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特許7131432多入力温度検出手段及びこれを備えた空気調和機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】多入力温度検出手段及びこれを備えた空気調和機
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/00 20060101AFI20220830BHJP
   H03M 1/12 20060101ALI20220830BHJP
   F24F 11/88 20180101ALI20220830BHJP
   G01K 1/022 20210101ALI20220830BHJP
【FI】
G01K7/00 321G
H03M1/12 A
F24F11/88
G01K1/022
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019032475
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020134477
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 努
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-167972(JP,A)
【文献】特開昭64-84124(JP,A)
【文献】特開昭59-209344(JP,A)
【文献】特開2017-185236(JP,A)
【文献】特開2011-237101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00 - 19/00
H03M 1/12 - 1/64
F24F 11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の温度センサが接続された選択手段と、
前記選択手段により選択された1つの前記温度センサの出力電圧をアナログ/デジタル変換して電圧値を出力するアナログ/デジタル変換器と、
前記選択手段と前記アナログ/デジタル変換器の間に直列に接続されたCRローパス・フィルタと、
前記選択手段に前記温度センサを選択する入力選択信号を出力すると共に、前記アナログ/デジタル変換器で変換した前記電圧値が入力されて記憶される温度検出手段とを備え、
前記温度検出手段は、
複数の前記温度センサ毎に変換された前記電圧値の記憶を行う処理を1サイクルとした時、前記1サイクルで記憶した複数の前記電圧値と前記電圧値の検出元である前記温度センサの識別子とを、前記電圧値が高い順又は低い順に次のサイクル実行前に並べ替え、並べ替えた前記電圧値の順に、この電圧値と対応する前記識別子が示す前記温度センサを順次選択して次のサイクルにおける各前記電圧値を記憶することを特徴とする多入力温度検出手段。
【請求項2】
請求項1に記載の多入力温度検出手段を備えたことを特徴とする空気調和機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多入力の温度検出手段に係わり、より詳細には、複数の温度センサ信号を切り替えてアナログ/デジタル変換する多入力の温度検出回路において、A/D変換器の入力側に設けられたCRローパス・フィルタ回路で遅延する温度センサの出力電圧が安定するまでの待時間を短縮させる手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のセンサを切り替えてアナログ/デジタル変換する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この技術を用いた機器を図5のブロック図に示す。
図5に示す機器は静圧センサ112と温度センサ113がマルチプレクサ114Aの入力に接続されている。そしてこれらのセンサの信号はマルチプレクサ114Aで選択され、選択された信号が第2のA/D変換器115Bでデジタル信号に変換された後、処理装置116へ入力される。処理装置116は選択信号をマルチプレクサ114Aへ出力しているため、意図するセンサを選択してそのセンサ信号のデジタル値を入力することができる。ここで複数のセンサを切り替えて第2のA/D変換器115Bに入力することでA/D変換器の数を減らすことができる。
【0003】
一方、各センサはマルチプレクサ114Aから離れた場所に設置されている。このため、外部からのノイズがセンサ信号に重畳される場合が有るため、ノイズ除去用のコンデンサ117Aをマルチプレクサ114Aの入力端に設けている。また、コンデンサ117Aで除去出来なかったノイズに関しては、マルチプレクサ114Aの出力側に抵抗122とコンデンサ123からなるCRローパス・フィルタ121を設けて除去している。
【0004】
このようなCRローパス・フィルタ121は時定数を持っており、例えばCRローパス・フィルタ121の入力側でローレベルからハイレベルに変化した信号は積分波形となってCRローパス・フィルタ121から出力される。このため、フィルタに入力された信号の電圧を正確に測定するためには、この信号が入力されてから一定時間が経過して信号レベルの変化がほぼなくなってから測定しなければならない。
【0005】
図6において縦軸はCRローパス・フィルタ121の出力電圧を、横軸は時間を、それぞれ示している。なお、t50~t52は時刻である。
図6は静圧センサ112の出力電圧がゼロボルトで、温度センサ113の出力電圧が1ボルトの時、処理装置116がマルチプレクサ114Aに指示して第2のA/D変換器115Bの入力を、静圧センサ112から温度センサ113に切り替えた時の電圧変化を破線で、温度センサ113から静圧センサ112に切り替えた時の電圧変化を実線で、それぞれ示した説明図である。なお、抵抗122は4.7キロオーム、コンデンサ123は0.1マイクロファラッドである。
【0006】
図7はこのようなCRローパス・フィルタの特性に関連する計算式である。図7において式1はCRローパス・フィルタの時定数:τ(単位:秒)を求める式であり、キャパシタの容量:C(単位:ファラッド)と抵抗値:R(単位:オーム)の積で求められる。
式2はCRローパス・フィルタに入力される信号がローレベルからハイレベルに変化した時の出力電圧:Vo(単位:ボルト)を求める式であり、入力電圧:Vi(単位:ボルト)、自然対数の底:e、時間:t(単位:秒)、キャパシタの容量:Cと抵抗値:Rを用いて求められる。
式3はCRローパス・フィルタに入力される信号がハイレベルからローレベルに変化した時の出力電圧:Vo(単位:ボルト)を求める式であり、入力電圧:Vi(単位:ボルト)、自然対数の底:e、時間:t(単位:秒)、キャパシタの容量:Cと抵抗値:Rを用いて求められる。
【0007】
前述したように抵抗122は4.7キロオーム、コンデンサ123は0.1マイクロファラッドであるため、式1を用いてCRローパス・フィルタ121の時定数τは0.47mS(ミリセカンド)となる。図6においてこの時定数による信号変化を算出する。
入力電圧:Viが0ボルトから1.0ボルト(最大レベルの信号)に変化した時、出力電圧:Voが0.99ボルト(99%の変化)になるまでの時間:tは、式2を用いて約2.2mSとなる。また、入力電圧:Viが1.0ボルトから0ボルト(最小レベルの信号)に変化した時、出力電圧:Voが0.01ボルト(99%の変化)になるまでの時間:tは、式3を用いて約2.2mSとなる。
【0008】
つまり、温度センサを切り替えた時、切り替える前の温度センサの電圧から切り替えた後の温度センサの電圧に変化するまでの時間(99%変化するまでの時間)は、時定数τが0.47mSの場合、約2.2mSとなる。このため、正確な入力電圧を検出するために、温度センサを切り替えてから2.2mS(待機時間)だけ待機してからA/D変換を行う必要がある。なお、この待機時間は各温度センサの切り替え毎に必要であるため、5つの温度センサを切り替える場合、全ての検出1回ずつ行う1サイクルでは11mSかかることになる。
【0009】
しかしながら、温度センサの数が多い場合や、温度変化の速い測定対象の場合には、1サイクルの時間を短縮する必要がある。また、精度が必要な場合、例えば切りかえられた信号が99.9%まで変化する時間は時定数τが0.47mSの場合、約3.2mSとなる。つまり、精度が低い99%の時には約2.2mSの待ち時間であったものが精度を1桁高めると待機時間が約1mS増加することになる。このように、測定の精度を向上させるにつれて待時間が増加するため、1サイクルの測定時間が増加する。このため、複数の温度センサの信号を切り替えてアナログ/デジタル変換し、かつ、ノイズ除去用のフィルタを備えた構成において、1サイクルの時間を短縮する方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2010-127633号公報(段落番号0027~0029)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は以上述べた問題点を解決し、複数の温度センサの信号を切り替えてアナログ/デジタル変換し、かつ、ノイズ除去用のフィルタを備えた構成において、全ての温度センサの電圧の検出を1回ずつ行う1サイクルの時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上述の課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の多入力温度検出手段の発明は、
複数の温度センサが接続された選択手段と、
前記選択手段により選択された1つの前記温度センサの出力電圧をアナログ/デジタル変換して電圧値を出力するアナログ/デジタル変換器と、
前記選択手段と前記アナログ/デジタル変換器の間に直列に接続されたCRローパス・フィルタと、
前記選択手段に前記温度センサを選択する入力選択信号を出力すると共に、前記アナログ/デジタル変換器で変換した前記電圧値が入力されて記憶される温度検出手段とを備え、
前記温度検出手段は、
複数の前記温度センサ毎に変換された前記電圧値の記憶を行う処理を1サイクルとした時、前記1サイクルで記憶した複数の前記電圧値と前記電圧値の検出元である前記温度センサの識別子とを、前記電圧値が高い順又は低い順に次のサイクル実行前までに並べ替え、並べ替えた前記電圧値の順に、この電圧値と対応する前記識別子が示す前記温度センサを順次選択して次のサイクルにおける各前記電圧値を記憶することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載の空気調和機の発明は、請求項1に記載の多入力温度検出手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上の手段を用いることにより本発明は、複数の温度センサの信号を切り替えてアナログ/デジタル変換し、かつ、ノイズ除去用のフィルタを備えた構成において、全ての温度センサの信号の検出を1回ずつ行う1サイクルの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による空気調和機の実施例を示すブロック図である。
図2】測定した温度データの処理手順を説明する説明図である。
図3】本発明の原理を説明する説明図である。
図4】本発明の動作を説明する説明図である。
図5】従来の機器において複数のセンサを切り替えてアナログ/デジタル変換する場合のブロック図である。
図6】従来の機器において複数のセンサを切り替えてアナログ/デジタル変換する場合の方法を説明する説明図である。
図7】CRローパス・フィルタの特性に関連する計算式である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明による空気調和機1を示すブロック図である。
この空気調和機1は三相の交流電源2が接続された室外機40と、室外機40と通信接続された室内機50を備えている。
【0018】
また、室外機40は、交流電源2を整流して直流電圧を出力する整流器3と、整流器3の正極出力端と負極出力端に接続されたコンバータ部4と、コンバータ部4の正極出力端と負極出力端のそれぞれが入力端に接続され、入力された直流電圧を変換して三相の交流電圧を生成し、圧縮機7に内蔵されたモータ7aに供給するインバータ部5を備えている。
【0019】
また、室外機40は、四方弁8と、熱交換器9と、熱交換器9の温度を測定する熱交換器温度センサ17と、電子膨張弁10と、第1操作弁11と、第2操作弁12と、吐出温度センサ13と、吸入温度センサ14と、コンバータ部4に内蔵されている図示しないスイッチング素子を冷却するヒートシンク4aと、ヒートシンク4aの温度を測定する過熱温度センサ6と、外気温度を測定する外気温度センサ16と、室外機40を制御する室外機制御部20を備えている。
【0020】
なお、吐出温度センサ13は検出した温度を吐出温度信号として、また、吸入温度センサ14は検出した温度を吸入温度信号として、また、過熱温度センサ6は検出した温度を過熱温度信号として、さらに、熱交換器温度センサ17は熱交換温度信号を、外気温度センサ16は外気温度信号を、それぞれ出力する。なお、それぞれの温度信号は各温度センサで検出した温度に応じて0.0ボルト~1.0ボルトの範囲で出力される電圧信号である。
【0021】
圧縮機7の吐出口は吐出管15aで、また、吸入口はガス管15bで、それぞれ四方弁8と接続されている。また、四方弁8、熱交換器9、電子膨張弁10、第1冷媒管15c、第2操作弁12は順次配管で接続されている。さらに四方弁8は、第2冷媒管15dで第1操作弁11に接続されている。なお、室外機40と室内機50は第1操作弁11と第2操作弁12を介してそれぞれの冷媒回路が接続されている。一方、吐出温度センサ13は吐出管15aに、吸入温度センサ14はガス管15bにそれぞれ設けられている。
【0022】
一方、室外機制御部20は、制御部27と、多入力温度検出部(多入力温度検出手段)21を備えている。さらに、多入力温度検出部21は、マルチプレクサ(選択手段)22と、A/D変換器(アナログ/デジタル変換器)23と、CRローパス・フィルタ26と、温度検出部(温度検出手段)30とを備えている。
制御部27は室内機50と通信接続すると共に、コンバータ部4へコンバータ制御信号を、また、インバータ部5へインバータ制御信号をそれぞれ出力している。
【0023】
多入力温度検出部21のマルチプレクサ22は、入力端A~入力端Eの5つの入力端から入力選択信号により指定された1つの入力端を選択して出力端に接続するものである。入力端Aには過熱温度信号が、入力端Bには吸入温度信号が、入力端Cには吐出温度信号が、入力端Dには熱交温度信号が、入力端Eには外気温度信号がそれぞれ入力されており、マルチプレクサ22の出力端からこれらの温度信号の内、選択された1つの信号がCRローパス・フィルタ26の入力端に出力される。なお、マルチプレクサ22は、入力選択信号により入力端A~入力端E以外が選択された場合、出力信号を0ボルトにする。
【0024】
ノイズ除去のために用いるCRローパス・フィルタ26は、抵抗24とコンデンサ25を備えている。マルチプレクサ22の出力端は抵抗24の一端に、また、抵抗24の他端はA/D変換器23の入力にそれぞれ接続されている。また、抵抗24の他端はコンデンサ25を介してグランドに接続されている。つまり、マルチプレクサ22の出力端とA/D変換器23の入力端は、CRローパス・フィルタ26を介して直列に接続されている。なお、抵抗24は4.7キロオーム、コンデンサ25は0.1マイクロファラッドであるため、図7に示す式1を用いてCRローパス・フィルタ26の時定数τは0.47mSとなる。
【0025】
温度検出部30は、マルチプレクサ22に入力されている各温度信号から1つを選択する入力選択信号をマルチプレクサ22へ出力する。そして温度検出部30は、CRローパス・フィルタ26でノイズが除去されてA/D変換器23でデジタル化され、自身が選択した温度センサ信号と対応する電圧信号が入力される。温度検出部30は、入力された電圧値を選択された温度センサを示す識別子(A~E)と共に内部にテーブル化して記憶しており、制御部27へ1サイクル分(入力端A~入力端Eの検出結果)の電圧値を最新の温度データとして出力する。
【0026】
温度検出部30は、記憶部31と、タイマー32と、検出管理部33を備えている。
検出管理部33は、入力選択信号によりマルチプレクサ22に入力される各温度センサ信号を切り替えて、選択された各温度センサ信号と対応するデジタルの電圧値を順次記憶部31に記憶する。検出管理部33は、各温度センサ信号を切り替えてから選択された温度センサ信号がCRローパス・フィルタ26を通過して温度信号として出力され、この温度信号が確定(安定化)するまでの確定時間をタイマー32により測定し、確定した電圧値(確定電圧)と確定時間と選択された温度センサを示す識別子を記憶部31に記憶する。なお、温度検出部30の動作については後で詳細に説明する。
【0027】
検出管理部33は各温度信号を切り替えてから選択された各温度信号が確定(安定化)することを確認するため、時間間隔を空けて2回入力されたA/D変換器23の出力電圧値を比較する。この電圧差が一定値以内の時にCRローパス・フィルタ26の出力電圧、つまり温度信号が安定化した確定電圧となったと判断する。本実施例ではこの2つの電圧をサンプリングして確定電圧を判定する処理を確定サンプリングと呼称する。
具体的に検出管理部33は確定サンプリングとして、例えば0.01mSの間隔で測定した2つの電圧値の差が0.01ボルト以内となった時、2回目に測定した電圧を確定電圧として管理テーブルへ格納(記憶)する。
【0028】
図2は記憶された確定電圧の処理手順を説明する説明図である。図2(1)~図2(4)は記憶部31に記憶された管理テーブル内のデータの変化を示している。各図にて左から右の横方向に項目が決められており、マルチプレクサ22に接続される各温度センサを表す「識別子」、「確定電圧(単位:ボルト)」、「確定時間(単位:mS)」となっており、縦方向は各入力端A~入力端Eで検出した値が格納されている。
【0029】
室外機40に電源が投入されると検出管理部33は、管理テーブルの初期化処理を行う。本発明の特徴は前回のサイクルで検出した確定時間に基づいて処理時間の短縮を行うため、この初期化処理にて初回の確定電圧及び確定時間の値を管理テーブルに格納する。
【0030】
このため検出管理部33は、この初期化の処理のみ背景技術で説明した従来の方法で1サイクル分の温度検出を行う。つまり、検出管理部33は、1つの温度センサの切り替えに対して温度信号電圧の変化が99%終了する待機時間:2.2mSだけ待機した後、A/D変換器23から出力される電圧信号を管理テーブルに格納する。つまり初期化時は前回サイクルの確定時間が不明のため、計算上最大の確定時間である2.2mS(待機時間)を使用する。
この時、検出管理部33は、マルチプレクサ22の入力端A~入力端Eの各端子を順に切り替えながら確定電圧値を1サイクルだけ順次格納する。この処理において検出管理部33はタイマー32を2.2mSのカウントに使用する。
【0031】
図2(1)は確定電圧値を1サイクルだけ格納した時の管理テーブルを示している。なお、この初期化処理において、検出管理部33はタイマー32による確定時間を測定していないため、確定時間の項を全て0.0mSにする。この結果、管理テーブルの識別子A~Eに対応して確定電圧が例えば、0.5V、0.1V、0.8V、0.2V、0.6Vとして格納される。
【0032】
次に検出管理部33は、管理テーブルの確定電圧を昇順にソート、つまり、複数の確定電圧(電圧値)を低い順から高い順に並べ替える。この時、同時に検出管理部33は管理テーブルの識別子A~Eも確定電圧のソートによる移動に対応して同時に移動する。この結果、管理テーブルの確定電圧は0.1V、0.2V、0.5V、0.6V、0.8Vとなり、これに対応して識別子もB、D、A、E、Cの順となる。この状態を図2(2)に示す。なお、異なる識別子で確定電圧が同じ場合は特に順番を入れ替える必要がない。
【0033】
次に検出管理部33は、管理テーブルに格納されている順に識別子の項で指定される温度センサに切り替えて、確定サンプリングを実施して入力された電圧値が安定した場合、最新の値を確定電圧として管理テーブルに格納する。同時に検出管理部33は、温度センサを切り替えてから電圧の変化が安定するまでの時間をタイマー32を用いて計測し、計測した時間を確定時間として格納する。検出管理部33は、1サイクルの検出が終了するまでこれを繰り返す。この処理が終了した時の管理テーブルを図2(3)に示す。識別子のB、D、A、E、Cに対応して確定時間は、例えば2.2mS、1.9mS、2.0mS、1.4mS、1.5mSとなっている。
【0034】
図3図2(3)の管理テーブルを作成した時の1サイクル分のCRローパス・フィルタ26の出力電圧を実線で示す説明図である。図3において横軸は時間を表しており、縦軸はCRローパス・フィルタ26の出力電圧である温度信号(単位:ボルト)を示している。なお、破線は対応する温度センサの電圧が0.0ボルトから変化した時の仮想的な波形を示す。なお、t0~t9は時刻である。なお、この2回目の検出に先立って検出管理部33が、入力選択信号により入力A~入力E以外を選択することで、コンデンサ25の電圧が0ボルトの状態から1サイクルの温度検出を行った場合を示している。次に、図2(2)の管理テーブルの状態から図2(3)の状態に移行する場合の処理について説明する。
【0035】
検出管理部33は、図2(2)の管理テーブルに確定電圧と確定時間を格納するため、まず最初に、図2(2)の管理テーブルの最初に格納されている識別子Bと対応する温度センサを指定して、図3におけるt0で入力選択信号を出力する。マルチプレクサ22は出力端に識別子Bと対応する吸入温度信号(0.1ボルト)を出力する。この信号がCRローパス・フィルタ26に入力されると、CRローパス・フィルタ26の出力電圧が0ボルトから徐々に増加して0.1ボルトまで増加する。時定数が同じ場合、CRローパス・フィルタ26に入力される電圧に関係なく同じ時間で入力電圧の99%まで到達する。本発明の場合、背景技術で説明したようにこの時間は2.2mSである。
【0036】
検出管理部33は、識別子Bと対応する吸入温度センサ14に切り替えたt0から確定サンプリングを開始し、t2で電圧が確定した時、0.1ボルトを識別子Bの吸入温度センサ14と対応する確定電圧として管理テーブルに格納する。検出管理部33は、同時にt0からt2までの時間をタイマー32により測定しており、この測定結果である2.2mSを識別子Bと対応する確定時間として管理テーブルに格納する。
【0037】
次に検出管理部33は、t2で入力選択信号を用いて管理テーブルに格納されている識別子Dを指定し、同時にタイマー32で確定時間の測定と、確定サンプリングを開始する。マルチプレクサ22はt2で出力端に識別子Dと対応する熱交温度信号(0.2ボルト)を出力する。この信号がCRローパス・フィルタ26に入力されると、CRローパス・フィルタ26の出力電圧である温度信号が0.1ボルトから徐々に増加して0.2ボルトまで増加する。検出管理部33は、t4でCRローパス・フィルタ26の出力電圧が確定したため、この時に入力した0.2ボルトを識別子Dと対応する確定電圧として、また、t2~t4の1.9mSを確定時間として、それぞれ管理テーブルに格納する。
【0038】
識別子Dと対応する熱交換温度センサ17から入力される熱交温度信号は0.2ボルトであるが、直前の確定電圧(吸入温度信号)が0.1ボルトであるため、熱交温度信号が0ボルトから0.1ボルトへ変化するまでの時間(0.3mS)、つまり、t1~t2の期間は2.2mS(CRローパス・フィルタ26による電圧の最大変化時間)から除外することができる。このため実質的に検出管理部33は、1.9mSを識別子Dと対応する確定時間として管理テーブルに格納することになる。このように確定電圧を昇順に並べ替えることで、識別子B、D、A、E、Cと対応する確定時間はそれぞれ2.2mS、1.9mS、2.0mS、1.4mS、1.5mSとなる。
【0039】
このように温度検出部30は確定電圧が小さい入力から順に並べ替えて次のサイクルの入力電圧を確定するため、直前の確定電圧から今回の確定電圧へ変化するまでの時間を2.2mSから除外することができる。この結果、従来の方法では1サイクルの検出に要していた11mSを例えば図3に示すように9.0mSへ短縮することができる。
【0040】
通常、温度データはパワー素子の短絡などの異常時を除けば急激な変化はない。このため、前回のサイクルにおける確定時間を今回の待ち時間とし、入力を切り替えてからこの待ち時間が経過した後に確定サンプリングを行うようにすることで、確定電圧を得るための連続的な電圧のサンプリングを省略することができる。ただし、同じ入力において前回の確定時間だけ待機して今回の電圧をサンプリングした場合、次の3つの状態がある。
【0041】
1つめは、前回のサイクルの確定電圧に対して今回のサイクルでサンプリングした電圧が大きい場合である。この場合、今回のサイクルでの確定時間も前回のサイクルと異なるため、前回のサイクルでの確定時間による待ち時間が経過した後、電圧を確定するまで連続的な確定サンプリングが必要になる。ただし、前述したように1サイクルにおける温度変化は小さいためこの確定サンプリング回数もわずかである。
【0042】
2つめは、前回のサイクルと今回のサイクルにおける確定電圧と確定時間が全て等しい場合である。つまり、前回と今回のサイクルにおいて温度変化がない場合である。このため検出管理部33は、それぞれの温度センサの電圧入力において1回の確定サンプリングで確定電圧を得ることができる。
【0043】
3つめは前回のサイクルでの確定電圧よりも今回のサイクルでサンプリングした電圧が小さい場合と、同じサイクルにおいて、ある入力を切り替える直前の電圧と切り替えた直後の電圧に関して、これらが同じ場合である。この場合、前回のサイクルでの確定時間による待ち時間が経過した時、すでに電圧は確定(安定化)している。このため温度センサの電圧入力において1回の確定サンプリングで確定電圧を得ることができる。しかしながら、これらの場合は電圧の安定化が実際には前回のサイクルでの確定時間よりも短い時間で確定したにも関わらず、それを検出できずに余分な待ち時間が発生している。また、これ以降、確定時間が固定となってしまう可能性が有るため、1サイクルにおける時間短縮が不十分である。
【0044】
このため、3つめの場合は検出管理部33が次回のサイクルでの確定時間を短縮するための処理を行う。
検出管理部33は、1回の確定サンプリングで確定電圧を得ることができた場合、前回のサイクルの確定時間から所定時間、例えば本実施例の場合には0.1mSだけ減じた時間を今回のサイクルの確定時間として管理テーブルに格納する。ただし、検出管理部33は、前回のサイクルでの確定時間から所定時間を減じた値がマイナスの値にならない範囲で減算処理を行って今回のサイクルにおける確定時間として管理テーブルに格納する。
ただし、この場合は前述した2つめの状態を含んでいるため、検出管理部33は、ある温度センサに関して、前回のサイクルの確定電圧と今回のサイクルの確定電圧が等しい場合は、この減算処理を実行しない。
【0045】
このようにすることで、前回の確定電圧よりも今回のサンプリングした電圧が小さい場合と、入力を切り替える前の電圧と切り替えた後の電圧が同じ場合、検出管理部33が確定時間を1サイクル毎に減じるため、1サイクルの処理時間を徐々に短縮することができる。なお、入力を切り替える前の電圧と切り替えた後の電圧が異なるようになった場合、検出管理部33は入力を切り替えてから確定時間が経過した後、さらに確定電圧になるまで確定サンプリングを継続し、最新の確定時間を今回の確定時間として管理テーブルに格納する。
【0046】
このように初期化処理で行った連続的なサンプリングを行う代わりに、確定時間を用いて間欠的な確定サンプリングを行って確定電圧を求めるため、室外機制御部20の処理負荷を軽減することができる。この方法を次に具体的に説明する。
【0047】
前回のサイクルで検出した結果が図2(3)の管理テーブルの内容である場合、検出管理部33は、この管理テーブルの識別子の項で示される選択の順序と、これに対応する確定時間を用いて次回のサイクルの温度検出を行う。
【0048】
図4図2(3)の管理テーブルを用いて次のサイクルの電圧を測定した時の1サイクル分のCRローパス・フィルタ26の温度信号を実線で示す説明図である。図4において横軸は時間を表しており、縦軸はCRローパス・フィルタ26の出力電圧である温度信号(単位:ボルト)を示している。なお、t20~t30は時刻である。なお、この場合の各温度センサの出力電圧は、入力端Aの過熱温度信号が0.5ボルト、入力端Bの吸入温度信号が0.1ボルト、入力端Cの吐出温度信号が0.9ボルト、入力端Dの熱交温度信号が0.1ボルト、入力端Eの外気温度信号が0.5ボルトである。また、実際の波形の変化時間と前回のサイクルでの確定時間である予測波形変化時間を記載している。
【0049】
次のサイクルの検出前に検出管理部33は図2(3)の管理テーブルに関して確定電圧をキーとしてソートするが、結果的に電圧の大小関係が前回のサイクルと同じであるため管理テーブル内のデータ順番に変化はない。一方、図2(3)の管理テーブルを用いて前回のサイクルで管理テーブルの最後に格納された「識別子:C」の温度を検出した時、温度検出部30は入力選択信号を用いてマルチプレクサ22に対して入力端Cの選択を指示したままである。従って、次のサイクルの検出前、つまり、t20より前の時間において、温度信号は0.8ボルトになっている。
【0050】
図4において検出管理部33は、t20で図2(3)の管理テーブルの最初の項である識別子:B(入力端B)を抽出し、これを指定する入力選択信号を出力するとマルチプレクサ22は、入力端Bの電圧、つまり、0.1ボルトを出力する。そして、検出管理部33は、タイマー32を起動して確定時間の計測を開始すると共に、管理テーブルの識別子:Bと対応する確定時間で示される2.2mSの待機を開始する。一方、温度信号はt20以降において0.8ボルトから0.1ボルトへ減少する。この時もCRローパス・フィルタ26の時定数の影響を受けるため温度信号がt21で0.1ボルトへ達するまで0.8mSが経過している。
【0051】
検出管理部33は、t21では待機が完了する時間である2.2mSが経過していないため、さらに待機を継続する。そしてt22で2.2mSになった時、検出管理部33は確定サンプリングを行って確定電圧を求める。この場合、すでにt21で温度信号の電圧変化が終了しているが、検出管理部33はこれを検出できないため、t20から2.2mSが経過したt22で1回の確定サンプリングで確定した電圧値を確定電圧:0.1ボルトとして、管理テーブルの識別子:Bと対応する確定電圧の項に格納する。同時に検出管理部33は、測定した時間である2.2mSから0.1mSだけ減じた:2.1mSを確定時間として管理テーブルの識別子:Bと対応する確定時間の項に格納する待機時間の短縮処理を行う。
【0052】
検出管理部33はt22において1回の確定サンプリングで確定電圧を得ることができたが、実際に温度信号の変化が終了した時間(t21)を知ることができないので、検出管理部33は、次のサイクルのために確定時間を短縮する処理を行う。このため、検出管理部33は前述したように今回の確定時間から一定時間だけ減じた時間を確定時間として管理テーブルの識別子:Bと対応する確定時間の項に格納する。このようにすることで、検出管理部33は、次回サイクルにおいて確定時間を実際の電圧変化の終了時間、例えばt20からt21の時間に近づけていく。
【0053】
次に検出管理部33はt22で図2(3)の管理テーブルの2番目の項である識別子:Dを抽出し、これを指定する入力選択信号を出力するとマルチプレクサ22は、入力端Dの電圧、つまり、0.1ボルトを出力する。検出管理部33は入力端Bの場合と同様に前回のサイクルでの確定時間による待機と今回のサイクルの確定時間の計測を行う。検出管理部33は前回のサイクルでの確定時間である待機時間:1.9mSが経過すると、確定サンプリングを行って今回のサイクルでの確定電圧を求める。
【0054】
この場合、すでにt22で温度信号の電圧変化が終了している。一方、検出管理部33はt22から1.9mSが経過したt24で検出した電圧値を確定電圧:0.1ボルトとして、管理テーブルの識別子:Dと対応する確定電圧の項に格納する。同時に検出管理部33は同じサイクルにおいて入力端を切り替える前の確定値:0.1ボルトと今回の確定値が同じであるため、タイマー32を停止した後、測定した時間である1.9mSから所定値の0.1mSだけ減じた:1.8mSを確定時間として管理テーブルの識別子:Dと対応する確定時間の項に格納する。このようにすることで、検出管理部33は、次回サイクルにおいて確定時間を実際の電圧変化の終了時間、例えばt22の時間に近づけていく。
【0055】
次に検出管理部33はt24で図2(3)の管理テーブルの3番目の項である識別子:Aを抽出し、これを指定する入力選択信号を出力するとマルチプレクサ22は、入力端Aの電圧、つまり、0.5ボルトを出力する。検出管理部33は入力端Dの場合と同様に前回のサイクルでの確定時間による待機と今回の確定時間の計測を行う。検出管理部33は前回のサイクルの確定時間である待機時間:2.0mSが経過すると、確定サンプリングを行って確定電圧を求める。
【0056】
しかしながら、待機時間が完了したt25ではまだ温度信号が変化途中であり、電圧が確定しない。このため検出管理部33は、確定電圧となるまで確定サンプリングを継続して行う。この結果、t26で検出管理部33は確定電圧:0.5ボルトを得たため、この確定電圧値と、今回のサイクルでの確定電圧を得るまでのt24からt26までの確定時間である2.1mSを管理テーブルの識別子:Aと対応する各項に格納する。
同様に、検出管理部33は、入力端Eと入力端Cの確定電圧と確定時間をそれそれ順次検出して管理テーブルに格納する。この結果、図4に示すように1サイクルの合計確定時間:9.4mSとなる。
【0057】
図4に示す1サイクルの検出が終了した時の管理テーブルを図2(4)に示す。この管理テーブルの確定時間において※で示す項は説明のための記号であり、確定時間を0.1mSだけ減じた3種類の識別子を示している。
従って次回のサイクルにおいて今回のサイクルでの確定電圧が変化しない場合、今回のサイクルの確定時間の合計である9.4mSから三種類で0.3mSを減じた9.1mSで1サイクルを終了することができる。さらに確定電圧が変化しない場合、最終的に図4のt21~t22の1.4mSと、t22~t24の1.9mSと、t26~t28の1.4mSの合計である4.7mSを短縮して、1サイクルの検出時間を4.7mSにすることができる。
【0058】
以上説明したように、複数の温度センサの信号をマルチプレクサ22を用いて切り替えて、マルチプレクサ22から出力される電圧をA/D変換器23を用いてアナログ/デジタル変換し、かつ、ノイズ除去用のCRローパス・フィルタ26を備えた構成において、全ての温度センサの信号を1回ずつ行う1サイクルの時間を短縮することができる。このため、例えばある温度センサの測定対象の温度が急激に変化する温度異常となった場合、背景技術で説明した方法よりも早くこの温度異常を制御部27が認識できる。
【0059】
また、空気調和機1の室外機40では、1つの制御部27でコンバータ部4やインバータ部5の制御、さらに室内機50との通信や室外機40全体の制御など、多岐にわたる制御行っている。さらに室外機40では、多数個所に設置された温度センサにより温度を検出して迅速に制御に反映させることが必要である。このため、温度検出に割り当てる時間も限られている。このような構成において圧縮機の運転によるノイズも発生するため、CRローパス・フィルタ26も必要である。従って、本発明による多入力温度検出部21を空気調和機1に備えることで、ノイズに強く、かつ、多数の温度センサを接続でき、さらに、これらの温度センサによる1サイクルの温度検出を短時間で行うことが出来る。
【0060】
本実施例では確定電圧を昇順にソートして検出処理時間を短縮しているが、これに限るものでなく、降順にソートして検出処理を行っても同様に1サイクルの検出時間を短縮することができる。
また、本実施例では今回のサイクルの確定時間をタイマーを用いて測定しているが、これに限るものでなく、同じサイクルにおける直前の入力の確定電圧から前回の確定電圧に移行するまでの時間を、式2や式3を用いて算出してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 空気調和機
2 交流電源
3 整流器
4 コンバータ部
4a ヒートシンク
5 インバータ部
6 過熱温度センサ
7 圧縮機
8 四方弁
9 熱交換器
10 電子膨張弁
11 第1操作弁
12 第2操作弁
13 吐出温度センサ
14 吸入温度センサ
15a 吐出管
15b ガス管
15c 第1冷媒管
16 外気温度センサ
17 熱交換器温度センサ
20 室外機制御部
21 多入力温度検出部
22 マルチプレクサ(選択手段)
23 A/D変換器
24 抵抗
25 コンデンサ
26 CRローパス・フィルタ
27 制御部
30 温度検出部(温度検出手段)
31 記憶部
32 タイマー
33 検出管理部
40 室外機
50 室内機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7