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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】観音開き型リッド装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 83/32 20140101AFI20220830BHJP
   B60R 7/04 20060101ALI20220830BHJP
   E05C 21/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
E05B83/32
B60R7/04 C
E05C21/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019173510
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021050511
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 直行
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-127773(JP,A)
【文献】特許第6517410(JP,B1)
【文献】特開2010-149645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
E05C 21/00
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が設けられた収容部を有するボックス本体と、
前記開口の一部を開閉可能に覆う第1ドアと、
前記開口の他部を開閉可能に覆う第2ドアと、
前記第1ドア及び前記第2ドアを連動して開閉動作させる開閉機構と、
前記開閉機構により前記第1ドア及び前記第2ドアが所定ロック位置まで閉動作された場合に前記第1ドア及び前記第2ドアを閉状態にロックするロック機構と、
を備える観音開き型リッド装置であって、
前記ロック機構は、
それぞれ、前記ボックス本体と前記第1ドア及び前記第2ドアとの何れか一方側に支持され、前記ボックス本体と前記第1ドア及び前記第2ドアとの何れか他方側に接近する接近方向に進出すると共に、前記他方側から離間する離間方向に後退する第1進退部材及び第2進退部材と、
前記第1進退部材を前記接近方向に付勢する力を発生する第1付勢部材と、
前記第2進退部材を前記接近方向に付勢する力を発生する第2付勢部材と、
を有し、
前記第1進退部材は、前記第1ドア及び前記第2ドアの開状態からの閉動作時に前記離間方向に後退し、
前記第2進退部材は、前記第1進退部材の前記離間方向への後退に連動して前記離間方向に後退し、
前記第1進退部材及び前記第2進退部材は、前記接近方向に直交しかつ前記第1ドア及び前記第2ドアが前記閉状態からの開動作時に移動する方向に互いに離間して対向して隙間を形成する離間対向部を有し、
前記ロック機構は、前記他方側に設けられ、前記隙間に進入することで前記第1ドア及び前記第2ドアを閉状態にロックする引掛部を有する、観音開き型リッド装置。
【請求項2】
前記引掛部は、前記第1ドア及び前記第2ドアの開状態からの閉動作時に前記第1進退部材に当接して前記第1進退部材を前記離間方向に後退させる、請求項1に記載された観音開き型リッド装置。
【請求項3】
前記第1進退部材における前記引掛部が当接し得る部位は、前記閉動作時に前記引掛部が移動する方向に対して傾斜する傾斜面である、請求項2に記載された観音開き型リッド装置。
【請求項4】
前記第1ドア及び前記第2ドアは、前記第2進退部材が前記離間方向に後退した状態では、前記引掛部が前記第2進退部材の前記離間対向部の前記接近方向側の端面に対向する高さ位置まで閉動作可能である、請求項1乃至3の何れか一項に記載された観音開き型リッド装置。
【請求項5】
前記第1進退部材は、前記ボックス本体側に支持されており、前記第1ドアに対して進退する第1ドア用進退部と、前記第2ドアに対して進退する第2ドア用進退部と、が一体化されて進退するように構成されており、
前記引掛部は、前記第1ドアに設けられた第1引掛部と、前記第2ドアに設けられた第2引掛部と、を含む、請求項1乃至4の何れか一項に記載された観音開き型リッド装置。
【請求項6】
前記第2進退部材は、前記ボックス本体側に支持されており、前記第1ドアに対して進退する第1ドア用進退部と、前記第2ドアに対して進退する第2ドア用進退部と、がそれぞれ独立して進退するように構成されている、請求項5に記載された観音開き型リッド装置。
【請求項7】
前記第1進退部材及び前記第2進退部材は、前記一方側に同軸上で揺動可能に支持されている、請求項1乃至6の何れか一項に記載された観音開き型リッド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観音開き型リッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二つのドアを観音開きさせる観音開き型リッド装置が知られている(例えば、特許文献1)。観音開き型リッド装置は、ボックス本体と、二つのドアと、開閉機構と、ロック機構と、を備えている。二つのドアは、ボックス本体の上部開口を開閉可能に覆うと共に、閉状態において使用者により開操作がなされた場合に観音開きされる。開閉機構は、二つのドアを連動して開閉動作させる機構である。開閉機構は、使用者によるボタンやレバーなどの開操作部への押圧操作や引張操作などにより二つのドアを連動して開動作させる。また、開閉機構は、使用者による何れか一方のドアへの押圧閉操作により二つのドアを連動して閉動作させる。ロック機構は、二つのドアが所定ロック位置まで閉動作された場合にそれら二つのドアを閉状態にロックする。
【0003】
開閉機構は、ドアごとに取り付けられてドアをボックス本体に揺動可能に保持するヒンジ部材、一端部が各ドアのヒンジ部材に連結するアーム部材、アーム部材の他端に設けられ他のアーム部材に噛み合うギヤなどを有している。また、開閉機構は、開操作部が開操作された場合にドアを開方向に付勢するバネ部材を有している。ロック機構は、ボックス本体に揺動可能に取り付けられ、爪部がドアの引掛溝に引っ掛かることが可能な揺動部材を有している。揺動部材は、開操作部が開操作された場合にドアの引掛溝への爪部の引っ掛かりが解除されるように揺動する。ドアの引掛溝への揺動部材の爪部の引っ掛かりが解除されると、バネ部材の付勢力によりドアが開方向に付勢される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-307911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の如く二つのドアが連動して開閉動作される観音開き型の構造では、ギヤや軸などのガタ或いはヒンジやアームなどのリンクの撓みなどに起因して、二つのドアの開閉動作に差(遅れ)が生じ得る。この二つのドア開閉動作に差があると、両ドアを同時に所定ロック位置に保持することが困難となるおそれがある。そこで、一方のドアが所定ロック位置に達していても、他方のドアが所定ロック位置に達するまでは、二つのドアが閉ロックされないオーバーストロークを設けることが考えられる。また、この構造において、車両の振動や片側のドアへの接触などが生じたときのドアのばたつきを抑えるうえでは、ゴムクッションなどの付勢部材で閉状態の二つのドアを開方向へ大きな力で付勢しておくことが有効である。
【0006】
しかし、上記の如き閉状態でのドアのばたつき抑制のために両ドアを開方向へ大きさ力で付勢する付勢部材を設けるものとすると、その背反として、使用者が何れかのドアを押圧閉操作して両ドアを開状態から閉動作させるときの荷重が大きくなってしまう。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、閉状態でのドアのばたつき抑制を、閉操作荷重を大きくすることなく実現することが可能な観音開き型リッド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、開口が設けられた収容部を有するボックス本体と、前記開口の一部を開閉可能に覆う第1ドアと、前記開口の他部を開閉可能に覆う第2ドアと、前記第1ドア及び前記第2ドアを連動して開閉動作させる開閉機構と、前記開閉機構により前記第1ドア及び前記第2ドアが所定ロック位置まで閉動作された場合に前記第1ドア及び前記第2ドアを閉状態にロックするロック機構と、を備える観音開き型リッド装置であって、前記ロック機構は、それぞれ、前記ボックス本体と前記第1ドア及び前記第2ドアとの何れか一方側に支持され、前記ボックス本体と前記第1ドア及び前記第2ドアとの何れか他方側に接近する接近方向に進出すると共に、前記他方側から離間する離間方向に後退する第1進退部材及び第2進退部材と、前記第1進退部材を前記接近方向に付勢する力を発生する第1付勢部材と、前記第2進退部材を前記接近方向に付勢する力を発生する第2付勢部材と、を有し、前記第1進退部材は、前記第1ドア及び前記第2ドアの開状態からの閉動作時に前記離間方向に後退し、前記第2進退部材は、前記第1進退部材の前記離間方向への後退に連動して前記離間方向に後退し、前記第1進退部材及び前記第2進退部材は、互いに前記接近方向及び前記離間方向に直交する方向に離間して対向して隙間を形成する離間対向部を有し、前記ロック機構は、前記他方側に設けられ、前記隙間に進入することで前記第1ドア及び前記第2ドアを閉状態にロックする引掛部を有する、観音開き型リッド装置である。
【0009】
この構成によれば、ボックス本体と第1ドア及び第2ドアとの何れか一方側に支持された第1進退部材と第2進退部材との間に形成された隙間に、その他方側に設けられた引掛部が進入し得る。第1ドア及び第2ドアの閉状態でかかる隙間への引掛部の進入がなされると、その引掛部が第1進退部材と第2進退部材との間に挟まれることで、第1ドア及び第2ドアが閉状態でばたつくのを抑えることができる。また、閉状態でのドアのばたつきを抑えるうえで、閉状態で両ドアを開方向に大きな力で付勢しておくことは不要である。従って、閉状態でのドアのばたつきを、閉操作荷重を大きくすることなく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る観音開き型リッド装置の閉状態での斜視図である。
図2】実施形態に係る観音開き型リッド装置の開状態での斜視図である。
図3】実施形態に係る観音開き型リッド装置の分解斜視図である。
図4】実施形態に係る観音開き型リッド装置が備える開閉機構の閉状態での動作状態を表した図である。
図5】実施形態に係る観音開き型リッド装置が備える開閉機構の開状態での動作状態を表した図である。
図6】実施形態に係る観音開き型リッド装置が備えるロック装置の閉動作時の状態を表した図である。
図7】実施形態に係る観音開き型リッド装置が備えるロック装置の最大閉動作時の状態を表した図である。
図8】実施形態に係る観音開き型リッド装置が備えるロック装置の閉状態を表した図である。
図9】変形形態に係る観音開き型リッド装置が備えるロック装置の閉状態を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図9を用いて、本発明に係る観音開き型リッド装置の具体的な実施形態について説明する。
【0012】
一実施形態の観音開き型リッド装置1は、例えば車両の車室内に配置されるセンターコンソールに装着されるコンソールボックスなどである。尚、観音開き型リッド装置1は、ドア20,30が閉状態にあるときに乗員の腕を置くためのアームレストとして用いられるものであってよい。また、この実施形態において、方向を示す内容は、特段の事情が無い限り、観音開き型リッド装置1が設置される車両を基準にしたものとする。例えば、「右側」とは車両進行方向に対する車両右側を指し、「左側」とは車両進行方向に対する車両左側を指すものとする。
【0013】
観音開き型リッド装置1は、図1図2、及び図3に示す如く、ボックス本体10と、二つのドア20,30と、開閉機構40と、ロック機構50と、を備えている。観音開き型リッド装置1は、図4及び図5に示す如く、開閉機構40によりドア20,30がボックス本体10に対して開閉動作されかつその両ドア20,30の開閉動作が連動するように構成されている。
【0014】
ボックス本体10は、略箱状に形成されている。ボックス本体10は、車両ボデーにボルト締結などで固定されている。ボックス本体10は、上面に開口11が設けられた収容部12を有している。収容部12は、略直方体形状に形成されている。収容部12は、収容空間を取り囲む側壁及び底壁からなる。尚、収容部12は、例えばカップホルダーなどを収めるための枠体などを含んでいてもよい。開口11の周縁は、それぞれ車両前後方向に延びる二つの側辺11R,11Lを有している。すなわち、観音開き型リッド装置1は、二つの側辺11R,11Lが車両前後方向に延びるように配置されている。
【0015】
ドア20は、ボックス本体10の開口11の右半分に対応して略長方形状に形成された板状の蓋体である。以下、ドア20を右側ドア20と称す。右側ドア20は、ボックス本体10の開口11の右半分を開閉可能に覆う。右側ドア20は、開口11の右半分を覆った閉状態から、開口11の周縁の右側の側辺11Rに沿って前後方向に延びる回転軸(以下、右側回転軸と称す。)を中心にして開閉動作されることが可能である。右側ドア20は、ボックス本体10に対して閉状態から所定角度(例えば100°)をなす全開状態まで開動作されることが可能である。
【0016】
ドア30は、ボックス本体10の開口11の左半分に対応して略長方形状に形成された板状の蓋体である。以下、ドア30を左側ドア30と称す。左側ドア30は、ボックス本体10の開口11の左半分を開閉可能に覆う。左側ドア30は、開口11の左半分を覆った閉状態から、開口11の周縁の左側の側辺11Lに沿って前後方向に延びる回転軸(以下、左側回転軸と称す。)を中心にして開閉動作されることが可能である。左側ドア30は、ボックス本体10に対して閉状態から所定角度(例えば100°)をなす全開状態まで開動作されることが可能である。
【0017】
開閉機構40は、右側ドア20及び左側ドア30を連動して開閉動作させる機構である。開閉機構40は、右側ドア20を右側の側辺11Rに沿った右側回転軸を中心にして開閉動作させると共に、左側ドア30を左側の側辺11Lに沿った左側回転軸を中心にして開閉動作させる。開閉機構40は、ボックス本体10の前側及び後側それぞれに設けられており、車両前後一対設けられている。各開閉機構40はそれぞれ、図3及び図7に示す如く、二つのヒンジ部材41R,41Lと、二つのアーム部材42R,42Lと、二つのバネ部材43R,43Lと、を有している。
【0018】
ヒンジ部材41Rは、右側ドア20に一体的に取り付けられている。ヒンジ部材41Rは、軸部41Raと、ギヤ部41Rbと、を有している。軸部41Raは、右側ドア20が開閉動作される際の回転中心をなす。ギヤ部41Rbは、軸部41Raを中心にした円軌跡上に形成されている。ボックス本体10の前壁10F又は後壁10Bの外面には、右ギヤ部13Rが設けられている。ヒンジ部材41Rのギヤ部41Rbとボックス本体10の右ギヤ部13Rとは、互いに噛み合っている。右側ドア20は、ヒンジ部材41Rのギヤ部41Rbがボックス本体10の右ギヤ部13Rに噛み合う位置を変化させながら開閉動作される。
【0019】
ヒンジ部材41Rの軸部41Raには、アーム部材42Rの一端部が軸支されている。アーム部材42Rの他端部は、ボックス本体10の前壁10F又は後壁10Bの外面に設けられた軸部14Rに軸支されている。アーム部材42Rは、ボックス本体10の車幅方向中心側から右側にかけて車幅方向に延びている。アーム部材42Rは、ボックス本体10に対して軸部14Rを中心にして揺動することが可能である。右側ドア20は、アーム部材42Rの軸部14Rを中心にした揺動によりそのアーム部材42Rの一端部が上下動した際にヒンジ部材41Rのギヤ部41Rbとボックス本体10の右ギヤ部13Rとの噛み合い位置が変化することにより開閉動作される。
【0020】
ボックス本体10の軸部14Rには、バネ部材43Rが取り付けられている。バネ部材43Rは、軸部14Rを環状に取り囲むように配置されている。バネ部材43Rは、一端部がボックス本体10に支持されかつ他端部がアーム部材42Rに支持されたねじりバネである。バネ部材43Rは、アーム部材42Rを右側ドア20を開動作させる方向へ揺動させる付勢力を発生する。バネ部材43Rの付勢力は、右側ドア20の閉状態で最大である。
【0021】
ヒンジ部材41Lは、左側ドア30に一体的に取り付けられている。ヒンジ部材41Lは、軸部41Laと、ギヤ部41Lbと、を有している。軸部41Laは、左側ドア30が開閉動作される際の回転中心をなす。ギヤ部41Lbは、軸部41Laを中心にした円軌跡上に形成されている。ボックス本体10の前壁10F又は後壁10Bの外面には、左ギヤ部13Lが設けられている。ヒンジ部材41Lのギヤ部41Lbとボックス本体10の左ギヤ部13Lとは、互いに噛み合っている。左側ドア30は、ヒンジ部材41Lのギヤ部41Lbがボックス本体10の左ギヤ部13Lに噛み合う位置を変化させながら開閉動作される。
【0022】
ヒンジ部材41Lの軸部41Laには、アーム部材42Lの一端部が軸支されている。アーム部材42Lの他端部は、ボックス本体10の前壁10F又は後壁10Bの外面に設けられた軸部14Lに軸支されている。アーム部材42Lは、ボックス本体10の車幅方向中心側から左側にかけて車幅方向に延びている。アーム部材42Lは、ボックス本体10に対して軸部14Lを中心にして揺動することが可能である。左側ドア30は、アーム部材42Lの軸部14Lを中心にした揺動によりそのアーム部材42Lの一端部が上下動した際にヒンジ部材41Lのギヤ部41Lbとボックス本体10の左ギヤ部13Lとの噛み合い位置が変化することにより開閉動作される。
【0023】
ボックス本体10の軸部14Lには、バネ部材43Lが取り付けられている。バネ部材43Lは、軸部14Lを環状に取り囲むように配置されている。バネ部材43Lは、一端部がボックス本体10に支持されかつ他端部がアーム部材42Lに支持されたねじりバネである。バネ部材43Lは、アーム部材42Lを左側ドア30を開動作させる方向へ揺動させる付勢力を発生する。バネ部材43Lの付勢力は、左側ドア30の閉状態で最大である。
【0024】
アーム部材42Rの他端には、ギヤ部42Raが形成されている。また、アーム部材42Lの他端には、ギヤ部42Laが形成されている。ギヤ部42Raとギヤ部42Laとは、互いに噛み合っている。アーム部材42R及びアーム部材42Lは、ギヤ部42Ra,42La同士の噛み合い位置を変化させながら互いに連動して軸部14R,14Lを中心にして揺動する。
【0025】
前側の開閉機構40のアーム部材42R及びアーム部材42Lの前方には、板状の前板部材15が配置されている。前板部材15は、ボックス本体10の前壁10Fに取り付けられている。前板部材15は、アーム部材42R,42Lを保護している。また、後側の開閉機構40のアーム部材42R及びアーム部材42Lの後方には、板状の後板部材16が配置されている。後板部材16は、ボックス本体10の後壁10Bに取り付けられている。後板部材16は、アーム部材42R,42Lを保護している。
【0026】
ロック機構50は、右側ドア20及び左側ドア30を閉状態にロック(保持)すると共に、その閉状態ロックを解除する装置である。尚、ロック機構50は、右側ドア20及び左側ドア30の長手方向一方側のみ(例えば、ボックス本体10の前部のみ)に設けられてよい。以下、ロック機構50は、ボックス本体10の前部のみに設けられているものとする。ロック機構50は、進退部材51と、付勢部材52と、操作部材53と、を有している。
【0027】
進退部材51は、車両前後方向に進退する部材である。進退部材51は、ボックス本体10の前板部材15に車幅方向に延びるピン18を中心にして揺動可能に支持されている。進退部材51は、ピン18を中心にした揺動により、上部が右側ドア20及び左側ドア30に接近する車両後方に進出すると共に、上部が右側ドア20及び左側ドア30から離間する車両前方に後退するものである。
【0028】
進退部材51は、基部51Aと、二つのロッド部51R,51Lと、を有している。基部51Aは、車幅方向に水平に延びる板部である。ロッド部51Rは、基部51Aの右端部から上方に向けて延びている。ロッド部51Lは、基部51Aの左端部から上方に向けて延びている。二つのロッド部51R,51Lは、車幅方向に離れて設けられている。以下適宜、ロッド部51Rを右側ロッド部51Rと、ロッド部51Lを左側ロッド部51Lと、それぞれ称す。
【0029】
右側ロッド部51Rの上側先端部には、フック部51Raが形成されている。左側ロッド部51Lの上側先端部には、フック部51Laが形成されている。フック部51Ra,51Laはそれぞれ、ロッド部51R,51Lの上側先端部から車両後方に爪状に突出している。フック部51Ra,51Laはそれぞれ、ロッド部51R,51L側である根元側(車両前方側)から突出先端側(車両後方側)にかけて上方から下方へ傾斜する傾斜面51sを有している。この傾斜面51sは、右側ドア20又は左側ドア30の閉動作中に後述の引掛部22,32が当接する面である。
【0030】
進退部材51は、ピン18を中心にしてフック部51Ra,51Laが車両前後方向に進退するように揺動する。進退部材51の揺動時、フック部51Raとフック部51Laとは、一体化されて進退する。以下適宜、フック部51Raを右側フック部51Raと、フック部51Laを左側フック部51Laと、それぞれ称す。
【0031】
右側ドア20は、溝部21と、引掛部22と、を有している。溝部21は、進退部材51の右側ロッド部51Rの右側フック部51Raが引っ掛かって係止される凹部である。溝部21は、右側ドア20の前部の車幅方向中央寄りに車両後方に凹むように形成されており、右側フック部51Raに対応した形状に形成されている。引掛部22は、溝部21を形成する壁(具体的には、右側ドア20の閉状態における下壁)となる部位である。引掛部22は、溝部21の底部から車両前方へ突出している。引掛部22は、その下面が右側ドア20の閉動作中に進退部材51の右側フック部51Raの傾斜面51sに当接するように形成されている。
【0032】
引掛部22は、上記の進退部材51と後述の進退部材54との間の隙間60Rに進入することが可能である。右側ドア20は、溝部21に右側フック部51Raが係止されかつ引掛部22が隙間60Rに進入することにより閉状態にロックされ、隙間60Rから引掛部22が退出して溝部21への右側フック部51Raの係止が解除されることによりロック解除される。
【0033】
左側ドア30は、溝部31と、引掛部32と、を有している。溝部31は、進退部材51の左側ロッド部51Lの左側フック部51Laが引っ掛かって係止される凹部である。溝部31は、左側ドア30の前部の車幅方向中央寄りに車両後方に凹むように形成されており、左側フック部51Laに対応した形状に形成されている。引掛部32は、溝部31を形成する壁(具体的には、左側ドア30の閉状態における下壁)となる部位である。引掛部32は、溝部31の底部から車両前方へ突出している。引掛部32は、その下面が左側ドア30の閉動作中に進退部材51の左側フック部51Laの傾斜面51sに当接するように形成されている。
【0034】
引掛部32は、上記の進退部材51と後述の進退部材55との間の隙間60Lに進入することが可能である。左側ドア30は、溝部31に左側フック部51Laが係止されかつ引掛部32が隙間60Lに進入することにより閉状態にロックされ、隙間60Lから引掛部32が退出して溝部31への左側フック部51Laの係止が解除されることによりロック解除される。
【0035】
付勢部材52は、進退部材51を進退部材51の上部がドア20,30に接近する車両後方に揺動させる付勢力を発生するバネ部材である。付勢部材52は、進退部材51と前板部材15との間に介在されており、一端部が進退部材51に支持されかつ他端部が前板部材15に支持されるように構成されている。付勢部材52は、進退部材51の揺動中心を環状に取り囲むように配置されるねじりバネである。進退部材51は、常態では、上部が最も車両後方まで進出して、右側フック部51Raが右側ドア20の溝部21に係止されかつ左側フック部51Laが左側ドア30の溝部31に係止される位置にある。
【0036】
操作部材53は、前板部材15に上下動可能に取り付けられている。操作部材53は、前板部材15の車幅方向の中央に配置されている。操作部材53は、T字状に形成された部材である。操作部材53は、非操作状態においてその前板部材15の上端面と面一になるように保持されている。操作部材53は、使用者により下方に押圧操作されることが可能である。操作部材53の下端は、進退部材51の基部51Aに当接することが可能である。進退部材51は、操作部材53からの入力によりピン18を中心にして揺動することが可能である。
【0037】
上記の観音開き型リッド装置1においては、右側ドア20の溝部21にロック機構50の進退部材51の右側フック部51Raが係止され、かつ、左側ドア30の溝部31にその進退部材51の左側フック部51Laが係止されていると、右側ドア20がバネ部材43Rの付勢力に抗して閉状態にロックされていると共に、左側ドア30がバネ部材43Lの付勢力に抗して閉状態にロックされている。
【0038】
かかる両ドア20,30の閉状態において使用者により操作部材53が下方に押圧操作されると、その操作部材53から進退部材51の基部51Aへ下方に押圧する力が付与される。この場合、進退部材51は、付与された力によりピン18を中心にして付勢部材52の付勢力に抗して前方側すなわちロック解除方向へ揺動する。かかる揺動時は、進退部材51の右側フック部51Ra及び左側フック部51Laが車両前方に後退するので、溝部21,31へのフック部51Ra,51Laの係止が解除される。この場合には、ドア20,30の閉状態のロックが解除される。
【0039】
上記した閉状態のロックが解除されると、右側ドア20及び左側ドア30がバネ部材43R,43Lの付勢力により開方向へ付勢されて開動作される。この開動作は、互いに連動して行われ、ドア20,30の全開状態まで行われる。尚、右側ドア20の開動作と左側ドア30の開動作との間には、ガタや撓みなどに起因して動作量や動作タイミングの差が生じる。また、右側ドア20及び左側ドア30の開動作の開始後、使用者による操作部材53の押圧操作が解除されると、進退部材51は付勢部材52の付勢力により後方側すなわちロック方向へ揺動する。
【0040】
次に、右側ドア20及び左側ドア30の開状態において使用者により何れか一方のドア20,30がボックス本体10の開口11を閉じる閉方向(主に下方)へ押圧操作されると、その力によりバネ部材43R,43Lの付勢力に抗してその一方のドア20,30が閉動作される。一方のドア20,30が閉動作されると、開閉機構40の機能により他方のドア30,20がその一方のドア20,30の閉動作に連動して閉動作される。尚、右側ドア20の閉動作と左側ドア30の閉動作との間には、部材のガタや撓みなどに起因して動作量や動作タイミングの差が生じる。
【0041】
上記の如く両ドア20,30の閉動作が行われる過程で、ドア20,30の引掛部22,32の下面が、進退部材51のフック部51Ra,51Laの傾斜面51sに当接する。かかる当接後も両ドア20,30の閉動作が継続すると、引掛部22,32がフック部51Ra,51Laを下方に押してその進退部材51を付勢部材52の付勢力に抗して前方側すなわちロック解除方向へ揺動させる力をその進退部材51に付与する。
【0042】
そして、両ドア20,30の閉動作が、右側ドア20の溝部21に進退部材51の右側フック部51Raが引っ掛かりかつ左側ドア30の溝部31に進退部材51の左側フック部51Laが引っ掛かる所定ロック位置まで行われると、進退部材51が付勢部材52の付勢力により車両後方へ進出して両フック部51Ra,51Laが溝部21,31に係止される。この場合には、右側ドア20が閉状態にロックされかつ左側ドア30が閉状態にロックされる。
【0043】
このように観音開き型リッド装置1によれば、操作部材53への押圧操作により右側ドア20及び左側ドア30を閉状態から全開状態へ開動作させることができる。また、開状態において右側ドア20及び左側ドア30のうち何れか一方のドア20,30を下方へ押圧操作することにより、その一方のドア20,30を開状態から閉状態へ閉動作させつつ、開閉機構40の機能により非押圧の他方のドア30,20をその一方のドア20,30の閉動作に連動させて開状態から閉状態へ閉動作させることができる。これにより、両ドア20,30を所定ロック位置で閉状態にロックさせることができる。
【0044】
ところで、観音開き型リッド装置1の如く二つのドア20,30が連動して開閉動作される構造では、アーム部材42R,42Lのギヤ部42Ra,42La同士のガタや軸部41Ra,41Laのガタ或いはヒンジ部材41R,41Lやアーム部材42R,42Lの撓みなどに起因して、二つのドア20,30の開閉動作に差が生じる。このドア開閉動作に差があると、車両の振動時や片側のドア20,30への接触時などにドア20,30のばたつきが生じ得る。そこで、本実施形態の観音開き型リッド装置1では、互いに連動するドア20,30のばたつきの発生を抑えることとしている。
【0045】
観音開き型リッド装置1において、ロック機構50は、二つの進退部材54,55と、二つの付勢部材56,57と、を有している。進退部材54,55は、進退部材51とは別の部材である。進退部材54は、右側ドア20に対応して設けられている。進退部材55は、左側ドア30に対応して設けられている。以下適宜、進退部材51を第1進退部材51と、進退部材54を右側第2進退部材54と、進退部材55を左側第2進退部材55と、それぞれ称す。
【0046】
右側第2進退部材54は、車両前後方向に進退する部材である。右側第2進退部材54は、前板部材15にピン18を中心にして揺動可能に支持されており、第1進退部材51と同軸上で揺動可能である。右側第2進退部材54は、ピン18を中心にした揺動により、上部が右側ドア20及び左側ドア30に接近する車両後方に進出すると共に、上部が右側ドア20及び左側ドア30から離間する車両前方に後退するものである。右側第2進退部材54は、上下方向に延びる板状に形成されている。右側第2進退部材54は、第1進退部材51の右側ロッド部51Rに対して車幅方向外側に隣接して配置されている。
【0047】
左側第2進退部材55は、車両前後方向に進退する部材である。左側第2進退部材55は、前板部材15にピン18を中心にして揺動可能に支持されており、第1進退部材51と同軸上で揺動可能である。左側第2進退部材55は、ピン18を中心にした揺動により、上部が右側ドア20及び左側ドア30に接近する車両後方に進出すると共に、上部が右側ドア20及び左側ドア30から離間する車両前方に後退するものである。左側第2進退部材55は、上下方向に延びる板状に形成されている。左側第2進退部材55は、第1進退部材51の左側ロッド部51Lに対して車幅方向外側に隣接して配置されている。
【0048】
付勢部材56は、右側第2進退部材54を右側第2進退部材54の上部がドア20,30に接近する車両後方に揺動させる付勢力を発生するバネ部材である。付勢部材56は、右側第2進退部材54と前板部材15との間に介在されており、一端部が右側第2進退部材54に支持されかつ他端部が前板部材15に支持されるように構成されている。付勢部材56は、右側第2進退部材54の揺動中心を環状に取り囲むように配置されるねじりバネである。右側第2進退部材54は、常態で、上部が最も車両後方まで進出した位置にある。
【0049】
付勢部材57は、左側第2進退部材55を左側第2進退部材55の上部がドア20,30に接近する車両後方に揺動させる付勢力を発生するバネ部材である。付勢部材57は、左側第2進退部材55と前板部材15との間に介在されており、一端部が左側第2進退部材55に支持されかつ他端部が前板部材15に支持されるように構成されている。付勢部材57は、左側第2進退部材55の揺動中心を環状に取り囲むように配置されるねじりバネである。左側第2進退部材55は、常態で、上部が最も車両後方まで進出した位置にある。
【0050】
右側第2進退部材54は、ロッド部54aと、離間対向部54bと、被押圧部54cと、を有している。ロッド部54aは、上下方向に板状に延びた、ピン18を中心にして揺動可能な部位である。
【0051】
離間対向部54bは、第1進退部材51の右側フック部51Raとの間に上下方向の隙間60Rを形成する部位である。離間対向部54bは、ロッド部54a(尚、車両前後方向に進退する進退量が多い部位が好ましい。)から車幅方向内側に突出しており、ブロック状に形成されている。離間対向部54bは、第1進退部材51の右側フック部51Raの下方に配置されている。離間対向部54bの上面は、第1進退部材51の右側フック部51Ra(具体的には、その車両後方側の先端部)の下面に対して隙間60Rを空けて離間して対向している。
【0052】
尚、離間対向部54bは、第1進退部材51及び右側第2進退部材54がそれぞれ最も車両後方に進出している状態で、離間対向部54bの突出先端(すなわち、車両後方側の端面)が第1進退部材51の右側フック部51Raの突出先端(すなわち、車両後方側の端部)と同じ車両前後方向位置に位置するように形成されていることが好ましい。上記の隙間60Rは、右側ドア20の引掛部22が進入可能な大きさに形成されている。
【0053】
被押圧部54cは、右側第2進退部材54を第1進退部材51の進退に連動して進退させる部位である。具体的には、被押圧部54cは、第1進退部材51の車両前方への後退時にその第1進退部材51から車両前方へ押圧されることで、右側第2進退部材54をその第1進退部材51の後退に連動して車両前方へ後退させる部位である。被押圧部54cは、ロッド部54aから車幅方向内側に突出しており、ブロック状に形成されている。被押圧部54cは、第1進退部材51(具体的には、右側ロッド部51R)の車両前方に配置されている。
【0054】
被押圧部54cは、第1進退部材51及び右側第2進退部材54がそれぞれ最も車両後方に進出している状態で、第1進退部材51の右側ロッド部51Rの前端面に当接し或いは僅かな隙間を空けて離間している。被押圧部54cは、第1進退部材51が揺動により車両前方へ後退したときにその第1進退部材51の右側ロッド部51Rから車両前方へ押圧されて、車両前方へ移動する。これにより、右側第2進退部材54が、第1進退部材51の後退に連動して車両前方へ後退する。
【0055】
左側第2進退部材55は、ロッド部55aと、離間対向部55bと、被押圧部55cと、を有している。ロッド部55aは、上下方向に板状に延びた、ピン18を中心にして揺動可能な部位である。
【0056】
離間対向部55bは、第1進退部材51の左側フック部51Laとの間に上下方向の隙間60Lを形成する部位である。離間対向部55bは、ロッド部55a(尚、車両前後方向に進退する進退量が多い部位が好ましい。)から車幅方向内側に突出しており、ブロック状に形成されている。離間対向部55bは、第1進退部材51の左側フック部51Laの下方に配置されている。離間対向部55bの上面は、第1進退部材51の左側フック部51La(具体的には、その車両後方側の先端部)の下面に対して隙間60Lを空けて離間して対向している。
【0057】
尚、離間対向部55bは、第1進退部材51及び左側第2進退部材55がそれぞれ最も車両後方に進出している状態で、離間対向部55bの突出先端(すなわち、車両後方側の端面)が第1進退部材51の左側フック部51Laの突出先端(すなわち、車両後方側の端部)と同じ車両前後方向位置に位置するように形成されていることが好ましい。上記の隙間60Lは、左側ドア30の引掛部32が進入可能な大きさに形成されている。
【0058】
被押圧部55cは、左側第2進退部材55を第1進退部材51の進退に連動して進退させる部位である。具体的には、被押圧部55cは、第1進退部材51の車両前方への後退時にその第1進退部材51から車両前方へ押圧されることで、左側第2進退部材55をその第1進退部材51の後退に連動して車両前方へ後退させる部位である。被押圧部55cは、ロッド部55aから車幅方向内側に突出しており、ブロック状に形成されている。被押圧部55cは、第1進退部材51(具体的には、左側ロッド部51L)の車両前方に配置されている。
【0059】
被押圧部55cは、第1進退部材51及び左側第2進退部材55がそれぞれ最も車両後方に進出している状態で、第1進退部材51の左側ロッド部51Lの前端面に当接し或いは僅かな隙間を空けて離間している。被押圧部55cは、第1進退部材51が揺動により車両前方へ後退したときにその第1進退部材51の左側ロッド部51Lから車両前方へ押圧されて、車両前方へ移動する。これにより、左側第2進退部材55が、第1進退部材51の後退に連動して車両前方へ後退する。
【0060】
上記の観音開き型リッド装置1においては、右側ドア20及び左側ドア30が共に所定ロック位置でロックされている閉状態で、使用者により操作部材53が下方に押圧操作されると、二つのドア20,30が開動作される。二つのドア20,30が開状態にあるときに何れか一方のドア20,30が下方に押圧操作されて閉動作されると、押圧操作されていない他方のドア30,20が、その押圧操作されている一方のドア20,30の閉動作に連動して閉動作される。
【0061】
上記の如く一方のドア20,30が下方への押圧操作により閉動作されると、その閉動作の中途のタイミングで、その一方のドア20,30の引掛部22,32の下面が第1進退部材51のフック部51Ra,51Laの傾斜面51sに当接する。かかる当接後も閉動作が継続すると、その押圧力により第1進退部材51が付勢部材52の付勢力に抗して車両前方へ揺動して第1進退部材51の上部が車両前方へ後退する(図6参照;一点鎖線で示す状態から実線で示す状態へ移動する。)。
【0062】
第1進退部材51の上部が車両前方へ後退すると、押圧操作されている一方のドア20,30が更に下方へ移動してその引掛部22,32がフック部51Ra,51Laの高さ位置よりも下方に位置することができると共に、押圧操作されていない他方のドア30,20が、押圧操作されている一方のドア20,30の移動に連動して下方へ移動してその引掛部22,32がフック部51La,51Raの高さ位置よりも下方に位置することができる。
【0063】
また、第1進退部材51の上部が車両前方へ後退すると、その第1進退部材51のロッド部51R,51Lの前端面が右側第2進退部材54及び左側第2進退部材55の被押圧部54c,55cに当接してその被押圧部54c,55cを車両前方へ押圧することで、右側第2進退部材54及び左側第2進退部材55が、その第1進退部材51の後退に連動して車両前方へ後退する。この場合には、右側第2進退部材54及び左側第2進退部材55の離間対向部54b,55bが車両前方寄りに位置移動する。
【0064】
このため、この場合は、右側ドア20が、その引掛部22が右側第2進退部材54の離間対向部54bの車両後方側の端面に車両前後方向で対向する高さ位置まで閉方向に下動することができると共に、左側ドア30が、その引掛部32が左側第2進退部材55の離間対向部55bの車両後方側の端面に車両前後方向で対向する高さ位置まで閉方向に下動することができる。すなわち、双方のドア20,30が、何れが押圧操作されているか否かに関係なく、その引掛部22,32が第2進退部材54,55の離間対向部54b,55bの車両後方側端面に車両前後方向で対向する高さ位置まで閉動作することができる。
【0065】
少なくとも一つのドア20,30がその引掛部22,32が第1進退部材51のフック部51Ra,51Laに当接してその第1進退部材51を車両前方へ揺動させる状態に押圧操作されていると、第1進退部材51、右側第2進退部材54、及び左側第2進退部材55は、付勢部材52,56,57の付勢力に抗して車両前方へ後退しており、車両後方へ進出することは阻止される。一方、その後、両ドア20,30が共にその引掛部22,32が第1進退部材51のフック部51Ra,51Laに当接しない高さ位置まで押圧操作されると、その第1進退部材51が付勢部材52の付勢力により車両後方へ揺動してその第1進退部材51の上部が車両後方へ進出する(図7参照)。
【0066】
すなわち、ロック機構50には、ドア20,30の閉動作中、両引掛部22,32が共に第1進退部材51のフック部51Ra,51Laに当接しない高さ位置まで押圧操作されない限り、第1進退部材51が両ドア20,30を閉状態にロックできるロック位置まで車両後方へ進出しないオーバーストロークが設けられている。これは、ギヤや軸などのガタ或いはヒンジやアームなどのリンクの撓みなどに起因した二つのドア20,30の開閉動作の差を吸収して、両ドア20,30を同時にロック位置に保持させるためである。
【0067】
ドア20,30の閉動作中に引掛部22,32が第1進退部材51のフック部51Ra,51Laに当接しない高さ位置に達し第1進退部材51の上部が車両後方へ進出した後、その引掛部22,32が第2進退部材54,55の離間対向部54b,55bの車両後方側端面に車両前後方向で対向する高さ位置にあるときは、その引掛部22,32の存在によりその第2進退部材54,55が車両後方へ進出することは阻止される(図7参照)。この進出阻止動作は、ドア20,30ごとに独立して行われる。
【0068】
一方、ドア20,30の閉動作中に引掛部22,32が第1進退部材51のフック部51Ra,51Laに当接しない高さ位置に達し第1進退部材51の上部が車両後方へ進出した後、第2進退部材54,55の離間対向部54b,55bの車両後方側端面に車両前後方向で対向する高さ位置にないときは、その第2進退部材54,55が付勢部材56,57の付勢力により車両後方へ進出する(図8参照)。この進出動作は、ドア20,30ごとに独立して行われる。
【0069】
上記の如く両ドア20,30の引掛部22,32が共に第1進退部材51のフック部51Ra,51Laに当接しない高さ位置に達して第1進退部材51の上部が車両後方へ進出した後、使用者によるドア20,30への押圧操作が解除されると、バネ部材43R,43Lの付勢力により両ドア20,30が互いに連動して開方向に戻り動作する。かかる両ドア20,30の開方向への戻り動作は、ドア20,30の引掛部22,32の上面が、車両後方へ進出している第1進退部材51のフック部51Ra,51Laの下面に当接して引っ掛かるまで行われる。そして、引掛部22,32の上面がフック部51Ra,51Laの下面に引っ掛かると、ドア20,30のそれ以上の戻り動作が規制され、ドア20,30が閉状態にロックされる。
【0070】
また、ドア20,30の引掛部22,32の上面が第1進退部材51のフック部51Ra,51Laの下面に引っ掛かると、その引掛部22,32が第2進退部材54,55の離間対向部54b,55bの車両後方側端面に車両前後方向で対向しない高さ位置となり、第1進退部材51のフック部51Ra,51Laとその第2進退部材54,55の離間対向部54b,55bとの間に進入可能な高さ位置となる。この場合には、第2進退部材54,55が付勢部材56,57の付勢力により車両後方へ進出する。
【0071】
第1進退部材51が付勢部材52の付勢力により車両後方へ進出しかつ第2進退部材54,55が付勢部材56,57の付勢力により車両後方へ進出すると、ドア20,30の引掛部22,32が、その上面が第1進退部材51のフック部51Ra,51Laに引っ掛かった状態で隙間60R,60Lに進入することとなる。
【0072】
第1進退部材51は、付勢部材52の付勢力により車両後方へ進出した後、操作部材53が下方へ押圧操作されない限り車両前方へ後退しない。また、第2進退部材54,55は、付勢部材56,57の付勢力により車両後方へ進出した後、第1進退部材51が後退しない限りすなわち操作部材53が下方へ押圧操作されない限り車両前方へ後退しない。
【0073】
このため、ドア20,30の引掛部22,32が隙間60R,60Lに進入した後は、操作部材53が下方へ押圧操作されない限り、ドア20,30が、その引掛部22,32が第1進退部材51と第2進退部材54,55との間に挟まれた状態に維持される。この場合には、ドア20,30が開動作し或いは閉動作しようとしても、その開動作及び閉動作が共に阻止される。このロック機構50によれば、ドア20,30が閉状態にロックされた状態で車両振動時やそのドア20,30への接触時などにドア20,30が開方向や閉方向にばたつくのを抑えることができ、これにより、閉状態でのドア20,30の姿勢(例えば、ドア20,30がアームレストとして使用されるときの姿勢)を安定化させることができる。
【0074】
上記の構成においては、閉状態でのドア20,30のばたつきを抑えてその姿勢を安定化させるうえで、それぞれ車両前後方向に進退する第1進退部材51、右側第2進退部材54、及び左側第2進退部材55を用いる。具体的には、それぞれ車両後方へ進出した第1進退部材51と第2進退部材54,55との間にドア20,30の引掛部22,32を挟む。
【0075】
この点、閉状態でのドア20,30のばたつきを抑えてその姿勢を安定化させるうえで、閉状態で両ドア20,30を開方向に大きな力で付勢しておくことは不要である。このため、使用者によるドア20,30への押圧閉操作時における両ドア20,30を開状態から閉動作させるときの閉操作荷重が大きくなることは回避されると共に、バネ部材43R,43Lとは別の、その閉操作荷重のための大きな力を発生する付勢部材を用意することは不要である。
【0076】
従って、観音開き型リッド装置1によれば、閉状態でのドア20,30のばたつきを、閉状態で両ドア20,30を開方向に大きな力で付勢することなくすなわち閉操作荷重を大きくすることなく実現することができる。
【0077】
尚、上記の実施形態においては、右側ドア20及び左側ドア30が特許請求の範囲に記載した「第1ドア」及び「第2ドア」に、右側第2進退部材54及び左側第2進退部材55が特許請求の範囲に記載した「第2進退部材」に、右側第2進退部材54及び左側第2進退部材55が特許請求の範囲に記載した「(第2進退部材の)第1ドア用進退部」及び「(第2進退部材の)第2ドア用進退部」に、車両後方が特許請求の範囲に記載した「接近方向」に、車両前方が特許請求の範囲に記載した「離間方向」に、付勢部材52が特許請求の範囲に記載した「第1付勢部材」に、付勢部材56,57が特許請求の範囲に記載した「第2付勢部材」に、右側ドア20の引掛部22及び左側ドア30の引掛部32が特許請求の範囲に記載した「引掛部」に、引掛部22,32が特許請求の範囲に記載した「第1引掛部」及び「第2引掛部」に、それぞれ相当している。
【0078】
また、上記の実施形態においては、右側フック部51Ra及び左側フック部51Laが特許請求の範囲に記載した「(第1進退部材の)第1ドア用進退部」及び「(第1進退部材の)第2ドア用進退部」に、第1進退部材51のフック部51Ra,51Laの車両後方側の先端部が特許請求の範囲に記載した「(第1進退部材の)離間対向部」に、右側第2進退部材54の離間対向部54b及び左側第2進退部材55の離間対向部55bが特許請求の範囲に記載した「(第2進退部材の)離間対向部」に、それぞれ相当している。
【0079】
ところで、上記の実施形態においては、右側第2進退部材54が車両前後方向へ進退すると共に、左側第2進退部材55が車両前後方向へ進退し、その右側第2進退部材54の進退とその左側第2進退部材55の進退とがそれぞれ独立して行われる。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、右側第2進退部材54の進退と左側第2進退部材55の進退とが互いに連動して行われるものであってもよい。
【0080】
また、上記の実施形態においては、第1進退部材51がピン18を中心にして揺動してその進退部材51の上部が車両前後方向へ進退する。また、右側第2進退部材54がピン18を中心にして揺動してその右側第2進退部材54の上部が車両前後方向へ進退すると共に、左側第2進退部材55がピン18を中心にして揺動してその左側第2進退部材55の上部が車両前後方向へ進退する。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、図9に示す如く、第1進退部材51に代えて第1進退部材151を用いると共に、第2進退部材54,55に代えて第2進退部材154,155を用いるものとしてもよい。
【0081】
第1進退部材151は、車両前後方向への移動により車両前後方向に進退する。第1進退部材151は、ボックス本体10に車両前後方向に進退可能に支持されている。第1進退部材151は、車幅方向に水平に延びる板状の基部(図示せず)と、基部の右端部から車両後方に向けて延びる右側ロッド部151Rと、右側ロッド部151Rとは車幅方向に離れて設けられ、基部の左端部から車両後方に向けて延びる左側ロッド部151Lと、を有している。右側ロッド部151Rの先端部151Ra及び左側ロッド部151Lの先端部151Laはそれぞれ、車両前方側から車両後方側にかけて上方から下方へ傾斜する傾斜面51sを有している。右側ロッド部151Rと左側ロッド部151Lとは、一体化されて進退する。第1進退部材151は、付勢部材152により車両後方へ付勢されている。付勢部材152の一端は第1進退部材151の前端面に支持され、かつ、付勢部材152の他端はボックス本体10(具体的に、前板部材15)に支持されている。
【0082】
第2進退部材154,155は、車両前後方向への移動により車両前後方向に進退する。第2進退部材154,155は、ボックス本体10に車両前後方向に進退可能に支持されている。第2進退部材154,155は、車両前後方向にロッド状に延びている。右側第2進退部材154は、第1進退部材151の右側ロッド部151Rに対して車幅方向外側に隣接して配置されている。左側第2進退部材155は、第1進退部材151の左側ロッド部151Lに対して車幅方向外側に隣接して配置されている。第2進退部材154,155は、付勢部材156,157により車両後方へ付勢されている。付勢部材156,157の一端は第2進退部材154,155の前端面に支持され、かつ、付勢部材156,157の他端はボックス本体10(具体的に、前板部材15)に支持されている。
【0083】
第2進退部材154,155は、第1進退部材151と第2進退部材154,155との間に上下方向の隙間60R,60Lを形成する離間対向部154b,155bと、第2進退部材154,155を第1進退部材151の車両前方への後退に連動して車両前方へ後退させる被押圧部154c,155cと、を有している。離間対向部154b,155bは、第1進退部材151の下方に配置されている。離間対向部154b,155bの上面は、第1進退部材151の先端部151Ra,151Laの下面に対して隙間60R,60Lを空けて離間して対向している。
【0084】
被押圧部154c,155cは、第2進退部材154,155の前部で後部よりも上方へ突出する部位である。また、第1進退部材151は、被押圧部154c,155cが嵌って係合する溝部151Rb,151Lbを有している。被押圧部154c,155cの後面は、第1進退部材151及び第2進退部材154,155がそれぞれ最も車両後方に進出している状態で、第1進退部材151の溝部151Rb,151Lb内の前面に当接し或いは僅かな隙間を空けて離間している。被押圧部154c,155cは、第1進退部材151が車両前方へ後退したときにその第1進退部材151から車両前方へ押圧されて、車両前方へ移動する。これにより、第2進退部材154,155が、第1進退部材151の後退に連動して車両前方へ後退する。
【0085】
この変形形態の構成においても、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0086】
また、上記の実施形態においては、ロック機構50の第1進退部材51及び第2進退部材54,55が、ボックス本体10の前板部材15が設けられた前側に配置されている。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、ロック機構50の第1進退部材51及び第2進退部材54,55が、ボックス本体10の後板部材16が設けられた後側に配置されていてもよい。
【0087】
更に、上記の実施形態においては、ロック機構50の第1進退部材51及び第2進退部材54,55がボックス本体10に支持されると共に、引掛部22,32がドア20,30に設けられる。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、ロック機構50の第1進退部材51及び第2進退部材54,55がドア20,30に支持されると共に、引掛部22,32がボックス本体10に設けられることとしてもよい。
【0088】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1:観音開き型リッド装置、10:ボックス本体、11:開口、12:収容部、20:右側ドア、21:溝部、22:引掛部、30:左側ドア、31:溝部、32:引掛部、40:開閉機構、50:ロック機構、51:進退部材(第1進退部材)、51Ra:フック部(右側フック部)、51La:フック部(左側フック部)、51s:傾斜面、52:付勢部材、53:操作部材、54:進退部材(右側第2進退部材)、54b:離間対向部、54c:被押圧部、55:進退部材(左側第2進退部材)、55b:離間対向部、55c:被押圧部、56,57:付勢部材、60R,60L:隙間、151:進退部材(第1進退部材)、151Ra,151La:先端部、152:付勢部材、154:進退部材(右側第2進退部材)、154b:離間対向部、154c:被押圧部、155:進退部材(左側第2進退部材)、155b:離間対向部、155c:被押圧部、156,157:付勢部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9