(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】給油装置
(51)【国際特許分類】
B60K 15/04 20060101AFI20220830BHJP
B67D 7/32 20100101ALI20220830BHJP
【FI】
B60K15/04 F
B60K15/04 E
B67D7/32 C
(21)【出願番号】P 2019205120
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波賀野 博之
(72)【発明者】
【氏名】石原 徳彦
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-63294(JP,A)
【文献】国際公開第2011/062193(WO,A1)
【文献】特開2010-195344(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0092986(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第10051212(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/04
B67D 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の給油を行なう際に給油ノズルを受け入れる給油装置であって、
給油ノズルを受け入れる給油口を備え、前記給油口から燃料タンクに至る燃料通路の一部を形成する給油口形成部と、
前記給油口から挿入される前記給油ノズルの到達範囲に設けられ、当該給油装置に適合する給油ノズルよりも外径の小さな小径ノズルの外径に対応した開口である第1部分と、当該給油装置に適合する大径ノズルの外径に対応した形状の開口である第2部分とからなる一続きの開口部を構成する弁別部と、
前記弁別部の前記第1部分と前記第2部分とが接続する位置に、前記給油口側に所定高さに形成された案内部材と、
前記開口部に挿入された前記小径ノズルを前記第1部分に導くことで、前記小径ノズルの前記開口部の通過を阻止する作動部材と、
前記弁別部よりも前記燃料タンク側に設けられ、前記燃料タンクの側から閉方向に付勢され、前記開口部の前記第2部分を通過した前記大径ノズルにより開状態とされる開閉部材と
を備え、
前記案内部材の前記給油口側は、前記第2部分に向かって縮径しつつ傾斜する第2案内斜面を備え、
前記案内部材の前記給油口と反対側は、前記開口部の内周縁から外方に向かう所定の範囲に、空間が形成される形状とされた、
給油装置。
【請求項2】
前記案内部材の前記給油口と反対側の前記形状は、前記第2案内斜面の終端から前記給油口と反対側に向かう所定の範囲が、前記開口部の前記周縁部から外方に向けて後退する形状である、請求項1記載の給油装置。
【請求項3】
前記作動部材は、前記給油口側の第1の位置と前記第1の位置より前記燃料タンク側の第2の位置とでは、前記第2の位置の方が内径が狭くなる形状で前記開口部を取り囲む、請求項1または請求項2に記載の給油装置。
【請求項4】
前記弁別部は、前記第2部分において、前記小径ノズルの外径より小さな内寸箇所を有し、
前記作動部材は、前記第2部分への前記小径ノズルの挿入によっては移動せず、前記大径ノズルの挿入によって移動する移動部材を備え、
前記移動部材は、前記移動によって前記第2部分の前記内寸箇所を前記大径ノズルの外径を越えて拡張する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の給油装置。
【請求項5】
前記移動部材は、前記給油口側の第1の位置と前記第1の位置より前記燃料タンク側の第2の位置とでは、前記第2の位置の方が内径が狭くなる形状で前記開口部を取り囲む開口形成部材である、請求項4に記載の給油装置。
【請求項6】
前記案内部材の前記第2案内斜面に当接した前記大径ノズルの挿入によって、前記移動部材の前記移動を実現する、請求項4または請求項5に記載の給油装置。
【請求項7】
前記作動部材は、
前記開口部の前記第1部分に対応する位置に、前記小径ノズルが突き当たることで前記小径ノズルの追加を阻止する突当部材と、
前記給油口から挿入された前記給油ノズルの先端が当接する起動部材と、を備え、
前記起動部材は、前記第2部分が、前記大径ノズルの外径より小さな内寸箇所を有するものとなる位置に配置され、
前記起動部材に前記小径ノズルの先端が当接した場合は、前記突当部材を前記起動部材側に移動させ、前記起動部材に前記大径ノズルが当接した場合は、前記起動部材が移動することによって前記第2部分の前記内寸箇所を前記大径ノズルの外径を越えて拡張する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の給油装置。
【請求項8】
前記給油口から挿入された前記大径ノズルの先端の一部が前記案内部材の前記第2案内斜面に当接することで、前記起動部材の移動を実現する、請求項7に記載の給油装置。
【請求項9】
前記案内部材は、前記小径ノズルが前記起動部材に当接した状態では、前記小径ノズルとは離間する位置に配置されており、
前記作動部材は、
前記給油口側の第1の位置と前記第1の位置より前記燃料タンク側の第2の位置とでは、前記第2の位置の方が内径が狭くなる形状で前記開口部を取り囲み、
前記小径ノズルが前記起動部材に当接して挿入される際、前記小径ノズルによる前記起動部材の前記移動に要する力よりも小さな力で前記突当部材を移動する、
請求項8に記載の給油装置。
【請求項10】
前記案内部材は、更に、前記第1部分に向かって傾斜する第1案内斜面を備える、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の給油装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料タンクへ給油するための給油ノズルを受け入れる給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に給油するための給油施設では、ガソリンと軽油など、異なる燃料を給油する設備があり、給油の際に誤って、意図しない燃料を自動車に給油することがないよう、給油施設における給油用ノズルの外径を燃料毎に異ならせている。最近では、ディーゼル車の触媒用にアドブルー(尿素水溶液)を給油することもあり、これらの液体供給用ノズルも、異なるノズル径とされている。具体的には、日本国では、ガソリン用のノズル径は約21.0mm、軽油用のノズル径は23.5mmである。こうしたノズル径自体は、国によっても異なるが、自動車に供給されることが想定される液体の種別毎に、ノズル径を異ならせることが多い。国によっては、給油施設におけるノズル径を燃料等の種別毎に異ならせ、自動車側の給油装置に、異種の燃料等が供給されない機構を設けることを法令等で定めている。ノズル径の違いにより給油の可否を判別して対応する装置として、例えば特許文献1、2の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8,714,214B2公報
【文献】特開2015-74409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうしたノズル径の違いは、国によっても異なり、場合によっては1mm程度の差しかない場合もあり得る。例えば、日本において、アドブルー用のノズル径は19mmであり、ガソリン用のノズル径との違いは2mm程度である。こうした僅かな径の違いを精度良く弁別して、ノズルの誤挿入を抑制する装置の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一実施形態として、燃料の給油を行なう際に給油ノズルを受け入れる給油装置が提供される。この給油装置は、給油ノズルを受け入れる給油口を備え、前記給油口から燃料タンクに至る燃料通路の一部を形成する給油口形成部と、前記給油口から挿入される前記給油ノズルの到達範囲に設けられ、当該給油装置に適合する給油ノズルよりも外径の小さな小径ノズルの外径に対応した開口である第1部分と、当該給油装置に適合する大径ノズルの外径に対応した形状の開口である第2部分とからなる一続きの開口部を構成する弁別部と、前記弁別部の前記第1部分と前記第2部分とが接続する位置に、前記給油口側に所定高さに形成された案内部材と、前記開口部に挿入された前記小径ノズルを前記第1部分に導くことで、前記小径ノズルの前記開口部の通過を阻止する作動部材と、前記弁別部よりも前記燃料タンク側に設けられ、前記燃料タンクの側から閉方向に付勢され、前記開口部の前記第2部分を通過した前記大径ノズルにより開状態とされる開閉部材とを備える。ここで、前記案内部材の前記給油口側は、前記第2部分に向かって縮径しつつ傾斜する第2案内斜面を備え、前記案内部材の前記給油口と反対側は、前記開口部の内周縁から外方に向かう所定の範囲に、空間が形成される形状とされてよい。
かかる給油装置は、給油ノズルが給油口から差し込まれると、給油装置に適合した外径の大径ノズルは、案内部材の第2案内斜面によって、開口部の第2部分に導かれ易い。他方、小径ノズルが第2部分に挿入された場合には、作動部材が、この小径ノズルを第1部分に導き、その進入を阻止する。その上、小径ノズルが案内部材の第2案内斜面の一部に当接して、前記作動部材を、大径ノズルが挿入された場合と同様に作動させたとしても、案内部材の給油口と反対側が、開口部の内周縁から外方に向かう所定の範囲に、空間が形成される形状とされているので、小径ノズルが第2案内者面の終端を通り過ぎると、小径ノズルの先端はもはや案内部材に対して、大径ノズルとして接することが出来ず、作動部材によって、小径ノズルは第1部分に導かれ、その進入を阻止される。従って、給油装置に適合しない小径ノズルが誤挿入されることを抑制することができる。
(2)こうした給油装置において、前記案内部材の前記給油口と反対側の前記形状は、前記第2案内斜面の終端から前記給油口と反対側に向かう所定の範囲が、前記開口部の前記周縁部から外方に向けて後退する形状であってよい。こうすれば、第2案内者面の終端を通り過ぎた小径ノズルの先端が案内部材から外れ易くなり、小径ノズルは第1部分に導かれ、その進入を阻止される。
(3)こうした給油装置において、前記作動部材は、前記給油口側の第1の位置と前記第1の位置より前記燃料タンク側の第2の位置とでは、前記第2の位置の方が内径が狭くなる形状で前記開口部を取り囲むようにしてもよい。こうすれば、作動部材が、給油口側で広く、反対側で狭くできるので、給油ノズルを第1部分,第2部分に導きやすくなる。こうした形状としては、いわゆる漏斗形状(ファンネル形状)や、螺旋形状などが考えられる。
(4)こうした給油装置において、前記弁別部は、前記第2部分において、前記小径ノズルの外径より小さな内寸箇所を有し、前記作動部材は、前記第2部分への前記小径ノズルの挿入によっては移動せず、前記大径ノズルの挿入によって移動する移動部材を備え、前記移動部材は、前記移動によって前記第2部分の前記内寸箇所を前記大径ノズルの外径を越えて拡張するものとしてよい。こうすれば、大径ノズルが挿入された場合に、移動部材を移動させて、大径ノズルを第2部分に導くことができ、こうした移動を、小径ノズルによっては生じさせないようにして、小径ノズルの進入を阻止することができる。
(5)こうした給油装置において、前記移動部材は、前記給油口側の第1の位置と前記第1の位置より前記燃料タンク側の第2の位置とでは、前記第2の位置の方が内径が狭くなる形状で前記開口部を取り囲む開口形成部材としてよい。移動部材が、給油口側で広く、反対側で狭くできるので、給油ノズルを第1部分に導きやすくなる。こうした形状としては、いわゆる漏斗形状(ファンネル形状)の一部に相当する形状や、螺旋形状の一部に相当する形状などが考えられる。
(6)こうした給油装置において、前記案内部材の前記第2案内斜面に当接した前記大径ノズルの挿入によって、前記移動部材の前記移動を実現するものとしてもよい。こうすれば、給油装置に適合する外径の給油ノズルは、案内部材の第2案内斜面によって、開口部の第2部分に導かれ易くなり、また移動部材の移動を実現しやすくなる。
(7)こうした給油装置において、前記作動部材は、前記給油口から挿入された前記給油ノズルの先端が当接する起動部材を備え、前記起動部材は、前記第2部分が、前記大径ノズルの外径より小さな内寸箇所を有するものとなる位置に配置され、前記起動部材に前記小径ノズルの先端が当接した場合は、前記突当部材を前記起動部材側に移動させ、前記起動部材に前記大径ノズルが当接した場合は、前記起動部材が移動することによって前記第2部分の前記内寸箇所を前記大径ノズルの外径を越えて拡張するものとしてよい。こうすれば、起動部材により確実に小径ノズルと大径ノズルとの弁別を行なうことができる。
(8)こうした給油装置において、前記給油口から挿入された前記大径ノズルの先端の一部が前記案内部材の前記第2案内斜面に当接することで、前記起動部材の移動を実現するものとしてよい。こうすれば、給油装置に適合する外径の給油ノズルは、案内部材の第2案内斜面によって、開口部の第2部分に導かれ易くなり、また起動部材の移動を実現しやすくなる。
(9)こうした給油装置において、前記案内部材は、前記小径ノズルが前記起動部材に当接した状態では、前記小径ノズルとは離間する位置に配置されており、前記作動部材は、前記給油口側の第1の位置と前記第1の位置より前記燃料タンク側の第2の位置とでは、前記第2の位置の方が内径が狭くなる形状で前記開口部を取り囲み、前記小径ノズルが前記起動部材に当接して挿入される際、前記小径ノズルによる前記起動部材の前記移動に要する力よりも小さな力で前記移動部材を移動するものとしてよい。こうすれば、起動部材により、小径ノズルと大径ノズルとの弁別を容易に実現でき、小径ノズルの進入を確実に阻止できる。
(10)こうした給油装置において、前記案内部材は、更に、前記第1部分に向かって傾斜する第1案内斜面を備えるものとしてもよい。こうすれば、小径ノズルを第1部分の辺りに挿入すると、挿入位置が第1部分に対して、多少ずれていても、案内部材の第1案内斜面により、小径ノズルは、第1部分に誘導されやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の給油装置全体の構成を示す概略構成図。
【
図2】第1実施形態のフィラーネックの内部構造を示す一部破断斜視図。
【
図7A】小径ノズルが挿入された場合の動作状態を示す説明図。
【
図8A】小径ノズルを第1部分に挿入して、作動部材を移動させた場合の動作状態を示す説明図。
【
図9A】小径ノズルを第2部分に挿入した状態を示す説明図。
【
図9B】小径ノズルを第2部分に挿入して、案内部材によって移動部材を移動しようとする場合の動作状態を示す説明図。
【
図11】小径ノズルを第2部分側に挿入した場合の動作状態を示す説明図。
【
図12】大径ノズルを第2部分に挿入した状態を示す説明図。
【
図13】大径ノズルを更に挿入した状態を示す説明図。
【
図14】大径ノズルを更に奥まで挿入した状態を示す説明図。
【
図15】ゲージ部材の第1部分と第2部分の関係を、小径ノズルと大径ノズルとに対応させて示す説明図。
【
図16】第2実施形態の給油装置が組み込まれたフィラーネックの外観を示す斜視図。
【
図17】第2実施形態のフィラーネックに組み込まれた弁別部のデフォルトの形態を示す説明図。
【
図18】小径ノズルが第1部分に差し込まれた場合の小径ノズルの位置の一例を示す説明図。
【
図19】第1部分に差し込まれた小径ノズルと案内部材間の離間距離との関係を示す説明図。
【
図20】小径ノズルを第2部分に差し込んだ状態を示す説明図。
【
図22】小径ノズルを更に差し込んだ状態を示す断面図。
【
図23】小径ノズルを更に奥まで差し込んだ状態を示す断面図。
【
図24】大径ノズルが第2部分に差し込まれた場合の状態を示す説明図。
【
図26】第2部分に差し込まれた大径ノズルと案内部材間の離間距離との関係を示す説明図。
【
図27】大径ノズルを更に差し込んだ状態を示す断面図。
【
図28】大径ノズルを更に奥まで差し込んだ状態を示す断面図。
【
図29】大径ノズルが開閉部材に到達した状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は第1実施形態の給油装置FSの概要を示す説明図である。給油装置FSは、車両に装着され、給油ノズルFNから供給される燃料を燃料タンクFTに導く。
図1には、鉛直方向を示す矢印Gが記載されている。給油装置FSは、給油口形成部材であるフィラーネック100と、燃料蒸気ポート26と、フィラーパイプFPと、逆止弁TVと、燃料蒸気チューブNTと、ガス放出弁BVと、装着部材FEと、を備えている。フィラーネック100は、装着部材FEにより車両の給油室FRに装着され、給油口22への給油ノズルFNの挿入を受け付ける。なお、図示する装着部材FEに代わり、中央にフィラーネック100の一部が挿入される円孔が形成された円板状の基板を用いて、フィラーネック100を給油室FRに装着してもよい。
【0009】
フィラーネック100は、燃料タンクFTと、フィラーパイプFPおよび燃料蒸気チューブNTにより接続されている。そして、フィラーネック100は、給油口22に挿入された給油ノズルFN(
図1参照)からガソリンなどの液体燃料を、フィラーパイプFPを介して接続される燃料タンクFTへと導く。フィラーパイプFPは、例えば、2箇所に蛇腹構造を有する樹脂製のチューブであり、一定の範囲において、伸縮し、湾曲可能である。このフィラーパイプFPは、逆止弁TVを介して、燃料タンクFTと接続されている。給油口22に挿入された給油ノズルFNから吐出された燃料は、フィラーネック100が形成する後述の燃料通路とフィラーパイプFPを経て、逆止弁TVから、燃料タンクFTに導かれる。逆止弁TVは、燃料タンクFTからフィラーパイプFPへの燃料の逆流を防止する。
【0010】
燃料蒸気チューブNTは、一端がガス放出弁BVを介して燃料タンクFTと接続され、他端がフィラーネック100から突出した燃料蒸気ポート26に接続されている。ガス放出弁BVは、燃料蒸気チューブNTを燃料タンクFTに接続する継手としても機能する。燃料蒸気が含まれるタンク内エアーは、ガス放出弁BVから、燃料蒸気チューブNTに流れ込む。燃料蒸気は、給油ノズルFNからの給油時に、供給された燃料と共にフィラーパイプFPを通って燃料タンクFTに導かれる。以下、フィラーネック100について詳述する。
【0011】
図2は、フィラーネック100の内部構造を示す一部破断斜視図である。図では、燃料通路形成部20の手前側を破断している。燃料通路形成部20、フィラーネック100全体の外形を形成し、内部に燃料通路90を形成する部材である。このフィラーネック100には、給油口22を形成するカバー部材24側から、第1開閉機構40、第2開閉機構30が内蔵されている。第1開閉機構40および第2開閉機構30は、いずれも給油ノズルFNの到達範囲にあり、給油装置FSに適合する給油ノズルFNを差し込むことにより開かれる。
【0012】
第2開閉機構30は、図示するように、最も燃料タンク側において燃料通路形成部20の下部に配設され、燃料通路90を開閉する。この第2開閉機構30は、燃料通路90を開閉する第2開閉弁31と、燃料通路形成部20に固定されて第2開閉弁31を付勢するスプリング(図示省略)と、を備える。第2開閉弁31は、燃料タンク側から挿入側への液体燃料の逆流を防止するフラップであり、シール用のシール部材33を備える。第2開閉弁31は、燃料通路形成部20に設けられた回転軸32で回転可能に支持され、スプリングにより、第2開閉弁31を燃料通路90が閉まる方向に付勢されている。
【0013】
第2開閉機構30よりも給油口22側に設けられた第1開閉機構40は、挿入される給油ノズルFNの外径を弁別する弁別部50と、この弁別部50よりも燃料タンクFT側に設けられた開閉部材70と、を備える。弁別部50は、本実施形態では、全て樹脂により形成されている。弁別部50の構成を、
図3から
図6を用いて説明する。弁別部50は、給油装置FSに適合する給油ノズルが進入し得る円形の開口を有し、内側にテーパ状の錐形ガード51とその下部に移動可能に組み込まれた移動部材52とを備える。錐形ガード51は、上端外周に上縁部59を、下端外周の半分に固定フランジ部56を、それぞれ備える。この上縁部59は、
図2に示したように、カバー部材24の給油口22の内側に形成された返し部23に固定されている。従って、錐形ガード51は、給油ノズルFNの挿入時に、給油ノズルFNの先端が当たっても移動しない。
【0014】
錐形ガード51は径方向内側に向かって窄まるテーパ形状とされており、かつ移動部材52が配置される部位は、テーパの部分が存在しない。つまり錐形ガード51の下半分は、移動部材52の配置される部位を除いた形状となっている。錐形ガード51の下端は給油口22とは反対側に位置している。固定フランジ部56は、テーパ形状の部分の先端から外方に所定長だけ延出され、フランジ形状をしている。
【0015】
錐形ガード51の外側のテーパ部の中程には、
図5に示したように、バネ部材41,43を支える支柱部材44の根元が固定されている。支柱部材44は、略T字形状をしており、錐形ガード51に固定された部位から外方に延出され、両側に延びた腕部の先端に、樹脂製のバネ部材41,43が取付けられている。バネ部材41,43の反対側の先端は、移動部材52の端部46に固定されている。従って、このバネ部材41,43が延びる範囲内で、移動部材52は、図示DI方向に移動可能である。
図4に、移動部材52が移動した状態を示した。なお、バネ部材41,43は、金属製のコイルばねや、板ばねなどにより実現することも可能である。
【0016】
移動部材52の内側には、上端から下方にテーパ状の傾斜部58と、この傾斜部58の周方向両端に配置された案内部材53,54と、傾斜部58の下端において内方に突き出した突当部57とが設けられている。移動部材52の外方には、傾斜部58の下端において外方に突き出した半円形の移動フランジ部55が設けられている。
【0017】
上述した固定フランジ部56と移動フランジ部55とは、
図2に示したように、その下側が燃料通路形成部20の内側に形成された支持部材27の上面に接している。従って、弁別部50は、上端が、カバー部材24の返し部23に固定され、下端が支持部材27の上面に接し、返し部23と支持部材27との間で、移動部材52が支持部材27の面上で移動するように保持されている。
図4に示したように、移動部材52が矢印DI方向に移動した状態では、固定フランジ部56と移動フランジ部55とは、距離D1だけ離れた状態となる。この距離D1は、上述した突当部57の径方向の幅、つまり移動部材52の移動方向に沿った長さより大きい。
【0018】
移動部材52の内側2箇所に設けられた案内部材53,54は、
図3および
図4に示したように、給油口22である上半分は上方に向かって細くなる錐柱形状を備え、給油口22とは反対側である下半分は下方に向かって細くなる錐柱形状を備える。案内部材53の上半分は、給油口22側から径方向内側に下って行く二つの斜面61,62を備える。斜面62を、以下、第1案内斜面62と呼び、斜面61を、以下、第2案内斜面62と呼ぶ。また、案内部材53の下半分は、第1,第2案内斜面62,61の終端から、それぞれ外方に向かって後退する形状とされている。第1案内斜面62の下の斜面を第1拡張下面67と呼び、第2案内斜面61の下の斜面を第2拡張下面66と呼ぶ。
図3,
図4では、案内部材54側の全体形状は示されていないが、案内部材53と案内部材54とは、鏡像関係の形状をしており、移動部材52の傾斜部58の両端に、互いに向き合うように配置されている。この案内部材53,54の詳細な形状と働きを
図7A以下を用いて順次説明する。
【0019】
案内部材53,54は、
図7Aに示すように、案内部材53の右端(径方向内側端部)と案内部材54の左端(径方向内側端部)とが構成する内寸箇所が、離間距離GD1だけ隔てて配置されている。この離間距離GD1は、後述する小径ノズルFNSの外径より僅かに大きく、大径ノズルFNLの外径より少し小さい。
図7Aでは、小径の給油ノズルを参考用として破線で示した。案内部材53の上半分には、既に説明した様に、互いに傾きの方向が異なる斜面である第1案内斜面62および第2案内斜面61が設けられ、案内部材54の上半分には、互いに傾きの方向が異なる第1案内斜面64および第2案内斜面63が設けられている。この案内部材53,54の第1案内斜面62,64は、案内部材53および54の中心側を向いており、案内部材53,54の第2案内斜面61,63は、移動部材52の移動方向と反対側を向いている。
【0020】
移動部材52の突当部57は、
図7Bに示したように、傾斜部58の下端に形成され、しかも第2案内斜面61,63の下端より下方に形成されている。
図7Aに示したように、傾斜部58と突当部57とが接する箇所は円弧形状をしている。また、錐形ガード51の下端は、上縁部59より小径の円弧形状をしていている。移動部材52が移動していない状態、つまり固定フランジ部56と移動フランジ部55とが接している状態で、この突当部57と案内部材53,54と錐形ガードの下端とが形成する略円形の部分を、弁別部50の第1部分と呼ぶ。この第1部分は、この給油装置FSに適合する給油ノズルFNより小径の給油ノズルが納まるように設計されている。以下の説明では、この給油装置FSに適合しない小径の給油ノズル(ノズル径19.0mmの給油ノズル)を小径ノズルFNSと呼び、この給油装置FSに適合する大径の給油ノズル(ガソリン用のノズル径20.5mmの給油ノズル)を大径ノズルFNLと呼ぶ。本実施形態では、離間距離GD1は、19.75mmとされている。
【0021】
図7Aに示したように、小径ノズルFNSは、移動部材52が移動していない位置(以下、デフォルトの位置とも言う)にある場合の弁別部50の第1部分に納まる。小径ノズルFNSの挿入位置が第1部分に対して、多少ずれていても、案内部材53,54の第1案内斜面62,64により、小径ノズルFNSは、第1部分に誘導される。この状態では、
図7AにおけるVIIB-VIIB断面図である
図7Bに示したように、小径ノズルFNSの先端は、デフォルトの位置にある移動部材52の突当部57に当り、小径ノズルFNSは、それ以上、燃料通路90に進入することはできない。弁別部50の下方、つまり燃料タンクFT側に、弁別部50に隣接して設けられた開閉部材70は、
図7Aにおける第1部分を閉塞する弁体71、この弁体71を回転可能に燃料通路形成部20に保持する保持軸73、一端が保持軸73に固定され他端が弁体71の下面に接するよう配置されたスプリング75、を備える。弁体71は、スプリング75によって、閉塞方向に付勢されているから、外力が働かなければ、燃料通路90を閉塞する位置に保たれる。小径ノズルFNSが給油装置FSに挿入された場合であって、小径ノズルFNSの先端が、錐形ガード51や移動部材52の傾斜部58等に接することなく、第1部分に挿入された場合は、小径ノズルFNSの先端は、突当部57に突き当たり、それ以上進入できないので、開閉部材70の弁体71を開方向に移動させることはない。
【0022】
図7A,
図7Bに示した状態から、小径ノズルFNSを無理に移動部材52の移動可能方向DIに押した場合を、
図8AとそのVIIIB-VIIIB断面図である
図8Bに示した。小径ノズルFNSで移動部材52を径方向外側に押すと、バネ部材41,43は延び、移動部材52は径方向外側に移動する。しかし、移動部材52の移動につれて、その下端に設けられた突当部57も移動するので、
図8A,
図8Bに示したように、小径ノズルFNSの先端は、移動部材52の突当部57により進入を阻止され、開閉部材70の弁体71を開く位置まで至れない。
【0023】
図7A,
図7Bに示した状態から、小径ノズルFNSを、移動部材52とは反対側に押した場合は、固定されて移動しない錐形ガード51が小径ノズルFNSの移動を許容しない。小径ノズルFNSの先端を錐形ガード51の傾斜部に当てたまま、移動部材52の案内部材53,54を同時に押して移動部材52を移動させようとしても、
図9Aに示したように、案内部材53,54の離間距離GD1は、小径ノズルFNSの外径より僅かに大きいから、錐形ガード51の傾斜部に小径ノズルFNSの一端を当てて、小径ノズルFNSの先端反対側で、案内部材53,54の第2案内斜面61,63を同時に押すことはできない。したがって、小径ノズルFNSをそのまま押し込んでいくと、小径ノズルFNSは錐形ガード51の傾斜部に沿って移動部材52側に移動し、最後は、
図7A,
図7Bに示した状態となり、小径ノズルFNSの進入は、突当部57より阻止される。
【0024】
仮に、小径ノズルFNSの先端を錐形ガード51の傾斜部に当てた状態で、小径ノズルFNSを、
図9Bに示すように、案内部材53方向に偏位させ、案内部材53の第2案内斜面61を押した場合を想定する。この場合、小径ノズルFNSを押し込んでいくと、小径ノズルFNSの先端は、移動部材52方向に移動しつつ、案内部材53の第2案内斜面61の端に当たり、移動部材52を弁別部50の径方向外側(矢印DI方向)に移動させる可能性がある。最大限移動させた状態を、
図11に示した。この状態では、小径ノズルFNSの先端は、まだ案内部材53の第2案内斜面61に接し、案内部材53を介して移動部材52全体を径方向外側に押している。
【0025】
しかし、
図9のXーX断面図である
図10Aに示すように、小径ノズルFNSが錐形ガード51の下端まで到達する直前または到達すると同時に、小径ノズルFNSの先端は、案内部材53の第2案内斜面61の最下端を通過する。第2案内斜面61の最下端より下側は、第2拡張下面66として、外方に向かって後退する形状とされているので、小径ノズルFNSの先端を案内部材53の第2案内斜面61に当てて、これを押すことは、もはやできない。このため、それまで
図10Aに示した状態まで移動していた移動部材52は、バネ部材41,43の復元力により、
図7Bに示した位置まで、つまりデフォルトの位置まで、引き戻される。この結果、移動部材52の突当部57が小径ノズルFNSの下に配置されることになり、小径ノズルFNSのそれ以上の進入は阻止される。
【0026】
案内部材53の形状は、
図10Aに示した形状に限らず、例えば第1案内斜面62と第2案内斜面61の下側、つまり開閉部材70側の第1拡張下面67と第2拡張下面66とを形成せず、
図10Bに例示したように、ここを単なる空間68としてもよい。こうしても小径ノズルFNSの先端が通過したときに、同様に移動部材52を移動させることができる。なお、
図10Bに示した例では、第2案内斜面61,第1案内斜面62の空間68側端部は、1mm程度の平坦部66a,67aとしているが、この平坦部66a,67aはなくてもよい。平坦部66a,67aを設けることで、案内部材53の端部の強度を高めることができる。平坦部66a,67aは、小径ノズルFNSの先端が滑りやすいように丸味を漬けることも有用である。また、案内部材53の第2案内斜面61,第1案内斜面62の下側は、小径ノズルFNSの先端が通過したときに、案内部材53を押せない形状であればよく、単なる空間部68とする形状の他、外側に向かって平面的に後退する形状、曲面により後退する形状、ステップ状に後退する形状など、種々の形状が可能である。
【0027】
上記の動作は、小径ノズルFNSの先端を、案内部材53に当てて、無理に移動部材52を移動させた場合を例にとって説明したが、案内部材54も同じ形状をしているので、小径ノズルFNSの先端を案内部材54に押し当てて、無理に移動部材52を移動させた場合でも、移動部材52は同様に動作し、小径ノズルFNSの進入を阻止することは勿論である。もとより、案内部材53と案内部材54とは全く同一の形状にする必要はなく、形状は異なっていても良い。例えば案内部材54の第2案内斜面63,第1案内斜面64の形状や向き、更には下側の空間部の形状のうち、少なくとも一つが異なっていてもよい。利用者が給油ノズルFNを給油口22に差し込む場合を考えると、利き手によって、給油口22対する給油ノズルFNの角度は左右対称にならないことが多いから、こうした点を考慮して、案内部材53,54の形状を決定してもよい。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の弁別部50は、給油装置FSに適合する外径20.5mmの給油ノズルより小径(例えば外径19.0mm)の小径ノズルFNSを挿入すると、どのようにしても、移動部材52の突当部57がノズルの先端に突き当たり、その進入を阻止する。従って、誤って、給油装置FSに適合しない給油ノズルを挿入して、誤った燃料や液体を供給してしまうといった事態の発生を抑制できる。
【0029】
次に、給油装置FSに適合する給油ノズルを挿入した場合の弁別部50の動作を説明する。給油装置FSに適合する給油ノズルとして、外径20.5mmの軽油用供給ノズル、つまり大径ノズルFNLを用いる。
図12に、大径ノズルFNLを給油口22に差し込んだ状態を示す。大径ノズルFNLは、その大きさからして、弁別部50の第1部分には入らない。
図7Aに示した案内部材53と案内部材54との離間距離GD1は、大径ノズルFNLの外径より小さいので、大径ノズルFNLを第1部分に差し込もうとしても、大径ノズルFNLを最も移動部材52の傾斜部58側に当てても、大径ノズルFNLの他端は、案内部材53,54の第1案内斜面62,64には当たらず、これを越えて、案内部材53,54の先端に当たってしまうからである。そこで、
図13に示したように、大径ノズルFNLは、弁別部50の移動部材52とは反対側、つまり錐形ガード51と案内部材53と案内部材54とで囲まれた部分(この範囲を第2部分と呼ぶ)に差し込まれることになる。
【0030】
この場合、大径ノズルFNLの先端は、錐形ガード51の傾斜部と、案内部材53の第2案内斜面61と、案内部材54の第2案内斜面63とに接する。この状態から、大径ノズルFNLを更に押し込んでいくと、各部は径方向外側に向かう力を受けるが、錐形ガード51はカバー部材24の返し部23に固定されているので移動せず、第2案内斜面61,63が力を受けて、錐形ガード51に対して移動部材52を移動する。この移動の様子を、
図13,
図14に示した。移動部材52が径方向外側に移動するに連れて、バネ部材41,43は延び、移動部材52下端の突当部57も外側に移動する。
【0031】
この結果、
図14に示したように、大径ノズルFNLの先端が、錐形ガード51の下端に到達した状態では、
図4に示したように、移動部材52の移動フランジ部55は、錐形ガード51の固定フランジ部56から最大D1だけ離間する。この距離D1は、突当部57の径方向の幅より大きいので、突当部57は、大径ノズルFNLの下方の位置から径方向外側に外れ、大径ノズルFNLの真下にはもはや突当部57は存在しない。しかもこの状態でも、案内部材53と案内部材54との離間距離は、大径ノズルFNLの外径より小さいから、移動部材52がデフォルトの位置に戻ることはできない。従って、大径ノズルFNLは、突当部57に阻止されることなく弁別部50を越えて、開閉部材70側に進入し、開閉部材70の弁体71に当たり、スプリング75の付勢力に抗して、これを燃料タンクFT側に押し開く。小径ノズルFNSが移動部材52を径方向外側に移動させつつ挿入された状態を示す
図8Bでは、小径ノズルFNSが錐形ガード51の下端に達すると、案内部材53または案内部材54が小径ノズルFNSから外れ、移動部材52はデフォルトの位置に戻って、小径ノズルFNSの進入を阻んだ。これに対して、大径ノズルFNLを挿入した場合は、案内部材53および54の第2案内斜面61,63の最下端が大径ノズルFNLに当接したままとなるので、移動部材52は
図10Aに示した位置に留められ、大径ノズルFNLはそのまま進入でき、開閉部材70を押し開く。開閉部材70を押し開いて進入した大径ノズルFNLは、燃料通路90を更に進み、第2開閉機構30を押し開いて、給油可能な位置に至る。
【0032】
以上説明したフィラーネック100では、弁別部50が次のように動作して、給油ノズルFNの外径を弁別している。
[1]給油口22から挿入された給油ノズルFNが、この給油装置FSに適合しない給油ノズルである小径ノズルFNSである場合は、
図15上段に示したように、小径ノズルFNSを、案内部材53,54から見て突当部57側の第1部分に追い込んで、その進入を突当部57で阻止する。このとき、小径ノズルFNSを第1部分の辺りに挿入すると、挿入位置が第1部分に対して、多少ずれていても、案内部材53,54の第1案内斜面62,64により、小径ノズルFNSは、第1部分に誘導される。小径ノズルFNSの下方に突当部57が位置するのは、案内部材53と案内部材54との離間距離GD1が、小径ノズルFNSの外径より大きいので、小径ノズルFNSにより、案内部材53および54を、錐形ガード51との当接部を支点として、径方向外側に移動させることができないからである。また、無理に移動させても、小径ノズルFNSの先端が案内部材53,54の第2案内斜面61,63を通り過ぎると、第2案内斜面61,63の下方の第2拡張下面66は、外方に向かって後退する形状を備えるので、案内部材53,54と小径ノズルFNSの係合が解け、移動部材52はデフォルトの位置に戻り、突当部57により、小径ノズルFNSの進入は阻止される。
【0033】
[2]他方、給油口22から挿入された給油ノズルFNが、この給油装置FSに適合する給油ノズルである大径ノズルFNLである場合は、
図15下段に示したように、大径ノズルFNLは、案内部材53,54の第2案内斜面61,63にガイドされて、案内部材53,54から見て突当部57とは反対側の第2部分に追い込まれる。このとき、案内部材53と案内部材54との離間距離GD1が、大径ノズルFNLの外径より小さいので、大径ノズルFNLにより、案内部材53および54を、錐形ガード51との当接部を支点として押し、移動部材52を径方向外側に移動させることができる。これにより、大径ノズルFNLの下方から、突当部57を移動させることができ、大径ノズルFNLは弁別部50を越えて燃料通路90に進入し、開閉部材70を開弁する。
【0034】
図15に示したように、小径ノズルFNSを導いて進入を阻止する第1部分と大径ノズルFNLを導いて進入を許容する第2部分とは連続しており、両者を合わせた形状が一続きの開口部に相当する。
【0035】
以上説明したように、第1実施形態の給油装置FSは、給油ノズルの外径を、案内部材53と案内部材54との離間距離GD1を、あたかもゲージのように利用して、精度良く弁別することができる。このため、製造公差を含めれば、差異が1mm程度のアドブルー用給油ノズル(外径19.0mm)とガソリン用の給油ノズル(外径20.5mm)とを精度良く弁別し、給油装置FSに適合しない給油ノズルの進入を妨げ、誤って、異なる種類の燃料を供給する虞を低減できる。この場合、第2部分の大きさを外径20.5mmを越えるノズルが通過出来ないようにしておけば、軽油用の給油ノズルの進入を許さないようにすることも容易である。他方、給油装置FSを軽油用に設計し、案内部材53,54の離間距離を、小径ノズルFNSであるガソリン用のノズル径20.5mmより僅かに大きく、大径ノズルFNLである軽油用のノズル径23.5mmより小さく、例えば22.0mmに設定し、これに合わせて、第1部分と第2部分の径を設計すれば、同様の構成で、軽油用給油ノズルは進入でき、ガソリン用のノズルは進入できない給油装置FSを構成することも容易である。なお、この場合、アドブルー用のノズル(外径19mm)であっても、これを適合しないノズルとして弁別し、進入を許さないことは、小径ノズルFNSと同様である。
【0036】
B.第2実施形態:
次に、第2実施形態としての給油装置FSに用いるフィラーネック200について説明する。
図16は、第2実施形態としてのフィラーネック200の概略構成を示す斜視図である。
図16も
図2同様、燃料通路を形成する部材の図示手前側を外した状態で描かれている。第2実施形態のフィラーネック200には、給油口122を形成するカバー部材124側から、第1開閉機構140、第2開閉機構130が内蔵されている。第1開閉機構140および第2開閉機構130は、いずれも給油ノズルFNの到達範囲にあり、給油装置FSに適合する給油ノズルFNを差し込むことにより開かれることは第1実施形態と同様である。但し、第2実施形態の給油装置FSは、軽油用に設計されており、軽油用の給油ノズル(外径23.5mm)がこの給油装置FS適合する大径ノズルFNLであり、ガソリン用の給油ノズル(外径20.5)やそれ以下の外径の給油ノズルは、適合しない小径ノズルFNSであるとして弁部される。
【0037】
第2開閉機構130は、図示するように、最も燃料タンク側において燃料通路形成部120の下部に配設され、燃料通路190を開閉する。この第2開閉機構130は、燃料通路190を開閉する第2開閉弁131と、燃料通路形成部120に固定されて第2開閉弁131を付勢するスプリング(図示省略)と、を備える。第2開閉弁131は、燃料タンク側から挿入側への液体燃料の逆流を防止するフラップであり、シール用のシール部材を備える。第2開閉弁131は、燃料通路形成部120に設けられた回転軸132で回転可能に支持され、スプリングにより、第2開閉弁131を燃料通路190が閉まる方向に付勢されている。
【0038】
第2開閉機構130よりも給油口122側に設けられた第1開閉機構140は、ゲージ部材および作動部材として機能する弁別部150と、この弁別部150よりも燃料タンクFT側に設けられた開閉部材170と、を備える。弁別部150は全て樹脂により形成されている。弁別部150の構成を、
図17から
図29を用いて説明する。弁別部150は、給油装置FSに適合する給油ノズルが進入し得る円形の開口を有し、内側にテーパ状の錐形ガード151と、この錐形ガード151を移動可能に保持すると円環形状の保持部材145と、錐形ガード151の途中に設けられた起動部材110とを備える。錐形ガード151は、上端外周に上縁部を有するが、第1実施形態と異なり、錐形ガード151の上端は固定されていない。このため、錐形ガード151は、給油ノズルFNの挿入時に、給油ノズルFNの先端の当たり方によっては、後述する様に移動する。
【0039】
第2実施形態の錐形ガードは151は、起動部材110が設けられている点を除けば、概ね、第1実施形態の錐形ガード51と移動部材52とが合体した形状をしている。このため、錐形ガード151の内側には案内部材153,154が、錐形ガード151の下端には突当部157が、第1実施形態と同様、設けられている。案内部材153と案内部材154とは、所定の距離だけ隔てて、互いに向き合っている。
図18では、小径の給油ノズルを参考用として破線で示している。案内部材153の上半分には、互いに傾きの方向が異なる斜面である第2案内斜面161および第1案内斜面162が設けられ、案内部材154の上半分には、互いに傾きの方向が異なる第2案内斜面163および第1案内斜面164が設けられている。また、案内部材153の下半分は、
図17に示したように、第1,第2案内斜面162,161の終端から、それぞれ外方に向かって後退する形状とされている。第1案内斜面162の下の斜面を第1拡張下面167と呼び、第2案内斜面161の下の斜面を第2拡張下面166と呼ぶ。
図18~
図20では、案内部材154側の下半分の形状は示されていないが、案内部材153,154は、第1実施形態の案内部材53,54と同様の形状を備え、両者は、鏡像関係の形状をしている。この案内部材153,154の第1案内斜面162,164は、突当部157側を向いており、第2案内斜面161,163は、突当部157とは反対側を向いている。
【0040】
錐形ガード151下部の突当部157は、錐形ガード151の下端において、錐形ガード151の内側に所定距離だけ突き出した円弧形状をしている。また、錐形ガード151を給油口122側から平面視した場合の錐形ガード151の開口部の形状を、
図19に示した。図において、突当部157が存在しないと仮定した場合の、錐形ガード151の下端側開口を、実線で、開口部形状GLとして示した。平面視においては、案内部材153,154と錐形ガード151の下端とが一続きの開口部を形成する開口部形状GLのうち、突当部157の存在する側を弁別部150の第1部分と呼ぶ。この第1部分は、この給油装置FSに適合する給油ノズルFNより小径の給油ノズルが納まるように設計されている。第2実施形態において、案内部材153の径方向内側端部と案内部材154の径方向内側端部とが構成する内寸箇所の離間距離GD2も、22mmとされている。離間距離GD2は、小径ノズルFNSの外径より僅かに大きく、大径ノズルFNLの外径より少し小さい。
【0041】
錐形ガード151には、突当部157と反対側に、起動部材110が設けられている。この起動部材110は、
図16,
図17に示したよう、錐形ガード51の傾斜部よりはやや小さく角度に保持されている。起動部材110はこの位置から下方、つまり開閉部材170方向に回動可能に、回転軸111により錐形ガード51に保持されている。また、起動部材110はスプリング112により、上方、つまり給油口122側に所定の弾発力F1で、付勢されている。
【0042】
起動部材110を備えた錐形ガード51は、係合部143により、全体として、保持部材145に保持されている。この保持部材145は、起動部材110および突当部157の中心を通る軸に沿った2箇所に設けられたスライド部材145b,145fを備える。このスライド部材145b,145fは、燃料通路形成部120に固定された支持柱146,147に設けられた溝に、スライド可能に嵌まり合っている。従って、保持部材145は、スライド部材145bまたはスライド部材145f方向に移動可能に支承されている。
【0043】
保持部材145の移動は、錐形ガード151の傾斜部または起動部材110を、給油ノズルFNの先端が押すことによって生じる。錐形ガード151の傾斜部または起動部材110を押すことで、保持部材145を、燃料通路190の径方向にスライドさせるのに必要な力を、ここでは移動力F2と呼ぶ。本実施形態では、保持部材145を、径方向のいずれかの方向にスプリングなどで付勢していないので、スプリング112による弾発力F1とこの移動力F2とには、
F1>>F2
の関係が成り立っている。なお、錐形ガード151や起動部材110に移動力F2が掛かっていない状態で、保持部材145が最も支持柱147側に位置するように、支持柱146と保持部材145との間にコイルバネなどを配置し、支持柱146に対して保持部材145を支持柱147側に付勢してもよい。保持部材145が最も支持柱147側となる位置を、本実施形態では、錐形ガード151のデフォルト位置と呼ぶ。
【0044】
こうした錐形ガード151や保持部材145を備える弁別部150の下側、つまり燃料タンクFT側に設けられた開閉部材170は、
図19における第1部分を閉塞する弁体171、この弁体171を回転可能に燃料通路形成部20に保持する保持軸173、一端が保持軸173に固定され他端が弁体171の下面に接するよう配置されたスプリング175、を備える。弁体171は、スプリング175によって、閉塞方向に付勢されているから、外力が働かなければ、燃料通路190を閉塞する位置に保たれる。
【0045】
以上説明した第2実施形態のフィラーネック200の動作について説明する。小径ノズルFNSが給油装置FSに挿入された場合であって、小径ノズルFNSの先端が、錐形ガード151の傾斜部58等に接することなく、第1部分に挿入された場合には、
図18に示したように、小径ノズルFNSの先端は、錐形ガード151下端の突当部157に突き当たり、それ以上進入できないので、開閉部材170の弁体171を開方向に移動させることはない。小径ノズルFNSの挿入位置が第1部分に対して、多少ずれていても、案内部材153,154の第1案内斜面162,164により、小径ノズルFNSは、第1部分に誘導される。これらは第1実施形態と同様である。
【0046】
他方、
図20に示したように、小径ノズルFNSが突当部157を避けた位置で、給油口122から進入した場合には、小径ノズルFNSの突当部157側とは反対側の端部が、錐形ガード151に設けられた起動部材110に当接する。この状態では、
図20のXXI-XXI断面図である
図21に示したように、小径ノズルFNSの先端は、起動部材110に当たり、これを下方向、つまり開閉部材170側に押す。このとき、起動部材110は、スプリング112により弾発力F1で上方向に付勢されているので、小径ノズルFNSにより起動部材110を押す力FFが働き、この力が、
FF>F2
であれば、起動部材110が押し下げられる前に、保持部材145、延いては錐形ガード151を支持柱146側に移動する。
【0047】
この結果、
図22に示したように、保持部材145の移動と共に、錐形ガード151も支持柱146側に移動し、錐形ガード151下端の突当部157も、矢印DR方向に移動し、結果的に小径ノズルFNSの下に位置する。従って、このまま小径ノズルFNSを奥に押し込んでいくと、やがて小径ノズルFNSは、110を矢印DR方向に押しやり、
図23に示したように、先端が突当部157に突き当たってそれ以上進入できなくなる。
【0048】
このように、第2実施形態のフィラーネック200は、給油装置FSに適合しない小径ノズルFNSを給油口122から挿入すると、小径ノズルFNSは、錐形ガード151の開口のどこに挿入しても、
図20に示した第1部分に導かれることになり、突当部157によって、それ以上の進入を阻まれることになる。なお、第1実施形態と同様、小径ノズルFNSの先端を無理に片側の案内部材153の第2案内斜面161に押し当てて、起動部材110を押下げた場合でも、小径ノズルFNSの先端が、第2案内斜面161の最下端を通り過ぎると、第2案内斜面161の最下端より下側は、第2拡張下面166として、外方に向かって後退する形状とされているので、小径ノズルFNSの先端を案内部材153の第2案内斜面161に当てて、これを押すことは、もはやできない。このため、押し下げられていた起動部材110はスプリング112の力により元の位置に戻り、保持部材145、延いては錐形ガード151は支持柱146側に移動する。この結果、突当部157が小径ノズルFNSの下に配置されることになり、小径ノズルFNSのそれ以上の進入は阻止される。案内部材153の第2案内斜面161,第1案内斜面162より下側、つまり開閉部材170側の形状については、第1実施形態と同様に、第2拡張下面166,第1拡張下面167以外の形状、例えば単なる空間部とした形状などであっても差し支えない。案内部材154についても同様である。
【0049】
これに対して、この給油装置FSに適合する外径を備えた大径ノズルFNLを、給油口122から挿入した場合は、大径ノズルFNLは、錐形ガード151の開口の第1部分には、案内部材153,154が邪魔して差し入れられないので、
図24に示すように、錐形ガード151の開口の第2部分に差し入れることになる。この状態を、大径ノズルFNLは、
図24のXXV-XXV断面図である
図25にしめした。この状態から、更に大径ノズルFNLを押し込んでいくと、大径ノズルFNLの突当部157側の端部は、案内部材153,154の第2案内斜面161,163に当たり、大径ノズルFNLの反対側は、起動部材110に当たる。この状態では、大径ノズルFNLが案内部材153,154に当たっているので、ここを起点に、起動部材110が押されることになり、保持部材145による錐形ガード151の移動は生じない。大径ノズルFNLを押し込む力FFが、起動部材110を付勢するスプリング112の弾発力F1に対して、
FF>F1
であれば、起動部材110は、開閉部材170側に回転していく。起動部材110の回転につれて、大径ノズルFNLを受け入れる第2部分から、平面視において、起動部材110は後退していき、
図26に示したように、大径ノズルFNLは、やがて錐形ガード151の開口部の第2部分に挿入される。
【0050】
このときの各部の動きを、
図27,
図28に示した。大径ノズルFNLを給油口122に挿入して、その先端が、案内部材153,154の第2案内斜面161,163と起動部材110とに当たる(
図22)。更に大径ノズルFNLを挿入すると、これに連れて、起動部材110が回転して、その先端は矢印DD方向(
図27)、つまり開閉部材170側で、かつ径方向外側に移動する。更に、大径ノズルFNLを挿入すると、起動部材110の先端は、大径ノズルFNLの側面に当たる位置まで開く(
図28)。この間、錐形ガード151は、大径ノズルFNLが案内部材153,154の第2案内斜面161,163に当接していることから、移動することはなく、大径ノズルFNLの下に、突当部157が移動してくることはない。この結果、
図29に示すように、給油装置FSに適合する給油ノズルFNである大径ノズルFNLは、案内部材153,154および起動部材110の回転した先端によって囲まれる領域、つまり
図26に示した第2部分に嵌まり、突当部157に突き当たることなく進入し、開閉部材170の弁体171当たってこれを押し開き、燃料通路190に進入する。開閉部材170を押し開いて進入した大径ノズルFNLは、燃料通路90を更に進み、第2開閉機構130を押し開いて、給油可能な位置に至る。
【0051】
以上説明したフィラーネック200では、弁別部150が次のように動作して、給油ノズルFNの外径を弁別している。
(A)給油口122から挿入された給油ノズルFNが、この給油装置FSに適合しない給油ノズルである小径ノズルFNSである場合は、小径ノズルFNSを、案内部材153,154から見て突当部157側の第1部分に追い込んで、その進入を突当部157で阻止する。このとき、小径ノズルFNSを第1部分の辺りに挿入すると、挿入位置が第1部分に対して、多少ずれていても、案内部材153,154の第1案内斜面162,164により、小径ノズルFNSは、第1部分に誘導される。小径ノズルFNSの下方に突当部157が位置するのは、案内部材153と案内部材154との離間距離GD2が、小径ノズルFNSの外径より大きいので、小径ノズルFNSにより、起動部材110との当接部を支点として、錐形ガード151を径方向外側(矢印DR方向)に移動させることができないからである。このため、突当部157より、小径ノズルFNSの進入は阻止される。また、無理に移動させても、小径ノズルFNSの先端が案内部材153,154の第2案内斜面161,163を通り過ぎると、第2案内斜面161,63の下方の第2拡張下面166は、外方に向かって後退する形状を備えるので、案内部材153,154と小径ノズルFNSの係合が解け、保持部材145はデフォルトの位置に戻り、突当部157により、小径ノズルFNSの進入は阻止される。
【0052】
(B)他方、給油口122から挿入された給油ノズルFNが、この給油装置FSに適合する給油ノズルである大径ノズルFNLである場合は、案内部材153と案内部材154との離間距離GD2が、大径ノズルFNLの外径より小さいので、大径ノズルFNLは、必ず案内部材153,154の第2案内斜面161,163に当接する。この結果、大径ノズルFNLが進入しても、錐形ガード151の移動は生じず、他方、起動部材110の回転は生じるので、大径ノズルFNLは、突当部157が存在しない第2部分に進入する。これにより、大径ノズルFNLは弁別部150を越えて燃料通路190に進入し、開閉部材170を開弁する。
【0053】
以上説明したように、第2実施形態の給油装置FSは、給油ノズルの外径を、案内部材153と案内部材154との離間距離GD2を、あたかもゲージのように利用して、精度良く弁別することができる。このため、製造公差を含めれば、差異が2mm程度のガソリン用給油ノズル(外径20.5mm)と軽油用の給油ノズル(外径23.5mm)とを精度良く弁別し、給油装置FSに適合しない給油ノズルの進入を妨げ、誤って、異なる種類の燃料を供給する虞を低減できることは、第1実施形態と同様である。なお、上述したフィラーネック200であれば、アドブルー用のノズル(外径19.0mm)であっても、これを適合しないノズルとして弁別し、進入を許さないことは、小径ノズルFNSと同様である。他方、給油装置FSをガソリン用に設計し、案内部材153,154の離間距離を、アドブルー用のノズル径である19.0mmより僅かに大きく、ガソリン用のノズル径20.5mmより小さく、例えば19.75mmに設定し、これに併せて、第1部分と第2部分の径を設計すれば、同様の構成で、ガソリン用給油ノズルは進入でき、アドブルー用のノズルは進入できない給油装置FSを構成することも容易である。この場合、第2部分の大きさを外径22mm以上のノズルが通過出来ないようにしておけば、軽油用給油ノズルの進入を許さないようにすることも容易である。
【0054】
C.他の実施形態:
以上説明したいくつかの実施形態では、案内部材53,54や153,154には、第1案内斜面62,64や162,164と第2案内斜面61,63や161,163を設けたが、第1案内斜面または第2案内斜面の一方のみを設けるものとしてもよい。また、案内部材53,54や153,154の第1案内斜面62,64や162,164、あるいは第2案内斜面61,63や161,163は、平面形状の斜面としたが、曲面形状としてもよい。この場合、外側に凸の曲面としてもよいし、内側に凹の曲面としてもよい。もとより、複数の平面を組み合わせて、第2案内斜面を構成するものとしてもよい。本実施例では、左右一対の案内部材を、第1部分と第2部分との接続箇所に設けたが、これに加えて、第2部分の外縁に更に案内部材を増設してもよい。また左右の一対の案内部材の第2案内斜面は、鏡像関係としたが、大径ノズルFNLを第2部分に導くことができれば、斜面の方向や角度が左右の案内部材で異なっていてもよい。
【0055】
上記実施形態では、案内部材53,54や153,153の下半分は、二つの平面、例えば第2拡張下面66と第1拡張下面67あるいは第2拡張下面166と第1拡張下面167から構成したが、第1拡張下面67や第1拡張下面167を備えない構成としてもよい。また、案内部材53,54や153,154の下半分は、下方に尖った円錐または円錐台形状としてもよい。あるいは、段差をもって、外方に後退する形状としてもよい。もとより、傾斜や段差によって後退する形状に限る必要はなく、開口部の内周縁から外方に向かう所定の範囲に、空間が形成される形状とされていればよく、この結果、開口部を透過した小径ノズルFNSの先端が、案内部材53,54にもはや接し得ない形状となっていれば良い。
【0056】
上記実施形態では、弁別部50,150は樹脂により形成したが、給油装置FSに適合しない給油ノズルが挿入された場合に、その進入を止める突当部57,157には、挿入される給油ノズルの先端が直接ぶつかるので、突当部57,157を含む移動部材52や錐形ガード151を、樹脂より強い材質、例えば金属などで形成してもよい。あるいは、突当部57,157のみを金属とし、樹脂製の移動部材52や錐形ガード151にインサート成形するようにしてもよい。
【0057】
第1実施形態において、移動部材52は樹脂製のバネ部材41で移動可能に錐形ガード51に取付けたが、板ばねなどを用いてもよい。あるいは、移動部材52をその後方から、移動フランジ部55を固定フランジ部56当接する方向に付勢するよう、スプリングを設けてもよい。この場合、スプリングに代えて、弾性体などを用いることも可能である。
【0058】
第2実施形態において、起動部材110は、略直方体形状としたが、形状は問わない。錐形ガード151が下方に向かうほど開口部が狭くなることに合わせて、先端ほど細くなる形状としてもよい。また、起動部材110は必ずしも回転しなくてもよい。例えば110の先端に、錐形ガード151の傾斜部と同じ程度の傾斜を形成し、大径ノズルFNLの先端が起動部材110の先端に当たったとき、起動部材110が、錐形ガード151に対して
図22に示した矢印DR方向に移動するようにしてもよい。このときの起動部材の移動に要する力F1を、起動部材110が取付けられた錐形ガード151がDR方向に移動するのに必要な力F2より大きくしておけば、第2実施形態と同様の作用効果を奏することは容易である。
【0059】
第1実施形態の錐形ガード51や移動部材52、あるいは第2実施形態の錐形ガード151は、燃料通路90,190側に行くほど窄まる、いわゆる漏斗(ファンネル)形状としたが、給油口側の第1の位置と第1の位置より燃料タンク側の第2の位置とでは、第2の位置の方が内径が狭くなる形状であればよく、螺旋形状であってもよい。あるいはそれぞれ傾斜した複数の段差を組み合わせた形状であってもよい。
【0060】
上記実施形態では、給油装置FSは、いわゆるキャップレスの構成を備え、給油時以外では給油口22,122を閉鎖するフラップと開閉部材70,170とを兼用している。開閉部材70,170は、キャップレス給油装置FSのためのフラップとは別に独立に設けてもよい。あるいは、第2開閉機構30,130に設けるものとしてもよい。
【0061】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
20…燃料通路形成部、22…給油口、23…返し部、24…カバー部材、26…燃料蒸気ポート、27…支持部材、30…第2開閉機構、31…第2開閉弁、32…回転軸、33…シール部材、40…第1開閉機構、41,43…バネ部材、44…支柱部材、46…端部、50…弁別部、51…錐形ガード、52…移動部材、53,54…案内部材、55…移動フランジ部、56…固定フランジ部、57…突当部、58…傾斜部、59…上縁部、61,63…第2案内斜面、62,64…第1案内斜面、66…第2拡張下面、67…第1拡張下面、68…空間部、70…開閉部材、71…第1開閉弁、73…保持軸、75…スプリング、90…燃料通路、100…フィラーネック、110…起動部材、111…回転軸、112…スプリング、120…燃料通路形成部、122…給油口、130…第2開閉機構、131…第2開閉弁、132…回転軸、140…第1開閉機構、143…係合部、145…保持部材、145b,145f…スライド部材、146,147…支持柱、150…弁別部、151…錐形ガード、153,154…案内部材、157…突当部、161,163…第2案内斜面、162,164…第1案内斜面、166…第2拡張下面、167…第1拡張下面、170…開閉部材、171…弁体、173…保持軸、175…スプリング、190…燃料通路、200…フィラーネック