(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】チェーンの取替方法
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20220830BHJP
B66B 13/06 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B66B7/00 K
B66B13/06 A
(21)【出願番号】P 2020110835
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2020-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 稔樹
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-321469(JP,A)
【文献】特開2018-012575(JP,A)
【文献】特開平09-142753(JP,A)
【文献】特開昭61-246484(JP,A)
【文献】実開昭49-027855(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00- 7/12
B66B 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターのかごに備えられ、上下に移動可能なドアと、
上下に移動可能なおもりと、
スプロケットと、
前記スプロケットに巻き掛けられたチェーンと、
前記スプロケットを回転駆動するためのモータと、
を備え、
前記スプロケットが第1方向に回転すると、前記チェーンの移動によって前記ドアが上方に移動し、前記おもりが下方に移動し、
前記スプロケットが第2方向に回転すると、前記チェーンの移動によって前記ドアが下方に移動し、前記おもりが上方に移動するエレベーター装置において、前記チェーンを取り替えるための方法であって、
前記ドアを最下位置に配置する閉鎖工程と、
前記おもりの直下に受け部材を取り付ける取付工程と、
前記閉鎖工程の後、伸縮可能な支持装置を前記おもりと前記おもりの直下の上向きの面との間に設置する設置工程と、
前記設置工程の後、前記支持装置を伸ばし、前記支持装置によって前記おもりを上方に移動させる移動工程と、
前記移動工程の後、前記チェーンを新規チェーンに取り替える取替工程と、
前記取替工程の後、前記支持装置を縮め、前記支持装置を前記おもりの下方から取り外す取外工程と、
を備え、
前記取付工程は、前記設置工程の前に行われ、
前記上向きの面は、前記受け部材に形成されるチェーンの取替方法。
【請求項2】
前記おもりは、前記おもりの全体の重量を調整するための複数の調整おもりを備え、
前記移動工程の前に、前記複数の調整おもりの一部を前記おもりから取り外す軽減工程を更に備えた請求項
1に記載のチェーンの取替方法。
【請求項3】
前記エレベーター装置は、前記おもりの移動を案内するためのレールを更に備え、
前記設置工程の後に、前記レールに形成された孔に番線を通すことによって前記支持装置を前記レールに固定する固定工程を更に備えた請求項1
又は請求項
2に記載のチェーンの取替方法。
【請求項4】
前記エレベーター装置は、前記チェーンが巻き掛けられた滑車を更に備え、
前記取替工程において、前記チェーンを外した後に前記滑車を新規滑車に取り替える請求項1から請求項
3の何れか一項に記載のチェーンの取替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベーター装置に備えられたチェーンの取替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、エレベーター装置が記載されている。特許文献1に記載されたエレベーター装置は、上下に移動するドアを備える。ドアの移動はチェーンを介して行われる。チェーンが古くなると、古いチェーンを新しいチェーンに取り替えるための工事が必要になる。
【0003】
特許文献1にも記載されているように、従来では、ドアの下に角材を挟むことによってチェーンを弛ませ、既設のチェーンを新規のチェーンに取り替えていた。また、特許文献1には、スプロケットが固定されている枠体に吊り具が設けられたブラケットを仮設し、この吊り具によっておもりを持ち上げる方法も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
角材を用いる従来の方法では、ドアを持ち上げて角材をドアの下に入れる必要があり、作業者の負担が大きい。また、吊り具を用いる方法では、スプロケットが固定されている枠体に吊り具が設けられたブラケットを仮設する必要がある。このため、枠体及び吊り具を配置するスペースがない現場では当該方法を採用することができない。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされた。この発明の目的は、作業者の負担が少なく、且つ多くの現場で採用可能なチェーンの取替方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るチェーンの取替方法は、エレベーターのかごに備えられ、上下に移動可能なドアと、上下に移動可能なおもりと、スプロケットと、スプロケットに巻き掛けられたチェーンと、スプロケットを回転駆動するためのモータと、を備えたエレベーター装置において、チェーンを取り替えるための方法である。本取替方法は、ドアを最下位置に配置する閉鎖工程と、おもりの直下に受け部材を取り付ける取付工程と、閉鎖工程の後、伸縮可能な支持装置をおもりとおもりの直下の上向きの面との間に設置する設置工程と、設置工程の後、支持装置を伸ばし、支持装置によっておもりを上方に移動させる移動工程と、移動工程の後、チェーンを新規チェーンに取り替える取替工程と、取替工程の後、支持装置を縮め、支持装置をおもりの下方から取り外す取外工程と、を備える。取付工程は、設置工程の前に行われる。上向きの面は、受け部材に形成される。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るチェーンの取替方法であれば、作業者の負担が少なく、且つ多くの現場で採用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】チェーンを取り替える際に用いられる支持装置の例を示す図である。
【
図3】実施の形態1におけるチェーンの取替方法を示すフローチャートである。
【
図4】支持装置によっておもりを下方から支持した状態を示す図である。
【
図5】
図4に示す状態からおもりが更に上方に移動した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照し、本発明を説明する。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0011】
実施の形態1.
図1は、エレベーター装置の例を示す図である。
図1は、エレベーターの乗場に設けられたドア装置1を昇降路から見た図を示す。ドア装置1は、ドア10、ドア11、ガイドレール12、おもり13、ガイドレール14、チェーン15~17、駆動スプロケット18、滑車19~21、モータ22、及びギア23を備える。
【0012】
ドア10及びドア11は、乗場に形成された出入口2を開閉する。
図1は、ドア10及びドア11が完全に閉じた状態を示す。
図1に示す状態では、ドア11はドア10より高い位置に配置される。
図1に示す状態では、ドア10は出入口2の下側の部分を閉鎖する。ドア11は、出入口2の上側の部分を閉鎖する。ドア10及びドア11は、上下に移動可能である。ガイドレール12は、ドア10及びドア11の両側に配置される。ドア10及びドア11の移動は、ガイドレール12によって案内される。
【0013】
本実施の形態では、出入口2が2枚のドアで開閉される例を示す。出入口2は、1枚のドアで開閉されても構わない。出入口2は、3枚以上のドアで開閉されても構わない。
【0014】
おもり13は、ドア10及びドア11の側方に配置される。おもり13は、上下に移動可能である。
図1に示す例では、おもり13は、枠13aと複数の調整おもり13bとを備える。調整おもり13bは、おもり13の全体の重量を調整するためのものである。枠13aは、調整おもり13bを支持する。ガイドレール14は、おもり13の両側に配置される。おもり13の移動は、ガイドレール14によって案内される。
【0015】
ドア10とおもり13との間に、チェーン15及び16が連結される。例えば、チェーン15は、一方の端部がおもり13に固定される。チェーン15は、おもり13から上方に延びる。チェーン15は、駆動スプロケット18に巻き掛けられ、駆動スプロケット18から下方に延びる。チェーン15のもう一方の端部は、ドア10に固定される。
【0016】
チェーン16は、一方の端部がおもり13に固定される。チェーン16は、おもり13から上方に延びる。チェーン16は、駆動スプロケット18に巻き掛けられ、駆動スプロケット18から側方に延びる。また、チェーン16は、滑車19に巻き掛けられ、滑車19から下方に延びる。滑車19には、チェーン16に噛み合う歯が形成される。チェーン16のもう一方の端部は、ドア10に固定される。
【0017】
ドア11に滑車20及び21が設けられる。チェーン17は、一方の端部がおもり13に固定される。チェーン17は、おもり13から上方に延びる。チェーン17は、駆動スプロケット18に巻き掛けられ、駆動スプロケット18から下方に延びる。また、チェーン17は、滑車20及び21に巻き掛けられ、滑車21から上方に延びる。滑車20及び21には、チェーン17に噛み合う歯が形成される。チェーン17のもう一方の端部は、ドア11の上方で固定される。
【0018】
駆動スプロケット18は、A方向及びA方向とは反対のB方向に回転可能である。駆動スプロケット18がA方向に回転すると、チェーン15及び16の移動によってドア10が上方に移動する。同様に、チェーン17の移動によってドア11が上方に移動する。ドア11の移動速度は、ドア10の移動速度の1/2である。また、駆動スプロケット18がA方向に回転すると、チェーン15~17の移動によっておもり13が下方に移動する。
【0019】
駆動スプロケット18がB方向に回転すると、チェーン15及び16の移動によってドア10が下方に移動する。同様に、チェーン17の移動によってドア11が下方に移動する。また、駆動スプロケット18がB方向に回転すると、チェーン15~17の移動によっておもり13が上方に移動する。
【0020】
モータ22は、駆動スプロケット18を回転駆動する。
図1に示す例では、モータ22の駆動力は、ギア23を介して駆動スプロケット18に伝達される。モータ22は、図示しない制御装置によって制御される。
【0021】
このようなエレベーター装置では、チェーン15~17の取り替えが必要になる。以下に、チェーン15~17を取り替える方法について説明する。
図2は、チェーン15~17を取り替える際に用いられる支持装置30の例を示す図である。
【0022】
支持装置30は、伸縮可能な棒状の部材である。一例として、支持装置30はパイプサポートである。支持装置30は、例えば台板31、腰管32、差込み管33、調節ねじ34、支持ピン35、及び受け板36を備える。
【0023】
図3は、実施の形態1におけるチェーン15~17の取替方法を示すフローチャートである。古くなったチェーン15~17を新規チェーンに取り替える場合、作業者は、先ず、モータ22を動作させてドア10及びドア11を完全に閉める(S101)。これにより、ドア10及びドア11は可動範囲の最下位置に配置される。ドア10は、ドア10の直下に配置された敷居に接触する。
【0024】
S101でドア10及び11を全閉すると、作業者は、おもり13の下に支持装置30を設置する。これにより、支持装置30によっておもり13を下方から支持する(S102)。
図1に示すように、おもり13の直下には、建築物の躯体の一部が存在し、この躯体に上向きの床面3が形成されている。作業者は、先ず、支持装置30の台板31を床面3に載せる。次に、作業者は、支持装置30の受け板36をおもり13に下方から当てる。これにより、支持装置30を床面3とおもり13との間に設置する。
図4は、支持装置30によっておもり13を下方から支持した状態を示す図である。なお、支持装置30は、おもり13の下に設置された際に、床面3を形成する躯体部分よりかご側に突出しないことが好ましい。
【0025】
S102で支持装置30をおもり13の下に設置すると、作業者は、支持装置30をガイドレール14に固定する(S103)。支持装置30の固定には、番線或いはベルト等の固定部材4が用いられる。例えば、作業者は、固定部材4として番線を用いる場合、ガイドレール14に形成された孔に番線を通した後、番線を支持装置30の腰管32に巻き付ける。これにより、支持装置30をガイドレール14に対して簡単に固定することができる。
【0026】
S103で支持装置30をガイドレール14に固定すると、作業者は、支持装置30を伸ばし、支持装置30によっておもり13を上方に移動させる(S104)。ドア10及び11は、S101で最下位置に配置されているため、これ以上下方に移動することはない。このため、S104でおもり13が上方に移動すると、チェーン15~17に弛みが生じる。
図5は、
図4に示す状態からおもり13が更に上方に移動した状態を示す図である。
【0027】
なお、S104でおもり13を上方に移動させる前に、作業者は、おもり13に備えられている調整おもり13bの一部をおもり13から取り外しても良い。これにより、おもり13を軽減でき、S104での作業を容易に行うことができる。
【0028】
次に、作業者は、古いチェーン15~17を取り外し、チェーン15~17を新規チェーンに取り替える(S105)。以下においては、新規チェーンに対して符号15N~17Nを付して古いチェーン15~17と区別する。即ち、作業者は、S105において、チェーン15をチェーン15Nに交換する。作業者は、チェーン16をチェーン16Nに交換する。作業者は、チェーン17をチェーン17Nに交換する。
【0029】
S105では、作業者は、チェーン15の端部をドア10から外し、もう一方の端部をおもり13から外す。作業者は、チェーン15を取り外すと、取り外したチェーン15をチェーン15Nの隣りに並べ、双方の駒数が一致しているかを確認する。同様に、作業者は、チェーン16を取り外すと、取り外したチェーン16をチェーン16Nの隣りに並べ、双方の駒数が一致しているかを確認する。作業者は、チェーン17を取り外すと、取り外したチェーン17をチェーン17Nの隣りに並べ、双方の駒数が一致しているかを確認する。
【0030】
S105において、作業者は、チェーン15~17を取り外した後、チェーン15N~17Nを取り付ける前に、滑車19~21を新規滑車に取り替えても良い。かかる場合、作業者は、滑車19~21を新規滑車に取り替えた後にチェーン15N~17Nの取り付けを行う。
【0031】
S105でチェーン15N~17Nを適切に取り付けると、作業者は、支持装置30を縮め、支持装置30をおもり13の下方から取り外す(S106)。支持装置30が縮められると、チェーン15N~17Nにテンションが掛かる。これにより、駆動スプロケット18の回転に応じてドア10及び11が開閉するようになる。作業者は、モータ22によるドア10及び11の開閉を行う前に、ドア10及び11を手動で開閉して異常音が発生していないかの点検を実施しても良い。
【0032】
本実施の形態に示す例であれば、角材を用いる従来の方法のように、ドアを持ち上げて角材をドアの下に入れる必要はない。作業者は、調整ねじ34を操作することによって支持装置30を簡単に伸縮させることができる。このため、作業者の負担を軽減できる。
【0033】
また、本実施の形態に示す例では、支持装置30がおもり13の下に設置される。おもり13は上下に移動するため、ドア10及び11が最下位置に配置された状態では、おもり13の下には支持装置30を設置するための空間が必ず存在する。このため、本実施の形態に示す取替方法は、様々な現場で採用することが可能である。
【0034】
本実施の形態では、ドア装置1がエレベーターの乗場に設けられている例について説明した。乗場にドア装置1が設けられている場合、エレベーターのかごにも同様のドア装置が備えられる。かごに備えられたドア装置に対しても、本実施の形態で示した方法と同様の方法によってチェーンの取り替えを実施しても良い。
【0035】
但し、エレベーターのかごには、おもりの直下に、躯体の床面3に相当する面が形成されていない場合がある。かかる場合は、S102の前に、おもりの直下に受け部材を取り付ける工程が必要になる。この受け部材には、床面3に相当する上向きの面が形成されている。受け部材は、例えば、おもりを案内するガイドレール、或いはそのガイドレールを支持する部材に取り付けられる。作業者は、受け部材をおもりの下方に取り付けると、S102において、支持装置30をこの受け部材とおもりとの間に設置する。
【符号の説明】
【0036】
1 ドア装置、 2 出入口、 3 床面、 4 固定部材、 10~11 ドア、 12 ガイドレール、 13 おもり、 13a 枠、 13b 調整おもり、 14 ガイドレール、 15~17 チェーン、 18 駆動スプロケット、 19~21 滑車、 22 モータ、 23 ギア、 30 支持装置、 31 台板、 32 腰管、 33 差込み管、 34 調節ねじ、 35 支持ピン、 36 受け板