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特許7131430ボルト脱落防止構造、及びセンサ取付構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ボルト脱落防止構造、及びセンサ取付構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 41/00 20060101AFI20220830BHJP
   F16B 39/20 20060101ALI20220830BHJP
   F16B 35/06 20060101ALI20220830BHJP
   G01D 11/30 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
F16B41/00 B
F16B39/20 Z
F16B35/06 Z
G01D11/30 S
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019031777
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020133857
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一弘
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-339936(JP,A)
【文献】実公昭35-017526(JP,Y1)
【文献】実公昭40-008566(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 41/00
F16B 39/20
F16B 35/06
G01D 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材を取付相手部材に締結するボルトのボルト脱落防止構造であって、
前記ボルトは、軸部と頭部を有し、前記頭部の側面にはワイヤリング用の孔が開口され、
前記被取付部材は、前記ボルトの軸部が挿通されるボルト挿通孔を有し、前記ボルト挿通孔のボルト挿入側には、前記ボルトの頭部を収容するざぐり穴が形成され、
前記ざぐり穴の内周面には、ワイヤが挿通される一対のワイヤ通し孔の内側端が開口し、
前記ワイヤは、前記一対のワイヤ通し孔と、前記ボルトの前記ワイヤリング用の孔を通って前記一対のワイヤ通し孔の外側端からワイヤ端部が延出され、
延出された前記ワイヤは、前記被取付部材の外表面に沿って張設され、前記ワイヤ端部同士が接合されている、
ボルト脱落防止構造。
【請求項2】
前記ワイヤ通し孔から延出された前記ワイヤは、前記被取付部材の外表面に接して配置されている請求項1記載のボルト脱落防止構造。
【請求項3】
前記ワイヤ端部同士は、前記被取付部材の前記ざぐり穴の位置で前記ボルトの頭部に対面して接合されている請求項1に記載のボルト脱落防止構造。
【請求項4】
前記被取付部材は、複数の前記ボルト挿通孔が形成され、
前記ワイヤは、同じ前記ボルト挿通孔に開口する前記ワイヤ通し孔から延出されたワイヤ端部同士が接合されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のボルト脱落防止構造。
【請求項5】
前記被取付部材は、複数の前記ボルト挿通孔が形成され、
前記ワイヤは、互いに異なる前記ボルト挿通孔に開口する前記ワイヤ通し孔から延出されたワイヤ端部同士が接合されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のボルト脱落防止構造。
【請求項6】
前記ワイヤは、前記ワイヤ端部同士の接合部が、前記被取付部材の外表面のいずれか1つに沿って配置された1本のワイヤである請求項5に記載のボルト脱落防止構造。
【請求項7】
前記ボルトの頭部には、互いに異なる径方向に前記ワイヤリング用の孔が複数形成されている請求項1~6のいずれか1項に記載のボルト脱落防止構造。
【請求項8】
前記被取付部材の外表面には、前記ワイヤ通し孔から延出された前記ワイヤを収容する収容溝が設けられている請求項1~7のいずれか1項に記載のボルト脱落防止構造。
【請求項9】
前記被取付部材はセンサであり、
請求項1~8のいずれか1項に記載のボルト脱落防止構造を有するセンサ取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト脱落防止構造、及びセンサ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両や自動車等の車両にセンサ等の部品をボルトで固定する際、ボルトの緩みや脱落を防止するためにワイヤリングを施すことがある。ワイヤリングとは、ボルトの頭部に設けたワイヤリング用の孔に挿通したワイヤを、固定部や他のボルトに張り渡してワイヤ両端部を縒り合わせ、ワイヤにテンションを付与してボルトを固定する手法である。
【0003】
しかしながら、このようなワイヤリング構造では、ワイヤで括る複数のボルトの頭部が着座する座面を平坦面にする必要があり、これが設計上の制約になっている。また、ボルトの頭部、及びボルト間に張り渡されたワイヤが、部品の外側に露出するため、飛び石等の飛来物に対してボルト自体やワイヤが無防備になるという問題があった。
【0004】
このような問題を解消するため、露出したボルトの頭部を保護しつつ、ボルトの脱落を防止するボルト脱落防止構造が提案された(例えば特許文献1)。特許文献1のボルト脱落防止構造は、カバー部材を有する被取付部材を、固定側にボルトで締結する構造であって、カバー部材にはボルトの頭部が挿通可能な開口が設けられる。このカバー部材の開口からボルトが挿入され、ボルトの軸部を、カバー部材の内部に配置した抜け止めリングと、被取付部材のボルト挿通孔を通して、固定側の螺子孔に螺合される。これにより、被取付部材は、ボルトの頭部がカバー部材で覆われた状態で固定側に締結される。そして、ボルトの非締結時には、抜け止めリングがカバー部材の開口縁部に当たることで、ボルトが被取付部材から抜け止めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-12733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のボルト脱落防止構造は、ボルトと同数のカバー部材を必要とし、しかも各カバー部材はボルトの頭部よりも径方向寸法、軸方向寸法とも大きい。そのため、設計上及びスペース上の制約が大きくなり、依然として改善の余地があった。
【0007】
本発明は、飛来物による損傷を受けにくく、しかも設計上及びスペース上の制約を受けることなくボルトの脱落を防止できるボルト脱落防止構造、及びセンサ取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は下記の構成からなる。
(1) 被取付部材を取付相手部材に締結するボルトのボルト脱落防止構造であって、
前記ボルトは、軸部と頭部を有し、前記頭部の側面にはワイヤリング用の孔が開口され、
前記被取付部材は、前記ボルトの軸部が挿通されるボルト挿通孔を有し、前記ボルト挿通孔のボルト挿入側には、前記ボルトの頭部を収容するざぐり穴が形成され、
前記ざぐり穴の内周面には、ワイヤが挿通される一対のワイヤ通し孔の内側端が開口し、
前記ワイヤは、前記一対のワイヤ通し孔と、前記ボルトの前記ワイヤリング用の孔を通って前記一対のワイヤ通し孔の外側端からワイヤ端部が延出され、
延出された前記ワイヤは、前記被取付部材の外表面に沿って張設され、前記ワイヤ端部同士が接合されている、
ボルト脱落防止構造。
(2) 前記被取付部材はセンサであり、
(1)に記載のボルト脱落防止構造を有するセンサ取付構造。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、飛来物による損傷を受けにくく、しかも設計上及びスペース上の制約を受けることなくボルトの脱落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ボルト脱落防止構造の第1構成例を示す要部拡大斜視図である。
図2】(A)は図1のII―II線断面図、(B)は(A)に示すA部の拡大図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4A】ボルトをワイヤリングにより固定する手順を段階的に示す工程説明図である。
図4B】ボルトをワイヤリングにより固定する手順を段階的に示す工程説明図である。
図4C】ボルトをワイヤリングにより固定する手順を段階的に示す工程説明図である。
図4D】ボルトをワイヤリングにより固定する手順を段階的に示す工程説明図である。
図5】ボルトの頭部の径方向に、それぞれ同軸に配置された複数対のワイヤリング用の孔が形成された場合の頭部の断面図である。
図6】第2構成例のボルト脱落防止構造における図1のII―II線断面に対応する断面図である。
図7】ボルト脱落防止構造の第3構成例を示す要部拡大斜視図である。
図8】第4構成例のボルト脱落防止構造のセンサと、センサの外側に沿わせたワイヤとの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
ここでは、ボルト脱落防止構造として、被取付部材であるセンサを、取付相手部材である車両にボルト締結するセンサ取付構造を例に説明する。センサとしては、温度センサ、加速度センサ等を挙げることができるが、被取付部材はセンサ以外の他の部材であってもよい。車両としては、鉄道車両、自動車、二輪車等を挙げることができるが、その他にも、船体や建築物等であってもよく、取付相手部材は特に限定されない。
【0012】
<第1構成例>
図1はボルト脱落防止構造の第1構成例を示す要部拡大斜視図である。図2(A)は図1のII―II線断面図、図2(B)は図2(A)に示すA部の拡大図である。図3図1のIII-III線断面図である。
【0013】
ここで例示するセンサ1は、図1図3に示すように、直方体形状の部材である。センサ1は、ボルト5の軸部5aが上下方向に貫通する一対のボルト挿通孔11A,11Bを有する。ボルト挿通孔11A,11Bは、センサ1のセンサ頂面1aにおける長手方向に沿った2箇所に設けられる。ボルト挿通孔11A,11Bのボルト挿入側には、ボルト5の頭部5bを収容するざぐり穴13が形成されている。
【0014】
図2(A),(B)に示すように、ざぐり穴13の内側面13aには、ワイヤ7が挿通される一対のワイヤ通し孔17A,17Bの内側端17aが開口する。ワイヤ通し孔17A,17Bの外側端17bは、センサ1の外側面の互いに対向する第1側面15a及び第2側面15bに開口する(図1参照)。ワイヤ通し孔17A,17Bは、孔の長手方向断面が円形であってもよく、偏平な楕円であってもよい。
【0015】
センサ1は、センサ底面1bを車両3の取付面に当接させて、図3に示すように、2本のボルト5によって車両3に締結される。
【0016】
ボルト5は、図2(B)に示すように、それぞれ頭部5bに凹部が形成された六角ボルトである。頭部5bの相対向する側壁5cには、ワイヤリング用の一対の孔5dが開口する。一対の孔5dは、ボルト5の頭部5bの径方向に一直線上に形成される。
【0017】
ワイヤ7は、図2(A)に示すワイヤ通し孔17A,17Bのそれぞれで、センサ1の第1側面15aに開口するワイヤ通し孔17A、第2側面15bに開口するワイヤ通し孔17B、及びボルト5の頭部5bの一対の孔5dに挿通される。そして、図1に示すように、ワイヤ7は、一方のワイヤ通し孔17Aの外側端17bから外側に延出される一端と、他方のワイヤ通し孔17Bの外側端17bから外側に延出される他端とが接合されて、2本のワイヤ7がセンサ1の外側面に沿ってそれぞれ張設される。
【0018】
ワイヤ7の接合部は、第1側面15aと第2側面15bとに接続される第3側面15c及び第4側面15dに設けられ、ワイヤ7の端部同士が縒り合わされた縒り合わせ部21を形成している。なお、本明細書において、外側面とは、第1側面15a、第2側面15b、第3側面15c、第4側面15dを意味し、これら外側面とセンサ頂面1aとを合わせて外表面と呼称する。
【0019】
次に、ワイヤを用いて本構成のボルト脱落防止構造にする工程を説明する。
図4A図4Dは、ボルト5をワイヤリングにより固定する手順を段階的に示す工程説明図である。ここではワイヤ通し孔17A側のボルト5を例に説明するが、ワイヤ通し孔17B側のボルト5についても同様である。
【0020】
まず、図4Aに示すように、ボルト5を、軸部5aの先端からセンサ1のボルト挿通孔11Aに挿入し、図4Bに示すように、ボルト5の軸部5aを不図示の車両側のねじ孔に螺合させる。
【0021】
すると、ボルト5の頭部5bは、ざぐり穴13の底面13bに着座した状態でざぐり穴13に収容される。このとき、ボルト5の頭部5bは、ざぐり穴13から突出することなく、ざぐり穴13内に埋め込まれる。なお、ボルト5の頭部5bに設けられたワイヤリング用の孔5dが、ざぐり穴13の内側面13aに開口するワイヤ通し孔17A,17Bの内側端17aから大きく離れる場合には、ボルト5の軸部5aにワッシャを入れる等して、ボルト5の回転位相を調整することが好ましい。
【0022】
そして、図4Cに示すように、ワイヤ7を、第1側面15a側のワイヤ通し孔17A、ボルト5の頭部5bの一対の孔5d、及び第2側面15b側のワイヤ通し孔17Bにぞれぞれ挿通する。
【0023】
そして、図4Dに示すように、ワイヤ7の両端部を第3側面15c(ボルト挿通孔11B側では第4側面15d)で縒り合わせて接合し、縒り合わせ部21を形成する。この構成にすることで、ワイヤ7の加工硬化によってボルト5が回り止めされる。また、縒りによるスプリングバック効果と相まって、ワイヤ7に適度なテンションが付与される。このテンションの付与により、ワイヤ7のセンサ1の外側に露出している部分がセンサ1の外面に接触した状態(貼り付いた状態)になる。以上の工程を経ることにより、ボルト挿通孔11A,11Bにおいて、それぞれボルト5がワイヤリングされた図1に示すボルト脱落防止構造が得られる。
【0024】
上記したボルト脱落防止構造によれば、ボルト5の頭部5bがセンサ1のざぐり穴13に収容され、センサ1の上面からの突出がないため、飛来物等によるボルト5の損傷を防止できる。また、センサ1に別途にカバー等を設ける必要がなく、ボルト5の設置に設計上及びスペース上の制約を受けることがない。
【0025】
また、本構成のボルト脱落防止構造によれば、ワイヤ7のセンサ1の外側に露出している部分は、その全長に亘ってセンサ1の外面に接触している。そのため、仮に飛来物等がワイヤ7に衝突したとしても、その衝撃がワイヤ7からセンサ1に伝達されて吸収されることでワイヤ7に大きな損傷が生じることはない。
【0026】
一般的に、ワイヤリングにより複数のボルトの脱落を防止するには、複数のボルトに適切にワイヤを張り渡す作業に熟練を要する。しかし、本構成のボルト脱落防止構造によれば、単純にワイヤ7を引張り、センサ1の外側で縒り合わせるだけで済む。このため、作業に熟練を要することなく、ボルトへの脱落防止措置を簡単に施すことができる。
【0027】
また、本構成のボルト脱落防止構造によれば、ボルト毎に個別に脱落防止措置を施すため、複数のボルトを使用する場合においても、それぞれのボルトの頭部着座面を共通した平坦面にする必要がなく、設計の自由度が向上する。また、各ボルト挿通孔のボルトを個別に調整することができる。
【0028】
そして、本構成においては、ボルト5の頭部5bに、ワイヤリング用の孔5dを一対設けているが、図5に示すように、ボルト5の頭部5bの互いに異なる径方向に、それぞれ同軸に配置された複数対のワイヤリング用の孔5dを設けてもよい。この場合、ワイヤリング用の孔5dと、センサ1側のワイヤ通し孔17A,17Bとの軸合わせが容易になり、作業性が向上する。また、ワイヤ7を挿通する孔5dを複数の中から適宜選択することで、ボルト5への回り止め効果を効率よく付与できる。
【0029】
本構成では、頭部5bに凹部を有するボルト5を使用しているが、中実構造の頭部にワイヤリング用の孔を設けたボルトを使用することも可能である。また、ボルト5は六角ボルトに限らず、ワイヤリング用の孔5dを有するものであれば、四角ボルト等その他の種類のボルトを使用することも可能である。
【0030】
さらに、本構成ではセンサ1の2箇所にボルト挿通孔11A,11Bを設けているが、ボルト挿通孔は、センサ1の大きさや形状、必要とする接合強度等に応じて、センサ1の1箇所又は3箇所以上に設けてもよい。
【0031】
<第2構成例>
次に、ボルト脱落防止構造の第2構成例を説明する。
図6は第2構成例のボルト脱落防止構造における図1のII―II線断面に対応する断面図である。
【0032】
本構成のボルト脱落防止構造では、ワイヤ7が、ワイヤ通し孔17A,17Bからセンサ1Aの外側に引き出され、ボルト5の頭部5bの上方で縒り合される。これにより、ワイヤ7は、センサ1の第1側面15a、第2側面15bとセンサ頂面1aに沿って張設される。図6はボルト挿通孔11Aを示しているが、ボルト挿通孔11Bについても同様にワイヤリングされる。その他の構成は第1構成例と同様であるので、説明を省略する。
【0033】
本構成のボルト脱落防止構造によれば、ワイヤ7の縒り合わせ部21が、センサ1Aのざぐり穴13の内側で露出するボルト5の頭部5bの上部に配置される。このため、仮にボルト5の上方から飛来物がワイヤ7に衝突しても、その衝撃がボルト5の頭部5bとの接触により吸収されることで、ワイヤ7の損傷を回避できる。また、ボルト5の頭部5bの一部がワイヤ7によって覆われることで、飛来物との直接的な衝突から保護される。
【0034】
<第3構成例>
次に、ボルト脱落防止構造の第3構成例について説明する。
図7はボルト脱落防止構造の第3構成例を示す要部拡大斜視図である。
【0035】
本構成のボルト脱落防止構造では、一対のざぐり穴13A,13Bに配置されたボルト5のそれぞれを、一本のワイヤ7でワイヤリングする。つまり、一本のワイヤ7を各ざぐり穴13A,13Bのワイヤ通し孔17Bに挿通させる。そして、一方のざぐり穴13Aでは、ワイヤ7の一端が、ボルト5の孔5dを通してワイヤ通し孔17Aからセンサ1Bの外側に引き出される。また、他方のざぐり穴13Bでは、ワイヤ7の他端が、ボルト5の孔5dを通じてワイヤ通し孔17Aからセンサ1Bの外側に引き出される。引き出されたワイヤ7の一端と他端は、第1側面15aに沿って縒り合わせれる。これにより、第1側面15aに縒り合わせ部21が設けられる。その他の構成は第1構成例と同様であるので、説明を省略する。
【0036】
本構成のボルト脱落防止構造によれば、一本のワイヤ7で一対のざぐり穴13A,13Bの各ボルト5をワイヤリングするため、作業効率を向上し、部品点数を削減できる。また、センサ1からのワイヤ7の露出部分が第1構成例の場合よりも短縮され、飛来物によるワイヤ7の損傷を更に低減できる。
【0037】
また、ワイヤ7は一本にする構成に限らず、一対のざぐり穴13A,13Bに、それぞれ個別にワイヤ7を用いて、第1側面15aと第2側面15bとに縒り合わせ部21が設けた構成にしてもよい。その場合でも、ワイヤ7の露出部分を第1構成例の場合よりも短縮できる。
【0038】
<第4構成例>
次に、ボルト脱落防止構造の第4構成例について説明する。
図8は第4構成例のボルト脱落防止構造のセンサ1と、センサ1の外側に沿わせたワイヤ7との拡大断面図である。
【0039】
本構成においては、センサ1の外表面に、ワイヤ7を収容する収容溝19が形成されている。収容溝10は、図1に示すセンサ1の第1側面15a、第2側面15b、第3側面15c、第4側面15d、又はセンサ頂面1aの少なくともいずれかに形成され、好ましくはセンサ1のワイヤ7が沿わせられる全ての外表面に形成される。また、センサ1やワイヤ7のその他の構成は、第1~第3構成例と同様である。
【0040】
このように、センサ1の外表面の少なくともいずれかにワイヤ7を収容する収容溝19を設けることで、ワイヤ7が収容溝19に収まり、第1構成例の場合よりも更に確実に飛来物等からワイヤ7を保護できる。また、収容溝19によって、作業者にワイヤ7の縒り合わせ位置を示すことができ、ワイヤリングの作業を円滑に進められる。
【0041】
なお、本構成において、収容溝19は、少なくともワイヤ7の縒り合わせ部21に対応する位置には、縒り合わせ部21を収容可能な溝深さを有することが好ましい。さらに、ワイヤ7が沿わせられる外表面の全体にわたり、収容溝19を縒り合わせ部21が収容可能な溝深さにすることが好ましい。この構成によれば、ワイヤ7の拡径部となった縒り合わせ部21を含めて、ワイヤ7の露出している部分全体を収容溝19に確実に収容でき、ワイヤ7をより確実の保護できる。また、ワイヤ7が収容溝19によって規制され、ずれ等が生じにくくなる。
【0042】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0043】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 被取付部材を取付相手部材に締結するボルトのボルト脱落防止構造であって、
前記ボルトは、軸部と頭部を有し、前記頭部の側面にはワイヤリング用の孔が開口され、
前記被取付部材は、前記ボルトの軸部が挿通されるボルト挿通孔を有し、前記ボルト挿通孔のボルト挿入側には、前記ボルトの頭部を収容するざぐり穴が形成され、
前記ざぐり穴の内周面には、ワイヤが挿通される一対のワイヤ通し孔の内側端が開口し、
前記ワイヤは、前記一対のワイヤ通し孔と、前記ボルトの前記ワイヤリング用の孔を通って前記一対のワイヤ通し孔の外側端からワイヤ端部が延出され、
延出された前記ワイヤは、前記被取付部材の外表面に沿って張設され、前記ワイヤ端部同士が接合されている、
ボルト脱落防止構造。
このボルト脱落防止構造によれば、ボルトの頭部が被取付部材のざぐり穴に収容されるため、飛来物等によるボルトの損傷が防止される。また、ざぐり穴を設ける構成であるため、被取付部材から突出するカバー部材を別途に取り付ける場合と比較して、設計上及びスペース上の制約を受けることがない。
【0044】
(2) 前記ワイヤ通し孔から延出された前記ワイヤは、前記被取付部材の外表面に接して配置されている(1)記載のボルト脱落防止構造。
このボルト脱落防止構造によれば、ワイヤが被取付部材の外側に露出している部分が、被取付部材の外表面に接しているので、仮に飛来物等がワイヤに衝突しても、ワイヤに過大な張力が及ぶことがなく、ワイヤを確実に保護することができる。
【0045】
(3) 前記ワイヤ端部同士は、前記被取付部材の前記ざぐり穴の位置で前記ボルトの頭部に対面して接合されている(1)に記載のボルト脱落防止構造。
このボルト脱落防止構造によれば、ボルトの上方から飛来物がワイヤに衝突しても、その衝撃がボルトの頭部との接触により吸収されることで、ワイヤの損傷を回避できる。また、ボルトの頭部の一部がワイヤによって覆われることで、飛来物との直接的な衝突から保護される。
【0046】
(4) 前記被取付部材は、複数の前記ボルト挿通孔が形成され、
前記ワイヤは、同じ前記ボルト挿通孔に開口する前記ワイヤ通し孔から延出されたワイヤ端部同士が接合されている、(1)~(3)のいずれか一つに記載のボルト脱落防止構造。
このボルト脱落防止構造によれば、同じボルト挿通孔に開口するワイヤ通し孔から延出されたワイヤ端部同士を接合するため、各ボルト挿通孔のボルトを個別にワイヤリングできる。このため、それぞれのボルトの頭部着座面を共通した平坦面にする必要がなく、設計の自由度が向上する。また、各ボルト挿通孔のボルトを個別に調整することができる。
【0047】
(5) 前記被取付部材は、複数の前記ボルト挿通孔が形成され、
前記ワイヤは、互いに異なる前記ボルト挿通孔に開口する前記ワイヤ通し孔から延出されたワイヤ端部同士が接合されている、(1)~(3)のいずれか一つに記載のボルト脱落防止構造。
このボルト脱落防止構造によれば、互いに異なるボルト挿通孔に開口するワイヤ通し孔から延出されたワイヤ端部同士を接合するため、複数のボルト連通孔のボルトを共通にワイヤリングできる。このため、隣接するボルト挿通孔同士でワイヤを接続すれば、ワイヤの露出長さを短縮しやすくなり、損傷を受けにくい構成にできる。
【0048】
(6) 前記ワイヤは、前記ワイヤ端部同士の接合部が、前記被取付部材の外表面のいずれか1つに沿って配置された1本のワイヤである(5)に記載のボルト脱落防止構造。
このボルト脱落防止構造によれば、ワイヤリングの作業効率が向上し、部品点数を削減できる。
【0049】
(7) 前記ボルトの頭部には、互いに異なる径方向に前記ワイヤリング用の孔が複数形成されている(1)~(6)のいずれか1つに記載のボルト脱落防止構造。
このボルト脱落防止構造によれば、ワイヤリング用の孔と、ワイヤ通し孔との軸合わせが容易になり、作業性が向上する。また、ワイヤを挿通する孔を複数の中から適宜選択することで、ボルトへの回り止め効果を効率よく付与できる。
【0050】
(8) 前記被取付部材の外表面には、前記ワイヤ通し孔から延出された前記ワイヤを収容する収容溝が設けられている(1)~(7)のいずれか一つに記載のボルト脱落防止構造。
このボルト脱落防止構造によれば、ワイヤが収容溝内に配置されるため、飛来物等からワイヤをより確実に保護できる。
【0051】
(9) 前記被取付部材はセンサであり、
(1)~(8)のいずれか一つに記載のボルト脱落防止構造を有するセンサ取付構造。
このボルト脱落防止構造によれば、センサを固定するボルトの脱落を防止できる。
【符号の説明】
【0052】
1 センサ(被取付部材)
1a センサ頂面(外表面)
3 車両(取付相手部材)
5 ボルト
5a 軸部
5b 頭部
5c 側壁
5d ワイヤリング用の孔
7 ワイヤ
11A,11B ボルト挿通孔
13 ざぐり穴
13a 内側面
13b 底面
15a 第1側面(外表面)
15b 第2側面(外表面)
15c 第3側面(外表面)
15d 第4側面(外表面)
17A,17B ワイヤ通し孔
17a 内側端
17b 外側端
19 収容溝
21 縒り合わせ部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8