(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】光検出器
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
G01J1/02 Y
(21)【出願番号】P 2019562031
(86)(22)【出願日】2018-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2018047584
(87)【国際公開番号】W WO2019131637
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2017254336
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】市丸 正幸
(72)【発明者】
【氏名】永山 大地
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-110835(JP,U)
【文献】実開平03-057642(JP,U)
【文献】実開平03-042533(JP,U)
【文献】国際公開第2019/131642(WO,A1)
【文献】特開平11-083623(JP,A)
【文献】特開平11-064105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/02
G01J 1/42
G01J 5/02
G01J 5/34- 5/35
G01K 7/00
G01V 8/10- 8/26
G08B 13/189- 13/191
G08B 17/12
H01H 35/00
H01L 37/00 - 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有するステムと、
前記ステムの表面側に配置され、受光によって互いに逆極性の電圧を生じる第1受光部と第2受光部とが直列接続された焦電素子と、
前記ステムの表面から突出する形状であって、熱伝導性を有する突起部と、
前記焦電素子に電気的に接続する回路が形成された平板状の回路基板と、
を備え、
前記回路基板は、
第1電極パターン、第2電極パターン、および第3電極パターンを含む第1導体パターンと、
第4電極パターン、第5電極パターン、および第6電極パターンを含む第2導体パターンと、をさらに備え、
前記焦電素子の前記第1受光部は、第1接続部材を介して前記
第1電極パターンと電気的に接続され、
前記第1電極パターンは前記第2電極パターンを介して前記第3電極パターンと接続され、
前記焦電素子の前記第2受光部は、第2接続部材を介して前記
第4電極パターンと電気的に接続され、
前記第4電極パターンは前記第5電極パターンを介して前記第6電極パターンと接続され、
前記回路基板の平面視において、
前記第3電極パターンと前記第6電極パターンとは、前記第1電極パターンと前記第4電極パターンとの間であって、
中間点にギャップを介して平行に配置される
、
光検出器。
【請求項2】
前記第2電極パターンの幅は、前記第3電極パターンの幅よりも狭く
前記第5電極パターンの幅は、前記第6電極パターンの幅よりも狭い、
請求項1に記載の光検出器。
【請求項3】
前記第1導体パターンは、前記第3電極パターンに接続される第7電極パターンをさらに含み、前記第7電極パターンの幅は前記第3電極パターンの幅より狭く、
前記第2導体パターンは、前記第6電極パターンに接続される第8電極パターンをさらに含み、前記第8電極パターンの幅は前記第6電極パターンの幅より狭い、
請求項2に記載の光検出器。
【請求項4】
前記突起部は、前記焦電素子に電気的に接続する回路を接地する接地用のリード端子である、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦電体に受光電極を形成した焦電型の光検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光検出器の一種として、焦電素子を用いた赤外線センサが記載されている。特許文献1に示された従来の赤外線センサは、ステム、焦電素子、および、変換回路を備える。ステムの表面には、変換回路を構成する各回路素子と導体パターンとが形成されている。焦電素子は、ステムの表面側であって、ステムの表面から離間した位置に配置されている。
【0003】
この従来の赤外線センサでは、焦電素子の一方端がグランド電位に接続され、他方端が変換回路に接続されている。ステムには、当該ステムを貫通する3個のリード端子が設置されている。3個のリード端子は、焦電素子の一方端をグランド電位に接続する端子と、変換回路の駆動電圧を印加する端子と、変換回路の出力電圧を外部に出力する端子である。平面視において、3個のリード端子は、焦電素子を囲んで配置されている。
【0004】
従来の赤外線センサでは、背景温度(外気)の変動による誤動作を防止するために、焦電素子の受光電極を対にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の赤外線センサの構成であっても、金属等の導電率が高い材料でステムを形成すると、電気的な特性の向上が図れるものの、外部から強力な光を受けた際、すなわち、WLI(White Light Immunity)によって、誤動作してしまうことがあった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、従来構成よりも、電気的な特性に優れ、且つ、さらに誤動作の発生を抑制できる光検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の光検出器は、導電性を有するステム、焦電素子、および、突起部、平板状の回路基板を備える。焦電素子は、ステムの表面側に配置され、受光によって互いに逆極性の電圧を生じる第1受光部と第2受光部とが直列接続されている。突起部は、ステムの表面から突出する形状であって、熱伝導性を有する。回路基板は、焦電素子に電気的に接続されている。
【0009】
回路基板は、焦電素子の第1受光部に電気的に接続する第1導体パターンと、焦電素子の第2受光部に電気的に接続する第2導体パターンを備える。第1導体パターンと第2導体パターンとは、回路基板の平面視において互いに離間して平行に配置される区間を有する。
【0010】
この構成では、外部からの強力な光がステムに照射され、ステムが発熱した場合に、突起部を介して第1導体パターンに伝搬された熱が、平行区間において熱交換が促進される。これにより、第1導体パターンを介して第1受光部に伝搬される熱量と、第2導体パターンを介して第2受光部に伝搬される熱量との差を小さくできる。
【0011】
また、この発明の光検出器では、次の構成であることが好ましい。焦電素子の第1受光部は、第1接続部材を介して第1導体パターンと電気的に接続されている。焦電素子の第2受光部は、第2接続部材を介して第2導体パターンと電気的に接続されている。回路基板の平面視において、第1接続部材と第2接続部材の中間点に互いに離間して配置されるように 、第1導体パターンと第2導体パターンとが、平行に配置される区間を有する。
【0012】
この構成では、平行に配置される区間から第1接続部材までの熱伝導距離と平行に配置される区間から第2接続部材までの熱伝導距離とが略同じになる。したがって、第1受光部への熱伝導と第2受光部への熱伝導とがより均一になる。
【0013】
また、この発明の光検出器では、第1導体パターンと第2導体パターンとは、他の区間において、平行に配置される区間の幅より幅が狭い区間を有することが好ましい。
【0014】
この構成では、第1導体パターンと第2導体パターンとの平行区間における熱交換の効率が向上する。また、第1導体パターンと第2導体パターンとの平行区間と異なる区間(導体パターンの幅が狭い区間)での熱の伝搬が抑制される。
【0015】
また、この発明の光検出器では、平行に配置される区間の幅より幅が狭い区間が、平行に配置される区間の両側に形成されることが好ましい。
【0016】
この構成では、第1導体パターンと第2導体パターンとの平行に配置される区間に熱が集中し易い。これにより、熱交換がより効率的になる。
【0017】
また、この発明の光検出器では、突起部は、焦電素子の第1受光部を接地する接地用のリード端子であることが好ましい。
【0018】
この構成では、電気的な機能を有するリード端子によって、上述の第1受光部および第2受光部の熱による電圧の相殺が実現される。これにより、第1受光部および第2受光部の熱による電圧の相殺を実現可能な光検出器の構造が簡素化される。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、電気的な特性に優れ、且つ、さらに誤動作の発生を抑制できる光検出器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光検出器10の主要構成を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る光検出器10の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る光検出器10の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る光検出器10の一部の構成を示す側面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る光検出器10の等価回路図である。
【
図6】
図6(A)は本発明の第1の実施形態に係る焦電素子20の平面図であり、
図6(B)は焦電素子20の側面断面図であり、
図6(C)は焦電素子20の底面図である。
【
図7】
図7(A)は本発明の第1の実施形態に係る回路基板30の平面図であり、
図7(B)は回路基板30の裏面図である。
【
図8】
図8(A)は本発明の実施形態に係る光検出器10の構成の熱伝導のシミュレーション結果を示す図であり、
図8(B)は比較構成の熱伝導のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る光検出器10Aの主要構成を示す平面図である。
【
図10】
図10(A)は本発明の第2の実施形態に係る焦電素子20Aの平面図であり、
図10(B)は焦電素子20Aの側面断面図であり、
図10(C)は焦電素子20Aの底面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3の実施形態に係る光検出器10Bの主要構成を示す平面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第4の実施形態に係る光検出器10Cの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の実施形態に係る光検出器について、図を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光検出器10の主要構成を示す平面図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る光検出器10の斜視図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る光検出器10の分解斜視図である。
図3では、カバーの記載を省略している。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る光検出器10の一部の構成を示す側面図である。
図5は、本発明の第1の実施形態に係る光検出器10を含む光検出装置の等価回路図である。
【0022】
まず、
図5を用いて、光検出器10の回路構成を説明する。光検出器10は、焦電素子20、および、変換回路を実現する回路基板30を備える。
【0023】
焦電素子20は、第1受光部201と第2受光部202とが直列接続された構成を備える。第1受光部201と第2受光部202とは、外部からの第1受光部201と第2受光部202との共通の光を受光すると、それぞれに逆極性の電位差(電圧)を発生する。
【0024】
回路基板30は、増幅用のFET32、抵抗素子331、抵抗素子332、抵抗素子333、および、抵抗素子334を備える。
【0025】
焦電素子20の第1受光部201は、抵抗素子333を介して端子PGに接続されている。端子PGは、接地用の端子である。抵抗素子334は、焦電素子20に並列に接続されている。
【0026】
焦電素子20の第2受光部202は、FET32のゲートに接続されている。FET32のドレインは、抵抗素子331を介して端子PDに接続されている。端子PDは、駆動電圧VDDが印加される端子である。FET32のソースは、抵抗素子332を介して端子POに接続されている。端子POは、判定部91に接続されている。
【0027】
この構成において、焦電素子20は、被検知対象からの熱によって検出電圧を発生する。FET32は、検出電圧を増幅する。判定部91は、IC等からなり、光検出器10の端子POの電圧に基づいて、既知の方法で被検知対象の有無等を判定する。
【0028】
ここで、外部からの不所望な光による熱量が小さい場合、第1受光部201の発生する電圧と第2受光部202の発生する電圧が相殺される。これにより、誤検出の発生は抑制される。一方、外部からの不所望な光による熱量が大きな場合であっても、以下に示す構成を用いることによって、当該外部からの不所望な光による誤動作の発生は、抑制される。
【0029】
図1、
図2、
図3、
図4に示すように、構造的には、光検出器10は、焦電素子20、回路基板30、ステム40、導体ピン511、導体ピン512、導体ピン52、導体ピン53、および、カバー60を備える。
【0030】
ステム40は、平面視して(
図2、
図3における第3方向に視て)、略平板状である。ステム40は、金属等の導電性および熱伝導性を有する材料からなる。ステム40は、例えば、直径が約9mmである。なお、寸法はこれに限るものではない。
【0031】
導体ピン511、導体ピン512、導体ピン52、および、導体ピン53は、棒状であり、金属等の導電率が高い材料からなる。導体ピン511、導体ピン52、および、導体ピン53は、ステム40を厚み方向(
図3の第3方向)に貫通しており、ステム40の表面側および裏面側に突出している。この際、導体ピン511、導体ピン52、および、導体ピン53では、表面側の突出量は、裏面側の突出量よりも小さい。導体ピン512は、ステム40の表面側に突出している。導体ピン511におけるステム40の表面側に突出する部分、および、導体ピン512におけるステム40の表面側に突出する部分が、本発明の「突起部」に対応する。より詳細には、導体ピン511側の突起部を第1突起部、導体ピン512側の突起部を第2突起部とする。なお、第1突起部と第2突起部の高さ、および太さは同じであることが好ましい。
【0032】
導体ピン511および導体ピン512は、ステム40に対して電気的且つ物理的に接続されている。導体ピン52は、ステム40に対して、絶縁体520を介して物理的に接続されている。導体ピン53は、ステム40に対して、絶縁体530を介して物理的に接続されている。すなわち、導体ピン52および導体ピン53は、ステム40に対して電気的に絶縁された状態で、物理的に接続されている。
【0033】
この構成において、導体ピン511および導体ピン512は、接地用の端子PGに対応する。導体ピン52は、検知電圧の出力用の端子POに対応する。導体ピン53は、駆動電圧VDDの印加用の端子PDに対応する。このように、導体ピン511、導体ピン512、導体ピン52、および、導体ピン53を、外部接続用の端子に用いることによって、電気伝導性に優れた光検出器10を実現できる。また、接地用の端子PGとして、導体ピン511および導体ピン512を用いるとともに、ステム40を接地用に利用することで、グランド電位が安定する。これにより、光検出器10のグランドが安定して、被検出対象の検出性能が向上する。
【0034】
カバー60は、筒状であり、焦電素子20および回路基板30を内部空間内に含んで、ステム40の表面側を覆っている。カバー60の天面には、集光レンズ600が配置されている。集光レンズ600は、外部からの光を焦電素子20に集光する。
【0035】
回路基板30は、主として樹脂材料からなり、平面視において矩形の平板である。回路基板30は、ステム40の表面側に実装されている。回路基板30の寸法は、例えば、約5mm×約6mmであるが、これに限るものではない。回路基板30の具体的な構成は後述するが、回路基板30には、回路基板30を表面側から裏面側に貫通する貫通孔311、貫通孔312、貫通孔313、および、貫通孔314が形成されている。貫通孔311には、導体ピン511が嵌合しており、貫通孔312には、導体ピン512が嵌合している。貫通孔313には、導体ピン52が嵌合しており、貫通孔314には、導体ピン53が嵌合している。この構成により、回路基板30は、ステム40の表面から距離を空けて固定される。
【0036】
焦電素子20は、平面視において矩形の平板である。焦電素子20は、回路基板30の表面に実装されている。この際、焦電素子20の裏面と回路基板30の表面とは略平行である。また、焦電素子20の裏面と回路基板30の表面とは離間している。また、焦電素子20は、平面視における回路基板30の中央に配置されている。導体ピン511、および、導体ピン512は、焦電素子20の第2方向の一方端側に配置されており、導体ピン52、および、導体ピン53は、焦電素子20第2方向の他方端側に配置されている。
【0037】
図6(A)は本発明の第1の実施形態に係る焦電素子20の平面図であり、
図6(B)は焦電素子20の側面断面図であり、
図6(C)は焦電素子20の底面図である。
【0038】
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)に示すように、焦電素子20は、焦電体21、検出電極22、黒化膜231、黒化膜232、接続電極241、接続電極242、接続部材251、および、接続部材252を備える。
【0039】
焦電体21は、矩形の平板であり、第1方向の長さが第2方向の長さより長い。検出電極22は、焦電体21の表面に形成されている。焦電体21は、例えば、第3方向に分極されている。
【0040】
検出電極22は、第1電極221、第2電極222、接続電極223を備える。第1電極221および第2電極222は、矩形であり、第1方向に離間して配置されている。第1電極221および第2電極222の第2方向の長さは、焦電体21の第2方向の長さと同じであることが好ましい。接続電極223は、第1電極221と第2電極222との間に配置されており、第1電極221と第2電極222とを接続している。
【0041】
黒化膜231は、第1電極221の表面の略全面を覆って形成されている。黒化膜232は、第2電極222の表面の略全面を覆って形成されている。
【0042】
接続電極241は、焦電体21を介して、第1電極221に対向する矩形部2411と、外部接続用の矩形部2412と、これらの矩形部を接続する接続部とからなる。外部接続用の矩形部2412は、焦電体21の第1方向における一方端付近に形成されている。この外部接続用の矩形部の外面(裏面)には、接続部材251が配置されている。
【0043】
接続電極242は、焦電体21を介して、第2電極222に対向する矩形部2421と、外部接続用の矩形部2422と、これらの矩形部を接続する接続部とからなる。外部接続用の矩形部2422は、焦電体21の第1方向における他方端付近に形成されている。この外部接続用の矩形部の外面(裏面)には、接続部材252が配置されている。
【0044】
この構成では、焦電素子20の第1受光部201は、主として、焦電体21が第1電極221および矩形部2411によって挟まれる領域である。また、焦電素子20の第2受光部202は、主として、焦電体21が第2電極222および矩形部2421によって挟まれる領域である。
【0045】
このような構成において、光検出器10を平面視して、焦電素子20の第1受光部201と導体ピン511との最短距離(
図1のL1)と、焦電素子20の第2受光部202と導体ピン512との最短距離(
図1のL2)と、は同じである。また、別の定義をすると、焦電素子20における焦電体21が第1電極221および矩形部2411によって挟まれる領域と導体ピン511との最短距離と、焦電素子20における焦電体21が第2電極222および矩形部2421によって挟まれる領域と導体ピン512との最短距離と、は同じである。
【0046】
ここで、焦電素子20の第1受光部201と導体ピン511との間の熱伝導の媒体は主として回路基板30であり、焦電素子20の第2受光部202と導体ピン512との間の熱伝導の媒体も主として回路基板30である。すなわち、焦電素子20の第1受光部201と導体ピン511との間の熱伝導の媒体と焦電素子20の第2受光部202と導体ピン512との間の熱伝導の媒体とは、同じである。このような構成では、焦電素子20の第1受光部201と導体ピン511との熱伝導の最短距離と、焦電素子20の第2受光部202と導体ピン512との熱伝導の最短距離とは同じになる。なお、ここおよび以下で説明する「同じ」とは、完全に同じであることを含み、誤差を含む範囲内で同じであることを意味する。
【0047】
したがって、外部から強力な光が光検出器10に当たって、ステム40に熱が発生すると、この熱は、導体ピン511を介して焦電素子20の第1受光部201に伝搬されるとともに、導体ピン512を介して焦電素子20の第2受光部202に伝搬される。ここで、上述のように、導体ピン511と焦電素子20との距離、および、導体ピン512と焦電素子20との距離を設定することによって、第1受光部201に伝搬する熱量と第2受光部202に伝搬する熱量は同じになる。
【0048】
これにより、外部の強力な光による熱を起因とする第1受光部201で生じる電圧と、外部の強力な光による熱を起因とする第2受光部202で生じる電圧とは相殺される。したがって、外部の強力な光によってステム40に生じる熱を要因とする誤検出は抑制される。
【0049】
以上のように、本実施形態の構成を備えることによって、外部の強力な光によってステム40に生じる熱を要因とする誤検出は抑制し、且つ、被検出対象の検出性能に優れる光検出器10を実現できる。
【0050】
なお、焦電素子20を平面視したとき、第1受光部201と第2受光部202、第1電極221と第2電極222、矩形部2411と矩形部2421、導体ピン511と導体ピン512は、各々、焦電素子20の中心を通り第2方向に延びる中心線に対して対称に配置されていることが好ましい。これにより、第1受光部201で生じる電圧と第2受光部202で生じる電圧とのバランスが向上し、背景温度(外気)の変動による影響を相殺する効果がより確実になる。
【0051】
さらに、接続部材251と接続部材252も中心線に対称に配置されていることがさらに好ましい。これにより、第1受光部201と第2受光部202との上述の相殺効果がさらに確実になる。
【0052】
さらに、光検出器10は、回路基板30が次の構成を備えることによって、外部の強力な光によってステム40に生じる熱を要因とする誤検出を、より確実に抑制できる。
【0053】
図7(A)は本発明の第1の実施形態に係る回路基板30の平面図であり、(B)は回路基板30の裏面図(焦電素子側から回路基板を平面視した時の回路基板裏面の透視図)である。
【0054】
図7(A)、
図7(B)に示すように、回路基板30は、樹脂基板300、および、複数の電極パターンを備える。電極パターン3411、電極パターン3412、電極パターン3413、電極パターン3414、電極パターン345、電極パターン351、電極パターン352、電極パターン353、電極パターン354、電極パターン355、電極パターン356、電極パターン357A、電極パターン357B、電極パターン358A、および、電極パターン358Bは、樹脂基板300の表面に形成されている。
【0055】
電極パターン3411、電極パターン3412、電極パターン3413、電極パターン3414は、それぞれに、貫通孔311、貫通孔312、貫通孔313、貫通孔314の外縁を含む形状である。電極パターン345は、第1方向に延びる線状であり、電極パターン3411と電極パターン3412とを接続している。
【0056】
電極パターン351および電極パターン352は、略矩形である。電極パターン351および電極パターン352は、樹脂基板300の第2方向の略中央に配置されている。電極パターン351は、樹脂基板300の第1方向の一方端付近に配置されており、電極パターン352は、樹脂基板300の第1方向の他方端付近に配置されている。電極パターン351に焦電素子20の接続部材251が実装され、電極パターン352に焦電素子20の接続部材252が実装されている。
【0057】
電極パターン351は、電極パターン357A、電極パターン355、および、電極パターン357Bを介して、電極パターン353に接続されている。電極パターン357A、電極パターン355、電極パターン357Bは、ともに線状であり、電極パターン355の幅は、電極パターン357Aおよび電極パターン357Bの幅よりも大きい。なお、幅とは、回路基板の平面視において、電流が流れる方向に対して垂直方向の長さのことである。
【0058】
電極パターン352は、電極パターン358A、電極パターン356、および、電極パターン358Bを介して、電極パターン354に接続されている。電極パターン358A、電極パターン356、電極パターン358Bは、ともに線状であり、電極パターン356の幅は、電極パターン358Aおよび電極パターン358Bの幅よりも大きい。
【0059】
電極パターン3611、電極パターン3612、電極パターン3613、電極パターン3614、電極パターン371、電極パターン372、電極パターン373、電極パターン374、電極パターン375、電極パターン376、電極パターン377、電極パターン378、および、電極パターン379は、樹脂基板300の裏面に形成されている。
【0060】
電極パターン3611、電極パターン3612、電極パターン3613、電極パターン3614は、それぞれに、貫通孔311、貫通孔312、貫通孔313、貫通孔314の外縁を含む形状である。電極パターン3611は、貫通孔311に形成された電極パターンによって、電極パターン3411に接続している。電極パターン3612は、貫通孔312に形成された電極パターンによって、電極パターン3412に接続している。電極パターン3613は、貫通孔313に形成された電極パターンによって、電極パターン3413に接続している。電極パターン3614は、貫通孔314に形成された電極パターンによって、電極パターン3414に接続している。
【0061】
電極パターン371は、電極パターン3611に接続するとともに、抵抗素子333の一方端が実装されている。電極パターン372は、延びる方向の一方端に抵抗素子333の他方端が実装され、延びる方向の他方端に抵抗素子334の一方端が実装されている。電極パターン373は、電極パターン372の延びる方向の途中位置にあり、樹脂基板300を貫通する導体によって、電極パターン353に接続している。
【0062】
電極パターン374は、樹脂基板300を貫通する導体によって、電極パターン354に接続している。
【0063】
電極パターン375は、延びる方向の一方端に抵抗素子334の他方端が実装されるとともに電極パターン374に接続している。電極パターン375は、延びる方向の他方端にFET32のゲート端子が実装されている。
【0064】
電極パターン376は、FET32のソース端子が実装されるとともに、抵抗素子332の一方端が実装されている。電極パターン377は、FET32のドレイン端子が実装されるとともに、抵抗素子331の一方端が実装されている。
【0065】
電極パターン378は、電極パターン3613に接続するとともに、抵抗素子332の他方端が実装されている。電極パターン379は、電極パターン3614に接続するとともに、抵抗素子331の他方端が実装されている。
【0066】
このような構成において、
図7(A)に示すように、電極パターン351に接続する電極パターン355と、電極パターン352に接続する電極パターン356とは、第2方向に沿って、所定の長さで、互いに平行に配置されている。この際、電極パターン355と電極パターン356とは、第1方向に離間して配置されている。言い換えれば、電極パターン355と電極パターン356とは、第1方向に所定幅を有するギャップGを介して、配置されている。これにより、電極パターン355と電極パターン356とは、熱交換が促進される。
【0067】
回路基板30においては、熱は、電極パターンや貫通導体などの電気導体や抵抗素子を介してより多く熱伝導する。
図5に示すように、接地電位であるステム40とは、第1受光部201が電気的に接続される。そのため、ステム40から導体ピン511や導体ピン512の突起部を介して伝搬する熱は、第2受光部202側に比べると、第1受光部201の方に熱が伝導しやすい。このため、焦電素子20の第1受光部201に伝搬される熱量と、焦電素子20の第2受光部202に伝搬される熱量とに差が生じる。これに対して、第1受光部201に電気的に接続される電極パターン355と、第2受光部202に電気的に接続される電極パターン356を、上記の様に配置することによって、電極パターン355に伝搬する熱と電極パターン356に伝搬する熱との熱交換が促進され、平衡状態になる。このため、電極パターン351に伝搬する熱量と、電極パターン352に伝搬する熱量との差は、小さくなる。この結果、焦電素子20の第1受光部201に電極パターンを介して伝搬される熱量と、焦電素子20の第2受光部202に電極パターンを介して伝搬される熱量との差が小さくなる。この構成によって、光検出器10は、外部の強力な光によってステム40に生じる熱を要因とする誤検出を、より確実に抑制できる。なお、樹脂基板300をFR4等とし、電極パターンを銅等とした場合に、この平行区間の長さは、例えば、1.0mm以上であり、電極パターン351と電極パターン352との間隔は、0.5mm以下であるとよい。
【0068】
さらに、電極パターン355と電極パターン356とは、焦電素子20の第1受光部201側の接続部材251に接続する電極パターン351と、焦電素子20の第2受光部202側の接続部材252に接続する電極パターン352との間における略中間点に配置されている。これにより、第1受光部201への熱伝導と、第2受光部202への熱伝導とを、さらに均一にできる。
【0069】
また、光検出器10では、電極パターン351と電極パターン352の面積は略同じである。この構成によって、第1受光部201に伝搬される熱量と、第2受光部202に伝搬される熱量とを略同じにできる。したがって、光検出器10は、外部の強力な光によってステム40に生じる熱を要因とする誤検出を、より確実に抑制できる。
【0070】
さらに、電極パターン351に接続する電極パターン357A、および、電極パターン352に接続する電極パターン358Bの幅は、電極パターン355、および、電極パターン356の幅より狭い。したがって、電極パターン351に伝搬する熱と、電極パターン352に伝搬する熱とを抑制できる。この構成によって、光検出器10は、外部の強力な光によってステム40に生じる熱を要因とする誤検出を、より確実に抑制できる。
【0071】
また、電極パターン357Aおよび電極パターン357Bは、電極パターン355に接続しており、電極パターン355よりも幅が狭い。同様に、電極パターン358Aおよび電極パターン358Bは、電極パターン356に接続しており、電極パターン356よりも幅が狭い。これにより、電極パターン355および電極パターン356に熱が集中し易く、上述の熱交換をより効率的に実現できる。
【0072】
図8(A)は本発明の実施形態に係る光検出器の構成の熱伝導のシミュレーション結果を示す図であり、
図8(B)は比較構成の熱伝導のシミュレーション結果を示す図である。比較構成は、従来技術に示した構成であり、概略的には、本願の光検出器10の導体ピン512を備えない構成である。
図8(A)および
図8(B)は、ステムを熱源として同じ熱量の熱を加えた時のシミュレーション結果である。
図8(A)および
図8(B)では、同じ温度範囲の温度分布を示しており、黒色の濃淡によって温度の高低を示している。
【0073】
図8(B)に示すように、比較構成では、焦電素子の第1受光部と第2受光部とで温度差、すなわち、熱量の差が生じている。
【0074】
一方、
図8(A)に示すように、本願の光検出器10では、焦電素子20の第1受光部201と第2受光部202とで温度差、すなわち、熱量の差が生じていない。
【0075】
より具体的には、
第1受光部201の温度の平均値と
第2受光部202の温度の平均値との差は、
図8(B)に比べて、
図8(A)は約1/30になっている。
【0076】
次に、本発明の第2の実施形態に係る光検出器について、図を参照して説明する。
図9は、本発明の第2の実施形態に係る光検出器10Aの主要構成を示す平面図である。
図10(A)は本発明の第2の実施形態に係る焦電素子20Aの平面図であり、
図10(B)は焦電素子20Aの側面断面図であり、
図10(C)は焦電素子20Aの底面図である。
【0077】
図9、
図10(A)、
図10(B)、
図10(C)に示すように、第2の実施形態に係る光検出器10Aは、第1の実施形態に係る光検出器10に対して、焦電素子20Aの構成において異なる。光検出器10Aの他の構成は、光検出器10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0078】
焦電素子20Aは、所謂クワッドタイプの焦電素子であり、第1の実施形態に示した所謂デュアルタイプの焦電素子と異なる構成を備える。焦電素子20Aは、焦電素子20と同様に、第1受光部201と第2受光部202とが第1方向に順に並ぶように、回路基板30およびステム40に対して配置されている。
【0079】
図10(A)、
図10(B)、
図10(C)に示すように、焦電素子20Aは、焦電体21、検出電極22A1、検出電極22A2、黒化膜231、黒化膜232、黒化膜233、黒化膜234、接続電極241A、接続電極242A、接続電極243A、接続電極244A、接続電極245A、接続部材251、および、接続部材252を備える。
【0080】
焦電体21は、矩形の平板であり、第1方向の長さが第2方向の長さより長い。検出電極22A1および検出電極22A2は、焦電体21の表面に形成されている。
【0081】
検出電極22A1および検出電極22A2は、第1の実施形態に係る光検出器10の検出電極22と同様の構成であり、幅(第2方向の寸法)が異なる。検出電極22A1および検出電極22A2は、第2方向に沿って間隔を空けて配置されている。
【0082】
黒化膜231は、検出電極22A1の一方端側の矩形電極の表面の略全面を覆って形成されている。黒化膜232は、検出電極22A1の他方端側の矩形電極の表面の略全面を覆って形成されている。黒化膜233は、検出電極22A2の一方端側の矩形電極の表面の略全面を覆って形成されている。黒化膜234は、検出電極22A2の他方端側の矩形電極の表面の略全面を覆って形成されている。
【0083】
接続電極241Aは、焦電体21を介して、検出電極22A1の一方端側の矩形電極に対向する矩形部と、外部接続用の矩形部と、これらの矩形部を接続する接続部とからなる。外部接続用の矩形部は、焦電体21の第1方向における一方端付近に形成されている。この外部接続用の矩形部の外面(裏面)には、接続部材251が配置されている。接続電極242Aは、焦電体21を介して、検出電極22A1の他方端側の矩形電極に対向する矩形部からなる。接続電極243Aは、焦電体21を介して、検出電極22A2の一方端側の矩形電極に対向する矩形部からなる。接続電極244Aは、焦電体21を介して、検出電極22A2の他方端側の矩形電極に対向する矩形部と、外部接続用の矩形部と、これらの矩形部を接続する接続部とからなる。外部接続用の矩形部は、焦電体21の第1方向における他方端付近に形成されている。この外部接続用の矩形部の外面(裏面)には、接続部材252が配置されている。
【0084】
接続電極245Aは、接続電極242Aと接続電極243Aとを接続している。
【0085】
この構成では、焦電素子20の第1受光部201は、主として、焦電体21が検出電極22A1および接続電極241Aによって挟まれる領域と、焦電体21が検出電極22A2および接続電極243Aによって挟まれる領域とからなる領域である。
【0086】
また、焦電素子20の第2受光部202は、主として、焦電体21が検出電極22A1および接続電極242Aによって挟まれる領域と、焦電体21が検出電極22A2および接続電極244Aによって挟まれる領域とからなる領域である。
【0087】
このような構成において、光検出器10Aを平面視して、焦電素子20の第1受光部201と導体ピン511との最短距離(
図9のL1)と、焦電素子20の第2受光部202と導体ピン512との最短距離(
図9のL2)と、は同じである。
【0088】
したがって、光検出器10Aは、外部の強力な光によってステム40に生じる熱を要因とする誤検出を抑制できる。
【0089】
次に、本発明の第3の実施形態に係る光検出器について、図を参照して説明する。
図11は、本発明の第3の実施形態に係る光検出器10Bの主要構成を示す平面図である。
【0090】
図11に示すように、第3の実施形態に係る光検出器10Bは、第1の実施形態に係る光検出器10に対して、導体ピン512と導体ピン53との配置において異なり、これに接続する回路パターンにおいて異なる。光検出器10Bの他の構成は、光検出器10と同様であり、同様の箇所の説明は、省略する。
【0091】
導体ピン512は、第2方向において、焦電素子20に対して導体ピン52と同じ側に配置されている。導体ピン53は、第2方向において、焦電素子20に対して導体ピン511と同じ側に配置されている。
【0092】
このような構成において、上述の各実施形態と同様に、光検出器10Bを平面視して、焦電素子20の第1受光部201と導体ピン511との最短距離(
図11のL1)と、焦電素子20の第2受光部202と導体ピン512との最短距離(
図11のL2)と、は同じである。
【0093】
したがって、光検出器10Bは、外部の強力な光によってステム40に生じる熱を要因とする誤検出を抑制できる。
【0094】
なお、焦電素子20を平面視したとき、導体ピン511と導体ピン512は、各々、焦電素子20の中心に対して対称に配置されていることが好ましい。
【0095】
次に、本発明の第4の実施形態に係る光検出器について、図を参照して説明する。
図12は、本発明の第4の実施形態に係る光検出器10Cの分解斜視図である。
図12では、カバー60の記載を省略している。
【0096】
図12に示すように、第4の実施形態に係る光検出器10Cは、第1の実施形態に係る光検出器10に対して、導体ピン512Cの構造において異なる。光検出器10Cの他の構成は、光検出器10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0097】
導体ピン512Cは、ステム40を厚み方向(
図12の第3方向)に貫通しており、ステム40の表面側および裏面側に突出している。
【0098】
このような構成であっても、上述の各実施形態と同様の作用効果を得られ、光検出器10Cは、外部の強力な光によってステム40に生じる熱を要因とする誤検出を抑制できる。
【0099】
なお、上述の各実施形態に記載の構成は、適宜組合せが可能であり、これらの組合せに応じた作用効果を得られる。
【0100】
また、上述の実施形態では、光検出器の回路として必要な導体ピンを熱伝導用に用いる態様を示したが、熱伝導用の導体ピンを、回路用の導体ピンとは別に設置してもよい。しかしながら、光検出器の回路として必要な導体ピンを熱伝導用に用いることで、光検出器の構成要素を少なくでき、簡素な構成および小型化を実現できる。
【符号の説明】
【0101】
10、10A、10B、10C:光検出器
20、20A:焦電素子
21:焦電体
22、22A1、22A2:検出電極
30:回路基板
32:FET
40:ステム
52、53:導体ピン
60:カバー
91:判定部
201:第1受光部
202:第2受光部
221:第1電極
222:第2電極
223:接続電極
231、232、233、234:黒化膜
241、241A、242、242A、243A、244A、245A:接続電極
251、252:接続部材
300:樹脂基板
311、312、313、314:貫通孔
331、332、333、334:抵抗素子
345、351、352、353、354、355、356、357A、358A、357B、358B、371、372、373、374、375、376、377、378、379、3411、3412、3413、3414、3611、3612、3613、3614:電極パターン
511、512、512C:導体ピン
520、530:絶縁体
600:集光レンズ
2411、2412、2421、2422:矩形部