(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】自動変速機
(51)【国際特許分類】
F16D 25/0638 20060101AFI20220830BHJP
F16D 13/52 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
F16D25/0638
F16D13/52 C
(21)【出願番号】P 2019197716
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】石坂 友隆
(72)【発明者】
【氏名】岩下 典生
(72)【発明者】
【氏名】上田 健輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 将倫
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-82196(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063857(WO,A1)
【文献】特開2018-115741(JP,A)
【文献】特開2001-304293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00-48/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機ケースの縦壁部の軸方向一方側にクラッチが配置されると共に前記縦壁部の軸方向他方側に所定部品が配置され、前記クラッチに前記縦壁部を通じて前記クラッチの径方向内側から作動油が供給される自動変速機であって、
前記縦壁部の径方向内側において前記縦壁部の軸方向一方側及び軸方向他方側に軸方向に延びる円筒部と、前記円筒部から径方向外側に延びて前記縦壁部の軸方向他方側に結合されるフランジ部とを有するスリーブを備え、
前記フランジ部は、前記所定部品の径方向内側に配置され、
前記クラッチに作動油を供給する供給油路は、前記縦壁部から、前記縦壁部と前記フランジ部との結合部を介して軸方向に延びる第1油路と、前記第1油路に接続されて径方向に延びる前記フランジ部内の第2油路と、前記第2油路に接続されて軸方向に延びる前記円筒部内の第3油路とを通じて、前記クラッチの径方向内側に作動油を供給するように構成されている、
ことを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
前記所定部品は、ブレーキである、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機。
【請求項3】
前記スリーブは、前記円筒部の外周側を構成する第1円筒部と前記フランジ部とを有する第1スリーブと、前記円筒部の内周側を構成して前記第1円筒部の内面に取り付けられる第2円筒部を有する第2スリーブとを備え、
前記第3油路は、前記第1円筒部の内面と前記第2円筒部の外面との間に形成される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動変速機。
【請求項4】
前記縦壁部の軸方向一方側に複数のクラッチが配置され、
前記供給油路は、前記複数のクラッチにそれぞれ締結用作動油を供給する複数の供給油路を含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の自動変速機。
【請求項5】
前記縦壁部の軸方向一方側に複数のクラッチが配置され、
前記供給油路は、前記複数のクラッチに潤滑用作動油を供給する供給油路を含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の自動変速機。
【請求項6】
前記縦壁部に、前記スリーブを結合する結合部材によって前記スリーブと共に前記所定部品であるブレーキのリターンスプリングを受けるプレートが結合される、
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される自動変速機に関し、車両用の自動変速機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動変速機は一般に、複数のプラネタリギヤセット(遊星歯車機構)とクラッチやブレーキなどの複数の摩擦締結要素とを備えている。前記自動変速機は、油圧制御によって複数の摩擦締結要素を選択的に締結して、減速比の異なる複数の変速段を達成するように構成されている。
【0003】
例えば特許文献1には、4つのプラネタリギヤセットと、3つのクラッチ及び2つのブレーキを有する5つの摩擦締結要素とを備えた自動変速機が開示されている。前記自動変速機は、3つの摩擦締結要素を選択的に締結して前進8段及び後退1段を実現するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載されるように、複数の摩擦締結要素を有する自動変速機において、変速機ケースの径方向に延びる縦壁部の反駆動源側に複数のクラッチが軸方向に並んで配置されると共に変速機ケースの縦壁部の駆動源側にブレーキが配置される場合がある。
【0006】
このような自動変速機では、複数のクラッチに作動油を供給する場合、変速機ケースの縦壁部に結合されたスリーブを用い、変速機ケースの下方に配置されたバルブボディから変速機ケースの縦壁部及びスリーブを通じて複数のクラッチに径方向内側から作動油を供給することがある。
【0007】
図10に示すように、自動変速機200において、変速機ケース201の縦壁部202に結合されたスリーブ203を用い、変速機ケース201の縦壁部202及びスリーブ203を通じてクラッチ210,220,230に径方向内側から作動油を供給することがある。
【0008】
自動変速機200では、変速機ケース201の縦壁部202の反駆動源側にクラッチ210,220,230が配置され、縦壁部202の駆動源側にブレーキ240が配置されている。クラッチ210,220,230への作動油の供給油路250を構成するスリーブ203は、円筒部204と円筒部204から径方向外側に延びて縦壁部202の反駆動源側に結合されるフランジ部205とを有している。
【0009】
クラッチ210,220,230への作動油の供給油路250は、縦壁部202から、縦壁部202とフランジ部205との結合部206を介して径方向に延びるフランジ部205内の第1油路250aと、軸方向に延びる円筒部204内の第2油路250bとを通じ、クラッチ210,220,230に径方向内側から油圧室211、221、231などに作動油を供給するように構成されている。
【0010】
自動変速機200では、変速機ケース201の縦壁部202の軸方向一方側にスリーブ203のフランジ部205が配置され、縦壁部202の軸方向他方側にブレーキ240が配置され、縦壁部202の両側にブレーキ240及びフランジ部205が配置されていることから、軸方向寸法が大きな構成とされている。
【0011】
そこで、本発明は、変速機ケースの縦壁部の軸方向一方側にクラッチが配置される自動変速機において、縦壁部を通じてクラッチに径方向内側から作動油を供給しつつ軸方向にコンパクトに構成することができる自動変速機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、変速機ケースの縦壁部の軸方向一方側にクラッチが配置されると共に前記縦壁部の軸方向他方側に所定部品が配置され、前記クラッチに前記縦壁部を通じて前記クラッチの径方向内側から作動油が供給される自動変速機であって、前記縦壁部の径方向内側において前記縦壁部の軸方向一方側及び軸方向他方側に軸方向に延びる円筒部と、前記円筒部から径方向外側に延びて前記縦壁部の軸方向他方側に結合されるフランジ部とを有するスリーブを備え、前記フランジ部は、前記所定部品の径方向内側に配置され、前記クラッチに作動油を供給する供給油路は、前記縦壁部から、前記縦壁部と前記フランジ部との結合部を介して軸方向に延びる第1油路と、前記第1油路に接続されて径方向に延びる前記フランジ部内の第2油路と、前記第2油路に接続されて軸方向に延びる前記円筒部内の第3油路とを通じて、前記クラッチの径方向内側に作動油を供給するように構成されている自動変速機を提供する。
【0013】
本発明によれば、自動変速機に、変速機ケースの縦壁部の径方向内側において軸方向に延びる円筒部と、縦壁部の軸方向他方側に結合されるフランジ部とを有するスリーブが備えられる。スリーブは、クラッチに作動油を供給する供給油路を構成し、フランジ部が所定部品の径方向内側に配置される。
【0014】
これにより、クラッチに径方向内側から作動油を供給する供給油路を構成するスリーブのフランジ部が、変速機ケースの軸方向一方側に配置される場合に比して、変速機ケースの縦壁部の軸方向他方側に配置される所定部品と軸方向にオーバーラップさせて配置されるので軸方向寸法をコンパクトに構成することができる。したがって、変速機ケースの縦壁部の軸方向一方側にクラッチが配置される自動変速機において、縦壁部を通じてクラッチに径方向内側から作動油を供給しつつ軸方向にコンパクトに構成することができる。
【0015】
前記所定部品は、ブレーキである。
【0016】
本構成により、変速機ケースの縦壁部の軸方向一方側にクラッチが配置されると共に前記縦壁部の軸方向他方側にブレーキが配置される自動変速機において、スリーブのフランジ部がブレーキと軸方向にオーバーラップさせて配置されるので、軸方向寸法をコンパクトに構成することができる。
【0017】
前記スリーブは、前記円筒部の外周側を構成する第1円筒部と前記フランジ部とを有する第1スリーブと、前記円筒部の内周側を構成して前記第1円筒部の内面に取り付けられる第2円筒部を有する第2スリーブとを備え、前記第3油路は、前記第1円筒部の内面と前記第2円筒部の外面との間に形成されることが好ましい。
【0018】
本構成により、第1スリーブに第2スリーブを取り付けることで第1円筒部の内面と第2円筒部の外面との間に第3油路が形成されるので、第3油路を比較的容易に形成することができる。特にスリーブに複数の第3油路が形成される場合、複数の第3油路を比較的容易に形成することができる。
【0019】
前記供給油路は、複数のクラッチにそれぞれ締結用作動油を供給する複数の供給油路を含み得る。
【0020】
本構成により、自動変速機を軸方向にコンパクトに構成しつつ、変速機ケースの縦壁部の軸方向一方側に配置される複数のクラッチに径方向内側から締結用作動油を供給することができる。
【0021】
前記供給油路は、複数のクラッチに潤滑用作動油を供給する供給油路を含み得る。
【0022】
本構成により、自動変速機を軸方向にコンパクトに構成しつつ、変速機ケースの縦壁部の軸方向一方側に配置される複数のクラッチに径方向内側から潤滑用作動油を供給することができる。
【0023】
前記縦壁部に、前記スリーブを結合する結合部材によって前記スリーブと共に所定部品であるブレーキのリターンスプリングを受けるプレートが結合されることが好ましい。
【0024】
本構成により、変速機ケースの縦壁部に、スリーブを結合する結合部材によってブレーキのリターンスプリングを受けるプレートがスリーブと共に結合されるので、リターンスプリングを受けるプレートを結合する結合部材を別途設ける必要がなく、部品点数や組立工数を削減することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る自動変速機によれば、変速機ケースの縦壁部の軸方向一方側にクラッチが配置される自動変速機において、縦壁部を通じてクラッチに径方向内側から作動油を供給しつつ軸方向にコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係る自動変速機の骨子図である。
【
図3】自動変速機の縦壁部及びその周辺を示す断面図である。
【
図4】
図3に示す自動変速機のクラッチ周辺を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図3に示す自動変速機のブレーキ周辺を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図3に示す自動変速機のブレーキ周辺を拡大して示す別の断面図である。
【
図7】
図3に示す自動変速機のブレーキ周辺を拡大して示す更に別の断面図である。
【
図9】
図8のY9a-Y9a及びY9b-Y9b線に沿ったスリーブの断面図である。
【
図10】従来の自動変速機の縦壁部及びその周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る自動変速機の骨子図である。この自動変速機10は、エンジンなどの駆動源にトルクコンバータなどの流体伝動装置を介することなく連結されている。自動変速機10は、変速機ケース11内に、駆動源に連結されて駆動源側(図の左側)に配設された入力軸12と、反駆動源側(図の右側)に配設された出力軸13とを有している。自動変速機10は、入力軸12と出力軸13とが同一軸線上に配置されたフロントエンジン・リヤドライブ車用等の縦置き式のものである。
【0029】
入力軸12及び出力軸13の軸心上には、駆動源側から、第1、第2、第3、第4プラネタリギヤセット(以下、単に「第1、第2、第3、第4ギヤセット」という)PG1,PG2,PG3,PG4が配設されている。
【0030】
変速機ケース11内において、第1ギヤセットPG1の駆動源側に第1クラッチCL1が配設され、第1クラッチCL1の駆動源側に第2クラッチCL2が配設され、第2クラッチCL2の駆動源側に第3クラッチCL3が配設されている。第3クラッチCL3の駆動源側に第1ブレーキBR1が配設され、第3ギヤセットPG3の駆動源側且つ第2ギヤセットPG2の反駆動源側に第2ブレーキBR2が配設されている。
【0031】
第1、第2、第3、第4ギヤセットPG1,PG2,PG3,PG4は、いずれも、キャリヤに支持されたピニオンがサンギヤとリングギヤに直接噛合するシングルピニオン型である。第1、第2、第3、第4ギヤセットPG1,PG2,PG3,PG4はそれぞれ、回転要素として、サンギヤS1,S2,S3,S4と、リングギヤR1,R2,R3,R4と、キャリヤC1,C2,C3,C4とを有している。
【0032】
第1ギヤセットPG1は、サンギヤS1が軸方向に2分割されたダブルサンギヤ型である。サンギヤS1は、駆動源側に配置された第1サンギヤS1aと、反駆動源側に配置された第2サンギヤS1bとを有している。第1及び第2サンギヤS1a,S1bは、同一歯数を有し、キャリヤC1に支持された同一ピニオンに噛合する。これにより、第1及び第2サンギヤS1a,S1bは、常に同一回転する。
【0033】
自動変速機10では、第1ギヤセットPG1のサンギヤS1、具体的には第2サンギヤS1bと第4ギヤセットPG4のサンギヤS4とが常時連結され、第1ギヤセットPG1のリングギヤR1と第2ギヤセットPG2のサンギヤS2とが常時連結され、第2ギヤセットPG2のキャリヤC2と第4ギヤセットPG4のキャリヤC4とが常時連結され、第3ギヤセットPG3のキャリヤC3と第4ギヤセットPG4のリングギヤR4とが常時連結されている。
【0034】
入力軸12は、第1ギヤセットPG1のキャリヤC1に第1サンギヤS1a及び第2サンギヤS1bの間を通じて常時連結され、出力軸13は、第4ギヤセットPG4のキャリヤC4に常時連結されている。
【0035】
第1クラッチCL1は、入力軸12及び第1ギヤセットPG1のキャリヤC1と第3ギヤセットPG3のサンギヤS3との間に配設されて、これらを断接するようになっており、第2クラッチCL2は、第1ギヤセットPG1のリングギヤR1及び第2ギヤセットPG2のサンギヤS2と第3ギヤセットPG3のサンギヤS3との間に配設され、これらを断接するようになっており、第3クラッチCL3は、第2ギヤセットPG2のリングギヤR2と第3ギヤセットPG3のサンギヤS3との間に配設されて、これらを断接するようになっている。
【0036】
第1ブレーキBR1は、変速機ケース11と第1ギヤセットPG1のサンギヤS1、具体的には第1サンギヤS1aとの間に配設されて、これらを断接するようになっており、第2ブレーキBR2は、変速機ケース11と第3ギヤセットPG3のリングギヤR3との間に配設されて、これらを断接するようになっている。
【0037】
第1、第2、第3クラッチCL1,CL2,CL3はそれぞれ、シリンダと、シリンダに嵌合されたピストンとによって画成された油圧室P1,P2,P3を有し、油圧室P1,P2,P3に締結用作動油が供給されて締結用油圧が供給されたときに摩擦板が締結され、内外一対の回転部材が結合されるようになっている。
【0038】
第1、第2ブレーキBR1,BR2はそれぞれ、シリンダと、シリンダに嵌合されたピストンとによって画成された油圧室P4,P5を有し、油圧室P4,P5に締結用作動油が供給されて締結用油圧が供給されたときに摩擦板が締結され、第1、第2ブレーキBR1,BR2の回転部材が変速機ケース11に結合されるようになっている。
【0039】
変速機ケース11には、第1ブレーキBR1と第3クラッチCL3との間において径方向内側に延びる縦壁部21が一体的に設けられ、縦壁部21に、縦壁部21の内側において軸方向に延びる円筒部22と円筒部22から径方向外側に延びるフランジ部23とを有するスリーブ24が結合されている。スリーブ24の円筒部22の反駆動源側の外周側には、第1クラッチCL1の外側回転部材と第2、第3クラッチCL2、CL3の内側回転部材と第3ギヤセットPG3のサンギヤS3とを連結する動力伝達部材14が配置されている。
【0040】
変速機ケース11の縦壁部21及びスリーブ24に、変速機ケース11の下方に配置されたバルブコントロールユニットから第3、第2、第1クラッチCL3,CL2,CL1の油圧室P3,P2,P1にそれぞれ通じる供給油路a、b、cが形成されると共に前記バルブコントロールユニットから第3、第2、第1クラッチCL3,CL2,CL1の摩擦板に潤滑用作動油を供給する供給油路が形成されている。変速機ケース11の縦壁部21にはまた、前記バルブコントロールユニットから第1ブレーキBR1の油圧室P4に通じる供給油路eが形成されている。
【0041】
変速機ケース11には、第2ブレーキBR2と第2ギヤセットPG2との間において径方向内側に延びる縦壁部35が一体的に設けられ、縦壁部35の内周側に反駆動源側に軸方向に延びる円筒部36が設けられている。変速機ケース11の縦壁部35及び円筒部36に、前記バルブコントロールユニットから第2ブレーキBR2の油圧室P5に通じる供給油路fが形成されている。
【0042】
以上の構成により、自動変速機10は、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3、第1ブレーキBR1、第2ブレーキBR2の締結状態の組み合わせにより、
図2に示すように、Dレンジでの1~8速と、Rレンジでの後退速とが形成されるようになっている。
【0043】
自動変速機10では、変速機ケース11の縦壁部21の反駆動源側に第3、第2、第1クラッチCL3,CL2,CL1が配置され、縦壁部21の駆動源側に所定部品としての第1ブレーキBR1が配置され、第3、第2、第1クラッチCL3,CL2,CL1に縦壁部21を通じて径方向内側から作動油が供給されるようになっている。
【0044】
本実施形態に係る自動変速機10の縦壁部21及びその周辺の構造について、
図3から
図9を参照しながら説明する。
【0045】
図3は、自動変速機の縦壁部及びその周辺を示す断面図である。
図3に示すように、変速機ケース11は、筒状に形成された第1ケース部材41と、第1ケース部材41の駆動源側に配設されて筒状に形成された第2ケース部材42とを備えている。第2ケース部材42は、第1ケース部材41に結合部材としての締結ボルトB1を用いて固定されている。変速機ケース11の縦壁部21は、第2ケース部材42によって構成されている。
【0046】
変速機ケース11の縦壁部21には、筒状に形成されたスリーブ24が結合されている。スリーブ24は、縦壁部21の径方向内側において縦壁部21の反駆動源側及び駆動源側に軸方向に延びる円筒部22と、円筒部22から径方向外側に延びて縦壁部21の駆動源側に結合されるフランジ部23とを有している。
【0047】
スリーブ24は、第1ギヤセットPG1の第1サンギヤS1aと第1ブレーキBR1の回転部材とを連結する動力伝達部材15の外周側に配置されている。動力伝達部材15は、入力軸12の外周側に配置されている。
【0048】
スリーブ24の円筒部22の反駆動源側の外周側には、第1クラッチCL1の外側回転部材と第2、第3クラッチCL2,CL3の内側回転部材と第3ギヤセットPG3のサンギヤS3とを連結する動力伝達部材14が配置されている。
【0049】
動力伝達部材14は、第1クラッチCL1の外側回転部材及び第2クラッチCL2の内側回転部材に連結された動力伝達部材16と、動力伝達部材16にスプライン係合されると共に第3クラッチCL3の内側回転部材に連結されて径方向外側に延びる動力伝達部材17と、動力伝達部材17にスプライン係合されると共に反駆動源側に延びて第3ギヤセットPG3のサンギヤS3に連結される動力伝達部材18とを備えている。
【0050】
前述したように、変速機ケース11の縦壁部21の反駆動源側に第3、第2、第1クラッチCL3,CL2,CL1が配置され、縦壁部21の駆動源側に第1ブレーキBR1が配置されている。
【0051】
図4は、
図3に示す自動変速機のクラッチ周辺を拡大して示す断面図、
図5は、
図3に示す自動変速機のブレーキ周辺を拡大して示す断面図、
図6は、
図3に示す自動変速機のブレーキ周辺を拡大して示す別の断面図である。
図7は、
図3に示す自動変速機のブレーキ周辺を拡大して示す更に別の断面図である。
【0052】
図4に示すように、第1、第2、第3クラッチCL1,CL2,CL3はそれぞれ、外側回転部材であるドラム部材51,61,71と、内側回転部材であるハブ部材52,62,72と、ドラム部材51,61,71とハブ部材52,62,72との間に配置される複数の摩擦板53,63,73と、複数の摩擦板53,63,73を押圧するピストン54,64,74と、ピストン54,64,74を摩擦板方向に付勢する締結用作動油が供給されて締結用油圧が供給される油圧室P1,P2,P3を有している。
【0053】
第1、第2、第3クラッチCL1,CL2,CL3はそれぞれ、油圧室P1,P2,P3に締結用油圧が供給されたときに、ピストン54,64,74が摩擦板53,63,73を押圧してドラム部材51,61,71とハブ部材52,62,72とを結合することにより締結されるようになっている。
【0054】
第1、第2、第3クラッチCL1,CL2,CL3は、ピストン54,64,74を挟んで油圧室P1,P2,P3の反対側に、ピストン54,64,74を反摩擦板方向に付勢する作動油が供給される遠心バランス室P1´,P2´,P3´を有している。
【0055】
遠心バランス室P1´,P2´,P3´は、第1、第2、第3クラッチCL1,CL2,CL3の解放時に油圧室P1,P2,P3内の作動油に作用する遠心力によりピストン54,64,74が摩擦板方向に押圧されることによる摩擦板53,63,73の引き摺りを防止するためのもので、供給された作動油に作用する遠心力によりピストン54,64,74を反摩擦板方向に付勢する付勢力を発生させ、この付勢力により、摩擦板方向の押圧力をキャンセルするようになっている。遠心バランス室P1´,P2´,P3´には、ピストン54,64,74を反摩擦板方向に付勢するリターンスプリング55,65,75が配設されている。
【0056】
第1、第2、第3クラッチCL1,CL2,CL3はそれぞれ、遠心バランス室P1´,P2´,P3´に供給される作動油の一部が潤滑用作動油として、矢印56,66,76に示すように、第1、第2、第3クラッチCL1,CL2,CL3の摩擦板53,63,73に供給されるようになっている。
【0057】
自動変速機1では、第1、第2、第3クラッチCL1,CL2,CL3の油圧室P1,P2,P3は、スリーブ24の円筒部22の外周側に動力伝達部材14を介して配置されている。第1、第2、第3クラッチCL1,CL2,CL3の遠心バランス室P1´,P2´,P3´は、ピストン54,64,74を挟んで油圧室P1、P2、P3の反対側に配置されている。
【0058】
図5に示すように、第1ブレーキBR1は、変速機ケース11の縦壁部21に結合されるドラム部材81と、回転部材であるハブ部材82と、ドラム部材81とハブ部材82との間に配置される複数の摩擦板83と、複数の摩擦板83を押圧するピストン84と、ピストン84を摩擦板方向に付勢する締結用作動油が供給されて締結用油圧が供給される油圧室P4を有している。
【0059】
第1ブレーキBR1は、ピストン84を解放方向に付勢するリターンスプリング85を有している。リターンスプリング85は、複数の摩擦板83の反駆動源側に配置されるピストン84の駆動源側且つハブ部材82の径方向内側に配置されている。
【0060】
リターンスプリング85の反駆動源側の端部は、リターンスプリング85を受ける第1プレート86を介してピストン84の反駆動源側に支持されている。リターンスプリング85の駆動源側の端部は、リターンスプリング85を受ける第2プレート87を介して変速機ケース11の縦壁部21に支持されている。
【0061】
第1プレート86は、環状に形成され、駆動源側に円筒状に突出してリターンスプリング85が装着されるスプリングガイド部を備えている。
【0062】
第2プレート87は、環状に形成され、外周部87aに反駆動源側に円筒状に突出してリターンスプリング85が装着されるスプリングガイド部を備えている。第2プレート87は、
図6に示すように、内周部87bに軸方向に延びるボルト挿通穴87cが形成されている。スリーブ24のフランジ部23に、ボルト挿通穴87cに対応して軸方向に延びるボルト挿通穴23aが形成され、変速機ケース11の縦壁部21にボルト挿通穴87cに対応して軸方向に延びるネジ穴21aが形成されている。
【0063】
第2プレート87は、変速機ケース11の縦壁部21にスリーブ24を結合する結合部材としての締結ボルトB2を駆動源側から第2プレート87のボルト挿通穴87c及びスリーブ24のボルト挿通穴23aを通じて縦壁部21のネジ穴21aに螺合させることで縦壁部21にスリーブ24と共に結合されている。第2プレート87は、周方向に異なる位置に配置された複数の締結ボルトB2によって縦壁部21にスリーブ24と共に結合されている
【0064】
第1ブレーキBR1の摩擦板83には、
図5の矢印88に示すように、前記バルブコントロールユニットから、入力軸12内の軸方向油路12a、入力軸12の径方向油路12b、動力伝達部材15の径方向油路15aを通じて潤滑用作動油が供給されるようになっている。
【0065】
自動変速機10は、変速機ケース11の縦壁部21の径方向内側において軸方向に延びる円筒部22と、縦壁部21の駆動源側に結合されるフランジ部23とを有するスリーブ24を備え、フランジ部23は、第1ブレーキBR1の径方向内側に配置されている。
【0066】
図8は、スリーブの断面図である。
図9は、
図8のY9a-Y9a及びY9b-Y9b線に沿ったスリーブの断面図であり、
図9(a)及び
図9(b)はそれぞれ、
図8のY9a-Y9a及びY9b-Y9b線に沿ったスリーブの断面図である。
【0067】
図8及び
図9に示すように、スリーブ24は、第1スリーブ110と第1スリーブ110内に圧入嵌合される第2スリーブ120とを備えて構成されている。第1スリーブ110は、軸方向に略円筒状に延びる円筒部(第1円筒部)111と、円筒部111の駆動源側から径方向外側に延びて縦壁部21の駆動源側に結合されるフランジ部112とを有している。
【0068】
第1スリーブ110は、フランジ部112に径方向に延びると共に第1スリーブ110の内面及び外面に開口する径方向油路113が形成されている。第1スリーブ110はまた、フランジ部112に径方向油路113に接続されて軸方向に延びると共にフランジ部112の反駆動源側に開口する軸方向油路114が形成されている。
【0069】
図9(a)に示すように、第1スリーブ110には、第3クラッチCL3の油圧室P3に作動油を供給する第3クラッチ用、第2クラッチCL2の油圧室P2に作動油を供給する第2クラッチ用、第1クラッチCL1の油圧室P1に作動油を供給する第1クラッチ用、第3クラッチCL3、第2クラッチCL2、第1クラッチCL1の遠心バランス室P3´,P2´,P1´に作動油を供給すると共に第3クラッチCL3、第2クラッチCL2、第1クラッチCL1の摩擦板73,63,53に作動油を供給する潤滑用の径方向油路113a,113b,113c,113d及び軸方向油路114a,114b,114c,114dが周方向に異なる位置に形成されている。
【0070】
第1スリーブ110のフランジ部112の外面には、
図5に示すように、環状に形成された閉塞部材30が圧入されて取り付けられている。閉塞部材30は、フランジ部112の径方向油路113、具体的には径方向油路113a,113b,113c,113dの開口部を閉塞するように第1スリーブ110に取り付けられている。
【0071】
第1スリーブ110は、
図8に示すように、円筒部111の反駆動源側に径方向に延びて軸方向油路114に接続される径方向油路115が形成されている。第1スリーブ110には、第3クラッチ用、第2クラッチ用、第1クラッチ用、潤滑用の径方向油路115a,115b,115c,115dが形成されている。
【0072】
図4に示すように、第1スリーブ110の径方向油路115a,115b,115cはそれぞれ、第3クラッチCL3の油圧室P3、第2クラッチCL2の油圧室P2、第1クラッチCL1の油圧室P1に接続されている。第1スリーブ110の径方向油路115dは、第3、第2、第1クラッチCL3,CL2,CL1の遠心バランス室P3´,P2´,P1´に接続されている。
【0073】
図9(a)に示すように、第1スリーブ110には、駆動源側から反駆動源側に径方向油路115d,115a,115d,115b,115d,115c,115dが順に形成されている。
図9(b)に示すように、第1スリーブ110の径方向油路115a,115b,115c,115dは、周方向に異なる位置に形成されている。
【0074】
第2スリーブ120は、軸方向に略円筒状に延びる円筒部(第2円筒部)121を有している。第2スリーブ120の円筒部121の反駆動源側には、径方向外側に延びるフランジ部122が形成されている。第2スリーブ120は、第1スリーブ110に圧入嵌合されたときにフランジ部122が第1スリーブ110の円筒部111に当接するようになっている。
【0075】
第2スリーブ120には、円筒部121の外面に径方向内側に窪むと共に軸方向に延びる軸方向油路123を形成する作動油供給用凹部124が設けられている。第2スリーブ120の作動油供給用凹部124は第1スリーブ110の円筒部111によって覆われ、第1スリーブ110の円筒部111の内面と第2スリーブ120の円筒部121の外面との間に軸方向油路123が形成されている。
【0076】
第2スリーブ120には、第3クラッチ用、第2クラッチ用、第1クラッチ用、潤滑用の軸方向油路123a,123b,123c,123dが形成されている。第2スリーブ120の軸方向油路123a,123b,123c,123dは、周方向に異なる位置に形成されている。
【0077】
第2スリーブ120の軸方向油路123は、第1スリーブ110の径方向油路113及び径方向油路115に接続されている。第2スリーブ120の軸方向油路123a,123b,123c,123dはそれぞれ、第1スリーブ110の径方向油路113a,113b,113c,113dに接続されると共に第1スリーブ110の径方向油路115a,115b,115c,115dに接続されている。
【0078】
スリーブ24は、第1スリーブ110と第2スリーブ120とによって形成され、円筒部22が第1スリーブ110の円筒部111及び第2スリーブ120の円筒部121とによって形成され、フランジ部23が第1スリーブ110のフランジ部112によって形成されている。
【0079】
図5に示すように、変速機ケース11の縦壁部21には、スリーブ24の軸方向油路114に接続されて軸方向に延びる軸方向油路26が形成されている。変速機ケース11の縦壁部21にはまた、軸方向油路26に接続されて径方向外側に延びると共に前記コントロールバルブユニットに接続される径方向油路27が形成されている。
【0080】
変速機ケース11の縦壁部21には、第3クラッチ用、第2クラッチ用、第1クラッチ用、潤滑用の軸方向油路114a、114b、114c、114dにそれぞれ接続される軸方向油路26a,26b,26c,26d及び径方向油路27a,27b,27c,27dが形成されている。
【0081】
クラッチCL3,CL2,CL1に作動油を供給する供給油路a,b,c,dは、縦壁部21から、縦壁部21とスリーブ24のフランジ部23との結合部25を介して軸方向に延びる第1油路26,114と、第1油路26,114に接続されて径方向に延びるフランジ部23内の第2油路113と、第2油路113に接続されて軸方向に延びるスリーブ24の円筒部22内の第3油路123とを通じて、クラッチCL3,CL2,CL1の径方向内側に作動油を供給するように構成されている。
【0082】
変速機ケース11の縦壁部21とスリーブ24のフランジ部23との結合部25は、締結ボルトB2によって結合される縦壁部21の反駆動源側とフランジ部23の駆動源側とによって構成されている。
【0083】
図3に示すように、第3クラッチCL3の油圧室P3に作動油を供給する供給油路aは、縦壁部21から、縦壁部21とフランジ部23との結合部25を介して軸方向に延びる第1油路26a,114aと、第1油路26a,114aに接続されて径方向に延びるフランジ部23内の第2油路113aと、第2油路113aに接続されて軸方向に延びる円筒部22内の第3油路123aとを通じて、第3クラッチCL3の径方向内側に作動油を供給するように構成されている。
【0084】
第2クラッチCL2の油圧室P2に作動油を供給する供給油路bは、縦壁部21から、縦壁部21とフランジ部23との結合部25を介して軸方向に延びる第1油路26b,114bと、第1油路26b,114bに接続されて径方向に延びるフランジ部23内の第2油路113bと、第2油路113bに接続されて軸方向に延びる円筒部22内の第3油路123bとを通じて、第3クラッチCL3の径方向内側に作動油を供給するように構成されている。
【0085】
第1クラッチCL1の油圧室P1に作動油を供給する供給油路cは、縦壁部21から、縦壁部21とフランジ部23との結合部25を介して軸方向に延びる第1油路26c,114cと、第1油路26c,114cに接続されて径方向に延びるフランジ部23内の第2油路113cと、第2油路113cに接続されて軸方向に延びる円筒部22内の第3油路123cとを通じて、第3クラッチCL3の径方向内側に作動油を供給するように構成されている。
【0086】
第3クラッチCL3、第2クラッチCL2、第1クラッチCL1の遠心バランス室P3´,P2´,P1´及び摩擦板73,63,53に作動油を供給する供給油路dは、縦壁部21から、縦壁部21とフランジ部23との結合部25を介して軸方向に延びる第1油路26d,114dと、第1油路26d,114dに接続されて径方向に延びるフランジ部23内の第2油路113dと、第2油路113dに接続されて軸方向に延びる円筒部22内の第3油路123dとを通じて、第3クラッチCL3、第2クラッチCL2、第1クラッチCL1の径方向内側に作動油を供給するように構成されている。
【0087】
図7に示すように、変速機ケース11の縦壁部21には、第1ブレーキBR1の油圧室P4に作動油を供給する第1ブレーキ用の軸方向油路28及び径方向油路29が形成されている。第1ブレーキ用の軸方向油路28は、第1ブレーキBR1の油圧室P4に接続されて軸方向に延び、第2ブレーキ用の径方向油路29は、第1ブレーキ用の軸方向油路28に接続されると共に前記コントロールバルブユニットに接続されて径方向に延びている。
【0088】
第1ブレーキBR1の油圧室P4に作動油を供給する供給油路eは、前記コントロールバルブユニットから、軸方向油路28及び径方向油路29を通じて、第1ブレーキBR1の油圧室P4に作動油を供給するように構成されている。
【0089】
自動変速機10では、変速機ケース11の縦壁部21の軸方向一方側にクラッチCL1、CL2、CL3が配置されると共に縦壁部21の軸方向他方側に所定部品としてのブレーキBR1が配置されている。そして、変速機ケース11の縦壁部21からスリーブ24のフランジ部23及び円筒部22を通じてクラッチCL1、CL2、CL3の径方向内側に作動油を供給するように構成され、フランジ部23は、第1ブレーキBR1の径方向内側に配置されている。
【0090】
自動変速機10では、スリーブ24、具体的には第1スリーブ110及び第2スリーブ120は、鉄系材料を用いて形成され、変速機ケース11は、アルミニウム材料を用いて形成されている。スリーブ24と変速機ケース11とは、熱膨張による寸法変化が異なることから、変速機ケース11の縦壁部21とスリーブ24との嵌合部を通じて供給油路を形成することが困難であるため、変速機ケース11とスリーブ24との結合部25を通じてクラッチCL1,CL2,CL3への供給油路が形成されている。
【0091】
本実施形態では、変速機ケース11の縦壁部21の軸方向一方側に配置された3つのクラッチCL1,CL2,CL3に、変速機ケース11の縦壁部21からスリーブ24のフランジ部23及び円筒部22を通じて径方向内側から作動油が供給されているが、縦壁部21の軸方向一方側に配置される少なくとも1つのクラッチに径方向内側から作動油を供給するようにしてもよい。
【0092】
このように、本実施形態では、変速機ケース11の縦壁部21の軸方向一方側にクラッチCL1,CL2,CL3が配置される自動変速機10に、縦壁部21の径方向内側において軸方向に延びる円筒部22と、縦壁部21の軸方向他方側に結合されるフランジ部23とを有するスリーブ24が備えられ、フランジ部23は、縦壁部21の軸方向他方側に配置される所定部品BR1の径方向内側に配置される。そして、クラッチCL1,CL2,CL3に作動油を供給する供給油路a,b,c,dは、縦壁部21から、縦壁部21とフランジ部23との結合部25を介して軸方向に延びる第1油路26,114と、第1油路26,114に接続されて径方向に延びるフランジ部23内の第2油路113と、第2油路113に接続されて軸方向に延びる円筒部22内の第3油路123とを通じて、クラッチCL1,CL2,CL3の径方向内側に作動油を供給するように構成される。
【0093】
これにより、クラッチCL1,CL2,CL3に径方向内側から作動油を供給する供給油路a,b,c,dを構成するスリーブ24のフランジ部23が、変速機ケース11の軸方向一方側に配置される場合に比して、変速機ケース11の縦壁部21の軸方向他方側に配置される所定部品BR1と軸方向にオーバーラップさせて配置されるので軸方向寸法をコンパクトに構成することができる。したがって、変速機ケース11の縦壁部21の軸方向一方側にクラッチCL1,CL2,CL3が配置される自動変速機10において、縦壁部21を通じてクラッチCL1,CL2,CL3に径方向内側から作動油を供給しつつ軸方向にコンパクトに構成することができる。
【0094】
前記所定部品BR1は、ブレーキBR1である。これにより、変速機ケース11の縦壁部21の軸方向一方側にクラッチCL1,CL2,CL3が配置されると共に縦壁部21の軸方向他方側にブレーキBR1が配置される自動変速機10において、スリーブ24のフランジ部23がブレーキBR1と軸方向にオーバーラップさせて配置されるので、軸方向寸法をコンパクトに構成することができる。
【0095】
前記スリーブ24は、前記円筒部22の外周側を構成する第1円筒部111と前記フランジ部23とを有する第1スリーブ110と、前記フランジ部23の内周側を構成して第1円筒部111の内面に取り付けられる第2円筒部121を有する第2スリーブ120とを備え、前記第3油路123は、第1円筒部111の内面と第2円筒部121の外面との間に形成される。
【0096】
これにより、第1スリーブ110に第2スリーブ120を取り付けることで第1円筒部111の内面と第2円筒部121の外面との間に第3油路123が形成されるので、第3油路123を比較的容易に形成することができる。特にスリーブ24に複数の第3油路123が形成される場合、複数の第3油路123を比較的容易に形成することができる。
【0097】
前記供給油路a,b,c,dは、複数のクラッチCL1,CL2,CL3にそれぞれ締結用作動油を供給する複数の供給油路a,b,cを含む。これにより、自動変速機10を軸方向にコンパクトに構成しつつ、変速機ケース11の縦壁部21の軸方向一方側に配置される複数のクラッチCL1,CL2,CL3に径方向内側から締結用作動油を供給することができる。
【0098】
前記供給油路a,b,c,dは、複数のクラッチCL1,CL2,CL3に潤滑用作動油を供給する供給油路dを含む。これにより、自動変速機10を軸方向にコンパクトに構成しつつ、変速機ケース11の縦壁部21の軸方向一方側に配置される複数のクラッチCL1,CL2,CL3に径方向内側から潤滑用作動油を供給することができる。
【0099】
前記縦壁部21に、前記スリーブ24を結合する結合部材B2によって前記スリーブ24と共にブレーキBR1のリターンスプリング85を受けるプレート87が結合される。これにより、変速機ケース11の縦壁部21に、スリーブ24を結合する結合部材B2によってブレーキBR1のリターンスプリング85を受けるプレート87がスリーブ24と共に結合されるので、リターンスプリング85を受けるプレート87を結合する結合部材を別途設ける必要がなく、部品点数や組立工数を削減することができる。
【0100】
本実施形態では、変速機ケース11の縦壁部21からスリーブ24のフランジ部23及び円筒部22を通じてクラッチCL1、CL2、CL3の径方向内側に作動油を供給するように構成され、フランジ部23は、第1ブレーキBR1の径方向内側に配置されているが、変速機ケース11の軸方向他方側にダンパ、ポンプ、モータなどの他の所定部材が配置される場合、フランジ部23は、ダンパ、ポンプ、モータなどの他の所定部品の径方向内側に配置することも可能である。
【0101】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上のように、本発明によれば、変速機ケースの縦壁部の軸方向一方側にクラッチが配置される自動変速機において、縦壁部を通じてクラッチに径方向内側から作動油を供給しつつ軸方向にコンパクトに構成することが可能となるから、この種の自動変速機ないしこれを搭載する車両の製造技術分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0103】
10 自動変速機
11 変速機ケース
21,35 縦壁部
22 スリーブの円筒部
23 スリーブのフランジ部
24 スリーブ
25 結合部
85 リターンスプリング
86、87 プレート
110 第1スリーブ
120 第2スリーブ
a,b,c,d 供給油路
B1,B2 結合部材
BR1,BR2 ブレーキ
CL1,CL2,CL3 クラッチ