(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
H01R 12/51 20110101AFI20220830BHJP
H01R 13/46 20060101ALI20220830BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H01R12/51
H01R13/46 301Z
H01R13/52 301A
(21)【出願番号】P 2019115274
(22)【出願日】2019-06-21
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 健司
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 利一
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-41725(JP,A)
【文献】特開2007-234429(JP,A)
【文献】実開平3-15483(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
H01R 13/40-13/533
H01R 24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口部が形成され、下面が開放されたケースと、
L字形の端子金具と、前記開口部に組み付けられるハウジングとを有する基板用コネクタとを備え、
前記端子金具は、
前後方向に延びる貫通部と、
前記貫通部の後端から下方へ延出し、前記ケース内に収容される基板接続部とを有し、
前記ハウジングは、
前記貫通部を貫通させた状態で保持し、前記開口部に対し後方から取り付けられる端子保持部材と、
前記端子保持部材とは別体部品であり、前記開口部に対し前方から取り付けられて前記貫通部の前端部を包囲する保護部材とを有しているコネクタ装置。
【請求項2】
前記ケースには、前記開口部の内周面の一部からケース内に突出した受け部が形成され、
前記端子保持部材の外周面には、前記端子保持部材が前記開口部に取り付けられたときに前記受け部の前方側に重なる抜止め部が形成されている請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項3】
前記保護部材に、前記受け部との間で前記抜止め部を前後方向に挟み付ける押え部が形成されている請求項2に記載のコネクタ装置。
【請求項4】
前記保護部材の外周面と前記開口部の内周面との間には、シール部材が取り付けられている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前面に方形の開口部を有するケースと、開口部に取り付けられる基板用コネクタとを有するコネクタ装置が開示されている。基板用コネクタは、ハウジングと、ハウジングに前後方向に貫通した状態で取り付けられたL字形の端子金具とを有する。端子金具は、ケース内において下向きに延出する基板接続部を有している。基板接続部の下端部は、開口部よりも下方に位置し、回路基板に接続される。ケースは、下面が開放されたケース上蓋と、ケース上蓋の下面の開放部を塞ぐケース下蓋とから構成されている。方形の開口部のうち上縁部と左右両側縁部はケース上蓋に形成され、開口部の下縁部はケース下蓋に形成されている。
【0003】
基板用コネクタをケースに組み付ける際には、ケース上蓋とケース下蓋を分離して開口部を下方へ開放した形態にしておき、基板用コネクタをケース上蓋の下方から開口部に嵌合する。その後、ケース下蓋をケース上蓋に合体させ、開口部に基板用コネクタを嵌合した状態に保持する。この構造によれば、基板接続部の下端部が開口部より下方に位置していても、基板用コネクタをケースに組み付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のコネクタ装置においてケースが金属製である場合は、ケース下蓋を用いず、ケース上蓋の下面の開放部を回路基板で閉塞する構造にすると、軽量化を図ることができる。しかし、ケース下蓋を設けないと、開口部が全周に亘って繋がった形態となる。そのため、ケースの前方から基板用コネクタを開口部に組み付けようとすると、基板接続部の下端部が、開口部の開口縁部と干渉して損傷するおそれがある。
【0006】
尚、基板接続部と開口縁部との干渉を回避する手段としては、基板用コネクタを、ケースの下面の開放部からケース内に挿入し、開口部に嵌合する構造が考えられる。しかし、基板用コネクタのフード部をケースの前方へ突出させる形態を成立させようとすると、基板用コネクタを一時的に収容するためのスペースをケース内に確保しけなければならず、ケースが大型化するという新たな問題が生じる。さらには、ケースの内側から基板用コネクタを開口部にボルト締めして固定する必要があるが、ケース内でドライバー等の工具で締結作業を行うのは非常に難しい。したがって、基板用コネクタをケースの下面の開放部から組み付ける方法は採用することは困難である。
【0007】
本開示のコネクタ装置は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子金具の損傷を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のコネクタ装置は、前面に開口部が形成され、下面が開放されたケースと、L字形の端子金具と、前記開口部に組み付けられるハウジングとを有する基板用コネクタとを備え、前記端子金具は、前後方向に延びる貫通部と、前記貫通部の後端から下方へ延出し、前記ケース内に収容される基板接続部とを有し、前記ハウジングは、前記貫通部を貫通させた状態で保持し、前記開口部に対し後方から取り付けられる端子保持部材と、前記端子保持部材とは別体部品であり、前記開口部に対し前方から取り付けられて前記貫通部の前端部を包囲する保護部材とを有している。
【発明の効果】
【0009】
端子金具の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】
ケースに対する端子保持部材の組付け過程をあらわす側断面図である。
【
図4】
ケースに対する端子保持部材の組付け過程をあらわす正面図である。
【
図5】端子保持部材を
ケースに対して正規位置に組み付けた状態をあらわす側断面図である。
【
図6】端子保持部材を
ケースに対して正規位置に組み付けた状態をあらわす正面図である。
【
図7】
ケースに基板用コネクタを組み付けた状態をあらわす側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のコネクタ装置は、
(1)前面に開口部が形成され、下面が開放されたケースと、L字形の端子金具と、前記開口部に組み付けられるハウジングとを有する基板用コネクタとを備え、前記端子金具は、前後方向に延びる貫通部と、前記貫通部の後端から下方へ延出し、前記ケース内に収容される基板接続部とを有し、前記ハウジングは、前記貫通部を貫通させた状態で保持し、前記開口部に対し後方から取り付けられる端子保持部材と、前記端子保持部材とは別体部品であり、前記開口部に対し前方から取り付けられて前記貫通部の前端部を包囲する保護部材とを有している。
【0012】
本開示の構成によれば、基板用コネクタをケースに組み付ける際には、端子保持部材から分離した状態の保護部材を、ケースの前方から開口部に取り付け、端子保持部材をケースの下面の開口を通して開口部に取り付ける。基板用コネクタの組付けの過程において、端子保持部材の後方に位置する基板接続部を、開口部に通す必要がない。したがって、本開示のコネクタ装置は、端子金具の損傷を防止することができる。
【0013】
(2)前記ケースには、前記開口部の内周面の一部からケース内に突出した受け部が形成され、前記端子保持部材の外周面には、前記端子保持部材が前記開口部に取り付けられたときに前記受け部の前方側に重なる抜止め部が形成されていることが好ましい。
この構成によれば、端子保持部材を開口部に取り付けた状態では、抜止め部が受け部の前方側に当接することにより、端子保持部材が開口部に対して後方へ離脱することを防止できる。
【0014】
(3)(2)において、前記保護部材に、前記受け部との間で前記抜止め部を前後方向に挟み付ける押え部が形成されていることが好ましい。
この構成によれば、保護部材をケースに取り付けると、抜止め部が押え部と受け部との間で挟み付けられる。これにより、端子保持部材をケースに固定することができる。
【0015】
(4)前記保護部材の外周面と前記開口部の内周面との間には、シール部材が取り付けられていることが好ましい。この構成によれば、開口部を液密状にシールすることができる。端子保持部材の外周にシール部材を設ける必要がないので、端子保持部材を開口部内で上下方向や左右方向へ変位させることが可能となり、端子保持部材の形状の設計において開口部への取付け易さを優先することができる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示のコネクタ装置Aを具体化した実施例1を、
図1~
図7を参照して説明する。本実施例1のコネクタ装置Aは、金属製のケース10と、複数の部品からなる基板用コネクタ30とを組み付けて構成されている。
図7に示すように、コネクタ装置Aには回路基板Pが取り付けられるようになっている。本実施例1において、前後の方向については、
図3,5,7における左方を前方と定義する。上下の方向については、
図1~7にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、
図4,6にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。
【0017】
ケース10は、前壁部11と上壁部12と左右両側壁部13と後壁部14とを有し、下面の全領域が開放された箱形をなす。ケース10の下面の開放部15は回路基板Pによって閉塞されるようになっている。前壁部11の左右両端部は、一対の取付部16として機能する。取付部16の前面には、軸線を前後方向に向けた雌ネジ孔17が形成されている。
【0018】
ケース10には、ケース10の内部空間とケース10の前方の外部空間とを連通させる開口部18が形成されている。開口部18は、前壁部11のうち左右両取付部16の間の広い領域を方形に開口させた形態である。換言すると、開口部18は前壁部11を前後方向に貫通させた形態である。開口部18は、上縁部19と、上縁部19の左右両端から下方へ延出した左右両側縁部20と、左右両側縁部20の下端同士を連結する下縁部21とを有する。開口部18の開口縁部は全周に亘って切れ目なく繋がっている。
【0019】
開口部18の内周面には、複数の受け部22,23が形成されている。上縁部19の下面(内面)には、下向きに突出する左右一対の上縁側受け部22(請求項に記載の受け部)が形成されている。左右両側縁部20の側面(内面)には、それぞれ、上下に間隔を空けた一対ずつの側縁側受け部23(請求項に記載の受け部)が形成されている。これらの受け部22,23は、開口部18の内周面における後端部に配されている。開口部18の内周面のうち受け部22,23よりも前方の領域は、シール面24として機能する。
【0020】
基板用コネクタ30は、合成樹脂製のハウジング31と、金属製の複数の端子金具50とを組み付けて構成されている。ハウジング31は、端子保持部材32と、端子保持部材32とは別体部品である保護部材38とを備えて構成されている。端子保持部材32は、板厚方向を前後方向に向けた平板状の本体部33と、上面部34と、左右両側面部35とを有する。上面部34は、本体部33の上縁から後方へ水平に(本体部33と直角に)延出した形態である。左右両側面部35は、本体部33の左右両側縁から後方へ直角に延出した形態であり、上面部34の左右両側縁に対し直角に連なっている。つまり、端子保持部材32は、後面と下面が開放された箱状をなしている。
【0021】
上面部34の外面(上面)における後端部には、上方へ直角に壁状に突出した形態の左右一対の上面側抜止め部36(請求項に記載の抜止め部)が形成されている。左右両側面部35の外面(外側面)における後端部には、それぞれ、外側方へ直角に壁状に突出した形態の上下一対ずつの側面側抜止め部37(請求項に記載の抜止め部)が形成されている。上下一対の側面側抜止め部37は、上下に間隔を空けて配置されている。側面側抜止め部37の上下寸法は、上下一対の側縁側受け部23の間隔よりも僅かに小さい寸法である。
【0022】
端子保持部材32の左右方向の最小幅寸法(左側の側面部35の外面と右側の側面部35の外面との間の距離)は、左右の側縁側受け部23の間隔よりも僅かに小さい寸法に設定されている。左側の側面側抜止め部37の突出端から右側の側面側抜止め部37の突出端までの左右方向の寸法(端子保持部材32の最大幅寸法)は、左右両側面側受け部23の間隔よりも大きく、開口部18の幅寸法よりも僅かに小さい寸法に設定されている。端子保持部材32の本体部33の下端から上面側抜止め部36の上端までの上下寸法(端子保持部材32の高さ寸法)は、開口部18の下縁部21の上面から、上縁側受け部22の下端までの上下寸法よりも僅かに小さい寸法に設定されている。
【0023】
かかる寸法設定としたことにより、端子保持部材32は、開口部18の後方(ケース10の内部)から開口部18内に収容することができる。このとき、端子保持部材32を開口部18内に収容する過程では、上面側抜止め部36は、上縁側受け部22と干渉せずに上縁側受け部22よりも前方へ変位することができる。また、側面側抜止め部37も、側縁側受け部23と干渉することなく、側縁側受け部23よりも前方へ変位することができる。
【0024】
また、抜止め部36,37が受け部22,23よりも前方に位置する状態では、
図6に示すように、端子保持部材32を開口部18内で上方へ変位させることができる。端子保持部材32を海溝部内で上方へ変位させると、上面側抜止め部36が上縁側受け部22と同じ高さで前後方向に対向するように位置するとともに、側面側抜止め部37が側縁側受け部23と同じ高さで前後方向に対向するように位置する。
【0025】
保護部材38は、前後方向に貫通した角筒状のフード部39と、フード部39の外周から張り出したフランジ部40(請求項に記載の固定部)とを有する。
図2に示すように、フランジ部40の左右両端部には、前後方向に貫通した形態の左右一対の貫通孔41が形成されている。貫通孔41の内周には金属製のスペーサ42が設けられている。左右両貫通孔41は、ケース10の雌ネジ孔17と対向する位置に配されている。
【0026】
図7に示すように、フード部39のうちフランジ部40よりも後方の領域は、筒状嵌合部43として機能する。筒状嵌合部43は、開口部18に内嵌されるようになっている。筒状収容部の外周にはシール溝44が形成され、シール溝44にはリング状のシール部材45が装着されている。筒状嵌合部43を開口部18に嵌合した状態では、シール部材45が筒状嵌合部43の外周面と開口部18の内周面との間を液密状にシールする。また、筒状嵌合部43には、端子保持部材32のうち抜止め部36,37よりも前方の領域が嵌入されるようになっている。筒状嵌合部43の後端部のうち上面側抜止め部36及び側面側抜止め部37と対向する部位は、押え部46として機能する。
【0027】
端子金具50は、前後方向と直交する側方から視た側面視において、細長い金属素材をL字形に屈曲した形状をなす。端子金具50は、前後方向に延びる貫通部51と、貫通部51の後端から下方へ直角に延出した基板接続部52とを有する。端子金具50は、貫通部51を本体部33に前後方向に貫通させた状態で端子保持部材32に保持されている。複数の端子金具50を端子保持部材32に一体化させることにより、端子モジュール53が構成されている。
【0028】
複数の端子金具50を端子保持部材32に保持した状態では、貫通部51同士が互いに平行をなして並列するとともに、基板接続部52同士が互いに平行をなして並列する。貫通部51の前端部は、本体部33(端子保持部材32)の前方へ突出する。貫通部51の後端部は基板接続部52の全体は、本体部33の後方に露出している。基板接続部52の下端部は、端子保持部材32(本体部33)の下端よりも下方に位置している。
【0029】
次に、コネクタ装置Aの組み付け手順を説明する。まず、端子保持部材32と保護部材38を分離した状態で、端子モジュール53をケース10に組み付ける。このとき、端子モジュール53をケース10の下面の開放部15からケース10内に収容し、端子保持部材32を後方から開口部18内に収容する。このときの端子保持部材32(端子モジュール53)の移動方向は、開口部18の貫通方向(前後方向)と平行な方向である。また、
図4に示すように、上面側抜止め部36が上縁側受け部22よりも低い位置となり、側面側抜止め部37が側縁側受け部23と干渉しないように、端子保持部材32の高さを調整する。そして、
図5に示すように、上面側抜止め部36が上縁側受け部22よりも前方に位置し、側面側抜止め部37が側縁側受け部23よりも前方に位置するまで、端子保持部材32を開口部18内に挿入する。
【0030】
この後、端子モジュール53を上方へ変位させ、上面側抜止め部36を上縁側受け部22の前面に面当たり状態で当接させるとともに、側面側抜止め部37を側縁側受け部23に前面に面当たり状態で当接させる。このときの、端子モジュール53(端子保持部材32)の変位方向は、開口部18の貫通方向(上下方向)と直角な方向であり、基板接続部52の長さ方向と平行に方向である。以上により、端子保持部材32(端子モジュール53)がケース10に対して正規の組付位置に取り付けられる。この状態では、上面側抜止め部36が開口部18の上縁部19に対し下から当接し、
図5,6に示すように、端子保持部材32のうち抜止め部36,37よりも前方の領域の外周と、開口部18の内周との間には、全周に亘って角筒状の嵌合空間54が構成される。
【0031】
上記のように開口部18に対する端子モジュール53の組付けを開始してから、組付けが完了するまでの間、基板接続部52の下端部は、常に、開口部18の下端(下縁部21)よりも下方に位置する。しかし、組み付けの開始から完了に至るまでの間、基板接続部52は、常に、開口部18(前壁部11)よりも後方に位置するので、基板接続部52が開口部18(前壁部11)と干渉することはない。
【0032】
端子モジュール53をケース10に組み付けた後は、保護部材38をケース10に組み付ける。このとき、保護部材38をケース10の前方から前壁部11に接近させ、筒状嵌合部43を開口部18内(嵌合空間54内)に嵌入する。これに伴い、筒状嵌合部43が端子保持部材32に外嵌される。尚、端子モジュール53をケース10に組み付ける作業と、保護部材38をケース10に組み付ける作業は、ケース10と端子モジュール53と保護部材38を上下反転させた状態で行うと、作業性が良好となる。
【0033】
フランジ部40が前壁部11の前面に当接すると、ケース10の嵌合が完了する。この後、フランジ部40の前方からビス55を貫通孔41に挿通し、雌ネジ孔17にねじ込んで締め付ける。以上により、ケース10に対する保護部材38の組付けが完了し、端子保持部材32と保護部材38が合体してハウジング31が構成され、さらには、端子モジュール53と保護部材38が合体して基板用コネクタ30の組付けが完了し、ケース10に対する基板用コネクタ30の組付けが完了する。
【0034】
ビス55を締め付けると、保護部材38の押え部46が、上面側抜止め部36を上縁側受け部22に押し付けるとともに、側面側抜止め部37を側縁側受け部23に押し付ける。この押え部46による押し付けにより、端子保持部材32は、ケース10と保護部材38との間に挟み付けられ、ケース10と保護部材38に対してがたつきを規制された状態に固定される。また、複数の貫通部51の前端部は、保護部材38のフード部39により一括して包囲される。基板接続部52はケース10内に収容され、基板接続部52の下端部は、ケース10の開放部15からケース10の下方(外部)へ突出している。基板接続部52の下端部は、ケース10の開放部15を閉塞するように取り付けられた回路基板Pのスルーホール(図示省略)に貫通される。
【0035】
本実施例のコネクタ装置Aは、ケース10と基板用コネクタ30とを備えている。ケース10の前面には開口部18が形成され、ケース10の下面は外部に開放されている。基板用コネクタ30は、L字形をなす複数の端子金具50と、開口部18に組み付けられるハウジング31とを有している。端子金具50は、前後方向(開口部18の貫通方向と平行に方向)に延びる貫通部51と、貫通部51の後端から下方へ延出し、ケース10内に収容される基板接続部52とを有する。ハウジング31は、端子保持部材32と保護部材38とを有する。端子保持部材32は、貫通部51を貫通させた状態で保持し、開口部18に対し後方から取り付けられるようになっている。保護部材38は、端子保持部材32とは別体部品であり、開口部18に対し前方から取り付けられて貫通部51の前端部を包囲する。
【0036】
かかる構成のコネクタ装置Aは、基板用コネクタ30をケース10に組み付ける際には、端子保持部材32から分離した状態の保護部材38を、ケース10の前方から開口部18に取り付け、端子保持部材32をケース10の下面の開口を通して開口部18に取り付ける。基板用コネクタ30をケース10に組み付ける過程において、端子保持部材32の後方に位置する基板接続部52を、開口部18に通す必要がない。したがって、本実施例のコネクタ装置Aによれば、端子金具50(基板接続部52)が開口部18と干渉することに起因して損傷することを防止できる。
【0037】
尚、基板接続部52と開口部18との干渉を回避する手段としては、基板用コネクタ30を、ケース10の下面の開放部15からケース10内に挿入して、開口部18に嵌合する構造が考えられる。しかし、基板用コネクタ30のフード部39をケース10の前方へ突出させる形態を成立させようとすると、基板用コネクタ30を一時的に収容するためのスペースをケース10内に確保しけなければならず、ケース10が大型化するという新たな問題が生じる。さらには、ケース10の内側から基板用コネクタ30を開口部18にボルト締めして固定する必要があるが、ケース10内でドライバー等の工具で締結作業を行うのは非常に難しい。したがって、基板用コネクタ30をケース10の下面の開放部15から組み付ける方法は、好ましくない。
【0038】
これに対し、本実施例のコネクタ装置Aは、フード部39をケース10の前方へ大きく突出させているが、ハウジング31をフード部39側の保護部材38と、端子金具50を保持する端子保持部材32とに分離し、ケース10内には端子保持部材32だけを収容するようにした。したがって、ハウジング31全体を収容する場合に比べると、ケース10を小型化することができた。
【0039】
また、端子保持部材32は、前壁部11の後方から平行移動させながら開口部18に取り付けるので、取り付け状態では基板接続部52を前壁部11に接近させることができる。これにより、前壁部11と基板接続部52との間に無駄な空間が空かずに済むので、ケース10が前後方向に大型化するのを回避できるとともに、ケース10の下面の開放部15を閉塞する回路基板Pの大型化も回避できる。
【0040】
端子保持部材32は、前記開口部18内において前後方向と交差する方向(上下方向)への変位が可能となっている。ケース10には、開口部18の内周面の一部からケース10内に突出した受け部22,23が形成されている。端子保持部材32の外周面には、抜止め部36,37が形成されている。抜止め部36,37は、端子保持部材32を開口部18に取り付ける過程では受け部22,23と干渉せず、端子保持部材32が開口部18に対して正規の取付け位置にあるときに受け部22,23の前方側(前面)に重なるようになっている。
【0041】
この構成によれば、端子保持部材32を開口部18に取り付けると、抜止め部36,37を受け部22,23の前方側(前面)に当接させることができる。これにより、端子保持部材32をケース10に対して前後方向に位置決めできるとともに、端子保持部材32が開口部18に対して後方へ離脱することを防止できる。
【0042】
また、保護部材38には、保護部材38をケース10の前面に固定するフランジ部40と、受け部22,23との間で抜止め部36,37を前後方向に挟み付ける押え部46とが形成されている。保護部材38をケース10に取り付けてフランジ部40をケース10の前面に固定すると、抜止め部36,37が、押え部46と受け部22,23との間で挟み付けられる。これにより、端子保持部材32がケース10に対してガタ付きなく固定される。また、端子保持部材32をケース10に固定するための専用の固定部材が不要なので、部品点数を削減できる。
【0043】
また、保護部材38の外周面(シール溝44)と開口部18の内周面(シール面24)との間には、シール部材45が取り付けられている。シール部材45を設けたことにより、開口部18とハウジング31との隙間を液密状にシールすることができる。端子保持部材32の外周にシール部材45を設ける必要がないので、端子保持部材32を開口部18内で上下方向へ変位させることが可能となっている。これにより、端子保持部材32の形状の設計において、開口部18への取付け易さを優先して端子保持部材32の設定を行うことが可能となった。
【0044】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例では、抜止め部を押え部と受け部との間で挟むことにより、端子保持部材をケースに固定したが、専用の固定部材によって端子保持部材をケースに固定してもよい。
上記実施例では、抜止め部を前方から受け部に当てることにより、端子保持部材がケースに対して前後方向に位置決めされているが、端子保持部材に形成した部位を開口部に対して後方から当てることによって、端子金具をケースに位置決めしてもよい。
上記実施例では、シール部材を保護部材に取り付けたが、シール部材は開口部に取り付けてもよい。
上記実施例では、シール部材を保護部材の外周面に接するように設けたが、シール部材は、端子保持部材の外周面に接するように設けてもよい。
上記実施例では、端子保持部材が開口部内において開口部の貫通方向と交差する方向(上下方向)へ変位できるようにしたが、端子保持部材は、開口部内において開口部の貫通方向と交差する方向(上下方向)へ変位できず、開口部に対して後方から嵌合されるようにしてもよい。
上記実施例では、端子保持部材が開口部内で上下方向(基板接続部の長さ方向と平行な方向)へ変位するようにしたが、開口部内で端子保持部材が変位する方向は、左右方向(基板接続部の長さ方向と交差する方向)でもよい。
上記実施例では、開口部をシールするためのシール部材を設けたが、シール部材を有しない形態としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
A:コネクタ装置
P:回路基板
10:ケース
11:前壁部
12:上壁部
13:側壁部
14:後壁部
15:開放部
16:取付部
17:雌ネジ孔
18:開口部
19:上縁部
20:側縁部
21:下縁部
22:上縁側受け部(受け部)
23:側縁側受け部(受け部)
24:シール面
30:基板用コネクタ
31:ハウジング
32:端子保持部材
33:本体部
34:上面部
35:側面部
36:上面側抜止め部(抜止め部)
37:側面側抜止め部(抜止め部)
38:保護部材
39:フード部
40:フランジ部(固定部)
41:貫通孔
42:スペーサ
43:筒状嵌合部
44:シール溝
45:シール部材
46:押え部
50:端子金具
51:貫通部
52:基板接続部
53:端子モジュール
54:嵌合空間
55:ビス