を増加させる(ステップS6)。これにより、ブラシレスモータ30の回転速度が上昇する。
【0030】
その後、停止受付部2は、操作部101から停止指令が受け付けられたか否かを判定する(ステップS7)。停止指令が受け付けられない場合、停止受付部2は、ステップS6に戻る。停止指令が受け付けられるまで、ステップS6,S7が繰り返される。なお、ブラシレスモータ30の回転速度が最大速度に到達した場合には、順回転制御部3はステップS6でブラシレスモータ30の回転速度を最大速度に維持する。
【0031】
ステップS7で停止指令が受け付けられた場合、開通制御部6は、バイパス弁42を開通状態に切り替える(ステップS8)。また、逆回転制御部4は、ブラシレスモータ30に逆回転信号を与える(ステップS9)。これにより、ブラシレスモータ30の回転速度が低下する。次に、逆回転制御部4は、ブラシレスモータ30の回転速度が0になったか否か、すなわちブラシレスモータ30の回転が停止したか否かを判定する(ステップS10)。
【0032】
ブラシレスモータ30の回転が停止していない場合、逆回転制御部4は、ステップS9に戻る。ブラシレスモータ30の回転が停止するまでステップS9,S10が繰り返される。ブラシレスモータ30の回転が停止した場合、逆回転制御部4は、液圧装置制御処理を終了する。
【0033】
(4)効果
本実施の形態に係る液圧装置100においては、流体供給部20により流体貯留部10に貯留された作動流体が動力出力部60に供給される。ブラシレスモータ30により流体供給部20が駆動される。この構成によれば、電動機としてブラシレスモータ30が用いられるので、電動機の耐用期間がブラシの寿命により制限されることがない。したがって、液圧装置100の耐久性が向上する。
【0034】
また、流体供給部20から流体貯留部10に作動流体を供給する開通状態と、流体供給部20と流体貯留部10とを遮断する遮断状態とに切り替え可能なバイパス流路部40が設けられる。動力出力部60の起動指令が起動受付部1により受け付けられた場合には、順回転制御部3からブラシレスモータ30に順回転信号が与えられることにより、ブラシレスモータ30が順方向に回転する。
【0035】
初期状態では、バイパス流路部40が開通状態にあるので、ブラシレスモータ30の回転速度が所定の低回転速度まで上昇するまで、流体供給部20からの流体はバイパス流路部40を通して流体貯留部10に戻される。動力出力部60からバイパス流路部40への作動流体の逆流は、逆流防止弁50により防止される。ここで、ブラシレスモータ30の回転速度が低いため、バイパス流路部40を通過する流体の流量が小さいので、流体騒音が発生することを防止することができる。
【0036】
ブラシレスモータ30の回転速度が低回転速度まで上昇した後に、遮断制御部5によりバイパス流路部40が開通状態から遮断状態に切り替えられる。この場合、動力出力部60の起動時に、ブラシレスモータ30が十分な回転速度で回転した後に作動流体が動力出力部60に供給されるので、トルク不足によるブラシレスモータ30の起動の失敗を回避することができる。したがって、ブラシレスモータ30として、高い起動トルクに対応したインバータの容量が大きいモータを使用する必要がなく、インバータの容量が小さいモータを使用することができる。
【0037】
また、トルク不足によるブラシレスモータ30の起動の失敗が回避されるので、ブラシレスモータ30として位置センサを有さないセンサレス型ブラシレスモータ30を用いることができる。この場合、ブラシレスモータ30と流体供給部20とをより少ない配線で接続することができる。
【0038】
動力出力部60の停止指令が停止受付部2により受け付けられた場合には、開通制御部6によりバイパス流路部40が遮断状態から開通状態に切り替えられる。そのため、流体供給部20と動力出力部60とを接続する配管102に圧籠りが発生することが防止される。これにより、配管102の負担が軽減される。
【0039】
また、動力出力部60の停止指令が停止受付部2により受け付けられた場合には、ブラシレスモータ30の回転が停止するように逆回転制御部4により逆回転信号がブラシレスモータ30に与えられる。この場合、動力出力部60の停止後、ブラシレスモータ30の回転がより短時間で停止する。これにより、配管102に圧籠りが発生することをより確実に防止することができる。これらの構成の結果、液圧装置100の耐久性を向上しつつ液圧装置100を高い信頼性で動作させることができる。
【0040】
(5)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、ブラシレスモータ30の起動後にバイパス流路部40を開通状態から遮断状態に切り替える第1の制御と、ブラシレスモータ30の停止時にバイパス流路部40を遮断状態から開通状態に切り替える第2の制御との両方が行われるが、実施の形態はこれに限定されない。第1の制御と第2の制御とのいずれか一方のみが行われ、他方が行われなくてもよい。
【0041】
(b)上記実施の形態において、動力出力部60の停止時にブラシレスモータ30に逆回転信号が与えられるが、実施の形態はこれに限定されない。動力出力部60の停止時に、ブラシレスモータ30に逆回転信号が与えられず、ブラシレスモータ30が自然に停止されてもよい。
【0042】
(c)上記実施の形態において、動力出力部60は複数の流体圧アクチュエータ61,62を含むが、実施の形態はこれに限定されない。動力出力部60は、1つの流体圧アクチュエータを含んでもよい。
【0043】
(6)態様
(第1項)一態様に係る液圧装置は、
作動流体を貯留する流体貯留部と、
作動流体による動力を出力する動力出力部と、
前記流体貯留部に貯留された作動流体を前記動力出力部に供給する流体供給部と、
前記流体供給部を駆動するブラシレスモータと、
前記流体供給部から前記流体貯留部に作動流体を供給する第1の状態と、前記流体供給部と前記流体貯留部とを遮断する第2の状態とに切り替え可能なバイパス流路部と、
前記ブラシレスモータの起動後に前記バイパス流路部を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替える制御と、前記ブラシレスモータの停止時に前記バイパス流路部を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替える制御との少なくとも一方を行う制御部と、
前記動力出力部から前記バイパス流路部への作動流体の逆流を防止する逆流防止弁とを備えてもよい。
【0044】
この液圧装置においては、作動流体による動力を出力する動力出力部へ流体貯留部に貯留された作動流体が流体供給部により供給される。ブラシレスモータにより流体供給部が駆動される。流体供給部から流体貯留部に作動流体を供給する第1の状態と、流体供給部と流体貯留部とを遮断する第2の状態とに切り替え可能なバイパス流路部が設けられる。ブラシレスモータの起動後にバイパス流路部を第1の状態から第2の状態に切り替えることと、ブラシレスモータの停止時にバイパス流路部を第2の状態から第1の状態に切り替えることとの少なくとも一方が行われる。動力出力部からバイパス流路部への作動流体の逆流が逆流防止弁により防止される。
【0045】
この構成によれば、電動機としてブラシレスモータが用いられる。そのため、電動機の耐用期間がブラシの寿命により制限されることがない。したがって、液圧装置の耐久性が向上する。
【0046】
また、ブラシレスモータの起動後にバイパス流路部が第1の状態から第2の状態に切り替えられる場合には、ブラシレスモータの起動直後に電動機に高いトルクが加わらない。これにより、ブラシレスモータはスムーズに回転を開始することができる。また、ブラシレスモータが回転を開始した後に、流体貯留部に貯留された作動流体が流体供給部により動力出力部に供給される。そのため、トルク不足によるブラシレスモータの起動の失敗を回避することができる。
【0047】
一方、ブラシレスモータの停止時にバイパス流路部が第2の状態から第1の状態に切り替えられる場合には、流体供給部により供給される作動流体はバイパス流路部を通して流体貯留部に戻される。この場合、流体供給部と動力出力部とを接続する配管に圧籠りが発生しないので、当該配管の負担が軽減される。
【0048】
したがって、上記のバイパス流路部の制御のうち、少なくとも一方が行われることにより、液圧装置の信頼性が向上する。これらの結果、液圧装置の耐久性を向上しつつ液圧装置を高い信頼性で動作させることができる。
【0049】
(第2項)第1項に記載の液圧装置において、
前記制御部は、
前記動力出力部の起動指令を受け付ける起動受付部と、
前記起動受付部により起動指令が受け付けられたことに応答して、所定の方向に回転させるための第1の回転信号を前記ブラシレスモータに与える第1の回転制御部と、
前記ブラシレスモータの回転速度が所定の値まで上昇した後に、前記バイパス流路部を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替える遮断制御部とを含んでもよい。
【0050】
この場合、動力出力部の起動時に、ブラシレスモータが十分な回転速度で回転した後に作動流体が動力出力部に供給される。そのため、トルク不足によるブラシレスモータの起動の失敗をより確実に回避することができる。
【0051】
(第3項)第2項に記載の液圧装置において、
前記ブラシレスモータは、位置センサを有さないセンサレス型ブラシレスモータであってもよい。
【0052】
この場合、トルク不足によるブラシレスモータの起動の失敗が回避されるので、ブラシレスモータとして位置センサを有さないセンサレス型ブラシレスモータを用いることができる。これにより、ブラシレスモータと流体供給部とをより少ない配線で接続することができる。その結果、液圧装置の耐久性および信頼性をより向上させることができる。
【0053】
(第4項)第1~3のいずれか一項に記載の液圧装置において、
前記制御部は、
前記動力出力部の停止指令を受け付ける停止受付部と、
前記停止受付部により停止指令が受け付けられたことに応答して、前記バイパス流路部を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替える開通制御部とを含んでもよい。
【0054】
この場合、動力出力部の停止時に、バイパス流路部が第2の状態から第1の状態に切り替えられる。これにより、流体供給部と動力出力部とを接続する配管に圧籠りが発生することをより確実に防止することができる。
【0055】
(第5項)第4項に記載の液圧装置において、
前記制御部は、前記停止受付部により停止指令が受け付けられたことに応答して、前記ブラシレスモータの回転が停止するように当該回転方向とは逆の回転方向に対応する第2の回転信号を前記ブラシレスモータに与える第2の回転制御部をさらに含んでもよい。
【0056】
この場合、動力出力部の停止後、ブラシレスモータの回転がより短時間で停止する。これにより、流体供給部と動力出力部とを接続する配管に圧籠りが発生することをさらに確実に防止することができる。
【0057】
(第6項)他の態様に係る液圧装置の制御方法は、
作動流体による動力を出力する動力出力部へ流体貯留部に貯留された作動流体を流体供給部により供給するステップと、
ブラシレスモータにより前記流体供給部を駆動するステップと、
前記流体供給部から前記流体貯留部に作動流体を供給する第1の状態と、前記流体供給部と前記流体貯留部とを遮断する第2の状態とにバイパス流路部を切り替えるステップと、
前記動力出力部から前記バイパス流路部への作動流体の逆流を逆流防止弁により防止するステップとを含み、
前記バイパス流路部を切り替えるステップは、前記ブラシレスモータの起動後に前記第1の状態から前記第2の状態に前記バイパス流路部を切り替えることと、前記ブラシレスモータの停止時に前記第2の状態から前記第1の状態に前記バイパス流路部を切り替えることとの少なくとも一方を含んでもよい。
【0058】
この液圧装置の制御方法によれば、電動機としてブラシレスモータが用いられる。そのため、電動機の耐用期間がブラシの寿命により制限されることがない。したがって、液圧装置の耐久性が向上する。また、ブラシレスモータの起動後にバイパス流路部を第1の状態から第2の状態に切り替える制御と、ブラシレスモータの停止時にバイパス流路部を第2の状態から第1の状態に切り替えられる制御とのうち、少なくとも一方が行われる。これにより、液圧装置の信頼性が向上する。これらの結果、液圧装置の耐久性を向上しつつ液圧装置を高い信頼性で動作させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1…起動受付部,2…停止受付部,3…順回転制御部,4…逆回転制御部,5…遮断制御部,6…開通制御部,7…出力制御部,10…流体貯留部,20…流体供給部,30…ブラシレスモータ,40…バイパス流路部,41…バイパス管,42…バイパス弁,50…逆流防止弁,60…動力出力部,61,62…流体圧アクチュエータ,63,64…方向制御弁,70…制御部,71…CPU,72…メモリ,100…液圧装置,101…操作部,102…配管