(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物、並びにそれを用いた回転成形用ポリアミド樹脂組成物及び回転成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20220830BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20220830BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L23/26
C08J5/00 CES
C08J5/00 CFG
(21)【出願番号】P 2019080033
(22)【出願日】2019-04-19
(62)【分割の表示】P 2018568461の分割
【原出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2017175203
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018012851
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】三木 佑也
(72)【発明者】
【氏名】廣木 鉄郎
(72)【発明者】
【氏名】馬場 政義
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-062194(JP,A)
【文献】特開昭55-036279(JP,A)
【文献】特開2015-220493(JP,A)
【文献】特開2014-025023(JP,A)
【文献】特開平06-179784(JP,A)
【文献】特開2004-210853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:JIS K6920に従い、96重量%硫酸、ポリマー濃度1重量%、25℃の条件下にて測定した相対粘度ηrが2.45以下の脂肪族ポリアミドをa重量部と、
(B)成分:ASTM D1505に従い測定した密度が0.895g/cm
3以下の変性ポリオレフィンをb重量部と、
(C)成分:190℃、2.16kgの荷重で測定したMFR値が3.0~30g/10minの未変性ポリオレフィンをc重量部と
、
(D)成分:半芳香族ポリアミドをd重量部と
を含み、下記式:
53≦c/(b+c)×100≦70
21.7≦(b+c)/(a+b+c)×100≦40
1≦d/(a+b+c+d)×100≦20
を満たすポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂肪族ポリアミドが、ポリアミド6である
請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体である
請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を用いた回転成形用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項
4に記載の回転成形用ポリアミド樹脂組成物を用いた回転成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転成形に好適なポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
回転成形は、多品種少ロット製品を低コストで成形できることから、近年注目を浴びている。用いられる材料はポリエチレンがほとんどであり、その理由としては、ポリエチレンが熱劣化に対する安定性、流動性、および粉砕の容易性などの優れた特性を有することが挙げられる。一方で、高圧ガス容器など高圧気体を貯蔵する中空成形品用途の回転成形材料には、充填ガスの容器外への流出を防ぐため高いガスバリア性が求められるが、ポリエチレン単体ではこれを十分に満たすことが出来ない。このような背景のもと、高圧ガス容器、燃料タンク用途の回転成形材料として、ガスバリア性に優れたポリアミド樹脂での検討が盛んに行われている。
【0003】
しかしながら、高圧ガス容器、燃料タンク用途では、さらに、低温での耐衝撃性が求められる。そのため、ポリアミド樹脂に耐衝撃改良剤を配合することがこれまで検討されている。特許文献1には、ポリアミドAのアミノ末端基濃度に対するカルボキシ末端基濃度の比が1以上であるポリアミドA、ポリマー組成物の総量に対して0.001~1重量%の量のミクロタルカム、前記ポリマー組成物の総量に対して少なくとも1.0重量%の量の耐衝撃性改良剤、を含む、ポリマー組成物が記載されている。特許文献2には、ポリアミド50~99質量%、及び、特定の条件を満たす酸変性ポリオレフィン1~50質量%を含むポリアミド樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2013-532748号公報
【文献】国際公開第2017/094720号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のようにポリアミド樹脂に耐衝撃改良剤を配合すると、両者の化学反応により得られるポリアミド樹脂組成物の粘度が急激に上がってしまう。このようなポリアミド樹脂組成物を回転成形して得られた回転成形品の表面には粒子形状物が残りやすいなど表面性が悪く、回転成形用途としては不向きであった。特許文献2では、酸変性ポリオレフィンとして比較的粘度の低いものを用いることにより流動性を向上させているが、特に低温での耐衝撃性が低下してしまう問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、低温耐衝撃性と表面性に優れたポリアミド樹脂組成物、並びにそれを用いた回転成形用ポリアミド樹脂組成物及び回転成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(A)成分:JIS K6920に従い、96重量%硫酸、ポリマー濃度1重量%、25℃の条件下にて測定した相対粘度ηrが2.45以下の脂肪族ポリアミドをa重量部と、
(B)成分:ASTM D1505に従い測定した密度が0.895g/cm3以下の変性ポリオレフィンをb重量部と、
(C)成分:190℃、2.16kgの荷重で測定したMFR値が3.0~30g/10minの未変性ポリオレフィンをc重量部と、
(D)成分:半芳香族ポリアミドをd重量部と
を含み、下記式:
53≦c/(b+c)×100≦70
21.7≦(b+c)/(a+b+c)×100≦40
1≦d/(a+b+c+d)×100≦20
を満たすポリアミド樹脂組成物、並びにそれを用いた回転成形用ポリアミド樹脂組成物及び回転成形品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温耐衝撃性と表面性に優れたポリアミド樹脂組成物、並びにそれを用いた回転成形用ポリアミド樹脂組成物及び回転成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書は、(A)成分:JIS K6920に従い、96重量%硫酸、ポリマー濃度1重量%、25℃の条件下にて測定した相対粘度ηrが2.60未満の脂肪族ポリアミドをa重量部と、
(B)成分:ASTM D1505に従い測定した密度が0.895g/cm3以下の変性ポリオレフィンをb重量部と、
(C)成分:190℃、2.16kgの荷重で測定したMFR値が3.0~30g/10minの未変性ポリオレフィンをc重量部と
を含み、下記式:
50≦c/(b+c)×100≦70
10≦(b+c)/(a+b+c)×100≦40
を満たすポリアミド樹脂組成物、並びにそれを用いた回転成形用ポリアミド樹脂組成物及び回転成形品の発明を開示している。
【0010】
<(A)成分:脂肪族ポリアミド>
本発明において使用される脂肪族ポリアミドは、主鎖中にアミド結合(-CONH-)を有し、脂肪族ポリアミド構造単位であるラクタム、アミノカルボン酸、又は脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸を原料として、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合することにより得られる。
【0011】
ラクタムとしては、カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。アミノカルボン酸としては、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0012】
脂肪族ジアミンとしては、1,2-エタンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,15-ペンタデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン、1,17-ヘプタデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、1,19-ノナデカンジアミン、1,20-エイコサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0013】
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0014】
脂肪族ポリアミドとしては、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンスクシナミド(ポリアミド44)、ポリテトラメチレングルタミド(ポリアミド45)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリテトラメチレンスベラミド(ポリアミド48)、ポリテトラメチレンアゼラミド(ポリアミド49)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンスクシナミド(ポリアミド54)、ポリペンタメチレングルタミド(ポリアミド55)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリペンタメチレンスベラミド(ポリアミド58)、ポリペンタメチレンアゼラミド(ポリアミド59)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリヘキサメチレンスクシナミド(ポリアミド64)、ポリヘキサメチレングルタミド(ポリアミド65)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンスベラミド(ポリアミド68)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンテトラデカミド(ポリアミド614)、ポリヘキサメチレンヘキサデカミド(ポリアミド616)、ポリヘキサメチレンオクタデカミド(ポリアミド618)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンスベラミド(ポリアミド98)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンスベラミド(ポリアミド108)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンスベラミド(ポリアミド128)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)等の単独重合体や、これらを形成する原料単量体を数種用いた共重合体等が挙げられる。
【0015】
これらの中でも、成形時の熱安定性や成形加工性の観点から、ポリアミド6(単独重合体)又はポリアミド6を形成する原料単量体と他の原料単量体の共重合体が好ましく、ポリアミド6がより好ましい。
【0016】
脂肪族ポリアミドの製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0017】
脂肪族ポリアミドは、前記ポリアミド原料を、アミン類の存在下に、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合することにより製造される。あるいは、重合後、アミン類の存在下に、溶融混練することにより製造される。このように、アミン類は、重合時の任意の段階、あるいは、重合後、溶融混練時の任意の段階において添加できるが、重合時の段階で添加することが好ましい。
【0018】
上記アミン類としては、モノアミン、ジアミン、トリアミン、ポリアミンが挙げられる。また、アミン類の他に、上記の末端基濃度条件の範囲を外れない限り、必要に応じて、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等のカルボン酸類を添加してもよい。これら、アミン類、カルボン酸類は、同時に添加しても、別々に添加してもよい。また、下記例示のアミン類、カルボン酸類は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0019】
添加するモノアミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデシレンアミン、エイコシルアミン、ドコシルアミン等の脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン、ベンジルアミン、β-フエニルメチルアミン等の芳香族モノアミン、N,N-ジメチルアミン、N,N-ジエチルアミン、N,N-ジプロピルアミン、N,N-ジブチルアミン、N,N-ジヘキシルアミン、N,N-ジオクチルアミン等の対称第二アミン、N-メチル-N-エチルアミン、N-メチル-N-ブチルアミン、N-メチル-N-ドデシルアミン、N-メチル-N-オクタデシルアミン、N-エチル-N-ヘキサデシルアミン、N-エチル-N-オクタデシルアミン、N-プロピル-N-ヘキサデシルアミン、N-プロピル-N-ベンジルアミン等の混成第二アミンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
添加するジアミンの具体例としては、1,2-エタンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,15-ペンタデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン、1,17-ヘプタデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、5-アミノ-2,2,4-トリメチル-1-シクロペンタンメチルアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、2,5-ビス(アミノメチル)ノルボルナン、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、4,9-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0021】
添加するトリアミンの具体例としては、1,2,3-トリアミノプロパン、1,2,3-トリアミノ-2-メチルプロパン、1,2,4-トリアミノブタン、1,2,3,4-テトラミノブタン、1,3,5-トリアミノシクロヘキサン、1,2,4-トリアミノシクロヘキサン、1,2,3-トリアミノシクロヘキサン、1,2,4,5-テトラミノシクロヘキサン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、1,2,3-トリアミノベンゼン、1,2,4,5-テトラミノベンゼン、1,2,4-トリアミノナフタレン、2,5,7-トリアミノナフタレン、2,4,6-トリアミノピリジン、1,2,7,8-テトラミノナフタレン等、1,4,5,8-テトラミノナフタレンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0022】
添加するポリアミンは、一級アミノ基(-NH2)及び/又は二級アミノ基(-NH-)を複数有する化合物であればよく、例えば、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等が挙げられる。活性水素を備えたアミノ基は、ポリアミンの反応点である。
【0023】
ポリアルキレンイミンは、エチレンイミンやプロピレンイミン等のアルキレンイミンをイオン重合させる方法、或いは、アルキルオキサゾリンを重合させた後、該重合体を部分加水分解又は完全加水分解させる方法等で製造される。ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、或いは、エチレンジアミンと多官能化合物との反応物等が挙げられる。ポリビニルアミンは、例えば、N-ビニルホルムアミドを重合させてポリ(N-ビニルホルムアミド)とした後、該重合体を塩酸等の酸で部分加水分解又は完全加水分解することにより得られる。ポリアリルアミンは、一般に、アリルアミンモノマーの塩酸塩を重合させた後、塩酸を除去することにより得られる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリアルキレンイミンが好ましい。
【0024】
ポリアルキレンイミンとしては、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2-ブチレンイミン、2,3-ブチレンイミン、1,1-ジメチルエチレンイミン等の炭素原子数2以上8以下のアルキレンイミンの1種又は2種以上を常法により重合して得られる単独重合体や共重合体が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンイミンがより好ましい。ポリアルキレンイミンは、アルキレンイミンを原料として、これを開環重合させて得られる1級アミン、2級アミン、及び3級アミンを含む分岐型ポリアルキレンイミン、あるいはアルキルオキサゾリンを原料とし、これを重合させて得られる1級アミンと2級アミンのみを含む直鎖型ポリアルキレンイミン、三次元状に架橋された構造のいずれであってもよい。さらに、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、ジヘキサメチレントリアミン、アミノプロピルエチレンジアミン、ビスアミノプロピルエチレンジアミン等を含むものであってもよい。ポリアルキレンイミンは、通常、含まれる窒素原子上の活性水素原子の反応性に由来して、第3級アミノ基の他、活性水素原子をもつ第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)を有する。
【0025】
ポリアルキレンイミン中の窒素原子数は、特に制限はないが、4以上3,000であることが好ましく、8以上1,500以下であることがより好ましく、11以上500以下であることがさらに好ましい。また、ポリアルキレンイミンの数平均分子量は、100以上20,000以下であることが好ましく、200以上10,000以下であることがより好ましく、500以上8,000以下であることがさらに好ましい。
【0026】
一方、添加するカルボン酸類としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸等の脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイン酸、エチル安息香酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘキサデセン二酸、オクタデカン二酸、オクタデセン二酸、エイコサン二酸、エイコセン二酸、ドコサン二酸、ジグリコール酸、2,2,4-トリメチルアジピン酸、2,4,4-トリメチルアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、m-キシリレンジカルボン酸、p-キシリレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,3,5-ペンタントリカルボン酸、1,2,6-ヘキサントリカルボン酸、1,3,6-ヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、トリメシン酸等のトリカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0027】
また、脂肪族ポリアミドは、末端基濃度の異なる2種類以上のポリアミドの混合物でも構わない。この場合、ポリアミド混合物の末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度は、混合物を構成するポリアミドの末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度、及びその配合割合により決まる。
【0028】
本発明では、JIS K6920に準拠して、96重量%硫酸、ポリマー濃度1重量%、25℃の条件下にて測定した脂肪族ポリアミドの相対粘度ηrが、2.60未満であることが重要である。こうすることで、得られるポリアミド樹脂組成物の流動性を改善することができる。相対粘度ηrが2.60以上の脂肪族ポリアミドを用いた場合、得られるポリアミド樹脂組成物の流動性が低下し、それを用いた回転成形品の表面に粒子形状物が残りやすくなる。脂肪族ポリアミドの相対粘度ηrは、2.55以下であることが好ましく、2.45以下であることがより好ましく、2.35以下であることがさらに好ましく、2.25以下であることが特に好ましい。脂肪族ポリアミドの相対粘度ηrは、例えば、1.50以上でもよく、2.00以上でもよい。
【0029】
<(B)成分:変性ポリオレフィン>
本発明において使用される変性ポリオレフィンとして、酸変性ポリオレフィン、エポキシ変性ポリオレフィン、グリシジル変性ポリオレフィン等が挙げられる。このうち、特に酸変性ポリオレフィンが好ましい。酸変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸又はその酸無水物等により酸変性したものである。不飽和カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-無水ジカルボン酸等が挙げられる。中でも、無水マレイン酸又は無水イタコン酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。不飽和カルボン酸又はその酸無水物の代わりに、酸アミド、酸エステル等の誘導体を用いることもできる。
【0030】
変性前のポリオレフィンとしては、エチレン単独重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体等のポリエチレン;プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリプロピレンが挙げられる。エチレン-α-オレフィン共重合体又はプロピレン-α-オレフィン共重合体を構成するα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素原子数3~20のα-オレフィンなどが挙げられる。これらの中でも、エチレン単独重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体等のポリエチレンが好ましく、エチレン-α-オレフィン共重合体がより好ましく、エチレン-(1-ブテン)共重合体がさらに好ましい)。
【0031】
エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレン単位の含有量が20モル%を超えることが好ましい。プロピレン-α-オレフィン共重合体は、プロピレン単位の含有量が20モル%を超えることが好ましい。エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレン単位およびα-オレフィン成分単位の他に、少量のジエン成分単位及び/又は少量の芳香族成分単位を含有していても差し支えない。プロピレン-α-オレフィン共重合体は、エチレン単位およびα-オレフィン成分単位の他に、少量のジエン成分単位及び/又は少量の芳香族成分単位を含有していても差し支えない。
【0032】
エチレン-α-オレフィン共重合体又はプロピレン-α-オレフィン共重合体に含まれるジエン成分単位としては、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、2,5-ノルボナジエン等の非共役ジエン成分;ブタジエン、イソプレン、ピペリレンなどの共役ジエン成分等が挙げられる。エチレン-α-オレフィン共重合体又はプロピレン-α-オレフィン共重合体におけるジエン成分単位の含有量は、20モル%以下であることが好ましく、15モル%以下であることがより好ましい。
【0033】
エチレン-α-オレフィン共重合体又はプロピレン-α-オレフィン共重合体に含まれる芳香族成分単位としては、スチレン等が挙げられる。例えば、芳香族ビニル化合物共重合体及びその水素添加物が挙げられ、スチレン/エチレン-ブテン/スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン/エチレン-プロピレン/スチレンブロックコポリマー(SEPS)等が挙げられる。エチレン-α-オレフィン共重合体又はプロピレン-α-オレフィン共重合体における芳香族成分単位の含有量は、40重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、15重量%以下であることがさらに好ましい。
【0034】
本発明では、酸変性ポリオレフィンの密度が、0.895g/cm3以下であることが重要である。こうすることで、得られる回転成形品の低温耐衝撃性を改善することができる。密度が0.895g/cm3を超える酸変性ポリオレフィンを用いた場合、得られる回転成形品の低温耐衝撃性が低下してしまう。酸変性ポリオレフィンの密度は、0.885g/cm3以下であることが好ましく、0.880g/cm3以下であることがより好ましく、0.875g/cm3以下であることがさらに好ましい。酸変性ポリオレフィンの密度は、例えば0.845g/cm3以上でもよく、0.855g/cm3以上でもよい。
【0035】
<(C)成分:未変性ポリオレフィン>
本発明において使用される未変性ポリオレフィンは、前述の「<(B)成分:変性ポリオレフィン>」項で記載した変性前のポリオレフィンが挙げられる。これらの中でも、エチレン単独重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体等のポリエチレンが好ましく、エチレン単独重合体がより好ましい。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが挙げられる。
【0036】
本発明では、190℃、2.16kgの荷重で測定した未変性ポリオレフィンのMFR値が、3.0~30g/10minであることが重要である。こうすることで、得られる回転成形品の表面性及び低温耐衝撃性を両立することができる。上記MFR値が3.0g/10min未満の未変性ポリオレフィンを用いた場合、得られるポリアミド樹脂組成物の流動性が低下し、それを用いた回転成形品の表面に粒子形状物が残りやすくなる。上記MFR値が30g/10minを超える未変性ポリオレフィンを用いた場合、相分離した未変性ポリオレフィンによって得られる回転成形品の表面性が悪化し、またコア-シェル構造が形成できないため低温耐衝撃性が低下してしまう。未変性ポリオレフィンの上記MFR値は、3.3g/10min以上であることが好ましく、3.6g/10min以上であることがより好ましい。未変性ポリオレフィンの上記MFR値は、20g/10min以下であることが好ましく、15g/10min以下であることがより好ましく、10g/10min以下であることがさらに好ましく、5g/10min以下であることが特に好ましい。
【0037】
本発明では、ASTM D1505に従い測定した未変性ポリオレフィンの密度が、0.890g/cm3以上であることが好ましい。こうすることで、得られる回転成形品の剛性を維持することができる。上記密度が0.890g/cm3未満の未変性ポリオレフィンを用いた場合、得られる回転成形品の剛性が低下する場合がある。未変性ポリオレフィンの上記密度は、より好ましくは0.895g/cm3以上であり、特に好ましく0.900g/cm3以上である。未変性ポリオレフィンの上記密度は、例えば1.00g/cm3以下でもよく、0.950g/cm3以下でもよい。
【0038】
<(D)成分:半芳香族ポリアミド>
本発明において好ましく使用される半芳香族ポリアミド樹脂は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンの共重合体または脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンの共重合体である。半芳香族ポリアミド樹脂を用いることにより、耐熱性と低温耐衝撃性が向上する。これらの中でも、全ジアミン単位に対して、炭素原子数6以上13以下の脂肪族ジアミン単位を50モル%以上含むジアミン単位と、全ジカルボン酸単位に対して、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位及び/又ナフタレンジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位よりなる共重合体、あるいは、全ジアミン単位に対して、キシリレンジアミン単位及び/又はビス(アミノメチル)ナフタレン単位を50モル%以上含むジアミン単位と、全ジカルボン酸単位に対して、炭素原子数6以上13以下の脂肪族ジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位よりなる共重合体が好ましい。
【0039】
テレフタル酸単位、イソフタル酸単位及び/又ナフタレンジカルボン酸単位を含む半芳香族ポリアミドについて説明する。
【0040】
半芳香族ポリアミド中の炭素原子数6以上13以下の脂肪族ジアミン単位の含有量は、得られるポリアミド樹脂組成物の諸物性を十分に確保する観点から、全ジアミン単位に対して、50モル%以上であり、55モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。
【0041】
炭素原子数6以上13以下の脂肪族ジアミン単位としては、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン等から誘導される単位が挙げられる。炭素原子数が上記を満たす限り、1,1-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、1-エチル-1,4-ブタンジアミン、1,2-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、1,3-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、1,4-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、2,3-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4-ジエチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-ヘプタンジアミン、2,3-ジメチル-ヘプタンジアミン、2,4-ジメチル-ヘプタンジアミン、2,5-ジメチル-ヘプタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、3-メチル-1,8-オクタンジアミン、4-メチル-1,8-オクタンジアミン、1,3-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、1,4-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、2,2-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、2,4-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、3,3-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、3,4-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、4,4-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、4,5-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン、2-ブチル-1,8-オクタンジアミン、3-ブチル-1,8-オクタンジアミン等の分岐鎖状脂肪族ジアミンから誘導される単位を含有していても構わない。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0042】
上記炭素原子数6以上13以下の脂肪族ジアミン単位の中でも、得られる回転成形品の耐熱性の観点から、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジアミンから誘導される単位が好ましく、1,6-ヘキサジアミンから誘導される単位が好ましい。
【0043】
半芳香族ポリアミド中のジアミン単位は、本発明のポリアミド樹脂組成物の優れた諸特性を損なわない範囲内であれば、炭素原子数6以上13以下の脂肪族ジアミン単位以外の他のジアミン単位を含んでいてもよい。他のジアミン単位としては、1,2-エタンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン等の脂肪族ジアミンから誘導される単位、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、5-アミノ-2,2,4-トリメチル-1-シクロペンタンメチルアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、2,5-ビス(アミノメチル)ノルボルナン、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、4,9-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミンから誘導される単位、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,4-ビス(アミノメチル)ナフタレン、1,5-ビス(アミノメチル)ナフタレン、2,6-ビス(アミノメチル)ナフタレン、2,7-ビス(アミノメチル)ナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンから誘導される単位が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。これら他のジアミン単位の含有量は、全ジアミン単位に対して、50モル%以下であり、45モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。
【0044】
また、半芳香族ポリアミド中のテレフタル酸単位、イソフタル酸単位及び/又はナフタレンジカルボン酸単位の含有量は、得られるポリアミド樹脂組成物の諸物性を十分に確保する観点から、全ジカルボン酸単位に対して、50モル%以上であり、55モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。
【0045】
ナフタレンジカルボン酸単位としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸等から誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。上記ナフタレンジカルボン酸単位の中でも、経済性、入手の容易さを考慮して、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸から誘導される単位が好ましい。
【0046】
半芳香族ポリアミド中のジカルボン酸単位は、本発明のポリアミド樹脂組成物の優れた諸特性を損なわない範囲内であれば、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位及び/又はナフタレンジカルボン酸単位以外の他のジカルボン酸単位を含んでいてもよい。他のジカルボン酸単位としては、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタル酸、2,2-ジエチルコハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、2,2,4-トリメチルアジピン酸、2,4,4-トリメチルアジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸等の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸から誘導される単位、フタル酸、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸、1,4-フェニレンジオキシジ酢酸、4,4’-オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルプロパン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-トリフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。上記単位の中でも、芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が好ましい。これら他のジカルボン酸単位の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して、50モル%以下であり、45モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸を溶融成形が可能な範囲内で用いることもできる。
【0047】
半芳香族ポリアミドには、本発明のポリアミド樹脂組成物の優れた諸特性を損なわない範囲内であれば、ジカルボン酸単位及びジアミン単位以外のその他の単位を含んでいてもよい。その他の単位としては、カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等のラクタムから誘導される単位、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸、p-アミノメチル安息香酸等の芳香族アミノカルボン酸のアミノカルボン酸から誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。その他の単位の含有量は、全ジカルボン酸単位に基づいて、45モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、35モル%以下であることがさらに好ましい。
【0048】
半芳香族ポリアミドの具体例としては、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンナフタラミド(ポリアミド6N)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンイソフタラミド(ポリアミド9I)、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリ(2-メチルオクタメチレンテレフタラミド)(ポリアミドM8T)、ポリ(2-メチルオクタメチレンイソフタラミド)(ポリアミドM8I)、ポリ(2-メチルオクタメチレンナフタラミド)(ポリアミドM8N)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリトリメチルヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミドTMHI)、ポリトリメチルヘキサメチレンナフタラミド(ポリアミドTMHN)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド10I)、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリウンデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド11T)、ポリウンデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド11I)、ポリウンデカメチレンナフタラミド(ポリアミド11N)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド12I)、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)の単独重合体、及び/又はこれらポリアミドの原料単量体、並び/若しくは前記ポリアミド(A)の原料単量体を数種用いた共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0049】
これらの中でも、入手の容易さや、耐熱性や低温耐衝撃性などの諸物性を十分に確保する観点から、半芳香族ポリアミドとしては、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド)共重合体(ポリアミド6T/6I)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンアジパミド)共重合体(ポリアミド6T/66)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド6T/610)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド6T/612)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド/ヘキサメチレンアジパミド)共重合体(ポリアミド6T/6I/66)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/2-メチルペンタメチレンテレフタラミド)共重合体(ポリアミド6T/M5T)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/カプロアミド)共重合体(ポリアミド6T/6)が好ましく、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド)共重合体(ポリアミド6T/6I)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド/ヘキサメチレンアジパミド)共重合体(ポリアミド6T/6I/66)、やこれらの混合物がより好ましい。
【0050】
さらに、半芳香族ポリアミドの製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0051】
半芳香族ポリアミドを製造する際、触媒として、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、それらの塩又はエステル等を添加することができる。リン酸、亜リン酸、次亜リン酸の塩又はエステルとしては、例えば、リン酸、亜リン酸、又は次亜リン酸とカリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、アンチモン等の金属塩、リン酸、亜リン酸、又は次亜リン酸のアンモニウム塩、リン酸、亜リン酸、又は次亜リン酸のエチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、へキシルエステル、イソデシルエステル、デシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0052】
キシリレンジアミン単位及び/又はビス(アミノメチル)ナフタレン単位を含む半芳香族ポリアミドについて説明する。
【0053】
半芳香族ポリアミド中のキシリレンジアミン単位及び/又はビス(アミノメチル)ナフタレン単位の含有量は、得られるポリアミド樹脂組成物の諸物性を十分に確保する観点から、全ジアミン単位に対して、50モル%以上であり、60モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0054】
キシリレンジアミン単位としては、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミンから誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。前記キシリレンジアミン単位の中でも、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミンから誘導される単位が好ましい。
【0055】
ビス(アミノメチル)ナフタレン単位としては、1,4-ビス(アミノメチル)ナフタレン、1,5-ビス(アミノメチル)ナフタレン、2,6-ビス(アミノメチル)ナフタレン、2,7-ビス(アミノメチル)ナフタレン等から誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。前記ビス(アミノメチル)ナフタレン単位の中でも、1,5-ビス(アミノメチル)ナフタレン、2,6-ビス(アミノメチル)ナフタレンから誘導される単位が好ましい。
【0056】
半芳香族ポリアミド中のジアミン単位は、本発明のポリアミド樹脂組成物の優れた諸特性を損なわない範囲内であれば、キシリレンジアミン単位及び/又はビス(アミノメチル)ナフタレン単位以外の他のジアミン単位を含んでいてもよい。他のジアミン単位としては、1,2-エタンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,15-ペンタデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン、1,17-ヘプタデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、1,19-ノナデカンジアミン、1,20-エイコサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン等の脂肪族ジアミンから誘導される単位、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、5-アミノ-2,2,4-トリメチル-1-シクロペンタンメチルアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、2,5-ビス(アミノメチル)ノルボルナン、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、4,9-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミンから誘導される単位、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンから誘導される単位が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。これら他のジアミン単位の含有量は、全ジアミン単位に対して、50モル%以下であり、40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。
【0057】
また、半芳香族ポリアミド中の炭素原子数6以上13以下の脂肪族ジカルボン酸単位の含有量は、得られるポリアミド樹脂組成物の諸物性を十分に確保する観点から、全ジカルボン酸単位に対して、50モル%以上であり、60モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0058】
炭素原子数6以上13以下の脂肪族ジカルボン酸単位としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸等から誘導される単位が挙げられる。炭素原子数が上記を満たす限り、メチルエチルマロン酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルコハク酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、2-メチルアジピン酸、2,2-ジメチルグルタル酸、2,2-ジエチルコハク酸、2,2,4-トリメチルアジピン酸、2,4,4-トリメチルアジピン酸、2-ブチルスベリン酸等の分岐鎖状脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を含有していても構わない。これらは1種又は2種以上を用いることができる。前記炭素原子数6以上13以下の脂肪族ジカルボン酸単位の中でも、得られる回転成形品の耐熱性のバランスの観点から、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸から誘導される単位が好ましく、低温耐衝撃性を十分に確保する観点から、アジピン酸から誘導される単位が好ましい。
【0059】
半芳香族ポリアミド中のジカルボン酸単位は、本発明のポリアミド樹脂組成物の優れた諸特性を損なわない範囲内であれば、炭素原子数6以上13以下の脂肪族ジカルボン酸単位以外の他のジカルボン酸単位を含んでいてもよい。他のジカルボン酸単位としては、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、2-メチルアジピン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸等の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸から誘導される単位、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸、1,4-フェニレンジオキシジ酢酸、4,4’-オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルプロパン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-トリフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。上記単位の中でも、芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が好ましい。これら他のジカルボン酸単位の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して、50モル%以下であり、40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸を溶融成形が可能な範囲内で用いることもできる。
【0060】
半芳香族ポリアミドには、本発明のポリアミド樹脂組成物の優れた諸特性を損なわない範囲内であれば、ジカルボン酸単位及びジアミン単位以外のその他の単位を含んでいてもよい。その他の単位としては、カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等のラクタムから誘導される単位、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸、p-アミノメチル安息香酸等の芳香族アミノカルボン酸のアミノカルボン酸から誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。その他の単位の含有量は、全ジカルボン酸単位に基づいて、30モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
【0061】
半芳香族ポリアミドの具体例としては、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドPXD6)、ポリパラキシリレンスベラミド(ポリアミドPXD8)、ポリパラキシリレンアゼラミド(ポリアミドPXD9)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)、ポリパラキシリレンドデカミド(ポリアミドPXD12)、ポリ(2,6-ナフタレンジメチレンアジパミド)(ポリアミド2,6-BAN6)、ポリ(2,6-ナフタレンジメチレンスベラミド)(ポリアミド2,6-BAN8)、ポリ(2,6-ナフタレンジメチレンアゼラミド)(ポリアミド2,6-BAN9)、ポリ(2,6-ナフタレンジメチレンセバカミド)(ポリアミド2,6-BAN10)、ポリ(2,6-ナフタレンジメチレンドデカミド)(ポリアミド2,6-BAN12)の単独重合体、及び/又はこれらポリアミドの原料単量体を数種用いた共重合体、並びに/若しくはポリメタキシリレンテレフタラミド(ポリアミドMXDT)、ポリメタキシリレンイソフタラミド(ポリアミドMXDI)、ポリメタキシリレンナフタラミド(ポリアミドMXDN)、ポリパラキシリレンテレフタラミド(ポリアミドPXDT)、ポリパラキシリレンイソフタラミド(ポリアミドPXDI)、ポリパラキシリレンナフタラミド(ポリアミドPXDN)、ポリ(2,6-ナフタレンジメチレンテレフタラミド)(ポリアミド2,6-BANT)、ポリ(2,6-ナフタレンジメチレンイソフタラミド)(ポリアミド2,6-BANI)、ポリ(2,6-ナフタレンジメチレンナフタラミド)(ポリアミド2,6-BANN)等を形成する原料単量体を数種用いた共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0062】
これらの中でも、耐熱性や低温耐衝撃性などの諸物性を十分に確保する観点から、半芳香族ポリアミドとしては、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドPXD6)、ポリ(メタキシリレンアジパミド/メタキシリレンテレフタラミド)共重合体(ポリアミドMXD6/MXDT)、ポリ(メタキシリレンアジパミド/メタキシリレンイソフタラミド)共重合体(ポリアミドMXD6/MXDI)、ポリ(メタキシリレンアジパミド/メタキシリレンテレフタラミド/メタキシリレンイソフタラミド)共重合体(ポリアミドMXD6/MXDT/MXDI)、ポリ(パラキシリレンアジパミド/パラキシリレンテレフタラミド)共重合体(ポリアミドPXD6/PXDT)、ポリ(パラキシリレンアジパミド/パラキシリレンイソフタラミド)共重合体(ポリアミドPXD6/PXDI)、ポリ(パラキシリレンアジパミド/パラキシリレンテレフタラミド/パラキシリレンイソフタラミド)共重合体(ポリアミドPXD6/PXDT/PXDI)、ポリ(メタキシリレンアジパミド/パラキシリレンアジパミド)共重合体(ポリアミドMXD6/PXD6)、ポリ(メタキシリレンアジパミド/パラキシリレンアジパミド/メタキシリレンテレフタラミド/パラキシリレンテレフタラミド)共重合体(ポリアミドMXD6/PXD6/MXDT/PXDT)、ポリ(メタキシリレンアジパミド/パラキシリレンアジパミド/メタキシリレンイソフタラミド/パラキシリレンイソフタラミド)共重合体(ポリアミドMXD6/PXD6/MXDI/PXDI)、ポリ(メタキシリレンアジパミド/パラキシリレンアジパミド/メタキシリレンテレフタラミド/パラキシリレンテレフタラミド/メタキシリレンイソフタラミド/パラキシリレンイソフタラミド)共重合体(ポリアミドMXD6/PXD6/MXDT/PXDT/MXDI/PXDI)やこれらの混合物がより好ましい。
【0063】
半芳香族ポリアミドには、回転成形時の安定性を高めるため、あるいは着色を防止するためにリン化合物を添加することができる。リン化合物としては、次亜リン酸のアルカリ土類金属塩、亜リン酸のアルカリ金属塩、亜リン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属塩、ピロリン酸のアルカリ金属塩、ピロリン酸のアルカリ土類金属塩、メタリン酸のアルカリ金属塩、及びメタリン酸のアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0064】
具体的には、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸水素カリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸水素リチウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸水素マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素二マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素二カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸二水素リチウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸リチウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸マグネシウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸リチウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウムが好ましく、次亜リン酸カルシウムがより好ましい。なお、これらのリン化合物は水和物であってもよい。
【0065】
リン化合物の含有量は、着色防止効果を十分に確保し、ゲルの発生を抑制する観点から、半芳香族ポリアミド100質量部に対して、リン原子濃度換算で0.03質量部以上0.30質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上0.20質量部以下であることがより好ましく、0.07質量部以上0.15質量部以下であることがさらに好ましい。
【0066】
これらのリン化合物の添加方法は、半芳香族ポリアミドの原料であるナイロン塩水溶液、ジアミンもしくはジカルボン酸に添加する方法、溶融状態にあるジカルボン酸に添加する方法、溶融重合中に添加する方法等が挙げられるが、半芳香族ポリアミド中に均一に分散させることが可能であれば、いかなる方法でも良く、これらに限定されるものではない。
【0067】
半芳香族ポリアミドには、リン化合物と併用して、アルカリ金属化合物を添加することができる。重縮合中のポリアミドの着色を防止するためにはリン化合物を十分な量存在させる必要があるが、場合によってはポリアミドのゲル化を招く恐れがあるため、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物を共存させることが好ましい。アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属酢酸塩、及びアルカリ土類金属酢酸塩が挙げられ、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩が好ましい。
【0068】
アルカリ金属化合物としては、具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、経済性の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが好ましく、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが好ましい。
【0069】
半芳香族ポリアミドの重縮合系内にアルカリ金属化合物を添加する場合、該化合物のモル数を前記リン化合物のリン原子換算モル数で除した値は、アミド化反応の促進と抑制のバランスの観点から、0.3以上1.0以下であることが好ましく、0.40以上0.95以下であることがより好ましく、0.5以上0.9以下であることがさらに好ましい。
【0070】
これらのアルカリ金属化合物の添加方法は、半芳香族ポリアミド(D)の原料であるナイロン塩水溶液、ジアミンもしくはジカルボン酸に添加する方法、溶融状態にあるジカルボン酸に添加する方法、溶融重合中に添加する方法等が挙げられるが、半芳香族ポリアミド(D)中に均一に分散させることが可能であればいかなる方法でも良く、これらに限定されるものではない。
【0071】
半芳香族ポリアミドの製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。半芳香族ポリアミドの製造方法としては、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法があり、これらの方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して半芳香族ポリアミドを製造することができる。これらの製造方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができ、これらの中でも、溶融重合法が好ましい。例えば、キシリレンジアミン及び/又はビス(アミノメチル)ナフタレンと炭素原子数8以上13以下の脂肪族ジカルボン酸からなるナイロン塩を水の存在下で、加圧、昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法により製造される。また、キシリレンジアミン及び/又はビス(アミノメチル)ナフタレンを溶融状態の炭素原子数8以上13以下の脂肪族ジカルボン酸に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を均一な液状状態に保つために、キシリレンジアミン及び/又はビス(アミノメチル)ナフタレンを炭素原子数8以上13以下の脂肪族ジカルボン酸に連続的に加え、その間、反応系の温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点以上になるように反応系を昇温しつつ、重合が進められる。また、半芳香族ポリアミド)は、溶融重合法により製造された後に、固相重合を行っても良い。
【0072】
ここから、テレフタル酸単位及び/又ナフタレンジカルボン酸単位を含む半芳香族ポリアミドとキシリレンジアミン単位及び/又はビス(アミノメチル)ナフタレン単位を含む半芳香族ポリアミドについて説明する。
【0073】
JIS K-6920に準拠して、96重量%硫酸、ポリマー濃度1重量%、25℃の条件下にて測定した半芳香族ポリアミド(D)の相対粘度は、得られるポリアミド樹脂組成物の機械的性質を確保することと、溶融時の粘度を適正範囲にしてポリアミド樹脂組成物の望ましい成形性を確保する観点から、1.0以上5.0以下であることが好ましく、特に相対粘度が低い方が好ましい。
【0074】
なお、半芳香族ポリアミドの末端基の種類及びその濃度や分子量分布に特別の制約は無い。分子量調節や成形加工時の溶融安定化のため、モノアミン、ジアミン、ポリアミン、モノカルボン酸、ジカルボン酸のうちの1種あるいは2種以上を適宜組合せて添加することができる。例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン等の脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン等の脂環式ジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等のポリアミンや酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸、アジピン酸、ピメリン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これら分子量調節剤の使用量は分子量調節剤の反応性や重合条件により異なるが、最終的に得ようとするポリアミドの相対粘度が前記の範囲になるように適宜決められる。
【0075】
回転成形時の安定性を考慮すると、半芳香族ポリアミドの分子鎖の末端が末端封止剤により封止されていることが好ましく、末端基の10%以上が封止されていることがより好ましく、末端基の20%以上が封止されていることがさらに好ましい。末端封止剤としては、ポリアミド末端のアミノ基又はカルボキシル基と反応性を有する単官能性の化合物であれば特に制限はないが、反応性、封止末端の安定性等の観点から、モノカルボン酸又はモノアミンが好ましく、取扱いの容易さ等の観点から、モノカルボン酸がより好ましい。その他、無水フタル酸等の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類等も使用できる。
【0076】
末端封止剤として使用されるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、前記の脂肪族モノカルボン酸、脂環式モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、反応性、封止末端の安定性、価格等の観点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が好ましい。末端封止剤として使用されるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、前記の脂肪族モノアミン、脂環式モノアミン、芳香族モノアミン等が挙げられる。これらの中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格等の観点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが好ましい。
【0077】
末端封止剤の使用量は、用いる末端封止剤の反応性、沸点、反応装置、反応条件等を考慮して、適宜選択することができる。重合度の調整の観点から、原料成分であるジカルボン酸とジアミンの総モル数に対して0.1モル%以上15モル%以下であることが好ましい。
【0078】
<ポリアミド樹脂組成物>
本発明に係るポリアミド樹脂組成物は、(A)成分であるポリアミド樹脂と、(B)成分である酸変性ポリオレフィンと、(C)成分である未変性ポリオレフィンとを含む。以下、各成分の配合割合の説明において、(A)成分の配合量をa重量部とし、(B)成分の配合量をb重量部とし、(C)成分の配合量をc重量部とする。
【0079】
本発明では、(B)成分と(C)成分の合計に対する(C)成分の割合(%)に関し、以下の式を満たすことが重要である。
50≦c/(b+c)×100≦70
この式を満たすことで、(B)成分と(C)成分がコア-シェル構造を形成するため、得られる回転成形品の表面性及び低温耐衝撃性を両立することができる。c/(b+c)×100が50未満であると、得られるポリアミド樹脂組成物の低温耐衝撃性が低下する。c/(b+c)×100が70を超えると、相分離した未変性ポリオレフィンによって回転成形品の表面性が悪化する。c/(b+c)×100は、53以上であることが好ましく、56以上であることがより好ましい。c/(b+c)×100は、68以下であることが好ましく、66以下であることがより好ましい。
【0080】
本発明では、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計に対する(B)成分と(C)成分の合計の割合(%)に関し、以下の式を満たすことが重要である。
10≦(b+c)/(a+b+c)×100≦40
この式を満たすことで、得られる回転成形品の表面性及び低温耐衝撃性を両立することができる。(b+c)/(a+b+c)×100が10未満であると、得られる回転成形品の低温耐衝撃性が低下してしまう。(b+c)/(a+b+c)×100が40を超えると、得られる回転成形品の表面に粒子形状物が残りやすくなる。c(b+c)/(a+b+c)×100は、15以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。(b+c)/(a+b+c)×100は、37以下であることが好ましく、34以下であることがより好ましい。
【0081】
本発明に係るポリアミド樹脂組成物は、さらに、(D)成分である半芳香族ポリアミドを含むことが好ましい。そして、(D)成分の配合量をd重量部としたとき、以下の式を満たすことが好ましい。
1≦d/(a+b+c+d)×100≦20
この式を満たすことで、得られるポリアミド樹脂組成物の耐熱性を改善することができる。d/(a+b+c+d)×100は、3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。d/(a+b+c+d)×100は、18以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましい。
【0082】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、得られる回転成形品の特性を損なわない範囲内で、通常配合される各種の添加剤及び改質剤、例えば、耐熱剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、フィラー、粘着性付与剤、シール性改良剤、防曇剤、結晶核剤、離型剤、可塑剤、架橋剤、発泡剤、着色剤(顔料、染料等)、耐屈曲疲労性改良材、添着剤等を添加することができる。
【0083】
耐熱剤としては、フェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等を挙げることができる。耐熱剤は、フェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、オルト位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤及びオルト位にt-ブチル基を有するフェノールの亜リン酸エステル系酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。耐熱剤の市販品としては、例えば、イルガノックス(商標)シリーズ、スミライザー(商標)シリーズ、アデカスタブ(商標)シリーズ、イルガフォス(商標)シリーズ等が挙げられる。
【0084】
フェノール系酸化防止剤として具体的には、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナムアミド、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等を挙げることができる。チオエーテル系酸化防止剤として具体的には、ジステアリル-3,3-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ジドデシル(3,3’-チオジプロピオネート)等を挙げることができる。リン系酸化防止剤として具体的には、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエルスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-4,4-ビフィニルジホスフィンを主成分とするビフィニル、三塩化リン及び2,4-ジ-tert-ブチルフェノールの反応生成物等を挙げることができる。これら耐熱剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
耐熱剤の含有量としては、ポリアミド樹脂組成物100質量部に対し0.01重量部以上1.50重量部以下含むことが好ましい。離型剤の含有量としては、ポリアミド樹脂組成物100質量部に対し0.01重量部以上0.60重量部以下含むことが好ましい。帯電防止剤の含有量としては、ポリアミド樹脂組成物100質量部に対し0.01重量部以上0.20重量部以下含むことが好ましい。添着剤の含有量としては、ポリアミド樹脂組成物100質量部に対し0.01重量部以上0.20重量部以下含むことが好ましい。
【0086】
<回転成形用ポリアミド樹脂組成物及び回転成形品>
本発明に係る回転成形用ポリアミド樹脂組成物は、上記のポリアミド樹脂組成物を用いたものである。本発明に係る回転成形品は、上記の回転成形用ポリアミド樹脂組成物を用いたものである。回転成形法による回転成形用ポリアミド樹脂組成物の成形は、以下の方法で実施することができる。
【0087】
まず、金型を1軸もしくは多軸に回転、反転もしくは振り子運動が可能な公知の回転成形機に取付け、この金型内に回転成形用ポリアミド樹脂組成物および核剤を均一に混合した粉末あるいは粉末とペレットとの混合物を投入する。そして、金型内面の温度を使用する回転成形用ポリアミド樹脂組成物の(融点+5)~(融点+80)℃の間の温度に加熱し、この温度で回転成形用ポリアミド樹脂組成物を溶融しながら、賦形させる。その後、金型を回転成形用ポリアミド樹脂組成物のガラス転移温度~(融点-10)℃の間の温度で冷却して回転成形品を完全に冷却固化させてから、金型より回転成形品を取出すという工程で行われる。冷却時間は、回転成形品の厚みによって異なり、数分~数時間の範囲となる。回転成形の際、回転成形品の着色や劣化を防ぐため、金型内が実質的に無酸素状態になるように、窒素などの不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。また、回転成形法でポリアミド樹脂組成物を金型内へ入れるとき、回転成形用ポリアミド樹脂組成物を溶融状態にして入れることも可能である。
【0088】
得られた回転成形品は、高圧ガス容器や燃料タンク等に好適である。
【実施例】
【0089】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0090】
<実施例1>
ポリアミド6(PA6、宇部興産製、商品名:1011FB、ηr=2.20)68.8重量部と、無水マレイン酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体(MAH-PEAO、三井化学製、商品名:タフマーMH5020、密度=0.866)10重量部と、未変性ポリエチレン(PE、プライムポリマー製、商品名:エボリューSP0540、MFR値=3.8)13.2重量部と、半芳香族ポリアミド(半芳香族PA、三井・デュポンポリケミカル製、商品名:シーラーPA3426)8.0重量部と、フェノール系酸化防止剤(オルト位にt-ブチル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.50重量部と、リン系酸化防止剤(オルト位にt-ブチル基を有するフェノールの亜リン酸エステル系酸化防止剤)0.50重量部と、離型剤0.10重量部と、帯電防止剤0.10重量部と、添着Oil0.10重量部とをドライブレンドした。その後、Werner&Pfleiderer製の二軸混練機(商品名:ZSK32Mc+)で溶融混練することで、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットをシリンダー温度270℃、金型温度80℃で射出成形し、各種試験片を製造し、物性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0091】
<実施例2~5、参考例1、比較例1~6>
(A)成分の種類及び/又は(A)~(D)成分の配合比を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。なお、実施例3~5及び参考例1では、(A)成分として実施例1とは異なるポリアミド6(PA6、宇部興産製、商品名:1013B、ηr=2.45)を使用した。比較例3では、(A)成分の代わりに、(A)成分の条件を満たさない(A’)成分として、ポリアミド6(PA6、宇部興産製、商品名:1015B、ηr=2.60)を使用した。比較例4~5では、(B)成分の代わりに、(B)成分の条件を満たさない(B’)成分として、無水マレイン酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体(MAH-PEAO、三井化学製、商品名:タフマーMA9015、密度=0.896)又はマレイン酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体(MA-PEAO、三井化学製、商品名:アドマーNB550、密度=0.920)を使用した。比較例6では、(C)成分の代わりに、(C)成分の条件を満たさない(C’)成分として、超高流動ポリエチレン(PE、プライムポリマー製、商品名:NEO-ZEX40300J、MFR値=36)を使用した。
【0092】
<流動性評価>
流動性の指標として、キャピラリーレオメーター(東洋精機製、商品名:Capilograph 1D)を用いて、250℃、みかけ剪断速度365[1/sec]の条件で、みかけ粘度ηaを測定し、以下のように評価した。
◎:250未満
○:250~450
×:450超
【0093】
<表面性評価>
表面性の指標として、290℃に設定したホットプレート上にペレットを冷凍粉砕した樹脂粉末を規定量入れたSUS製円筒容器を乗せ、空気下で5分間加熱後取り出すことで得られる成形品の表面を目視にて観察し、以下のように評価した。
◎:表面に凹凸なし
○:表面に凹凸あるものの滑らか
×:表面に凹凸あり、かつ加熱前の粒子形状物が残るなど表面性が悪い
【0094】
<低温耐衝撃性評価>
低温耐衝撃性の指標として、ISO 179/1eAに準じて-60℃でのノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定し、以下のように評価した。
◎:12kJ/m2超
○:8~12kJ/m2
×:8kJ/m2未満
【0095】
<機械物性評価>
低温耐衝撃性の指標として、ISO 527-1,2(引張試験)に準じて23℃での引張破壊呼びひずみを測定し、以下のように評価した。
◎:250%超
○:150~250%
×:150%未満
【0096】
<耐熱性評価>
耐熱性の指標として、得られたペレットをシリンダー温度270℃、金型温度80℃で射出成形して得た試験片を、空気下200℃に設定したオーブン中で6時間処理した際のΔEを測定した。
【0097】
【0098】
以上のように、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を所定の割合で含むポリアミド樹脂組成物は、低温耐衝撃性と表面性に優れることが分かる(実施例1~5及び参考例1)。